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新規シーラント用セメントの化学的および生物学的 特性について

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Academic year: 2021

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北海道医療大学学術リポジトリ

新規シーラント用セメントの化学的および生物学的 特性について

著者 近藤 有紀

学位名 博士(歯学)

学位授与機関 北海道医療大学

学位授与年度 平成27年度 学位授与番号 30110甲第270号

URL http://id.nii.ac.jp/1145/00010475/

(2)

新規シーラント用セメントの 化学的および生物学的特性について

平成27年度

北海道医療大学大学院歯学研究科

近藤 有紀

(3)

<緒言>

小児歯科臨床において,フィッシャーシーラントは高頻度に行われる処置の一つで ある.現在シーラント材として,グラスアイオノマーセメント(

GIC

)系とレジン系 が用いられている.

GIC

系はレジン系と比較し,機械的強度と操作性に劣っているも のの歯質接着性,歯質耐酸性および抗齲蝕性を有している.そこで本研究は,既存の

GIC

系シーラント材の特長をさらに増強させた新規シーラント用セメントを作製し,

その化学的および生物学的特性についての検証を行った.

<材料>

材料はフジⅦ

®

(フジⅦ,

GC

)のリンおよびフッ素の配合量を増加させ,カルシウ ムの配合量をそれぞれ

0 mol%

0YG

) ,

5.4 mol%

5.4YG

) ,

8.9 mol%

8.9YG

) ,

10.7 mol%

10.7YG

)とした新規

GIC

系セメントを用いた

.

コントロールとして

GIC

系はフ ジⅦ,フジⅢ

®

(フジⅢ,

GC

) ,レジン系はティースメイト

F−

®(TM

,クラレノリタ ケデンタル

)

およびビューティシーラント

®(BS

,松風

)

を用いた.

<方法>

1.X線光電子分光分析

X線光電子分光分析装置を用いて定性分析ならびに定量分析を行った.

2.

圧縮強さの測定

圧縮強さは日本工業規格

JIS T6607

に従って測定した.

3.

イオン徐放量の測定

測定には直径

20 mm×

高さ

2 mm

の試料を作製後,試料を蒸留水

(pH6.9)

,乳酸

(pH5.0)

,クエン酸

(pH5.0)

水溶液に

24

時間浸漬させた溶出液を使用し,各種イオン徐 法量を測定した.

4.

チャージング前後のフッ化物イオン徐放量の測定

測定にはイオン徐放量と同様の試料を使用した.試料を乳酸水溶液へ浸漬し,継続 的にフッ化物イオンの測定を行った.その後試料をリン酸酸性フッ化ナトリウム溶液

APF

)へ浸漬した後,新たな乳酸水溶液へ試料を浸漬し,フッ化物イオン測定を行

(4)

った.

5. 抗菌作用の測定

S. mutans JCM5705

株(S. mutans)は,

TY

培地(

Tryptic soy broth 30 g/l, Yeast extract 5 g/l

)にて培養した.S. mutansを

TY

培地に播種した後,試料を直接浸漬さ せ

37

℃の嫌気条件で

24

時間培養した.試料を浸漬した菌体培養液上清を,

TY

平板培 地に播種し培養後通法に従い生菌数の測定を行った.

6. 実験的バイオフィルム形成抑制能の判定

S. mutans

を濃度調整した後,菌液を

0.5

%スクロース添加培地の

60 mm

ガラスディ ッシュに播種し,試料を静置したセルストレーナー

(Falcon®,USA)

を浸漬させ,

37

℃ の嫌気条件で培養した.

24

時間培養後,生成されたバイオフィルムを

Calcein-AM

染 色した後,共焦点レーザー顕微鏡

(TE2000-E

NIKON)

にて観察した.

7. 細胞増殖活性の測定

ヒ ト 上 皮 歯 肉 細 胞 (

CELLnTEC Advanced Cell Systems

) を ,

CnT-Prime, Epithelial Medium

CELLnTEC Advanced Cell Systems

)にて

37

℃,

5% CO2

の条 件下で培養した.HGEP を培養後,試料を浸漬した細胞培養液に交換した.24 時間 後,細胞増殖測定試薬

WST-1(Roche Applied Science, Switzerland)を加え37℃で 1

時間培養し,細胞増殖活性を測定した.

8.

統計処理

結果の比較は一元配置分散分析法を行った後,tukey’s test を用いて統計学的有意 差を検討し,危険率を

5

%未満とした.

<結果>

1. X

線光電子分光分析

5.4YG

8.9YG

10.7YG

はフジⅦ,フジⅢと比較し新規にカルシウムが配合されて おり,リンおよびフッ素の配合量が増加していることを確認することができた.

2.

圧縮強さの測定

圧縮強さは

GIC

系において

1

日,

7

日での有意差はなかった.

35

日では

8.9YG

がフジ

Ⅶと比べ有意に大きい値となった

.

(5)

3.

イオン徐放量の測定

5.4YG

8.9YG

10.7YG

のみカルシウムイオンの徐放がみられ,

8.9YG

10.7YG

, フジⅢおよび

BS

からリン酸イオンが徐放された.また,新規材料は既存の

GIC

系シー ラント材および

BS

と比較し,フッ化物イオンの徐放量が有意に高い値を示した.

4.

チャージング前後のフッ化物イオン徐放量の測定

新規材料を含めた

GIC

系シーラント材および

BS

はフッ素のリチャージ能を有して いた.なお,

TM

はフッ化物イオン徐放量が最も多かったが,フッ素のリチャージ能 はなかった.

5.

抗菌作用の測定

全ての材料において,S. mutansの生菌数はフッ化物イオンを徐放しないガラスに 対し有意に少ない値となった.

6.

バイオフィルム形成抑制能

全ての材料において,フッ化物イオンを徐放しないガラスと比較しバイオフィルム 形成が阻害された.新規材料および

BS

のバイオフィルムの面積は,フジⅦ,フジⅢと 比較し有意に小さい値であった.

7.

細胞増殖活性の測定

新規材料はコントロールと比較し,細胞増殖活性における有意差はなかった.

<考察>

圧縮強さの測定結果より,中性下においてカルシウムの配合による機械的強度の影 響はないものと考えられるが,酸性下では新規材料のイオン徐放量が増加することか ら,圧縮強さはフジⅦ,フジⅢよりも低下することが推測される.しかし本研究では シーラント材としての臨床応用を目的としており実際の臨床では再填塞が可能なため,

たとえ機械的強度が低下しても既存のシーラント材よりも多くイオンを徐放する材料 を用いることで,抗齲蝕作用などの臨床効果が期待できると考える.

カルシウムイオンの徐放量とカルシウム配合量は相関しており,酸性環境下におい

て多量のイオンが徐放されることが明らかとなった.また,クエン酸は金属イオンと

キレート錯体を作るため材料が崩壊しやすいことより,多量のイオンが溶出したもの

(6)

と考えられた.フッ化物イオンにおいては,フッ素配合量の増加に伴い徐放量も増加 したと考えられる

.

フッ化物イオンは,低濃度でも持続的に口腔内へ停滞していることが望ましいとさ れている.多量のフッ化物イオンを初期に徐放するものの,フッ素リチャージ能を持 たない

TM

と比べ,リチャージ能を有する

GIC

系および

BS

は,より持続的にフッ化物 イオンを提供できるため,優れた臨床効果を期待できると考える.

全ての材料はフッ化物イオンを徐放するため,フッ化物イオンを徐放しないガラス

と比べ

S. mutans

の増殖が抑制され,さらにバイオフィルムの形成も阻害された.こ

の結果から,フッ化物イオンが関与していることが示唆された.フッ素は

S. mutans

の生育と糖代謝の

enolase

の阻害を行うことが報告されている.

<結論>

新規シーラント用セメントにおいて,市販製品と同等の機械的強度,抗菌作用およ

びバイオフィルム形成抑制能をもち,酸性下でのカルシウムイオン徐放量が多い

5.4 mol%,8.9 mol%,10.7 mol%カルシウム配合の新規シーラント用セメントが優れた

材料であることが示唆された.

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