長崎大学工学部研究報 告 第29巻 串52号 平成11年
豊島産業廃棄物処分場 の現地調査 と得 られ る教訓
85
後 藤 恵之輔 *・生 田 俊 裕 = 山 中 稔*
SiteInvestlgationattheIndustrialWasteLandfillonTeshimaIsland andSomeLessons
by
KeinosukeGOTOH*,ToshihiroIKUTA** andMinomYAMANAKA*
Theindustrial wastewhichwasillegallyreclaimedonTeshimaIslandcontainsvariousheavymetalSand organicchlorinecompoundssuchaslead,PCB,dioxinandsooninquantlty,aridmostofthem areabovethe environmental standards.Theinfluenceofpollutionhasextendedtothestratum andgroundwaterunderthewaste deposits,anditwasconfirmedthatdioxinwasexistedwithhighconcentration・Thereforeitisneededtooperatean effectivecountermeasureatonce.Thispaperpresentsacasestudyandauthors'siteinvestigationofTeshimaIsland fromgeoenvironmentalpointsofview,anddiscussessomelessonsf♭racounterm easureofpollutionproblem・
1. は じめに
人間 を取 り巻 く環境 は ,文明の発展 と共 に変化 し, また悪化 して きた.特 に ,産業革命以降 ,多種 多様の 産業活動 と大量のエネルギー消費によ り,様 々な環境 問題 を引 き起 こ した.地盤 ・地下水の汚染 は ,化学産 業 を始め とす る汚染集約型産業の発展 と共 に進行 して きた.環境政策 は歴史的 に見れば ,大気環境や水環境 保全の ための対策 が先行 し,しか も各 々の対策は個別 に実施 されて きた.その後 ,水や大気の環境水準 は一 応の改善 が見 られ たが ,汚染物質 それ 自体 は環境媒体 を移転 しただけに終わ り,廃棄物開度 が深刻化す ると 共 に ,地盤や地下水 とい う目に見 えに くい所で汚染 が 進 んだので ある1). こう した ,これ までの環境政策や 環境技術の持つ限界は ,現在の ところ克服 されてお ら ず ,先進国で発生 した地盤 ・地下水汚染 は ,工業化の 進展 と共 に今後 さらに広 がることが懸念 されてい る.
著者 ら2)3)は これ まで ,生活廃棄物や産業廃棄物の
地盤工学的利用 を検討す ると共 に ,地盤汚染 ・地下水 汚染 に関す る事例研究 を行 って きた.本研究 では ,辛 例研究の一つ として ,豊島の廃棄物不法投棄間轟 に着 目し,香川 県豊島の現地調査 により得 られ た多 くの知 見か ら,長崎 県三方山で も顕在化 してい る廃棄物 処理 問題 も考慮 しつつ ,今後の あるべ き廃棄物処理 に関す る対策 につ いて ,い くつ かの考察 を行 うものである.
2.豊島事件の経緯4)
2.1 豊島 について
香川県土庄町豊島 は ,瀬戸内海 に浮 かぶ小 さな島で ある.小豆 島の西方約4kmに位置 し,面 積14.6km2, 周 囲19.8km,人口1535人,662世 帯 (1995年12月1日 現在) を有す る.1955年の町村合併 によ り現在の土庄 町 とな り,海岸部の小規模 な平野部 に ,家浦 ,唐横 , 甲生の3地区が存在す る.気候 は温暖 であ り,平均気 温約16℃ ,年間降水量1000‑1300… と,国内で も雨
平成10年10月27日受理
'社会開発工学科 (DepartmentofCivilEngineering)
・・大学院修士課程社会開発工学専攻 (GraduateStudent,DepartmentofCivilEngineering)
の少 ない地域の一つと なってい る.1938年に故賀川 豊氏が凍兼所 を開設 して以来 ,乳児院施設 ,老人施設 , 精神薄弱者更正施設 などの福祉施設が設 けられたこと か ら,福祉の島 とも呼ばれている.すなわち,後述す る有害廃棄物の搬入が行われ るまでは,の どかで自然 豊かな小島であった.
2.2 事件の発端
豊島事件は,1975年に事業者が ,有害廃棄物の処理 場建設計画を明 らかに したことに始 まる.この計画に 反対す る豊島住民は,直ちに香川県に対 し,要請 ,陳 情 を繰 り返 したが ,県は,「法律の規準 に従 っていれ ば安全であり,廃棄物処理甥の建設は,過疎の進む豊 島にも活性化策 と して有効である.」 として ,処理場 建設 を許可す る方針 を明 らかに した.
そこで ,豊島住民は事業者 を相手に
,
「廃棄物処分 場建設差 し止め請求訴訟」 を高松地方裁判所 に控訴 した.香川県は裁判の結果が出 る前に ,事業者 に対 し, ミミズによる土壌改良剤化手業 (ミミズに無音 な製紙 汚泥 ,食品汚泥 ,木屑 ,家畜の兼等 を食べ させ ,その 実土 を土壌改良剤 として販売 し, ミミズ も販売す ると い う事業)の許可 を出 した.反対す る住民 に対 して県 は
,
「ミミズの♯殖 は畜産業の一種 であり,環境汚染 など起 こすはずがない.」 として ,処分場の受 け入れ 容認 を要求 した.その後 ,住民は反対の立場 を崩 さな かったが ,住民の事業者に対す る不信の声に対応す る 形で,県は事業者に徹底 した指導監督 を約束 したため , 住民は1978年 に事業者 と和解す るに至 った.2.3 嘉業者の操業内容
事業者は操業開始時から,許可外の廃棄物 を搬入 し, 廃棄物の野焼 きを行 っていた. ミミズの兼殖が軽宮 と
して成 り立たなかったため,1983年に金属 くず商の許 可 を受け.シュレッダーダス トに廃油 をかけて野焼 き す るようになった.その後 ,搬入量 も膨大 にな り,立 ち上 る野焼 きの煙 は悪臭 を放 ち,島内でゼ ンソクに似 た症状が蔓延 し始めた.この異常な事態に対 し,住民 は香川県や行政監察局への申 し出を行 うが ,有効 な改 善には繋 が らず ,事業者の行為は止 まることはなかっ た.さらに,事業者は廃油 ,廃鼓 ,鉱浮 など,多種多 様の廃棄物 を運び込み ,野焼 きや埋立 を行 うよ うにな った.
2.4 嘉業者の楕発
1㈱ 年11月16日,兵車県警が廃棄物処理法の疑いで 事業者の摘発に入った.事業者は ,香川県知事の許可
の範囲外である廃油や汚泥 を持 ち込み ,焼却 ,埋立等 を行 った.香川県知事は,事態の究明と改善 を要求 し た住民に対 して ,事業者がどの ようなシステムで これ ほ ど悪質な事業 を行 ったかを徹底的に究明す ることを 約束 した.そ して ,兵庫県警の科学捜査研究所の検査 や ,その後の香川県の請査によって ,有害物質が検出 されたことか ら,事業者に対 して , ミミズ♯殖美の許 可取 り消 しと同時に,産業廃棄物の撤去命令が出 され た.
2.5 豊島住民による調仲 申紳
操業が止 まり,事業者の有罪は確定 したものの ,辛 業者には,当時16‑17億円 と言われた撤去費用 を負担 す る意思 も能力 も無 く,放置廃棄物 は放置 されたまま であった.その後 ,香川県の指導 により,周辺環境 に 影響が大 きいと思われる約10(カーの有害物質が撤去 さ れた.後の訴査で判明 したことであるが,処分場 内の 廃棄物の総量は約51万tであり,撤去 された廃棄物 は ごく一部で しかな く,多くの廃棄物 が処分場に残 され たままであった.
そこで,1993年11月11日,豊島住民は,香川県 と事 業者 ,そ して違法 と知 りなが ら廃棄物の処理 を委託 し た排出業者 らを相手に,「豊島に放置 されてい る有害 産業廃棄物の撤去」等 を求める公害詞侍の申 し立て を 行 った.
3.調査結果 か らの考察 と現地調査 3.1 公害等調整車員会の調査結果
表‑1に,廃棄物の溶出試漠結果4)を示す.表 中の 超過率 とは,採取 した試料牧に対す る,埋立 にかかる 判定基準 を超過す る割合 を示 している.廃棄物 に含 ま れ る鉛の最大検 出量 は ,判定基準 である0.3mg/Ⅰの22 倍 を示 し,超過率は70%にも連 している.その他の有 害物質 も,超過率 こそ低いものの ,最大検出量は判定 基準 を大将に超 える値 を示 してお り,処分場に埋め立 て られている廃棄物は,多種の有害物平 を多量に含ん でいると言 える.
表‑2には ,廃棄物 か らの浸 出水分析篇果4)を示 し ている.鉛の最大検 出量は ,排水基準0.1mg爪の260倍 に当たる大 きな値 を示 してお り,超過率は100 %に連
している.発癌性物質であるベンゼンの最大検出量は, 超過率は15%であるが,排水基準の1400倍 もの値 を記
している.その他 に も排水基準 を上回る項 目が多 く, 将来にわたり深刻な悪影響 を及ぼす ことが容易に想像 で きる.
表‑3及び表 ‑4に,廃棄物層下の沖積層 (粘性土
豊島産業廃棄物処分場の現地調査 と得 られ る教訓
義‑ 1 廃棄物の溶 出試験結果4)
最大検出量 環境基準 超過率 (mg/I) (mg/[) (%)
鉛 6.6 0.3 70
PCB 0.006 0.003 9 トリクロロエチレン 39 0,3 4 テ トラクロロエチレン 0.28 0.1 6
表‑3 沖積層の地下水分析結果4) 最大検出量 環境基準 超過率
(mg/l) (mg/l) (%) 鉛 0.18 0.01 80 批乗 0.062 0.01 40 1,2‑ジクロロエタン 0.0048 0.004 33
層) と花 こう岩層の地下水分析結果4)をそれぞれ示す.
廃棄物層直下の沖積層の地下水では ,銘 ,ベ ンゼ ン等 が ,非常 に高い割合で水質環境基準 を越 えていること が分かる.試験項 目の水質環境基準 を超過す る割合 を, 廃棄物層直下の沖積層 と,さらに沖積層下の花 こう岩 層 とで比較すれば ,花 こう岩層の方 が低い割合である.
しか し,水質基準 を超過 した分析項 目で比較す ると , 沖積層 よ り花 こう岩 のほ うが項 目数 は多 くなってい
る. また ,発癌性物質の疑いがある1,2‑ジクロロエ タ ンや ベ ンゼ ンは ,それ ぞれ水質環 境基準の1500倍 , 240倍 に当たる数値 が検出 されている.
以上の ように ,義‑ 1から表‑4に示す調査結果の みか らで も,廃棄物 による汚染の影響は,地中深 くま で拡散 していると考 えられる.また ,処分場の地下水 位 の変 動 が潮 の干 満 と連動 して い る とい う調査報 告5)か ら判断す ると,廃棄物層内及び下層 に広がった 汚染物質が,外海へ浸出 している可能性は高いと思わ れ る.
3.2 現地調査
第二著者 (生田)は,1998年8月7日に豊島廃棄物 処分場 を訪れ ,投棄 された廃棄物及び処分場の現状 を 調査 した.
写真‑ 1に,廃棄物処分場の全景 を示す.1990年の 兵庫 県警 による摘発後 ,廃棄物の搬入及び埋立処分は 行われてお らず ,その後平坦化 され ,土地の約半分は 覆土 されている. さらに覆土上 には雑草が生 い茂 って いるため ,一見すれば ,廃棄物処分場 であることが分 か り難い ものとなっている. しか し,処分場の至 る所 に不法投棄 された廃棄物 が秀出 してお り,この上 を歩 くと,固いスポ ンジの上 を歩 くような感触 が足か ら伝
義‑2 廃棄物 か らの浸出水分析結果4)
87
最大検出量 排水基準 超過 率 (mg/l) (mg/l) (%)
鉛 26 0.1 100
枇素 0.19 0.1 8 掩水銀 0.0055 0.005 8 PCB 0.̲078 0.003 54
秦‑ 4 花 こう岩層の地下水分析結果4)
最大検出量 環境基準 超過率 (mg/I) (mg/I) (%)
鉛 0.1 0.01 100
批素 0.47 0.01 7 1,2‑ジクロロエタン 6.0 0.004 33 1,1‑ジクロロエチレン 2.4 0.02 14 トリクロロエチレン 6.8 0.03 7
写真‑ 1 廃棄物処分場の全景
写実‑2 地表面下約2mにおける地盤断面
わって くる.この直下 には ,深 さ8‑12mまで廃棄物 が存在 している.
写真‑2は ,深 さ4‑5mまで掘 られ た縦穴の内 , 地表面下約2mにおける地盤断面である. この断面か
写其‑3 山棟みに された廃棄物
写真‑5 処分場内の水溜 まり
らは,金属片類 ,プラスチ ック類 ,ビニール類が混在 している状態が分かる.このような廃棄物層が,さら に10m程 も堆積 していることになる.また ,断面に層 (棉)がい くつか見 られ ることか ら,幾度 とな く廃棄 物の埋立が行われたことが推測 され る.
写実‑ 3に処分場 に山積み に され た廃棄物 を,写 其‑4にその内容物 を示す.廃棄場敷地内には,野焼 きした後の廃棄物が無造作に山凍みにされてお り,写 真に示 され るようなゴ ミの山が随所に見 られる. この 廃棄物の種類 を見れば,金属類 ,木片類 ,プラスチッ ク類 tゴム類等 ,多種の廃棄物が混在 しており,いか にず さんな処理方法が行われていたかが伺 える.
写真15に,処分場内の水溜 まりを示す.現地調査 を行 った 日の天気は快晴で ,処分場周辺では雨の降っ た形跡は見当た らなかったが,処分場内には写真‑5 のような1m四方程の水溜 まりが発見 された.水溜 ま りは,非常に黒 く淀んでお り,見た目にも有害物質を 多量に含んでいることが予想で きた. さらに,水溜 ま り周辺の土にはコケが付着 してお り,常時湿気が高い ことが伺われ ,廃棄物層内の地下水位は地表面付近に 分布 していることが分かる.
写真‑4 廃棄物の内容物
写真‑6 海岸沿いの水路
写真‑ 7 水路内の水
写真‑ 6に海岸沿いの水路 を,写真‑ 7には水路内 の水 を示 している.水路 は海岸 と数mの盛土 を挟 み , 幅4‑5m,長 さ数百mにわた り,海岸 と平行 に設置
されている.水路 を形成す る盛土には,汚染水の海岸 への漏出を防 ぐためのゴムシー トの設置など,適水対 策は取 られていない.一方 ,水路内の水は,写真‑ 7 のように,浅いところでも水底 が見えないほど黒色 を 呈 し澱んでいる.
豊島産業廃棄物処分場の現地調査 と得 られ る教訓
4.廃棄物処理 に関する豊島の今後の対応
豊島に放置 されてい る有害廃棄物 は ,様 々な廃棄物 が混 入 していると共 に ,また減量化の ための焼却処分 で もダイオキシンの発生 が懸念 され る等 ,極 めて処理 が困難 な状態 にある.今後放置で きない状況 は公害等 詞盤委員会 によ り確認 されたが ,封 じ込めによって も 十分 な環境保全 がで きない状況 にある. また ,汚染の 事実 が次 々 と明 らかになると共 に ,ゴ ミの島 とい うイ メージが広 がった結果 ,豊島の名が付 く農水産物の売 り上 げ高の大幅減少や ,豊島出身者への 中傷等 ,いわ れの ない風評被害 も引 き起 こしてい る.
今後 ,有害廃棄物 を溶融固化 によ り無害化す ること が検討 されてい るが ,全ての廃棄物 を無害化す るには 十数年 を要 し,約200億 円 とも言 われ る莫大 な費用 と なることが予想 されている.少 な くとも,今の 日本 に は豊島の大量 な廃棄物 を,短時間かつ安価 に処理す る 技術 は,未 だ開発 されていないのが現状である.安易 な判断によ り不確定 な技術 を導 入す ることは ,新 たな 公害や事故 を誘発 しかねな く,憤重 な対応 が迫 られ て いる.
5.長崎市三方 山にお ける重金属汚染 5.1 三方 山汚染問題の経緯
長崎市 において も,廃棄物処分 に関す る深刻な問題 が生 じている.1997年7月,長崎市松崎町三方山にあ る産業廃棄物処理施設下流域 における水質検査 を長崎 市保健環境試験所 が実施 した ところ,環境基準 を越 え る総水銀 が検出 された.三方山下流域 には市民の水 が めで ある神浦 ダムがあるため ,水道水の安全 を求め る 市民運動 も高 まると共 に ,汚染状況の実態 が明 らか と なって きている.
三方山の施設 は ,焼却炉2基 を備 えた総敷地面積20 万m2の最終処分場 で ある.事業者 は,1975年 に汚泥 収 集 運搬 と最終 処 分の産 廃処理 業者 と して許 可 を受 け ,営業 を開始 した.その後 ,廃 プ ラスチ ック,建設 廃材 ,陶磁器 ,金属 くず等の産廃処理許可 を取得 し, 1993年 には感染症産業廃棄物処理 も可能 な特別管理産 廃処理業者の許可 を受 ける. しか し,この年 か ら,無 許可の一般廃棄物 である西彼杵郡5町の焼却灰 を埋立 処分 している,
表‑ 5 三方山周辺で検出 され た主 な有害物質6) 最 大検 出量 環境基準 排水基準 鉛 0.047mg/I 0.01mg/l 0.1mg/l 批兼 0.012mg/l 0.01mg/I 0.1mg/l 栂 水銀 0.0058mg/t 0.0005mg/l 0.005mg/1 大腸菌 92000個/100ml 1000個/100ml 日間平均3000個
89
表‑ 5に,1998年5月現在に三方山周辺 で検出 され た主 な有害物質6)を一覧す る.鉛 ,批素及び稔水銀の 最 大 検 出量 は ,それ ぞれ環 境 基準 の4.7倍,1.2倍 , ll.6倍の値 を示 していることが分かる.大腸菌 におい ては ,環境基準の92倍 と非常に大 きな値 となっている.
さらに ,処分場下流 には水道用水の ための水源地 があ ることを考慮すれば ,これ らの検出量 は大 きなもので あると言 える.
5.2 三方山にお ける浄化対策について
処理場敷地内における浄化対策 としては ,廃棄物層 を中心 と した有害物質 が集積 してい る全 ての土壌 を, 完全 に掘削除去 し,無害化処理 を行 うことが理想で あ
る. しか し,掘削で きる範囲は限 られ ,汚染地下水 も 移動 ,拡散 している可能性 があるため ,掘削 だけでは 有害物質 を完全 に除去す ることは困難 である. したが って ,汚染地下水 を揚水排出 し,浄化処理 を行 うこと が必要 である.処分場施設の移転や地盤の掘削 を伴わ ず ,通気帯 に地下空気 を抜 く空井戸 を設置 し,気化 し て くる汚染物質 を吸い上 げるとい う,有害物質の浄化
を行 った原位置処理技術7)も,実際 に用い られ た工法 として報告 されてお り,有効 な対策工法の一つ として 考 えられ る.
さらに ,処理場敷地外 では ,汚染 された地下水 を揚 水排出 し,浄化処理す る必要 があると思われ る.工場 か ら排出 された汚染地下水が浄化処理 され た後 ,公園 で再利 用 されている事例7)もあ り,汚染地下水の再利 用化 を図れば ,資源の有 効利 用 に も繋 が る. しか し, 揚水井群の設置場所や揚水量の設定 は ,汚染 を拡大す
る可能性 も含んでいるため ,慎重かつ正確 に行 う必要 があると思われ る.
6.まとめ
豊島の事例 は ,日本 における廃棄物事件の象徴であ る.法の網 を潜 るよ うに不当に処理 を行 う業者 ,その 行 為 を法律の基準 に則 して い ると して黙認す る行政 ,
そ して ,安価 を理由に悪質業者 に廃棄物の処理 を委託 す る業者 ,この三者によって豊島事件 は起 こったと言 って も過言 ではない.現段階で は,処理方法 も検討 中 で あり,処理費用 をどこが負担す るか も決 まってお ら ず ,解決策 は一 向 に見つ か って いないの が実状で あ
る.
豊島事件 は ,決 して対岸の火事で はない.長崎市三 方山において も,規模の違 いはあるものの ,廃棄物処 理 に関わ る事件 が起 きてい る.三方 山の汚染問題 は , 下流域の水源への影響 が懸念 されてい るが ,データ改
ぎんの事実8)と相 まって ,行政 の姿勢 も問われ ること となった. これ らの事件 が ,どの よ うな解決 が図 られ るかによって ,今後の廃棄物 処理の あり方 が変 わ る可 能性 を含んでい ると考 えられ る.
今後 ,豊島 におけ る中間処理 や他の地域 において , 同 じ過 ち ,す なわ ち不法投棄 や不法処理 による地盤 ・ 地下水汚染や水質汚染 を引 き起 こ してはな らない.一 度汚染 された環境 は ,容易 には元 に戻 らない.環境 を 復元す るためには ,新 しい技 術の開発 を進め ると共 に ,
まずは何 よ りも指導監督者で ある行政の ,十分 な実情 把握 と情報公 開 が必要不可欠 で あると言 える. また , 住民側 には ,情報 を正確 に判断す る知識 と広 い視野 を 持 って ,問題 に対処す ることが ,今後 さらに重要 にな って くると考 え られ る.
参 考 文 献
1) 日本地質学会環境地質研究委貞会 :地質汚染の責 任 ,東海大学 出版会,pp.147‑149,1995.10.
2)後藤 憲之輔 ・生田俊裕 ・山 中稔t:長崎大学 を対象 と した ゴ ミの排 出量 及 び処理 方 法 に関 す る調査研 究 ,第9回廃 棄物 学会 研究発表会講演論 文集,pp.
16‑18,1998.10.
3)K.Gotoh,M.Yam anaka,et.al.:VariationofEarlh
andGroundwatcrPollutionsinJapanandSome Countermeasures,Proc.5thJointSymposium of NagasakiUmiversityandChejuNatiorLal Universityon SienceandTechnology,pp.37‑40,1998.4.
4) 廃棄物対策豊島住民会議内部資料.
5)花嶋正孝 ・高 月絃 ・中秒修 身 :廃棄物の不法投棄 による環境汚染 ,廃棄物学会誌,vol.7,No.3,pp.
208‑219,1996.5.
6) 田原 晃哲 :エ コ ロ ジ ー ・ケ ー ス ス タデ ィ検 証 ! 長崎市三方 山汚染 ,細水社,p.8,1998.8.
7)㈱ クボ タ :URBAN KUBOTA,No.34,p.33, 1995.9.
8)「長崎市デー タ改 ざん」,毎 日新聞,1998.2.9.