長崎大学工学蔀研究報告 第14巻 第23号「昭和59年7月
141開口によるビーム波回折界の広がり角の測定
溝上 広*・高田 謙次*
佐賀 信裕*・田中 和雅*
Measurement of Divergence Angle of Diffracted Gaussian Beam by
Hiromu MIZOKAMI,*Kenji TAKADA,*
:Nobuhiro SAGA,*and Kazumasa TANAKA*
The anglllar divergence is one of the important characteristics.of a diffraction fleld.
For a Gau.ssian beam incidence, the effect of an aperture on the beam will be neglected lf its radius ls large enough compared with the spread of the fleld which is called the.spot size of the beam. When the ratio of the aperture radius to the spot slze is Iarger than
1.6,the incident beam passes through the aperture with the loss of aboutエ%. Even in
thiS case, the divergeDce angle of the diffraction field is rather different form that of 毛he jncid6nt beam.In this paper, the divergence angle is measured for various incident conditions。 The
results coincide with those obtained theoretlcally within the experimental errors.1.まえがき
光学系に用いられるいろいろな素子の働きは,入射 波によってその開口の有限性が重要な役割を果たす場 合と,ほとんど問題にならない場合とがある。たとえ ば平面波入射の場合,すべての素子はその開口の大き さを含めた解析を行なわなければならないが,ガウス ビームのように,その界の広がりが有限な入射波の場 合,素子の開口がある程度大きければその開口の有限 性の影響はほとんど無視でき,無限大の開口素子とし て取り扱ってよい。 このビーム波の場合,界の広が りはスポットサイズと呼ばれるパラメータで表わされ るが,このスポットサイズと開口半径の比がどの程度 であれば有限開口の影響がなくなるかを知ることは,
実用上重要なことである。 これまで主に開口からの 透過パワーに着目し,その目安を開口半径対スポット サイズの比が2.0以上であれば開口の影響はなくな
り,近似的に無限大開口の素子と考えてよいという提 案がなされている。1)一方,回折界の広がり角に着目
して開口の影響を無視できる目安として,界強度のス ポットサイズと開ロ半径の比が3.O以上になってはじ めて無限大開口として取り扱ってよいという報告がな されている。2)これは,振幅のスポットサイズと開口 半径の比に換算すれば大体2.0となり,従来の主張と
一致する。本論文ではこの広がり角を実験的に求め,従来回折 界の計算に用いられているキルヒホフ・ハイゲンスの 公式より求めた理論値と比較した。. この結果,広が
り角は入射条件によりかなり複雑に変化し,入射ビー ム波の開口の位置での中心軸と開口周辺との位相差が 小さいときは単調に変化するのに対し,それが大きい ときは入射ビーム波の広がり角の上下に振動し,開口 半径対スポットサイズの比が2.0以上になるとほとん
昭和59年4月28日受理
*電子工学科.(Department of Electronics)
142 開口によるビーム波回折界の広がり角の測定
ど入射ビーム波の広がり角と一致し,開ロは無限大開 口と考えてよいことが理論的あるいは実験的に確かめ られた。 実験はHe−Neレーザについて,円形開口
を用いて行なった。2.円形開口によるビーム波の回折界およびその広が り角
入射波として次式で表わされるようなビーム波を考
える。
ψ(・,・1一毒・xp{一∫々(一)一÷岬
ただし
+伽4ξ},
ξ一2 I三碧,
σ2=1十・∫ξo
κ==一
レ/一
Vω3一 戟^1一トξ2,
・(1)
(2)
これは2−Zsに最小スポットサイズωsを持つガウ.ス 分布レた振幅と球面の等位相分布を持つビーム波で,,
ガウシアンドームと呼ばれる。 (Fig・、1) 今,この
Aperture
、 1
0 1
ト 、
、 、、 、
8e㎝WO旦st
@ 8 ,囎隔一の一一
!
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1 r暑
wξ1沁
〜1㍉一 一
」
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主e 工臨Zs ノ
且、、
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、Z
Fig.1 The incident Gaussian beam, the.
aperture, and the definition of beam parameters
∫執勤ノ・xp{一÷癌・栂隔
(4)
ここで添字 0 は各パラメータの開口上での値を示 し,」。は零次のベッセル関数である。 ここで入射ビ ーム波のビームウエ嫁ストの位置鞠を2、一〇と選び,
さらに次のパラメータを導入する。
抽名,一÷ρ一三箒(5)
パラメータ禰および7。は強度が中心軸上の1/eにな るまでの距離の最小値および開口上での値である。
以下ではこれを強度のスポットサイズと呼ぶことにす る。 これらのパラメータを使って式(4)を変形し,そ
の強度}σi2を求φれば次のようになる。iひ(・,・)P−N
ィ2〔{∫福(飾弓R)・xp(一去瑚…(義瑚癖
+{∫1凡ゐ(N姻・ゆ(一豪・R。2)
・in(義珊)鵡y〕 (6)
ただしR一ρ/αである。式⑥を用いて回折界を求め,
十分遠方における界強度が中心軸上の1/eになる点ま での距離〆と,開口からその点までの距離との比によ り回折界の広がり角(これをθ〆とする)が求まる。
一方,開口がない場合すなわち入射ビーム波そのも のの広がり角は式(1)より直ちに求まり,次式で与えら れる。(Fig.2)
Beom Wαist
ビーム波がZ−Zにある半径αの開口に入射したと き,任意の点zにおける回折界σ(ρ,⑳は,よく知ら れたキルヒホフ・ハイゲンスの回折公式を用いて次式
より求められる。σ(・,・)一2π跨一の・x・{一漉(・一の}∫1∫1π
ψ(ρ。,の ∫々
exp
e輪/7
ノ ノ
〔一2(。一の{{2−2ρρ・
・・S(θ一θ・)}〕・・4・・4・・,
上記のψ(ρ。,のに式(1)を代入し,
行なえば次式を得る。
σ爾一
R≒)・x・←∫々@一酬tan一矯一2諾)}
(3)
θ。に関 して積分を
㎞
0
ZZ−ox重s・
k斤n
Fig.2Divergence angle of a Gaussian beam eπ信tare,虐⊥
θ初物tanθ,π=一 (7)
従って,入射ビーム波と回折界の広がり角の比は次式
で与え.られる。舞≒条一聖目畿 . (8)
式⑧では,広がり角は観測点πが十分遠方としたとき
溝上 広・高田謙次・佐賀信裕・田中和雅 ユ43
の界分布によって定義されることを用いた。
3.実験および結果
実験はH8−1>6レーザ(発振波長6328オングスト ローム)を用いて行なった。 遠方界の分布を有限な 距離の点で実現するために,焦点距離∫=500mm のレンズを用いた。 これは観測点2を(Z−1)一!と なるように選べば,そこでの界分布は無限遠点でのも のが再現されるという,よく知られた事実を用いたも のである。 開口は簿い金属箔に微小ドリルで穴をあ けたもので,その直径は0.41nmから4.9mmまで変 えて実験を行なった。 検出器はアルミ箔に微小孔を あけたものでフォトダイオードを覆い,これをマイク ロメータ付の台に固定し伝搬軸に垂直な方向に走査で きるようにしたものを用いた。 横軸分布(伝搬軸に 垂直方向の分布)の測定の際,その分布の広がり方に より,0.02mmから0.lmmの間隔で界分布を測定し た。 以上の方法により求めた広がり角の結果を
Fig.31a}〜〔d)に示す。 図では式(5)で定義されたρをパラメータとして,開ロ上での開口半径対強度のス ポットサイズの比,a/r。に対する回折界の広がり角の 変化を示している。 ただしこの広がり角は入射ビー ム波の広がり角との比で表わされており,その値が 1.0より小さい部分は開口によりビームが広げられる 領域LOより大きい部分は開口によりビームが絞ら れる領域である。 パラメータρは定義より明らかな ように,入射ビーム波のビームウエイストから開口ま での距離♂に比例しており,これはまた入射ビーム波 の等位相分布の曲率にも関連している。 本実験にお いては等位相面が平面となるビームウエイスト(ρ一
〇)に開ロを置いた場合は行なっていないが,ρ一1.0
とほとんど同じ傾向で,θ辮/θ記は単調に増加し,1.0に漸近する。 ρ>0は等位相面が開口上で凸の曲率 を持っていることを示し,このρの値が大きくなるに 従って開ロの位置での中心軸と開口周辺との位相差が 大きくなる。 ここに示したρより大きな値に対して は広がり角の振る舞いはより複雑になり,θガθ濯は
1.0の上下に大きく振動しながらLOに漸近する。3)・4)これらすべてについてα/r。が3.O以上になると広が り角砺!はほとんどθ彿に等しく,開口の影響は無視 できると考えられる。 これを振幅のスポットサイズ
(開口上でのこの値をω。とする)に変換してみる
と,r。=測。/ゾ「Σの関係によりα/ω。窪2.1となり,これまで言われてきた開口半径がスポットサイズの2倍 以上になればその影響はほとんど無視できるとの結
論ユ)と一致する。
2.5
♂2・0
3
言1・5
省 薯1・・
垂
茜0.5
0
P冨1
U冷6口陣し二◎o蒐
曜幽t叫
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2.5
32・0
3
2 1.5
§
書
51.0
§ 量
召0.5
0
1.0 2.0 3.O Aper加re tO spot sIze mt10 0ノ「0
如, P・ユ.0
u櫛=Qu㎝1 0甲r紬e馳し自1
4.o
圏
/
2.5
虻。
書1・5
盤
§1・・
§
δ0.5
o
1.0 2.0 3.0
貞perture tO SPOt slze o国7属0
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伽燗。己1 α四佃臓n鳳
4.0
2.5
♂2・o
$
2L5
径
書薯1・・
量 署。.5
0
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1・0 2.0 3.O
員pe「tu「e tO SPOt slze 「て1tlO Olro c,P.5.o
u鷹躍崩。盛
4.0
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一一噌一一一…
tづ5一一一一一一一一,/
ノ!《
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Fig.3
1.0 2.0 3.0 4.0
渦perture t。 spot s葦ze rot1。眈。
ωP鱒7.O
Divergence angle as a ftmction of
the ratio of aperture radius a tothe intensity spot size ro with
P=♂λ/r孟a・apa・ameter
144
開口によるゼーム波回折界の広がり角の測定
理論値と実験値とを比較すると,すべての場合につ いてθ曜θ ηの値は実験値の方が大きくなっている。
このすべての場合に適用できる理由づけを行なうこと はできないが,つねに入ってくる誤差として,1)開口 の形状が完全な円形からずれていること,2)ビームの 中心軸と開口の中心の間のずれ,3)検出器の受光面の 大きさの影響,および4)レンズと受光面の間の距離の 誤差などが考えられる。 いずれもこれらを完全に除 去することはほとんど不可能と思われる。 これらの 誤差の影響を徊々に考慮して理論値の方を修正し,実 験値とより近づける方法をとってもすべての場合にう まく行くとは限らず,今後より正確な実験を行なう際 に検討していくべき問題であると考えられる。
本実験では無限遠方領域での界分布を実験室内で実 現するため焦点距離500mmのレンズを用いたが,こ の焦点の位置での界分布の測定は非常な正確さを要求
し,わずかの誤差が遠方領域に変換したとき,大きく 影響をおよぼし,誤差が小さくならない最大の原因の
一つと思われる。4.むすび
開口によるビーム波回折界の振る舞いを調べる一つ の方法としてその広がり角に注目し,それを実験的お よび理論的に検:討した。 一般に回折界は開口上での 等位相分布に大きな影響を受け,これまで主にその間 題が詳しく調べられているが,ビーム波の振幅分布の 特徴が現われる本実験では位相分布と共にそれが回折
界に本質的に影響を与えていることがわかった。 そ して開口がビーム波に影響を与える目安として,開口 半径がその位置での振幅のスポットサイズの2倍ある いは強度のスポットサイズの3倍としてよいことが理 論的及び実験的に明らかになった。 入射ビーム波の 開口の位置での中心軸と開口周辺との位相差がより大 きいとき(本論文におけるパラメータρのより大きな 値に対応)は広がり角の振る舞いはより複離になり,
実験と理論との比較検討にはなお実験方法の改良を要
する。遠方界の分布を実験室内で実現するため,レンズを 用いてその焦点の位置で観測する方法をとったが,こ れを実際に回折界の遠方領域で直接測定することも考 えられる。 しかしこの場合,各点での回折界の強度 が弱くなり,検出器の感度が問題になる。 これも今 後の検討課題と思われる。
参 考 文 献
1)K.Tanaka, M. Shibukawa, and O. Fu−
kumitsu, IEEE Trans. MTT, MTT−20,11,
(Nov.1972)
2)P.Belland and J. P. Crenn, App1. Opt.,
21,3, (Feb.1982)