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養護教諭による担任支援

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Academic year: 2021

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(1)

養護教諭による担任支援

新谷りつ子ホ・岡田 珠江**

子ども達は身体的な症状を訴えて保健室に来室するが、そのときに彼らは自分の心の悩 みを少しずつ話す場合もある。

保健室では、子ども達は心の側面を見せることがあるため、担任は子どもの心的状態に ついて様々な角度から理解し、問題行動を解決するための手だてを模索するため、子ども の保健室での様子を聞き、その後の学級での指導について養護教諭に相談をする。

そこで本稿は、養護教諭が指導困難な学年を担当した担任に対し面接を行い、その中で 提示した事を担任が試みとして活動し、その活動によって起こった児童、保護者の変化と、

それを見た担任自身の再認識について記述した。また、担任の対応が変化したことにより、

学級全体にも変化が生じてきたことの、実践報告でもある。

キーワード:養護教諭、担任支援、目標設定、子どもの思いを聴く、ロールプレイ

Ⅰ.問

1996年9月保健体育審議会の答申で「養護 教諭は、児童・生徒の様々な訴えに対して常に JL、的な要因や背景を念頭において、心身の観察、

問題背景の分析、解決のための支援、関係者との 連携など、心や体の両面への対応を行う健康相 談活動が必要である。」と述べている。1)

70年代半ばから、校内暴力、いじめ、不登校 等の問題が起きるようになった。このような様相

のなかで、これまでに比較的安定していた小学 校でも、「学級崩壊」という問題がおきるように なった。チャイムが鳴っても席に着かない、教師 の声が聞こえなくなるくらい話ををする、暴言を

はく、机の上を歩く、教室から出て行く。その 結果授業が成り立たなくなるといった「学級崩 壊」が広がっている。いったん崩壊すれば、授 業だけでなく、給食や掃除、運動会等学級を単 位とする活動全体が麻痺するようになる。

「心の問題」では、身体にはっきりした原因 はないのに、頭痛や倦怠感、下痢、学習障害な ど何らかの「心の問題」を抱えている子供が、

中学生で25人に1人、小学生で40人に1人い たことが、厚生省の研究班の調査(1999年) で明らかになった。2)

*

名張市立箕曲小学校

**

附属教育実践総合センター

子ども達が、身体的な症状を訴えて保健室に 来室し、そのとき彼らは自分のJL、の悩みを話す 場合もある。保健室では、子ども達は学級や学 級担任(以下担任とする)の前では見せること のないJL、の側面を見せることも多い。

そこで、担任が学級の中でどのような状況で何 が起こっているか正しく把握し、子ども一人ひと

りを知ることにより、学級運営が円滑に行われる ように、養護教諭として担任を支援することとし た。

Ⅱ.目

養護教諭の立場から担任に定期的に面接を行 い、担任が子ども達の思いを知り、一人ひとりに 合った対応の仕方と、学級の仲間意識を高める 効果的な方法を習得することを目的に本面接を 行った。

本報告では、面接の中で養護教諭が提示した 事を、担任による学級での試みとして行った活 動と、その活動によって起こった変化について 取り上げる。また、その変化について考察する。

Ⅲ.面接概要

1.協力者

三重県名張市A小学校(全児童数185名7学

(2)

級(障1含)6年生担任(30代女性教諭)(学 級児童数27名。男子13名・女子14名)

2.学校の背景

校区は、市街地の南に位置している。学校は 校区を東西に走る国道沿いの中ほどにあって、

バス通学をする地区と、徒歩30分以内で通学 できる3地区がある。

3.面接方法

面接期間:Ⅹ年5月〜Ⅹ+1年

面接場所:A小学校職員室(放課後教職 員退出後)1週間に1回約2時間行った。

4.面接の経緯

担任は、教職歴16年目であるが、低学年を 担当することが多く、6年生を担当するのが2 回目である。該当学年の児童は、前年度学級の 中の友達関係等からトラブルが多く、授業が成 立しないと校内でも評判だった。そのため担任 は、1年間担任として学級をまとめていくこと ができるか、中学校へ進級させるために学力を 十分につけさせることができるか等、不安な気 持ちで新学期を迎えていた。

養護教諭はそれまでの子ども達の様子を知っ ており、なおかっ担任から相談を受けていたの で、担任を支援するために面接を行うことにし た。これについては、学校長から承諾を得て行っ た。

Ⅳ.面接の経過 一試みの実際‑

1.試みを始めるにあたって

試みを始めるにあたって、担任との初回面接 において担任と学級の状況を確認した。6年生 を担当するにあたって次のような抱負を学年通 信に書いて家庭に配布している。(資料1) 資料1 担任の抱負

27人全員が楽しいと思えるようなクラス を作ろうということや自分のいいところを伸 ばし、変えていきたいと思うところをみつめ、

変えていこうと努力していこう。

学年通信Ⅹ年4月6日

担任は上記のような気持ちで新学期をスター

卜したが、子ども達の現状は教師の話をまとも に聞けず、自分達で勝手にしゃべっている状態 であった。

このような状況から担任は、6年生として下 級生の皆に手本を見せられるようになるために はどのようなことを直していかなければならな いか、学級で子ども達と話し合った。

直していかなければならない事は、16項目の内 容で、6年生が中心となって全校行事を運営し ていく場合には大切な内容であると担任は考えた。

初回面接で、今学級で起こっている事柄につ いて話してもらうとともに、続く2、3回の面 接で上記の学年通信を見ながら、養護教諭と担 任が継続して行う面接の焦点をどこにあてるか について話し合った。

その結果は以下の4つであり、これらについ て試みをおこなうことにした。

焦点(》6年生として達成しなければならない 事項は何か、その事項を達成するため にはどういう事が必要かを考える。

焦点②授業に集中させるための工夫する方法 を考える。

焦点③子ども達の一人ひとりの思いをじっく り聴く。

焦点④子どもが自分の思ったことを相手に伝 えられ、その友達の思いを知り、子ど

も達が仲間意識を高め互いに助け合っ ていける。

この4つのそれぞれの焦点に対応して、養護 教諭が提案した試みは次のようである。

試み① (個別の目標設定) 試み② (「ハイ」だけの対応) 試み③‑1(行動観察)

試み③‑2(子どもと親への各々の話) 試み④‑1(自分の行動を知るロールプレイ) 試み④‑2(友達の思いを知るロールプレイ)

2.試みの実際

本節では、各試みによる変化を確認するため、

まず試みを開始する前の子ども達の様子を記述 し、次にその内容、最後に変化と結果を述べる。

試み①(個別の目標設定)

‑122‑

(3)

(i)試み開始前

担任は3名の男児(薫・聡史・武司いずれも 仮名)の言動の一つ一つが学級全体に影響を及 ぼしていることに気づいた。

(正)試みの内容

養護教諭は、この3名各々の児童について乗 り越えなければならないこと、つまり行動目標 の設定を提案した。その結果、担任は次の面接 時間までに3名の1年間で達成させたい目標と その目標を達成するための短期目標を考えた。

(邑)試みの結果 a.担任の変化

3名の1年間の目標は担任にとって「6年生 としてここまで達成して欲しい。」という思い であった。担任は目標を設定したものの同時に

「これが6年生の目標だろうか。」という疑問も いだいていた。養護教諭との面接していく中で、

短期目標で彼らの達成しやすい事を考えていく と、やはりこの1年間の目標が彼らにとっては 適していることに気がついた。そして担任は彼

らに、6年生としてあるべき姿をあてはめよう としていたに気づき、子ども達に無理のないも のにしなければならないと感じた。

(Ⅳ)考察

担任は、子ども達を自分の見方にあてはめよ うと考えていたが、養護教諭の提案で一人ひと りの目標を考えたことにより、担任自信の見方 ではどの子にも当てはまらないことに気づいた。

これは担任のトップ・ダウン3)的な思考傾向 によるもので、6年生はこうあらねばならない

という期待を当の子ども達にしたが、現状とは かけ離れたものであるにもかかわらず、無理に あてはめようとしているためであると思われた。

そこで個に焦点をあてることにより、現実の子 ども達の状態を理解し、担任自身の見方を一人 ひとりの子ども達を等身大に見られるようになっ たと考える。

試み②(「ハイ」だけの対応) (i)試み開始前

武司は、学校生宿全般について無関心である。

授業中は教科書の上に自分の興味のある自動車 の本を置き、前後の席の児童に話し掛ける。担

任が武司の行動を注意すると反発をするし、担 任が無視をすると注意をしないといけない行動 をとる。担任は、武司がなぜ反発してくるか理 解できない状態だった。

(止)試みの内容

武司は思春期に入りかけ、自分の気持ちを素 直に出せないでいることと、担任に自分のこと をもっとみていてはしいとメッセージを送って いるのではないかと養護教諭が面接で話した。

しかし武司が自分に対してただの反発している に過ぎないと思い、武司の担任に対する思いを 否定した。そこで武司の思いを確かめてみるこ

とを提案した。

試みの方法は、2日間武司が不適当と思う行 動をしても何も言わないで、武司の行動と接し 方を観察することである。但し、3日目には担 任は武司にフォローすることを確認した。

試みは以下の通りである(資料2)

資料2 担任による「ハイ」だけの対応の記録

<1日目>

朝、担任が教室へ行くと、教室の後ろで武 司は友達2人でフラフープをして遊んでいた。

他の二人には朝の会が始まっているので止め るように言ったが、武司には言わなかった。

すると5分ぐらいたった時自分で片付けた。

ランドセルは、ロッカーに入れないで自分の 椅子に置いてあった。いっもなら、≪ランド セルはロッカーに置きなさい。≫と言うのだ けれど、言わなかった。

1時間目の授業は、きちんと受けた。

5時間目の体育の時間、「体操服を忘れた」

と言いに来た。「ハイ」と返事だけした。体 育をするため運動場へ出ると、滑り台でボー ルを使って遊んでいた。放っておくと、体育 の途中「服は忘れたが、体育をしてもいいか」

と聞きに来た。「友達は体育をしているのに どうして自分だけはいけないかと。」と尋ね る。それに対し担任は、≪00君は、やる気 があるからやらせた。≫と言う。その後体育

に参加し一生懸命していた。

放課後、武司は教室を出たが、10分程し たときまた教室へ戻ってきた。そこで友達と 紙でボールを作り、野球を始めた。担任は友 達のはうに運動場で遊ぶように言うと、武司

は「外で遊ぶよりここで遊ぶはうがいい」と 言ってなかなか外へ行こうとしなかったが、

(4)

友達に促されて外へ行き下校時刻まで遊んで いた。

<2日目>

武司のランドセルは、4月より初めて担任 に注意されずに自分でロッカーに入れてあっ た。

3時間目の社会の時間「後ろの席だったら見 えにくいので、先生の隣へ来る。」と言って 机を教卓の槙に並べた。これは、いままでに は見られない行動であった。

<3日目>

朝の会のとき武司がランドセルを自分で置 くようになったことと、昨日の帰りの会のと き忘れ物の箱の中の物を進んで皆に渡してい たことを、皆の前で誉めた。

1時間目は武司の大嫌いな図工だったが、

ポスターを一生懸命に書いていた。

(拉)試みの結果 a.担任の変化

この3日間の武司の様子を振り返り、武司が 担任と関わりを持とうとしていることに気づい た。このことがあってから、武司の反抗した言 動もあまり気にならなくなった。しかし、集中 して授業を受けることが難しい武司に対して、

授業の質問の中にクイズ等を取り入れるなど、

目新しい事をするようになった。

b.児童の変化

武司は嫌いだった図工と社会を一生懸命取り 組むことができるようになった。また、学級の 仲間から授業中ふざけたりしたとき注意される と、武司なりに頑張れるようになってきた。

また、他の児童と別の行動をとっていても担 任が何も注意をしないとわかったとき、自分で 行動を改め学習に取り組む姿勢が見られた。

(行)考察

武司が反発するような言動をすると、担任は 注意をするという仕方でしか対応できなかった が、武司の話し掛けに対して「ハイ」という返 事で対応し、あえて働きかけをしないことによ り担任自身は、武司の事を距離を置いて見るこ とができるようになったと考えられる。

武司は、担任が急に自分の言動に対し注意を しなくなり、また話をしても「ハイ」としか答

えてくれない事に戸惑いがあったと思われる。

担任は、悪い行動に対しては注意をする方法か ら、悪い行動には反応せず、よい行動をはめる 方法に変える事によって、担任より言葉がけが 多くなる事を無意識に感じ、行動が変化したの ではないだろうか。

これは、エイロンとアズリン(1968)4)のトー クン・エコノミー法でも示させるように、担任 よりの誉め言葉が多くなることが子どもにとっ ては心理的にトークン(誉める)を多くもらう こととするため、担任から見る望ましい行動が 多くなったと考えられる。

試み③‑1(行動観察) (i)試み開始前

薫は感情の統制ができなくなると乱暴な言葉 と動作に表す。薫は気持ちが落ち着くと、乱暴 な言動を反省し、「次からは気をっける。」とい う言葉を繰り返し言うのであるが、感情が高ぶ ると同じ事を繰り返す。

(止)試みの内容

養護教諭の提案で担任と保護者が協力して、

薫が感情のままに行動するときの様子を、学校 と家庭で各々観察し、それを検討することによっ て薫への行動理解を深め、薫の問題行動への対 応を考えることにした。

家庭での観察によると、朝家で母親とトラブ ルがあった後登校した際に、自分より弱い立場 の友達に怒りの感情を向けていくことがわかっ た。また、薫はそれを静止に入る担任に対して

は、自分を理解してくれないと思うため、感情 が高揚し「お前の顔なんか見たくない。出て行 く。」と言って教室を出て行くことがわかった。

しかし、教室を出た後に担任の顔をもう一度見 たり、担任が追いかけて行くと、担任が声をか けることが可能な距離を保ちながら逃げている

ということが確認された。

このような観察の結果を聴いて養護教諭は、

薫は母親への怒りを担任にぶつけているのでは ないか。また担任に対しては理解を求めている のではないかと推察した。そこで養護教諭は担 任に次のようにアドバイスした。

担任は母親へは学校で見られる薫の良い面を

‑124‑

(5)

多く伝え、薫が母親より誉められるようにした。

(組)試みの結果 a.担任の変化

子どもが家庭で生起した気分でそのまま学校 へ来ることに気づいた。養護教諭より担任に関

わりを求めているという推察を聞き、実感とし てそれを受け止め、さらに行動を観察できるよ うになった。

b.子どもの変化

観察にもとづき、担任や母親の配慮により、

突発的な行動をすることが少なくなってきた。

C.母親の変化

朝口やかましく言わなくのなったとともに、

薫の話を落ち着いて聴くようになった。また担 任と薫のことについて、相談できる良い関係に

なった。

(Ⅳ)考察

担任は薫について、前担任との引継ぎや昨年 度までの様子から、「トラブルをおこす子」と

いう先入観で薫を評価していた。しかし、筆者 と薫のことを話していくうちに、どうしてトラ ブルをおこすのだろうか。何が原因なのだろう かと行動の心理的意味を考えることができるよ うになった。さらに担任にとってこの試みは、

薫だけでなく他の子ども達の行動も、家庭生活 が影響していると気づき、保護者との連絡が大 切と感じることができるようになった。

担任と保護者の関係がよくなることば、子ど も達にもよい影響を及ばす結果になると筆者は、

この試みを通して確信した。

試み③‑2 (子どもと母親への各々の話) (i)試み開始前

薫が毎日どのような思いで学校生活を送って いるか担任が知るために、薫と二人でゆっくり 話をする時間をもった。これは放課後30分で

あった。

以下の話の内容は、担任が話し合いの後記録 したものである。(資料3)

資料3 担任と薫との話より

〜前 略〜

T:家で、何をしているときが楽しい。

C:ゲームしているとき。

T:そう。ゲームが好きなんだ。じゃあ、楽 しくないのは、学校なんだね。学校での 何がそう楽しくないのかな?

C:勉強。

T:勉強が楽しくないの。でも、薫君すごく 集中して頑張っているときがあるよね。

勉強が嫌いなのに、すごいね。そんなに も頑張れるなんて。あとは、どんなこと が楽しくないの?

C:うっとしい。周りの人が悪い。

T:どういうことかな?

C:先生、わかってるやろ?授業中のこと見 てたら。

T:ふざけて嫌なことを言ったりからかった りすること?

C:そう。それに、影で言うやつもいる。そ れが腹立っ。もう、明日キレるかもしれ んで。

T:そうか。薫君、そんなにも腹が立ってる んや。なのにいっも笑顔でいるのは、我 慢してたんやな。辛かったねえ。

C:うん

T:本当は、すごく心の中で我慢していて、

辛かったんやなあ。じゃあ、友達にきつ いことを言ったりしているのは、そうい う辛い気持ちを抑えていて、でもそれが どうしようもなくなって、その気持ちが そういう言葉になっているのと違う?

C:うん。そうや。

T:わかっているのに、心の中にどうしよう もない辛い思いがあって、それで、そう いう言葉になるんだね。じゃあ、これか らどうしようか。

C:我慢したらいいやん。 〜後 略〜

薫の苛立ちは、母親とのトラブルだけでない ことが母親との話からもわかってきた。

以下の資料4は担任が家庭訪問をしたとき母 親が語った内容である。この家庭訪問は3時間 であった。(資料4)

資料4 家庭訪問時の担任と母親との話 薫は、何年間も友達とトラブルがあるたび に、薫が悪いというレッテルを貼られてきた。

入学以来1学年1学級の中で、友達関係が 固定化され、なぜか薫が求める友達からはい つも疎外されているという現状が常にあった。

自分の居場所がここにあるという確認をし

(6)

たく、わけもわからずがむしゃらに自分を表 現しているというのが現状で、その中から状 況によって動き、自分より弱い立場の友達に 当たってしまうような行動が表れているので はないか。

(血)試みの結果 a.担任の変化

初めて薫と二人で話をしたことで、友達と自 分との関係で薫が随分我慢を強いられて生活し ていることがわかった。この事を母親に伝える

と、「薫が、我慢すれば先生に怒られることも ないし、友達とも遊ぶことができるんやと、話

している。」ということを聞かされた。学校で あったことを家で話すと「我慢をしろ。」と言 われ、我慢をしているとストレスがたまり弱い 立場の子にあたるという悪循環の繰り返しが、

薫が悪いというレッテルを貼られることになっ たように担任は理解を深めた。

また「我慢する」ということが薫の行動に大 きな影響を及ぼしているということもわかり、

薫とじっくりと話をするようにもなった。

担任は、薫と母親から日々の思いを聴いたこ とにより、日頃明るくふるまっていたり、自分 の意見を主張し友達とトラブルをおこしている 薫の行動は、自由奔放に生活していると解釈し ていた事を反省した。また、子どもと向き合っ てゆっくりと聴くことが子どもの本当の気持ち がわかると痛感した。

b.子どもの変化

担任に自分の思いを聴いてもらってから機嫌 が良く、授業にも集中するようになった。

C.母親の変化

このことがあってから、薫の母親は薫の様子を 見ていて何か変だと気づいたとき、真の話を聴く ようになり担任に連絡してくるようになった。

担任もそのことを受け、対応できるようにな り薫の親子双方とも安定してきているように思 われる。

(お)考察

担任は薫と話をすることにより、本当の薫の 気持ちをわかることができた。これは子どもの

心を理解するためには、他者からの評価を気に しないで済む、個別に子どもと話をする時間を とったからである。また話し合うことによって、

担任と薫との信頼関係も樹立したのではないか と考える。

保護者との関係においても、試み③‑1の考 察にも述べたように、保護者と担任との関係が

よくなると、子どもの行動も安定してくる事が 薫の親子の変化から伺える。

試み④‑1(自分の行動を知るロールプレイ) (i)試みの開始前

聡史は思いっいたままを言動にうつし、何も していない友達を叩いたり技をかけたりして泣 かしてしまうことがある。それを周囲の子は、

見ているだけで注意をしようともしない。担任 としては、その都度学級全体に指導をしている が改善しない。

(止)試みの内容

聡史が、自分がした行動を相手がどのような 思いでいるかわからないため、ロールプレイを おこなうことによって、自分の行動を実感させ ることにした。

ロールプレイの内容は以下である。(資料5) 資料5 ロールプレイの内容‑1

A:さあ、体育館へ行こう。

B:(歩いていて、気づかずAの帽子を踏ん でしまう。)

A:あっ、帽子踏むなよ。

B:ごめん。

A:汚れたやんか。足跡がついたわ。なにす んねん。(と言いながらBを叩き、蹴る。) B:痛い。気がつかへんかってん。ごめん。

A:よごれたやんか。土下座してあやまれ。

聡史がいっも言っている言葉を聡史自身が知 るために、役Aをさせた。

聡史は、にたにた笑いながら役を演じていた のでどのような気持ちだったのかわからなかっ た。また、後の話し合いでも発言しなかった。

その後、別の件で注意をする機会があり、聡 史はロールプレイを演じた時のことを次のよう

に語った。

聡史は、「人の嫌がることを言っていること

ー126‑

(7)

は、この前の劇をしたとき、嫌な気持ちやった ので直さなあかんと思った。けど、言うてしま うねん」と言った。そこで、3つの約束を担任 とした。・教室内で危険な遊びをしない。・友 達に嫌なことを言わない。・給食当番をしっか

りする。これを守ることとした。

(邑)試みの結果 a.担任の変化

このロールプレイを行ったとき子ども達の生 き生きした様子や幼さを見て、担任にとっての

6年生の行動基準を考え直すようになった。子 ども達には重荷に成り過ぎ口やかましくなって いたのではないかと気づいた。「直さなければ ならないこと」は、子ども達と話し合ったと思っ ていたが、自分の枠で子ども達をみて自分で決 めていたのではないか。と感じた。

b.児童の変化

放課後、約束を覚えているか確認し、今日一 日約束したことが守れたか話をした。聡史は、

約束を覚えており、今日は、一日92点ぐらい 頑張れたと話した。しばらく一日の終わりに今

日の自分の生活を反省させるようにした。しか し、「友達に嫌なことを言わない.」という約束 を担任としたが、なかなか守れない状態であっ た。学級会で仲間から、「聡史は自己中だ」と何 度も言われ、自己中は人から嫌われるので直さな

いといけないと思い、友達に嫌なことを言わない ように気をっけているように見うけられる。

(Ⅳ)考察

聡史は、ロールプレイを演じたり見たりする ことによって、自分の行動を反省することがで き、試みの内容と児童の変化よりわかる。しか し、行動を改善していく事は容易ではないため 担任と養護教諭は、聡史がどうしてこのような 行動をするのかを考えた。

聡史はスポーツ少年団(以下スポ少とする) に入り、休みになると練習や試合に行っている と聡史が担任に話していた。このスポ少の練習 や試合をしているとき、ミスをすると人前であっ ても大きな声で注意をされると、他の同じスポ 少に入っている児童から聞いたことがあった。

担任はこの事を思い出し、聡史はスポ少でプラ

イドを傷っけられているのではないだろうかと 考えた。その思いを学校で弱い立場の子に向け ているのではないかと推察した。

このことば学校だけではどうすることもでき ないため、担任が家庭訪問をし保護者が聡史の 気持ちを十分に理解しフォローしていかないと、

なかなか改善していかないのではないかと考え られる。

試み④‑2 (友達の思いを知るロールプレイ) (i)試み開始前

学級の中には、授業中友達と話をしている人 がいても、人に嫌がることを言っていても周囲 の子ども達が注意をしようとしない状況がある。

これは子ども達が「注意しても同じだ。」「注意 をすると後で自分に災いが及ぶ」と感じている からである。給食を一人で食べている子がいて もても「一緒に食べよう」と声掛けをする子も 居ない。<宅一人になっている子がいるから声を かければ。≫と担任が言うと、「一緒に食べたけ れば向こうから、一緒にしてと言ってくればい い。」と、一人でいる子の責任にしてしまう。

(止)試みの内容

学級で一人で居るような状態や、周囲の子た ちがどうして関わろうとしないかを理解するた めに、ロールプレイを実施することにした。

ロールプレイは、社会見学のグループ分けを 行った際に実際にあったことで、どのグループ にも入れてもらえなかった児童のことを行った。

(内容は変えてある。)この立場になった児童が 次のような作文を書いている。(資料6) 資料6 作文よリ

Ⅹ年11月○日

私は、今日友だちとけんかをしたようです。

私は、けんかをしたっもりはなかったのです が、友だちは、けんかをしたといって怒って います。私は、前に、ある子をタオルでたた きました。そのとき、その子は、泣いてしま いました。今日、私は一人になってわかりま した。私は、前まで嫌いだからって、悪口を 言ったりしていました。それに、一人になる

とすごく寂しくなりました。でも、私のクラ スには、ほとんどの時一人ぼっちになってい る人がいます。いっぱい悪口を言われて、悲

(8)

しい思いを一人でしています。 〜中 略〜

今の私は、気が小さくて、自分の思ってい ることを何も言えない。そんな私は、本当の 私じゃないみたい。だって、本当はいじめら れている人がいたら注意したい。だけど、そ れを言ったら私は、クラスのみんなからもっ

とひどいことをされるかもしれないと思って しまい、その子のことを放っておいてしまい ます。そういうことをしている私もいじめて いる人たちの中に入っているみたいです。

Ⅹ年12月○日

今私は、前より明るい気分で学校に来れる ようになりました。前までは、学校へ行った

ら仲間はずれにされるんやろうなとか思って いました。でも今は、Aちゃんが仲良くして

くれるし、でも、まだBちゃんのことをいや がる人がいるのがいやだ。今は、前よりみん なが優しくなりました。でも…・。

このように担任は自分の思いを、相手に伝え る方法としてロールプレイを行ったり子どもの 書いた作文を呼んで他児より感想を出させたり

した。

試み④‑2の授業を実施するために、養護教 諭と担任はどのようにすれば子ども達が自分の 思いを出すことができるか何度も話し合い、指 導案を立案した。

(組)試みの結果 a.担任の変化

この授業で担任は、<ロールプレイをして感 じたことや見て思ったことを出し合い、自分達 の生活の中でおかしいと思うこと、不合理だと 思うことに気づくことができる。>ことを目標 にした。ロールプレイをして授業を集中させる

ことはできたが、これをすることで子ども達の 感じたことを出させることができなかったと担 任は反省した。しかし、プリントへは自分達の 行動を反省する内容を書いてあったのを見て、

担任は少しでも目標に近づけたと感じた。

b.子どもの変化

友達の作文は子ども達にとって心の奥まで届 くメッセージであったようである。とくにいっ も一緒に行動をしていて、そこのグループ内に いた子どもは特に強烈にJL、に響いたようである。

そのグループの中の一人の子は、次の授業の時

間に次のように発表していた。

「1対1の喧嘩だったがその一人が無視をし ていくと皆も無視をしていった。自分の気持ち

とは反対に、皆に引っ張られていった。人には 色々な性格があるから、気がっけば皆で声掛け をしていかなあかん。」また作文の中で「でも・・

・」とあるが、これについても「皆で考えない といけないことがある。」と言う意見が出た。

(Ⅳ)考察

この授業で担任は子どもの思いを出させるた めに、ロールプレイを行ったがロールプレイの 参加者体験や学習経験が少なかったため、今回 の試みで担任の目標に到達するように子ども達 の思いを向けさせることばできなかった。

ロールプレイは、島谷・台(1998)によると

「具体的・仮想的に場面を設定し、当の場面で 登場する人物がとる諸役割の演技を行い、言語

のみならず行為や物を媒介とした相互作用がな される。行為は言葉を超えた強いカタルシスと 新しい環境認知にともなう気づきをもたらして

自他への一層の理解をうながす。」5)と書かれ ている。養護教諭が担任に対し、ロールプレイ の方法とこれを行うことの意義をもっと説明す る必要があった。

しかし、授業の第2次で20名程の児童が自 分達の思いを語ることができたことは、4回ロー

ルプレイをして少しずっでも自分の感じたこと を書かせていた成果ではないだろうか。

Ⅴ.まとめ

担任と1回目の面接を行ったとき(5月)、

担任は<どうにかしてこの学年の子ども達を、

6年生として下級生の手本となるように指導し ていかなければならない。>という意気込みと、

<一人ひとりが自分勝手な行動をとり、相手の 気持ちを考えようとしない子ども達を指導して いけるだろうか。>という不安な気持ちが混乱

した状態になっていたように筆者は感じた。

それは、今の子ども達の状態を一気に筆者に 語った事から伺えた。

その担任の語った内容を聴き、今何が担任に

‑128‑

(9)

とって問題であるか。その問題を軽減するため にどのように支援すればよいかを考えた。その 結果が4つの焦点であり、その焦点に対応する ために6つの試みを、担任に提案して実践して いく事になった。

担任は筆者が問題を明確化することにより、

授業を集中させるための工夫と子どもへの接し 方をどうすればよいかということも考えれるよ うになった。その結果が個に焦点をあて、子ど

も達一人ひとりが到達することには個人差があ ることにも気づいた。また、個々の子どもの状 態に応じて目標を低くしようと思ったとき、気 が楽になり肩の力が抜けたよう感じた。担任が 決めた事を全部させるのではなく、ポイントを 決め「やってよかった」という気持ちを持たせ たいと考えるようになった。自分の先入観で観 て、子ども達を自分の見方に当てはめようと考 えていた事にも気づき、個に焦点をあてること によって、信実の子ども達の姿を見れるように もなった。また、子ども一人ひとりの対応にも 変化が現れるようになったと思われる。それは 子どもの行動を見ても指示をしないという事が 子どもにどんな影響を及ぼすかということを、

試み②をおこなったことでわかり、子どもに対 し距離をおかないと子どもの行動の背景が見え ないと言う事に気づいたと感じた。また、子ど もと話をする時間を十分にとることが、子ども の本当に姿を知る大切な事だということも知っ たと考える。

このように試みを実践していく中で担任自身 が今までの自分の対応を反省し、子どもとの接 し方を改めていけるようになったのではないか と考える。

子どもの方を見てみると、担任の対応に変化 が現れると即、子どもにも変化が見られた。そ れは、試み②の「ハイ」だけの対応でよくわか る。担任が急に自分の言動に対し注意をしなく なり、話をしても「ハイ」としか答えてくれな くなった。すると、1日目の1限目に変化が現 れた。自分で考え行動できたのである。それに 加え3日目には、担任より誉めてもらえる行動

をしているのである。また試み③‑1.2で子

どもの思いを聴くことで、気持ちが安定し授業 も集中するようになった。これは十分に話を聴 いてもらえた事により、担任への信頼関係が出 来たので集中できるようになったと考える。

子ども達に自分達の様子を理解させるために、

何度かロールプレイを行った。ロールプレイを 行うことの意義と、方法を筆者が担任に十分な 説明をしなかったため、子ども達も思いをその 場で出させる事が出来なかった事を反省してい

る。しかし、これをしたことにより子ども達の 本当の姿を担任が見る事が出来、また回を重ね

て実施したことが子ども達一人ひとりが少しで も自分の思いを語れるようになったのではない かと考える。学級での出来事を自分達が演じ、

それを見る事で、子ども達自身が学級の仲間意 識を高めていくためにはどのようにすればよい か考えることが出来たのではないかと思う。実 際、給食を一人で食べていた児童が、ロールプ

レイをした後のグループ分けで学級の仲間の中 に入り、それ以降は一人で給食を食べることが なくなった。

担任と面接を行うことの意義は次のように考 える。担任は、普段忙しさに追われ子どもとの 対応を振り返ることが出来なかったが、面接で 話をすることで自分自身の行動を振り返り、同 時に自分の対応を客観的に見てもらうことがで

きる。その結果、自分の気持ちや行動に距離を おいて第3者的にみることができるようになる のである。それは「自分で子ども達にどのよう

に対応すべきか考えられるようになった。」(2 学期末の面接より)という感想からもわかる。

筆者は担任と面接する際に、担任がどのよう にすれば学級の子ども達を好きになれるかとい うことを念頭において、担任との面接に臨んで いた。3人の子ども達の目標を考え、この子ど も達に焦点をあて試みを提案したのも、子ども をよく見る事で子どもの真の姿が見え、子ども を好きになるきっかけになると考えたからであ

る。結果的には、担任も子ども達も互いに理解 し合え、学級全体にもよい影響を及ぼすことが 出来たのではないかと感じている。

養護教諭から児童・生徒への支援については

(10)

多数研究され、参考図書も多く発行されている。

しかし、養護教諭の担任支援については、明文 化し研究対象として扱われることはあまりなかっ た。

今回の研究活動を通じて、その重要性を再認 識すると共に、さらに研究を重ねていく必要性 があると痛感した。本研究が、これからの養護 教諭の活動に少しでも参考になれば幸いである。

引用文献

1)ヘルスカウンセリング研究グループ"しゃ くなげ"杉浦守邦編 養護教諭のカウンセ リング 健康教室 東山書房12月増刊号 3 1997

2)朝日年鑑2000 朝日新聞188‑190 2000 3)増井透 大島尚編 認知科学 新曜杜

1986

4)祐宗省三・春木 豊・小林東雄 編著 動療法入門 川島書店1984

5)島谷まき子・台 利夫 カウンセリング研 修へのJL、理劇的ロールプレイングの集中的挿 入の効果 JournalofJapanese Clinical

Psychology

Vol.16No.5 p.503‑508

1998

‑130‑

参照

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