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オーストラリア法における 国際離婚事件の管轄権

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はじめに

国際離婚事件が日本の裁判所で問題となる場合、ア)日本は国際裁判管轄 権を有するか、イ)どこの国の法が適用されるか、そして、ウ)準拠法を適 用した結果、離婚が認められるかなどということが問題となる。わが国では、

ア)については明文規定はなく、それは条理に従って決定されており、ま た、イ)については法の適用に関する通則法が定めている。そして、法の適 用に関する通則法が指定する準拠法が外国法である場合にはその外国法に 従って、日本法である場合には日本民法に従ってウ)が決定される。

他方、オーストラリアでは、離婚に関する立法の中心的な法源として家族 法が15年に制定されており、この法律がア)イ)ウ)の問題を規定している。

その中でも、管轄権については、家族法の中に明文規定が存在することに加 えて、最高裁判決によって新たなルール(明らかに不適切な法廷地のルー ル)が採用され、注目すべきものがある。しかも、下級審判決を含めたその 裁判例は、当事者の国籍、住所、婚姻生活地がさまざまである上に、オース

オーストラリア法における 国際離婚事件の管轄権

北 坂 尚 洋

福岡大学法学部准教授

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トラリアでの離婚訴訟に関連する訴訟が外国でも係属している事件もあって、

非常に興味深いものである。そこで、本稿では、オーストラリア法における 国際離婚に関する法制度のうち、管轄権の問題を取り上げてみることにする。

その際に、管轄権に関連する事項、すなわち、離婚の準拠法や離婚原因につ いても取り上げ、これらを総合的に検討してみることによって、国際離婚事 件の管轄権の問題をわが国で検討する際の示唆を得てみるつもりである。以 下では、まず、オーストラリアにおける離婚の立法権限について述べた後に

(Ⅱ)、管轄権の問題(Ⅲ)、そして、離婚の準拠法や離婚原因について説明 し(Ⅳ)、その上で、オーストラリア法に対する評価を述べてみたいと思う

(Ⅴ)

離婚に関する立法権限

連邦と州の立法権限

オーストラリアは、ニューサウスウェールズ州(NSW)、クイーンズラン ド州(QLD)、タスマニア州(TAS)、ビクトリア州(VIC)、西オーストラ リア州(WA)、南オーストラリア州(SA)という6州と、オーストラリア 首都特別地域(ACT)や北部準州(NT)という2つの地域から構成される 連邦国家である。そのため、離婚に関する立法権限が、連邦にあるのか、そ れとも、州や地域(以下では、地域のことも含めて「州」という)にあるの かということが大きな問題となる。

連邦議会が立法権限を有する事項は、オーストラリア憲法の51条と52条 に規定されている。51条は連邦議会が州議会と競合して立法権限を有する事 項に関する規定であり、52条は連邦が専属的に立法権限を有する事項に関す る規定である。つまり、州議会は52条に規定されている連邦専属権限(例え ば、連邦政府の位置)以外の事項について立法権限を有することになるが、

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1条に規定されている事項については連邦議会も立法する場合があることに なる。そして、その場合には、連邦法が州法に優先する(5条)

連邦議会による離婚事件に関する立法権限の行使:婚姻事件法と家族 法の制定

「離婚、その他の婚姻事件、これに関連する未成年者の親権・後見」とい う事項は51条22号に明記されており、これらの事項は連邦と州が競合して立 法権限を有する事項である。

離婚については、15年に「婚姻事件法(15年)*3が制定されたが、こ の法律では、一定の場合における州裁判所の管轄権や準拠法などについて定 められただけで、それ以外の場合の管轄権や準拠法については定められず、

また、離婚原因については一切定められなかった*4。このため、19年まで は各州の裁判所がそれぞれ離婚判決を下す状況にあった。しかし、その状況 では、社会の基本単位である夫婦や子供に関する紛争を国家的に統一して解 決できない。そこで、この分野に関する連邦法が19年に制定されることに なった。これが「婚姻事件法(19年)であった。この法律の制定によっ て、婚姻事件法(15年)は廃止され(婚姻事件法(19年)4条1項) これまで各州でさまざまであった管轄規則、準拠法規則や離婚原因が連邦法 によって統一され、各州の法律の抵触が解消されることになった。

しかし、婚姻事件法(19年)で規定されていた離婚原因は各州法の離婚 原因を寄せ集めた14類型となってしまい、離婚原因が複雑なものとなって しまった。しかも、離婚事件を審理する連邦の裁判所は存在せず、裁判権限 は各州に残され、裁判権限については不統一のままであった。そのため、さ らなる統一をめざして、婚姻事件法(19年)を見直す気運が高まった。離 婚に関する規定を合理化するとともに、各州で行使されてた裁判権を連邦レ ベルで統一するために15年に制定されたのが「家族法」である。この法

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オーストラリア法における国際離婚事件の管轄権(北坂)

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律の制定により婚姻事件法(19年)は廃止され(家族法3条1項)、現在、

この法律が離婚についての中心的な法源となっている。

家族法の制定による変更点の1つは、夫婦関係の破綻が唯一の離婚原因と され、破綻主義が採用されたことである。また、家族法の制定により、連 邦の裁判所として家庭裁判所(Family Court of Australia)が設置され、離 婚事件の審理が連邦の裁判所である家庭裁判所で行うことができるように なったことも変更点の1つである。なお、19年に家族法は改正され、現在 では、新たに連邦の裁判所として設置された連邦治安判事裁判所(Federal Magistrate Court)が離婚事件の第1審を審理する

離婚事件の国際裁判管轄権

管轄原因

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家族法39条3項

5年に制定された家族法における離婚事件の管轄権に関する規定は39条 3項である。それは次のような条文である。

第39条 婚姻事件の管轄権

(3)離婚訴訟は、申立てが裁判所になされた時点において、夫婦の一方が次の場 合にこの法律に基づいて開始することができる。

(a)オーストラリア人である場合、

(b)オーストラリアにドミサイルを有する場合、または、

(c)オーストラリアの通常居住者であり、申立日の直前1年間そうである場合。

すなわち、申立日に夫婦の一方が、ア)オーストラリア人である場合(a 号)、イ)オーストラリアにドミサイルを有する場合(b 号)、ウ)申立日の 直前1年間、オーストラリアの通常居所者である場合(c 号)のいずれかで

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あれば、オーストラリア裁判所は管轄権を有することになる。これは、国際 離婚事件でオーストラリア裁判所が管轄権を有するかどうかを判断する基準 となるものである。

5年に制定された婚姻事件法(15年)は、管轄権については、一定の 場合における州裁判所の管轄権を定めただけであった。例えば、10条1項は、

ある州にドミサイルを有する者が、訴訟開始直前の少なくとも1年間、別の 州に居住する場合には、その者は居住する州で訴訟を開始することができる と補足的に定めていた*1

それに対して、婚姻事件法(19年)では、離婚事件の管轄権については 3条4項と24条が規定していた。23条4項によれば、離婚の訴えはオース トラリアにドミサイルを有する者が行うことができるとしていた。そして、

4条によれば、23条4項の適用に当たって、遺棄された妻で婚姻直前または 遺棄直前にオーストラリアにドミサイルを有していた者はオーストラリアに ドミサイルを有するとみなされたほか、訴訟開始日にオーストラリアに居住 し、かつ、訴訟開始日直前の3年間、オーストラリアに居住する妻もオース トラリアにドミサイルを有するとみなされた。したがって、これらの者も、

オーストラリアで離婚の訴えを提起することができるとされていた。

離婚事件について、家族法ではこれが改められ、家族法39条3項では、ド ミサイルのほかに国籍や通常居住も管轄原因とされ、しかも、夫婦の一方が それを満たせばよいとし、オーストラリア裁判所の管轄権が広く認められて いる。以下では、これらの管轄原因を順に見ていきたい。

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夫婦の一方がオーストラリア人である場合(a 号)

管轄原因としての国籍

9条3項 a 号は国籍に基づく管轄原因を定めている規定であり、これによ れば、夫婦の一方がオーストラリア国籍を有すれば、オーストラリア裁判所

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は離婚事件について管轄権を有する。この規定によれば、夫婦の婚姻生活が オーストラリアで全く行われず、夫婦両方がオーストラリア国外に住所を有 している場合でも、夫婦の一方がオーストラリア人であれば、オーストラリ ア裁判所の管轄権が認められることになる。

この規定に基づいて離婚が請求された裁判例としては、例えば、後述する CC v BCがある。この事件は、夫婦両方ともがスイスに住むオーストラリ ア人(夫はチリ生まれで、妻はラオス生まれであった)であり、夫がオース トラリア裁判所に離婚の訴えを提起したものであった。この事件では、夫婦 両方がオーストラリア人であったため、a 号に該当するかどうかについては 争われず、結論としてもオーストラリア裁判所の管轄権が肯定された。

また、後述する GGOR v SGは、日本に住んでいるオーストラリア人夫 と日本人妻の離婚事件であり、オーストラリア人夫が自らの国籍に基づいて 離婚を請求したものであった。この事件では、オーストラリア裁判所は夫の 国籍に基づいて管轄権を行使し、離婚請求が認められた。

なお、後述する Henry v Henryは、自分がオーストラリアにドミサイ ルを有するとして、夫がオーストラリア裁判所に離婚を申し立てた事件で あったが、申立てを行った当時、夫はオーストラリア人であったので、この 事件は a 号に基づいて離婚を申し立てることも可能であった事件である

オーストラリア市民権に関する法律

オーストラリア国籍の取得については、これまで、「オーストラリア市民 権に関する法律(18年)(以下では、これを18年法という)が規定し ていた。しかし、その条文の構成はわかりにくいものであり、また、その内 容の一部(例えば、申立てによる国籍取得の年齢制限)には不合理な点も あった。そこで、これを改めるため、18年法は27年に廃止され、新た に「オーストラリア市民権に関する法律(27年)(以下では、27年法と

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いう)が制定された。27年法の中心となる規定は、27年7月1日から 施行されている(27年法2条)

この法律では、国籍取得の方法は2種類の方法に分けて再構成されている。

2種類の方法とは、自動的にオーストラリア国籍を取得する方法(Automatic acquisition of Australian citizenship)と申立てによって取得する方法(Acqui- sition of Australian citizenship by application)である。

自動的な国籍取得の一例は、オーストラリアでの出生による国籍の自動的 取得である。すなわち、子がオーストラリアで生まれた場合で、その子の出 生時、その父母の一方がオーストラリア人であるか、オーストラリアの永住 権を有するとき、その子はオーストラリア国籍を自動的に取得することにな る(12条1項 a 号)。これは、18年法10条2項 a 号と同じ内容の規定であ

他方、申立てによる国籍取得の一例は血統による国籍の取得であり、例え ば、申立人は、次の要件を満たせば、大臣に申立てを行うことによってオー ストラリア国籍を取得することができる。すなわち、ア)申立人が19年1 月26日(1948年法の施行日)以降にオーストラリア国外で生まれたこと、

イ)申立人の出生時、申立人の父母の一方がオーストラリア人であったこと、

ウ)その親が血統による国籍取得などによってオーストラリア人である場合 には、申立人による申立時にその親が合計で少なくとも2年間オーストラリ アに所在するか、または、申立時に申立人が外国の国民でなく、かつ、これ までに外国の国民でなかったこと、エ)申立人が18歳以上である場合には、

大臣が申立てについて決定をする時点において申立人の人格がよいと大臣が 認めることという要件を満たせば、申立人は、大臣に申し立てることによっ て、オーストラリア国籍が与えられる(15A 条から17条)。この方法による 国籍の取得は、18年法にも存在したが、27年法への改正の際に、その要 件の一部に変更が加えられている。例えば、血統に基づく申立てによる国籍

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取得に関して、18年法は、12年1月15日の時点で18歳以上であった者以 外の者は25歳までにこの申立てをしなければならないとし、年齢制限の要件 がさらに存在した。しかし、申立人を年齢によって区別するこの規定に合理 的な理由はないとして、27年法ではその年齢制限の要件は撤廃されてい

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夫婦の一方がオーストラリアにドミサイルを有する場合(b 号)

管轄原因としてのドミサイル

夫婦の一方がオーストラリアにドミサイルを有すれば、オーストラリア裁 判所は、離婚事件について管轄権を持つとする規定が39条3項 b 号であり、

これはドミサイルを管轄原因とする規定である。オーストラリアでは、家族 法の意味でのドミサイルの得喪は連邦法とコモンローによって決定される。

ドミサイル法とコモンロー

オーストラリアでは、「ドミサイル法」という連邦法が12年に制定され ている。この法律は次のような内容の法律である。

まず、6条では、妻は常に夫のドミサイルを取得するとしていた従属ドミ サイル(domicile of dependence)を廃止すると定められており、これによっ て、その従属ドミサイルのルールが廃止されている。また、7条は、選択ド ミサイル(domicile of choice)についての規定である。ここでは、新しい選 択ドミサイル(domicile of choice)を取得しないまま、それ以前の選択ドミ サイルを放棄した場合には、本源ドミサイル(domicile of origin)を再取得 するとしていたルールが廃止され、新しい選択ドミサイルを取得するまでは、

それまでの選択ドミサイルを保有し続けるとするルールが定められている。

9条1項は、子が両親の一方のみと住んでいる場合の子のドミサイルについ ての規定であり、これによれば、その場合の子のドミサイルは、子と一緒に

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住んでいる親のドミサイルである。さらに、10条は、当事者がある国に選択 ドミサイルを有するために持たなければならない意思がどのような意思であ るかについての規定であり、それは不特定期間その国を本拠とする意思であ るとしている。

しかし、この法律はドミサイルについての全てのことを規定するものでは ない。例えば、10条は子が両親の一方だけと住んでいる場合についてのみの 規定であり、子が両親と生活している場合の子のドミサイルについての規定 は、ドミサイル法には存在しない。また、この法律は、この法律の施行日

(12年7月1日)以前に当事者がドミサイルを有していたかどうかいう問 題には適用されないため(5条1項)、それ以前の時点で、当事者が連邦法 の目的のためにドミサイルを有していたかという問題はドミサイル法によっ ては判断されない。ドミサイル法に規定されていないこのような事項につい ては、コモンローに従って判断されることになる。コモンローによれば、例 えば、嫡出子は父のドミサイル、非嫡出子は母のドミサイルを本源ドミサイ ルとして取得する。また、コモンローによれば、新しい選択ドミサイルを 取得するための要件は、「所在(presence/residence)」と「意思(intention) である。なお、どのような意思が必要であるかについては、ドミサイル法 0条に規定されていることは既に述べたとおりである。

選択ドミサイルを取得するための要件:Ferrier-Watson 事件

選択ドミサイルを取得するために必要とされている「所在」と「意思」と いう要件が問題となった事件は、In the Marriage of Ferrier-Watson and McElrathである。この事件は、アメリカ人夫とフィジー人妻の離婚事件 であり、管轄権の有無の決定において、申立人であったアメリカ人夫がオー ストラリアにドミサイルを有するかどうかが争点の1つとなったものであ 。家庭裁判所の合議体判決において、Holden 裁判官と Jerrard 裁判官

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は、夫がオーストラリアに選択ドミサイルを有すると結論を出したが(もう 1人の裁判官であった Finn 裁判官も、2人の判断のうち、ドミサイルに関 する判断には賛成している)、選択ドミサイルの取得のための要件について 次のように判示している。

まず、「所在」について、その国に合法的に所在するときに不特定期間と どまる意思が存在するのであれば、合法的に所在する長さは重要ではないと いう見解を支持した。そして、「意思」については、その国に居住してい るということは、必要とされている意思の一番よい、または、非常によい証 拠として理解されるべきであるが、それは、「意思」を証明する唯一の方法 ではないとし、「意思」は、特に、他国から出発したことの本質や新しいド ミサイルとなることを意図した地への到着の状況から推認することができる と判示した。つまり、この判決によれば、選択ドミサイルを取得するにあ たって、「所在」を証明するためには居住は必要ではないが、居住していれ ば、それは「所在」を証明するのに十分な要件となり、また、「意思」を証 明するのに有益なものとなる

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夫婦の一方が、申立日の直前1年間、オーストラリアの通常居住者で ある場合(c 号)

管轄原因としての通常居住

c 号は通常居住を管轄原因とする管轄規定であり、夫婦の一方が、申立日 の直前1年間、オーストラリアの通常居住者(ordinary resident)である場 合、オーストラリア裁判所は管轄権を有すると規定している。

ここでは、1年間という客観的な期間が定められているが、通常居住者と はどのような者を指すのかということが問題となる。

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通常居住者とは:Woodhead 事件

通常居住者とはどのような者であるかについて、家族法は4条1項の定義 の中で規定している。しかし、そこでは、「通常居住者は常居所を有する者 を含む」と規定するだけで、通常居住者についての具体的な定義は示されて おらず、通常居住者とはどのような者であるかということが裁判例において も問題となっている。

イギリス人夫婦の離婚事件であった In the Marriage of Woodheadは、

申立人であった夫がオーストラリアの通常居住者と言うことができるかどう かが問題となった事件であった。この夫婦は13年にスリランカで婚姻し、

その後すぐにアラブ首長国連邦に移ったが、14年に夫がアラブ首長国連邦 を去ってからは別居していた。そして、夫はパプアニューギニアで逮捕され た後、本人の意思に反してオーストラリアに移送され、オーストラリアで大 麻輸入共謀罪で懲役10年の判決を受けた。このように、夫は、オーストラリ アで囚人の状況である中で、申立日の直前1年間オーストラリアの通常居住 者であるとしてオーストラリア裁判所に離婚の訴えを提起した。ここでの争 点は、通常居住者と認定するための要件、特に、本人の意思とは無関係に囚 人としてオーストラリアにいる者を通常居住者ということができるかという ことであった。

Gersbach 補助裁判官は、まず、通常居住者という概念はその他の多くの 法律でも使われているが、それらは家族法の意味における通常居住者と同じ 意味であると判示した。その上で、特定の場所における通常の習慣的な生 活慣行が証明されるのであれば、一時的な不在があったとしても、それが続 いており、そして、その地が自発的にかつ定住目的で選ばれてさえすれば、

その地は通常居住地とされるとした Akbarali v Brent London Borough Councilを引用し、囚人となっている状態では、夫は自発的にオースト ラリアを選んだと言うことはできないことから、夫はオーストラリアの通常

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居住者ではないとして申立てを却下した。

ところで、家族法の中には、4条1項のほかには、通常居住者に関する具 体的な定義がないことは既に述べたとおりであるが、オーストラリア市民権 に関する法律(27年)3条には、「通常居住者」についての具体的な定義 が置かれている。それは次のような条文である。

通常居住者: 次の場合のみ、ある者はその国の通常居住者とされる。

(a)ある者がその国に本拠を有する場合、または、

(b)その者がその国に一時的に所在しないとしても、その国がその者の永久的な 住居がある国である場合。

しかし、その者が、特別または一時的な目的のみでその国に居住する場合には、

その者はその国の通常居住者とはされない。

Woodhead 事件判決で Gersbach 補助裁判官が述べたように、家族法にお ける通常居住者の意味が他の法律と同じであるとすると、オーストラリア市 民権に関する法律(27年)3条のこの定義は、家族法における通常居住者 の定義でもあると言うことができるだろう。

管轄権の行使が拒否される場合

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明らかに不適切な法廷地のルール

上述の家族法39条3項に該当する場合、オーストラリア裁判所は離婚事件 について管轄権を有することになるが、管轄権を有するからといって常に その管轄権が行使されるわけではないということに注意が必要である。す なわち、オーストラリア裁判所での訴訟が明らかに不適切である場合、そ の管轄権は行使されず、その訴訟は停止される。最高裁判決である Henry v Henryは、離婚事件でこれを認めたリーディングケースであり、それは次 のような事件である

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Henry 事件

事実の概要

Henry 夫妻は17年にドイツで婚姻した者であり、妻はドイツ人、夫は オーストラリア人であった。2人は13年までの間、ドイツ、スイス、モナ コに住んだが、オーストラリアで2人がともに婚姻生活をしたことはなかっ た(なお、婚姻中、2人は別々にオーストラリアに旅行に行ったことはあ った)。その後、夫婦は別居し、夫は13年3月に仕事のためモナコを離れ た一方で、妻はその後もモナコに住み続けた。この夫婦の間には子はおらず、

夫は、モナコ、ニューヨークとスイスに銀行口座を持ち、また、ヨーロッパ、

アメリカそしてアジアにビジネス上の利益を有していた。

妻は、同年3月、法定別居を求める訴えをモナコの裁判所に提起した。同 年8月、妻は法廷別居を求める訴えを取り下げ、代わりに離婚の訴えをモナ コの裁判所で開始し、さらに、妻は、財産や扶養に関する命令を求めた。モ ナコの裁判所では、夫はその管轄権を争ったが、その主張は認められなかっ た。

夫は、同年10月にオーストラリアに到着し、同年11月、家族法39条3項 b 号に基づいて、自分がオーストラリアにドミサイルを有することを理由とし て離婚を求める訴えをオーストラリア裁判所に提起した(家族法39条3項 a 号に基づいて、夫は自分がオーストラリア人であるということを理由にオー ストラリア裁判所の管轄権を主張することも可能であったが、夫はその主張 をしなかった。また、夫は、妻に対して支払うべき財産についての命令 もオーストラリア裁判所に求めた。これに対して、妻はオーストラリア裁判 所の管轄権について争い、夫がオーストラリアにドミサイルを有するとする ことは誤りであり、また、オーストラリア裁判所が管轄権を有するとしても、

オーストラリア裁判所は明らかに不適切な法廷地であるとして、その訴訟の 停止をオーストラリア裁判所に求めた。

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まず、Johnston 補助裁判官は、オーストラリアでの訴訟が妻を圧迫・困 惑させるものであること、または、訴訟の濫用であることを妻は証明しな かったと判示した。これに対して、妻は上訴したが、Ross-Jones 裁判官 は Johnston 補助裁判官の判断に賛成した。さらに、妻は家庭裁判所の合議 体(Nicholson 主席裁判官、Forgarty 裁判官、Finn 裁判官)に上訴したが、

これも認められなかった。最後に、妻は、最高裁判所(High Court of Aus- tralia)に上告し、Brennan 主席裁判官、Gaudron 裁判官、Grummow 裁判 官によって上告の特別許可が認められた。

この最高裁判決では、Brennan 首席裁判官による単独意見と Dawson 裁 判官、Gaudron 裁判官、McHugh 裁判官、Gummow 裁判官による多数意見 が述べられている。両方の意見とも、オーストラリア裁判所での訴訟は停止 されるという同じ結論であるが、その基準は異なっている。以下では、オー ストラリア裁判所での訴訟が停止される基準に関するそれぞれの意見を簡単 にまとめてみたい。

Brennan 首席裁判官による単独意見

損害賠償請求事件であった Voth 事件では、管轄権がある外国裁判所 で同一の事件を判断させるためにオーストラリア裁判所での訴訟を停止す る基準として、明らかに不適切な法廷地という基準が最高裁判所の多数意 見によって採用された。訴訟を停止するこのようなルールは、カナダやイ ギリスでは離婚事件にも適用されている。離婚事件において、このルール 以外には、管轄権行使の拒否を正当化することができる根拠は存在せず オーストラリアでも、このルールは離婚事件に適用される。

家族法39条3項に基づいて提起された訴訟が停止される際には、次の2 つの要件が満たされなければならない。すなわち、1つ目が、オーストラ リア家庭裁判所が、問題となっている離婚訴訟を決定するのに明らかに不

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適切な法廷地であること、2つ目が、離婚訴訟について管轄権を有し、か つ、それを行使することができる法廷地が外国にあることである 当事者が夫婦として一度も生活をしたことがなく、夫婦間の子もおらず、

重要な夫婦の財産も存在しない地の裁判所は、離婚訴訟を開始するのに不 適切な法廷地であると推定される

申立人によって選ばれた法廷地と外国法廷地の便宜性や適切性を衡量す る際に、申立人は選んだ法廷地で管轄権を行使する権利があると推定され るということを重要な要素とすることは、原則として誤りである また、モナコで妻によって提起された訴訟が達している段階や訴訟が開

始された順序は、この事件の解決に重要であると考えることはできない 本件では、オーストラリアは婚姻やその効果に何らの関連を持たない。

それ故、オーストラリア家庭裁判所は明らかに不適切な法廷地である。そ して、モナコの裁判所は管轄権を有し、一見する限り管轄権を行使しよう としている。そのため、離婚判決という救済をモナコの裁判所で得ること は可能である。したがって、オーストラリア家庭裁判所は、夫による離婚 訴訟を停止すべきであったのである

Dawson 裁判官、Gaudron 裁判官、McHugh 裁判官、Gummow 裁判 官による多数意見

管轄権を行使する当事者にその権利があると推定されるという考え方は、

訴訟が停止されるべきかどうかを判断する際には一定の役割を持つ。例え ば、それ以外の点では非常に拮抗して争われている場合には、その考え方 は重要な要素となるであろう。しかし、その考え方は、選ばれた法廷地が 明らかに不適切であることの立証責任が停止を求める当事者にあるという ことを示す以上のものとはならない場合もある。法廷地が明らかに不適切 であるので、訴訟停止の判断に、その考え方が影響しない場合もあり、例

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えば、訴訟原因が、当事者が居住している国、または、事業を営んでいる 国で生じ、その争点をその国で争うことが便宜である場合がそれである 争われてる事件に関して既に訴訟が係属している場合に、オーストラリ

ア裁判所で第2の訴訟を開始することは、相手方を圧迫・困惑させるもの であると推定される。もっとも、圧迫・困惑させるものであると推定され ることだけを理由に、国内での訴訟が停止されるべきであるということに なるのではない。しかし、同じ争点について別の国で同時の訴訟が存在す るという事実は、国内での訴訟が相手方を圧迫・困惑させるものであるか どうかの問題にとって非常に重要なものとなるのである*5

本件のような事件で適切に考慮されるべきことは、既に述べたことから 明らかになってくる。まず、それぞれの国の裁判所が当事者とその婚姻に ついて管轄権を持つ場合にしか、問題は生じない。そして、外国裁判所の 管轄権について疑問がある場合には、外国裁判所が問題を決定することが できるように国内での訴訟を延期する必要があるかもしれない。しかし、

両方が管轄権を有する場合、一方が他方の判決を承認するであろうかどう かを考慮することが重要になるであろう。もし外国裁判所の判決がオース トラリアで承認されない場合には、国内での訴訟が続けられるべきではな いという考えは放棄されるのが通常であろう。しかし、外国裁判所の判決 がオーストラリアで承認されるのであれば、判決が他国で執行される必要 があるかどうかを考慮することが重要となり、もしそうであれば、比較的 容易にそれがなされうる方で訴訟が行われるべきである。また、どちらの 法廷地が事件の完全な解決をより効果的に提供しうるかを考慮することが 重要となるであろう。

それ以外に考慮すべきこととしては、訴訟が開始された順序、それぞれ の訴訟が達している段階、そして、既に被った費用が含まれる。また、各 当事者がその外国に有する関連を考慮することやその法域で当事者が求め

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ている救済の内容に注意をすることが重要となるであろう。さらに、それ ぞれの当事者の資力や言語を考慮して、当事者がオーストラリアや外国で の訴訟に平等な状態で関わることができるかどうかを考慮することも重要 となるだろう。以上に述べたことが全てではない。むしろ、オーストラリ ア裁判所が明らかに不適切な法廷地であるかの問題は、関係する争点の本 質や全体を考慮しなければならず、事件の一般的な状況に依拠するもので ある

本件において、原審である家庭裁判所の判決は、モナコで訴訟が行われ ているという事実に全く注意を払わっていない、または、それが不十分で ある。妻によって開始されたモナコでの訴訟で認められる離婚判決は、

オーストラリアで承認できるものである。このような状況において、そし て、モナコの裁判所が管轄権を有するとすると、この訴訟が現在モナコで 行われているという事実は、最も重要な考慮事項であったはずである。し かし、原審の裁判官は、モナコに管轄権があるかどうかという問題につい て、全く検討をしなかったのである。(おそらく、原審の裁判官は、管轄 権があると推測したのであろう)。きっと、その国で係属している訴訟が あるという事実を重要であるとは考えなかったのであろう。そして、モナ コは当事者が最後に同居をしていた国であったという事実を重要であると 考えなかったのである。つまり、原審の裁判官は、オーストラリア裁判所 が明らかに不適切な法廷地であるかどうかを決定する際に重要な点の考慮 を怠ったのである*5

Henry 事件のまとめ

この事件は、家族法39条3項に該当する場合であっても、オーストラリア 裁判所が明らかに不適切な法廷地となるとして、管轄権の行使が差し控えら れるかどうかが問題となったものであり、特に、外国で離婚訴訟が係属して

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いる場合に問題となったものである。この点について、最高裁判所は、下級 審判決の結論を覆し、オーストラリア裁判所は明らかに不適切な法廷地であ るとして、オーストラリア裁判所での離婚訴訟を停止した。しかし、オース トラリア裁判所での離婚訴訟を停止した結論は同じではあるが、この判決で は、Brennan 首席裁判官による単独意見と Dawson 裁判官、Gaudron 裁判 官、McHugh 裁判官、Gummow 裁判官による多数意見という2つの異なる 意見が述べられていることをこれまでに述べた。

この2つの意見で述べられた基準の相違を簡単にまとめると、それは次の ようにまとめることができる

まず、損害賠償請求事件であった Voth 事件判決で述べられた「明らかに 不適切な法廷地のルール」が離婚事件にも適用されるかについて、Brennan 首席裁判官は、カナダ法やイギリス法を注意深く検討した上で、これを肯定 した(②の判旨一)。それに対して、多数意見は、この点について特に検討 することなく、Voth 事件判決で述べられたルールが離婚事件にも適用され ることを前提に判決している。

次に、39条3項に該当する場合には、申立人はオーストラリア裁判所で管 轄権を行使する権利を有すると推定されるかどうかについて、Brennan 首 席裁判官は、それは誤りであるとして、これを否定した(②の判旨四)。他 方、多数意見は、それが重要ではない場合もあれば、それが決定的となる場 合もあるとしている(③の判旨一)

また、外国で訴訟が係属していることが、管轄権の停止を判断する際に重 要な要素となるかについて、Brennan 首席裁判官はそれを否定した(②の 判旨五)。これとは対照的に、多数意見は、既に外国で訴訟が係属している 場合に、オーストラリア裁判所でも訴訟を開始することは、相手方を圧迫・

困惑させるものであると推定されるとし、外国で訴訟が係属しているかどう かは非常に重要な要素であるとしている(③の判旨二)

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そして、外国で訴訟が係属する場合にオーストラリア裁判所での訴訟が停 止される際の基準として、Brennan 首席裁判官は、オーストラリア裁判所 が離婚訴訟を判断するのに明らかに不適切な法廷地であり、かつ、離婚訴訟 に管轄権を有し、それを行使することができる法廷地が外国にあれば、オー ストラリア裁判所での訴訟が停止されるとし、この2つを要件とした(②の 判旨二)。そして、当事者が夫婦として一度も生活をしたことがなく、夫婦 間の子もおらず、重要な夫婦の財産も存在しない地の裁判所は、離婚訴訟を 開始するのに不適切な法廷地であると推定されるとした(②の判旨三)

これに対して、多数意見は、ア)それぞれの国の裁判所は管轄権を持つか、

イ)両方が管轄権を持つ場合、それぞれの裁判所は他方の判決を承認するか、

ウ)どちらの裁判所が事件の完全な解決をより効果的に提供しうるか、

エ)訴訟が開始された順序、それぞれの訴訟が達している段階、既に被った 費用、オ)当事者や婚姻とそれぞれの法域との関連、その法域で当事者が求 めている救済の内容、カ)それぞれの当事者の資力や言語を考慮して、当事 者がオーストラリアや外国での訴訟に平等な状態で関わることができるかど うか、キ)その他の事情を考慮した上で、訴訟の停止を検討すべきであると した(③の判旨三)

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最高裁判決以後の裁判例

訴訟の停止が認められた裁判例

この最高裁判決後、このルールは下級審判決でも採用されている。例えば、

このルールが採用され、管轄権の行使が控えられた裁判例としては、In the Marriage of Ferrier-Watson and McElrathがある。これは、アメリカ人 夫とフィジー人妻の離婚事件であった。夫婦は10年にフィジーで婚姻し、

フィジーで生活をしていた。夫婦の間には子が2人誕生したが(13年生と 4年生)、13年に夫婦は子の将来のことで意見が相違し、フィジーで別

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オーストラリア法における国際離婚事件の管轄権(北坂)

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居するようになった。その後、18年9月に、夫が妻との離婚を求めてオー ストラリア裁判所に申立てを行ったのが本件であった。他方、妻は17年8 月に法定別居と財産の清算に関する訴えをフィジーの裁判所に提起していた。

また、妻は、18年11月、フィジーの最高裁判所に、夫がフィジーにドミサ イルを有することの宣言を求める訴えを提起していた(しかし、フィジーの 裁判所には離婚訴訟はまだ提起されていなかった)。オーストラリアでの裁 判で、妻は、夫がオーストラリアにドミサイルを有さないことの確認、そし て、もし夫がオーストラリアにドミサイルを有するとしても、本件ではオー ストラリア裁判所は明らかに不適切な法廷地であるので、離婚訴訟を停止す ることをオーストラリア裁判所に求め、この裁判ではこれらが争点の中心と なったのである。

家庭裁判所の合議体判決において、Holden 裁判官と Jerrard 裁判官が述 べた多数意見は、自らがオーストラリアにドミサイルを有することを夫は証 明し、また、オーストラリア裁判所は明らかに不適切な法廷地であると言う ことはできないと述べて離婚請求を認容した Moss 裁判官による原判決を覆 した。すなわち、Holden 裁判官と Jerrard 裁判官による多数意見は、夫が オーストラリアにドミサイルを有することに賛成したが、オーストラリア 裁判所が明らかに不適切な法廷地であるとして、オーストラリア裁判所での 訴訟を停止した(なお、もう1人の裁判官であった Finn 裁判官は、夫が オーストラリアにドミサイルを有するとすることには多数意見に賛成したが、

オーストラリア裁判所が明らかに不適切な法廷地であるということには多数 意見に賛成しなかった)。明らかに不適切な法廷地であるかどうかに関する 多数意見の要旨は次のとおりである

本件では、当事者間には争点は1つしかなく、それは婚姻関係である。

そして、その問題は、夫がオーストラリア裁判所に訴えを提起する前に、

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そのさまざまな点についてフィジーで訴訟が行われている。夫のドミサイ ルに関する問題はフィジーで争われており、夫の離婚請求の審理がオース トラリア裁判所で行われたときにはその訴訟は係属中であったのである。

フィジーの裁判所が、夫の現在のドミサイルについて決定しなければなら ないということを避けることができるかどうかは明らかではない。原審の 裁判官は、オーストラリアで下された命令が有効であることの宣言をする ようフィジーの裁判所は勧められるべきであると述べたが、このような申 立てをすれば、フィジーの裁判所は夫のドミサイルについて検討する結果 になるにちがいない。これは、2つの裁判所において、矛盾する認定に基 づく命令が下される危険性を大いに作り出すことになるのである。さらに、

妻はフィジーに密接に関連しており、夫もフィジーとたくさんの関連を有 するのである。夫婦はフィジーで婚姻し、フィジーで一緒に時を過ごした のである。夫婦はフィジーで平等な状態で訴訟に関わることができるので ある

上述の点は、Henry 事件で最高裁判所がオーストラリア裁判所での訴 訟の停止を認めるために重要な要素とした点である。上述の点は、原判決 において適切に考慮されておらず、総合すると、それらは本件ではオース トラリア裁判所を明らかに不適切な法廷地とするものである

訴訟の停止が認められなかった裁判例

これに対して、明らかに不適切な法廷地のルールを採用したが、オースト ラリア裁判所が明らかに不適切な法廷地であるとは言うことはできないと結 論して、管轄権を行使した裁判例としては、例えば、GGOR v SGがある。

これは日本人が関係した事件であり、日本に住むオーストラリア人夫と日本 人妻の離婚事件であった。この夫婦は日本で婚姻し、それ以来日本に住んで いた。そして、夫は日本で5年以上働いており、妻はオーストラリアに住ん

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だことがなかった。また、夫婦の間には日本で生まれた5歳に満たない子が 1人おり、その子は現在日本に住んでいて、オーストラリアに行ったことが なかった。このような状況において、自分がオーストラリア人であることを 理由に、夫がオーストラリア裁判所に離婚の申立てをしたのが本件であった。

この裁判で、Scarlett 治安判事は、夫がオーストラリア人であることから 家族法39条3項 a 号の管轄原因には当てはまるとした上で、オーストラリア 裁判所が明らかに不適切な法廷地となるかについて検討をした。そして、夫 がこの離婚訴訟をオーストラリアで提起したのは、夫はこの後オーストラリ アに戻るつもりあること、そして、日本ではまだ離婚訴訟が提起されておら ず、オーストラリアでの離婚訴訟が唯一の離婚訴訟であることから、オース トラリア裁判所は明らかに不適切な法廷地であると言うことができないとし た。その結果、オーストラリア裁判所の管轄権を行使し、夫の離婚請求を認 めた。

また、CC v BCは、夫婦両方ともスイスに住むオーストラリア人夫婦(夫 はチリで生まれた者で、妻はラオスで生まれた者であった)の離婚事件であ り、夫がオーストラリア裁判所に離婚の訴えを提起したのに対して、妻が、

オーストラリア裁判所は、明らかに不適切な法廷地であるとして訴訟の停止 を求めたものである。Sexton 治安判事は、Henry 事件の多数意見が示した 基準((2)③の判旨三)を順に検討し、本件を裁判する裁判所として、オー ストラリア裁判所は、明らかに不適切な裁判所であると認めることはできな いと判示した。

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離婚の準拠法、離婚原因

準拠法

離婚事件において、オーストラリア裁判所は法廷地法であるオーストラリ ア家族法を適用する。コモンローのルールがそれであり、また、家族 法42条1項は、家族法によって裁判所に与えられた管轄権は家族法に従って 行使されなければならないと規定している

離婚原因

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破綻主義の採用

オーストラリア法には、夫婦の協議に基づく離婚という制度は存在せず 裁判所による離婚という制度が存在するだけである。そして、家族法48条に は、その際の離婚原因が定められている。それは次のような規定である。

第48条 離婚

(1)この法律に基づく離婚の命令を求める申立ては、婚姻が回復できない程度に 破綻しているという理由に基づくものでなければならない。

(2)(3)に従うことを条件に、そのような申立てによって開始された訴訟において は、その理由が立証されたかどうかが判示されなければならず、当事者が別居 しており、かつ、その別居の日以後、離婚の命令の申立日直前まで少なくとも 2ヶ月間以上継続して別々に暮らしていたと裁判所が認める場合に限り、離婚

の命令が下されなければならない。

(3)同居が再開される合理的な可能性があると裁判所が認めるときは、離婚の命 令は下されてはならない。

かつて、婚姻事件法(19年)には14類型の離婚原因が存在したが、家 族法では離婚原因は1つだけとされた。それは、婚姻が回復できない程度 に破綻しているということである(1項)。そして、その離婚原因は、当事 者が離婚の申立日の直前まで少なくとも12ヶ月間連続して別居していること

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参照

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