長崎大学工学部研究報告 第
29巻 第
53号 平 成
11 年
7月
分散協調型多体軌跡推定 システムの高機能化
217
山 本 孝 一 *・下 川 俊 彦*
吉 田 爺 己 彦 **
ImprovementofCooperativeSystemforMulti‑Target MotionAnalysュ●s
by
KoichiYAMAMOTO*・ToshihikoSHIMOKAWA*
andNorihikoYOSHIDA**
Trackestimationoftargetsfrom sensordataisacrucialissueinactivedynamicsceneunder‑ standing.Multitargetmotionanalysis,wheretherearemultiplemovingtargetsandmultiplefixedsensors whichonlymeasurebearlngSOfthetargets,istoassociatetargetsandsensordata,andestimatetarget tracksbasedonthatassociation.ThisisanNp‑hardproblem ingeneral,andsolveduslngStepWise relaxation.However,itishardtoobtaintheoptimalsolution,asthemethodeasilygetstrappedinoneof localoptima.
Weappliedthedecentralizedcooperativesearchtechniquetothisproblem,andprovedourmethod effective.Themethodusesmorethanoneprocessors,eachofwhichhasitsownpartialsearchspace, searchingmultiplepossibilitiesinparal
l
el.Thisapproachleadstocooperativedistributedvision.Weare currentlyextendingourmethodtoaddressthecasewheretargetsmovetowardvarylngdirectionsandin varylngVelocities.Thispaperpresentsthecurrentstatusofourresearch,andpresentstwoprototypesof cooperativemultiagentsystemsforextendedmultitargetmotionanalysis.1.はじめに
近年 ,方位角のみを検 出す るセンサか らの情報 を利 用 して,移動 す る物体の軌跡 を推定 しようとす る研究 が幾 つかなされている。 また,方位角を検 出で きるセ ンサの研究 も行なわれている。
これまでの軌跡推定の研究は,移動 す る
1つのセン サか らの方位角情報 を元 に,等速運動 をす る
1つの物 体の軌跡 を推定す る単体軌跡推定 がほ とん どであ った が,文献 1)では これを複数 の物体 に対す る多体軌跡 推定 に拡張 を試みている。
この手法は固定 された複数のセンサか らの方位角情
報 を統合 して,等速運動 をす る複数の物体の移動軌跡 を推定す るものであ る。
この ように複数のセンサか らの情報 を統合 して適切 な解 を求 め るシ ス テ ム は分 散 セ ン サ ネ ッ トワー ク
(DistributedSensorNetworks略 して
DSN)と呼ば れ る。
これは分散人工知能の分野 に含 まるもので,数 多 く の研究がなされている
2) 。 なかで も通信戦略や情報統 合の統合アルゴ リズムは主な研究テーマ とな ってお り,
DVMT (DistributedVehicleMonitoringTestbed3) ) はその例題 として有名であ る。
平 成
11 年
4月
23日受理
*九州大学大学院 システム情報科学研究科 福 岡市東区箱崎
(GraduateSchooloHnfom ationScienceandElectricalEngineering,KyushuUniversity,Hako2:aki,Fukuoka)
**情報 システム工学科
(DepartmentofComputerandlnfom ationSciences)218
山本 孝 一 ・下川 俊 彦 ・吉 田 禾 己彦
1)で提案 された多体軌跡推定の手法は,全てのセ ンサか らの情報 を 1つの問題解決
PEに集めて集中的 に処理す るものである。
推定 にあた ってほ最尤法 を用 いて解 を探索 してい る。 しか しこの間題 において,解空間には無数の局所 解が存在 している。そのため局所解 に頻繁 に陥 って し まい,最適解が得 られに くい とい うことが この手法の 大 きな欠点である。 それを改善するために,
1)では確率的探索である焼鈍法
(SimulatedAnnealing)を導 入 しているが,その結果処理時間が大幅に増大 して し まった。一般 に分散処理化す ることによる利点 として 解の多様性が増大す ることにより局所解 に陥 る危険が 減少 し,処理の分・ 散化に より処理速度が向上すること がいわれている。
論文
4)では 1)の手法を基 に して,システム内に 複数の問題解決
PEを存在 させ
,PE同士 が通信 に よ
り協調 を計 る分散協調処理 を提案 した。
また実際には,最初か らデー タが揃 っているわけで はな くデー タは一 つずつ逐次的 に入力される。現実の 世界において この ようなシステムを使 うためには この ような入力に対応で きるような入力のシステムが必要 である。
以下では第
2章で多体軌跡推定の問題 を形式化 し, 第
3章で従来の集中処理 による推定及び焼鈍法 を含む 手法 を船介する。第
4章で分散協調処理の手法を提案 し,第
5章で実時間処理 システムへの改良およびその 実装について述べ,第
6章ではそれ らの手法 と従来の 手法 についてそれぞれ実験並びに比較 を行ない,最後 に第
7章でま とめ る。
2.多体軌跡推定間窪
図 1に示 す ように,システムは等速運動 をす る
N個の ターゲ ッ トと, ターゲ ッ トの方位角を検出で きる 固定 された S個のセンサか らな る。各センサは時刻 毎の方位角デー タを得 る。多体軌跡推定 とは, これ ら 複数のセンサか らのデー タを統合 して各 ターゲ ッ トの 初期状態 ( r br
y,V, aV y ) を求め るものであるO
ここで問額 となるのは,
・センサの得たデー タとターゲ ッ トとの対応 をどの ように とるか
・対応 を とったデー タか ら軌跡 を どの ように推定す るか
の
2つである。
これまでシステムの概略 を述べたが, これ らの間男 をを実際 に形式化す る。 ターゲ ッ トの状態は位置 ( 稚,
y,f
) と速度
(vhV f , f )か ら次の ように定義で きる。
図
1ー
ヽノ
ーー丘一々 ・Q
I々lHⅦ相川Uィ川Ⅷ■ U
JⅦ川U
Ju̲U.巧J
り一帖
戎ノシステムの概要
,t = 1,・ ・ ・ ,N
ここで
yf,(A)
‑y f ,(
0)+kAvL(0)r f y( k)
‑rfy(0)+kAv3(0)v F x( A)
‑vf.(0)v ,( f A)
‑v,f(0)(1)
(2)
t は ターゲ ッ ト識別子 , Aはサン′ プ リング間隔,k は 時刻識別子 を表す。センサの状態 は位置 ( r 去
,ytis)よ
り
Xi‑
, i
‑ I , ・・・, S( 3)
と定義で きる。 ここで iほセンサ識別子 を表す。セン サ
iか ら見たターゲ ッ トtの相対的な状鹿ベ ク トルは
Xt
・ i ( k)‑Xl ( k)‑Xi
‑か ( k)
rfyi(A)
vf.(k)
v i( k)
(4)
時刻 kにセンサ iがターゲ ッ ト t に関 して観測する方 位角デ‑ タは
pt
・ "k
,‑tan‑I
[猪
]・pL ・ "k) ( 5 ,
分散協調型多体軌跡推定 システムの高機能化
とな る. ここで L l
i・i(k)はセンサ iにおけ る白色 ノイ ズであ る。以上 よ り時刻 kにセンサ
iが観測す る観測 ベ ク トル
βi(k)は式
(5)よ り
(6)
となる。 また,時刻 kまでの観測ベ ク トルの黒帯 βkを
βk≧(β
l( 1 )I ,‑
,βl(k)I ,‑ , P
s( 1 ) ;‑ ,
βS(k)I)I( 7 ) と定義す る。
センサの観測 した観測ベ ク トルには,それぞれの観 測値 が どの ターゲ ッ トに対応 しているか とい うデー タ が含 まれていないので,観測ベ ク トル β
i( k) に
0‑1のみか らな る
NxNの割 り当て行列
0(k)を乗 じて や る必要 があ る。 この
Ci(k)は
N !通 り存在 す る。
例 えば
N‑ 3な らば
0(k)は以下の
6通 りが存在 す
る。 10 0 01 0 00 1 010100001 0
10001
100
1
00001
010
0
01100
010 100
010
001 EiiZ8
[ 0' ( k)
],I‑ 1は観測ベ ク トル βi ( k) の j番 目の要素 が ターゲ ッ ト
tに対応す ることを表 す。例で示す。
0
10100
001
β 1 ・ i ( k )
β 2・Z(k
)
β 3・i(k)
⊂
⇒
ββ3 ,1日
Z''((kk)
)β2
・
i(k )(correspondtothetarget1 ーco汀eSpOndtothetarget2 ーco汀eSpOndtothetarget3
割 り当て行列の集合 :
ck 空く C 1( 1 ),・ ・ . , Cl( A) ,‑・ , Cy( 1 ),・ ・ ・ ,Cy( k))
(9)が全観測デー タの ターゲ ッ トに対す る組 み合わせ を決 定す る。
システム全体は式色ゆで記述で きる.
Xt・Z'(k+1)
‑
OXt・i(k),i‑ 1,‑,
N,i‑ 1,・ ・
・,S( 1 0 )
ここで
0‑
0 人 ︼ O 1
A 0 1 0
O 1 0 0
1000
219
は状態遷移行列 を表 す。
3.
集中処理型の推定
全 てのセンサの情報 を
1つの
PEに集 めて集 中的 に処理 す る参考文献
1)の手法 を述べ る。
ターゲ ッ トの推定初期状態
k .
‑
ここで
ki.‑
,i
‑ 1 ,I ‑,N,
義(o)
a , (
o)戻(o)
?,(
o)
, J=
1,‑,N,
( 1 1 )
3日琶
が与 え られ る と,センサ
Sが時刻 jに得 るターゲ ッ ト t に関す る方位角デ‑ タは
BL・Z'O',k o,‑tan‑lgS ]・ (13,
と推定 で きる. センサ Sの時刻 j におけ る推定観測ベ ク トルは式柏 よ り
β1・
' O
',Xo)打nu
丸
S
代り慢一き
, ' U ,
k 。)‑ ( 1 4 )
とな る。 また時刻 kまでの推定観 測 ベ ク トル の累 積 は
bh(k.)
仝(
Bl(1,X
。);‑,
β1(k,X.);・ ・ ・ ,
P s(
I
,Xo)' ,I .
・,Ps(k,Xo)')'
s
AE‑
t Ni 葺
,葺[PiO''IC'O''・bfl.R,I 1
l pL U
ト OI U)
・&‑
U,k 。)]3日囲
実際の ターゲ ッ トの軌跡 に対す る推定 した初期状態 の確 かさの評価 に平均二乗誤差 ( ASE)を用 いる。
A( βkE Ck
,Xo)‑ie x p ( ‑ ‡ ・ , 妻, f l l P t . O.)
‑0・ G・ , ・ &・ b ・ ・
ko,],
(.6,
・R{.lpiO・ト OIO・)・
約・ ,
k 。)])・s
AE‑
去∑
∑[βiO・)IC,O・)・bflU・,k.)]′( 1 3
こ こで
Ri‑a,12Iはセンサ
iに おけ る ノイズの共 分散
行列
(NxN)であ る.E とターゲ ッ トの関係 を考慮 し
て式87 ) を書 き換 える と
220
E‑
S + Nt f
lEts
i N T t f . I ∑ k
′(
,.( . I . ・ f l . ・ 3
i j ∑ Tl \ q i
山本 孝一 ・下 川 俊彦 ・吉 田 紀 彦
qE
となるO ここで
[CiG')]mf‑ 1は
C(i,j,i)‑mを表す。
多体軌跡推定の問題 は, この平均二乗誤差
(ASE)を最小化する問題である と言い替 えることがで きる。
まず割 り当て行列 Ckを固定 した場合
,Gauss‑Newton法 を用いて ki oを決め ることで E
tを最小化すること がで きる。 つま りターゲ ッ トtについて並べ られた方 位角のデー タ列 か らターゲ ッ トの初期状態
X toを計算することがで きる。 また,式¢郎ま非負の数の加算で あるので,X。が与 えらた場合に
Cり こ関 して E を最 小化することは,
OU)に関 して個 々の項 を最小化す ることに等 しい。 よって次の操作 を行な うことで,初 期状態 9.を固定 した場合に
Etを最小化する
OU)を求め るこ とがで きる。
Foral10万)
, i
‑ 1,2,・ .
・, S , i
‑ 1,2,‑
,A mlnOU)
RL
l
pi
O')
‑0 ' G ' )・ bi U' ,
k .) ][
βi
G・) ‑ O G ・ )・ 的 ・ ,
k .) ] qENext
i
,j.このアルゴ リズムにおいて 鶉 と
Ch・Eは ‖司目の繰 り返 しでの
Xoと Chの解である
。Stepl)と
Step2)の両段階 において
Eは単調減少 となるので, この繰
り返 しで E は局所的な最小値 には到達 す るこ とが保 証 される。 しか し, この解空間には局所解が多数存在 してお り, この手法ではかな りの場合に局所解に陥 っ て しまう。そ こで これを避けるために焼鈍法を含む手 法 が提案 された。
4.
分散協調 による改良
4,1
分散処理化
分散処理化にあた り,システム内の全センサを複数 のグループに分割する。分割 されたセンサ群は
1つの
PEに属 す こ とにな り,それ らの デー タの処理 は各
PEが受け持 つ。
1つのセンサが複数のセンサ群 に含 まれることも許す。
また,グループ分けす ることに より解に多様性が出 て,局所解に陥 る可能性が減 る とい う利点 もある。 ま た, これ らの中間解を交換することにより,協調的な 処理 が実現で きるので,効率的なシステムの構築が期 待で きる。
4.2
通信戦時
4.2,1
分牧歌立型
それぞれのグループがお互いに通信 を行なわない最 も簡単 な分散処理 の手法。各
PEは集中処理型 と同 様の反復 を繰 り返す もので,集 中処理型の ものが複数 個集 まっただけの もの と考 え られ る。
各
PEはそれぞれのローカル
ASEが最小になるよ うに軌跡 を推定 す る。通信 を行 なわないので,他の
PEでの結果は軌跡推定 に全 く反映 されない。 しか し 集中処理型 と比べ る と,センサ群が複数存在するので 解の多様性が得 られる。 また,処理 を分散 しておこな
っているので処理 コス トも軽減 している。
4.2.2
ローカル法
ローカル
ASEに基づ く通信戦略である。
1回の軌 跡推定 が終 了す る毎 に各
PEはその時点の推定初期 状態 を通信 によ り交換 し合 う
。PEはその ように して 得た推定初期状態 か ら自分のセンサ群 におけるローカ ル
ASEを計算する。結果 として
PEはシステム内の グループ数だけローカル
ASEを得 るが,その中で最 もローカル
ASEが小 さい ものを次の反復 における初 期状態 として採用す る。 つま り反復毎 に各
PEは複 数の初期状態の候補の中か ら自分達のグループに とっ て最 も都合の よい初期状腰 を選んで採用 してい く。 シ ステム全体 としての利益は考慮 に入れてお らず,それ ぞれの グルー プは利 己的 に働 くといえ る。 しか しグ ループが複数存在するので,解の多様性が得 られる。
4.2.3
グ ローバル法
グローバル
ASEに基づ く通信戦略である。
1回の 軌跡推定 が終 了す る毎 に各
PEはその時点の推定初 期状態 におけるグローバル
ASEを計算する
。PEは 自分の推定初期状態 とそれか ら得 たグローバル
ASEを通信 に よ り交換す る。通信の結果各
PEはシステ ム内のグループ数だけ初期状態 と,その時のグローバ ル
ASEを得 る。その中か ら最 もグローバル
ASEが 小 さい ものを選 んで次の反復の初期状態 として採用す る。結果 としてシステム全体か ら見て最 も適 した初期 状態が,全てのグループで一様 に採用 される。 この よ
うにす るこ とで反復毎 に各
PEで局所解 を避 けて初 期状態が選ばれることになる。通信に より各グループ はシステム全体 としての 目的を考慮 して振舞 う。
前述の ような方法で推定 を進めてい くが次に各プロ セ ッサの推定処理 が終 了す るための条件 を以下 に示 す。
・各プロセ ッサの推定処理 の終了条件 は
,(ASEの分散協調型 多体軌跡推定 システムの高榛能化
変化 )
<105とす る。 それ以降 ,その プ ロセ ッ サは推定 しない。
・その他のプ ロセ ッサは,終了 したプ ロセ ッサの推 定結果 を引続 き利用す る。
・全プロセ ッサが推定 し終 えた時を終了 とす る。 こ の時 ,各 プ ロセ ッサ の
ASEと比較 して,最 小
ASEを出 したプ ロセ ッサのデー タを最終推定結 果 とす る。
今 までのシ ミュレーシ ョンによる実験 では,デー タの 格納は,多次元配列 を用 いていたため,デー タを上書 きしな い限 りその デー タは いつで も参照 可能 で あ っ た。 さ らに,通信 を必要 とせず,配列参照でデー タ交 換が可能なので,送受信q)タイミングな ども気 にす る 必要 もなかった。 しか し,実際の分散環境下では,過 信に よるデー タのや りとりを実現す る場合,送信側 と 受信側がそれぞれ然 るべ き処理 を とらなければな らな い.具体的 にはシ ミュレーシ ョンではデー タが欲 しい 側がその部分の配列 を参照す るだけで参照 され る側は 何の処理 も必要なか ったが,分散化 され る と参照 され る側がまずデー タを送信 し,参照す る側 がそのデー タ を受信す る とい う処理手順 にな る。
実際の分散環境下 では,いつ他のプロセ ッサが終 了 したのかが見 えないので,他のプロセ ッサが終了 した に も関わ らず,デー タを待 ってい る状態 にな る可能性 があ る。そのためには他のプロセ ッサの状況 を把握 し て,それに応 じた処理 を しなければな らない。 そ こで プ ロセ ッサの状態 を示す
flagを導 入 し
,flagを送受 信す るこ とに よって,他のプロセ ッサの状態 を把握 さ せ るように した。具体的 には
breaknagと
iteration flagがあ り,前者 はプ ログ ラム を終 了すべ きか どう かを判定す る
flagで,後者 はそのプ ロセ ッサでの計 算が終了 したか どうかを示す
flagであ る。
サーバが, クラ イアン トか ら
iterationflagを受 け とるこ とに よって,各プロセ ッサの状態 を知 ることが 出来,全てのプロセ ッサの計算が終了 した時 クライア ン トに
breakflagを送信 し,プログラムを終了す る0
5.
実時間処理 システムへの改良
5.1実時間処理 システムへの移行
実時間処理 システム とい うのは,次 々 と入力デー タ が入 り,それ らを次 々と裁 いてい き,解 を求め るよう なシステムの こ とである。
これを多体軌跡推定で実現 しようとい うのが,今回 のシステムである。具体的 には,次 々 と得 られ る,固 定 された複数のセンサか らの方位角情報 を統合 して, 等速運動 をす る複数の物体の移動軌跡 を次 々 と推定 す
221
るシステム, と再定義 され る。
その概要 を下 に述べ る。
・このシステムへの改 良点を少な くして拡張す る形 で実装す る方法 が望 ま しい
・入力が間欠的 にな り従来 よ り多 くのデー タを連続 的 に扱 わねばな らない。
一連続的 に入 って くるデー タの中か ら前 システム と同数のデー タを選びだ し推定 を行な うとい う 形 で実装
・このシステムの処理速度が入力デー タに追 い付か ない場合,現在の処理時間 を短縮 しなければな ら ない可能性 もあ る。
これ らを考慮 しなが ら, 実装を進 めて行 く必要 があ る。
5.2
分散型実時間処理の入力システムについて 入力はセンサ に よって行なわれ る。 その過程は次の ようになる。各センサの入力はグルー ピングに したが って,入力デー タを分散 し,割 り当て られたプロセ ッ サに入力され る。 それに伴い,各プロv t f ‑ ッサは入力さ れたデー タでそれぞれ推定 を開始す る。 これまでのシ ステム と今回q )実時間処理 システムの入力の違 いにつ いて述べ る。
今 までは,デー タは一 つづつ入力され るのではな く, 一定数の入力デー タをま とめてシステムに入力 してい た。 よって,実時間処理 システムを実現す るに当た っ ては今回 もバ ッチ処理 に よるシ ミュレーシ ョンでシス テムを構築 した。しか し,実時間処理 を実装す る場合, 推定処理 を進めなが ら次 々と入力され るされ るデー タ を扱 わねば な らない。 将来的 にセンサの閉場 や 入 力 デー タの同期 に対応で きるようなモデルを考案 しなけ ればな らない。
まず,センサか ら送 られて きたデー タを入力システ ムに蓄積す る。 この
datapoolか ら一度の推定 に
PEが使 うデー タの個数のみを入力す る。 そのデー タを選 ぶ関数 についてであ るが,以下の ようない くつかのア
イデ ィアが考 え られ る。
1
.単純 にデー タの個数 を増やす
(10‑ 100‑ 1000‑‑・ ) 。 これは推定回数 を減 らす ことが出来 る。
2.n
個 デー タがたまるご とに推定 を行ない,処理 を 終 え る と次 の n個 で推定 を行 な う ( 隣接 した推定 間でのデー タの重 な りがない)。具体的 にはデー タ をため る部分 と計算部分 を分け,前者はデー タを
〝個 ず つに区切 りなが らため続 け,後者 はその区切 られた n 個ず つのデー タで推定 を行 ない続 け る.
これ に よ り入 力 され た デー タを無駄 にす る こ とが
な く,正確な推定が可能にな る。
222
山本 孝一 ・下
川俊彦 ・吉田 紀彦
3・queue
の ように S個だけ新 しいデー タを入れ 古 い順 に S個 デー タを破 棄 して推定 を繰 り返 す方法 である。 この方法の特徴 としては,
・S
の履歴 を記憶 しておいて,動的 に次回の
Sの値 を決定する方法 も考 え られる。
各方法の主な短所は以下の通 りになる。
1.計算量が莫大 になる。
2.
この方法は入力の頻度が高い場合に処理 が入力に 追い付かない。
3.
入力デー タを無駄 にする可能性がある。
上の
3つの中で無視で きないのは
,1と
2の方法で あろう。 この
2つはいずれ もシステムのパフ ォーマン スを下げることになる。 しか し
3の短所は, このシス テムの性質を考 える と重要ではない と考 えられる。従 って今回は 3の方法を採用 した。以下 に, この方法で の具体的な実装方法について述べ る。
まず
,nについては現システムの入力 と同数で考慮。
次 に Sについては
,k回 目の推定 と
(k+1)回 目の間 に新たに入力された数を指定 している。すなわち,令 推定毎 に新 し く入力されたデー タ数だけず らす とい う ことになる。実際 には
,n個のキ ューを用意 し,新た にデー タが入力される度 にキ ュー イング してい く。 こ の時排 出されたデー タは使わない。要するに時系列 に 並 んだ最新のデー タの内,新 しい順 に n 個 を選 ぶ と い うことである。 この方法によ り入力デー タの数 によ らず確実 に一定個数の最新デー タを確保で きる。その アルゴ リズムを疑似言語で表現すると以下の ようにな る。
要素数
nの配列を用意す る。
ifnew̲data
for(i‑0;i<n;i++) begin
data[k]‑data[k+1];
datalmax̲data]‑new̲data;
end
5.3
システムの実装
5.2
節 で,入力システムの構成 について述べた。 こ の構成 を実装 レベルで書 き下す と,
1.最初 に初期位置 と速度ベ ク トルを入力させ, これ を元に予めサンプ リングを作 る。
2.
それ らの中か ら
dataを選びだ しシステムに入力
n,Sの値 についてはプログラムの始めに入力す る ように している。そ して,推定毎に Sの分だけず ら したデータをシステムへの入力 とした。
そのアルゴ リズムを疑似言語で表現する と,
for(j‑0;j
<num̲oL sensor;j
++)for(i‑0;i<num̲oL target;i十十) for(t‑0;t<n;t++)
sensor.B[i][t]‑sensor.sample
⊥B
[i][t+S];で表現で きる。 ここで
num̲oL sensorはセンサの 敬
,nun̲ou argetはターゲ ッ トの数 とす る。
ただ し今回実装 したシステムは実時間的に一 つずつ 入力 され る形式 ではな く,各推定間の入力が S回存 在 した と仮定するシ ミュレーシ ョンである。従 って, 理論的 なアル ゴ リズム とは入 力の タイ ミングが異 な
る。
6.
実験 と評価
6.1
シ ミュレーシ ョンとの比較実験
6.1.1分散環境での実験
まず,論文
4)でのシ ミュレーシ ョン と今回実装 し た実際の分散環境でのシステムで性能比較 した。但 し, 前節で述べた,終了条件は
2つのプログラムで実際 に 分散化 されたか どうかを除いて全 く同 じにするために 変更 した.
その際, ターゲ ッ トを
4個センサを
3個 としてセン サを配置 した。
ここでは, 1つの例についての実験 を行なった。 こ の実験でのサンプ リング数 もシ ミュレ‑シ ョソ と同 じ 条件 にす るため
,100とした。次 に推定結果 を表す と 図
2の ようになる。 ここで
,ASEの推移は図
3の よ
うになった。
また,その推定軌跡 を図
4に示す。 これ らによ り実 際に分散化 して も,性能を落す ことな く推定可能で, その速度比は
2.44であることが分かった。 この ことは 論文
4)において提唱されていたが,分散協調処理 が多体軌跡推定 において,非常 に有効であることを改め て示 している。その理 由 としては分散処理化 によ り処 理能力が向上 し,局所解に陥 る危険性 が減 った ことが 挙げ られ る。 また
PE同士 が協調 す るこ とで さ らに 精度が向上 していることも分かる。
図
2シミュレーシ ョン と分散環境の比較
Simulation ・Distributed FinalASE 0.0 0.0Time 52.07 21.375
速度比
1 2.44分散協調型多体軌跡推定 システムの高楼能化
TransitionofASE
山SV
5000 4500 4000 3500
3000 2500 2000 1500 1000 500 0
1(X
X )
0 8∝)0 6(X)04∝)0
2㈱
0
PEl ‥
PE2 ‑‑I‑〜‑‑‑
PE3‑ 日■一一一
5 10
iteration
図
3 ASEの収束状況
15 20
Truetracksandestimatedtracksofthetargets
0
2(X〉0 4tX)0 60007x
図
4推定軌跡
80(X) 10000
6.2
収束条件 と実行時間の関係
収束条件の変化 に伴 い,時間 も当然変化す る。条件 が きつい と収束 に時間がかか るが,解の精度は良 くな る。反対 に,条件が緩 い と収束 には時間がかか らない が,解の精度は悪 くな る。
一般的に収束条件 を厳 し くすれば, よ り良い解 が得 られ るが,システムに よってはそ こまで厳密な解 を必 要 としない場合 もあ る。例 えば非常 に入力が多 く,樵 定 を数多 くこな さなければな らない場合,一つの推定 に時間を とって精度 を高めるこ とよ り,入力に追 い付 きなが ら推定 を こなす こ との方 が重要 であ る。
ここで,精度 を落す方法 について考 える。 このシス テムは
ASEに よって処理 を進めている。具体的 には 収束条件の判定 に使 われた り,最 良な推定初期状態 を 選 ぶ時 な どに も使 われ る。 つま り, このシステムにお いての精度は
ASEの値 に依存 してい る。従 って,収 束条件 であ る
(pre̲ ASE‑ASE)の値 を緩和 す るこ とに よって,精度 を落す こ とが出来,処理の高速化が 図れ る。 ここで
,pre̲ASEとは,前
iterationでの
ASEの値 であ る。 その図
5を示 す。
図
5収束条件 と実行時間
223
pre̲ASE‑ASE iteration finalASE time 0.00001 10 0 21.25 0.0001 10 0 21.00 0.001 10 0 21.00 0.01 10
0
21.00 0.1 9 0.000127 21.00 1.0 7 0.268100 19.00 10 6 0.742492 17.00 100 4 6.588673 ll.50 1000 4 6.588673 ll.50前論文では,(
bye̲̲ASEIASE)<10‑5であ ったが, 今回
100にまで緩和 して も
,ASEは
6.6程度 に収 まる
こ とが分 かる。推測すべ きデー タのオー ダーが
1000程 度であ るこ とを考 えて も十分小 さい といえる。逆 に実 行時間は
4ノ7程度 にまで短縮 され る。
6.3
曲線推定の実額
次 に実時間処理 を実装 したシステムに関す る実験 を 行 な った. 今 回は一 度 の推定 に使 われ るデー タ数 は
100とし,次の推定 でず らすデー タの個数 は
10として い る。 この ことは,一度の推定 中に新たに入力され る デー タの個数 が
10個であ るような環境 を想定 してい る とい うことであ る。 また,今回は推定回数 を
90回に固 定 した。従 って,全部 で使 われ るデー タ数 は
,100+10×89‑990
とい うこ とにな る。 また, この推定 では 精度は
0.01に した。
今回使用 した曲線の軌跡 は図
6,
7であ り,推定結 果は図
8,10の ようになる。入力軌跡
1に対 しての推 定 結 果 は 図
8の よ うに な る。 この 時 の 各推 定 で の
Trackofthetargets 30000
25000
2㈱ 0
> 15000 10000 50000
1 0 0 0 2 0 0 0 3 0 0 0 4 0 0 0 5 X 0 0 0 6 0 0 07 0 0 08 0 0 09 0 0 0
図
6入力軌跡 1
224
山本 孝一 ・下
川俊彦 ・吉 田 紀彦
iteration
の数 は図
9の ようにな る。 また,入力軌跡
2に対 しての推定結果は図
10の ようになる。 この時の 各推定での
iterationの数は図1 1 の ようになる。 これ らの結果を見 ると,入力軌跡 1の ような緩やかな曲線 に対 しては,かな りの精度で推定可能であることが分 かった。 しか し,入力軌跡 2 の 3 次曲線の ように曲率 が きつ くなる と少 し誤差が出ている。各
iterationの
Trackofthetargets
1 0 0 0
20 0
03004
0005
㈱ 6000700080009000X 図
7入力軌跡
2Tracksoftargets
100 20003000 4∝)05I000… 7㈱80009㈱
図
8入力軌跡 1に対する推定軌跡
TrarlSitjorlOf托eration
10
8 .⊂:2 6 i. a
4
2
0
¥
芳 ■ 一 一 ‑一 ■ ■
PE1‑‑. . . . ・ . . ・ . .
PE芝‑‑
‑ * 一 一 一 一
PE3 ‑
‑ ‑ 1 . . ‑
0 20 40 60 80 100
estbTlatiorl
図
9 iterationの推移
30(×)0
25000
20000
I. 15∝)0 1㈱0 5000
0
35知2Lb201
uO雪2)○よ
Tracksoftargets
1000 2000300040005X㈱ 6000 70008α)0抑
図
10入力軌跡
2に対する推定軌跡
Trans托ionofiteratbn
PE1 ‑ ‑‑ PE2 ‑‑‑‑★一一一一
PE3 .‑‑トー一一
ニ L...・.r. .
0 20 40 60 80 100
ostimation
図
11 iterationの推移
2推移 を見て も図1 1の方が
iterationの数が多 くなって いる。 また,曲率 が大 き くなっている時 に
iterationの数が増 えている。 これは収束 に手間を要 した ことを 示 している。
7
.おわ りに
多体軌跡推定の問葛は従来の方法では 1つの問題解 決 PE で集中的に処理 されていた。 また この間額の 解空間には無数の局所解が存在するため局所解 に陥 っ て しまうことが多 く,最適解が得に くい という欠点が あった。それを改善するために確率的探索である焼鈍 法が導入 されたが,これは処理速度が大幅に遅 くなっ て しまった。
一般 に分散処理 を行 ない協調 す るこ との利点 とし て,解の多様性が増 し局所解 に陥ることが減少す るこ
と,処理能力が向上することなどが挙げ られる。
そ して,通信戦略 としてローカル法を採用 し,従来
の手法 を元 に複数の間層解決 PE を存在 させ,分散
協調処理 を行な う手法がシ ミiレーシ ョンされ 効果
を得た。 この結果は多体軌跡推定の問題において分散
協調処理 が非常に有効であることを示す ものである。
分散協調型多体軌跡推定 システムの高楼能化
そ こでその分散協調処理 を実際 に分散化 された環境 に実装 し,性能 と速度 をシ ミュレーシ ョン と実験比較 した。 その結果 として性能 を落す ことな く実装 で き, その速度 はシ ミュレーシ ョンの
2.44倍であ ることが分 かった。 これに よって実際の分散環境で もこの手法 が 有効 であ ることを改めて証 明 した。
また, より現実的なシステムを 目指 し,実時間処理 システムへの改良を行な った。その中で, よ り高連 な 処理 を実現す るために,収束条件 を緩和す ることに よ って推定精度 を落 し,実行時間 とのバ ランスを とるこ とを試 みた。 さ らに曲線 を細分化 し直線近似す るこ と によ り推定す ることに成功 した。 これに誤差を加 えて も推定 で きることも分 かった。
最後 に一度の推定 で使用す る入力数 を変化 させて実 験 を行なった。 ここでは,緩 い曲線 に対 しては入力数 を減少 させ るこ とに よ り処理 を高速化で きた。 また, 曲率の強い曲線 において も微妙 にバ ランスを整 えるこ
とに よって推定可能であ るこ とが分 かった。
今後の課題 としては,実際 にセンサを使 って,シス テムにデー タを入力させ推定 を試 み ることが挙げ られ る。
225
参 考 文 献
1)Pe主‑yihTingandRonaldA.Iltis,MultiTarget MotionAnalysisinaDSN,IEEETransactionson System,Man,andCybernetics,γol.21,no.5,pp.
1125‑1139,Sep/Oct.199
1 .
2)D.N.Jayasimaha,S.S.IyengarandR.L Kashyap,InformationIntegrationandSynchroni‑ zationinaDistributedSensorNetworks,IEEE TransactionsonSystem,Man,andCybernetics
,
vol.21
,no.5,pp.1032‑1043,Sep/Oct.1991 .
3)EdmundH.Durfee,VictorR.Lesser,andDanielD.Corki
l
l,CooperationThroughCommunicationin aDistributedProblemSolvingNetwork,MichaeN.Huhnsed,DistributedArtificialIntelligence (1985),MorganKaufmannPub,pp.29‑58 4