• 検索結果がありません。

小学校理科の目標・学習内容に関する問題点と課題

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "小学校理科の目標・学習内容に関する問題点と課題"

Copied!
11
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

熊 大 教 育 実 践 研 究 第

21

号 ,

‑11

, 

2004 

小学校理科の目標・学習内容に関する問題点と課題

中 山 玄 三 *

Problems and Issues on Objectives and Contents of  Elementary School Science 

Genzo NAKAYAMA 

Abstract 

In this article, problems and issues on objectives and contents of science teaching at  elemen tary school level  (Grade  3 to  6)  were discussed based on my resechfindings, by citing the  instances  of science teachers'  opinions.  The crucial  points  for  the  improvement of elementary  school science were proposed as follows: 

(1)  To enrich "scientific literacy"  should be considered as most important objectives of sci ence teaching. More emphasis should be placed on understanding and making judgment of the  ways how one's life  and society are influenced by and influence science and technology, as well  as skills and attitudes in solving problems. 

(2)  Scope of contents should be enlarged

, 

by including the contents related to

epplica

tion and practical use of science in daily life  and society".  Crosscurricular approaches need to  be taken

, 

which interrelate and integrate the contents across the subject areas

, 

in view of science  and technology in society. 

(3)  Fundamental ideas  of basic  science  should be developed and redeveloped in piral"

mode

, 

becoming deeper and wider

, 

as the leamer progresses through the higher grades.  Sequence  of contents should be tested and judged in the entire science curriculum

, 

by studying children

de velopmen

  , t

which provides clues to know about what is  most appropriate at a specific grade level. 

( 4 )  

There exist the strong demands for

lore"contents and time

, 

while in reality the "less" 

contents and time were allocated in the current curriculum.  Such paradoxical siationshould be  solved

, 

by constructing systematic linkage between school and outof ‑school activities related to  science and technology. 

( 5 )  

In guiding

eorganization of entire science curriculum from elementary to  lower sec ondary schools, the children's growth in bilitiesto  abstract from the facts  and to  solve prob

lems"

, 

and the accumulation of those learning experiences should be taken into consideration.  To  cope with the differences in attainment of concepts and skills, more emphasis should be placed on 

eindividualized curric

umand instruction. 

は じ め に

現行学習指導要領は,平成10年に告示され 3 間の移行措置を経て,平成14年度より全面実施され ている.変化の激しい時代にあって,実施期間が,

これまでの10年聞から5年間に短縮され,次期改訂 を迎える運びとなったことは,周知のとおりである.

そこで,本稿では,熊本県内の小学校教師から寄せ られた,現行理科の教育課程に関する意見や要望,

*附属教育実践総合センター

提案を,事例として取り上げつつ,筆者のこれまで の研究成果をもとに,小学校理科の目標および学習 内容に関する問題点と課題について,所見を述べて みたい.これは,次期教育課程改訂に向けた一つの 提案である.

.理科の目標

(1)  問題解決力の育成

理科では,戦後,今日の学習指導要領に至るま で,首尾一貫して,子どもの主体的な問題解決が 重視されてきていると言える.一人一人の子ども

‑ 1 ‑

(2)

の経験と論理を軸にした問題解決である. r新し い学力観Jのもとでは,情意的側面も,ほかと同 等の重要な学力として捉えられ,子どもの情意の 高まりと問題解決の深まりが,両輪となった.つ まり,直接経験を通した知的経験と情的経験が一 体となった問題解決である.今日言われている

「生きるカJ とこれまでの問題解決とを結びつけ るには,他人とのかかわり・アイデアの交流とい う社会構成主義の観点を,加味することが,さら に必要である.理科で「生きるカJを育むことは,

体験的活動と,子どもの論理,情意の高まり,ア イデアの交流を重視した問題解決活動を繰り返す 中で,認知的自立,自己責任, 自律,他人のよさ を認めるなどの態度や精神を培うことであると考 える(中山, 2001).現在,小学校の教育現場で は 生 き る 力 」 な ら び に 理 科 の ね ら い は , ス ローガンとして十分に定着しているが,実際に,

理科の目標を学習指導計画として具体化する際,

理念を論旨通り実践することが課題として残され ている(中山, 2003a). 

現行学習指導要領では,小学校理科の目標とし て身近な自然について子どもが自ら問題を見 いだし,見通しをもった観察・実験を行い,問題 解決の能力を身につけるとともに,学習内容を日 常生活と関連づけて実感を伴った理解をすること,

自然を愛する心情と科学的な見方・考え方をもつ こと」が重視されている.特に,問題解決力の新 たな重点として,①見通しをもつこと,②予想通 りにいかない事実・反証も大切にすること,③5 年生の思考として,条件をコントロールすること,

6年生の思考として,多面的・総合的な見方・

考え方をもつこと,の4つが重視されている(中 2000a). 

小学校教員が捉えた子どもの問題解決の実態は,

次のとおりである.

・自然を感じる機会や経験が少ない.

・観察や実験をすることはたいへん好き.予想、を 立てたり課題をつくったりすることがあまり好

きでない.

・どの程度と範囲まで,見通しをもてるのかが明 らかでない.

・観察や実験の結果を,自分自身で気付いていな いことが多い.

・論理的に思考する経験が少なく苦手で,条件コ ントロールで、は個人差・発達差が大きい.

・調べ学習で,多くのことを学んだ気になってい る.

また,観察・実験技能の習得に関しては,小学

校教員から,次のような意見が出されている.

・顕微鏡をくり返し操作することによって習熟す る機会がなく,また,十分に活用する機会も少 ない.

.てんびんの仕組みは理解できても,使いこなせ るようになるまでには時間が足りない.

・電流計の使い方は,実体験がないまま知識とし て覚えることになる.

このような実態・実情を鑑みると r見通しを もって観察,実験などを行い,科学的に調べる能 力と態度J という理科の目標に対応するものとし て,観察・実験の技能および表現の力を,より一 層重視すべきであると考える.特に, (i)観察・

実験の基本操作, (ii)自然の事物・現象を科学的 に探究する方法, (iii)観察・実験記録の仕方,

Civ)探究の過程や結果及び結果を考察して導き出 した自らの考えを,的確に表現する能力,の4 のカを大切にしたい.このうち,表現は, 目的意 識をもって主体的に観察・実験を行う態度や,自 ら課題を見いだし,探究活動を通して自ら考え解 決していく問題解決的な資質・能力など,いわゆ る「生きる力jの育成につながる部分であり,今 後ともより一層重視すべきであると考える(中山,

2003b) . 

(2)  豊かな科学的素養の育成

理科の目標は,もとより,①直接経験を重視す ること,②自然認識,問題解決の能力,技能,態 度を育てること,③科学的な見方や考え方を養う こと,④自然に対する心情を育てることであり,

これが理科の普遍的な役割であると言える.この 目標に対して,小学校理科の実際では,教員から,

次のような意見や要望が出されている.

・科学的な見方・考え方や子どもの論理を重視す る傾向があり,心の育ちが大切にされていない.

・自然に感動する心,身の回りの自然に対する興 味・関心や知的好奇心,科学にロマンを感じ科 学する心を一層大切にしたい.

・五感を十分に使った直接体験に基づく,豊かな 心情と実感を伴った理解を一層大切にしたい.

・その際,校内や身近で行える観察・実験を,一 層重視してほしい.

これからの科学/技術・理科教育を更に充実さ せていくには,子どもに「豊かな科学的素養」を 培うことが極めて重要であると考える.特に,

)発見する喜びゃ創る喜びなど,驚きや感動の 体験, (ii)子どもの自由な発想を生かした観察・

実験,探究活動などの問題解決的な学習, (iii)

‑ 2

(3)

中 山 玄 ー

学的な見方・考え方と実感や納得を伴った理解,

(i

v)

自然の神秘への探究心や自然に対する畏敬の 念,科学に関する興味や関心,

(v)

科学と自然や 人間とのかかわりについての認識,の5つの点を,

今後,一層重視すべきである(中山, 1999). 5つの中で,理科の目標として,これまであま

り重点が置かれてこなかった,科学と自然や人間 生活のかかわりについての認識を深めるためには,

特に, 1)身のまわりの自然と親しむ直接経験,

2)健康,食糧・資源,エネルギーと環境,情報,

人工物にかかわる「科学を学ぶことJ3) r科学 すること」と「科学を学ぶこと」を通して「科学 について学ぶことJ,が重要であると考える(中 2000b). 

社会人として生きていく上で必要な科学的素養 を十分に備えていないままに,学校を卒業してい く.また,学校で身につけた理科学力(学校知) が,一生涯にわたって必要なミニマム・エッセン シヤルズ(日常知・生活知)として機能していな いなどの批判的反省が今日ある.これは,個人を 取り巻く現代社会がその個人に対して期待・要求 する発達課題と,その個人が準備できているかど うかというレディネスの問に,大きな隔たりがあ るという問題点から,理科学力を再考しようとす るものとして受けとめることができる(中山,

2000c) .わが国には,わが国独自の国民的素養が あるはずであるが,科学的素養としての具体的内 容については,いまだ統一見解を見るには至って おらず,これからの課題として残されている(中 1999). 

2.理科の学習内容 (1)  学習内容の範囲

日でもほぼ同一の視座に立って,重視されている と言える.

ただし,平成元年の学習指導要領の改訂の際,

日常生活との関連を図るため,従来の ABC3区 分に加え rD区分 生活と科学Jのような新区 分を設定するという考え方もあったが,学習指導 の進め方を基礎と応用に区別できるのかという議 論が生じ,結論として,日常生活とのかかわりの 深い内容を充実させるが,区分はそのままとする ことに落ち着いた(奥井・草野, 1989).平成10 年度版現行学習指導要領においても,学習内容を

日常生活と一層関連付けて実感を伴った理解を図 るとしながらも,内容構成については,現行どお

りとされている.

現行学習指導要領での学習内容の範囲について,

小学校教員からは,次のような意見が出されてい る.

eA区分「生物とその環境jでは,人体にかかわ る学習内容が,大幅に減った.植物と動物が集 約され,人間は動物の内容の中に一部集約され た.子どもは,植物・動物・人間の3つの対象 を,区別している.

・B区分「物質とエネルギーJでは,物理変化に 比べ,化学変化の基礎が希薄化した.また,化 学的な学習内容や数量を扱う学習内容では,算 数での力を活用・応用する必要がある.

ec区分「地球と宇宙」では,宇宙の学習内容が 減ったが,星の学習については r美しいなあj

という感動を4年生で大切にした点で,評価で きる.また,気象に関する基礎的・基本的な内 容が減った.

・これからの生活を営んでいく上で,最低限身に つけておく必要のある科学的素養として,特に,

生命・人体,環境保全,科学/技術についての 学習内容を組み込んでほしい.

子どもに豊かな科学的素養を培うためには,今 後,理科の学習内容の範聞拡大を視野に入れつつ,

生活関連の科学/技術にかかわる学習内容を,一 層充実する必要があると考える.これについては,

詳細を改めて後述する.

小学校理科で、は,学習内容の範囲(スコープ) については,昭和43年度版学習指導要領より平成 10年度版現行学習指導要領に至るまで,一貫して,

A区分「生物とその環境JB区分「物質とエネ ルギーJ, C区分「地球と宇宙Jの 3区分が踏襲 されてきている.もとより,スコープの設定の仕 方は,自然認識の特性から,生命体を中心とした 自然の事物・現象をひとまとまりとした学習内容 がA区分,生命体とは区別さえる非生命体という 自然の事物・現象を,物質とエネルギーの観点か らひとまとまりとした学習内容がB区分,そして,

物質とエネルギーとは区別される非生命体として,

地球を含む宇宙の事物・現象をひとまとまりとし た学習内容がC区分である(松本, 1988). 自然 認識の特性に基づいた学習内容のこの区分は,今

(2)  学習内容の配列

‑ 3 ‑

理科のカリキュラム設計を行う際,どの学年で,

いかなる学習内容を,どのような順序で配列すべ きかという,学習内容の配列(シークエンス)が 問題となり,その学習の最適期を決定するために は,学習者のもっているレディネスの実態を明確 に捉えておくことが前提となる(中山, 2000c). 

(4)

学習内容の配列については,一般に, i易から難 へJi単純から複雑へJi特殊から一般へ」などの 経験知・実践知は認められているが,科学的根拠 に基づいた客観的・普遍的な原理は未だ存在しな し¥

昭和43年度版学習指導要領では,子どもの発達 段階に合わせて先行経験や既有概念を累積し,深 化・拡充するように,学習内容を小学校6年間に わたって系統的・階層的に配列した,いわゆる

「スパイラノレ型」の構造化が図られた.昭和52年 度版学習指導要領では,内容の軽減に伴って,螺 旋状の学習経験の積み上げの回数が減り,間隔も 拡がった内容配列となったが,シークエンスの設 定の仕方は,基本的にはスパイラル型であった

(松本, 1988). 

平成元年版学習指導要領では,低学年理科が廃 止され,理科の学習内容は4年間に精選・集約さ れたことによって,学年間の学習内容の階層性・

累積性を重んじたスパイラル型の構造が緩められ る結果となった.学年目標問の階層性は維持しつ つ,学習内容は,各学年の単元ごとに集約された 配列となり,いわゆる「コンセントリック型J 構造へと変わった(平野, 1999).平成10年版現 行学習指導要領では,学習内容がさらに厳選され,

高学年では課題選択も導入されたことにより,コ ンセントリック型の内容配列が強まったと言える.

現行学習指導要領で、のコンセントリック型の内 容配列について,小学校教員からは,次のような 意見や要望が出されている.

・現行学習指導要領での理科の各学年の目標は,

段階を追って設定されている点が評価できる.

・現在の理科における学習内容の配列では,学ん だ基礎的・基本的内容を,理科の中で生かして いく機会が少なく,特に,前学年で学んだ内容 を生かすという機会が減ったために,子どもへ の定着が効果的ではない.子どもは繰り返し想 起したり,既習事項を活用したりすることで,

徐々に基礎的・基本的内容を獲得していく.

. A

区分「生物とその環境jでは,単元ごとに植

物と動物の内容が集約された.植物の観察は年 間を通して行われているが, i見虫の成長過程 や種類Jなどが削除されたため,他の動植物と 関係付けて季節感を感じたり,相互の関係を見 つけたりすることが難しい.人体の学習では,

従前のように,生命の学習をスパイラル的に積 み上げていく方が学習しやすい.植物の学習で i根や茎から育つ植物J (3年)が中学校に 移行されたが 2学年程度の移行に留め「植物

‑ 4 ‑

の発芽や成長J

(5

年)に関係づけていろいろ な植物を知る方が,子どもの関心が高まる.

. B

区分「物質とエネルギーJでは i空気と水 の力Ji温度とかさJiあたたまり方Jr三態変 J(4年)の学習内容が,まとめ過ぎである.

ま た て こ と て ん び んJ

(5

年)の学習内容 も,同じものをまとめ過ぎである.単元ごと に集約した結果,子どもの思考がスムーズで なく,科学的な面白さも薄れているように感 じる.学年ごとに少しずつ,一つ一つ段階を 踏んで学習する方が望ましい.電気の学習で は,従前のように,スパイラル的に積み上げ ていく方が学習しやすい.

.

c

区分「地球と宇宙Jで は 土 と 石J(3年) が 削 除 火 成 岩J

(6

年)が中学校へ移行され た た め 土 地 の 構 成 物J(6)Jに関する学 習内容が,大ざっぱなものになった.その結果,

土地のでき方を科学的な根拠をもって推論する 活動が展開できなくなった. 3年で扱わず6 で集約された結果,少し内容が多いため, 5 の「流れる水のはたらきJに入れるか, 3年に 戻した方がよい.

また,小学校高学年で、新たに導入された課題選 択について,次のような意見が出されている.

. A区分の「動物の発生と成長J(5年)の課題 選択では, r卵の中の成長」は観察中心 r

体内の成長Jは調べ学習が中心で,資質・能 力面で活動の質が異なり,同価値の課題とし て扱うことに無理がある.顕微鏡の操作につ いても,課題選択の仕方によって,顕微鏡を 扱う・扱わないという差が出る.

.B区分の「おもりの動きJ(5年)の課題選択 で は 振 り 子 」 と 「 衝 突Jは,身につけるべ き資質・能力が同じだが,両方の課題をくり 返して学習することで定着が図れる.どちら か一方の選択では,かかる時間にも差があり,

特に,思考力の面で差が出る.

.

c

区分の「土地のっくりと変化J(6年)の課 題選択では, r火山j と「地震」がもともと相 互に関係し合っていることから,一つの課題 を選択しても,調べ学習の結果,両者が相互 に関連づけられることが多い.

このような実態・実情を鑑みると,学習内容の 配列に当たっては,同じ系統の内容が各学年間で 連続し,学年ごとに段階を追って学習が積み上げ られていけるような,従前のスパイラル型配列の 方が,むしろ望ましいと考える.その際,理科の 基礎・基本としての学習内容の程度と範囲を系統

(5)

中 山 玄 ー

的に見直し,どの学年でどの内容を扱うべきかと いう,学習の適切な時期を検討し直す必要がある.

実践的なカリキュラム研究やカリキュラム評価の 研究成果(例えば,中山他, 1998)を蓄積しなが ら,科学的理論を構築していくことが課題として 残されている.

(3)  学習内容全般と授業時数

現行学習指導要領の小学校理科で、は,子どもが

「ゆとりJをもって,観察・実験に取り組み,問 題解決カや多面的・総合的な見方・考え方を身に つけることができるように,第3学年で35時間・

7項目の内容が削減,第4学年で15時間・ 5項目 の内容が削減,第5学年で10時間・ 2項目の内容 が削減,第6学年で10時間・ 8項目の内容が削減 された.これに伴い, 1項目当たりの平均授業時 数が, 5.4時間から6.2時間に増えた.

学習内容全般と授業時数について,小学校教員 から,次のような意見や要望が出されている.

・学習内容全般にわたって,端折られた印象が強 レ¥

‑理科の面白みや感動が薄く,科学的な思考を楽 しむ内容が減った.

・内容の削減等でゆとりはもたせてあるが,子ど もが納得するまで事物や現象とかかわり,子ど もなりの結論を見いだすには,時数的なゆとり がない.

・自然とかかわる時聞が少なく,興味・関心が薄 れがちである.

・じっくり観て記録する時間や,気付きを交流す る時間が,十分でない.

・このままでは,本当に「理科嫌い」が生まれる.

理科の楽しさ,面白さ,不思議さを,誰もが感 じることができるような,学習内容を設けるこ とが必要である.

・子どもの身のまわりと科学を近づけるような学 習内容を取り上げる必要がある.そうすること で,科学にロマンを感じることや,知的好奇心 をよりいっそう高めることができる.

・知識面も大切だが,子どもの主体性や関心・意 欲・態度が育つような学習内容を残してほしい.

今回の学習指導要領の改訂では,他教科や中学 校と重複した学習内容や,指導が高度になりがち な学習内容が,削除・中学校へ移行統合されたこ とによって,確かに,ゆとりが確保された.知識 量という点から,いわゆる学力低下が懸念される 一方,現行理科においては,限られた時間内では あるが,小学校教師が指摘しているように,とり

わけ,科学に対する興味・関心や知的好奇心を高 め,科学にロマンを感じる子どもの育成を図りた い.このためには,科学と子どもを近づける理科 の学習活動の展開に,工夫の余地が十分に残され ていると言える.

今日,科学技術創造立国のための科学/技術・

理科教育の推進が強く求められており,質・量と もにより高くより多くの要請に対し,内容・時間 どもにより少なくより短くの現実という,一種の 逆説的な状況が生じていると言える.このような 状況の下では,学校理科にすべてを委ねるだけで は,必ずしも問題の解決につながるとは言い難い.

学校での理科との関連を図った,博物館・科学館 等での校外体験学習プログラムの活用など,学校 と社会が連携した教育システムを構築することも 併せて必要であると考える(中山, 2002a). 

(4)  生活関連の科学/技術にかかわる学習内容 現行学習指導要領においては,身の回りの日常 生活との関連を図った学習や,科学工作などのも のづくり・生産活動,自然環境と人間とのかかわ りなどの学習が,一層重視はされている.このう ち,特に,理科B区分の学習内容として充実が図

られた「ものづくり」について,小学校教員から は,次のような意見が出されており,指導上の工 夫の余地が残されていると言える.

・子どもが学習内容を理解したあとに発展させる ような形で,ものづくりの活動が展開できでな く,ねらいまで到達していない.

・実験装置を組み立てる活動に,ものづくりを組 み入れることが難しい.

・子どもは,与えられた物を使って作ることは慣 れているが,自分で工夫することが苦手で,理 科以外での製作技能が未熟なため,時間数が理 科だけでは足りない.

また,理科の学習内容と日常生活との関連につ いて,小学校教員からは,次のような意見や要 望・提案がある.

・子どもの周りには,科学/技術の結品である製 品があふれでおり,その仕組みが分からない にもかかわらず,子どもは生活の中で自在に 扱っているという現実と,現行の理科の学習

がかけ離れている.

・子どもの身のまわりと科学を近づけるような学 習内容を取り上げる必要がある.

・これからの生活を営んでいく上で,最低限身に つけておく必要のある科学的素養として,特に,

生命・人体,環境保全,科学/技術などについ

‑ 5 ‑

(6)

ての学習内容を組み込んでほしい.

理科の学習内容は,実際には,依然として科学 主義的内容に偏り,科学そのものに重点が置かれ がちである(森, 1995). そのため,子どもに とって魅力が薄く学校理科,校門を出ず」型 の教科となっていることに 問題がある.子ども が,学校で学んだ科学的な知識を,身の回りの生 活に当てはめて役立てたり,あるいは,日常生活 の中で普段何気なく挑めていたことが,理科で学 んだ知識と関係があることがわかることが,大切 である.子どもの発達段階に適合し,しかも日常 生活と関わる学習内容を再検討する必要があると 考える.これは,生活・社会中心の科学の応用 性・実学性を重視した理科の提案である(中山,

1998).生活関連の科学/技術にかかわる学習内容 の具体例として,次の事項が挙げられる(中山他,

1995 :中山, 1996). 

①  日常生活における事物・現象: 身の周りの 物・物質,身の周りの生き物,身の周りの自然 環境

②  生活の充実のための科学/技術: 科学的原 理を応用した道具・機械,衣食住に関わる生 活上の工夫,火災・危険物等による災害・事 故対策,健康の維持・;憎進など

③  人類の共存に関わる科学/技術: 素材・材 料・資源の開発・リサイクル,燃料・エネル ギーの開発・利用,食料等の生産など

④  地球・自然環境に関わる科学/技術: 人間 生活と環境の関わり,自然災害対策,地球自 然環境の保全

(5)  理科と他教科等の学習内容の関連

子どもが,科学と自然や人間とのかかわりを理 解し,豊かな科学的素養をもつことができるため には,生活関連の科学/技術にかかわる学習内容 の充実を図るとともに,教科としての理科のみな らず,理科と総合的な学習の時間や他教科等との 関連を図ることが望ましいと考える (NAKAYA‑

M A, 1997;中山, 1999).理科と総合的な学習と の関連について,小学校教員から,次のような意 見がある.

・総合的な学習の時間において,理科の基礎的・

基本的内容を活用することが望まれているが,

内容の全部を生かせるものではなく,理科の基 礎・基本は,理科学習の中で定着させることが 必要である.

教師が指摘するとおり,理科学力を活用・応用 するために,理科と総合的な学習を関連づけるこ

とは,有効であると考える.この視点も併せて,

理科と他教科等を関連づける際の視点と方法とし て,特に,次の3つの種分けを提案する(中山,

2000c;中山, 2000d). 

①  「科学することJについては,認識対象であ る自然を起点とした体験活動を重視し,理科 でも総合的な学習でも取り扱う.

②  「科学を学ぶこと」については,自然界につ いての総合的な見方・考え方を養うことを重 視し,理科を中心に取り扱う.

③  「科学について学ぶことJについては,科学/

技術の進展に伴う環境問題,情報化などの社会 的課題を重視し,理科と総合的な学習・他教科 等との関連において取り扱う.

また,科学/技術・理科教育の一層の充実を図 るための方策としては,次の6つが考えられる

(中山, 1996). 

i)  r総合科学/技術」として,大教科主義の方 向を採る方法

ii  ) テクノロジーの分野を含めた総合科学とし て,理科の代わりに「科学/技術」の教科を,

新たに設置する方法

(iii ) 理科を中心に,複数の教科等を相互に関連 づけて,科学/技術に関する共通テーマに迫 るような「総合的な学習jの場を,関係する 教科等以外に,別途設定する方法

(i

v) 

中 学 校 で は 選 択 理 科Jそのものを,科 学/技術に関する総合的な課題別学習にする 方法

(  v  ) 

現行教科の「理科Jを母体として,科学/

技術と生活/社会をつなぐような他教科との 合科的指導や関連的指導の場を設定する方

vi)  現行の1つの教科「理科Jの中で,科学/

技術にかかわる内容を充実させる方法 このうち, (i)と(ii )の方法は,現在行われて いる教科構成を変えることである. (iii)と(i

v)

)の方法は,少なくとも,教科の枠を越えた教 育課程を志向するもので,最も実現可能な方法で あると考える.今後の教育課程の改善へ向けては,

既存教科の改廃を含む教科構成の在り方の問題も 視野に入れたうえで,教科としての理科の見直し が迫られることが必歪であると思われる.

3.これからの理科のカリキュラムづくり

(1 ) 小・中学校を通して大切にしたい視点

中学校理科教師の実践報告を詳細に分析した結 果,表1に示したとおり,中学校理科における生

‑ 6 ‑

表 1 中学校理科における生徒の理解が困難な理由とその対処法(中山, 2 0 0 2  b)  生徒の理解が困難な理由 (  i  )特定の学習内容にかかわる自然認識の力 ( 7 1

参照

関連したドキュメント

ピアノの学習を取り入れる際に必ず提起される

支援級在籍、または学習への支援が必要な中学 1 年〜 3

小学校学習指導要領総則第1の3において、「学校における体育・健康に関する指導は、児

年間約5万人の子ども達が訪れる埋立処分場 見学会を、温暖化問題などについて総合的に

具体的な取組の 状況とその効果 に対する評価.

具体的な取組の 状況とその効果 に対する評価.

課題 学習対象 学習事項 学習項目 学習項目の解説 キーワード. 生徒が探究的にか