熊本大学学術リポジトリ
反時代性と時代性
著者 芦田, 徹郎
雑誌名 東光原 : 熊本大学附属図書館報 = Kumamoto
University Library bulletin
巻 3
ページ 5‑5
発行年 1992‑11
URL http://hdl.handle.net/2298/10113
第3号 1992.11
反時代性と時代性
芦田徹郎
10月 末から11月の初鈎にかけて,長崎県 大村・諌早両市、福岡市,佐賀県唐津市を相 次いで訪れだ。ちょっとした北西九州旅行で ある。大村・諌早ではある新聞社主催の地方
(地域)とその文化を考えるシンポジウム(の ようなもの〉で発言し,福岡で開催された日 本社会学会大会ではある新宗教教団に関する 部会の司会を務鈎,唐津では九州を代表する 祭りの一つである「唐津〈んち」の観察調査 を20名近い学生とともに実施した。
今,あらためて振り返ってみれば,「地方」
「宗教」「祭り」というふうに,「近・代化」の 常識からすればなんとも時代遅れのトピック に連続10日近く6かかずらっていた勘定とな る。とはいえ,実はこれらがもっとも今日的 なイッシューであることは,まさしく知る人 ぞ知るまぎれもない事実である。
戦後,ひたすら経済成長に一所懸命の日本 人であったが,1973年の第1次「オイル・
ショック」あたりを起点にして,業績主義と 功利性重視の生き方にいくらか転換があった ことは,多くの識者の指摘するところである。
日本人の「宗教回帰」への私たちの着目もそ の頃に遡るが,今では毎年,恒例のような新宗 教騒動もあって,現在が一種の「宗教ブーム」
だという認識がほぼ定着している。
他方$私と祭りとの関わりは,10年前本学 教養部に赴任し,担当の社会調査実習⑳テー マにこれを選んだことに始まる。調べ始めて みると.宗教回帰とほぼ軌を−にして日本各
地で祭りの復興現象がみられるのである。こ の授業の受講生は毎年+数名であるが、例年 極めて熱心で当初の期待をはるかに上回る成 果をあげている。この経験からしても「今ど
きの学生」全般の勉学意欲の無さを嘆く声に は,にわかに賛意を表しかねる。それはさて おき,折々に公表する断片的な報告が目に止 まってか,祭りやイベント,さらには郷土芸 能などを含いて「地方(地域)文化」を「ム ラおこし」や「マチおこし」に使おうとする
「祭りブーム」を背景にして,各方面から意 見を求められる機会も多くなった。
こうした経緯があって,書き出しの三題噺 しめいた小旅行となった次第であるが,「なぜ、
いま宗教(祭り。地方)なのか?」という基 本的な課題には?未だ十分に答えられないで いる。ともあれ,長らく反時代的であったは ずのものが,気がついてみると時代の先頭を 走っているというのは面白いことである。こ う言うと、r今こそ教養部/」というアピー ルを敏感に嗅ぎとられるムキがあるかも知れ ない。しかし,「一周遅れのトップ。ランナー」
というのもよくあることなので,話はそれほ ど単純ではない。
それにひきかえ,昨今,「知」の貯蔵庫な いしは醸成場としての役割よりも,「情報」
③取次店としての機能を強化しているように みえる図書館の場合は,掛け値なしに時代の 先鋒を目指していると言えるのだろうか。
(教養部助教授社会学)
し
k‑,
5