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北政巳先生の退職に寄せて

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Academic year: 2021

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北政巳先生の退職に寄せて

湯沢 威 *

 北政已先生、創価大学での長年の勤務を終えられ、退職の年を迎えられたことを心よりお慶び 申し上げます。

 北先生との出会いは、和歌山大学で角山栄先生の指導を受けられた後、大阪大学大学院に籍を 置いていたころであると思います。私は京都の学生時代に人文研の研究会に顔を出させていただ き、そこの主要メンバーでもあった角山先生から卒論に関し、いろいろご教示を賜ったことがあ ります。そのようなご縁から北先生とは共通の話題を持つことができました。その後、経営史学 会が主催する富士コンファランスでもご一緒する機会があり、北先生はそこに出席されたグラス ゴー大学のチェックランド教授のもとで留学することになり、留学時代の苦労話とともに、ス コットランドの経済史、経営史研究の成果を伺うことがありました。その後、創価大学の国際 部長として、先生の持ち前の社交性とバイタリティで大学の国際化に大きく貢献されたことを web などでも拝見してきました。私も勤務先の国際交流センターの所長を務めましたが、大学 の国際化が話題になると、北先生のグローバルな活躍には足元にも及ぶものではありませんでし た。また北先生とは学生野球について話が及ぶことがありました。私も大学の野球部長を務めた ことがあり、学生との合宿などにも参加し、叱咤激励をしたことがありますが、それはあくまで も片手間の仕事でした。しかし北先生は野球部長として、野球を人材育成の場としてとらえられ、

熱く語っておられたことを記憶しています。おそらくその成果が全日本大学野球選手権大会で活 躍し、プロ選手を何人も輩出している結果を生みだしているのではないかと思っています。この ように北先生と私の接点はいろいろありました。

 北先生は教育に加え、学内の激務をこなしながら、実に多くの研究成果を出されています。そ の研究成果の多くは手元に届けていただいており、いろいろなことを学ばせていただきました。

それらの研究内容について立ち入ることは出来ませんが、ここでは若干の感想を記しておきたい と思います。まず北先生の研究視角には迷いやブレが感じられないということです。それは言う までもなく、スコットランドがテーマですが、そこに軸足をおいた定点観測が大きな研究上の 強みを発揮していると思います。私の関心対象がイングランドを中心としたグレート・ブリテン

(GB)であり、また北アイルランドを含めた連合王国 United Kingdom(UK)であるので、ス コットランドはその構成の一部という位置づけでした。また私の研究テーマはイギリスの産業革

* 学習院大学名誉教授

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i 季刊 創 価 経 済 論 集    Vol. XLVIII, No. 1・2・3・4

命や帝国主義、さらにはイギリスの経済衰退など研究視角は必ずしも一定したものではありませ んでした。しかし北先生は一貫してスコットランドを中心として、啓蒙主義、海運、造船、鉄道、

また対外関係としては日本と関係の深い H. ダイヤー、インドと関係の深いエルギン卿家、さら にはスコットランドから海外に渡った移民の分析など、スコットランドに関わるさまざまなテー マを取り上げています。対外関係は、日英ではなく、あくまでも日蘇の関係となります。これら の研究内容はスコットランド学とでも呼びうるものであります。また学界の動向や時代の問題に も敏感に対応され、それをスコットランドという舞台の中に投射されて説得力ある議論を展開し、

学界に対しても大きく貢献されています。

 私はこのような研究視角に羨望をもつとともに素朴な疑問もあります。一つは、イングランド は 1707 年にスコットランドを「合併」した当事者であり、スコットランド人の「移民」の一つ の対象国であるに過ぎない、という位置づけです。たしかに、いまでもイングランドとスコット ランドには border(国境)もあり、境界地域には領土の紛争地もあるようです。しかし現実に は UK という国家の構成員であり、そうであるがゆえに帝国主義の問題やシティのグローバルな 展開が世界経済に与えた影響などを分析することが出来るわけです。スコットランドは UK あ るいは GB の構成メンバーとしてどのような位置づけで考えれば良いのだろうか。二つには、ス コットランドと同じように、あるいはより深刻にアイルランドは「内なる植民地」と言われるほ どに厳しい差別を受けてきたが、スコットランドの「併合」とアイルランドの「併合」をどのよ うに比較したら良いのであろうか。その共通性と特殊性をぜひ知りたく思います。

 しかし昨今、Brexit で UK は北アイルランドをめぐって大きな混乱に直面しています。スコッ トランドの住民は圧倒的に EU 加盟の存続に投票していました。もしスコットランドが独自に再 度 EU 継続可否の国民投票を行うならば、残留派が多数を占める可能性は高いと言われます。そ のようなことになれば、UK、GR は分解し、スッコトランドは独立することになって、まさし く北先生のスコットランドを軸とした定点研究の成果が発揮されることになります。今後のさら なるご活躍を祈ります。

(2018年11月13日)

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