博 士 ( 理 学 ) 浜 坂 剛
学位論文題名
Development of Silica ― Supported Compact Phosphine and Its Use for Transition Metal Catalysis
(シリカ担持コンパクトホスフインの開発と遷移金属触媒反応への応用)
学位 論文内容の要旨
効率的で副生成物の少ない有機合成プロセスを実現するために、高活性な触 媒を開発することが重要である。触媒活性種を明らかにし、その活性種を反応 系中で選択的に生成させることは、より活性な触媒を開発するための効果的手 法である。高活性錯体触媒の設計原理の1 っとして嵩高いホスフイン配位子に よって「モノホスフイン金属錯体」を生成する手法が近年注目されている。こ の設計原理に基づいて開発された(t‑BU)3P ― Pd 錯体触媒はクロスカップリング 反応に高い活性を示すことが知られており、反応性に乏しいアリールクロリド を原料として用いても効率的に反応が進行する。この触媒系は大きな成功を収 めているが、配位子の嵩高さのために触媒活性中心が立体的に混んでしまい、
必ずしも全ての反応で高い活性を示すとは限らなぃ。これに対して、コンパク トなホスフィンを用いてモノホスフィン錯体を形成することが出来れば、金属 中心への基質の接近が容易となり、これまでに無い高い活性を有する触媒とな るものと考えられる。これを達成するために著者はコンパクトで剛直な構造を 持っかご型トリアルキルホスフィン配位子 SMAP ′とシリカゲル表面が直接結 合 し た 固 相 担 持 ホ ス フ ィ ン ([silica ‐ SMAP ) の 開 発 を 行 っ た 。
2t reflux OTf
Ph‑SMAP
silical‑SMAP
Scher 打ef .Preparationof [SiliCaJ ―SMAP
[silica ].SMAP は以下の手法で合成した。Ph ‐SMAP をトリフルオロメタンス
ルホン酸で処理することで発生するシリルトリフラートとシリカゲルを反応
させることでシリカゲル上に SMAP 骨格を結合させた。その後、塩基で処理す
ることでホスホニウムを中和し、表面シラノールを TMS エンドキャップする
こと で[silica]‐
SMAP
を得 た(Scheme1
)。得られた [silica]‐SMAPを用いてRh錯 体 を 調 製 し た 。 調 製 し た 配 位 子 の 固 体NMR
を 測 定 し た 結 果 、SMAP
骨 格 がSi
‐O
‐Si
共 有 結 合 に よ っ て シ リ カ ゲ ル 表 面 と 強 固 に 結 合 し て い る こ と を 確 認 し た 。 ま た 、 空 気 中 酸 化 に 対 し て 安 定 で あ る こ と も 明 ら か と な っ た 。Rh
過 剰 量 で錯 体を 形成 させ 固 体NMR
を測 定 し た と こ ろ
P‑Rh1
ニl
錯 体 に 由 来 す る ピ ー ク と 配 位 子 に 由 来 す る ピ ー ク が 同 時 に 観 測 され た(Figurel)。過剰のホ スフ イ ン が 存 在 し て もRh
中 心 に 第2
の ホ ス フ ア ン が 配 位 し な い こ と を 示 し て お り 、 モ ノ ホ ス フ ィ ン‑Rh
錯 体 が 選 択 的 に 形 成 す る こ と が 明 ら か と な っ た 。 こ の よ う に 、 過 剰 な ホ ス フ ィ ン の 存i̲i̲i ‑r ‑r‑r‑r‑i
30 20 10 0 ‑10 ‑20 ‑30 ‑40 ‑50 ‑60 ‑70 ‑80 ppm
Figuref
・ 31P CP/MAS NMR spectrum在 下 で モ ノ ホ ス フ イ ン −
Rh
錯 体 が 完 全 な 選 択 性 で 形 成 し た 例 は こ れ ま で 報 告 さ れ て い な い 。[silica]‑SMAP
をRh
触 媒 に よ る ケ ト ン の ヒ ド ロ シ リ ル 化 反 応 ヘ 適 用 し た と こ ろ 、 嵩 高 い 基 質 に 対 し て 極 め て 広 い 適 用 範 囲 を 持 っ こ と が 明 ら か と ぬ っ た 。 例 え ば 、 ジ‑tert‑ブ チル ケト ンとterf
・ブ チル ジメ チル シラ ンの 反応 も 室温 で定 量 的 に 進 行 し た(Scheme2
) 。CH2)2J2 (0.5 rriol %) OSitt‑Bu)Me2 l‑25 0C, 12 h
quant.
Scheme 2. Hydrosilylation of di‑tert‑butylketone.
固 相 担 持 触 媒 で は し ば し ば 活 性 種 の り ー チ ン グ が 問 題 と な る 。 し か し 、 本 触 媒 系 は り ー チ ン グ を ほ と ん ど 起 こ さ ず 、 高 い 回 収 再 利 用 性 を 示 す こ と を 確 認 し た 。
本 触 媒 系 は ケ ト ン や オ レ フ ィ ン の 水 素 化 反 応 に お い て も 同 様 に 嵩 高 い 基 質 に 対 し て 高 い 活 性 を 示 し た 。
本 論 文 で は シ リ カ ゲ ル 担 持 コ ン パ ク ト ホ ス フ ィ ン を 開 発 し 、 そ の 性 質 と 触 媒 活 性 に っ い て 述 べ た 。 こ の 配 位 子 は 選 択 的 に モ ノ ホ ス フ ア ン ― 金 属 錯 体 を 形 成 し 、 嵩 高 い 基 質 に 対 し て 高 い 許 容 性 を 示 す こ と が 明 ら か と な っ た 。
。 氷
学位論文審査の要旨
学位論文題名
Development of Silica ―Supported Compact Phosphine and Its Use for Transition Metal Catalysis
(シリカ担持コンパクトホスフインの開発と遷移金属触媒反応への応用)
環境調和型有機合成を目指した金属触媒による新反応の開発が近年盛んである。今 後の 大きな発展のためには、高度で新規な機能を持った触媒を開発することが必要であ り、 その鍵を握るのは斬新な設計コンセプトに基づく新しい配位子の開発である。本論 文は 、コンパクトな配位中心と構造可変部位を合わせ持っかご型トリアルキルホスフイ ン( 略称SMAP)のシリカゲル表面 への担持法の開発と遷移金属触媒反応への応用に関す る著 者の研究成果をまとめたものである。著者は、かご型トリアルキルホスフインSMAP の特徴を利用する巧妙な分子設計により、シリカゲル担持ホスフイン[silica]一SMAPを 考案 し、その合成法を開発した。[silica]−SMAPは配位中心が極めてコンパクトである にも 関わらず遷移金属中心と1対
1
の組成比で選択的に錯形成 するように設計されてい る。 本論文では固体NMRとXAFSを 用いたロジウム1
価有機金属 錯体との錯形成実験によ って、[silica]−SMAPの特異な配位子特性が実証されている。[silica]―SMAP−Rh錯体は、ケト ンのヒドロシリル化反応や水素化反応に対して極めて高い触媒活性を持ち、中でも 嵩高 い反応基質に対して極めて広い適用性を示す点は有機合成の観点から特に重要であ る。 従来の触媒では全く進行しない反応を、非常に穏和な条件下で進行させることにも 成功 している。中心金属にIrを持っ錯体は、4置換アルケンなどの立体的に混み合った 炭素一炭素不飽和結合の水素化に有効であるなど、汎用性も示されており、[silica]−SMAP が触 媒配位子として有望であることは明らかである。分子触媒と固体触媒の機能融合に よって得られたこれらの成果は、遷移金属触媒の新しい設計指針を提供するものである。
こ れを要するに、著者は遷移金属錯体触媒の新設計指針を提供する画期的な成果をあ げた ものであり、有機合成化学、有機金属化学のみならず錯体化学、物理化学を含む広 い分野に対し貢献するところ大なるものがある。
よ って著者は、北海道大学博士(理学)の学位を授与される資格あるものと認める。
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