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学位論文審査の要旨 主査

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Academic year: 2021

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博 士 ( 水 産 学 ) 濱 田 武 士

学 位 論 文 題 名

ホタテガイ養殖業の機械化に関する生産管理学的研究 学位論文内容の要旨

我が国の重点 的に取り組むべき漁業振興施 策のーっに、『漁業就業者の減少・高齢化に対応 する ため の 省力化技 術の開発、及び魚価安によ る経営危機を克服するための 低コスト化技術 の開発』 が挙げられている。しかし、 開発された個別の技術を生 産現場に適用する際には、

漁業種類・対象魚種・地域特性・経営規模等を考慮した、個々の経営体にとって最適な生産体系 としての「漁業技術」の導入こそが望まれる。

こ の よ う な 総 合 的 な 視 点 で 省 力 化 技 術 の 導 入 を 図 る た め に は 、 生 産 活 動 全 般 を シ ス テ ム 学 的 に 捉 え て 分析 を行 い、 そ の改 善施 策を 求め て いく こと が肝 要 であ る。 この た め に は 、 漁 業 技 術 の 導 入 手 法 を 生 産 管 理 学 的 な 視 点 か ら 新 た に 構 築 し て い く こ と の で き るIndustrial Engineerng(I.E. )の 概念 の適 用 が有 効で ある 。

本論 文は、大量生産技術が確立 したホタテガイ養殖業を研究 対象として、I.E.の概念と 手 法 を、低コスト化を可能とす る漁業技術の理論とその評価 法の構成に応用し、高機能化・高価 格化した 当該漁業の機械化に対する 指針を示したものである。

ホ タテ ガイ 養殖 で は、1980年代 以降から飛 躍的な増産が行われた結果、 生産の大規模化 に伴う経 費の高騰と単価の急落を招き 、漁業体の経営収支は近年著しく悪化している。このよ うな 状 況を 踏ま えて 、第1章 では、大規模化し た当該養殖経営の生産技術に 関わる経済的諸 問 題を 、各 種の調査資料を 用いて明らかにした。養殖 労働の現状と機械化による投 資動向の 分析 によ っ て、当該漁業の 経営改善に最も効果的な対 処は、労働力配分と労働負荷 に極端な 偏りが見られる「分散 ・耳吊り作業」の省力化と低 コス卜化に求められることが見出された。

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総体 的に 向上 させることはで きず、また、設備管理や作 業スケジュール管理などの適 正化に も配慮しなけれぱな らなぃことが示された。本 章で行った生産技術上の実態分析から、近年進 め ら れて いる 分散 ・耳 吊り作 業の機械化に関する解析視点 が定まったことを受け、そ の具体 的 理 論と 生産 の改 善方 法を、 次章以降のI.E.の概念を用い た諸分析によって明らかに した。

  第2章で は 、低 コス ト化 を必 要 とす る分 散・ 耳吊り作業 の分析を行った。生産実態 を定量 的 に把握するために、I.E.で用 いられる作業研究を応用し て、当該作業の工程分析と作業要素 時 間の標準化を行った。次に、 これらの計測値を用いて、 生産ラインの適正状態を、「編成効 率 」と「サイクル夂イム」を指 標とするラインバランシン グ理論から評価した。分析の結果、

想 定 可能 とな る複 数の 作業シ ステムの比較により、高生産 率かつ高効率となる作業シ ステム が 一 意に 決定 でき ると ともに 、ステーション並列化数と同 義である最適作業者配分数 を推定 可 能であることも判った。しか し、ラインバランシング法 は直列型生産ラインへの適用を前提 と し た手 法で ある ため 、生産 実態に即した想定可能な複数 の並列作業システムを評価 する場 合 に は、 編成 効率 だけ ではな く経済性に関する尺度も付加 する必要のあることも示さ れた。

こ の点は、第3章の改良モデル で提案し直した。

  第3章で は 、第2章で 扱 った 編成 効率 の 概念 に加 え、 作業 者 と機 械設 備の配分数が 異なる 作 業システムの評価を生産コス ト面から行うための新たな 尺度「びふ」を導入した。U,oは編 成 効率を含む単位労務費と単位 機械設備費の和として定義 される。このため本評価指標は、機 械 設 備費 と作 業者 の遊 休時間 当りの損益が同等に評価でき る特徴を備えており、生産 効率と 生 産 性が 個々 に議 論さ れてい た従来の方法に比して、生産 システムの特陸を統一的に 評価で き る尺度構成となっている。こ の結果、第2章で示した想定 可能な複数の作業システム に対す る 評価では、Pintoらの評価指 標を用いた場合に比して、機 械設備数が大幅に少ない最 適作業 シ ステムの特定に成功した。UWalの特徴は、作業効率と生 産経費を統一的に評価可能な尺度で あ ることと、当該作業のように短期間で終了する漁業生産に特有な機械・設備の「価値」が、既 存 の評価尺度よりも精度良く推 定できる点にある。特に後 者の特徴は、ホタテガイ養殖業の経 営 管 理課 題と なっ てい る「機 械設備の過剰投資」の状態を 、生産性を含んだ型で表現 できる

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ことを 示して おり、生産設計の際に有カな情報として用いることが可能である。

第4章 では 、 第1章 で当該 養殖業 の低コ スト化 対策の 一案で あると 論じた 自動耳吊 り機の 導入を 想定し 、その採 算性の 評価を 試みた 。解析 では、 収支勘 定から見た自動耳吊り機導入

による 生産経費 の節減 額のシ ミュレ ーショ ンを行 った。 その結果、自動耳吊り機の導入に伴 う諸 経費の 節減効 果およ び生産規模Sljの最適導入台数を、定量的に定められることが示され た。ま た、自動 耳吊り 機の償 却費を 調達資 金の償 還期間 と利息から求められる年平均投資額 として 見積も ったた め、償 還期間 が短期 間であっ た場合、この計算モデルでは生産コストの 節減額 が過小 評価され ること もわか った。 このこ とから 償却費 の年平均額の算定では、償還 期間の 代わり に実質 的な機 械耐用 年数を 用いる 必要の あること が考察された。さらに、機械 稼働時 間の増 減によ って生 産経費 の節減 効果は 大きく 変化し、 特に、機械稼働時間を可及的 に 延伸す れば、 生産軽費 の節減 効果が 拡大さ れるこ とも判 った。しかし一方では、分散・耳 吊り作業 には「作業適期」といった時間上の制約があり、生物生産面から規定される機械稼働 時間の 上限値 が厳存 する。 このた め、こ の収支 計算モデ ルを使 って適正に機械化の採算性評 価を行 うために は、機 械稼働 時間を 分散・ 耳吊り 作業の 作業適 期期間内に収まる値に設定す ること が必要条 件とな る。

第5章では 、前章 の結果 を踏ま えて、 機械類の 耐用年 数を理 論的に 推定で きるMAPI法 と、

分散・耳 吊り作 業の適 期条件 を用い た採算 性の評 価を行 った。現 在、作業適期は増養殖学的 成果から は求め られて いない ため、 作業期 間の長 短と採 算性との 関係を帰納的に定めること はできな い。本 章では、「機械の劣化度合い」を価値尺度で表すMAPI法の「稼働劣性度」と、

生産経費の節減が可能な機械による「処理量」、および「機械稼働時間」の関係を理論的に導き、

生 産現場 の計測結 果を当 てはめ て、こ れらの 定量的 関係を 推定し た。この評価式からは生産 経 費飾の 削減を可 能とす る稼働 劣性度 範囲が 算出さ れるた め、こ の結果、当該機械の導入に よ る経営 面での 機械化 が存立 する条 件が求 められる 。北海道噴火湾の養殖漁家のような大規 模経 営体に 対する 試算で は、現状 では、 機械化 は成立 してい るものと結論づけられる。しか し 、ホタ テガイ の生殖 巣の成 熟期を 作業適期 間とし た場合、その機械稼働期間は生産現場で

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の実作業期間よりも僅少となるために、機械化が成立する稼働劣性度範囲は狭隘化してしま う。この場合においても、機械化を成立させるには、生産性の向上よりも漁業者の設備管理 能カを高めることが重要となると推察された。

本論文は、以上のような構成で、現在進行しつっある当該漁業の機械化が漁家経営の改善 にっながるための諸条件が、I.E.の概念と諸手段を用いれば定量的・理論的に表せることを明

らかにしたものである。本論の最終的な知見によれば、大規模経営体であっても作業適期が 短期間に限られれば、機械化の経済的な成立が極めて難しくなる状況にあることが推測され る。しかしながら作業適期を決める増養殖学的な知見は乏しく、機械化の是非を問うために は生産特性上の分析と生物学的な研究の進展を待たなければならない。生産の特殊陸を踏ま えた機械化の評価方法を導くためには、機械処理によるホタテガイの生理的消耗と育成不良 およびへい死などに関する実証的研究の実施も望まれる。

  冒頭で述ぺた昨今の漁業施策にも取り上げられているように、我が国の漁業には省力化技 術・低コスト化技術の開発と適用が求められている。しかし、高度な技術が開発されても技 術導入が失策すると漁業経営は破綻してしまう。漁業経営を改善し得る省力化技術の開発・

導入を進めるために、今後もI.E.などの生産管理技術に関わる手法を漁業生産に広く適用す る必要があろう。

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学位論文審査の要旨 主査

副査 副査 副査 副査 副査

教授 教授 教授 助教授 助教授 助教授

橋 本    忍 梨 本 勝 昭 飯 田 浩 二 古 林 英 一 見 上 隆 克 山 下 成 治

学 位 論 文 題 名

ホタテ ガイ養殖業の機械化に関する生産管理学的研究

我 が 国 の 重 点 的 に 取 り 組 む べ き 漁 業 振 興 施 策 の ー っ に 「 漁 業 就 業 者 の 減 少 ・ 高 齢 化 に 対 応 す る た め の 省 力 化 技 術 の 開 発 、 お よ び 魚 価 安 に よ る 経 営 危 機 を 克 服 す る た め の 低 コ ス ト 化 技 術 の 開 発 」 が 挙 げ ら れ て い る 。 し か し 開 発 さ れ た 個 別 の 技 術 を 生 産 現 場 に 適 用 す る 際 に は 、 漁 業 種 類 ・ 対 象 魚 種 ・ 地 域 特 性 ・ 経 営 規 模 等 を 考 慮 し た 、 個 々 の 経 営 体 に と っ て 最 適 な 生 産 体 系 と し て の 「 漁 業 技 術 」 の 導 入 こ そ が 望 ま れ る 。

こ の よ う な 総 合 的 な 視 点 で 省 力 化 技 術 の 導 入 を 図 る た め に は 、 生 産 活 動 全 般 を シ ス テ ム 学 的 に 捉 え て 分 析 を 行 い 、 そ の 改 善 施 策 を 求 め て い く こ と が 肝 要 で あ る 。 こ の た め に は 、 漁 業 技 術 の 導 入 手 法 を 生 産 管 理 学 的 な 視 点 か ら 新 た に 構 築 し て い く こ と の 出 来 る イ ン ダ ス ト リ ア ル エ ン ジ ニ ア リ ン グ (IE)の 概 念 の 適 用 が 有 効 で あ る 。

  本 論 文 で は 、 ホ タ テ ガ イ 養 殖 業 を 取 り 上 げ 、 そ の 養 殖 業 に お け る 機 械 化 に 関 す る 生 産 管 理 学 的 研 究 を 行 っ て い る 。 こ れ に は 、 ま づ 第 一 に 生 産 コ ス ト 増 大 の 原 因 と な っ て い る 「 分 散 ・ 耳 吊 り 作 業 」 に 注 目 し 、 申 請 者 は 、 こ の 作 業 分 析 に 上 記IEの 概 念 を 基 と し た 手 法 を 導 入 し 、 (1) 「 編 成 効 率 」 と 「 サ イ ク ル タ イ ム 」 を 評 価 指 標 と す る ラ イ ン バ ラ ン シ ン グ 理 論 に よ る 「 分 散 ・ 耳 釣 り 作 業 」 の 効 率 評 価 、 お よ び(2)作 業 シ ス テ ム の 作 業 者 と 機 械 設 備 の 最 適 配 分 法 、 等 に つ い て 考 察 を 行 っ て い る 。

続 い て 、 機 械 化 の 採 算 性 評 価 お よ ぴ 機 械 化 の 成 立 条 件 を 理 論 的 に 導 出 す る た め に 、 機 械 類 の 耐 用 年 数 を 理 論 的 に 推 定 で き るMAPI法 と 、 分 散 ・ 耳 吊 り 作 業 の 適 期 を 用 い た 採 算 性 の 評 価 を 行 っ て い る 。 作 業 期 間 の 長 短 と 採 算 性 と の 関 係 を

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る「処理量」、および「機械稼動時間」の関係を理論的に導き、生産現場の計 測結果を当てはめて、これらの定量的関係を推定している。この評価式から具 体的に生産経費節減を可能とする稼動劣勢度範囲が算出されるため、当該機械 の 導入に よる 経営 面で の機械化が成立する条件が求められることになる。

申請者が行った検討結果においては、北海道噴火湾の養殖漁家のような大規 模経営体に対する試算では、現状機械化は成立しているものと結諭っけられる。

しかし、ホタテガイ生殖巣の成熟期を作業適期間とした場合、その機械稼動期 間は生産現場での作業期間よりも僅少となるために、機械化が成立する稼動劣 勢範囲は狭隘化してしまう。この場合においても、機械化を成立させるために は、生産性の向上よりも漁家の設備管理能カを高めることが重要としている。

本論文ではホタテガイ養殖業の最も労働負荷の大きい分散・耳吊り作業工程 の作業分析に関する研究を行なっている。申請者は、この作業システムの分 析・評価に従来は工業生産工程の分析評価に用いられてきたインダストリア ル・エンジニアリング(IE) の概念を基とした手法を漁業生産作業工程である当 該作業の検討に導入することにより総合的にシステムの分析・評価を行ってい る。しかし、本来、工業生産工程の分析・評価を目的に発展してきたI .E の理 論はそのままでは、漁業作業に特有な複数かっ複雑な作業の流れを含む当該作 業の分析・評価には適当ではなく全く新しい考え方に基づく理論の再構築が必 要であった。これに対して申請者は、新しい評価指標(Utotal) を定義すること により,「作業者と機械設備の最適分配法」を決定することによっている。こ れにより、想定可能な複数の作業システムの間の分析・評価を数量的に行なう ことが出来、「労務費と機械設備費の和が最小になるシステム」を決定出来る 成果を収め得た。更に、機械設備への投資により生産コスト削減への効果のあ りかたの評価「機械化の採算性評価」およぴ「機械化の成立条件」の検討を 行っている。これに関して、申請者は、噴火湾森町、鹿部町などのホタテガイ 養殖業者の作業現場の実作業分析データ収集を精力的に行いその実データに基 づく上記評価分析を行い、具体的な機械化採算性評価、および機械化の成立条 件の指針を与えると言う成果もあげている。

以上の各点から審査員一同は本研究の申請者が博士(水産学)の学位に十分

の資格を有するものと半l した。

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