博 士 ( 工 学 ) 伊 東 大 輔
学 位 論 文 題 名
多電極アレイと免疫螢光イメージングによる 培養ニューラルネットワーク時空間ダイナミクスの
計測および解析 学位論文内容の要旨
近年、fMRI顔どのイメージング法の発 展によルヒトの脳に関する研 究が進んでいる。また、分 子生物学的款 研究により、行動や記憶・ 学習に関連する脳内タンパクが特定され、脳機能との関連 が議論されて いる。一方、脳はニューロ ンと呼ばれる神経細胞のネットワークを基盤としており、
脳機能を理解 するためにはニューラルネ ットワークを対象とした研究が必要不可欠である。二ユー ラルネットワ ークに関する研究は、これ まで主に個体や脳のスライス標本を対象にインパルス多点 計測が行われ てきたふてれらの計測結果 により、複数のニューロンが同期して活動する「同期バー スト」が脳の 機能において重要顔役割を 果たしていることが注目されている。しかし教がら、個体 や脳スライス 標本を対象にした計測法で は、組織に損傷を与えてしまうため、発生初期から連続的 にかづ長期的 に測定するてとが不可能で ある。これらの問題は、生体外で培養したニューラルネッ トワークを研 究対象とすることにより解 決できる。適切誼培養環境を維持することにより、ニュー ロンは数カ月 から数年のオーダーで生存 し統けるため、ぱらぱらの状 態からネットワークを形成 し、発達・成 熟に至るまでの過程を連続 的に観察することが可能である。近年、この培養二ユーラ ルネットワー クにおいて生じるインパル スを計測するための手法として、多電極アレイによる計測 法が用いられ るようにぬり、培養系にお いても個体と同様に同期バーストが生じることが明らかと 誼ってきた。 多電極アレイによるインパ ルスの時間情報に着目した研究が進められる一方で、ネッ トワーク構造 、す趣わち空間情報に着目 した研究はほとんど行われてい。ニューラルネットワーク のダイナミク スを解明するためには、多 電極アレイによるインパルスの多点計測に加えて、空間情 報の計測も併 せて行うことが必要である 。ニューロンにはその構造どとに特異的教タンパクが発現 しており、こ のタンパクを抗体および螢 光色素で標識する免疫螢光染色によるイメージングが空間 情報の計測に 有効である。
以上を背景 として、本論文では多電極 アレイ法と免疫螢光染色法に よる培養二ユーラルネット ワークの時空 間ダイナミクスの計測およ び解析を目的とし、以下の三つの研究を行った。第ーに、
培養したニューロンのネットワークに対して、インパルス列(時間情報)とネットワーク構造(空間 情報)を長期 に渡って計測するためのシ ステムを構築した。第二に、多電極アレイ上の培養二ユー ラルネットワ ークに対して免疫螢光染色 を行うことにより、同期バーストに必要教ネットワークの サイズに下限 があるか否かを検証した。 第三に、培養二ユーラルネットワークが発達・成長する過
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程において、 ニューロン間の接点である シナプスに着目し、興奮性・抑制性シナプスの発現量を長 期に波り計測 し、電気的活動との比較を 行った。
本論文は全6章から構成されている。
第1章では 、本研究の背景および目的を 述べる。
第2章 で は、 脳・ 神経 科 学の現状について解説 する。まずミクロ没視点に 立ち、脳の基本素子 であるニュー ロンの構造について分子・ 細胞レベルから概説した後、マクロ顔視点から脳の解剖学 的構造とそ.の発生について述べる。次に、脳の機能について、主にニューラルネットワークを対象 とした研究の 現状に触れ、本研究が対象 とする培養二ユーラルネットワークについて述べる。最後 に、多電極ア レイを用いた研究の現状と 問題点について説明する。
第3章では 、培養二ユーラルネットワー クの時空間ダイナミクスを 計測するために構築した実験 システムにつ いて説明する。ぱらばらの 単体ニューロンがネットワークを形成し、発達・成熟に至 る過程を長期 的に計測するために、多電 極アレイをべースとした並列計測系を新たに構築する。さ らに、免疫蛍 光染色によるイメージング 法を適用することにより、多電極アレイ上におけるネット ワーク構成要 素の配置・局在の同定法を 確立する。最後に、構築したシステムを用いたインパルス 伝搬経路の同 定法について述べる。
第4章では、第3章 で構築したシステムを用いた 計測および解析を行うこと により、同期バース ト 現象が生じるため に必要顔ニューロン数に下限 があることを実験的に示す 。異茨る初期密度で ニューロンを 分散培養し、1カ月超に渡る 多電極アレイを用いたイン パルス多点計測を行うことに より、一定密 度以下では同期バーストが 発生しをいことを明らかにする。さらに、免疫螢光染色法 によるイメー ジング結果から、同様に一 定密度以下ではネヅトワークが形成され顔いことを示す。
インパルス計 測結果および免疫螢光イメ ージング結果を統合することにより、同期バーストは一定 の 数 の ニ ュ ー ロ ン が 生 存 し て い る 条 件 下 で 初 め て 生 じ る 現 象で ある こと を 明ら かに する 。 第5章では、培養し たニューロンがネットワー クを形成する過程に焦点を当 てる。1力月超の培 養において、 多電極アレイを用いて電気 的活動を計測することにより、発火率・同期バースト率と もに初期の増 加後飽和傾向があることを 示す。さらに同培養期間において、ネットワーク構成要素 のうちニュー ロンおよび興奮性・抑制性 シナプスの免疫螢光染色によるイメージングを行い、これ ら構成要素の 密度変化を定量的に計測す る。ニューロン密度が減少する一方で、興奮性・抑制性シ ナプスは初期 の増加後、飽和傾向がある ことを明らかにする。これらの結果から、同期バーストが シナプス密度 と関係性があることを示す 。
最後 に第6章 では 、本 研 究で得られた結果につ いてまとめ、その考察と今 後の展望について述 べる。
本研究で独 、培養ニューラルネットワ ークに対して、多電極アレイによるインパルス多点計測法 と免疫螢光染 色によるイメージングを併 用し、長期間計測およびデータ解析を行うことにより新た 顔知見を得た 。本研究で得られた結果を もとにして、脳神経系機能の基本メカニズムの解明および 工学への応用 が期待される。
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学位論文審査の要旨 主査 教授 郷 原一壽 副査 教授 折 原 宏 副査 准教授 内田 努 副査 教授 大 橋俊朗
学 位 論 文 題 名
多電極アレイと免疫螢光イメージングによる 培養ニューラルネットワーク時空間ダイナミクスの 計測および解析
近年、flvIRI極どのイメ ージング法の発展によルヒトの脳に関する研究が進んでいる。また、分 子生物学的教研究により、 行動や記憶・学習に関連する脳内タンパクが特定され、脳機能との関連 が議論されている。一方、 脳はニューロンと呼ぱれる神経細胞のネットワークを基盤としており、
脳機能を理解するためには ニューラルネットワークを対象とした研究が必要不可欠である。ニュー ラルネットワークに関する 研究は、これまで主に個体や脳のスライス標本を対象にインパルス多点 計測が行われてきた。これ らの計測結果により、複数のニューロンが同期して活動する「同期バー スト」が脳の機能において 重要顔役割を果たしていることが注目されている。しかしをがら、個体 や脳スライス標本を対象に した計測法では、組織に損傷を与えてしまうため、発生初期から連続的 にかつ長期的に測定するこ とが不可能である。これらの問題は、生体外で培養したニューラルネッ トワークを研究対象とする ことにより解決できる。適切を培養環境を維持することにより、二ユー ロンは数力月から数年のオ ーダーで生存し続けるため 、ばらぱらの状態からネット ワークを形成 し、発達・成熟に至るまで の過程を連続的に観察することが可能である。近年、この培養二ユーラ ルネットワークにおいて生 じるインパルスを計測するための手法として、多電極アレイによる計測 法が用いられるようになり 、培養系においても個体と同様に同期バーストが生じることが明らかと 教ってきた。多電極アレイ によるインパルスの時間情報に着目した研究が進められる一方で、ネッ トワーク構造、す教わち空 間情報に着目した研究はほとんど行われてい。二ユーラルネットワーク のダイナミクスを解明する ためには、多電極アレイによるインパルスの多点計測に加えて、空間情 報の計測も併せて行うこと が必要である。ニューロンにはその構造どとに特異的をタンパクが発現 しており、このタンパクを 抗体および螢光色素で標識する免疫螢光染色によるイメージングが空間 情報の計測に有効である。
以上を背景として、本論 文では多電極アレイ法と免 疫螢光染色法による培養ニュ ーラルネット ワークの時空間ダイナミク スの計測および解析を目的とし、以下の三つの研究を行った。第一に、
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培養したニューロンのネットワークに対して、インパルス列(時間情報)とネットワーク構造(空間 情報)を長 期に渡って計測するための システムを構築した。第ニに、多電極アレイ上の培養二ユー ラルネット ワークに対して免疫螢光染 色を行うことにより、同期バーストに必要教ネットワークの サイズに下 限があるか否かを検証した 。第三に、培養二ユーラルネットワークが発達・成長する過 程において 、二ユーロン間の接点であ るシナプスに着目し、興奮性・抑制性シナプスの発現量を長 期に渡り計 測し、電気的活動との比較 を行った。
本論文は 全6章から構成されている。
第1章で は、本研究の背景および目的 を述べる。
第2章で は、 脳・ 神経 科 学の現状について解 説する。まずミクロ極視点 に立ち、脳の基本素子 であるニュ ーロンの構造について分子 ・細胞レベルから概説した後、マクロ顔視点から脳の解剖学 的構造とそ の発生について述べる。次 に、脳の機能について、主にニューラルネットワークを対象 とした研究 の現状に触れ、本研究が対 象とする培養ニューラルネットワークについて述べる。最後 に、多電極 アレイを用いた研究の現状 と問題点について説明する。
第3章で は、培養ニューラルネットワ ークの時空間ダイナミクス を計測するために構築した実験 システムに ついて説明する。ばらばら の単体ニューロンがネットワークを形成し、発達・成熟に至 る過程を長 期的に計測するために、多 電極アレイをべースとした並列計測系を新たに構築する。さ らに、免疫 螢光染色によるイメージン グ法を適用することにより、多電極アレイ上におけるネット ワーク構成 要素の配置・局在の同定法 を確立する。最後に、構築したシステムを用いたインパルス 伝搬経路の 同定法について述べる。
第4章では、第3章で構築したシステムを用い た計測および解析を行うこ とにより、同期バース ト 現象が生じるた めに必要教ニューロン数に下 限があることを実験的に示 す。異趣る初期密度で ニューロン を分散培養し、1カ月超に渡 る多電極アレイを用いたイ ンパルス多点計測を行うことに より、一定 密度以下では同期バースト が発生し顔いことを明らかにする。さらに、免疫螢光染色法 によるイメ ージング結果から、同様に 一定密度以下ではネットワークが形成されをいことを示す。
インパルス 計測結果および免疫螢光イ メージング結果を統合することにより、同期バーストは一定 の 数 の ニ ュ ー ロ ン が 生 存 し て い る 条 件 下 で 初 め て 生 じ る 現 象で ある こ とを 明ら かに する 。 第5章では、培養 したニューロンがネットワ ークを形成する過程に焦点を 当てる。1カ月超の培 養において 、多電極アレイを用いて電 気的活動を計測することにより、発火率・同期バースト率と もに初期の 増加後飽和傾向があること を示す。さらに同培養期間において、ネットワーク構成要素 のうちニュ ーロンおよび興奮性・抑制 性シナプスの免疫螢光染色によるイメージングを行い、これ ら構成要素 の密度変化を定量的に計測 する。ニューロン密度が減少する一方で、興奮性・抑制性シ ナプスは初 期の増加後、飽和傾向があ ることを明らかにする。これらの結果から、同期バーストが シナプス密 度と関係性があることを示 す。
最後に第6章では、本研究で得られた 結果についてまとめ、その 考察と今後の展望について述べ ている。
これを要 するに、本研究では培養二 ユーラルネットワークに対して、多電極アレイによるインパ ルス多点計 測法と免疫螢光染色による イメージングを併用し、長期間計測およびデータ解析を行う ことにより 新た誼知見を得たものであ り、応用物理学に対して貢献するところ大教るものがある。
よ っ て 著 者 は 、 北 海 道 大 学 博 士 ( 工 学 ) の 学 位 を 授 与 さ れ る 資 格 あ る も の と 認 め る 。
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