多地点観測に向けた光学式インフラサウンドセンサの改良と評価
システム工学群 山本研究室
1140008 池原光介
1.
背景地震や土砂災害等の自然災害や、核実験やロケット実験等 の大規模な爆発現象の際に、人の可聴領域下限とされる 20 Hz 以下の低周波音波(微気圧波)が発生する。これはインフラサ ウンド(Infrasound)と呼ばれ、大気中を長距離伝搬できると いう利用価値の高い特性を有すが、日本国内の観測所はセン サ単体の価格や大規模な観測所を運用するコストが高額であ ることから、数地点に留まっている。しかし、将来的に国内 に観測網を築くことに成功すれば、準リアルタイムでインフ ラサウンドを感知することが可能となり、地震等の自然災害 発生時に音源や到来方向を特定することで、避難警報や被害 地域の予想等、減災分野での活用が期待される。
2.
研究目的上述の通りインフラサウンドの到来方向を求めるためには、
多地点観測が不可欠であり、その整備には低コストのインフ ラサウンドセンサの開発が重要となる。本研究では先行研究 で開発されたセンサの性能を向上させ、低コストセンサ量産 化に向けた基礎開発を行うことを目的とする。
3.
インフラサウンドセンサの開発センサの検出機構として、膜を張った検出容器、LEDレー ザー、位置検出素子(Position Sensitive Device以下;PSD) を 用いた構造となっている(図1)。PSDとは受光面の照射され たスポット光の位置に応じた電流を出力する素子である。イ ンフラサウンド到来に伴う微気圧波を膜面が捉え振動するこ とで、膜面に照射されたレーザー光の行路にズレが生じる。
そのズレを PSD で読み取ることでインフラサウンドを検知 する仕組みとなっている。センサの工作精度の向上と将来的 な量産化を見据え、本研究ではセンサ部品の一部を3D-CAD で設計し3Dプリンタで製作した。これによりLEDレーザー の角度調節や、集光レンズの焦点距離の調節が可能となった。
図2に完成したセンサを示す。
図1 検出機構 図2 センサ外観
4.
性能試験性能評価を行うために宇宙実験用の真空チャンバ(図 3)を 用いてインフラサウンドを疑似的に発生させる装置を構築し た。真空チャンバ内に製作したセンサと既製品センサを設置 し、内部を密閉状態にする。装置内部から外部に連結された
チューブに注射器を取り付け微小量空気の注入・吸引を行う ことで、真空チャンバの内部気圧を任意の周期で変動させ、
インフラサウンドの伝搬波形の疑似的な再現が可能となる。
図3 疑似インフラサウンド発生装置システム
5.
性能評価試験装置によって疑似的なインフラサウンドを発生させ た結果、図4に示す波形を得ることができた。図に示した波 形 の 周 期 は 2 秒 で 、 製 作 し た セ ン サ と 既 製 品 セ ン サ (Chaparral Model 25)の出力波形が類似していることがわか る。最終的に周期 30 秒までのインフラサウンドの検知に成 功した。既製品センサの出力電圧から、周期 30 秒時の発生 圧力を算出したところ、センサの限界性能である0.01 Pa に 近い値を示した。よって製作センサの性能として、周波数下 限0.03 Hz 、最少検知圧力0.01 Paの較正値を得た。
図4 出力波形 (青:製作センサ, 緑:既製品センサ)
6.
結論今回製作したセンサは最小検知圧力0.01 Pa 、検知周波数 領域 0.03 ~ 1.0 Hz の性能を有する。これは先行研究で製 作したセンサの最小検知圧力 0.3 Pa を大きく上回る性能で あり、既製品センサの最小検知圧力と等しい。手動による微 小量空気の注入・吸引で発生させる周期には限界があり、今 回は周期 30 秒以上の試験は模擬できていないが、0.03 Hz 以下の波形も検知出来る可能性がある。コスト面でも製品セ ンサが80万円に対し、本センサは3Dプリンタによる複製が 可能な形で約4万円で製作することに成功し、多地点観測に 向けた低コストセンサの量産に向けた基礎開発に成功した。
参考文献
:
田平誠, インフラサウンドの世界,http://www.senior.aichi-edu.ac.jp/mtahira/IFS/IFS_top.htm, 2013年4月参照