• 検索結果がありません。

ファミリーホームにおける安心・安全な生活を保障するための基礎的研究―“暴力だけは絶対に許さない”Aホームへのフィールドワークを通じて― [ PDF

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "ファミリーホームにおける安心・安全な生活を保障するための基礎的研究―“暴力だけは絶対に許さない”Aホームへのフィールドワークを通じて― [ PDF"

Copied!
4
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)ファミリーホームにおける安心・安全な生活を保障するための基礎的研究 ―“暴力だけは絶対に許さない”A ホームへのフィールドワークを通じて― キーワード:ファミリーホーム,社会的養護内暴力,フィールドワーク 人間共生システム専攻 小牧 誉和 Ⅰ. 問題 1.日本における社会的養護の現状. の無い安全な環境を保障するということは,優先して取り. 様々な事情で,親と共に生活していくことのできない子. 組むべき課題であると言える。. どもたちに,社会が用意した養育環境の体系を社会的養護. 5.FH において暴力の無い安全な環境を提供するために. と呼ぶ。社会的養護を必要とする子どもたちの約9割が,. FH おける暴力の問題を解決するために, 「FH 研究全国大. 児童養護施設などの施設で集団での養育を受けているが,. 会」では,制度化以前から継続的な議論がなされてきてい. 近年,虐待の増加等に伴い,子ども一人一人の抱える問題. るが,その実践はほとんどなされておらず,実践をまとめ. が複雑化・多様化する傾向(長谷川,2008)にある中で,. た論文も無いのが現状である。そうした中で行われた貴重. 社会的養護の小規模化,地域化,専門化の動き(土井,2008). な実践の報告としては,赤塚(2011) ,佐藤(2011)がある. が高まっている。そうした流れから,2009 年度に制度化さ. が,ホームを運営する立場からの主観的な実践の報告であ. れたのがファミリーホーム(以下、FH と表記)事業である。. り,取り組みの全体像や,実際にどのようにそれらが運用. 2.FH 事業の概要と特徴とリスク. され,どのような効果があるのかは明らかになっていない。. FH 事業は里親から発展した制度で,家庭的な雰囲気の中. したがって,今後この問題を解決するために何が必要であ. で5〜6人の子どもたちを預かり養育を行う社会的養護の. るのかを検討するには、この問題に対する実践の積み重ね. 新しい形態である。3人以上の養育者(一人は専任養育者. と詳細な報告,そしてその効果について検証・整理してい. として子どもと同居することが求められている)が養育を. くことが必要であり、かつ急務であると言えよう。. 行う。FH における養育は,家庭生活そのものを経験するこ. Ⅱ.目的. とができ,安定した関係が成立しやすいこと、子どもたち. 筆者は,“暴力だけは絶対に許さない”という強い覚悟. 同士の育ち合いや,社会性を身につけることができること. を持ち,暴力の無い安全な生活を保障するために様々な取. 等のメリットが指摘されている(津崎,2010・若狭,2010. り組みをしている A ホームと関わる機会を得た。本研究の. 等) 。その一方で,FH における養育のリスクを示唆する研究. 目的は,A ホームにおいて,暴力を無くすためにどのような. もある。例えば①5〜6 人という規模でもトラブルが減る訳. 取り組みがなされているのかを,A ホームの生活に入る中で. ではない(長谷川,2008) ,②FH を外的にサポートする体制. 明らかにすることである。また,養育者の視点だけではな. は「まだ何もできていない」状況である(卜蔵・若狭,2010) ,. く,その取り組みが,子どもたちにどのような体験をもた. ③里親やファミリーホームを運営する人が,志が高すぎる. らしているのかも明らかにする。A ホームに訪問した,2010. あまり,状況を抱え込みやすく,心理的に密室化するリス. 年12 月から2011年12 月までの間, 暴力は起こっていない。. クが高まる。密室化が促進されると,虐待などの暴力が繰. したがって,A ホームで暴力が起こらないのはどうしてなの. り返されるリスクが高まる(入江,2011)等が指摘されて. かということを,暴力に対する取り組みや,子どもたちの. いる。. 体験という視点を総合して考察することで,今後 FH におい. 4.あらゆる社会的養護で優先して取り組まれるべき課題. て暴力の無い安全な環境を作っていくための基礎的な知見. このような特徴を持つ FH 事業であり、その利点を生かし. を得ることを目的とする。. た養育がなされることが期待されるが、あらゆる社会的養. Ⅲ.方法. 護で優先して取り組まれるべき課題が存在している。安部. 1. 本研究の採用する研究方法論:本研究では,フィールド. (2005) ,村瀬(2004) ,小澤(2004)は,心理的なケアの. に入るなかで,そこ生活している人の意味世界を包括的に. 前提には,安全な環境が確保されることが必要であると指. 理解しようとする解釈的アプローチを採用する。その理由. 摘しており,虐待等,様々な家庭環境を生き抜いてきた子. としては①制度化されたばかりの FH において,暴力の無い. どもたちを養育する社会的養護の場においても,その土台. 安全な環境を提供するための実践はほとんど行われておら. として,安全な環境が提供されなければならない事は明ら. ず,その取り組みの詳細を記述することと,その効果の検証. かであろう。しかし,実際には,児童福祉施設において日. を丁寧に行っていくことが必要である、②こうした実践は. 常的に暴力があることが明らかになっており(藤本,2007,. 様々な要因が混在するまさしく生活の中で行われているの. 酒井ら,2009 等) ,安全な環境すら保障されていない状況で. であり,数量的なデータを得るための実験や調査にはそぐ. ある。したがって,あらゆる社会的養護の場において暴力. わない③実践の場である生活の場に入り,現場の文脈の中. 1.

(2) で理解してこそ,今後様々な FH でも援用可能な知見が得ら. 「最近ホームの様子はどうですか?(#5)」「H に本音を聴い. れる,と考えたからである。. といてもらえないだろうか?(#9)」など継続して関わるか. 2. 妥当性・信頼性の問題:本研究で得られたデータは,. らこそお願いされる事も多くなっていった。子どもたちと. 妥当性はあるが,低い信頼性を特徴とするものである。しか. の関係は,初めは歓迎してくれつつも,子どもたちも緊張. し、本研究の目的は,今後の研究に向けた基礎的な研究であ. して,あっさりとした関わり方が多かった。ただ,#3 では. り,一般化という事を論じる事を目的としていないため,妥. あだ名を付けられたり,一緒にゲームをして過ごすなど距. 当性の確保を優先的に考えられなくてはならないと判断し. 離が近くなっていく。ホームの仕事を任されるようになり,. た。. 養育者のような位置づけや,「何かあったら(危ない目に. 3.調査時期:2010 年 12 月〜2011 年 12 月(計 10 回). あいそうになったら)『小牧さん』って呼べば良いだけや. 4.調査対象の概要 :A ホームは,児童養護施設の指導員を約. (#7)」と守ってくれる大人としても機能していった。. 20 年勤めた B さんが,2009 年 7 月に自然豊かな P 地区に設. 7.分析手順と経過. 立した。子どもたちは,現在小学校2年生〜6年生までの. 以上のようなフィールドの状況や関係性の中で得られた. C,D,E,F,I,J という 6 人の男の子(Table1)であり,A ホー. データは,フィールドノーツにまとめられた。そして,その. ムに関わる職員は,5人である。ただ,その養育のほとん. 文字データは,佐藤(2002) ,箕口(2009) ,小田(2010). どを B さん一人で担っている(Table2)。. のフィールドワークの分析の方法を参考に以下のような3 つの手順で分析を行った。以下に,その手順と具体的な方 法について記述する。 ①データの読み込みを行い,オープンコーディングを行う オープンコーディングとは,分析対象となる文章ドキュ メントの1行1行を丹念に読み込みながら,その内容に小 見出しをつけていく作業である(佐藤,2008) 。コードをつ ける単位について箕浦(2009)は, 「最小の意味のあるまと まりであるフレーズごと」 「一文ごと」 「一つの主題で意味 的なまとまりのあるユニット(例えばパラグラフ)ごと」 の3つをあげているが,フィールドノーツの全記述にフレ ーズ単位ごとのコードを貼付ける作業は,膨大な時間を要 し,実際的でないばかりか,おおざっぱな流れを把握する. 5.調査方法:本研究では,フィールドワークを採用する。. ことを妨げる畏れがあるとしている。したがって,本研究. 具体的には,週末の2〜3日間泊まり込みでフィールドに. では#1〜3 では,フレーズごと,一文ごとの分析を行い,#4. 入り,参加しながらの観察を行なった。フィールドでは,. 以降は,基本的にユニットごとの分析を行い,研究設問に. ①フィールドでは完全な観察者として存在することは不可. 関係する部分は,フレーズごと,一文ごとの分析を行った。. 能で,筆者は現場で様々に意味付けられることになる,②. ②オープンコーディングを行いながら,研究設問を練り上. 現場での関係性に巻き込まれつつ,客観的な視点を忘れず. げる. に持っておく,③社会的養護の現場に入らせていただく. フィールドに入り,オープンコーディングをしていきな. ので,子どもたちの利益を最優先に振る舞う,の3つを基. がら,研究設問を練り上げていった。以下にその変遷の概. 本的なスタンスとして関わり,フィールドを離れた後,現. 要を示す。. 場メモと記憶をたよりにフィールドノーツを作成した。. #1 で,B さんが施設の指導員をしていたときに,施設で. 6. 筆者のフィールドにおける意味付けられ方の変化. の暴力を身を以て体験し, “暴力だけは絶対に許さない”と. 上記のような基本的なスタンスで,フィールドに入った. いう強い覚悟を持ち,暴力に対して様々な取り組みを行っ. 結果,私がどのように意味付けられたのかを示す。フィー. ていることが分かった。また,#2で,D,E,F の三人対 G の雪. ルドに入る際,Z さんには「何でも手伝いさせていい」,子. 合戦の最中に,F から雪玉を当てられ,エキサイトした G が F. どもたちには「遊びにくる大学生」と伝えられている。ま. を押さえつけ,手を出そうとしたとき,F がとっさに「それ. ず,Z さんは,初回から私に洗濯物を畳むように頼むなど,. やったら,おいちゃんに言うからね!」と言うと,G もそれ以. ホームの仕事を手伝う資源として活用していた。#3には. 上攻撃せず収まるという場面に遭遇した。この事から,何. 留守番をお願いされ,ご飯を作るなど,任される仕事も多. かあってもおいちゃんに言えば守ってもらえるという安心. くなり「居てくれて助かる」存在になる。また,後半には. 感を子どもが持っていること,その場に居ない“おいちゃ. 2.

(3) ん”という存在が暴力の抑止力になっていると感じた。以. らないように,得られたコードとカテゴリーの妥当性につ. 上のことから,①A ホームでは,暴力に対してどのような取. いて,臨床心理学を学ぶ大学院生2名によるチェックを受. り組みがなされているのだろうか,②そうした暴力への取. けた。. り組みが子どもたちに受け入れられ,何かあってもおいち. Ⅳ.結果と考察. ゃんに言えば大丈夫という安心感や,暴力を抑止するには. 分析の結果,78 個のエピソードや語りから 28 個のコード. 何が必要か。という2つの研究設問を立て,分析を行った。. が得られ,そして,6個のカテゴリーが抽出された(Table1)。. 分析を行う中で,A ホームにおける暴力に対する取り組み. それぞれのカテゴリー間の関係性を分析した結果を. の特徴として,より暴力が起こりにくい・何かあっても訴. Figure1 に示し,その概要を説明する。 Table3 カテゴリー・オープンコード一覧. えられる環境を指向して日々変化していくという特徴があ. カテゴリー Bさんの養育の原点. る事が明らかになり,それは B さんの並々ならぬ暴力に対 する覚悟が影響していることが考えられたことから,B さん Xホームにおける 暴力の取り組みを 支えるBさんの経験 や信念. の暴力に対する取り組みを支える思いや,背景についても 分析を行った。さらに,②に関しては,暴力の取り組みに よって子どもたちが様々な体験をし,それが積み重なった. Bさんの施設での経 験と暴力の理解. ホームを立ち上げる にあたっての決意. 結果として起こっていることが明らかになってきた。. オープンコード(エピソード・語りの数) 子どもたちの立場に立って気持ちを汲み取り、共感し、子ど もに絶対に嫌な思いをさせない(3) 前の施設の惨状(3) Bさん自身のストレス(2) 子どもたちのストレスの推測(2) 暴力の連鎖と根の深さの理解(4) 暴力の連鎖の種をまいたのは職員であるという理解(3) 暴力への指導が行われないことによる弊害(1) 暴力の発覚する場所の理解(1) 暴力が起こりやすい場所の理解(1) 暴力は絶対に許さないという強い思い(5) Bさん自身が暴力を絶対に振るわないという覚悟(4) 慎重な入所児童の選択(1). 以上のことから,①A ホームにおける暴力の取り組みを支. オリエンテーション(3). える B さんの経験や信念にはどのようなものがあるか,②A Xホームにおける暴 力に対する取り組 み. ホームでは暴力に対してどのような取り組みがなされてい るのだろうか,③暴力に対する取り組みによって,子ども. 暴力が起きにくい環 境・何かあっても訴え られる環境を作る. 生活の決まりごとの設定(2) トラブルの芽を摘む関わり(2) イライラさせない関係性の取り方を教える(2) 外部委員(4) ネットワーキング(4) 子どもたちの気持ちを汲み取り、愛情をもって接する(11). たちはどのような体験を積み重ねているのか,④①,②,. 暴力が起こったときの 対応. ③がどのように影響しあって,A ホームにおいて暴力に対 する取り組みが根付き,暴力が起こりにくい環境・何かあ. 暴力に対する取り 暴力に対する取り組 組みによって生ま みによって生まれる子 れる子どもたちの どもたちの体験 体験. っても訴えられる環境が作られるのか,という4つの研究. 暴力があったら必ず対応(4) 暴力を使わない激しい叱責(3) 他の子に見せる叱責(1) 同じようなことが起こったらどうするか教える(1) とりあえずの安心(1) 暴力があったら訴える(4) 暴力を振るってはいけないという感覚(2) 何かあっても訴えれば守られる経験と確信(3) 暴力の無い日常とその積み重ね(1). 設問を立てて分析を行った。 ③研究設問を念頭に置きながら,オープンコードをまとめ, より抽象度の高いカテゴリーを作る 箕浦(2008)や小田(2010)は,このプロセスに定まっ た道筋は無く,カテゴリー性が浮上する瞬間には,一種の ヒラメキのようなものが必要であると指摘している。た だ,佐藤(2008)は,KJ 法的手法や,章や節の構成をツ リーのようにして整理する方法が役立つとしており,本研 究でも,KJ 法的な手法を用い整理する作業や,図解する作 業を繰り返し,オープンコードをまとめ,より抽象度の高 いカテゴリーを作っていった。 ④カテゴリー間の関係を検討する この作業にも決まった道筋は無いが,小田(2010)は, 関係性を明らかにしていくために,複数の概念を書き出し て,一望の下に眺められるようにし,それぞれの間の関係 性を考える作業が役に立つとし,また,箕浦(2008)関係 文献に目を通したり,フィールドノーツを読み返すことも 助けになるとしているとしていることから,本研究におい ても,関係の文献に目を通し,フィールドノーツを読み返 しながら,得られたカテゴリーを図示し,それぞれのカテ ゴリーの間の関係性を検討する事を繰り返すことで,カテ ゴリー間の関係を検討した。 分析は基本的に筆者一人で行ったが,分析が恣意的にな. 3. Figure1 A ホームにおいて暴力が根付き,暴力の無い安全な環境が作られるまでのプロセス.

(4) 1. 暴力に対する取り組みが子どもたちに根付き,暴力が. (#1)」等,子どもの立場に立った気持ちの共感である。そし. 起こりにくい環境・何かあっても訴えられる環境が作られ. てこの軸が一切ぶれないことで,以下に挙げるような対応. るまでのプロセス. を可能にし,暴力の無い生活が作られていると思われる。. Figure1 を見ても分かるように,一番下で全体を支えてい. (2)暴力があったら必ず対応する. るのは, 【暴力に対する取り組みを支える経験と信念】であ. A ホームでは,暴力があったら必ず対応がなされ,その. る。B さんは, 「 (子どもたちが)親と離れて暮らす惨めさと. ことによって暴力があったら訴える行動が引き出され,反. か,絶対感じさないようにしようって思ってますね。それ. 対に暴力を振るう行動は消去されていく事が明らかになっ. が原点やわ(#9)」と語っているように,[子どもたちの立場. た。田嶌(2011)は,児童養護施設において,子どもたち. に立って,気持ちを汲み取り,共感し,子どもに絶対に嫌. は実際に暴力について職員に訴えているが,日常的に子ど. な思いをさせない]という強い思いが, 【B さんの養育の原. もを守る仕組みが無いためにこっぴどい仕返しを受け,訴. 点】となっている。そのような原点を持つ B さんは,A ホー. えなくなったと指摘しているように,暴力について訴えが. ムを立ち上げる前に,暴力の吹き荒れる O 園で働いていた. あったときに,子どもを守り抜かなければ,子どもたちは. が,そこでの経験は,暴力にさらされる子どもたちの大変. 暴力を受けても訴えなくなり,結果として暴力が潜在化し,. さに共感し, 「暴力だけは絶対に許さない」という強い思い. また過激化していく可能性がある。. と抱かせると同時に,暴力に関する理解をもたらした。そ. (3) 外部に開かれた養育. うした,強い信念と暴力に関する理解が,A ホームにおける. B ホームでは,[外部委員],[ネットワーキング]など,意. 暴力に対する取り組みを支えている。. 識的に外的な資源を取り入れている。その結果,外部委員. A ホームにおける暴力に対する取り組みには,[暴力が起. の聞き取りによって,B さんが本当は悪くない子どもを勘違. こりにくい環境・何かあったら訴えられる環境を作る]と. いして怒っていたということが明らかになった。このよう. [暴力が起こったときの対応]という二つの取り組みがある. に,どんなに気をつけても間違いは起こり得る。FH は,外. ことが分かった。まず,子どもたちには,入所時に,B さん. 的にサポートする体制が「まだ何もできていない(卜蔵・. からオリエンテーションが行われ,その強い覚悟から,子. 若狭,2010) 」状況であり,もし,A ホームのように意識的. どもたちは[とりあえずの安心]を持つことにつながる。ま. に外部に開かれていなければ,間違いが発覚することすら. た,暴力を振るわれたらどうすれば良いのかも教えられる. 無く,養育が続けられる可能性があった。B さんは, 「だっ. ため,実際に[暴力があったら訴える]という行動につなが. て,俺だって人間だから,感情的になって頭が真っ白にな. る。その他,様々な[暴力が起こりにくい環境・何かあった. ることもあるじゃん。だから,風通しだけは良くしようと. ら訴えられる環境を作る]取り組みによって,暴力の無い日. 思ってやってるよ(#5)」と語っているが,この姿勢は田嶌. 常が作られ,子どもたちの中に積み重なっていく。. (2011)の指摘する「自分だけは大丈夫と考えないこと」 ,. 暴力が起こったら,子どもたちは B さんに訴え,例外な. 「自分を例外としない姿勢」と同じであると思われる。自. く【暴力が起こったときの対応】が行われる。その結果,. 分の弱さや限界を認識したうえで,積極的に外的な資源を. ①訴えた子は訴えたら守られた経験,②訴えられた子は暴. 取り入れていくことが,FH における養育の透明性・妥当性. 力を振るったら怒られた体験,③それを見ていた子どもた. を保障することにつながると考えられる。 Ⅴ.本研究の限界と今後の課題. ちは,その二つを見た体験となり,[何かあっても訴えれば. 本研究では,A ホームへのフィールドワークを通じて,A. 守られる経験と確信]や,[暴力を振るってはいけないとい. ホームにおいて暴力に対する取り組みが根付き,暴力が起. う感覚]を生じさせる。その結果,暴力があったら訴える行. こりにくい環境・何かあっても訴えられる環境が作られる. 動が引き出され,反対に暴力を振るうという行動は消去さ. までの過程と,それに必要なものを,①取り組みを支える. れる。このような事が繰り返され,体験が積み重なること. 背景,②暴力の取り組み,③子どもたちの体験,という3. によって暴力に対する取り組みが根付き,暴力が起きにく. つを総合して考察した。一つのホームから得られた知見で. い環境・何かあっても訴えられる環境が作られていく。. あるので,他のホームに一般化することには限界があり,. 2. A ホームにおける暴力に対する取り組みの特徴と暴力. 今後の更なる実践と,その積み上げの中で「共有可能な知. の無い安全な生活を作る上で重要なもの. 恵」(田嶌,2011)を作り上げていく必要があると思われる。. (1)子どもたちを絶対に暴力から守るというぶれない軸. Ⅵ.主要引用文献:田嶌誠一(2011):児童福祉施設におけ. A ホームにおける暴力に対する取り組みの軸になってい. る暴力問題の理解と対応 続・現実に介入しつつ心に関わ. るのは, 「あの子らきついと思うわ。たらい回しにされたり,. る 金剛出版. 親から殴られたりさ。だから,暴力だけは絶対に許さん. 4.

(5)

参照

関連したドキュメント

プログラムに参加したどの生徒も週末になると大

タップします。 6通知設定が「ON」になっ ているのを確認して「た めしに実行する」ボタン をタップします。.

目的 これから重機を導入して自伐型林業 を始めていく方を対象に、基本的な 重機操作から作業道を開設して行け

自分は超能力を持っていて他人の行動を左右で きると信じている。そして、例えば、たまたま

耐震性及び津波対策 作業性を確保するうえで必要な耐震機能を有するとともに,津波の遡上高さを

今回、新たな制度ができることをきっかけに、ステークホルダー別に寄せられている声を分析

一︑意見の自由は︑公務員に保障される︒ ントを受けたことまたはそれを拒絶したこと

モノづくり,特に機械を設計して製作するためには時