2014 シンガポールセール 速報
第二回シンガポールセール
盛況のうちに幕を閉じる
2013年1月の初開催に続き、今季で第2回目となったエスト・ウェ ストオークションズ「2014 シンガポールセール」。 1 月 17 日からの下見会に続き、オークションは 18 日・19 日と 2 日間に渡ってシンガポールの歴史と文化の象徴的存在である ラッフルズ・ホテルで開催。折しもシンガポールは 1 月 13 日か らの政府観光局主催のアート・ウィークにより大小様々なアー トイベントが各地で催され、東南アジア最大のアートフェア 「アートステージ・シンガポール」も同時期に開幕。金融のイメー ジで語られることの多いシンガポールの街がこの時だけはアー ト一色に染まる特別な季節である。 年々増えるアートフェアへの来場者数とそこに注がれる各種メ ディアの熱視線を取り込むために、今回、アートフェアの会場 であるマリーナ・ベイ・サンズと弊社下見会・オークション会 場とを専用のシャトルバスでつないだ。これにより、国内外の ギャラリストやコレクター、メディア媒体にもエスト・ウェス トを知ってもらうきっかけになり、結果的に前季を上回る多く の来場者を迎えることとなった。 オークション初日、ファイン&コンテンポラリーアートのイブ ニングセールに先駆け、ラッフルズ・ホテルのバルコニーで カクテルレセプションを開催。国内外の VIP を含む多くの来 場者が華やかな服装に身を包み、アート談義に花を咲かせてい た。宴の場をボールルームへと移し開始されたファイン&コン テンポラリーアートのオークションは、あまりの来場者数の多 さに、用意しておいた椅子では足りずに、急遽予備の椅子を出 すなどの対応に追われるほど。昨年の初開催時と比較しても オークションに対する関心度の高さは予想以上であった。 この日のセールでは、ピカソやマティス、ルノワールやダリな どのオールドマスターに加え、エスト・ウェスト初出品となる イギリスの女流彫刻家E . フリンクも登場。その他、A. ウォー ホル、E. カステラーニ、L. ウーファンや戦後の日本現代美術 を牽引してきた代表的な作家である草間彌生、平賀敬、菅井汲、 そして W. ティン(丁雄泉)、T. ハイウェン(曾海文)などの 中国人作家や、今後の市場性が期待できる日・中・韓などの若 手作家まで計 133 ロットの作品が競られ、その落札率は 70% に迫った。 2 日目のデイセールでは、ジュエリー&ウォッチ、純金製品に はじまり、東洋美術、ルーシー・リー&ハンス・コパーのセラ ミックコレクション、西洋装飾美術と、多ジャンルから質の高 い作品だけを厳選したラインナップで構成され、会場となった ボールルームはお目当てのジャンルを競りに来場される愛好家 たちで賑わいを見せた。 2 日間に渡るオークションの総ロット数は 440 点、落札総額は 327 万シンガポールドル(以下 SGD)、日本円にして約 2 億 7 千万に上った。 ラッフルズ・ホテルでの 18 日オープニングレセプション アートスペース@ヘルトランス * 日本円は 1 シンガポールドルを 82 円とした参考価格February 2014
2014 年 2 月発行号
February 2014
2014 年 2 月発行号
Special feature on auction highlights エスト・ウェスト ニュース エスト・ウェスト ニュース Special feature on auction highlights
今回、2 会場に分かれて下見会が行われたファイン&コンテンポ ラリーアート部門。ルノワールやピカソ、ロダンなどの巨匠作品 が揃うファインアートはジュエリーや西洋装飾美術、東洋美術と ともにラッフルズ・ホテルに展示された。世界有数の名門ホテル のボールルームに飾られた名品の数々は華やかな雰囲気を醸し出 し、来場された愛好家を魅了していた。 一方、コンテンポラリーアートは前回のファーストシンガポール セールの会場でもあったアートスペース@ヘルトランスにて下見 会が行われた。ラッフルズ・ホテルとは対照的に、真っ白で広が りのあるスペースに色鮮やかな現代美術作品が並ぶ様子は壮観。 来場者が思う存分作品と向き合うことのできる贅沢な空間であっ た。特に台湾、香港を中心とした中華系のコレクターは草間彌生、 山田正亮、堂本尚郎、吉仲太造など日本人作家への関心が高く、 中には連日下見会に来られる方々もみられ、アートに対する情熱 がひしひしと伝わってきた。 オークション初日の 18 日には ファイン&コンテンポラリー アートセールが開催され、133 点の作品群にはヨーロッパの巨 匠から東南アジアの若手作家ま で存在感のある作品が揃う中、 前回の香港セールでも活況を見 せたピカソのセラミック作品か ら競りが始まった。 予想通り序盤から高額落札が 続 き、中でも「花冠の 女 性 」 はパドルが次々と挙がる会場 と電話の激しい競り合いの結 果、落札予想価格下値の 2.5 倍を超える SGD 68,440( 約 560 万円)で落札されると、会場内に沸き起こる大きな拍手 と歓声。激しい競り合いの結果、版画を含む 13 点のピカソ 作品のうち、実に 11 点が落札予想価格の上値を超えるなど の高額落札を生み出し、2013 年 5 月のピカソコレクション に続くこの分野のエスト・ウェストの強さを見せつけた。 続くマティスの版画作品「横たわる東洋の女性」は会場の愛好 家の競り合いに加え、電話ビッドもそれに対抗。最終的には 会場の中華系のビッダーが競り勝ち、落札予想価格下値の 2 倍を超え SGD 33,040(約 270 万円)で落札された。 ま た、 巨 匠 ル ノ ワ ー ル が 晩 年 に 自 ら が 過 ご し たアトリエを描いた「レ・ コレット」 は、下見会前 から、欧米からの問い合 わせが殺到していた注目 作品。欧米からの複数の 電話ビッドに会場が競り 合うかたちで、落札予想 価 格 上 値 を 超 え る SGD 118,000(約 970 万円)で 再 び 中 華 系 の 愛 好 家 に ハンマーが打たれた。 続いては、同型の A/C(アーティストキャスト)がイギリスの TATE に収蔵されている、20 世紀を代表する女流彫刻家 E. フリンクのブロンズ彫刻「死する王」。国際的な知名度には欠 けるが、作家の故郷であるイギリスではその評価は極めて高 い。事前にイギリスの関係ギャラリー等にアプローチをかけ たことが功を奏し、複数の事前入札と電話ビッドが応戦。結 果的に落札予想価格を超える SGD 224,200(約 1,840 万円) で本国イギリスの愛好家に軍配が上がり、今回のオークショ ンにおける第 1 位の高額落札を記録した。 また、日本の個人コレクターから成り行き作品として出品された L. ウーファンの「From Point [80078]」は、予想価格上値を超え、
総評 2014 シンガポールセール
* 日本円は 1 シンガポールドルを 82 円とした参考価格 SGD 141,600(約 1,160 万円) で落札された。 アメリカの著名なモダン・ ダンサーを描いた A. ウォー ホルのペン画「ドリス・ハ ンフリーの肖像」はオーク ション前に欧米のギャラ リーを中心に問い合わせ が相次いだ作品のひとつ。 そのほとんどが電話・書 面ビッドへと結びつき、予 想価格上値の 2 倍以上と な る SGD 41,300( 約 340 万 円 ) まで伸びあがり、落札された。 同じくウォーホルのシルクスク リーン作品である 「パラマウン ト」もまた欧米のコレクターから のビッドが相次ぎ、上値を超える SGD 41,300(約 340 万円)で落札 され、市場におけるウォーホルの 手堅さを示す結果となる。 日本を代表する現代美術アーティ スト草間彌生の作品は、変わらず 台湾や香港などのアジア各国の愛 好家からの支持を受け、電話ビッ ドと会場の愛好家達が一歩も譲らな い激しい競り合いを見せる。「雄蕊の愁い」「夜闇の中で」が相次 いで落札され、不動の草間人気を物語る結果となった。 今回のオークションで特筆すべきは国際的に活躍する中華系の アーティスト、W. ティン、 曾海文、楊納、陳文希な どの作品への確かな興味 である。下見会の際、W. ティンの「横たわる女性」 の前では来場者は必ずと 言っていいほど立ち止ま り、本作品は常に注目を 浴びていた。 その結果、予想価格上値 を超える SGD 100,300(約 820 万円)でアジア圏の コレクターに落札される など、今後もその動向が 期待される。 ファイン&コンテンポラリーアート部門の 落 札 価 格 は 約 SGD 2,020,000(約 1 億 6 千 6 百 万 円 ) で、 落札作品の予想価格 下値の総計 SGD 1,339,100(約 1 億 1 千万円)に対し、150% という高い伸び率を示しており、シンガポールでは浸透して いない一部の欧米作家の作品が落札されなかった一方で、知 名度の高い作家の作品が堅調に落札されるなど、他ジャンル に比べ、この分野のオークション市場が最もシンガポールに 定着してきていると言える。市場の確立から拡大へ ファイン&コンテンポラリーアート
P. ピカソ「花冠の女性」 33.0 × 25.5cm 落札予想価格 SGD 25,000 - 38,000 落札価格 SGD 68,440 約 560 万円 P-A. ルノワール「レ・コレット」 14.5 × 20.0cm 落札予想価格 SGD 65,000 - 95,000 落札価格 SGD 118,000 約 970 万円 E. フリンク「死する王」 h90.2 × w198.1 × d51.0cm 落札予想価格 SGD 100,000 - 150,000 落札価格 SGD 224,200 約 1,840 万円 A. ウォーホル「ドリス・ハンフリーの肖像」 31.3 × 26.0cm 落札予想価格 SGD 13,000 - 20,000 落札価格 SGD 41,300 約 340 万円 L. ウーファン "From Point [80078]" 31.8 × 41.0cm 落札予想価格 SGD 75,000 - 110,000 落札価格 SGD 141,600 約 1,160 万円 W. ティン「横たわる女性」 68.0 × 98.5cm 落札予想価格 SGD 50,000 - 75,000 落札価格 SGD 100,300 約 820 万円 今回の下見会では、ジュエリーや 東洋美術を目当てに来場されたま だ西洋装飾美術には馴染みのない 方が、ギリシャ神話の物語をモ チーフにしたマイセン作品につい て熱心に質問をされるといった光 景も見られた。他にも昨年ファー ストシンガポールセールでジュエ リーを落札されたお客様が、今回初めて西洋装飾美術の作品から 数点を落札されるなど、着実にシンガポールでの顧客を増やして きており、今後も需要の拡大の可能性を残す結果となった。 その反面、香港などに比べるとまだオークションとしては、次々 にパドルが挙がるといった勢いのある光景は見られなかった。ま た、ジュエリーと同様、西洋陶磁器の鑑定書の有無についての質 問も多く、まだ馴染みのない様子が伺えたが、部門としての落札 率 73% という好結果は、西洋陶磁器の市場が確かにシンガポー ルに存在する事を示していると言えるだろう。 39 点のマイセンを中心に、セーヴル、K.P.M ベルリン、ロイヤ ル・ヴィエナ、ドレスデンなど前回のシンガポールセールでも好 調だったクオリティの高い西洋陶磁器や、J. デュナンや R. ラリッ クのアール・デコの優品など厳選された62点の作品がラッフルズ・ ホテルのボールルームを飾った西洋装飾美術部門。 特に今回数多く取り揃えたマイセン作品は人気の高さを示し、珍 しいタイプのマイセンというよりはマイセンらしい優美な魅力を備 えたフィギアが特に好調であった。 また、フィギア専門のコレクター、 ポプリポットやキャンドルスタン ドなど大きめの装飾品を集めて いるコレクターなど、マイセン の中でも1ジャンルを求められ る愛好家が多く見られ、マイセ ン作品のみの落札率は実に 85%。 他にも K.P.M ベルリンの陶板画 やドレスデンの飾り壺も着実に 落札されていった。 また、日本でも根強い人気のこ の分野には、日本からの書面入 札もあり、西洋装飾美術全体の 落札率は 73%と安定した結果を 残した。 マイセン「林檎の木の下」 h24.5 × w16.5 × d13.0cm 落札予想価格 SGD 2,500 - 3,800 落札価格 SGD 3,540 約 30 万円 KPM ベルリン 陶板「皇妃マリー・ルイーズ」 40.5 × 26.0cm 落札予想価格 SGD 16,000 - 30,000 落札価格 SGD 21,240 約 175 万円落札率 73%、堅調な西洋装飾美術
下見会の会場となったラッフルズ・ホテルは海外からのツーリス トの観光地としても、地元の名士らの社交場としても名高い。 ボールルームの入口近くにジュエリーブースを設置したことで、 華やかに煌めくジュエリーを目にして立ち止まるホテル利用者も 多く、そのように偶然足を運んだ方々も含め多くの愛好家が来場 された。気に入った宝石や時計を丹念にチェックする姿も多く見 られ、ジュエリーブースの人垣とざわめきが途切れることはな かった。 人気の高かった作品としては、 純金製品、翡翠はさることな がら、やはり非加熱、ノンオ イル、あるいは原産地が明確 であるルビーやエメラルドで あり、なかでもコロンビア産 エメラルドダイヤモンドリン グなどに注目が集まった。 また、ダイヤモンドを探し求 める愛好家の多くはダイヤモ ンドホワイトゴールドリングに目を留めていた。 その他、ジャガー・ルクルトのアトモスの置時計が人気を博し、 シースルーケースに囲まれた美しいフォルムをあらゆる角度 から入念に観察する愛好家の様子が印象的であった。「この 時計のことを広告で知り、書斎に置こうと思ってこれを見る ためだけに会場に来た」という熱心な愛好家もおり、それぞ れ好結果につながった。 ヴァンクリーフ&アーペルやカルティエといったハイブランドジュエ リーは安定した人気を集め、中にはブランドものだけに絞って下 見をされる愛好家も多く、カルティエ・ぺリューク ダイヤモン ド ホワイトゴールドリングが SGD17,700(約 145 万円)と落札予 想価格の上値を超えて高額で落札されたことからもブランド への安定した人気が伺える。また、純金製品は 6 点中 5 点が 落札され、いずれも中華圏の愛好家の手に渡り、金融都市シ ンガポールにおける純金製品の確かな需要が感じられた。 この分野の落札点数内訳を分析すると、在シンガポールのビッ ダーが総ロット数の 4 割を落札しており、この地でオークショ ンという新たな販売形態が浸透しつつあることが伺える。ジュ エリーマーケットが広く確立した香港とは違い、これから育っ ていくシンガポールのマーケットに見合った商品のセレクショ ンや接客方法などを今後の課題として取り組んでいきたい。 日本・中国古美術を中心に東南アジアからの新規参入を期待し ミャンマーやタイの古美術作品を揃えた東洋部門。下見会では現 地の愛好家をはじめ、香港、台湾を中心とする中華圏からの愛好 家の方々により下見会の展示ブースは賑わいをみせた。3 日間連 続でお目当ての作品を確認する熱心な方、初めて見る蒔絵の美し さに目を奪われる方など、多くの方々が来場し思い思いに作品を 手にとる姿を目にする事が出来た。 オークションでは中国の官 窯作品である「清光緒 粉 彩百蝶紋賞瓶」が会場と電 話 の 競 り 合 い に よ り SGD 18,880(約 155 万円)で落札 されると、下見会で最も問 い合わせの多かった作品の 一つである「清初 黒漆塗青 貝螺鈿重箱」は落札予想価格 の上値を超えて落札された。 清皇族で愛新覚羅溥儀の従兄弟である溥 儒が描いた「山水人物 手巻」は SGD 62,540(約 513 万円)と高額落札となり、著名作 家が制作した作品や希少な作品を求める声は依然として高く、今 後も紹介をしていきたい。日本古美術は落札には至らなかったが 美しく細工された蒔絵に興味を持つ方が多く、「元興寺百万小塔」 には香港の愛好家が競りに参加するなど日本伝統美術の可能性を 見る事が出来た。 昨今のオークションでは人気の高かった銀瓶や鉄瓶の結果が振 るわず予想外の結果となったが、「韓国真珠手扇」は落札予想 価 格 下 値 の 4 倍 近 い SGD 25,960( 約 213 万 円 )で落 札され、自国の歴史・文化 を愛する韓国人愛好家の力 強さを感じる喜ばしい結果 となった。 シンガポールはオークション 文化がまだ浅く、美術品の 認識や知識もまだまだ発展途 上と言えるが、歴史的に自国 の美術文化がないため、純粋 に作品が気に入ればどの国の作品でも受け入れる可能性を秘めてい る。3 日間に渡る下見会に来場した愛好家は数多く、オークション や美術品に対する興味は他ジャンルと比較しても非常に高いので、 今後も注目の市場ではある。 本来であればこの分野で独立したひとつのセールが開催できるくら いの質と量を備えた作品群を揃えられれば、今季の結果も大きく異 なっていたのであろう。事実、シンガポール、香港、東京と各市場 は異なる特性をもち、それぞれの需要もまた似て非なるものである。 市場の特性を研究し、相応しい作品の収集が可能になれば、大きく 切り開くことの出来る分野であることは確かである。目下この課題 に取り組み、次回のオークションではより良い結果をお伝えできる よう努めていきたい。
東洋美術
溥 儒「山水人物 手巻」 落札予想価格 SGD 50,000 - 75,000 落札価格 SGD 62,540 約 513 万円 清光緒 粉彩百蝶紋賞瓶 落札予想価格 SGD 13,000 - 20,000 落札価格 SGD 18,880 約 155 万円 * 日本円は 1 シンガポールドルを 82 円とした参考価格2013 年 12 月 20 日(金)- 21 日(土)
会場:ルネッサンス・ハーバービュー・ホテル香港
2014 年 1 月 17 日(金)- 19 日(日)
会場:
ラッフルズホテル / アートスペース@ヘルトランス
2013 年 12 月 5 日(木)- 7 日(土)
会場:エスト・ウェスト五反田セールルーム
香港プレビュー
2 会場でのシンガポールプレビュー
東京プレビュー
12 月 20 日から 2 日間開催された香港下見会には 100 名以上 のお客様が来場された。 中国古美術、書画、日本の金瓶、ジュエリーなどは安定した 人気があり、多くの問い合わせを受けた。中でもジュエリー は常に注目を浴びており、目を惹く特別なデザインと輝きが 愛好家たちの心を奪っていた。 シンガポールオークションには多くのお客様が香港から参加 され、結果として地域別の落札額では香港が全体の 3 割強を 占めるという結果になり、初進出から 6 年目となる香港に おいて、着実にこれまで培ってきたこの市場における成果 と認知度を改めて感じることができた。 ファインアート、ジュエリー&ウォッチ、東洋美術、西洋装 飾美術はラッフルズホテルで下見会が行われた(写真上)。 優雅な雰囲気をたたえるボールルームでの下見会では、作品 が一層輝きを増し、来場者を惹きつけていた。 会場の外は開放的な回廊となっており、爽やかに吹き抜ける 風が、たまたまホテルを訪れた客を会場内に誘うさまは、東 京や香港の下見会とは異なる南国独特の風情があり、来場者 もリラックスした様子で作品について尋ねていた。 一方、コンテンポラリーアートは現代美術の中心地のひとつ であるアートスペース@ヘルトランスに展示(写真下)。白 いギャラリースペースを大きく使い、大画面の絵画や空間を 支配する彫刻作品が見た目にも心地よく並び、来場者の集中 力も非常に高く、目当ての作品を存分に見ることのできる状 況を作ることに成功した。ジュエリー & ウォッチ、純金製品
市場の特性に合わせた取り組みが課題
ジュエリー&ウォッチ、東洋美術
エメラルド ダイヤモンド プラチナリング 落札予想価格 SGD 16,000 - 24,000 落札価格 SGD 17,700 約 145 万円 純金製霰打湯沸 755g 落札予想価格 SGD 40,000 - 60,000 落札価格 SGD 50,740 約 415 万円 カルティエ ぺリューク ダイヤモンド ホワイトゴールドリング 落札予想価格 SGD 7,500 - 11,000 落札価格 SGD 17,700 約 145 万円 韓国真珠手扇 落札予想価格 SGD 6,500 - 9,500 落札価格 SGD 25,960 約 213 万円February 2014
2014 年 2 月発行号
February 2014
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Special feature on auction highlights エスト・ウェスト ニュース エスト・ウェスト ニュース Special feature on auction highlights
シンガポール市場への第 2 回目の挑戦となる今季は、昨年の ファーストシンガポールセールにおける反省点や課題事項を 汲み、会場や交通手段などの来場者の利便性を高めるプラン や国内外への宣伝活動により一層の力を注いだ。また出品作 品のセレクションにも工夫を凝らし、例えば現代アートの分 野では国際的に評価の高い作家だけでなく、日・中・韓など の若い作家やシンガポール・ヴェトナムなどの東南アジアの 作家などをラインナップに加えてマーケットの反応を見ると いう試みもおこなった。結果、一部国際的に地名度が低い欧 米作家の作品で不落札が続くこともあったが、70% というファ イン&コンテンポラリーの落札結果は評価に値するであろう。 その背景として、今回で4年目となるアートフェア「アート ステージ・シンガポール」の成功や、有名ギャラリーの進出 などによって、シンガポールにおけるファイン&コンテンポ ラリーアートのマーケットが確実に定着・拡大しつつあるこ と、そしてインドネシアやシンガポール等の東南アジア系オー クション会社がこの分野を主軸としてオークションを開催し、 成果を上げているということも追い風となっている。 例えば、今回のオー ク シ ョ ン に 出 品 さ れ た 堂 本 尚 郎 が 渡 仏 4 年目に描いたア ンフォルメル期の名 品「untitled [1959-1 Paris] 」 を 落 札 し た のは、下見会で作家 のことを初めて知り、 作品のもつ力に魅了 された在シンガポー ルの新規コレクター であった。 このようにシンガポールのマーケットでは日本の戦後美術な ど質の高い作品を純粋に「見て買う」姿勢が見られる一方で、 市場の分析力や相場観に自信が無く、ものの価値を計る確固 たる「ものさし」がないように思える。香港や欧米などの買 いの力は依然として強いため、あと一歩というところで彼ら に競り勝つというところまではいかない。 とりわけ 2 日目に開催をしたジュエリー&ウォッチ、東洋美 術や西洋装飾美術のジャンルにおいてはその傾向が強い。今 季、一番の苦戦を強いられた東洋美術に対する参加の姿勢は 慎重であった。香港に存在する巨大な中国骨董のマーケット もシンガポールにはまだないように思われ、現時点での日本 古美術の浸透は難しいとも感じた。 宝飾品に関しても、下見会に何度も足を運び商品をチェッ クする熱心さはあるものの、入札にまで至らなかったケー スが多かったのも事実である。身近な嗜好品である宝飾 の分野は他の美術品と比べても、気楽にオークションに 参加し易いように思うが、実際はもう少し経験と啓蒙が 必要なようだ。 今季のオークションの落札結果をグラフに表してみると興味 深い結果が読み取れる。まず、地域別落札ロット(図 1)を 見ると、全体の約 3 割を占めるシンガポールが 1 位、次に香 港 27%、日本 18% と続く。昨年のファーストシンガポールセー ル時ではシンガポールは 2 割弱のシェア率で第 2 位であった ことと比較しても、開催地での落札率が大きく伸びを見せて いることは喜ばしい。それに対して、落札価格の総額を基に したグラフ(図 2)では全体の 33%を占める香港が 1 位に躍 り出て、続いて欧米の 21%、台湾の 14% と同率でシンガポー ルは第 3 位となる。この結果は前述のとおり、シンガポール のコレクターによって落札されている作品の多くが少額品で あり、オークションで高額作品を競るまでに熟してはいない シンガポールの市場性を表しているが、着目すべきはこれら 2つのグラフにおける欧米勢のシェア率の変化であろう。落 札ロット数ではわずか 4%に満たないシェア率に対して、落 札金額の総額となると突如 2 位に台頭する欧米の存在感はや はり見過ごせない。実際、今回のオークションのトップロッ トである E. フリンクのブロンズ像やルノワール、ロダンなど の高額作品のバイヤーは欧米のコレクターである。彼らはエ スト・ウェスト創立から 30 年目を数える現在に至るまで深い 信頼関係でつながり、これまでの歴史を支えてきた大切な クライアントである。美術市場の土台を支えるこの欧米勢 との信頼関係があるからこそ、これまでに香港、シンガポー ルなど新規市場で実験的なプロジェクトを遂行することが 出来たともいえる。 一方、他国で開催されるオークションにおいてもなお、高額 の落札率を記録することのできる香港コレクター / 香港市場 の重要性もまた再認識せざるを得ない。アジアのアートのハ ブとしての香港の存在感は目覚ましく、その地位に揺るぎは ない。その香港の追随を目指すシンガポールは常に本家と比 較され、それぞれの特異性や優位性が語られるようになって 久しい。地理的・文化的背景から、大国・中国との良好な関 係をもとに大躍進を遂げる香港に対して、シンガポールは成 長著しい東南アジア諸国を率い、東アジア、オセアニアとの 交易も盛んであるなど、香港にはない特性でアジアのハブ化 を目指している。
2013 年発表の Singapore Cultural Statistics によると、シンガ ポールのアート関連会社は 2003 年に 302 社であったのに対 し、2012 年にはその 4 倍の 1,260 社となっており、現在はそ の数をも大幅に上回っている。飛躍するシンガポールのアー ト・シーンに伴い、政府主導の文化政策は勢いを増している。 2013 年 10 月から今年の 2 月まで開催されているシンガポール ビエンナーレでは東南アジアのコンテンポラリーアートに焦 点をあて、国内外から注目を集めており、その来場者数は 100 万人を超える。アートステージ・シンガポールでは、会場で あるマリーナ・ベイ・サンズで 1 月 15 日に開かれた内覧会で は 1,000 人を超える VIP が集い、130 を超える出品ギャラリー は軒並み盛況。とりわけ中国人画家、趙無極(ザオ・ウーキー) の絵画がシンガポールのコレクターに 120 万ドル(約1億 2,600 万円)で売却されたニュースは世界に配信され、シンガポー ルというマーケットの重要性を世界に示した。近隣の東南ア ジア諸国の後援を受け、今後このマーケットはどんどん拡大 していくであろう。成熟し、飽和状態に近い香港のマーケッ トと比較して、開拓途中でその分のりしろが見えるシンガポー ルという市場は十分に魅力的である。 エスト・ウェストはこの 2 年間、年々成果をあげていた秋の 香港セールを犠牲にして、シンガポールでのオークションプ ロジェクトを開始した。事実、限られたキャパシティの中で ワンシーズンに香港とシンガポールの両方を続けることは難 しい。また、中国大陸のコレクターからの買いを意識した時に、 香港での開催と比べて、シンガポール開催時には大陸からの 参加者数の減少は顕著である。将来的に中国に代わることの できる勢力であるはずの ASEAN 諸国の新規コレクターに関 してはその輪郭は見えるが、現状の中国勢の市場における存 在感とは現時点では比較にならない。 クレディ・スイス社の 2013 年のグローバル・ウェルス・レ ポートによると、個人の純資産額が 100 万ドルを超えるミリ オネアの数は、中国で約 112 万 3,000 人(世界第 6 位)、シン ガポールで約 17 万 4,000 人(世界第 12 位)、続く 13 位はイ ンドネシアで 12 万 3,000 人、14 位は香港で 10 万 3,000 人で ある。アジア太平洋地域は力強い経済成長を背景に、向こう 5 年間も引き続き世界の富の増加に対する貢献度が最も高く、 この地域の富の世界全体における割合は、2013 年の 31%か ら 2018 年には 33%に拡大する見通しで、2017 年以降は北米 を抜いて世界最大の富を有する地域になると予測されてい る。今後も世界経済においてアジアの時代が続くことは明白 であり、美術市場もまた然りである。だからこそ、どの地域 のアジアに重きをおき、戦略的に行動をおこすかが今後の生 き残りの鍵となる。 今回を含めた 2 回のオークション結果や反響、対費用効果や 等を考慮すると、今後このままシンガポールでのオークショ ンを開催し続けていくべきかどうかは正直迷うところではあ る。ただ、新規市場特有の気運や将来性、世界からの期待感、 固まりつつあるインフラ等を考えると、ポテンシャルは高く、 捨てきれない選択肢ではある。ただ、今やることが効果的で あるのか、会社として最善の選択であるのかの答えは出てお らず、目下検討中である。 この 2 年間で獲得をしたシンガポールや近隣の東南アジア諸 国でのエスト・ウェストの知名度や次なるオークションを期 待して待ってくれている愛好家の存在を考慮すると、香港で オークションを開催し、シンガポールで下見会を行うという 巡回展方式もひとつの方法ではないかとも考えている。第一 回目の開催時より大きな手ごたえを感じている今、続けるこ との意味を再考し、それに値するだけの成果が得られる方法 論を見つけ出すことが出来れば、今後もシンガポールでオー クションを開催していきたいと考えている。 地域別落札額 地域別落札 ロット
シンガポールの今、香港市場の重要性
香港 VS シンガポール
アジアのアートのハブとしてそれぞれの役割
図 1 図 2 シンガポール 14% 日 本 13% 香 港 33% その他 アジア 1% 欧 米 21% 台 湾 14% 中国 4% シンガポール 30% 日 本 18% 香 港 27% 台 湾 13% その他アジア 2% 中国 6% 欧米 4% 堂本尚郎 "untitled [1959-1 Paris]" 73.0 × 100.0cm 落札予想価格 SGD 7,500 - 11,000 落札価格 SGD 8,850 約 73 万円 マリーナ・ベイ・サンズとアートステージ・シンガポール会場内の様子お持ちのコレクションをより良い市場で出品しませんか?
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