長期宿泊支援事業が小学生の自然観と道徳観に及ぼす影響
里見 龍之介 (生涯スポーツ学科 野外スポーツコース) 指導教員 黒澤 毅
キーワード:長期宿泊支援事業 , 小学生 , 自然観 , 道徳観
1.序論
2011 年 3 月 11 日に発生した東北地方太平洋沖 地震による大津波で福島原子力発電所が被災し, 大量の放射性物質が漏れ出すという惨劇より 3 年 が経過した.そのため,あらゆる関係機関・団体が , 震災による被害を受けた子ども達を対象に,グリ ーフケアを目的とした様々なキャンプを行ってい るが,未だに多くの心の問題を抱えた子ども達が いる. また,生涯学習審議会答申(1999)は自然体 験の効果について, 「キャンプ体験を中心とする自 然体験活動は子どもたちにとって,自然の厳しさ や恩恵を知り,動植物に対する愛情を育むなど,自 然や生命への畏敬の念を育て,自然と調和して生 きていくことの大切さを理解する貴重な体験とな る」 としており ,自然体験が豊かな子ども達は生活 観や道徳観も豊かであると述べている.
そこで,本研究は長期宿泊支援事業が小学生の 自然観と道徳観に及ぼす影響について明らかにす る事を目的とする.
2.研究方法
【被験者】2014 年 7 月 30 日~ 8 月 22 日(20 泊 21 日)に開催された福島県の子どもを対象にしたリ フレッシュキャンプに参加した小学校 4~ 6 年生 の男子 22 名,女子 28 名,計 50 名を対象とした.
【プログラム内容】 地域住民との交流や ,カヤック 等の自然体験活動,平和学習,宿題や課題の学習活 動,毎日の運動等の内容で構成された.
【調査方法】道徳観:国立青少年教育振興機構 (2012)「青少年の体験活動等と自立に関する実態 調査」(小学生用)の中から筆者が独自に加筆・修 正を加えた計 12 項目の質問用紙を用いた.
自然観:岡村(2000)が作成した自然に対する感情 的態度テストを筆者が独自に加筆・修正を加えた 計 15 項目の質問用紙を用いた.
振り返りシート:参加者の動向をみるため,筆者が 独自に作成した自由記述を含む計 9 項目の質問用 紙を用いた(表 1).
事業前(pre) キャンプ後(post1)
道徳観 〇
自然観 〇 ○
振り返りシート
〇
〇
〇 事業後(post2) 表1:調査時期
3.結果及び考察
長期宿泊支援事業前後での小学生の道徳観得 点の変化を検討するために Wilcoxon の符号付順 位検定を行った結果,事業前後において道徳観に 変化は見られなかった(表 2).しかし,質問項目別 に見たところ項目 3「自分で出来ることは自分で する」にのみ 5%水準で有意な向上が見られた(z=
‐2.35,p<.05).
M T M T
Z値道徳観
51.5 561.5 50.5 473.5
‐0.50 表2:道徳観得点の中央値と順位総和pre post2
N=50
M:中央値,T:順位総和
次に,自然観得点の変化を検討するために Friedman 検定を行った結果,事業前からキャンプ 後で有意に向上し,事業後まで維持された.また , 自然観を詳細に検討するために因子別に見たとこ ろ「川」にのみ 0.1%水準で有意な差が見られた (χ 2 =11.14,p<.001)(表 3).
pre post1 post2
森
22.5 22.0 23.0 2.67
海21.0 22.0 21.0 1.87
川
20.5 22.0 22.0 11.14 ***
表3:自然観因子別得点の中央値 Median
N=50
***p<.001 χ2値