朝鮮戦争を背景に描く、4人の男女の究極の愛の物語
感動の鄭義信
三部作、第二弾
今年3月より新国立劇場では、シリーズ「鄭義信三部作」と題し、『焼肉ドラゴン』『たとえば野に 咲く花のように』『パーマ屋スミレ』と、過去に鄭義信が当劇場に書き下ろした名作群を3ヶ月連続で 上演いたします。 その第二弾となる本作は2007年初演、50年代初頭の朝鮮戦争を背景に、愛する者に愛され ない4人の男女の四角関係を、九州の港町のさびれたダンスホールを舞台に物悲しくも時に軽妙 なタッチで描いた物語です。 初演から8年、小劇場の濃密な空間へと舞台を移し、鈴木裕美のより冴え渡る緻密な演出と、 ともさかりえ、山口馬木也、村川絵梨、石田卓也をはじめとする新たなキャスト陣の熱演によって生 まれ変わる本作に、どうぞご期待ください。 【2月14日(日)チケット前売り開始 ☞ 新国立劇場ボックスオフィス 03-5352-9999】 写真・資料のご請求、取材のお問い合わせ ◎新国立劇場 制作部演劇 広報担当 藤沢 花 ◎新国立劇場 制作部演劇 制作担当 茂木令子TEL: 03-5352-5738 / FAX: 03-5352-5709
新国立劇場 2015/2016 シーズン演劇公演
鄭義信
三部作 vol.2
たとえば野に咲く花のように
作◎鄭 義信 演出◎鈴木裕美
2016年4月6日(水)~4月24日(日) 新国立劇場 小劇場◎作品について
新国立劇場では、2016年上半期に、鄭義信が日本の影の戦後史を描いた三部作 の一挙上演を企画しています。朝鮮戦争が始まった1950年代を描いた『たとえば野に 咲く花のように』、60年代半ばの九州のとある炭鉱町で炭鉱事故に巻き込まれた在日 コリアンの家族を描いた『パーマ屋スミレ』、そして万博が開催された高度経済成長に 踊る70年前後の在日コリアンの家族を描く『焼肉ドラゴン』です。鄭義信が現在「記録 する演劇」を書き続ける転機になったのが、これら新国立劇場に描き下ろした作品群 です。 『たとえば野に咲く花のように』は、2007/2008シーズンのオープニングを飾った企 画「三つの悲劇―ギリシャから」の第二弾として生まれました。鄭義信は、この作品を書 いたことで、作家として「記録する演劇」を書くことを再認識し、ここから『焼肉ドラゴン』 『パーマ屋スミレ』の執筆へと繋がっていくこととなりました。 朝鮮戦争さなかの九州のとある港町を舞台に、4人の男女の、切ないまでの究極の 「愛」の形を描いた本作。07年10月の初演から8年余の歲月を経て、鄭義信三部作連 続上演企画の第二弾として、新しいキャストを迎え、鈴木裕美のさらに進化した新演出 でお届けします。◎あらすじ
1951年夏、九州F県の、とある港町の寂れた「エンパイアダンスホール」。戦争で失 った婚約者を想いながら働く満喜。そこへ、先ごろオープンしたライバル店「白い花」を 経営する康雄と、その弟分の直也が訪れる。 戦地から還った経験から「生きる」ことへのわだかまりを抱える康雄は、「同じ目」をし た満喜に夢中になるが、満喜は頑として受け付けない。一方、康雄の婚約者・あかね は、心変わりした康雄を憎みながらも、恋心を断ち切れずにいる。そんなあかねをひた すら愛する直也。 一方通行の四角関係は出口を見つけられないまま、もつれていくばかりだった……。◎作 鄭
義信からのメッセージ (三部作について)
父と母が『焼肉ドラゴン』を初めて観劇したのは、韓国ソウル初演の千秋楽だった。そ の時、ソウルに父と母がなぜいたのか、理由は定かには思い出せない。わざわざ『焼 肉ドラゴン』を観に来たわけではなかったはずだ。ホテルまで送っていくタクシーの中 で、父が「よかったな」と、僕に唐突に語りかけた。脈絡もない父の言葉に、助手席に座 っていた僕は「うん……」と答えただけで、なにがどうよかったのか聞かなかった。父も それ以上、語ろうとはしなかった。 父は十五の歳に、教師になることを夢見て、日本に渡ってきた。しかし、その夢は戦 争が阻んだ。父は憲兵になった。 戦後、父は日本を離れ故郷に戻ろうとしたことがある。一切合財を船に積んで家族と もどもいざ出発しようとした時、母の妹が風邪をひいて寝こんでしまった。しかたなく一 便ずらしたところ、全財産を積んだ船が沈んだとの報せを受けた。 「これは、もう帰るなっちゅうことやなって、思うた……」 帰ったとしても、父の居場所はなかっただろう。父の父(つまり、僕の祖父)は、父が 憲兵であったことで、村八分になっていたからだ。 父が半世紀以上、韓国に帰ろうとしなかった理由を、僕はずいぶん大きくなってから 知った(父は決して、自分からそのことを話そうとしなかったのを、僕が無理やり聞きだ したのだ)。 『焼肉ドラゴン』に登場する焼肉屋の親父の金龍吉には、僕の父のそうした半生が滲 んでいる(国有地を買ったというのも、実際の話である)。僕が紡ぎだした物語を観て、 父はほんとうのところ、どう思ったのだろうか。あの時、タクシーの中で「よかった」と言っ たのは、芝居がよかったのか、万雷の拍手で韓国の観客に迎えられたことがよかった のか、それとも父自身の人生を肯定して、そう言ったのか……今になってはもうわから ない。父は二年前の冬、あまりにあっけなく逝ってしまった。 今回、新国立劇場で僕の三本の作品が一挙に上演される運びとなった。どの作品も 思い入れ深く、僕にとって特別な作品である。父が生きていれば、この三本全部を観 てほしいと思う。もし、観てくれたとしたら、父はあの日のように、「よかった」と言ってくれ るだろうか……。 最後になりましたが、三本の作品を上演するためにご尽力くださった新国立劇場芸 術監督宮田慶子氏、新国立劇場制作の皆様、三本の作品に関わった全スタッフたち、 全キャストたち、そして、三本の作品をこよなく愛してくださった観客の皆様に、心から 感謝とお礼の言葉を贈ります。 「ありがとうございます!」◎演出 鈴木裕美からのメッセージ
『たとえば野に咲く花のように』は、「ギリシャ悲劇のアンドロマケを下敷きに」というお 題で、鄭さんが書き下ろしてくださった芝居です。『アンドロマケ』は、トロイア戦争に敗 れて亡くなった夫を想いながら、敵国で囚われ人として生きるアンドロマケを起点に連 鎖する、4つの恋の物語です。『たとえば野に咲く花のように』は、太平洋戦争で亡くな った恋人を想って、朝鮮戦争時の日本で生きる朝鮮人の女性、満喜と、彼女を取り巻 く人々のたくさんの恋が錯綜する物語です。 以前から『アンドロマケ』については、これは悲劇なのか?むしろ喜劇じゃないの か?と思っていました。「この世は、感じる者にとっては悲劇であり、考える者にとって は喜劇である」という言葉があります。恋に落ちると人は周囲が見えなくなり、普段なら 決して言わないことを言ったり、やらないことをやらかしたりします。その恋がうまくいか なければ、なおさらやらかします。それは恋をしている当人たち=感じる者にとっては 悲劇でしょうが、端から見れば=それを観察し、考える者にとってはくだらない大騒動、 喜劇と映りがちです。 もはや戦後ではなく、戦前なのではないのかと思ってしまう現代の日本で、その後 鄭さんが書かれた二つの作品と並んで再演をさせて頂けることは、身の引き締まる思 いです。 恋と戦争、その喜劇の側面と、悲劇の側面、どちらも取りこぼすことなく丁寧にお客 様にお届けできればと思います。◎プロフィール
作◎鄭 義信
(ちょん・うぃしん)1993年に『ザ・寺山』で第38回岸田國士戯曲賞受賞。その一方、 映画に進出して、同年『月はどっちに出ている』の脚本で毎日映画 コンクール脚本賞、キネマ旬報脚本賞などを受賞。98年には、『愛 を乞うひと』でキネマ旬報脚本賞、日本アカデミー賞最優秀脚本賞、 第一回菊島隆三賞、アジア太平洋映画祭最優秀脚本賞など数々 の賞を受賞した。 新国立劇場では『たとえば野に咲く花のように―アンドロマケ―』『ア ジア温泉』の作、『焼肉ドラゴン』『パーマ屋スミレ』の作・演出を務め、 初演の『焼肉ドラゴン』で、第16回読売演劇大賞優秀演出家賞、第 12回鶴屋南北戯曲賞、第43回紀伊國屋演劇賞、第59回芸術選奨 文部科学大臣賞を受賞した。近年では『僕に炎の戦車を』『しゃば け』『さらば八月の大地』と話題作を生み出している。2014年春、紫綬褒章受賞。 演出◎
鈴木裕美
(すずき・ゆみ) 1963 年生まれ、東京都出身。日本女子大学卒業。1982 年、日本 女子大学在学中に「自転車キンクリート」を結成。「自転車キンクリー ト STORE」を含むほとんどの公演に関わり、『OUT』『第 17 捕虜収 容所』『法王庁の避妊法』『富士見町アパートメント』などを演出。現 在は小劇場から大劇場、ストレートプレイ、ミュージカル、ダンスと多 種多様なジャンルで精力的に活動中。 2011 年より個人ユニット「鈴木製作所」を立ち上げ、『ノミコムオンナ』 などを製作。 最近の主な演出作品に、『宝塚BOYS』『アンナ・カレーニナ』『トッ プ・ガールズ』『八百屋のお告げ』『サンセット大通り』『英国王のスピ ーチ』『アリス・イン・ワンダーランド』『パパのデモクラシー』『きのうみたゆめ』『フランケンシュタイン』 『夜中に犬に起こった奇妙な事件』『ブラック メリーポピンズ』『ブルームーン』『スコット&ゼルダ』 『フロッグとトード』『花より男子』などがある。第35回紀伊國屋演劇賞個人賞、第8回/第15回/第18 回読売演劇大賞優秀演出家賞、第10回千田是也賞、第33回菊田一夫演劇賞、2007年ミュージ カル・ベストテン演出家賞、第61回芸術選奨文部科学大臣新人賞を受賞。新国立劇場では、『た とえば野に咲く花のように-アンドロマケ-』『エネミイ』『ウィンズロウ・ボーイ』のほか、演劇研修所の安田や す だ(安ア ン)満喜ま き ◇
ともさかりえ
1992年、12歳でCMデビュー。95年、ドラマ『金田一少年の事件簿』で注目を浴び、以後、ドラマ、舞台、映画、CMなど幅広い分野で活躍中。近年の主な出演作は、映画『ち ょんまげぷりん』『アブラクサスの祭』『100回泣くこと』『脳内ポイズンベリー』、ドラマ『蝶々 さん』『真夜中のパン屋さん』『おやじの背中』『花子とアン』『ファーストクラス』『結婚に一 番近くて遠い女』『LIVE! LOVE! SING!』など。
主な舞台:『トランス』『SLAP STICKS』『ヴァージニアウルフなんてこわくない?』『まどろ み』『ネジと紙幣-based on 女殺油地獄-』『黴菌』『鎌塚氏、放り投げる』『鎌塚氏、振 り下ろす』『虹とマーブル』『祝女』など。 安部あ べ 康や す雄お ◇
山口馬木也
(やまぐち・まきや) 1998年、日中合作映画『葵花却』で俳優デビュー。映画、TV、舞台と幅広く活躍。近年 の主な出演作は、映画『告白』『悪の教典』『望郷の鐘』、ドラマ『剣客商売』『シングルマ ザーズ』『坂の上の雲』『JIN-仁-』『ボーダーライン』『吉原裏同心』『神谷玄次郎捕物 控』など。 主な舞台:『丹下左膳』『蜘蛛女のキス』『向日葵の柩』『四角関係』『暗くなるまで待って』 『かたりの椅子』『ジャンヌ・ダルク』『十三人の刺客』『里見八犬伝』『真田十勇士』『さらば 8月の大地』『王女メディア』など、新国立劇場では『ヘッダ・ガーブレル』に出演。 四宮し の み やあかね ◇村川絵梨
(むらかわ・えり) 2002年にダンス&ボーカルユニット「BOYSTYLE」で歌手としてデビュー。04年、映画 『ロード88~出会い路、四国へ』で初主演。05年にはNHK連続テレビ小説『風のハル カ』のヒロインに選ばれ注目を集める。以降、映画、TV、CMで活躍中。近年の主な出 演作は、映画『僕達急行‐A列車で行こう‐』『人生、いろどり』『謎解きはディナーのあとで』 『ポプラの秋』、ドラマ『わが家』『私の青おに』『ぼんくら2』など。現在、WOWOW『荒地 の恋』に出演中。 主な舞台:『歌姫』『ラスト・ファイヴ・イヤーズ』『朗読劇 私の頭の中の消しゴム』、『醒め ながら見る夢』『カワイクなくちゃいけないリユウ/シアワセでなくちゃいけないリユウ』『今 ひとたびの修羅』『next to normal』『Some Girl(s)』など。竹内た け う ち直也な お や ◇