主 論 文 要 旨
報告番号 甲 乙 第 号 氏 名 工月 良太
主 論 文 題 目:
エネルギーの面的利用がもたらす間接的便益に関する研究
(内容の要旨)
民生部門における
CO
2排出量は依然増加傾向にある。我が国においては建築物単体の対策には限界があり、それを超えて地区・地域レベルで低炭素化を図る対策として、エネルギーの面的利用が期待されているが、現 時点では実施事例は僅かである。大きな理由としては、光熱費削減のような直接的な便益とは別に、対策を通 じてもたらされる、経済波及効果や地域の環境保全効果などの多様な間接的便益(
NEB
:Non-Energy Benefit
) がステークホルダーに認識されていないことによると考えられる。本論文は、民生部門の低炭素化対策がもたらす多様な
NEB
を抽出・分類し、その貨幣価値換算手法を提案す る。また、提案したNEB
が、エネルギーの面的利用を含む地域スケールの低炭素化対策においてステークホル ダーの動機づけに資することを、ケーススタディを通じて検証した。第
1
章では、序論として、本研究の背景、既往研究、本研究の目的を示した。第
2
章では、我が国におけるエネルギーの面的利用を通じて期待されるポテンシャルの大きさと、導入推進 の必要性について述べた。第
3
章では、都市におけるエネルギーの面的利用の成立に関し3
つの形態と、それぞれについてのシステム 構成例をあげ、期待される省エネルギー効果、CO
2削減効果の推計方法を示した。エネルギーの面的利用とオン サイト発電機の組合せシステムがもたらす効果として10
~20
%程度の省エネルギー効果、また15
~25
%程度のCO
2削減効果が期待でき、さらに、再生可能・未利用エネルギーの利用により更に8
ポイント程度の効果が期待 できるとの試算結果を得た。第
4
章では、地域スケールで取り組まれる多様な対策との比較においてエネルギーの面的利用を検討するう えで、経済性の面からの評価手法として「限界削減費用(Marginal Abatement Cost : MAC
)」に着目し、中長期 的な低炭素化対策技術の耐用年数の7割の年数を投資回収年数として設定する限界削減費用曲線を提案した。ケーススタディを通じ、エネルギーの面的利用は順位が高く、中長期的に大きな
CO
2削減ポテンシャルを持つ 対策として評価されることを示した。第
5
章では、ステークホルダーへの動機づけのため、低炭素化対策によって触発される間接的な経済効果や 環境保全上の便益等の多様な間接的便益(NEB
:Non-energy Benefit
)に着目し、これを5
種類に分類し、それぞ れの貨幣価値換算を通じた費用対便益(B/C
)の評価手段を提案した。ケーススタディを通じ、NEB
を考慮しな い従来のB/C
(=EB
/C
)では1.0
を下回っていた状況から、NEB
の算入により、B/C
(=(EB+NEB
)/C
) が1.0
を超え、ステークホルダーの動機づけに資するとの示唆を得た。第
6
章では、第5
章で提案したNEB
を対策ごとに按分し、第4
章で構築した地域レベルの限界削減費用曲線 に反映する手法を提案した。地区特性の異なる3
つの地区を対象としたケーススタディを通じ、NEB
反映後のMAC
が0
以下となる対策が増加し、良好な経済性をもって実現可能なCO
2削減ポテンシャルが、10%
程度であ ったレベルから25
~60%
へと大きく向上した。特にエネルギーの面的利用に関係する対策では、順位も向上す ることを示した。第
7
章では、エネルギーの面的利用に関わるステークホルダー間での、対策のコスト(C
)、EB
、NEB
の配 分について、太陽熱の建物間融通プロジェクトを例に、ステークホルダーごとのNEB
の帰属の違いに配慮しつ つ、B/C
が概ね均等となる配分が可能なことを示した。次に、実施事例に基づいたケーススタディを通じ、計画 段階における各種の想定値の不確実性に伴うB/C
の変動リスクを評価し、ステークホルダーごとにリスクの許 容範囲が異なることに配慮することが必要な場合に、コスト(C
)およびEB, N EB
の配分を見直し、ステーク ホルダー間でリスクの可視化による調整を提案した。第