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Jordan 標準形 第 8 回 システム工学 I

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(1)

システム工学 I 第 8 回

Jordan 標準形

(2)

固有値と固有ベクトル (1)

• A を n 次の正方行列とする.

• v 6= 0 で, あるスカラー λ に対して, Av = λv となるとき, λ を A の固有値, v を固有値 λ に 対応する固有ベクトルという.

• 固有値と固有ベクトルの定義はどのような係

数体に対しても適用可能であるが・ ・ ・

(3)

固有値と固有ベクトル (2)

• 係数体の取り方しだいで, 行列 A が固有値を 持つ場合と持たない場合が出て来る.

• 応用上重要なのは実行列であるが, 実行列は

実数に範囲では必ずしも固有値を持つとは限

らない. これは, 実数体が代数的閉体ではな

いという事実に起因する.

(4)

固有値と固有ベクトル (3)

• 固有値の重要な応用のひとつは線形連立微分 方程式であるが, たとえば正弦波を解として 持つ 2 次元の線形微分方程式は実数の固有値 を持たないため, 実行列への限定は不便

• そこで, 通常は, 取り扱いたい行列が実行列

であっても, 係数体を複素数体にまで拡張し

て考える.

(5)

固有値と固有ベクトル (4)

• 複素数体は代数的閉体であるため, 複素行列 は固有値と対応する固有ベクトルを持つ.

• 実行列は複素行列の特別な場合なので, 固有

値と, 対応する固有ベクトルを持つ. ただし,

固有値や固有ベクトルの要素が実数であるこ

とは保証されない.

(6)

固有値と固有ベクトル (5)

• 以下では, 特に断らない限り, A を n 次の複 素行列とする.

• λ が行列 A の固有値で, 対応する固有ベクト

ルが v であれば, (λ I − A ) v = 0 であり, 定

義より v 6= 0 であったから, (λI − A) は正

則ではなく, したがって det(λI − A) = 0 で

ある.

(7)

固有値と固有ベクトル (6)

• s を変数とし, Φ

A

(s) = det(sI − A) と定義す る. Φ

A

(s) を A の特性多項式という. なお,

det(A − sI ) を A の特性多項式と定義する流

儀もある (符号が違うだけ).

• 文献によっては, 固有値を「特性多項式の根」

と定義しているものもある (この講義の教科

書もそうである).

(8)

固有値と固有ベクトル (7)

• λ を A のひとつの固有値とし, V

λ

= {v ∈ C

n

: Av = λ v } とする. V

λ

は C

n

の部分空間 である. この次元を λ に対応する固有空間の 次元という.

• 相異なる固有値に対応する固有ベクトルは一

次独立である (証明は次ページ).

(9)

λ1, . . . , λkAの互いに相異なる固有値,v1, . . . ,vkを対応する固有ベ クトルとする. kに関する帰納法によって,v1, . . . ,vkが一次独立であ ることを示す. k= 1のときは主張は自明. よって,「k−1について 主張が正しければkについても主張は正しい」ということを示せばよ い. 「kについて主張が正しくなければk−1についても主張は正しく ない」という形でこれを示す. {v1, . . . ,vk}が一次従属であったと仮定 する. すると,∃j(1≤j≤k),∃cl(1≤l≤k, l6=j),vj=P

l6=jclvl ある. この両辺にAを左から掛けると,λjvj=P

l6=jclλlvlとなる. 方,vj=P

l6=jclvlの両辺にλjを掛けると,λjvj=P

l6=jclλjvlとなり, これらの2式を引くと,0=P

l6=jcll−λj)vlとなる.λj6=λlで,{cl} の中には少なくともひとつ零でないものがあるから,k−1について主 張が正しくないことが示された.この待遇を取ると,先の主張が証明さ れる.

(10)

固有値と固有ベクトル (9)

• A の固有ベクトル全体がつねに C

n

の基底と なるのであれば話は簡単なのだが・ ・ ・

• 残念ながら, 必ずしもそうなるとは限らない.

• A の固有ベクトル全体が C

n

の基底になって

いるときには, 固有ベクトルを集めて作った

行列により A を対角化することができる.

(11)

固有値と固有ベクトル (10)

• そうでない場合には, Jordan 標準形という概 念が必要になる.

• まず対角化可能な場合について見てゆく.

(12)

対角化 (1)

• A ∈ C

n

が n 個の一次独立な固有ベクトル { v

1

, . . . , v

n

} を持つものとする. v

i

に対応す る固有値を λ

i

とする (1 ≤ i ≤ n). 固有値の 中には同一のものがあっても構わない.

• V = ( v

1

, . . . , v

n

) (固有ベクトルを横に並べ

て作った行列) とする.

(13)

対角化 (2)

• Av

i

= λ

i

v

i

だから, AV = V diag(λ

1

, . . . , λ

n

)

である (順番に注意).

• したがって, V

−1

AV = diag(λ

1

, . . . , λ

n

) で

ある. このようにすることを行列の対角化と

いう. なお, {v

1

, . . . , v

n

} が一次独立である

から, V は逆行列を持つ.

(14)

対角化 (3)

• 対角化可能のための十分条件を考える.

• まず, 行列 A の特性多項式が重根を持たなけ れば, n 個の 1 次独立な固有ベクトルを取れ るので, A は対角化できる.

• これ以外で応用上重要な対角化可能行列は,

対称行列および Hermite 行列である.

(15)

対角化 (4)

• 対称行列は A

T

= A となる行列, Hermite 行 列は A

= A となる行列であった. ただし A

は A の共役転置 (各成分の複素共役を取って から転置). 対称行列は成分が実数の Hermite 行列である.

• 対称行列や Hermite 行列の固有値は実数であ

ることが示せる (次ページ).

(16)

• AをHermite行列とする. λAの固有値,vを対応する固有ベク トルとする.v(Av) =λvvである.また,v= (v1, . . . , vn)Tとし たとき,v= (¯v1, . . . ,¯vn)だから(¯xはxの複素共役),vv=|v1|2+

· · ·+|vn|2>0である. 一方, A =Aより, vAv = (vA)v であるが,vA= (Av)= (λv)= ¯λv,よってvAv= ¯λvv. vv>0だから,λ= ¯λ,よって固有値は実数である.

• Aが対称行列の場合には,A=ATとなるから,上記の証明は変 更なしで適用可能である.

なお,固有ベクトルは, (A−λI)v=0の解だから,対称行列の固 有ベクトルは,その全要素が実数であるように選べる. この性質 を直交行列による対角化のところで使う.

(17)

対角化 (6)

• A を n 次の対称行列あるいは Hermite 行列と し, λ, µ を A の相異なる固有値, v , w を対応 する固有ベクトルとする. A が対称行列なら v

T

w = 0, Hermite 行列なら v

w = 0 となる.

対称行列については,µwTv=wTATv=wTAv=λwTvで,µ6=λ

だから,wTv= 0. Hermite行列については,上記の T に置き

換えればよい.

(18)

対角化 (7)

• 対称行列は直交行列によって対角化できる.

• Hermite 行列はユニタリ行列によって対角化

できる.

証明はどちらもほぼ同じなので,対称行列について示す. Hermite 列の場合の変更点は, (i)Tに変更すること, (ii)ベクトルの内積を vTwからvwにすること, (iii)固有ベクトルの成分が複素数であるこ とを許容すること,3点である.

(19)

対称行列の場合を示す. nに関する帰納法による. n= 1の場合は明ら か. n−1まで主張が正しいと仮定し,Aをn次の対称行列とする. λをA のある固有値,v1を対応する固有ベクトルとする.v1の全要素は実数に できる(既出).v1を正規化し,v1を含む正規直交基底{v1,v2, . . . ,vn} を取る. V = (v1, . . . ,vn)とする. これは直交行列である. すると, VTAV は対称行列であり, さらにVTAV = 1 0

0 An−1

! となる (An−1n−1次の対称行列). さて,Wn−1次の直交行列とする と, 1 0

0 W

!T

1 0

0 An−1

! 1 0 0 W

T!

= 1 0

0 WTAn−1W

! , よって帰納法の仮定によりAは直交行列によって対角化可能.

(20)

Jordan 標準形 (1)

• N =

0 1 0 0 0 1 0 0 0

 とする.

• N の特性多項式は det(s I − N ) = s

3

だから, 固有値は零のみ.

• 固有ベクトルは?

(21)

Jordan 標準形 (2)

• 固有ベクトルは, (λI − N )|

λ=0

v = 0 の解

• よって, −

0 1 0 0 0 1 0 0 0

 x

1

x

2

x

3

 =

 0 0 0

• 上記を解くと x

2

= 0, x

3

= 0 が出るから, 固有

ベクトルは (1, 0, 0)

T

の零でない定数倍のみ.

(22)

Jordan 標準形 (3)

• 「 A の固有ベクトルから成る C

n

の基底があ れば A は対角化できる」のだが・ ・ ・

• そのような基底は必ずしも存在しない.

• 上記の N のような行列は, 純粋な積分器を含

む微分方程式系で出現するため, 応用上もこ

のような場合を無視するわけにはいかない.

(23)

Jordan 標準形 (4)

• 天下り的であるが, w = (0, 0, 1)

T

とすると, w =

 0 0 1

 , N w =

 0 1 0

 , N

2

w =

 1 0 0

 よ

り, この例では w , N w , N

2

w が基底になって

いる.

(24)

Jordan 標準形 (5)

• 行列 N の例では, 特性多項式が重根を持つこ とに注意する. 先に述べた理由によって, そ の特性多項式が重根を持たない行列 A は対 角化可能である. 一方, 重根を持つ場合には, 対角化はできることもできないこともある.

• 固有値 λ の特性多項式の根としての重複度を,

その固有値の重複度という.

(25)

Jordan 標準形 (6)

• 行列 A が対角化不能のときにも, 固有ベクト

ルから (対角化よりほ繁雑な手順によって) 基

底を作り, 対応する表現行列が望ましい性質 を持つようにできる. この典型例が, これか

ら述べる (Jordan 標準形) である.

• 行列 A の Jordan 標準形を J とする. これは,

次のような形の標準形である.

(26)

Jordan 標準形 (7)

• J は, k 個のブロックが対角線上にならんだ, 次のような形のブロック対角行列である:

J =

 J

1

. ..

J

k

(27)

Jordan 標準形 (8)

• 各 J

i

は m

i

次の正方行列で, P

k

i=1

m

i

= n で ある. J

i

は次のような形になっている:

J

i

= λ

i

I

mi

+ N

mi

, N

mi

= 0 I

mi−1

0 0

!

• λ

i

は固有値である.

(28)

Jordan 標準形 (9)

• m

i

≥ 1 であり, m

i

= 1 のときには N

mi

の 部分は存在しないものと見倣す. すべてのブ ロックについて m

i

= 1 となるのが, 対角化 可能な場合である.

• 例を示す.

(29)

• Jordan 標準形の例 (空白部分は零)

 7 1

7 1 7

5 1 5 1

5 1 5

 ,

 2 1

2 2 1

2 2 1

2

(30)

Jordan 標準形 (10)

• 以下では, f を線形写像とし, 変換 f の表現行

列が Jordan 標準形になるような基底を構成

する. 行列 A の Jordan 標準形を求めるとき

には, A に対応する線形写像を考えればよい.

• V を n 次元の複素ベクトル空間とし, f : V →

V を線形写像とする. 示すべきことは次の事

実である.

(31)

ある k > 0 と, k 個のスカラー λ

1

, . . . , λ

k

および各 λ

i

に対応する m

i

個のベクトル v

i,1

, . . . , v

i,mi

が存在し (ただし m

i

> 0, P

k

i=1

m

i

= n), {v

ij

: 1 ≤ i ≤ k, 1 ≤ j ≤ m

i

} は V の基底で, 各 i について次式を満たす:

f( v

i,1

) = λ

i

v

i,1

f(v

i,2

) = λ

i

v

i,2

+ v

i,1

. . . ,

f( v

i,m

) = λ

1

v

i,m

+ v

i,m−1

(32)

Jordan 標準形 (12)

• f(v

i,j

) に関する式を行列を使って書き直すと, f((v

i,1

, . . . , v

i,mi

)) = (v

i,1

, . . . , v

i,mi

)J

i

とな る. よって,

f((v

1,1

, . . . , v

1,m1

, . . . , v

k,1

, . . . , v

k,mk

))

= ( v

1,1

, . . . , v

1,m1

, . . . , v

k,1

, . . . , v

k,mk

) J であり, したがってこの基底に関する f の表

現行列は Jordan 標準形である.

(33)

証明はVの次元nに関する帰納法による. n= 1の場合は,f 表現行列はスカラーだから,証明すべきことは何もない.

• n−1まで主張は正しいと仮定して,nに対しても主張が正しいこ とを示す.

• (定義)f(W)⊂Wを満たすV の部分空間Wのことをf-不変部 分空間という.

• (補題)f:V →Vが線形写像であれば,V n−1次元f-不変部 分空間Wが存在する.

(34)

(補題の証明)Vの基底v1, . . . ,vnを取り,この基底に関するfの表現行 列をAとする.Aのある固有値をλとし,対応する固有ベクトルをw とする. X={x∈Cn:wx= 0}とおくと,XCnn−1次元部分 空間であり,よってW={(v1, . . . ,vn)x:x∈X}Vn−1次元線 形部分空間である. (ただし(v1, . . . ,vn)xv1x1+· · ·+vnxnを意味す る). また,f((v1, . . . ,vn)x) = (v1, . . . ,vn)Axで,wAx=xAw= λxw=λwx= 0だから,Ax∈X. よってWf-不変である.

(35)

先の補題により,Vにはn−1次元f-不変部分空間Wが存在する.

帰納法の仮定により,fWに制限した写像については主張は正 しい. すなわち,あるk >0と,k個のスカラーλ1, . . . , λkおよび λiに対応するmi個のベクトルvi,1, . . . ,vi,miが存在し(ただし mi>0,Pk

i=1mi=n),{vij: 1≤i≤k,1≤j≤mi}Wの基 底で,f((vi,1, . . . ,vi,mi)) = (vi,1, . . . ,vi,mi)Jiとなる.

• Ω ={vi,j: 1≤i≤k,1≤j≤mi}とし, Ω∪ {v}V の基底と なるようvを選ぶ.

• f(v) =λ0v+Pai,jvi,jとなる0は固有値とは無関係)

• I(·)を恒等写像とし, f(x) = f(x)−λ0I(x)とおく; すると f(v) =Pai,jwi,j となる

(36)

ある座標系でfの表現行列がJordan標準形になれば,fの表現 行列はfのそれにλ0Iを加えたものになるので,やはりJordan 標準形である. よって,fについて主張を示せばよい.

• ffの基底Ω∪ {v}(この順に並べる)に関する表現行列は, れぞれ,次のようになる. ただし,JiJiの対角要素をλi−λ1

で置き換えたもの.

f⇔

J1

. .. ... Jk ∗ λ

 ,f

J1 ∗ . .. ... Jk ∗ 0

• λii−λ1と定義する.

(37)

基底を取り直すことで,fの表現行列を簡単にすることを考える.

先のページのの部分がはじめから零であれば,すでにJordan 準形が得られているので,これ以上やるべきことは何もない.

そうでない場合,の部分が零になるよう基底を取り直す.

まず, ∀i, λi 6= 0の場合を考える. {pi,j : 1 ≤ i ≤ k,1 ≤ j ≤ mi}をパラメータとし, v =v+Pk

i=1

pi,1vi,1+Pmi j=2pi,jvi,j とする. Ω∪ {v}は基底である. f(v) = P

i,jai,jvi,j + +Pk

i=1

pi,1λivi,1+Pmi

j=2pi,jivi,j+vi,j−1)

だから,iに対 し, pi,mi = −ai,jiiとし, j = m−1, . . . ,1の順にpi,j =

−(ai,j−pi,j+1)/λiによってパラメータを計算すれば,の部分

を零にできる.

(38)

次に∃i, λi = 0の場合を考える. 基底を並べ換えて, ∀j ≤ q, λj= 0,m1≥m2≥ · · · ≥mq,∀j≥q+ 1,λj6= 0のであるよう にする.

1. {pi,j:q+ 1≤i≤k,1≤j≤mi}を パラメータ とし,v(1)= v+Pk

i=q+1

pi,1vi,1+Pmi j=2pi,jvi,j

とする. Ω∪ {v(1)}は基 底である. 先と同様に,i≥q+ 1に対し,pi,mi=−ai,jii

とし,j=m−1, . . . ,1の順にpi,j=−(ai,j−pi,j+1)/λiとす れば,q+ 1ブロック以降のの部分を零にできる.

2. i≤qであれば,f(vi,1) =0かつ∀j: 2≤j≤mi,f(vi,j) = vi,j−1である. v(2) = v(1)−Pq

i=1

Pmi−1

j=1 ai,jvi,j+1とする.

Ω∪ {v(2)}は基底である. さらに,f(v(2)) =Pq

i=1ai,mivi,mi となる.

(39)

• (∃i, λi= 0の場合,続き(1))

3. ∀i, ai,ji= 0の場合にはの部分はすべて零になっているの で終了. そうでない場合には,r= min{j:aj,mj 6= 0}とす る. すると,f(v(2)) =Pq

i=rai,mivi,miとなる.

4. v(3;0)=v(2)とし,j≥1に対し,帰納的に,v(3;j)=f(v(3;j−1)) と定義する. 記法の 簡単のために,l≤0のときにはvi,l=0 と定義すると,v(3;1)=f(v(3;0)) =Pq

i=rai,mivi,miであり,Ji の構造より,v(3;j)=Pq

i=rai,mivi,mi−j+1となる.したがって, v(3;mr) =Pq

i=rai,mivi,mi−mr+1となり,i≥rならmr≥mi

であったから,f(v(3;mr)) =0である.

(40)

• (∃i, λi= 0の場合,続き(2))

5. 前段で構成したベクトルを逆順に並べると,

f((v(3,mi), . . . ,v(3,0))) = (v(3,mi), . . . ,v(3,0))Nmr+1 となり,

Jordan標準形の一部が構成されている. このステップにお

ける新しい基底の構成に関与したベクトルは, v(2)以外に は, {vi,j : r ≤ i ≤ q,1 ≤ j ≤ mi}のみなので, B1 {v(3;mr−j+1) : 1 ≤ j ≤ mr} ∪ {vi,j : r+ 1 ≤ i ≤q,1 ≤ j≤mi}をこの順に並べた基底の一部,B2{vi,j:r≤i≤ q,1≤j≤mi}をこの順に並べた基底の一部としたとき,B1

B2の張る空間が一致することを証明できれば, Jordan 準形の構成が完了する.

(41)

• (∃i, λi= 0の場合,続き(3))

6. mr≥mr+1≥ · · ·geqmqであったことに注意する. r≤j≤q に対し,Dj=aj,mjImjとし,r+ 1≤j≤qに対してEj= (0mj×(mr−mj),Dj)とすると,B1B2に以下の正方行列を右 から乗ずることで得られる.この行列は正則なので,我々が おこなったことが基底変換であることが示される.

 Dr Er+1 Imr+1

... . ..

Eq Imq

(42)

Jordan

標準形

(22)

以上の証明は, I. M. Gelfand (Translated by A. Shenitzer, Lec- tures on linear algebra, Dover, 1989の記述に手を加えたもので ある. 証明が長くて難しいことに驚いたと思うが,これでも相対 的には簡単な証明であり,線形代数の(きちんとした)教科書では,

Jordan標準形の導出に30ページ前後が費されているものもある.

以上の証明は相対的には簡単なのだが, Jordan標準形におけるブ ロックJiの大きさが行列(あるいは対応する線型写像)から一意 的に決まることが示せないという欠点がある.

(43)

線形連立微分方程式への応用 (1)

• 正方行列は, 基底の変換によって, 対角化可 能できる場合もあれば, できない場合もある

• 正方行列は, つねに, 基底の変換によって Jor- dan 標準形に変換できる

• これらの応用のひとつは, 線形連立微分方程

式の解法である

(44)

線形連立微分方程式への応用 (2)

• 微分方程式 x ˙ = Ax, x(0) = x

0

を考える. た だし, x (t) ∈ R

n

で, A ∈ R

n×n

とする.

• この微分方程式の解は, x(t) = exp[At]x

0

で あった.

• 行列が対角化されているか, Jordan 標準形に

なっていると, exp[At] を具体的に計算できる.

(45)

線形連立微分方程式への応用 (3)

• まず, ある正則行列 P によって, P

−1

AP = D, D = diag(λ

1

, . . . , λ

n

) となっている場合 を考える. このとき, A = P DP

−1

, このと き, A

2

= (P DP

−1

)(P DP

−1

) = P D

2

P

−1

で, 以下帰納的に, A

k

= P D

k

P

−1

.

• したがって, exp[At] = P

∞ k=0

1 k!

A

k

t

k

= P P

∞ k=0 1

k!

D

k

t

k

P

−1

(46)

線形連立微分方程式への応用 (4)

• D

k

= diag(λ

k1

, . . . , λ

kn

) であるから, 以上によ り, A が対角化可能な場合には,

exp[At] = P

 e

λ1t

. ..

e

λnt

 P

−1

となる.

(47)

線形連立微分方程式への応用 (5)

• 次に, A の Jordan 標準形の特別な場合とし

て, P

−1

AP = λI + N , N = 0 I

n−1

0 0

!

となっている場合を考える.

• A と B が可換な正方行列のときには, 通常の 指数関数と同様に, exp[A+B] = exp[A] exp[B]

が成り立つ.

(48)

線形連立微分方程式への応用 (6)

• A と B が非可換の場合は先の式は不成立.

• I と N は可換, よって

exp[(λI + N )t] = exp[λIt] exp[N t]

= e

λt

exp[ N t].

• 帰納的に, N

k

= 0

n−k×k

I

n−k

0

k×k

0

k×n−k

!

.

(49)

線形連立微分方程式への応用 (7)

• したがって, P

−1

AP = λI + N の場合には

exp[At] = P

e

λt

te

λt

· · ·

(n−1)!tn−1

e

λt

. .. ... .. .

. .. te

λt

e

λt

 P

−1

• 一般の場合は上記の組み合わせ.

(50)

線形連立微分方程式への応用 (8)

• P

−1

AP = diag( J

1

, . . . , J

k

), J

i

= λ

i

I

mi

+ N

mi

, N

mi

= 0 I

mi−1

0 0

!

(1 ≤ i ≤ k) と すると・ ・ ・

exp[At] = P diag(exp[J

1

t], . . . , exp[J

k

t])P

−1

• exp[J

i

t] は・ ・ ・

(51)

線形連立微分方程式への応用 (9)

exp[J

i

t] =

e

λit

te

λit

· · ·

(ntni−1

i−1)!

e

λit

. .. ... .. .

. .. te

λit

e

λit

(52)

線形連立微分方程式への応用 (10)

• 以上により, 任意の正方行列 Aに対し, exp[At]

が書き下せたので, 連立線形微分方程式の解

の具体的な形がわかったことになる.

(53)

Kronecker 積 (1)

• システム工学の分野では, 行列の Kronecker

積と呼ばれる演算が使われることがある. こ

れは, A = (a

ij

) と B = (b

ij

) という任意の 2

個の行列に対して定義され (型が合っている

必要はない), A ⊗ B という記号であらわさ

れる. A を m 行 n 列の行列とすると, A ⊗ B

は, 次のようなブロック行列である.

(54)

Kronecker 積 (2)

A ⊗ B =

a

11

B · · · a

1n

B

... ...

a

m1

B · · · a

mn

B

• B が p 行 q 列の行列であれば, A ⊗ B は mp

行 nq 列の行列になる.

(55)

行列値関数の微分と積分 (1)

• A (t) を各成分が時間 t の関数である行列とし たとき: A(t) = (a

ij

(t))

1≤i≤m,1≤j≤n

;

d A (t)

dt =

da

ij

(t) dt

1≤i≤m,1≤j≤n

Z

t 0

A(τ)dτ = Z

t

0

a

ij

(τ)dτ

1≤i≤m,1≤j≤n

と定義する.

(56)

行列値関数の微分と積分 (2)

• 各時刻 t における A(t) の逆行列 A

−1

(t) が定 義され, かつ微分可能であると仮定する. この とき, A (t) A

−1

(t) = I であるから, dA(t)

dt A

−1

(t)+

A(t) d A

−1

(t)

dt = 0, よって

dA

−1

(t)

dt = −A

−1

(t) dA(t)

dt A

−1

(t) である.

(57)

多変数関数の微分 (1)

• システム工学では列ベクトルと行ベクトルを 使い分けることが普通.

• f : R

n

∋ x 7→ f( x ) ∈ R が偏微分可能な実数 値関数であるとき, ∂f

∂ x は, 通常は,

∂f

∂x1

· · ·

∂x∂f

n

という行ベクトルとして定

義される.

(58)

多変数関数の微分 (2)

• f : R

n

∋ x 7→ f (x) ∈ R

m

が偏微分可能な ベクトル値関数であるとき, ∂ f

∂x は, 通常は,

∂f1

∂x1

· · ·

∂x∂f1

... ...

n

∂fm

∂x1

· · ·

∂f∂xm

n

 という行列として定義さ

れる.

(59)

多変数関数の微分 (3)

f

x を f の Jacobi 行列あるいは Jacobian と 呼ぶ.

∂f

x と

f

x に定義が整合していたことに注意 する: すなわち,

f

x は,

∂f

x

1

から

∂f

x

m

までを 縦にならべたものになっている.

• ここまでは良いのだが・ ・ ・

(60)

多変数関数の微分 (4)

• f の偏微分を ∇f と書く流儀もある. ∇f は,

文献によって, 行ベクトルとして定義されて

いることもあれば, 列ベクトルとして定義さ

れていることもある.

(61)

多変数関数の微分 (5)

• 明示的には書かれていないが, 教科書では,

∇f を列ベクトルと定義しているらしい.

• 教科書では, ∂ f

∂x =

∂f1

∂x1

· · ·

∂f∂xm1

... ...

∂f1

∂xn

· · ·

∂f∂xm

n

 と定義

している. この定義は ∇f を列ベクトルと定

義する流儀と整合性があるが, 少数派.

(62)

多変数関数の微分 (6)

• この講義資料の定義を使うと ∂

∂x (Ax) = A

• 教科書の定義を使うと ∂

∂x (Ax) = A

T

• 多変数関数の微分では, ベクトルの型にバリ

エーションがあり, 混乱が発生しやすいので,

注意すること.

(63)

参考文献

笠原,線形代数と固有値問題,増補版,現代数学社, 2005

伊理,線形代数汎論,朝倉書店, 2009

• D. S. Bernstein, Matrix Mathematics, 2/e, Princeton University Press, 2009

• I. M. Gelfand (Translated by A. Shenitzer, Lectures on linear algebra, Dover, 1989

川久保,線形代数学,日本評論社, 1999

笠原,微分方程式の基礎,朝倉書店, 1982

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