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せん断スパン比 0.5 の円形 CFT 柱のせん断挙動に関する FEM 解析
1. 序 当研究室では,径厚比が 34,71 の鋼管を用いた,せ ん断スパン比が 0.5 のコンクリート充填円形鋼管(円形 CFT)の試験体を作成し,これらのせん断破壊性状につ いて検討されている1).上記の研究では,現行の「コン クリート充填鋼管構造設計施工指針」2)(CFT 指針)にお いて算定される終局耐力評価法と実験値との比較検討 の結果が報告されている. 本研究では一定の軸力のもとで繰返しせん断力を受 けるせん断スパン比が 0.5 の円形 CFT 短柱1)を対象とし て,3 次元非線形有限要素法(FEM)解析を行い,実験 結果と解析結果の剛性および最大耐力の比較を行う. さらに,現行 CFT 指針による計算と FEM 解析による 終局耐力を比較して,現行 CFT 指針の計算法の妥当性 について検討する.この検討では実験からは直接得ら れない円形 CFT 柱の鋼管と充填コンクリートの負担せ ん断力の割合を FEM 解析により明らかとし,CFT 指針 の耐力評価法について考察する. 2. 実験概要 解析対象試験体の形状・寸法を図 1 に,諸元を表 1 に 示す.代表的な実験変数は,軸力比(N/N0),径厚比(D/ t ),コンクリート強度である. 3. 解析概要 3.1 要素と材料モデル3 ) 解析には汎用解析コード DIANA9.4.43)を用いた.表 2 に 解析に用いた材料特性を示す.コンクリートには 8 節点 ソリッド要素を用い,構成則には修正圧縮場理論に基 づく全ひずみひび割れモデルを用いた.ひび割れは分 布ひび割れ(回転)モデルとした.図 2 に引張特性を示 す.引張強度の算定には「鉄筋コンクリート造建物の 靭性保証型耐震設計指針・同解説」4)の式を用いた.ひ び割れ発生後の下降域は Hordijk らのモデルを用い,引 張破壊エネルギー Gfの算定には土木学会で採用されて いる文献 5)の式を用いた.図 3 に圧縮特性を示す.圧縮 特性は Parabolic で表し,圧縮破壊エネルギー Gcの算定に は中村ら6)の式を用いた.鋼管は 4 節点曲面シェル要素 表 1 試験体諸元 図 1 試験体の形状・寸法 表2 解析に用いた材料特性 とし,材料モデルには von Mises の降伏条件による弾塑 性モデルを用いた.鋼材にはひずみ硬化を考慮し,ひ ずみ硬化係数は鋼材のヤング係数の 1/100 の値とした. 鋼管とコンクリート間の引張破壊やすべりを表すため に,8 節点の界面要素を用い,材料モデルには図 4 に示 A' A-A' B B' B-B' A D D t h 1 2 400 300 1 9 6 2 0 6 2 0 1 9 5 8 2 1 9 1 9 5 8 2 加力スタブ 試験体 加力スタブ 溶接部分 圧縮 引張 (N/mm2) (N/mm2) (N/mm2) (N/mm) (N/mm) N34 A34 A71 3.90×104 66.2 2.68 71.4 0.118 (mm) (N/mm2) (N/mm2) N34 5.00 2.15×105 542 A34 5.00 2.12×105 472 A71 2.27 2.12×105 469 垂直剛性 せん断剛性 粘着力 引張強度 (N/mm3) (N/mm3) (N/mm2) (N/mm2) N34 A34 A71 0.893 充填コンクリート 適用 3.37×104 48.5 2.30 61.1 0.107 ヤング係数 圧縮強度 引張強度 破壊エネルギー 鋼材 適用 板厚 ヤング係数 降伏強度 摩擦角の tanf 2.12×103 鋼管とコンクリート間の特性 適用 ひずみ硬化係数 (N/mm2) 2.15×103 2.12×103 1.0×104 1.0×104 0.767 0.3 0 日根居 亮佑 試験体 D (mm) t (mm) D/t a/D 充填コンクリート csB(N/mm2) N/N 0 焼鈍 N34-49-10 0.10 N34-49-20 0.20 N34-49-40 0.40 A34-49-30 0.30 A71-66-10 0.10 A71-66-15 0.15 A71-66-20 0.20 A71-66-30 0.30 160 2.27 無し 有り 5.00 33.0 70.6 48.5 66.2 0.5 16562-2 す Coulomb-Friction モデルを用いた.界面要素の垂直剛性 とせん断剛性および粘着力に関しては文献 7) を参照し た.また,コンクリートと鋼管それぞれが負担してい る力を知るために,試験体高さ中央面の節点間に弾性 ばね要素を挿入して負担応力を検出した. 3.2 試験体のモデル化 図 5 に有限要素分割を示す.試験体の対称面(YZ 面) での対称性を利用して全体の 1/2 をモデル化した.フラ ンジと鋼管については,溶接による熱影響を考慮して 実験対象である試験体部分には溶接を行っていないの で,節点の共有を溶接部分と圧縮側のみとしている. 3.3 加力及び境界条件 加力は試験体の上端に軸力を載荷後,加力スタブの フランジ端に強制変位を与え試験体部分に逆対称モー メントを発生させた.強制変位は部材角 R=4/100rad. を目 指して一方向に水平力の載荷を行った.部材角 R は柱 の水平変位を柱の内法高さで除した値である.境界条 件は,対称面(YZ 面)を面ローラ支持とした. 4 . 荷重変形関係 実験と解析より得られたせん断力 Q -部材角 R 関係 を図 6 に示す.実験結果と解析結果をそれぞれ細い点 線,実線で示す.A34-49-30 試験体のみ,降伏強度が異な る鋼材を使用した 2 通りの解析結果を示しており,降伏 強度の大きい鋼材を使用した解析結果を太い点線で示 す.実線上の△点,○点はそれぞれ,内部コンクリー トに曲げひび割れ,せん断ひび割れが生じた点を,▲ 点,●点はそれぞれ,鋼管が曲げ降伏,せん断降伏し た点を,▼点は最大せん断力を示している.鋼管の降 伏の判定には,Mises の相当応力を用いた.試験体ウェ ブ中央部,試験体柱頭・柱脚部の相当応力 seが鋼管の 降伏応力に達した点で,それぞれ鋼管がせん断降伏,曲 げ降伏したと判定した. ひび割れに関しては,N34,A34 試験体において,軸 力比が大きくなるほど曲げひび割れの発生が遅れる傾 向がみられた.せん断ひび割れは軸力比関係なく,R=0.2/ 100rad. 程度で発生した.A71 試験体においては,軸力比 に関わらず,せん断ひび割れ,曲げひび割れともに R=0.2/ 100rad. 程度で発生した. 降伏に関しては,N34,A34 試験体が R=0.8/100rad. 程度 で,A71 試験体が R=0.6/100rad. 程度で鋼管がせん断降伏し, 軸力比が大きくなるほど早く曲げ降伏した.径厚比に 関わらず軸力比が 0.2 以下の試験体は,せん断降伏が曲 げ降伏よりも先行していることが分かる.最大せん断 力に関しては,軸力比が 0.2 までの試験体は R=2/100rad. 以 図5 有限要素分割 図 2 引張特性 図 3 圧縮特性 図4 クーロンの基準 0 100 200 300 400 500 600 700 800 0 1 2 3 4 Q (kN) R (×10-2rad.) N/N 0=0.1 N34-49-10 0 100 200 300 400 500 600 700 800 0 1 2 3 4 Q (kN) R (×10-2rad.) N/N 0=0.2 N34-49-20 0 100 200 300 400 500 600 700 800 0 1 2 3 4 Q (kN) R (×10-2rad.) N/N 0=0.4 N34-49-40 図 6 各試験体のせん断力Q -部材角 R 関係 0 100 200 300 400 500 600 700 800 0 1 2 3 4 Q (kN) R (×10-2rad.) N/N0=0.3 A34-49-30 0 100 200 300 400 500 600 700 800 0 1 2 3 4 Q (kN) R (×10-2rad.) N/N 0=0.1 A71-66-10 0 100 200 300 400 500 600 700 800 0 1 2 3 4 Q (kN) R (×10-2rad.) N/N0=0.15 A71-66-15 0 100 200 300 400 500 600 700 800 0 1 2 3 4 Q (kN) R (×10-2rad.) N/N 0=0.2 A71-66-20 0 100 200 300 400 500 600 700 800 0 1 2 3 4 Q (kN) R (×10-2rad.) N/N 0=0.3 A71-66-30 試験体部分 Y X Z コンクリート 界面要素 + 鋼管 + σ c/tanf ft t c f σ ε Gf/h ft Hordjik et al. σ ε fc Gc/h fc/3 Parabolic
62-3 降で,軸力比が 0.2 より大きくなると R=2/100rad. よりも早 く,R=1.45/100rad. ~ 1.83/100rad. で最大せん断力を発揮した. 全試験体において,最大せん断力発揮までの性状を解 析により再現できた.試験体によっては,最大せん断 力発揮後,解析が数値的不安定になったものもあるた め,それらの試験体に関しては解析を中断した時点ま での結果を示している. 実験結果と解析結果の比較をすると,初期剛性に関 しては,いずれの試験体においても,概ね一致してい る.解析は,N/N0と D/t が大きくなるほど,耐力低下が 顕著となる実験挙動を精度良く追跡できている.解析 は実験結果の最大耐力に関して,N 34 試験体において は,概ね一致している.一方,A34 試験体のみ,実験結 果を 2 割程度過小評価している.A34 試験体が N34 試験 体と比べて実験結果を大きく下回っている理由として, 焼鈍による熱影響が考えられる.引張試験用の材料試 験片が試験体鋼管の降伏強度よりも大きく下がってい る可能性がある.図 6 より太い点線が太い実線よりも実 験結果と近くなっていることからも試験片と試験体の 熱影響の違いがあったと考えられる. いずれの試験体においても,変形の小さい領域では, 解析結果は実験結果を精度良く追跡できていることが 分かった.大変形領域では,剛性低下の性状に関して, N34 試験体においては R=0.3/100rad. 以降解析結果が硬めの 評価になっており,A34,A71 試験体においては,R=1/ 100rad. 以降,実験結果を下回った. 5. 終局耐力 図 7 に,解析から得られた試験体の最大せん断力 Q an a をせん断力 Q -軸力比 N/N0の相関曲線上にプロットし たものを示す.図 7 の太い実線及び点線は,それぞれ CFT 指針による終局せん断耐力 Q suおよび終局曲げ耐力 Qb u を表している.図中の●点は Q anaを示しており,●点が 太い実線と点線の間に位置していることが分かる. また,図 7 の細い実線と一点鎖線は,それぞれ CFT 指 表3 解析最大耐力と実験最大耐力及び計算値との比較 針による鋼管の終局せん断耐力 sQuと充填コンクリート の終局せん断耐力 cQuを表したものである.図 7 におけ る終局せん断耐力 Q suはsQuとcQuを一般化累加して求め ている.図中の◇点と□点は,それぞれ解析における 最大耐力時に鋼管の負担するせん断力 sQa n aと充填コン クリートの負担するせん断力 cQa n aを示しており,それ ぞれに関する考察は 6 節で詳しく述べる. 表 3 に実験より得られた最大せん断力 Qmax,Qana,Qsu の値を示しており,それぞれの比も載せている.表 3 の Qmax/Qanaの比を見ると,全試験体平均で 1.09 となってお り,概ね一致している.N34 試験体は平均で 1.00,A71 試 験体は平均で 1.13 となっており,どちらの試験体も軸力 比の違いによる耐力比のばらつきは± 2% と小さくなっ ている.また,表 3 の Qan a/Qsuの比を見ると,全試験体 平均で 1.13 となっており,解析は計算値を 1 割程度上回 る結果となっていることが分かる.N34,A34 試験体に 関しては,軸力比に関わらず,Qana/Qsuの比は概ね同じ であるが,A71 試験体に関しては,軸力比が大きくなる につれて,Q ana/Qsuの比が小さくなっている.D/t=71 の円 形 CFT 柱のせん断耐力は,軸力比が 0.3 よりも大きくな ると,現行 CFT 指針の終局せん断耐力より小さくなる 可能性が予測される. 6 . 鋼管とコンクリートのせん断耐力 表 4 にsQanaと
cQanaの値を示しており,sQana,cQanaと Qana の比も載せている. sQanaとcQanaはそれぞれ,試験体高さ 図 7 せん断力Q -軸力比 N/N0関係 試験体 Qmax (kN) Qana (kN) Qsu
(kN) Qmax /Qana Qana /Qsu N34-49-10 682 698 603 0.98 1.16 N34-49-20 692 695 615 1.00 1.13 N34-49-40 659 648 571 1.02 1.13 A34-49-30 736 623 556 1.18 1.12 A71-66-10 494 428 357 1.15 1.20 A71-66-15 495 437 383 1.13 1.14 A71-66-20 494 444 403 1.11 1.10 A71-66-30 501 444 426 1.13 1.04 1.09 1.13 平均 -0.4 0 0.4 0.8 1.2 0 200 400 600 800 1000 1200 Qsu Qbu Qana sQu cQu sQana cQana N /N 0 Q (kN) N34-49 -0.4 0 0.4 0.8 1.2 0 200 400 600 800 1000 1200 Qsu Qbu Qana sQu cQu sQana cQana N /N 0 Q (kN) A34-49 -0.4 0 0.4 0.8 1.2 0 200 400 600 800 1000 1200 Qsu Qbu Qana sQu cQu sQana cQana N /N 0 Q (kN) A71-66
62-4 表4 最大耐力時の鋼管と充填コンクリートのせん断力 中央面に配置した各ばね要素の負担力を積分すること により求めた.表 4 より,最大耐力時における鋼管と充 填コンクリートのせん断力の負担割合は,N34,A34 試 験体ではおよそ 7:3,A71 試験体ではおよそ 4:6 となっ ている.いずれの試験体においても軸力比が大きくな るほど, sQanaが小さくなっている.cQanaに関しては,N34, A34 試験体においては,軸力比に関わらず概ね同じ値を 示したが,A71 試験体においては大きくなる傾向が見ら れた. 表 4 にはsQanaとcQanaをsQuとcQuで除した値も示してお り,それぞれのせん断耐力の評価精度の検討を行って いる. sQana/sQuの比は全試験体平均で 1.09 となっており, 現行 C FT 指針によって算定される鋼管の終局せん断耐 力は,解析結果を精度良く評価できている. cQana/cQuの比 は全試験体平均で 1.21 と解析結果を過小評価している. A71 試験体は 1.07 ~ 1.22 と比較的良い対応を示している. N34,A34 試験体は 1.22 ~ 1.37 と過小評価しているが,コ ンクリートのせん断力の負担割合は全体の 3 割程度と なっているため,試験体のせん断耐力には大きな影響 を与えていない.より高い精度で耐力評価するために は,充填コンクリートの終局せん断耐力を大きめに評 価する必要がある.これに関する更なる考察について は,今後の課題としたい. また,表 4 には解析における試験体最大耐力時の鋼管 の平均せん断応力(せん断力を全断面積で除したせん 断応力) saveと最大せん断応力sanaの比も載せている.現 行 CFT 指針では,鋼管ウェブ面積を図 8 に示す斜線部分, つまり全断面積の 2/3 と仮定している.表 4 よりsaveと sana の比は全試験体平均で 0.62 程度となっており,鋼管の ウェブ面積を全断面積の 2/3 とする現行 CFT 指針の仮定 は概ね妥当であることが分かる. 円形 C FT 柱の終局せん断耐力における径厚比と軸力 比の制限および,最大耐力時における鋼管と充填コン クリートの負担するせん断力について径厚比や軸力比, せん断スパン比等の関係を検討することは重要である ため,今後の研究課題としたい. 7. まとめ 本研究では,定軸力のもとで繰返しせん断力を受け る a/D=0.5 の円形 CFT 短柱を対象とした FEM 解析を行い, 得られた結果を基に以下の知見を得た. 1) 解析において,径厚比に関わらず軸力比が 0.2 以下の 試験体は全て,鋼管のせん断降伏が曲げ降伏より先 行した. 2) 実験結果と解析結果を比較すると,すべての試験体 において初期剛性は概ね一致していた.最大耐力に 関しては,A34 試験体を除き実験値と解析値は概ね 一致しており,軸力比の違いによる耐力比のばらつ きが小さかった. 3) 現行 CFT 指針によって算定される円形 CFT 柱の終局 せん断耐力は,解析によって得られる最大耐力を 1 割程度過小評価しているものの,鋼管とコンクリー トのせん断力の分担割合はほぼ同じとなり,現行 CFT 指針の耐力評価法の妥当性が示された. 図8 円形鋼管のウェブ 120° 試験体 sQana (kN) cQana
(kN) sQana /Qana cQana /Qana sQana /sQu cQana /cQu save /sana N34-49-10 476 222 0.68 0.32 1.11 1.27 0.60 N34-49-20 474 221 0.68 0.32 1.09 1.22 0.61 N34-49-40 435 213 0.67 0.33 1.05 1.37 0.60 A34-49-30 401 221 0.64 0.36 1.06 1.25 0.61 A71-66-10 183 245 0.43 0.57 1.16 1.22 0.63 A71-66-15 182 255 0.42 0.58 1.13 1.15 0.63 A71-66-20 178 267 0.40 0.60 1.08 1.12 0.63 A71-66-30 168 275 0.38 0.62 1.00 1.07 0.62 1.09 1.21 0.62 平均 <謝辞> 本解析研究は,九州産業大学・内田研究室との共同研究 として実施した.ここに記して,謝意を表する. <参考文献> 1) 2) 3) 4) 5) 6) 7) 中原浩之,津村竜次:コンクリート充填円形鋼管短柱のせん 断挙動に関する実験的研究,日本建築学会構造系論文集 Vol.79,No.703,pp.1385-1393,2014.9. 日本建築学会:コンクリート充填鋼管構造設計施工指針, 2008.10.
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