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ヒューマナイジングWG 中間報告案(検討用2)

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1.経緯 1.1 ヒューマナイジング・サブワーキンググループ 環境心理研究によって、既存あるいは計画中の建築空間や環境を、より居住者や使用者の目 的や要求に沿った建築空間に近づける方法(ヒューマナイジング:人間化)が蓄積されてきた。 ヒューマナイジングという言葉は、環境心理研究が現実の建築空間の計画に利用されたり、そ のことが環境心理研究に新たな課題を提起することによって、学術研究がさらに進展する態様 を紹介した、日本建築学会編「建築空間のヒューマナイジング 環境心理による人間空間の創 造」(彰国社、2001 年 9 月発行)を刊行する際に、書名として用いたものであるが、その刊行 を行った作業組織(環境心理の展開 編集WG)を中心として、2002 年 4 月に、環境心理生理 小委員会のサブワーキンググループ(以下、SWG と略)として発足した。SWG は、目標とその達 成手段を次のように設定した。 ①標準的な工程、方法を確立する。また、松竹梅(丁寧な場合、標準的なケース、簡略型) などを示す。←事例を検討する。他分野の標準的方法を参考にする。対象とする方法・手 法を決める。 ②調査企画内容、中間成果、最終成果に含まれる主要な図表について、品質を確保するた めに必要な情報を、表現事項として示す。(例:KJ法の①時、②所、③出所、④製作者名) ←主要な図表の整理、その体裁や表示方法の検討、参考事例の収集。 ③設計条件として示す情報を区別し、その形式を示す。←プログラミング・ブリーフィン グの勉強、事例の収集。 ④ガイドラインを作成する。←①②③のまとめ サブワーキンググループの委員を表 1.1 に示す。ヒューマナイジングという言葉を紹介した シンシナティ大学の W.F.E.Preiser 教授(以下、プライザー教授)や、建築学会建築経済委員 会のプログラミング小委員会主査 福山大学井上誠助教授にも参加いただいた。 表 1.1 ヒューマナイジング・サブワーキンググループ(2002 年度)の委員 主査 宇治川 正人 竹中工務店 技術研究所 副主査 成田 一郎 大成建設 幹事 丸山 玄 大成建設 副幹事 武藤 浩 竹中工務店 技術研究所 委員 山田 哲也 清水建設 技術研究所 委員 W.F.E.Preiser シンシナティ大学 委員 井上 誠 福山大学建築学科助教授 (プログラミング小委員会 主査) 委員 讃井純一郎 関東学院大学 委員 小島 隆矢 建築研究所 委員 植木 暁司 国土技術政策総合研究所 委員 小野久美子 国土技術政策総合研究所 SWG では、調査研究などで用いる手法を整理し、事例の収集を行った。また、2002 年 12 月に、 プライザー教授が来日する機会を利用して、講演会を開催した。 調査研究などで用いる手法として、評価グリッド法、POE(Post-Occupancy Evaluation)、 プロブレム・シーキング(Problem Seeking)の3手法について、その手順やアウトプット、適用

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例などを整理した。収集した事例を表 1.2 に示す。 事例の収集や整理の過程で、建築プロジェクトの設計行為の前に設計条件や空間の性能な ど を定めるプログラミング(建築学会では、ブリーフィングが用いられることが多い)という行 為と、ヒューマナイジングとの共通性や相違点が論点となり、プログラミングやブリーフィン グは、居住者や使用者の目的や要求だけではなく、設計に関連のある、より広範な問題を扱う ものであるのに対し、ヒューマナイジングは、利用者の心理的要求を対象として、必ずしも設 計には反映されない事項も含め、空間に関わる問題を対象とする点が特徴であるという解釈に 至った(付録 1 図 3)。 表 1.2 事例リスト 名称(種別) 実施者 期間 業務範囲 報告書・公開資料 1 T社支店ビル (オフィス新築) 大成 丸山 1990 POE、プログラミング 91 大会梗概集 2 (オフィス改善) 大成 丸山 1991 設計者と施設利用者を結ぶコミュニケーショ ンモデル 92 大会梗概集 3 (オフィス運用) 電力会社 1 大成丸山 1992∼ 1993 POE、オフィスビル機能診断カルテ作 成 93 大会梗概集 4 (オフィス新築) 電力会社 2 大成丸山 1995 利用者の声を基にしたオフィスコンセプトづくり 96 大会梗概集 5 (コンペ要綱) 学校 清水山田 与条件の抽出・整理、設計条件の設定、代替案の作成、コンペ要綱の作成 02 大会研究協議会資料 6 (オフィス新築) A社本社ビル 竹中武藤 1993 インタビューによる要望分析、現状施設 調査と必要規模算定、施設コンセプト 立案、代替案作成と評価、空間イメージ 作成 非公開

7 シンシナティ (病院改装) プライザ 1995 POE、プログラミング Facility Management, Barcelona, May 1996

8 (研究所新築) B 社 竹中溝上 1994 ゴールの確立、ベンチマーキング、ユー ザーインタビューによる要望分析、プロ グラムのまとめ 9 (学校建て替え) C 高校 竹中溝上 1996 基 本 事 項 の確 認 、ゴールの確 立 、現 状 施 設 調 査 、ベンチマーキング、インタビ ュー調査、分析とプログラムのまとめ 10 D 社 (本社移転計画) 竹中 溝上 1998 移 転 先 選 定 要 件 、インテリア設 計 要 件 のまとめ 11 (ワークプレイス) E 社 竹中溝上 1999 ゴールの確 立 、ユーザーインタビューの要望分析、プログラムのまとめ 日本におけるブリーフィン グ事例(建築文化12 月 号臨時増刊デザイナー のための建築設備チェッ クリスト2003 年度版、彰 国社編) プ ラ イ ザ ー 教 授 の 講 演 会 の 配 布 資 料 と し て 、 米 国 の 連 邦 施 設 会 議 (Federal Facilities Council)が刊行した報告書の序文、および、その報告書に掲載されたプライザー教授の論文「POE の発展:建物性能評価とユニバーサル・デザイン評価」を和訳した。序文は、公共建築にとっ て POE が有効であることを紹介したものである。 1.2 ヒューマナイジング・ワーキンググループ 翌 2003 年度には、ワーキンググループとして改組された。2002 年度に収集整理した手法や 事例、文献などに基づいて検討を進めた。ワーキンググループとしての活動は、2004 年度まで の2年間進行したが、その主な成果は、①ヒューマナイジングの意義(案)、②ヒューマナイジ

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ングの4原則(試案)、である。 ①ヒューマナイジングの意義(案)は、現在の建築の企画・計画段階や設計行為における 問 題点(背景)を整理し、その解決策として、ヒューマナイジングが果たすべき役割(ミッショ ン)をまとめたものである。②ヒューマナイジングの4原則(試案)は、ユニバーサル・デザ インの原則を参考にしながら、その役割(ミッション)を果たす共通的なプロセスをまとめた ものである。(付録 ) 表 1.2 「ヒューマナイジング(人間の要求を設計に反映させる行為)」の意義(案) 現在の建築設計を取り巻く問題として、以下のような事項が挙げられる。 1.発注者が、建てるべき建物に関する要求事項を、きちんと設計者に伝えることが難しい。 2.関係者が、解を見出すことが難しそうな問題を、避けてしまう事が多い。 3.作る空間がどうあれば良いのかについて、知恵を結集することが難しい。 4.現実的には、大事な問題を絞り込まないと、対処できない。 5.リニューアルが増えてくるので、設計の前段階の調査分析は容易になり、かつ重用される。 【解説】 1.発注者が、建てるべき建物に関する要求事項を、きちんと設計者に伝えることが難しい。 ・発注者サイドが、何のため(目標)に施設を建てるのかを正確に説明しているか? ・利用者が何を望んでいるかについて、発注者も、設計者も把握しきれていない。 ・それらが、設計者にわかる言葉で伝えられているか? 2.関係者が、解を見出すことが難しそうな問題を避けてしまう事が多い。(寝た子を起こそう) ・従業員など関係者の利害が相反する問題の調整を誰がやるのか?(少なくとも設計行為では ない。) ・その調整作業の責任を取るべき人は誰か?責任に対して、対価が払われるのか? ・ブリーフィングやプログラミングは、検討方法の硬直化、教条化、規格化に傾く危険性がな いだろうか。 3.作る空間がどうあれば良いのかについて、知恵を結集することが難しい。 ・空間に関わる立場が異なれば、ニーズも変わる。 ・ 衆 意 を 集 め よ う と し て も 、「 社 長 」 の 前 で 、 赤 裸 々 な 事 情 を 発 言 す る こ と は 控 え て し ま う 日 本の精神風土。 ・そういうことは設計行為に含まれるという認識があるのか? ・設計者なら、最適な解を実現してくれるはずという期待(過信)がある。 ・利用者サイドが深く考えずに挙げた寸法や色などが、設計者に、「これは要求された事項だ」 と居直られて使われる心配。 ・どうしてその要求が出てきたのか、その背景や理由を把握することが重要。環境心理は、そ の点に対して強みがある。 4.現実的には、大事な問題を絞り込まないと、対処できない。 ・ブリーフィングやプログラミングでは、検討すべき項目の数が膨大になりがちで、それぞれ を密度高く検討することは実際には困難ではないか。 5.リニューアルが増えてくるので、設計の前段階の調査分析は容易になり、かつ重用される。 従って、ヒューマナイジングに求められることは、上記問題への対処手段を確立することである。 1.建てるべき建物に関する発注者の要求事項を、きちんと表現する。 2.解を見出すことが難しそうな問題までも列挙する。 3.作る空間のあるべき姿を、知恵を結集して示す。 4.重要な問題点を絞り込む。 5.リニューアルのための、設計の前段階の調査分析方法を確立する。 これらの知見を、日本建築学会技術報告集第 21 号に投稿し、採用された(発行 2004 年 10 月)。また、日本建築学会の機関誌「建築雑誌」にも投稿し、年月号に掲載された。

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このように、2003∼2004 年度は、2002 年度に収集した手法や事例をもとに、それらを整理検 討した知見を成果として生み出し、建築学会の論文集や機関誌に公表した時期であった。 表 1.3 2002∼2004 年度の委員会活動 活動 アウトプット 2002 SW G 第 1回SWG:2002.7.9 委員の自己紹介、海外と日本における設計仕様書の実情、 コンサルティング業 務 の展 望 、ブリーフィング、設 計 者 の欲 しい事 項 、ユーザーの要 求 、ブリーフィング、プログラミングとヒューマナイジング、などについて意 見 交 換 第 2回 SWG:2002.8.8 事 例 紹 介 (丸 山 委 員 )、事 例 リスト(武 藤 委 員 )、Learning

from Our Buildings の紹介、プライザー教授講演会の企画

第 3回 SWG:2002.9.11 プライザー講 演 会 の検 討 、事 例 リスト、事 例 紹 介 (山 田 委 員 ) 第 4回SWG:2002.10.17 プライザー教授講演会の準備、事例紹介(武藤委員)、 中 間 報 告 書 について 第 5回SWG:2002.11.28 プライザー教授講演会の準備 W.F.E.プライザー教授講演会:2002.12.3 参 加 者 数75 名 第 6回 SWG:2003.1.14 プライザー教 授 講 演 会 の反 省 、溝 上 氏 の報 告 (プロブレ ム・シーキング) 第 7回SWG:2003.2.13 中間報告書(案)の見直し 中 間 報 告 書 2003 WG 第 1回WG:2003.6.4 中間報告書の内容検討、本年度の計画 第 2回 WG:2003.7.10 本WGの成果、ヒューマナイジング関連業務のアウトプットに ついて討 議 第 3回WG: 2003.12.25 第 4回WG:2004.2.4 「ヒューマナイジングの意義」を検討、報告書について 第 5回WG:2004.3.16 ヒューマナイジングの4原則、報告書について ヒュー マナイジングの 4原 則 (試 案 ) 報 告 書 2004.3 2004 第 1回WG:2004.7.20 キックオフミーティング 第 2回WG::2004.9.15 技術報告集と建築雑誌の投稿原稿 第 3回 WG:2004.11.18 来 年 度 の計 画 、評 価 グリッド法 の DVD 制 作 、「Design Intervention」の翻訳について 第 4回 WG:2005.1.20 高齢者福祉施設における施設環境づくりの取り組みについ て(影 山 委 員 、古 賀 委 員 ) 技 術 報 告 集 第 21 号 に投 稿 (2004.10) 建 築 雑 誌 に「ヒューマ ナイジング」を投 稿

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2.ヒューマナイジング小委員会の概要 2.1 ヒューマナイジング小委員会の発足 (1)ワーキンググループから小委員会へ ヒューマナイジング・ワーキンググループの上位にあった環境心理生理小委員会が、2005 年 度から、環境心理生理運営委員会に変更されたことに伴い、ヒューマナイジング・ワーキング グループは、ヒューマナイジング小委員会として活動することになった。 小委員会への変更に伴い、活動の目標として、下記 4 項目を掲げた。 ①ヒューマナイジングに関する情報を整理する。 ②ケーススタディを収集する。 ③業務として確立するため、手法を普及させる。 ④刊行物を企画する。 「現実の問題点を直接自分たちの肌で感じてテーマを設定する」という方針 (2)委員構成 表 1.4 小委員会メンバー 主査 宇治川正人 竹中工務店 委員 成田 一郎 大成建設 委員 讃井純一郎 関東学院大学 委員 丸山 玄 大成建設 委員 山田 哲弥 清水建設 委員 小島 隆矢 建築研究所 委員 植木 暁司 国土交通省 委員 小野久美子 国土技術政策総合研究所 委員 古賀 誉章 てらちか 委員 影山 優子 西部文理大学 委員 佐藤 隆 JR 東日本 委員 三ツ木美恵子 公共建築協会 委員 青木 隆雄 三井物産

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2.2 活動内容 (1)初年度(2005 年度) 「現実の問題点を直接自分たちの肌で感じてテーマを設定する」という方針の元で、新宿駅 や羽田空港第2ターミナルの踏査調査を踏まえて、「おもてなし感」を検討のテーマに設定した。 品質管理の分野で新製品の開発手法として実績のある「要求品質展開」や「品質表」の作成と いう手法を用いて、おもてなし感のある空間の「要求品質表」を作成し、それをもとに、おも てなし感の「チェックリスト案」を作成した。そのチェックリスト案を用いて、商業施設や社 会教育施設など多くの施設を調査し、建築施設の構成要素と、おもてなし感の要求品質を対応 させて、おもてなし感の「品質表」を作成した。この品質表は、「おもてなし感」が感じられる 空間の条件を整理・体系化したものであり、今後の交通ターミナル計画の方向性の検討に供す るものである。 (注 1)品質展開:要求品質表および品質展開表 品 質 展 開 は 新 し く 商 品 を 開 発 し た り 、 設 計 す る 際 に 用 い ら れ る 手 法 で 、 ユ ー ザ ー の 視 点 か ら 開 発・設計するものがどうあるべきかを検討する点に特徴がある。品質展開は、品質展開表を作るが、 表の左側(縦軸)は、要求品質展開表といい、ユーザーにとって重要な問題を大項目(1次項目)、中 項 目 ( 2 次 項 目 )、 さ ら に 小 項 目 ( 3 次 項 目 ) と い う よ う に 示 す 。 潜 在 的 な も の も 含 め 、 多 く の 要 求 を 収 集 し 、 そ れ を カ ー ド 化 し 、 グ ル ー ピ ン グ し た も の が 3 次 項 目 と な る 。 表 の 上 部 ( 横 軸 ) は 、 品質特性展開表といい、商品の性能を整理して示す。要求品質展開表と品質特性展開表ができたら、 項目ごとに両者の関連を検討し、商品の望ましい姿を検討する。 また、実際につくばエクスプレスや横浜のみなとみらい線の新駅を設計した鉄道建設・運輸 施設整備支援機構の担当者に依頼し、講演会「つくばエクスプレスにおけるユニバーサル・デ ザイン」および「地下鉄駅のユニバーサル・デザインに対する取り組み(みなとみらい線)」を 開催し、おもてなし感の「品質表」に関して、実務者の立場から意見を伺い、品質表を改訂し た。 さらに、チュートリアル(講習会)「ニーズをカタチにする方法」の企画を推進し、建築研究 開発コンソーシアムの主催で開催することが決定した。 (小委員会開催6回、講演会開催1回) (2)第2年度(2006 年度) 4 月に、チュートリアル(講習会)「ニーズをカタチにする方法」を開催した。第1部「建築 施設における利用者ニーズ」と、第2部「住宅市場における住み手のニーズ」の構成で、官民 の3事例と1編の調査報告を行った。 小委員会では、民間の調査機関が独自の住宅認定制度を実施している例(「子育てにやさしい 住まいと環境」(ミキハウス))の紹介や、古賀委員が設計した住宅の見学会、各委員が手がけ ているテーマとおもてなし感との関連についての検討を行った。 (小委員会開催 7 回、講習会開催1回) 第2年度は、小委員会発足以前の蓄積を外部に発表し、おもてなし感に関する活動成果を各 委員の研究活動に結びつけることを模索した時期であった。 (3)第3年度(2007 年度)

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おもてなし感に関する研究成果を、シンポジウムなどを開催して外部に発表することを目標 としていたが、アーバンインフラストラテジー推進会議の研究発表会に応募し、採択され、11 月の研究発表会で発表を行った。(発表内容は次章に紹介) この応募論文を作成する過程で、おもてなし感 また、建築学会のユビキタス建築都市特別研究委員会 業務施設小委員会が主催する「未 来 のオフィス像 札幌会議」を後援し、成田委員、丸山委員が見学会の説明、および計画過程に おけるユーザーニーズの把握と展開について報告を行った。 (小委員会開催 6 回、研究発表 1 回、会議後援1回) 表 1.3 2005 年度以降の小委員会活動 活動 アウトプット 2005 第 1回 小 委 員 会 :2005.5.9 新宿駅踏査調査 3/20、羽田第2ターミナル踏査調査 4/25 を実施、要求品質展開表の準備、「Design Intervention」の翻訳の取りや め 第 2回 小 委 員 会 :2005.6.9 「おもてなし感のある空間」の要求品質展開表を作成 第 3回 小 委 員 会 :2005.7.14 「おもてなし感のある空間」の要求品質展開に基づいた 建 築 施 設 用 「おもてなし感 」のチェックリスト案 を作 成 第 4回 小 委 員 会 :2005.9.21 調査事例報告 「駅の快適性に関する調査研究∼お客 さまの考 える「駅 の快 適 性 」評 価 要 素 のモデル化 」(佐 藤 委 員 ) 第 5回 小 委 員 会 :2005.10.26 チュートリアル「ニーズをカタチにする方法」の企画を検 討 、「おもてなし感 の品 質 表 」の作 成 第6 回小委員会:2005.12.1 講 演 会 「つくばエクス プレスの駅 デザイン」 2006.3.24 2006 第 1回 小 委 員 会 :2006.4.10 チュートリアル企画、本年度活動計画、品質表 第 2回 小 委 員 会 :2006.5.25 チュートリアルの反 省 、「子 育 てにやさしい住 まいと環 境 」(ミキハウス)について 第 3回 小 委 員 会 :2006.7.7 古賀氏設計住宅見学 第 4回 小 委 員 会 :2006.10.4 中間報告書案検討 第 5回 小 委 員 会 :2006.12.6 各委員のテーマ(古賀委員、成田委員) 第 6回 小 委 員 会 :2007.1.10 各委員のテーマ(丸山委員、三ツ木委員) 第 7回 小 委 員 会 :2007.2.16 各委員のテーマ(小島委員、小野委員) チ ュ ー ト リ ア ル 「 ニ ー ズ を カ タ チ に す る 方 法 」2006.4.28 2007.2.20 茶道体験 2007 第 1回 小 委 員 会 :2007.5.21 「未来のオフィス像 札幌会議」後援について 第 2回 小 委 員 会 :2007.7.2 「おもてなし感」の概念定義、アーバンインフラテクノロジ ー推 進 会 議 への論 文 応 募 、第 1種 から第 3種 「おもてなし感 」の提 案 第 3回 小 委 員 会 :2007.8.6 老人福祉施設とおもてなし(古賀委員) 未 来 のオフィス像 札幌会議:2007.9.29-30 参 加 者 数 33 名 第 4回 小 委 員 会 :2007.10.15 「未来のオフィス像 札幌会議」報告、来年度の体制 第 5回 小 委 員 会 :2008.2.26 環 境 工 学 委 員 会 活 動 報 告 会 用 に 小 委 員 会 概 要 を 提 出 (2007.7) ア ー バ ン イ ン フ ラ テ ク ノ ロ ジ ー 推 進 会 議 研 究 発 表 会 に発 表

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3. まとめ 3.1 得られた成果 (1)空間特性の新しい概念:「おもてなし感」 「おもてなし感」という概念は、新宿駅の踏査調査の後で、小委員会で取り上げるべき活 動 のテーマを検討している最中に、大学院生のメンバーから提案された。新宿駅という極めて大 衆的な駅空間に対して、若い方たちがそういうレベルを期待したのは何故だろうか。 一般の建築施設における居住性や快適性の水準は、空調や照明などの設備技術、床壁天井 な どを構成する建築部材の材料技術などが向上した結果、居心地の良い環境であることが当たり 前になりつつある。それも、この問題の背景にあるのではないだろうか。 一方で、駅空間に対する鉄道会社側の旧来の認識は、「人の動線を捌く場所」であり、「一刻 も早く(車両や出口に移動させて)空間から追い出す」ことを目指していた。しかし、駅には 単に列車や電車に乗降するだけでなく、待ち合わせや買い物を目的にしたり、人生の節目とな る旅立ちの瞬間を、それにふさわしい雰囲気で迎えたいというような、大変に多様化した目的 で利用される。多様化しているのは利用目的だけでなく、通勤通学者、観光客、幼児から高齢 者、健常者や障害者、日本語でコミニュケーションできない海外からの訪問者など、利用者の 属性も多様化している。 それらの非常に広範な人々の特性や要求に応えられる空間の特性や条件を明らかにするこ と が、現代では求められているのではないだろうか。 そのような状況にあるのは、駅や航空ターミナルだけではない。公園や図書館、美術館、 住 民サービスを行う庁舎など、多くの公共建築も同様と思われる。今回の小委員会の研究活動は、 それらの施設に対する先駆的な挑戦であり、その試行錯誤は意義のあるものと考えられる。 学術研究的には、心理的な分野における個人の環境認知や評価のメカニズムの解明を主に 扱 ってきた従来の環境心理の方向性に加えて、多様化し、時には正反対にもなる人々の要求を満 足させる空間の特性や性能を探求するという新しい課題が現れたことが、環境心理分野の研究 の新たな展望になるのではないだろうか。 (2)「おもてなし感」の品質表 今回は、品質管理の分野で実績のある「品質展開」という方法論を用いて、おもてなし感の ある空間の特性を探った。品質管理の分野では、ユーザーの要求を整理した要求品質展開表や、 それと製品の各部材の性能との関連づけた品質表など、調査研究の成果物は、開発者・設計者 とユーザーなど関係者の「コミュニケーションの道具」として位置づけられている。そして、 新たな見解や経験を加えて、旺盛に改善していくことが推奨されている。 今回のスタディにおいても、駅の設計者との意見交換によって、要求項目の手直しを行っ た が、駅の利用者、あるいは、管理者などと意見交換を行い、さらに、改善を続けることが望ま しい。 一般に、学術研究では、実験や調査結果に影響を及ぼす可能性のある「変動要因」は極力排 除して、再現性の高い、「堅牢な」結果を導くことが指向される。しかし、品質管理の分野では、 とりあえずの案を作り、改善を重ねてゆくこと(スパイラルアップ)が尊重される。 そのほうが、暗黙知を取り入れやすいという利点があるが、さらに、大勢の関係者を巻き込

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んで作られた成果のほうが、大きな影響力を持ちうることも、 (3)3種の「おもてなし感」 おもてなし感に関する研究成果を、アーバンインフラストラテジー推進会議の研究発表会 に 応募する論文を作成する過程で、おもてなし感 3.2 議論 ①ヒューマナイジングの4原則―研究成果の形式 ヒューマナイジング、すなわち、「建築空間や都市環境を、人間の要求に沿った、人間のため の空間にすること」のために重要な知見を、研究者以外の一般の実務者にも共有していただく ために、2003 年度に、「ヒューマナイジングの4原則」を設定した。この 4 原則の設定は、1995 年に作成された「ユニバーサル・デザインの原則」をヒントにしたものである。 ユニバーサル・デザインの原則は、以下のようなもので、10 名の共同作業の結果として、7 つの原則の名称、定義、指針を示している。

ユニバーサル・デザインの原則 (The Principles of Universal Design)

Version 1.1 - 12/7/95 ユ ニ バ ー サ ル ・ デ ザ イ ン の 支 持 者 た ち が 編 集 し た 、 編 者 は ア ル フ ァ ベ ッ ト 順 に : Bettye Rose Connell, Mike Jones, Ron Mace,Jim Mueller, Abir Mullick, Elaine Ostroff, Jon Sanford, Ed Steinfeld, Molly Story, Gregg Vanderheiden である。

ユニバーサル・デザイン: 製品や環境は、可能な限り最大限、改造や特別な設計を必要とすることなく,全ての人々にとっ て使いやすく設計する。 筆者らはユニバーサル・デザインの原則を、環境や製品、コミュニケーションを含めて幅広く規 定し、デザインの指針としてこれを確立し効果あるものとするために力を合わせて努力した。製品 をデザインする者たちと環境デザインを研究する者たちからなる筆者らの作業部会は、現存するデ ザインを評価したり、デザインする過程において指針としたり、デザイナーと利用者の両者に、よ り 利 用 し や す い 製 品 や 環 境 の 特 色 を 気 付 か せ た り す る と き に 利 用 す る た め の 7 つ の ユ ニ バ ー サ ル・デザインの原則を規定した。以下に7つの原則が記してある。これらの書式は次のようである、 原則の名前−原則を具体化するための主要概念を簡潔で容易に覚えやすい表現で示した。 原則の定義−デザインのための原則の根本的方針を要約して記した。 指針−原則に従ったデザインを実現しようとするときの主な要素を並記した。 (注:全ての指針が全てのデザインに関連しているとは限らない。) 原 則 1 : 公 平 な 利 用 ど の よ う な グ ル ー プ に 属 す る 利 用 者 に と っ て も 有 益 で あ り 、 購 入 可 能 であ るようにデザインする。 指針:1a.すべての利用者にいつでもどこでも同じように有益であるよう供給する。 1b.どのような利用者も差別したり辱めたりすることがない。 1c.すべての利用者のプライバシーや、安心感、安全性を可能な限り同等に確保する。 原則2:利用における柔軟性 幅広い人たちの好みや能力に有効であるようデザインする。 指針:2a.使用する方法を選択できるよう多様性をもたせて供給する。 2b.右利き、左利きでも利用できる。 2c.利用者が操作した通り容易に確実な結果が得られる。 2d.利用者のペースに応じることができる。 原 則 3 : 単 純 で 直 感 的 な 利 用 理 解 が 容 易 で あ り 、 利 用 者 の 経 験 や 、 知 識 、 言 語 力 、 集 中 の 程度 などに依存しないようデザインする。 指針:3a.不必要な複雑さは取り除く。

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3b.利用者の期待や直感に一致させる。 3c.幅広い読み書きやことばの能力に対応する。 3d.情報はその重要性に応じて一貫性があるよう整理する。 3e.連続的な操作に対しては、それが効果的に促されるよう工夫する。 3f.仕事が終了するまでの間や終了した後に、タイムリーなフィードバックがある。 原 則 4 : わ か り や す い 情 報 周 囲 の 状 況 あ る い は 利 用 者 の 感 覚 能 力 に 関 係 な く 利 用 者 に 必 要 な情 報が効果的に伝わるようデザインする。 指 針 : 4a.必 要 な 情 報 は 絵 や こ と ば 、 触 覚 な ど い ろ い ろ な 方 法 を 使 っ て 必 要 以 上 と 思 わ れ る く ら い 提示する。 4b.不可欠な情報と,それ以外の周囲の情報とは十分コントラストをつける。 4c.必要な情報はあらゆる感覚形態に応じて出来る限りわかりやすくする。 4d.様 々 な 方 法 を 用 い て 基 本 要 素 を 区 別 し て 伝 達 す る ( す な わ ち 、 手 引 き や 指 示 が 簡 単 に 提 供できるようにする)。 4e.感覚に制限がある人々が利用するいろいろな技術や装置は共用性があるよう供給する。 原 則 5 : 間 違 い に 対 す る 寛 大 さ 危 険 な 状 態 や 予 期 あ る い は 意 図 し な い 操 作 に よ る 不 都 合 な 結果 は、最小限におさえるようデザインする。 指 針 : 5a.危 険 や 誤 操 作 が 最 小 限 と な る よ う に 要 素 を 配 置 す る ( 最 も 利 用 さ れ る 要 素 を 最 も 使 い や すいようにし、危険性がある要素は取り除くか、分離するか、遮蔽する)。 5b.危険や間違いを警告する。 5c.フェイル・セーフ(安全性を確保する方法)を提供する。 5d.注意の集中が必要な仕事において、意識しないような行動が起こらないように配慮する。 原則6:身体的負担は少なく 能率的で快適であり、そして疲れないようにデザインする。 指針:6a.利用者に無理のない姿勢を維持させる。 6b.操作に要する力は適切にする。 6c.反復的な操作は最小限にする。 6d.持続的な身体的努力は最小限にする。 原 則 7 : 接 近 や 利 用 に 際 す る 大 き さ と 広 さ 利 用 者 の 体 の 大 き さ や 、 姿 勢 、 移 動 能 力 に か か わら ず 、 近 寄 っ た り 、 手 が 届 い た り 、 手 作 業 し た り す る こ と が 出 来 る 適 切 な 大 き さ と 広 さ を 提供する。 指 針 : 7a.座 位 、 立 位 な ど 、 ど の よ う な 姿 勢 の 利 用 者 で あ っ て も 、 重 要 な 事 柄 が は っ き り 見 え る よ うにする。 7b.座 位 、 立 位 な ど 、 ど の よ う な 姿 勢 の 利 用 者 で あ っ て も 、 す べ て の 構 成 要 素 に 手 が 届 く よ うにする。 7c.腕や手の大きさに応じて選択できるよう多様性を確保する。 7d.支援機器や人的支援が利用出来るよう充分な空間を用意する。 ユニバーサルデザインの原則は、決して良い設計をするためのあらゆる基準から構成されている わけではなく、一般に使いやすい設計の基準から構成されているにすぎない、ということを確認し ておく必要がある。確かに、形の美しさや、費用、安全性、性別、文化的なふさわしさなど他の要 素も重要であり、デザインの際これらの問題も充分考慮すべきである。 出 典:http://trace.wisc.edu/docs/ud_princ/ud_princ.htm 訳 : 松 本 廣 ( 国 立 特 殊 教 育 総 合 研 究 所 ) 小 林 巌 ( 東 北 大 学 ) 11/5/1996,8/20/1997. ( 出 典 : http://www.nise.go.jp/research/kogaku/hiro/uni_design/uni_design.html) ユニバーサル・デザインも、人間と環境のあり方に対する問題提起や、より人間にとっての ぞましい空間(環境)の姿、それを実現するための考え方や方策が追求され、それらの知見を 整理し、研究者以外の多くの一般人にわかりやすく伝える手段として、「原則」という形式が用 いられた。 現在の建築学会に関連した環境心理研究の成果や研究者の努力も、研究者以外の多くの一般 人にわかりやすく伝える工夫が求められているのではないだろうか。

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プライザー教授は、著書「Design Intervention」の中に、J.C.Vischer との共作として、 「将来の環境設計のためのマニフェスト()」を示している(付録5)。環境心理研究に携わっ た研究者の今後の環境設計(Environmental Design)の方向性を示したもので、一般的で長期 に渡る、いわば普遍的な目標(OVERALL GOALS AND LONG-TERM ASPIRATIONS)と、具体的かつ短 期的な現実的な目標の設定(SETTlNG-SPECIFIC REQUIREMENTS AND SHORT-TERM ASPIRATIONS) を掲げている。一般的で長期に渡る普遍的な目標を下表に示す。

OVERALL GOALS AND LONG-TERM ASPIRATIONS

1. A holistic systems approach is required to overcome the current, primarily economically oriented basis for environmental design, and to put other cultural and sociopsychological factors into a more pronounced perspective.

2. Small is better. System size at any scale of environmental design must be kept as small as possible, relating to dimensions that are appropriate to human cultural and evolutionary conditions. 3. Incrementalism-coherent rather than disjointed-is recommended as a planning approach to help cope with inevitable environmental change and to provide gradual transitions and continuity of experience for people affected by change.

4. Functional integration of user groups, needs, and expectations will come about based on a reduced emphasis on communal versus individual rights and values. We need a response to current segregationist trends in environmental design that integrates communal and individual needs. 5. Better regulatory devices that take diverse viewpoints into consideration are needed in lieu of conventional land-use controls, aesthetic guidelines, and various zoning limitations. These are needed to cope with increasing population densities and potential conflicts among groups having different aspirations and priorities.

6. The human being as the measure of all things should be renewed as the guiding principle of environmental design. Human dimensions and capabilities as an evolving species-such as locomotion, sensation, expression of self, and territorial requirements-and all the physiological, biological, and sociopsychological limitations of humankind must be established as the basis for design.

7. Natural and human-made environments should be integrated in the human experience. People use perceptual clues such as the visual, acoustic, olfactory, and tactile aspects of everyday environments (including views and windows, natural ventilation of buildings, etc.) to improve their experience of environmental equality.

8. Cultural dentity and the fit between users and their environment must be a priority of good environmental design. Today's architecture exhibits universalistic trends that negate subcultural differences. Special-needs constituencies should be recognized and supported by environmental design.

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9. The process of environmenta design must directly involve those affected by the outcome. User participation at some level of design decision making, and users' planning involvement, will achieve more satisfactory solutions if properly managed. Choice in design lies with the users; control lies with the designers

②空間(環境)の性能、人や情報システムが提供するサービス 「おもてなし感」を構成するものは、空間(環境)だけでなく、人や情報システムが提供す るサービスも関わっている。場合によっては、後者の比重が高い施設、あるいは状況も少なく ない。かといって、空間(環境)の性能の影響が少なくないことは、「駅・空港のおもてなし感 の品質展開表」(付録3 表4)に示されているとおりである。 第1種:人間扱い、第2種:懐の広さ、第3種:個別対応という3種のおもてなし感のうち、

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第1種と第2種のほうが、空間(環境)の性能の関与が大きく、第3種になると、人や情報シ ステムの関与が大きいという傾向がありそうだ。 しかし、それは、今後のユビキタス社会において大きく変化する可能性がある。現在の建 築 が、特定の個人を識別し、その個人の状況に応じた環境やサービスを提供することをしないの は、そのための技術が無かったし、それは、その技術を開発しようとする人物が現れなかった ためである。 ICタグや、画像解析による顔認証技術や追跡技術、さらに多くのセンシング技術の実用化 によって、特定の空間に居る人間と環境の状況認識の技術は急速に高度化しつつある。例えば、 オフィスや住宅に居る人物を識別し、その人物にとって好ましい温湿度や照度を、その人物の 周辺にだけ実現することは、既に実用化している。情報処理分野では、画像に映る行動の解析 から、喜怒哀楽を推定する技術の開発にも挑戦している。 ③基準・標準(スタンダード)化 コンピュータ・情報システムの分野では、人に優しく、使いやすい方式を探求すること(人 間中心設計)も研究領域として確立している。ということは、それだけ、使いにくいシステム が数多く存在していたからでもあるが、その研究成果をもとに、1999 年に発効した人間中心設 計過程の国際規格 ISO13407 は、ユーザーにとっての利用品質(Quality in Use)の確保と向上 を目指す設計プロセスを確立することを目的として、コンピュータシステムの設計に際して実 施されることが望ましい設計活動を定めている。 それは、設計プロセスに、「利用状況の把握と明示」、「ユーザーの要求事項の明示」、「設計案の 作成」、「要求事項に対する設計案の評価」の4つの活動を設け、その活動で生み出された設計 案をチェックすることである。 この国際規格は、開発されるシステムの特性ではなく、そのシステムを作り出す開発プロ セ スについての指針、すなわち、「プロセス規格」であることが大きな特徴である。技術革新のス ピードが速いコンピュータシステムの分野では、性能や特性を数値で表わしても、その数値がす ぐに陳腐化してしまう。また、新たな性能や特性が登場する例も多く、数値的な基準が時代遅 れや足かせとなりかねない。また、ユーザーの要求も変化し、多様化や高度化が進む。そこで、 その時の技術やユーザーの要求を踏まえることと、それに応じた活動をすることを規格とした のである。 これまで、建築学会の指針や基準(アカデミックスタンダード)は、殆どが、材料や空間の 特性や、その性能に関する数値を定める方式で作成されてきた。技術革新が速い分野や、個々 の空間やユーザーの特殊性や多様性を尊重することが求められる事項については、プロセス規 格の考え方も参考になると思われる。 また、一律的な基準(スタンダード)を定めることよりも、使う人のレベルを引き出して カ スタマイズする仕組み(システム、調べ方)を作ろうという発想が、ヒューマナイジングもし くは、環境心理分野では大切ではないだろうか。既製服には SML などの標準的な寸法があるが、 オーダーメイドのスーツを作る際は、どこを測るか、それをどう使うかがが重要なポイントと なる。同じように、人間のどんな要求を調べ、それをどう使うかを考えるべきだろう。

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3.3 今後の課題 研究委員会の活動として踏査調査や分析作業を行い、駅や空港など交通ターミナルの「お も てなし感」の品質展開表を作成した。この表は、交通ターミナルを計画する際に、検討すべき 項目を整理・体系化したもので、計画のチェックリストとして使用できる。なお、表4は、網 羅的に多くの項目を示しているが、個々の施設に適用する場合には、その施設の特殊性を考慮 して取捨選択すべきである。 品質展開表の作成過程では、商業施設や美術館も取り上げたが、表4は、それらの施設に つ いても、共通な項目を多く含んでいる。 今後の展開としては、品質展開表(表4)に示された多くの性能項目について、設計基準 や ガイドラインを設定することが望まれる。ただし、対象となる施設も多様化や個性化が進んで おり、設計基準や設計標準の一律的な適用は、必ずしも、「おもてなし感」の向上には寄与しな いと思われる。また、対象施設やその利用者の特殊性を把握する技術の確立も望まれる。

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あとがき

「環境心理」は建築史に残るのだろうか?

参照

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