都道府県別の在宅療養児に対する訪問看護ステーシ ョンの需給状況
著者名(日) 西 留美子, 榎本 晃子, 田口(袴田) 理恵
雑誌名 共立女子大学看護学雑誌
号 2
ページ 33‑38
発行年 2015‑03
URL http://id.nii.ac.jp/1087/00003034/
Creative Commons : 表示 ‑ 非営利 ‑ 改変禁止
都道府県別の在宅療養児に対する 訪問看護ステーションの需給状況
Supply and demand situation of home-visit nursing station for children requiring medical care at home by prefecture
西 留美子 榎本 晃子 田口(袴田)理恵
Rubiko Nishi Akiko Enomoto Rie Hakamada-Taguchi
キーワード: 訪問看護ステーション、在宅療養児、都道府県
key words : home-visit nursing station, children requiring medical care at home, prefecture
要 旨
近年高度な医療的ケアが必要な在宅療養児は増加しており、訪問看護の担う役割は増大しているが、
訪問看護ステーションにおける在宅療養児の受け入れは、困難な状況にあることが報告されている。ま た、訪問看護サービスの需給状況には、地域格差があることが報告されているが、これまで在宅療養児 に関する全国レベルの分析はなされていない。そこで本研究では、在宅療養児に訪問看護を行っている 訪問看護ステーション数と人口並びに障害者福祉手当受給者数との比をもって在宅療養児に対する訪問 看護ステーションの需給状況の指標とし、都道府県レベルでの地域格差が存在するか否かを検討した。
結果、20 歳未満の人口 10 万人当たりの 20 歳未満の在宅療養児への訪問実績のある訪問看護ステーショ ン数には、都道府県間で最大 6.3 倍の差が存在し、人口 10 万人当たりの全訪問看護ステーション数の 4.2 倍に比しても大きい地域間格差が存在することが示唆された。今後は在宅療養児に対する訪問看護ス テーション需給状況の良好な都道府県からベストプラクティス事例を収集し、小児訪問看護師の育成や 確保に有効な方策を明らかにし、全国に普及可能なプログラムを開発していくことが望まれる。
受付日:2014 年 10 月 20 日 受理日:2015 年 1 月 13 日
共立女子大学 看護学部 地域在宅看護学
Ⅰ.はじめに
本邦における 20 歳未満の超重症心身障害児の 発生数は、杉本ら1)の報告によれば、1000 人対 0.19 から 0.45 となっており、そのうち約 7 割の 超重症心身障害児は、在宅で療養を行っていると 考えられている。さらに近年、在宅療養児を対象 にした調査2)によれば、療育手帳所持者の障害の 程度は、「重度」が増加しており、医療的ケアを 必要とする在宅療養児が増加している事が推測さ れる。医療的ケアを必要とする在宅療養児は、デ イサービスやショートステイなどのサービスが得
にくい状況にあり3)、その医療的ケアは家族、と りわけ大半は母親に委ねられていることから3)、 在宅療養児の健康管理や家族支援を担う訪問看護 の役割は大きい。
近年、介護保険利用者や要介護認定者の増加4)、 医療保険での訪問看護利用者の増加5)とともに訪 問看護の需要が高まるも、訪問看護ステーション の開設数は微増に留まっていたが、2012 年度の 介護報酬と診療報酬の同時改定により訪問看護が 手厚く評価された結果、訪問看護ステーションの 開設数は、増加の傾向に転じている4)。また、訪 問看護サービスの受け入れ可能状況についても、
共立女子大学看護学雑誌 第 2 巻(2015)
全国で 92.7%、(1,605)の市町村では新規の訪問 看護サービスが利用可能な状況にあることが報告 されており6)、訪問看護ステーションの充足状況 は、急速に改善しつつあると言える。
一方で、小児からの訪問依頼がある訪問看護ス テーションの中で、訪問を断った事がある訪問看 護ステーションは 7 割以上存在することが報告さ れており7)、訪問看護ステーション全体では、新 規の療養者の受け入れが可能な状況であるにもか かわらず、在宅療養児の訪問の受け入れは困難な 状況であることが知られている。現在、重症度の 高い在宅療養児が増加していることから2),3)、今 後ますます訪問看護の需要が増大すると思われ る。また、全国的にみると、訪問看護ステーショ ンの充足状態は向上しているが、都道府県レベル で、人口当たりの訪問看護ステーション数に地域 格差がみられることが報告されている8)。在宅療 養児への訪問可能な訪問看護ステーションにおい ては、その地域格差は一層大きいことが予測され るが、これまでに全国レベルでの分析を行った報 告は存在しない。
そこで、本研究は、在宅療養児に対する訪問看 護ステーションの需給状況を都道府県別に分析 し、地域格差の存在の有無を明確にすることを目 的とする。
Ⅱ.研究目的
本研究では、20 歳未満の在宅療養児に訪問看 護を行っている訪問看護ステーション数と人口並 びに障害児福祉手当受給者数との比をもって在宅 療養児に対する訪問看護ステーションの需給状況 の指標とし、都道府県レベルでの地域格差が存在 するか否かを明らかにする。
Ⅲ.研究方法
1.対 象
インターネットで公開されている一般社団法人 全国訪問看護事業協会正会員リスト9)で住所が明 らかにされている訪問看護ステーション 4,172 件
(平成 25 年 5 月 29 日現在)を対象とした。
本研究では、訪問看護ステーションの訪問実績 の年齢区分は 10 歳未満、並びに 20 歳未満とした。
また、児童福祉法等の法令では障害児は 18 歳 未満とされているが、本研究では介護サービス情
報公開システム等を用いたため、年齢区分を 20 歳未満にする必要性から、20 歳未満を在宅療養 児とする。
2.分析方法
厚生労働省の運営する「介護サービス情報公開 システム」10)を用いて、介護サービス情報公開シ ステム調査回答前月の、対象訪問看護ステーショ ンの 20 歳未満の在宅療養児への訪問実績の有無 を調べた(平成 26 年 10 月 8 日現在)。続いてそ れらのデータを都道府県別にまとめ、各都道府県 の全訪問看護ステーション数、10 歳未満の在宅 療養児への訪問実績のある訪問看護ステーション 数、20 歳未満の在宅療養児への訪問実績のある 訪問看護ステーション数、並びに全訪問看護ス テーションに対する 20 才未満の在宅療養児への 訪問実績のある訪問看護ステーションの割合を算 出した。さらに、表 1 に示した各種政府統計をも とに、各都道府県別の人口静態、人口動態、およ び障害児福祉手当受給者数を明らかにし、人口 10 万人当たりの訪問看護ステーション数、20 歳 未満の人口 10 万人当たりの 20 歳未満の在宅療養 児への訪問実績のある訪問看護ステーション数、
10 歳未満の人口 10 万人当たりの 10 歳未満の在 宅療養児への訪問実績のある訪問看護ステーショ ン数、障害児福祉手当受給者 1,000 人当たりの 20 歳未満の在宅療養児への訪問実績のある訪問看護 ステーション数を求めた。これらのデータを在宅 療養児に対する訪問看護ステーションの需給状況 の指標とし、都道府県レベルでの格差の有無を探 索した。
Ⅲ.結 果
1.都道府県別の訪問看護ステーション数
(表 2)
訪問看護ステーション数の上位 3 都道府県は、
東京都 480 件、大阪府 414 件、兵庫県 260 件であっ た。一方、訪問看護ステーション数下位 3 都道府 県は、高知県 19 件、香川県 21 件、富山県 27 件 であった。
一方、人口10万人当たりの訪問看護ステーショ ン数では、全国平均 3.2 件(SD 0.9)に対し、鳥 取県・福井県は 5.5 件で最も多く、最も少ない都 道府県は愛知県 1.3 件であった。したがって、人
表 1 都道府県の概況
人 口※1 20 歳未満の 人口※ 1□□□□
10 歳未満の 人口※ 1□□□□
人 口 に 対 す る 20 歳未満人口 の割合
出 生 数※ 2
出生数に対する 出 生 時 体 重 2,500 g未満の 割合
障害児福祉手当 等の受給者数※ 3
(千人) (千人) (千人) (%) (人) (%) (人)
全 国 127,799 22,437 10,600 17.6 1,029,816 9.6 66,449
北 海 道 5,486 874 403 15.9 38,190 9.7 3,323
青 森 県 1,363 224 97 16.4 9,126 9.3 1,058
岩 手 県 1,314 222 100 16.9 9,231 9.7 681
宮 城 県 2,327 410 192 17.6 18,949 9.8 1,023
秋 田 県 1,075 161 71 15.0 6,177 10.0 665
山 形 県 1,161 197 90 17.0 8,159 8.9 817
福 島 県 1,990 347 152 17.4 14,546 10.0 1,217
茨 城 県 2,958 526 243 17.8 22,358 9.7 1,439
栃 木 県 2,000 355 167 17.8 15,588 11.0 753
群 馬 県 2,001 362 166 18.1 14,732 9.6 906
埼 玉 県 7,207 1,283 605 17.8 57,470 9.6 3,276
千 葉 県 6,214 1,071 509 17.2 48,343 9.3 3,035
東 京 都 13,196 2,042 1,006 15.5 109,986 9.4 4,396
神 奈 川 県 9,058 1,590 765 17.6 74,320 9.4 4,209
新 潟 県 2,362 401 183 17.0 17,066 9.3 1,295
富 山 県 1,088 186 85 17.1 7,722 8.1 497
石 川 県 1,166 212 99 18.2 9,449 9.2 495
福 井 県 803 149 69 18.6 6,461 8.6 389
山 梨 県 857 152 67 17.7 6,198 10.2 436
長 野 県 2,142 388 180 18.1 16,326 9.5 935
岐 阜 県 2,071 382 177 18.4 16,000 9.4 1,258
静 岡 県 3,749 674 321 18.0 30,260 10.2 2,110
愛 知 県 7,416 1,416 686 19.1 66,825 9.6 3,310
三 重 県 1,847 335 156 18.1 14,514 8.9 1,117
滋 賀 県 1,414 282 136 19.9 13,015 9.4 908
京 都 府 2,632 449 210 17.1 20,106 9.7 1,583
大 阪 府 8,861 1,560 731 17.6 72,054 9.4 4,998
兵 庫 県 5,582 1,014 477 18.2 45,673 9.7 3,258
奈 良 県 1,396 247 111 17.7 10,190 9.6 799
和 歌 山 県 995 169 76 17.0 7,122 9.1 547
鳥 取 県 585 104 49 17.8 4,759 9.9 360
島 根 県 712 122 57 17.1 5,534 9.7 496
岡 山 県 1,941 353 166 18.2 16,210 9.0 964
広 島 県 2,855 517 249 18.1 24,713 9.6 1,749
山 口 県 1,442 242 113 16.8 10,705 9.4 761
徳 島 県 780 129 59 16.5 5,666 9.8 372
香 川 県 992 175 83 17.6 8,059 8.3 566
愛 媛 県 1,423 245 114 17.2 10,696 9.0 874
高 知 県 758 122 56 16.1 5,266 10.7 344
福 岡 県 5,079 932 454 18.4 45,897 10.0 2,872
佐 賀 県 847 164 77 19.4 7,276 9.7 483
長 崎 県 1,417 254 119 17.9 11,566 8.9 1,011
熊 本 県 1,813 334 160 18.4 15,954 8.9 972
大 分 県 1,191 208 99 17.5 9,605 9.3 668
宮 崎 県 1,131 210 100 18.6 9,854 10.4 789
鹿 児 島 県 1,699 311 150 18.3 14,637 10.4 1,036
沖 縄 県 1,401 331 166 23.6 17,209 11.4 1,399
※ 1 人口推計(平成 25 年 10 月 1 日現在)http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/List.do?lid=000001118081
※ 2 人口動態(平成 25 年)http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/List.do?lid=000001127058
※ 3 福祉行政報告例 (平成 25 年 8 月分概数)http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/gyousei/fukushi/m13/08.html
共立女子大学看護学雑誌 第 2 巻(2015)
表 2 都道府県別訪問看護ステーションの状況
訪問看護ステー ション総数※ 4
人口 10 万人当 たりの訪問看護 ステーション数
20 歳未満への 訪問実績のある 訪問看護ステー ション数※ 4
20 歳 未 満 の 人 口 10 万 人 当 た り の 20 歳 未 満 への訪問実績の ある訪問看護ス テーション数
10 歳未満への 訪問実績のある 訪問看護ステー ション数※ 4
10 歳未満の人 口 10 万人当た り 10 歳未満へ の訪問実績のあ る 訪 問 看 護 ス テーション数
障害児福祉手当 受給者 1,000 人 当たりの 20 歳 未満の訪問実績 のある訪問看護 ステーション数
(件) (件) (件) (件) (件) (件) (件)
全 国 4,172 3.2 1,188 5.3 942 8.9 17.9
北 海 道 197 3.6 39 4.5 25 6.2 11.7
青 森 県 44 3.2 7 3.1 5 5.2 6.6
岩 手 県 44 3.3 6 2.7 4 4.0 8.8
宮 城 県 81 3.5 37 9.0 31 16.1 36.2
秋 田 県 28 2.6 6 3.7 4 5.6 9.0
山 形 県 28 2.4 11 5.6 9 10.0 13.5
福 島 県 59 3.0 12 3.5 11 7.2 9.9
茨 城 県 70 2.4 23 4.4 19 7.8 16.0
栃 木 県 41 2.1 14 3.9 11 6.6 18.6
群 馬 県 77 3.8 20 5.5 15 9.0 22.1
埼 玉 県 176 2.4 74 5.8 60 9.9 22.6
千 葉 県 155 2.5 32 3.0 24 4.7 10.5
東 京 都 480 3.6 170 8.3 134 13.3 38.7
神 奈 川 県 257 2.8 111 7.0 90 11.8 26.4
新 潟 県 59 2.5 12 3.0 8 4.4 9.3
富 山 県 27 2.5 3 1.6 3 3.5 6.0
石 川 県 47 4.0 8 3.8 6 6.1 16.2
福 井 県 44 5.5 15 10.1 12 17.4 38.6
山 梨 県 30 3.5 4 2.6 2 3.0 9.2
長 野 県 82 3.8 30 7.7 22 12.2 32.1
岐 阜 県 62 3.0 24 6.3 18 10.2 19.1
静 岡 県 105 2.8 38 5.6 31 9.7 18.0
愛 知 県 100 1.3 36 2.5 32 4.7 10.9
三 重 県 54 2.9 18 5.4 13 8.3 16.1
滋 賀 県 53 3.7 15 5.3 14 10.3 16.5
京 都 府 95 3.6 26 5.8 22 10.5 16.4
大 阪 府 414 4.7 121 7.8 89 12.2 25.2
兵 庫 県 260 4.7 40 3.9 33 6.9 12.3
奈 良 県 55 3.9 24 9.7 18 16.2 30.0
和 歌 山 県 54 5.4 12 7.1 11 14.5 21.9
鳥 取 県 32 5.5 4 3.8 3 6.1 11.1
島 根 県 28 3.9 7 5.7 5 8.8 14.1
岡 山 県 52 2.7 17 4.8 13 7.8 17.6
広 島 県 101 3.5 37 7.2 29 11.6 21.2
山 口 県 59 4.1 15 6.2 11 9.7 19.7
徳 島 県 31 4.0 6 4.7 3 5.1 16.1
香 川 県 21 2.1 6 3.4 4 4.8 10.6
愛 媛 県 62 4.4 17 6.9 14 12.3 19.5
高 知 県 19 2.5 7 5.7 5 8.9 20.3
福 岡 県 170 3.3 57 6.1 41 9.0 19.8
佐 賀 県 29 3.4 8 4.9 8 10.4 16.6
長 崎 県 38 2.7 15 5.9 14 11.8 14.8
熊 本 県 85 4.7 20 6.0 15 9.4 20.6
大 分 県 36 3.0 8 3.8 8 8.1 12.0
宮 崎 県 35 3.1 12 5.7 10 10.0 15.2
鹿 児 島 県 63 3.7 21 6.8 20 13.3 20.3
沖 縄 県 33 2.4 13 3.9 12 7.2 9.3
※ 4 介護サービス情報公開システム http://www.kaigokensaku.jp/
口 10 万人当たりの訪問看護ステーション数には、
都道府県間において最大 4.2 倍の差が存在した。
2.20 歳未満の在宅療養児への訪問実績の ある訪問看護ステーション数(表 2)
1) 訪問看護ステーションの総数に対する 20 歳未満の在宅療養児への訪問実績のある訪 問看護ステーションの割合
対象訪問看護ステーション 4,172 件のうち、20 歳未満の在宅療養児への訪問実績のある訪問看護 ステーション数は 1,188 件であった。
都道府県別の訪問看護ステーションの総数に対 する 20 歳未満の在宅療養児への訪問実績のある 訪問看護ステーションの割合は、全国平均 28.5%
(SD 9.7)で、その割合が上位の 3 都道府県は、
福井県 56.8%、宮城県 45.7%、奈良県 43.6%であ り、下位 3 都道府県は、鳥取県 12.5%、山梨県 13.3%、岩手県 13.6%であった。したがって、訪 問看護ステーションの総数に対する 20 歳未満の 在宅療養児の訪問実績のある訪問看護ステーショ ンの割合には、都道府県間において最大 4.5 倍の 差が存在した。
2) 人口 10 万人当たりの在宅療養児の訪問実 績のある訪問看護ステーション数
20 歳未満の人口 10 万人当たりの 20 歳未満の 在宅療養児の訪問実績のある訪問看護ステーショ ン数は、全国平均 5.3 件(SD 1.9)で、上位 3 都 道府県は、福井県 10.1 件、奈良県 9.7 件、宮城県 9.0 件、下位 3 都道府県は、富山県 1.6 件、愛知 県 2.5 件、山梨県 2.6 件であった。したがって、
20 歳未満の人口 10 万人当たりの 20 歳未満の在 宅療養児の訪問実績のある訪問看護ステーション 数には、都道府県によって最大 6.3 倍の差が存在 した。
10 歳未満の人口 10 万人当たりの 10 歳未満の 訪問実績のある訪問看護ステーション数の全国平 均は 8.9 件(SD 3.4)で、上位 3 都道府県は、福 井県 17.4 件、奈良県 16.2 件、宮城県 16.1 件で、
下位 3 都道府県は、山梨県 3.0 件、富山県 3.5 件、
岩手県 4.0 件であった。
10 歳未満の人口 10 万人当たりの 10 歳未満の 訪問実績のある訪問看護ステーション数について も、都道府県によって最大 5.8 倍の差が存在した。
3) 障害児福祉手当受給者 10 万人当たりの 20 歳未満の訪問実績のある訪問看護ステー ション数
障害児福祉手当受給者 1,000 人当たりの 20 歳 未満の訪問実績のある訪問看護ステーション数の 全国平均は、17.9 件(SD 80.1)で、上位 3 都道 府県は、福井県 38.6 件、東京都 38.7 件、宮城県 36.2 件で、下位 3 都道府県は、富山県 6.0 件、青 森県 6.6 件、岩手 8.8 件であった。
以上のことから障害児福祉手当受給者 1,000 人 当たりの 20 歳未満の在宅療養児に対する訪問実 績のある訪問看護ステーション数は、都道府県間 において 6.5 倍の差が存在した。
Ⅳ.考 察
本研究において、訪問看護ステーションの総数 に対する 20 歳未満の在宅療養児の訪問実績のあ る訪問看護ステーションの割合には、都道府県間 において最大 4.5 倍の差があることが明らかと なった。人口 10 万人当たりでみても都道府県間 の差は大きく、20 歳未満の在宅療養児の訪問実 績のある訪問看護ステーション数では最大 6.3 倍、
10 歳未満の訪問実績のある訪問看護ステーショ ン数では、最大 5.8 倍の差が存在した。また、20 歳未満の在宅療養児も含まれていると推測される 障害児福祉手当受給者 1,000 人当たりの 20 歳未 満の訪問実績のある訪問看護ステーション数で は、最大 6.4 倍の差が存在した。これらの結果か ら、在宅療養児に対する訪問看護ステーションの 需給状況には、都道府県レベルにおいて顕著な地 域格差が存在することが示唆された。加えて、本 調査対象の全訪問看護ステーションの人口 10 万 人当たりの数については、都道府県間の差は最大 4.2 倍であったことから、在宅療養児に対する訪 問看護ステーションの需給状況の都道府県格差 は、全訪問看護ステーションのそれと比べてもよ り大きいと考えられた。
このような地域格差が存在する理由は明らかで はない。しかしながら、先行研究の報告によれば11)、 0 歳から 18 歳の在宅療養児への訪問看護を実施 していない訪問看護ステーションが在宅療養児の 訪問を実施しない理由は、「小児訪問看護の経験 がある職員がいない」「小児看護を担当する職員 がいない」を合わせて 62.2%であった。また、訪
共立女子大学看護学雑誌 第 2 巻(2015)
問実績のある訪問看護ステーションの中でも在宅 療養児の訪問を断った理由としては、「小児訪問 看護を担当するスタッフが不足しているため」が 69.5%であったことから、小児看護経験のある訪 問看護師の地域偏在が一つの可能性として考えら れる。
また、本研究で在宅療養児に対する訪問看護ス テーションの需給状況の指標とした全ての数値に おいて、全都道府県の中で福井県が最上位であっ たが、都道府県別の老人人口 10 万人当たりの常 勤換算訪問看護師数を求めた清水ら11)の研究に おいても、福井県が 143.3 人(平均 94.2 人)で最 も多かったことが報告されている。このため、福 井県のような特定の県には、訪問看護師全般、並 びに小児対応可能な訪問看護師の育成、確保に関 する有効な施策やシステムが存在する可能性が考 えられ、今後ベストプラクティス事例を収集し、
小児看護経験のある訪問看護師を増加させること や訪問看護師が小児訪問看護のスキルを身に着け るために有効な方策を明らかにし、全国に普及可 能なプログラムを開発していくことが望まれる。
Ⅴ.本研究の限界
本研究の調査対象は、一般社団法人全国訪問看 護事業協会正会員リスト9)で住所が明らかにされ ている訪問看護ステーション 4,172 件であり、こ れは 2014 年 4 月 1 日現在の全国の総訪問看護ス テーション数 7,473 件の 55.8%となる。このため、
本調査は悉皆調査ではなく、全国の都道府県の状 況を正確に表していない可能性が存在する。一 方、調査対象訪問看護ステーションの内、20 歳 未満の在宅療養児への訪問を行っていたのは 28.5%であり、先行研究3),12)においても小児への 訪問実績がある訪問看護ステーションの割合は 26.9%~37.1%と報告されていることから、本研 究は一定の代表性を有すると考えられる。
また本研究では、各都道府県の在宅療養児数並 びに訪問看護サービスを必要としている在宅療養 児数を入手することができなかったため、訪問看 護サービス需要状況の指標としては限界が存在す る。今後、これらのデータを入手し、より正確な 状況分析を行い都道府県別の人口当たりの訪問看 護ステーションの必要数を検討する必要性がある と考えられる。
Ⅵ.結 論
本研究により、都道府県レベルにおける在宅療 養児に対する訪問看護ステーションの需給状況に は、全訪問看護ステーションのそれと比べても大 きい地域格差が存在することが示唆された。
引用文献