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小児ヒトメタニューモウイルス感染症の ウイルス学的、臨床学的検討

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Academic year: 2021

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(1)

博 士 ( 医 学 ) 海 老 原    敬

学 位 論 文 題 名

小児ヒトメタニューモウイルス感染症の ウイルス学的、臨床学的検討

学位論文内容の要旨

く緒言冫

  2001年 、van den Hoogenらに よルヒ トRSウイル ス(hRSV)と同 様の症 状を呈する28人の小児の 鼻 咽頭から 新しいウ イルス、ヒトメタニューモウイルス(human metapneumovrus: hMPV)が分離さ れ た。その 後、いく っかの 国でhMPV感 染症の報 告が相次 ぎ、小 児だけで なく成人にも感染する community‑acquired respiratory virusのーっと報告された。そこで、我々は、日本においてhMPV感 染症が存在するかどうかを調べるために、日本人血清における抗hMPV抗体保有率を調べた。また、

hRSVとhMPVの初感 染はどち らが早い のかを 確かめる ために、小児(5歳以下)における抗hRSV抗 体 保有率と 抗hMPV抗体 保有率を 比較し た。次に 小児hMPV感 染症の臨 床像を 把握するためにhMPV 感染症の診断をウイルス分離、reverse‑transcription polymerase chain reaction (RT‑PCR)法、血清学 的診断にて行い、その臨床像を明らかにした。最後に迅速診断の試みとして鼻汁中のhMPV感染細胞を 間接螢光抗体法にて検出するアッセイを行った。

く材料と方法冫

  142例 の 血清 ( 年 齢1ケ 月 〜35歳 )を2003年3月〜4月、北 見赤十字 病院にて 収集し 抗hMPV抗 体を間接螢光抗体法で測定した。間接螢光抗体法は継代3代目猿腎細胞にhMPVを感染させたものを抗 原 に用い、10倍未満 のものを 陰陸とし た。小 児100例の血清(年齢1ケ月〜5歳)を2001年〜2002 年 にかけて 、苫小牧 王子病院にて収集し、抗hMPV抗体を間接蛍光抗体法で、抗hRSV抗体を中和抗 体法にて測定した。抗hRSV中和抗体測定法にはLong strainを使用し、4倍未満のものを陰陸とした。

  山口、札幌、広島において、658例の鼻咽頭スワブを637例の気道感染症小児より収集し、RT‑PCR 法を行った。RT‑PCR法で陽陸であった患児16例から21例の検体を追加収集した。山口では、外来に お い て 、2000年6月 〜2002年9月の間 、246例(年齢10月〜13歳 )の患児 より、 札幌では 、2002 年9月‑‑2003年5月の間、hRSVとインフルエンザウイルスの迅速診断が陰性であった患児353例(入 院306例 , 外来47例 ,年齢1ケ月 〜12歳)よ り、広 島では、hMPVの流行 期であっ た2003年3月〜

5月において、hRSVとインフルエンザウイルスの迅速診断が陰lltでかつ、ウイルス分離で陰性だった 38例(年齢8ケ月〜5歳)の患児より検体を収集した。268例の鼻咽頭スワブを用い、継代3代目猿腎′

細 胞にてウ イルス分 離を行った。血清はRT‑PCR法でhMPV陽陸の26例の患児より、急陸期に26例、

回復期に10例を収集した。血清抗hMPV‑IgG抗体、‑IgM抗体は間接螢光抗体法で測定し、それぞれ、

10倍未満を陰陸とした。

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  2004年 の4月 〜5月 に か け て 、気 道感 染症 の ため に入 院し た48例 の患 児か ら鼻 咽 頭ス ワブ を2検体 ず つ 収 集し た。 一 方の 検体 はRT‑PCR法 にて 、も う一 方 は間 接螢 光抗 体法 に てhMPVの 検出 を行 っ た。

ス ワ ブ で 採 取 し た 上 皮 細 胞 に て塗 抹標 本を 作 成し 、抗hMPVマウ ス モノ クロ ーナ ルIgG抗 体を 用 いた 間接螢光抗体法にてhNn)v抗原の検出を行った。

  全ての検体は両親に説明した上で、同意を得てから収集した。

く結果冫

  日 本 人142例 に お け る 抗hMPV抗 体 保 有 率 は 全 体 で72.5(102/142)だ っ た 。 抗hMPV抗 体 保 有 率 は60月 未満 で60%(6lO) だっ た が、6120月 で は33.3%(3/17)と 一度低下し、その後は年齢 の増加に伴い上昇し10歳以上で全例が陽陸となった。

  一 般 的 に 母 親 か ら の 移 行 抗 体 が 存 在 す る4ケ 月 未 満 で は 抗hMPV抗 体 保 有 率 と 抗hRSV抗体 保 有率 に 有 意 差 を 認 め な か っ た 。40月 か ら1歳 で 抗hMPV抗 体 保 有 率 はn% (3/27) で あ り 、 抗hRsV抗 体 保有 率の48%(13/27)と比較し 有意に低かったや=0.006byFishe´seXacttest)。1歳以上の各年齢群 における抗体保有率に有意差を認めなかった。

  I汀 .PCR法 にて 、637例 中57例(8.9%)からhMPVが検出された。hMPV陽 性率は、山口では0.8%、

札幌では8.8%、広島では63.2%であった。臨床診断はWheeZybronchitis(36.9%)、上気道炎(26.3%)、

気管 支炎(22.8%)、肺炎(14.0%)であった。ウイルス分離を行った268例中7例(2.6%)、RT ̄PCR 法 でhMPV陽 陸 で あ っ た22例 中7例(31.8% ) から ウイ ルス 分離 が され 、RT―PCR法 と比 べ感 度 が低 か っ た 。hMPV陽 陸 患 児 よ り 収 集 し た10例 の ペ ア 血 清 で 抗hMPV‐IgG抗 体を 測定 し たと ころ 、4倍以 上 の有 意 な上 昇を 認め た のはlO例中8例(80.O%)であった。急性期の血清26例中14例(53.8%)は 抗 心 佃VIgG抗 体 を 認 め 、hMPV再 感 染 と 示 唆 さ れ た 。 急1生期 の 血清26例 中22例 (84.6% ) は抗 hMPVIgM抗 体 陽 陸 で あ っ た が 、 コ ン ト ロ ー ル 血 清loo例 中ll例 (11% ) が 抗bMPVIgM抗 体 陽性 で あり 特 異度 が低 かっ た 。hMPV57株はF蛋白遺伝 子による系統樹解析により 、大きくニつのグ′レープ に 分カ ゝれ、その中 でさらにニつのサブグループ に分かれた。2003年、3月〜5月に札幌、広島において bMPV(2グループの株)が同時期 に流行していた。hMPVのグ′ レープ間で入院率に有意差を認めなった。

発 症 か ら12週 間 はRTPCR法 でhMPV陽 陸 だ っ た 。 潜 伏 期 か ら 発 症 ま で46日 と 推定 しう る 症例 があった。

  hMPV感 染症 の迅 速診 断 とし て、 初め て蛍 光 抗体 法を 報告 した 。RTPCR法と 比較した場合、間接螢 光抗体法の感度は73.3%、得異度は97.0%であった。

く考察冫

  日 本 に お い て は10歳 以 上 で 抗hMPV抗 体 保 有 率 がloo% に な っ た が 、 日 本 に お け る 抗hMPV抗 体 保有 率はオランダでの抗体保有率 (6ケ月〜1歳:25%、1〜2歳:55%、2〜5歳:70%、5歳以上:l00%)

と ほ ぼ 同 様 で あ っ た 。 ア ジ ア で初 めてhMPV感 染症 の存 在を 明ら か にし た。 血清 学 的にllMPVM浴V より初感染が遅かった。

  小 児 に お け るhMPV感 染 症 は 幅 広 い 臨 床 像 を 取 る こ と が 明ら かに なっ た 。hMPVの 陽陸 率は 、 外来 で 他 の ウイ ルス を 除外 せず に検 体を 収 集し た山 口で はO.8%と 低く 、hRSVとbRSVの みを 除外 し た札 幌で は8.8%、他のウイルスを除 外し、流行期のみ検体を収集した広島では63.2%と高かった。血清学的 診 断 、 ウ イ ル ス 分 離 と 比 較 し てRT.PCR法 が最 も鋭 敏 な検 査法 だっ た。 心 佃Vvirusshedd血gの持 続 期 間 は1〜2週 間 であ った 。hMPVの グ ルー プ間 で重 症 度に 有意 差を 認め な かっ た。 急性 期の 血 清抗

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hMPV‑IgG抗体は初感染か再感染かの区別に有用であった。

  一般的にウイルス感染症の迅速診断には酵素免疫測定法と螢光抗体法が用いられる。今回我々の研究 により、蛍光抗体法を用いたhMPV診断は、迅速かつ有用であった。hMPV感染症の幅広い臨床像を 明らかにし、適切な治療を行うためには、臨床応用可能な酵素免疫測定法による迅速診断法の確立が急 務である。

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学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

小児ヒトメタニューモウイルス感染症の ウイルス学的、臨床学的検討

  2001年 、 ヒ トRSウ イル ス(hRSV)と同 様の 症状 を呈 する28人 の小 児の 鼻 咽頭 から ヒ 卜メ タニ ュー モウ イル ス(human metapneumovirus: hMPV)が 分離 され た。 申請 者は、

日本 にお いてhMPV感染 症が 存在 する かど うか を調 べるために、日 本人血清における抗 hMPV抗 体 保 有 率 を 調 べた 。ま た、hRSVとhMPVの 初感 染は どち らが 早い の かを 確か め るた めに 、小 児(5歳 以 下) にお ける 抗hRSV抗 体保 有率 と抗hMPV抗体 保有 率を 比較し た。次に小児hMPV感染症の臨床像を把握するためにhMPV感染症の診断をウイルス分離、

reverse‑transcription polymerase chain reaction (RTーPCR)法、血清学的診断にて行い、そ の臨床像を明らかにした。最後に迅速診断の試みとし て鼻汁中のhMPV感染細胞を間接螢 光抗体法にて検出するアッセイを行った。

  142例 の血 清( 年齢1ケ月 〜35歳) にて 抗hMPV抗 体を間接螢光抗 体法で測定した。間 接螢 光抗 体法 は継 代3代 目猿腎細胞にhMPVを感染させたものを抗原 に用い、10倍未満の もの を陰 性と した 。日 本人142例における抗hMPV抗体保有率は全体 で72.5%(102/142) だ っ た 。10歳 以 上 で は抗hMPV抗体 が全 例陽 陸で あり 、10歳ま でにhMPVの 初感 染が 起 こ る こ と が 明 ら か に なっ た。 小児100例の 血 清( 年齢10月 〜5歳) にて 、 抗hMPV抗 体 を間 接蛍 光抗 体法 で、 抗hRSV抗 体を 中和 抗体 法に て測定した。抗hRSV中和抗体測定法 にはLong strainを使 用 し、4倍 未満 のも のを 陰性 と した 。40月か ら1歳で 抗hMPV抗体 保有率は11%(3/27)であり、抗hRSV抗体保有率の48%(13/27)と比較し有意に低かった。

hMPV初 感 染 は hRSVと 比 べ て 遅 い こ と が 血 清 学 的 に 明 ら か に な っ た 。   山口、札幌、広島において、658例の鼻咽頭スワブを637例の気道感染症小児より収集 し、RT‑PCR法 を行 った 。山 口で は、 外来 にお いて 、2000年6月〜2002年9月 の間、246 例 ( 年 齢10月 〜13歳 ) の 患 児 よ り 、 札 幌 で は 、2002年9月 〜2003年5月 の 間 、hRSV とイ ンフ ルエ ンザ ウイ ルス の迅 速診 断が 陰性 であ った患児353例(入院306例,外来47 例 , 年 齢10月 〜12歳 )よ り、 広島 では 、hMPVの 流行 期で あっ た2003年3月〜5月に お いて、hRSVとインフルエンザウイルスの迅速診断が陰性でかつ、ウイルス分離で陰性だっ     ‑ 39−

正 郎

   

   

賀 川

有 有

授 授

教 教

査 査

主 副

(5)

た38例 ( 年 齢80月 〜5歳 ) の 患 児 よ り 検 体 を 収 集 し た 。RT‑PCR法 に て 、637例 中57 例(8.9%) からhMPVが検 出さ れた 。hMPV陽陛率は、山口では0.8%、札幌では8.8%、

広島では63.2%であった。臨床診断はWheezy bronchitis (36.9%)、上気道炎(26.3%)、

気管支炎(22.8%)、肺炎(14.0%)であった。

  268例の 鼻咽頭スワ ブを用い、継代3代目猿腎細 胞にてウイルス分離を行った。ウイル ス 分 離 を 行 っ た268例 中7例(2.6% ) 、RT‑PCR法 でhMPV陽 性 で あ っ た22例 中7例 (31.8% ) か ら ウ イ ル ス 分 離 が さ れ 、RT‑PCR法 と 比 べ 感 度 が 低 か っ た 。   血 清 はRT‑PCR法 でhMPV陽 性 の26例 の 患 児 よ り 、 急 性 期 に26例 、 回 復 期 に10例 を 収 集し た。 血清 抗hMPV‑IgG抗 体、‑IgM抗体 は間 接螢 光抗 体 法で 測定し、それぞれ、10 倍 未満 を陰 性と した 。10例の ペア 血清 で抗hMPV‑IgG抗体を測定したところ、 回復期に4 倍 以上 の有 意な 上昇 を認 めた のは10例 中8例(80.0% )で あ った 。急性期の血清26例中 14例(53.8% )は 抗hMPV‑IgG抗 体を 認 め、hMPV再感 染と 示唆 され た。 急性 期の 血清26 例 中22例(84.6% ) は 抗hMPV‑IgM抗 体陽 性で あっ たが 、コ ント ロ ール 血清100例中11 例(11%)が抗hMPV‑IgM抗体陽性であり特異度が低かった 。

  hMPV57株 はF蛋白 遺伝 子に よ る系 統樹解析によ り、大きくニつのグループに分かれ、

そ の中 でさ らにニつのサブグループに分かれた。2003年、3月〜5月に札幌、広島におい てhMPV(2グル ープ の株 )が 同 時期 に流行してい た。hMPVのグループ問で入院率に有意 差 を 認 め な っ た 。 発 症 か ら1〜2週 間 はRT‑PCR法でhMPV陽性 だっ た。 潜伏 期か ら発 症 まで4〜6日と推定しうる症例 があった。

  2004年の4月 〜5月 にか けて 、気 道感 染症 のた めに 入院 し た48例の患児から鼻咽頭ス ワ ブを2検 体ず つ収 集し た。 一 方の 検体はRT‑PCR法にて、もう一方は間接螢光抗体法に てhMPVの検 出を 行っ た。 スワ ブで 採取 した 上皮 細胞 にて 塗 抹標 本を作成し、抗hMPVマ ウ ス モ ノ クロ ーナ ルIgG抗 体を 用い た 間接 螢光 抗体 法に てhMPV抗 原の 検出 を行 った 。 RT‑PCR法と 比較した場合、間接螢光抗体法の感度 は73.3%、特異度は97.0%であった。

  公開 発表 に際 し、 副査 の有 川二 郎教 授か らhMPVが 再感 染 する 理由、抗hMPV中和抗体 測 定 法 、 抗hMPV‑IgA抗 体 、hMPVがhRdSVよ り 遅 れ て 感 染 す る 理 由 、 今 後hMPV感 染 症 の発 展性 等について、次いで副査の瀬谷司教授 からhMPVは重複感染するかどうか、そ の 際キ メラ ウイルスが生じるかどうかにっいて、 また主査の有賀正教授からhMPVの標的 細 胞 、 血 清 に お け るhMPVの 検 出 、hRSVに は 存 在 す る がhMPVに は 存在 しな いNSl/NS2 の意味づけについての質問が あったが、いずれの質問に対しても申請者は妥当な回答をし た。

  本研 究は 、小 児hMPV感 染症 の臨 床像 を明 らか にし 、hMPV感染 症診断のための多くの 新 しい 知見 を示した点で高く評価される。今後、hMPV感染症の診断法開発にっながって いくことが期待される。

  審査員一同は、これらの成 果を高く評価し、これまでの豊富な研究発表なども併せて、

申 請 者 が 博 士 ( 医 学 ) の 学 位 を 受 け る の に 充 分 な 資 格 を 有 す る も の と 判 定 し た 。

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参照

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