「機能的な参加型評価システムのあり方」
長 谷 部 英 司 (021-800417-3 )
放送大学大学院 文化科学研究科 政策経営プログラム 研究指導責任者 天川 晃教授 研究指導担当 佐藤 克廣 客員教授(北海学園大学法学部教授)平 成
15 年 12 月
氏 名 長谷部 英司 所属プログラム 政策経営 学生番号 021-800417-3 「機能的な参加型評価システムのあり方」 要 旨 今,自治体では,行政評価の導入がブームである。それは,現代社会において, 前例踏襲や法令・手続き重視の行政から成果・顧客志向の行政への転換が強く求 めてられているからである。しかし,このブームの陰では,行政評価が本来の目 的を果たせないままに形骸化し,単なる書類作成の作業と化した実態も見受けら れる。 他方,市民参加は,政策形成や実施の各場面すべてに重視すべ き課題であると されてから数十年を経過している1。行政評価が本来の機能を発揮するためにも, 市民の参加は不可欠の要素であることは論をまたないであろう。 評価の過程に市民参加を取り入れる参加型評価は,一部の自治体で取り組みが 進んでいる。また,海外の事例でも,参考にすべき事例が見られる。さらには, 一部の先行研究でも類型化や必要な条件について分析がなされている。しかし, 分かりやすさを欠き,意見集約や合意形成には不十分で,未だ機能的な参加型評 価システムとは言い難い。 この論文では,まず,参加型評価の取り組みと先行研究の成果を分析した。そ こから,参加型評価を機能させるには,次の2点が重要であるという結論を得た。 第一に,情報の非対称性を解消する「情報発信型評価」を確立すること,第二に, 効果的な市民意見の集約と合意形成にもつながる「意見集約型評価」を取り入れ 1 1970 年代,美濃部都政など革新自治体のもとでまちづくりへの市民参加が様々な形で模索されていった。 また,市民参加の研究の先駆けである「岩波講座現代都市政策Ⅱ 市民参加」が刊行されたのは 1973 年で あった。
評価の前提条件は,評価主体となる市民に対し,行政活動をしっかり理解でき る情報を提供することである。評価システムに,情報を分かりやすく発信する機 能を組み込んで,マネジメントサイクルを確立することにより,適切な評価が期 待できる。具体的には,①評価に用いる指標を有効に活用し,②他との比較がで きる指標やコストで判断基準を提供し,③分かりやすい表現を工夫した業績評価 報告を定期的に提供することが重要になる。これにより,評価が説明の手段にな り,コミュニケーションツールになるからである。 次に,行政が意思決定を行うとき,外部との関係で,市民の意見集約と合意形 成が決定過程の主要部分を占めていなければならない。この決定支援の役割を担 うのが「意見集約型評価」である。具体的には,①二次評価組織を確立して内部 評価の精度を高めること,②客観性を担保する外部評価委員会を活用すること, ③参加のための多様な手段を用意すること,④参加型評価結果を確実に政策に反 映するしくみを構築すること,の4つが条件となっている。 さらに,行政と市民の意識の距離が遠いと言われる大都市では,身近な問題を 評価する地域別市民会議,重要な課題に応じて評価を行うテーマ別市民会議を設 置するなど,社会の縦横に,輻輳した意見集約システムを組み込むことが大切で ある。
- 1 - 目 次 第 1 章 序 論 . . . 4 1 行 政 評 価 ブ ー ム の 背 景 . . . 4 2 市 民 と の 合 意 形 成 が 重 要 . . . 5 3 な ぜ , 参 加 型 評 価 な の か . . . 6 4 本 論 文 の 構 成 ― 情 報 発 信 型 と 意 見 集 約 型 評 価 . . . 8 第 2 章 自 治 体 の 行 政 評 価 の 現 状 . . . 1 2 1 わ が 国 の 行 政 評 価 導 入 の 変 遷 . . . 1 2 ( 1 ) 行 政 評 価 と は 何 か . . . 1 2 ( 2 ) 評 価 の 黎 明 期 . . . 1 3 ( 3 ) 評 価 の 高 度 化 , 階 層 化 . . . 1 5 ( 4 ) 評 価 の 多 様 化 . . . 1 6 ( 5 ) 評 価 の 外 部 化 . . . 1 8 2 行 政 評 価 の 問 題 点 . . . 2 0 第 3 章 な ぜ , 日 本 の 行 政 評 価 は 機 能 し て い な い の か . . . 2 1 1 制 度 的 な 側 面 . . . 2 1 ( 1 ) 総 花 的 な 総 合 計 画 . . . 2 1 ( 2 ) 評 価 者 と 権 限 の ミ ス マ ッ チ . . . 2 2 ( 3 ) あ い ま い な 評 価 の 活 用 法 . . . 2 3 ( 4 ) 評 価 情 報 の 理 解 困 難 性 . . . 2 4 2 技 術 的 な 側 面 ( 評 価 技 法 , ノ ウ ハ ウ , 知 識 ) . . . 2 6 ( 1 ) 評 価 の ノ ウ ハ ウ を 持 つ 人 材 の 不 足 . . . 2 6 ( 2 ) 評 価 視 点 の 多 様 性 . . . 2 7 ( 3 ) 体 系 的 な 評 価 手 法 の 未 成 熟 . . . 2 8 3 組 織 文 化 ・ 風 土 の 側 面 . . . 2 9
- 2 - ( 1 ) 文 化 戦 略 の 欠 如 . . . 3 0 ( 2 ) 過 剰 な 期 待 感 と 限 界 の 交 錯 . . . 3 1 4 評 価 の 信 頼 向 上 に は 市 民 参 加 が 不 可 欠 . . . 3 2 第 3 章 わ が 国 自 治 体 の 外 部 評 価 . . . 3 4 1 評 価 へ の 市 民 参 加 事 例 . . . 3 4 ( 1 ) 市 町 村 の 外 部 評 価 例 . . . 3 4 ( 2 ) 都 道 府 県 の 外 部 評 価 . . . 3 9 2 自 治 体 の 外 部 評 価 の 特 徴 . . . 4 7 ( 1 ) 外 部 評 価 委 員 会 な ど へ の 直 接 参 加 . . . 4 7 ( 2 ) 市 民 の 意 見 反 映 な ど の 間 接 参 加 . . . 5 0 第 5 章 欧 米 に お け る 外 部 評 価 . . . 5 1 1 イ ギ リ ス の ベ ス ト ・ バ リ ュ ー . . . 5 1 2 強 固 な 市 民 社 会 を 支 え る 市 民 参 加 . . . 5 3 3 米 国 の ベ ン チ マ ー ク と 業 績 報 告 . . . 5 5 ( 1 ) オ レ ゴ ン 州 の ベ ン チ マ ー ク ス . . . 5 5 ( 2 ) ニ ュ ー ヨ ー ク の 業 績 報 告 . . . 5 7 4 わ が 国 自 治 体 へ の 適 用 可 能 性 . . . 5 9 第 6 章 参 加 型 評 価 の 理 論 と 実 際 , 目 指 す べ き 方 向 . . . 6 1 1 評 価 に 市 民 が 参 加 す る 形 態 . . . 6 1 2 エ ン パ ワ ー メ ン ト 評 価 . . . 6 3 3 評 価 主 体 に よ る 参 加 型 評 価 の 分 類 . . . 6 5 ( 1 ) 自 己 評 価 型 . . . 6 6 ( 2 ) 協 働 評 価 型 . . . 6 9 ( 3 ) 第 三 者 評 価 型 . . . 7 0 ( 4 ) 限 定 的 な 対 象 と 参 加 手 法 . . . 7 1 4 参 加 型 評 価 の 効 果 . . . 7 2
- 3 - ( 1 ) 行 政 へ の 効 果 . . . 7 2 ( 2 ) 市 民 へ の 効 果 . . . 7 3 5 参 加 型 評 価 の 方 向 . . . 7 4 第 7 章 機 能 的 な 参 加 型 評 価 シ ス テ ム の 提 案 . . . 7 8 1 情 報 発 信 型 評 価 へ . . . 7 9 ( 1 ) 攻 め の 情 報 公 開 . . . 7 9 ( 2 ) 具 体 的 な 業 績 報 告 の 方 法 . . . 8 2 2 成 果 は 達 成 度 が 基 本 . . . 8 6 3 市 民 意 見 の 集 約 型 評 価 へ . . . 8 7 ( 1 ) 多 様 な 市 民 意 見 を 反 映 . . . 8 7 ( 2 ) 市 民 パ ネ ル の 活 用 . . . 8 8 ( 3 ) パ ブ リ ッ ク ・ コ メ ン ト の 活 用 . . . 9 0 4 外 部 評 価 委 員 会 の 活 用 . . . 9 1 5 二 次 評 価 の 庁 内 組 織 を 充 実 . . . 9 2 補 諭 大 都 市 の お け る 参 加 型 評 価 ― 札 幌 市 の 現 状 を 踏 ま え て . . . 9 4 1 身 近 な 問 題 か ら 参 加 型 評 価 へ . . . 9 4 2 地 域 別 , テ ー マ 別 市 民 会 議 の 設 置 . . . 9 5 ( 1 ) 地 域 別 市 民 会 議 . . . 9 6 ( 2 ) テ ー マ 別 市 民 会 議 . . . 9 8 第 8 章 結 論 . . . 1 0 1 1 参 加 型 評 価 の 要 諦 . . . 1 0 1 2 評 価 を 政 策 形 成 に . . . 1 0 2 3 今 後 の 課 題 . . . 1 0 3 参 考 文 献 . . . 1 0 5
- 4 - 第 1 章 序 論 1 行 政 評 価 ブ ー ム の 背 景 今 , 自 治 体 で は , 行 政 評 価 の 導 入 ブ ー ム で あ る 。 総 務 省 の 調 査1に よ れ ば , 平 成 15 年 7 月 末 現 在 , 約 2 1% の 自 治 体 が 行 政 評 価2を 実 施 ま た は 試 行 中 で あ る 。 こ の よ う に 自 治 体 が 行 政 評 価 を 導 入 す る 背 景 に は , ① 右 肩 上 が り の 経 済 の 終 焉 , ② 地 方 を 含 む 政 府 へ 信 頼 の 低 下 , そ し て , ③ ニ ュ ー ・ パ ブ リ ッ ク ・ マ ネ ジ メ ン ト3( 以 下 「 N P M 」 と い う 。) と い う 考 え 方 の 普 及 , な ど の 影 響 が あ る 。 「 失 わ れ た 1 0 年 」 と い う 言 葉 が 象 徴 す る よ う に , 日 本 経 済 は , 行 き 詰 ま り を 見 せ て い る 。 現 代 社 会 は , 経 済 の 拡 大 と い う 共 通 の 価 値 観 を 失 い , 複 雑 性 を 増 し , 閉 塞 感 さ え 漂 っ て い る 。 ま た , 国 や 地 方 は , 莫 大 な 債 務 を 抱 え な が ら ,閉 塞 状 態 を 解 消 す る 糸 口 さ え 見 出 す こ と が で き な い 。 相 次 ぐ 「 政 府 の 失 敗 」 は , 国 は も と よ り 自 治 体 へ の 国 民 , 市 民 の 信 頼 を 低 下 さ せ て い る 。 こ う し た 社 会 経 済 情 勢 を 背 景 に , 自 治 体 は , N P M に 影 響 を 受 け た 行 政 シ ス テ ム 改 革 を 積 極 的 に 進 め て い る 。 こ の 改 革 は , 下 部 組 織 へ の 権 限 委 譲 , 業 績 基 準 の 測 定 や 成 果 の 重 視 な ど を 基 本 と し て , 従 来 の 手 続 き ・ 法 令 重 視 の 行 政 の あ り 方 か ら 成 果 ・ 顧 客 志 向 の 行 政 へ の 転 換 を 目 指 し た 1 総 務 省 「 地 方 公 共 団 体 に お け る 行 政 評 価 の 取 組 状 況 」 2 0 0 3 年 調 査 。 2 前 傾 の 調 査 に お け る 行 政 評 価 の 定 義 は ,「 政 策 , 施 策 , 事 務 事 業 に つ い て , 事 前 , 事 中 , 事 後 を 問 わ ず , 一 定 の 基 準 , 指 標 を も っ て , 妥 当 性 , 達 成 度 や 成 果 を 判 定 す る も の を い う 。 ま た ,『 政 策 』 と は 大 局 的 な 見 地 か ら 地 方 公 共 団 体 が 目 指 す べ き 方 向 や 目 的 を 示 す も の ,『 施 策 』 と は 政 策 目 的 を 達 成 す る た め の 方 策 ,『 事 務 事 業 』 と は 施 策 目 的 を 達 成 す る た め の 具 体 的 な 手 段 と し て い る 。」 と い う 考 え 方 を 採 用 し て い る 。 3 ニ ュ ー ・ パ ブ リ ッ ク ・ マ ネ ジ メ ン ト = N P M ( N e w P u b l i c M a n a g e m e n t ) 。 民 間 企 業 の 経 営 手 法 や 成 功 事 例 ( ベ ス ト ・ プ ラ ク テ ィ ス ) を 行 政 経 営 に 取 り 入 れ て , 行 政 の 効 率 化 や 活 性 化 を 目 指 す 公 共 経 営 の 考 え 方 。 従 来 の 行 政 の 管 理 者 を 経 営 者 に 置 き 換 え , 市 場 競 争 原 理 を 導 入 し よ う と い う と こ ろ に 特 徴 が あ る 。 大 住 荘 四 郎 「 ニ ュ ー ・ パ ブ リ ッ ク ・ マ ネ ジ メ ン ト 」 1 9 9 9 年 日 本 評 論 社 を 参 照 。
- 5 - も の で あ る 。 1995 年 ,三 重 県 は ,北 川 知 事 の 下 で 事 務 事 業 評 価 を 導 入 し た 。同 県 は , 事 務 事 業 評 価 を N P M 改 革 の 中 核 に 据 え て い る が , そ の 真 意 は , 職 員 の 意 識 改 革 に あ っ た と い う4。 評 価 調 書 を 記 述 す る こ と は , す べ て の 事 務 事 業 を 目 的 か ら 問 い 直 す こ と で も あ っ た の で あ る 。 こ う し た 取 り 組 み が マ ス コ ミ に も 取 り 上 げ ら れ , 同 県 の 真 意 を 理 解 し た か ど う か は 別 に し て , 後 発 の 自 治 体 に 少 な か ら ず 影 響 を 与 え て い っ た5。 そ の 後 , 静 岡 県 の 業 務 棚 卸 表 や 北 海 道 の 「 時 の ア セ ス 」6な ど が 注 目 を 集 め て い っ た が , 現 在 の 行 政 評 価 ブ ー ム の き っ か け は , こ れ ら と と も に , 三 重 県 の 取 り 組 み に よ る こ と が 大 き い と 言 え よ う7。 2 市 民 と の 合 意 形 成 が 重 要 行 政 組 織 は , 社 会 や 市 民 の ニ ー ズ を 満 た し , 社 会 の 課 題 を 解 決 す る た め に 存 在 す る 。 そ の 使 命 を 果 た す に は , 行 政 の 活 動 を 様 々 な 視 点 か ら 検 証 し , 改 善 し , 人 , モ ノ , お 金 と い う 諸 資 源 の 最 適 な 配 分 を 行 う マ ネ ジ メ ン ト が 重 要 で あ る 。 行 政 評 価 は , 社 会 の 課 題 と そ の 解 決 方 法 , 具 体 的 な 政 策 ・ 施 策 ・ 事 業 の 内 容 , そ し て 目 標 と そ の 達 成 度 な ど を 具 体 的 に 記 4 導 入 に 携 わ っ た 梅 田 次 郎 ( 当 時 三 重 県 総 務 部 行 政 改 革 審 議 監 ) は ,「 事 務 事 業 評 価 が , こ う し た 三 重 県 独 自 の 改 革 全 体 を 推 し 進 め る エ ン ジ ン の 役 割 を 担 っ て き た 」, 三 重 県 の 行 政 シ ス テ ム 改 革 は 「 ニ ュ ー ・ パ ブ リ ッ ク ・ マ ネ ジ メ ン ト ( N P M ) と い わ れ る 公 共 理 念 や 手 法 が ほ ぼ 当 て は ま る 」と N P M の 影 響 を 自 ら 述 べ て い る( 古 川 俊 一 編「 行 政 評 価 ゼ ミ ナ ー ル 」2 0 0 3 年 ぎ ょ う せ い , 1 1 4 3 頁 )。 5 行 政 評 価 の 導 入 が す べ て 三 重 県 の よ う に N P M の 考 え 方 に 基 づ く と は 言 え な い 。 先 進 地 の 取 り 組 み に ,「 削 減 ツ ー ル 」 と し て の 期 待 し た 例 も あ ろ う 。 例 え ば ,「 行 政 評 価 の 実 施 に 関 し て の 疑 問 と 悩 み に 関 す る 調 査 」 に よ る と , 都 道 府 県 , 市 区 7 4 1 団 体 を 対 象 に 実 施 し , 導 入 目 的 に 回 答 し た 277 件 の う ち ,「 職 員 の 意 識 改 革 」 ( 2 2 3 団 体 ) ,「 無 駄 な 事 業 , 補 助 金 の 削 減 」 ( 2 0 0 団 体 ),「 住 民 に 対 す る 説 明 責 任 」( 1 9 8 団 体 ) が 回 答 の 上 位 3 つ を 占 め , 特 に 一 つ だ け 選 ぶ と 何 か で は ,「 無 駄 な 事 業 , 補 助 金 の 削 減 」( 73 団 体 ) が ト ッ プ で あ っ た ( 上 山 信 一 ほ か 「 実 践 ・ 行 政 評 価 」 東 京 法 令 2 0 0 0 年 , 8 頁 参 照 )。 6 業 務 棚 卸 表 , 時 の ア セ ス に つ い て は , 1 3- 14 頁 参 照 。 7 全 国 の 自 治 体 の 評 価 調 書 は , 三 重 県 と の 類 似 性 が 極 め て 高 く , 目 標 管 理 型 業 績 評 価 タ イ プ の も の が 多 い 。
- 6 - 述 す る 。 評 価 結 果 は , 意 思 決 定 や 政 策 判 断 に 資 す る 重 要 な 情 報 を 提 供 す る 役 割 を 果 た し て い る 。 ま た , 行 政 活 動 を 市 民 に 説 明 す る と と も に , 新 た な 課 題 や 改 善 の 方 向 な ど を 気 づ か せ て く れ る 。 行 政 評 価 は , こ の よ う な 多 様 な 役 割 を も っ た マ ネ ジ メ ン ト ツ ー ル で あ る 。 と り わ け 行 政 の 活 動 は , 広 く 市 民 の ニ ー ズ を 探 り , 議 会 や ス テ ー ク ホ ル ダ ー と い わ れ る 利 害 関 係 者 な ど , 多 様 な 主 体 と の コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン を は か り な が ら , そ の 組 織 目 的 の 実 現 を 図 っ て い る 。 市 民 か ら の 意 見 集 約 や 合 意 形 成 を 行 い , 協 働 し て い く こ と は , 行 政 の マ ネ ジ メ ン ト に と っ て 不 可 欠 な 要 素 で あ る 。 こ の よ う な 考 え に よ る 行 政 の マ ネ ジ メ ン ト の あ り 方 は ,1 1 頁 の 図 表 1 の よ う に イ メ ー ジ さ れ る 。行 政 活 動 の あ ら ゆ る 場 面 で 透 明 性 が 確 保 さ れ , 市 民 参 加 が 保 障 さ れ , 行 政 と 市 民 が と も に 考 え , 行 動 す る こ と が 社 会 の 課 題 を 解 決 す る あ り 方 と し て 望 ま し い 。 ま た , 適 時 適 切 な 情 報 提 供 は , 参 加 す る た め の 当 然 の 前 提 で あ る 。 さ ら に , 行 政 の 情 報 を 分 か り や す い 形 で 発 信 し , 行 政 と 市 民 で 共 有 し , コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン を 進 め る こ と , 市 民 の ス キ ル ア ッ プ を 支 援 し , 政 策 形 成 と 実 施 の 各 場 面 に 応 じ て , 制 度 と し て 適 切 な 市 民 参 加 を 保 証 す る こ と は , 参 加 を 進 め る 条 件 で あ る 。 3 な ぜ , 参 加 型 評 価 な の か 行 政 評 価 の 広 が り は ,ガ バ ナ ン ス 論 と も 関 連 し て い る 。ガ バ ナ ン ス は , 「 共 治 」 と 訳 さ れ る こ と も 多 い 8。 こ の 言 葉 の 原 義 は , 船 の 「 舵 取 り ( s t e e r i n g)」 で あ る 。 従 来 , こ の 「 舵 取 り 」 は , 政 府 が 担 っ て き た 。 い わ ゆ る ガ バ メ ン ト で あ る 。 し か し , 現 代 社 会 で は , 政 府 主 体 の 従 来 の 仕 8 ガ バ ナ ン ス を 「 共 治 」 あ る い は 「 協 働 に よ る 共 治 」 と 表 現 す る 例 が 少 な く な い 。 例 え ば , 吉 田 民 雄 「 都 市 政 府 の ガ バ ナ ン ス 」 2 0 0 3 年 , 61 頁 。
- 7 - 組 み に よ る 「 舵 取 り 」 が 機 能 不 全 を き た し , 多 様 な 主 体 間 の 相 互 作 用 に よ る 新 し い 社 会 シ ス テ ム を 構 築 し な け れ ば な ら な い と す る 動 き が 強 ま っ て き て い る 。 論 者 に よ っ て ガ バ ナ ン ス は , 様 々 な 捉 え 方 が あ る9が , 共 通 し て い る の は 次 の 点 で あ る 。「 現 代 社 会 に お い て も , 公 共10の 重 要 な 担 い 手 は 政 府 で あ る 。 し か し , 公 共 は , 政 府 の 独 占 物 で は な い 。 地 域 や 市 場 を 含 め た 社 会 全 体 が , 公 共 を 担 っ て い る の で あ る 。 市 民 は , 政 治 に 参 加 す る 主 体 で あ る 。 と 同 時 に , 行 政 に 参 加 す る 主 体 で も あ る 」。 こ う し た 考 え か ら , 自 治 体 で は , そ の 主 体 に ふ さ わ し い 様 々 な 市 民 参 加 の シ ス テ ム づ く り が 進 め ら れ て い る 。 行 政 活 動 の あ ら ゆ る 場 面 に お い て , 市 民 の 参 加 を 重 視 し て い く こ と は , も う 後 戻 り が で き な い 社 会 の 必 然 で あ る 。 行 政 評 価 は , 行 政 活 動 を 検 証 し , 評 価 し , 改 善 や 次 の 政 策 に 生 か し て い こ う と い う ツ ー ル で あ る 。 多 く の 自 治 体 は , 行 政 評 価 を 市 民 と の コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン ツ ー ル と し て も 捉 え て い る 。 総 務 省 の 調 査 結 果11は , 自 治 体 が 行 政 評 価 を 導 入 し た 主 な 目 的 の 共 通 項 と し て , 行 政 の 説 明 責 任 や 透 明 性 向 上 な ど , 行 政 の 施 策 内 容 や 結 果 を 市 民 に 対 し て 明 ら か に し , 説 明 す る と い う 観 点 を 指 摘 し て い る 。 9 例 え ば , ① 今 村 は , ガ バ ナ ン ス 特 有 の エ ッ セ ン ス つ い て ,「 複 数 主 体 の 共 存 ( c o e x i s t e n c e ) と 相 互 の 協 力 と ( c o o p e r a t i o n) を 促 す < 協 働 > で あ る 」 と 指 摘 し , 社 会 の 問 題 解 決 の 方 向 と し て ,「 異 な る 主 体 間 の コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン に エ ネ ル ギ ー を 割 き , 互 い の 自 律 性 に ゆ だ ね ら れ る 領 域 を 確 認 し 合 い な が ら ,相 互 調 節 の 努 力 を 傾 け あ う こ と が 要 請 さ れ る こ と に な る 。」 と 述 べ て い る ( 今 村 都 南 雄 編 「 日 本 の 政 府 体 系 」2 0 0 2 年 成 文 堂 ,1 6- 17 頁 )。 ② 森 田 は ,「『 ガ バ ナ ン ス 』 が , 権 力 に 基 づ く 統 治 で は な く , 構 成 員 の 主 体 的 な 参 加 と 彼 ら の 自 己 決 定 に よ る 共 同 体 運 営 の あ り 方 を 意 味 す る 概 念 な ら ば , そ の 中 核 的 な 要 素 は , 構 成 員 自 ら が そ の 共 同 体 の あ り 方 を 決 定 し そ れ を 実 施 す る と い う 意 味 に お け る 「 自 治 」 で あ る と い っ て よ い だ ろ う 。」 と 述 べ て い る ( 森 田 朗 編 「 分 権 と 自 治 の デ ザ イ ン ー ガ バ ナ ン ス の 公 共 空 間 」2 0 0 3 年 有 斐 閣 , 同 著 第 1 章 , 1 頁 )。 ③ 古 川 は ,「 中 央 政 府 だ け で な く , 地 方 政 府 , 住 民 , 企 業 , N P O ・ N G O な ど が 共 同 , 協 働 , 対 立 し つ つ , 権 力 を 分 有 し て , 統 治 を 行 う 状 況 を さ す 。」 と 定 義 し て い る( 古 川 俊 一 ・ 北 大 路 信 郷 著 「 公 共 部 門 評 価 の 理 論 と 実 際 」 2 0 0 1 年 日 本 加 除 出 版 ,13 頁 )。 ④ 山 本 は ,「 統 治 者 が 一 方 的 , ト ッ プ ダ ウ ン 的 に 被 統 治 者 を 統 治 す る と い う も の で は な く , 両 者 の 信 頼 関 係 を は じ め ,社 会 の 諸 構 成 員 の 協 力 や 合 意 に よ っ て 統 治 す る こ と と い う 意 味 合 い を 強 く も っ て い る 。」と 信 頼 関 係 と 合 意 を 強 調 し て い る ( 宮 川 公 男 ・ 山 本 清 「 パ ブ リ ッ ク ・ ガ バ ナ ン ス 」 2 0 0 2 年 日 本 経 済 評 論 社 , 10- 11 頁 )。 1 0 公 共 性 理 論 , 公 共 空 間 論 な ど の 論 考 は 様 々 で あ る が , 公 共 = p u b l i c と 捉 え た 。 1 1 総 務 省 「 平 成 14 年 度 地 方 公 共 団 体 に お け る 行 政 評 価 に つ い て の 研 究 会 報 告 」, 17 頁 。
- 8 - コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン は , 一 方 的 な も の で は な い 。 双 方 向 性 を 備 え , 市 民 が 参 加 で き て こ そ , 行 政 評 価 は , 真 に “ コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン ツ ー ル ” に な り 得 る の で あ る 。 そ し て , 公 共 の 担 い 手 で あ る 市 民 が , 社 会 の 課 題 の 解 決 に つ い て , そ れ ぞ れ が 自 律 的 に 考 え , と き に は 行 政 と 協 働 し て い こ う と す る と き , そ れ ら の 情 報 を 正 確 に か つ 的 確 に 知 り , 意 見 を 反 映 で き て は じ め て 参 加 し た と 言 え る の で は な い だ ろ か 。 本 論 文 で は ,市 民 が 何 ら か の 形 で 評 価 に 参 加 す る 行 政 評 価 の 方 式 を「 参 加 型 評 価 」 と 捉 え て い る 。 最 近 は , 行 政 の 内 部 評 価 だ け で は な く , 外 部 評 価 と し て , パ ブ リ ッ ク ・ コ メ ン ト , 住 民 意 識 調 査 , 外 部 評 価 委 員 会 な ど の 市 民 の 参 加 手 法 を 駆 使 し た い わ ば 参 加 型 評 価 が わ が 国 の 自 治 体 で 取 り 入 れ ら れ て い る 。 こ う し た 市 民 参 加 に よ る 評 価 は , 市 民 と コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン を は か る 上 で も ま す ま す 重 要 に な っ て き て い る 。 4 本 論 文 の 構 成 ― 情 報 発 信 型 と 意 見 集 約 型 評 価 行 政 評 価 の 導 入 効 果 に は , 多 大 な 期 待 が 集 ま っ て い る 。 し か し , 行 政 評 価 を 担 当 す る 多 く の 自 治 体 職 員 の 間 に お い て , 実 際 に 行 政 評 価 が 十 分 機 能 し て い る と い う 声 が 聴 え て こ な い1 2。 制 度 は 組 織 内 へ 浸 透 せ ず , 多 様 な 視 点 を 盛 り 込 ん だ 緻 密 な 評 価 調 書 を 設 計 し な が ら , 単 な る 書 類 作 成 の 作 業 と 化 し て い る 。 こ の よ う な 現 状 を い か に 改 善 す る か を 探 る こ と が 本 論 文 の 目 的 で あ る 。 ま ず , 第 2 章 で 行 政 評 価 導 入 の 経 過 を 概 観 し , 自 治 体 に 導 入 さ れ た 行 政 評 価 の 類 型 と 特 徴 を 整 理 す る 。 第 3 章 で は 評 価 が 機 能 し な い 理 由 を 明 1 2 自 治 体 の 職 員 な ど 500 名 以 上 が 参 加 す る メ ー リ ン グ リ ス ト ・ 甘 木 市 事 務 事 業 評 価 シ ス テ ム 研 究 会 で は ,平 成 11 年 度 か ら 5 0 0 0 通 以 上 の 行 政 評 価 に 関 係 す る メ ー ル が 交 換 さ れ て い る ( 1 5 年 11 月 末 現 在 )。h t t p : / / w w w . c i t y . a m a g i . f u k u o k a . j p / l i f e / m l . h t m 参 照 ( 過 去 の や り と り は 会 員 の み 公 開 さ れ て い る )。 ※ ホ ー ム ペ ー ジ の ア ド レ ス は , 平 成 15 年 12 月 1 日 現 在 の URL を 掲 載 し て い る ( 以 下 同 じ ) 。
- 9 - ら か に し た い 。 そ の 上 で , 多 様 化 , 高 度 化 が 進 む 行 政 評 価 が 機 能 す る に は , ① 明 確 な 目 標 を も っ た 戦 略 的 な 計 画 を 策 定 し , 権 限 委 譲 を 進 め , 具 体 的 な 活 用 法 を 明 確 に し て 評 価 の 制 度 設 計 を 行 う こ と , ② 評 価 を 担 う 人 材 育 成 や ノ ウ ハ ウ を 蓄 積 す る こ と , ③ 組 織 文 化 の 変 革 の 必 要 性 を 指 摘 す る 。 加 え て , 評 価 を 機 能 さ せ る た め , 市 民 参 加 を 進 め る こ と の 重 要 性 を 論 じ る 。 次 に , 参 加 型 評 価 の 現 状 に つ い て , 参 加 の 要 素 を 含 む 外 部 評 価 事 例 を 取 り 上 げ , 第 4 章 に お い て わ が 国 に お け る 自 治 体 の 動 向 を 概 観 し , 第 5 章 で は 海 外 の 事 例 に つ い て そ れ ぞ れ 特 徴 な ど を 整 理 す る 。 第 6 章 で は , 西 尾 勝 ほ か の 研 究 者 に よ る 理 論 的 な 分 析 を 比 較 検 証 し , 第 4 章 , 第 5 章 の 具 体 的 な 事 例 を 参 考 に ,自 治 体 の 実 務 者 の 立 場 で ,参 加 型 評 価 の 分 析 ・ 評 価 を 行 う 。 し か し , こ れ ま で の 参 加 型 評 価 は , 幅 広 い 市 民 意 見 を 反 映 す る 方 法 と し て , ま た , 市 民 と 行 政 の 協 働 に 結 び つ け る 機 能 と し て , ま だ ま だ 不 十 分 で あ る こ と が 明 ら か さ れ る 。行 政 評 価 に 用 い ら れ る 参 加 手 法 や 対 象 は , 非 常 に 限 ら れ て い る 。 こ の た め , 第 7 章 で は ,今 後 の 参 加 型 評 価 の 方 向 と し て ,“ 情 報 発 信 型 評 価 ”,“ 意 見 集 約 型 評 価 ” と い う 2 つ の 方 向 を 設 定 し , そ の 具 体 的 な 提 案 を 盛 り 込 ん で い る 。 評 価 情 報 を 活 用 し た 情 報 発 信 の 方 法 を 示 す と と も に , 専 門 家 や 市 民 で 構 成 す る 常 設 し た 外 部 評 価 委 員 会 , 庁 内 の 二 次 評 価 組 織 の 活 用 を 提 示 す る 。 そ の 上 で , 市 民 の エ ン パ ワ ー メ ン ト を 図 り な が ら ,幅 広 い 市 民 意 見 を 反 映 す る 参 加 型 評 価 の あ り 方 を 論 じ て い く 。ま た , 補 論 と し て 行 政 と 市 民 の 意 識 の 距 離 が 遠 い と い わ れ る 大 都 市 を 題 材 に , 地 域 別 , テ ー マ 別 の 市 民 会 議 を 活 用 し た 参 加 型 評 価 を 提 案 す る 。 最 後 に , 第 8 章 に お い て は , 参 加 型 評 価 は , あ ら ゆ る 行 政 活 動 を 一 つ の 方 法 で 一 律 に 評 価 す る こ と は 困 難 で あ り , 評 価 の 対 象 , 時 期 , 内 容 な
- 10 - ど に 応 じ た 多 元 的 な 参 加 型 評 価 を 実 現 す べ き こ と を 結 論 づ け て い く 。 以 上 の と お り , こ の 論 文 は , 自 治 体 の マ ネ ジ メ ン ト で 重 要 な 役 割 を 担 う 行 政 評 価 に 着 目 し ,“ ガ バ ナ ン ス 時 代 ”に ふ さ わ し い 市 民 の 参 加 や 関 与 が ど う あ る べ き か を 明 確 に し な が ら , 機 能 的 な 参 加 型 評 価 シ ス テ ム あ り 方 を 考 察 す る も の で あ る 。
○分かりやすい年次業績報告書で政策情報を共有 ○市民のスキルアップを支援(エンパワーメント) ○政策形成の過程から場面に応じた適切な手法で市民参加を実現 (市民要望,パブリックコメント,PI,市民意識調査,満足度調査,ワーク ショップ,フォーカス・グループインタビューほか) 市 民 参 加 ○外部評価委員会を常設 ○評価システムに関する助言,提言を行う ○評価の実施 ○評価の客観性,信頼性の担保と規律性の強化 外 部 評 価 意 見 集 約 ・ 合 意 形 成 内 部 の マ ネ ジ メ ン ト テーマ別団体 テーマ別団体 テーマ別団体 テーマ別団体 テーマ別団体 地域団体 地域団体 地域団体 地域団体 地域団体 地域団体 地域団体 地域団体 地域団体 地域団体 個 人 市 民(納税者 利用者 利害関係者 協働者) 担 当 部 局 指示 報告 事中評価 事後評価 事前評価 事中評価 事後評価 事前 評価 ③解決策の策定 ⑥改 善 ①現状分析 ②課題の抽出 ④実 施 ⑤評 価 ■指標による現 状分析 ■問題の把握 ■問題(課題) 設定 ■政策立案 ■目標設定 ■政策の執行 ■資源の投入 ■内部評価,外 部評価 ■進行管理 ■問題発見 ■政策の改善
- 12 - 第 2 章 自 治 体 の 行 政 評 価 の 現 状 1 わ が 国 の 行 政 評 価 導 入 の 変 遷 自 治 体 の 行 政 評 価 は , わ ず か 7 , 8 年 の 間 に 急 激 に 全 国 に 広 が り , 高 度 化 , 多 様 化 が 進 ん で い る 。 ま ず , 行 政 評 価 と は 何 か を 明 確 に す る と と も に , こ の 数 年 の 流 れ を 振 り 返 っ て み よ う 。 ( 1 ) 行 政 評 価 と は 何 か 行 政 評 価 と い う 用 語 は , わ が 国 独 特 の も の で 定 義 が 極 め て あ い ま い で あ る1 3。 評 価 に は , 大 別 す る と 業 績 測 定 (performance measurement) と プ ロ グ ラ ム 評 価 ( program evaluation ) の 2 つ の タ イ プ が あ る 。 業 績 測 定 は ,事 前 に 設 定 し た 目 標 に 照 ら し て 業 績 を 測 定 す る も の で あ る 。 プ ロ グ ラ ム 評 価 は , 政 策 に 関 す る 目 的 , 目 標 , プ ロ セ ス , 成 果 や 効 率 性 な ど を 明 ら か に す る 体 系 的 な 調 査 ・ 研 究 で あ る1 4。 わ が 国 の 行 政 評 価 は , 一 般 的 に い う と 前 者 の タ イ プ で あ る 。 基 本 的 な 評 価 と し て , 自 治 体 の 総 合 計 画 の 政 策 ― 施 策 ― 事 業 と い う 枠 組 み に し た が っ て , 政 策 評 価 , 施 策 評 価 , 事 業 評 価 と 階 層 構 造 を と る タ イ プ が 基 本 的 で あ る 。 1 3 例 え ば 行 政 評 価 の 定 義 と し て , ① 「 行 政 機 関 の 活 動 を 何 ら か の 統 一 的 な 視 点 と 手 段 に よ っ て 客 観 的 に 評 価 し , そ の 評 価 結 果 を 行 政 運 営 に 反 映 さ せ る こ と 」( 小 野 達 也 ほ か 「 行 政 評 価 ハ ン ド ブ ッ ク 」 東 洋 経 済 新 報 社 2 0 0 1 年 , 5 頁 。 ② 「 政 策 , 施 策 , 事 務 事 業 に つ い て , 事 前 , 事 中 , 事 後 を 問 わ ず , 一 定 の 基 準 , 指 標 を も っ て , 妥 当 性 , 達 成 度 や 成 果 を 判 定 す る も の を い う 」( 総 務 省 「 地 方 公 共 団 体 に お け る 行 政 評 価 の 取 組 状 況 」 2 0 0 3 年 調 査 )。 ③ 「 行 政 機 関 と 住 民 と の 間 に 情 報 の や り 取 り を 加 え る こ と に よ り , 行 政 の 計 画 , 予 算 化 , 執 行 の 枠 組 み を 住 民 の 視 点 で チ ェ ッ ク し , 組 み 替 え る た め の コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン ツ ー ル 」( 「 行 政 経 営 フ ォ ー ラ ム 海 外 調 査 会 「 行 政 評 価 に よ る 地 域 経 営 戦 略 」 1 9 9 9 年 東 京 法 令 , ま え が き 」 。 ④ 「 行 政 に 数 値 に よ る 目 標 管 理 の 考 え 方 を 導 入 し ,民 間 企 業 の 改 革 の ノ ウ ハ ウ を 行 政 に も 導 入 し よ う と い う 手 法 で あ る 」( 上 山 信 一 「 行 政 評 価 の 時 代 」1 9 9 8 年 N T T 出 版 ,1 頁 )。な ど が あ る 。 1 4 龍 慶 昭 ・ 佐 々 木 亮 「 政 策 評 価 の 理 論 と 技 法 」 2 0 0 0 年 多 賀 出 版 , 8 − 9 頁 , 及 び 古 川 俊 一 ・ 北 大 路 信 郷 「 公 共 部 門 評 価 の 理 論 と 実 際 」 2 0 0 1 年 日 本 加 除 出 版 , 2 9- 35 頁 参 照 。
- 13 - こ の ほ か , 行 政 サ ー ビ ス の 質 を 評 価 す る も の , 特 定 の 観 点 か ら 対 象 を 補 助 金 , 団 体 , 研 究 に 絞 っ て 評 価 す る も の , 組 織 の 経 営 品 質 を 評 価 す る も の な ど へ と 多 様 化 が 進 み , そ れ ら は 総 じ て 行 政 評 価 と 呼 ば れ て い る 。 し か も , プ ロ グ ラ ム 評 価 の 系 統 で あ る 政 策 評 価 ( p o l i c y evaluation) と 同 じ 用 語 で , ベ ン チ マ ー キ ン グ な ど の 政 策 レ ベ ル の 業 績 評 価 を「 政 策 評 価 」と 呼 ぶ な ど ,用 語 の 使 い 方 に 混 乱 が 生 じ て い る 。 本 論 文 で は , 行 政 評 価 を 主 と し て 業 績 評 価 の タ イ プ と し て 捉 え , 論 じ て い き た い 。 ( 2 ) 評 価 の 黎 明 期 1995 年 三 重 県 は , 北 川 知 事 の 下 で ,「 事 務 事 業 評 価 シ ス テ ム 」15を 導 入 し た 。 こ の シ ス テ ム は , 事 務 事 業 目 的 評 価 表 と い う 評 価 調 書 を 用 い る こ と , 事 務 事 業 の 目 的 そ の も の を 確 認 す る と こ ろ か ら 作 業 を は じ め る こ と ,目 的 を「 成 果 指 標 」で 表 現 す る こ と が 特 徴 で あ る 。そ の 後 , 施 策 ・ 事 業 の 基 本 指 針 と な る 総 合 計 画 を 策 定 し , 計 画 の 政 策 体 系 の 中 で 個 々 の 事 務 事 業 の 位 置 づ け を 確 認 し , よ り 高 い 視 点 か ら の 見 直 し を 行 う シ ス テ ム へ と 改 善 が さ れ て い っ た 。 同 県 が 先 駆 的 に 取 り 入 れ た 事 務 事 業 評 価 は , 簡 便 で 専 門 的 知 識 が 不 要 な こ と か ら , 全 国 の 自 治 体 に 波 及 し , 行 政 評 価 ブ ー ム の き っ か け を 作 っ た も の と 言 え よ う 。 ま た , 静 岡 県 に 代 表 さ れ る 業 務 棚 卸 表16は , 組 織 単 位 で 進 め る 作 戦 を 簡 潔 か つ 体 系 的 に 文 書 化 し て , 組 織 の 目 的 と 手 段 , 達 成 目 標 を 明 示 し て い る 。 成 果 を 評 価 測 定 し , 経 営 改 善 の た め の 分 析 を 行 え る よ う に 1 5 三 重 県 ホ ー ム ペ ー ジ ( 以 下 「 HP 」 と い う 。) h t t p : / / w w w . p r e f . m i e . j p / G Y O U S E I / p l a n / j i m u 0 0 k / g a i y o u . h t m 参 照 1 6 静 岡 県 H P h t t p : / / w w w 2 . p r e f . s h i z u o k a . j p / a l l / g y o t a n a . n s f / 参 照
- 14 - し た 独 自 も の で あ る 。 こ の 評 価 は , 対 象 が 事 務 事 業 で は な く , 政 策 ・ 施 策 単 位 と し , 職 員 ・ 組 織 が 一 定 期 間 内 で 業 務 を 通 し て , 何 を ど の よ う に 実 現 さ せ る か を 把 握 す る 。 業 務 の 「 目 的 ・ 手 段 の 樹 木 的 ( 連 鎖 的 ) 構 造 」 が 特 徴 で あ る 。 日 ご ろ 目 的 を 意 識 せ ず に 漠 然 と し て 取 り 組 ん で い た 業 務 を 体 系 化 す る こ と で 目 的 と 手 段 を 明 確 に し , 仕 事 を 分 析 す る こ と に 役 立 つ シ ス テ ム で あ る 。 そ の 後 , 総 合 計 画 と も 整 合 を と り , 計 画 指 標 と も 連 動 す る な ど 高 度 化 を 図 っ て い る が , 普 及 は 少 数 の 自 治 体 に 留 ま っ て い る 。 北 海 道 が 1997 年 か ら 実 施 し た 「 時 の ア セ ス 」17は , 計 画 さ れ た 施 策 で 「 長 期 間 停 滞 し て い る と 認 め ら れ る も の 」 や 「 施 策 の 価 値 ま た は 効 果 が 低 下 し て い る と 認 め ら れ る も の 」 な ど を 対 象 に , 再 評 価 を 行 う 仕 組 み で あ る 。 こ れ は , 時 の 経 過 に よ っ て 必 要 と さ れ た 社 会 状 況 や 住 民 要 望 な ど が 大 き く 変 化 し た こ と か ら , 施 策 に 対 す る 当 初 の 役 割 や 効 果 に つ い て 改 め て 点 検 ・ 評 価 を 加 え る も の で あ る 。 実 際 に は , 大 型 の 公 共 事 業 な ど 9 事 業 が 対 象 に な り , 施 策 の 中 止 や 計 画 変 更 が 決 定 さ れ て い る 。「 時 の ア セ ス 」 と い う 言 葉 自 体 が , 「 現 代 用 語 の 基 礎 知 識 」 の 今 年 の 新 語 ・ 流 行 語 ト ッ プ テ ン (1997 年 選 定 ) を 受 賞 す る な ど , 名 称 の イ ン パ ク ト も 大 き く , 全 国 的 な 注 目 を 集 め る に い た っ た 。 さ ら に , 評 価 の 黎 明 期 に は , 何 が な ん で も 成 果 指 標 ( ア ウ ト カ ム ) の 設 定 が 必 要 と い う 思 い 込 み か ら , 評 価 に な れ な い 自 治 体 職 員 が 目 標 の 設 定 と 指 標 を ど う 選 ぶ か に 悩 ん だ 時 期 で も あ っ た 。 地 方 財 政 が 逼 迫 す る 中 で , 自 治 体 で は ,“ ア ウ ト カ ム 信 仰 ”18に 苦 労 し な が ら も , 数 値 1 7 北 海 道 の H P h t t p : / / w w w . p r e f . h o k k a i d o . j p / s k i k a k u / s k- s s n j i / t o k i / t o k i i n d e x . h t m 参 照 。 1 8 行 政 評 価 が 導 入 さ れ た 自 治 体 で は , 活 動 量 を 測 る 活 動 指 標 ・ ア ウ ト プ ッ ト で は な く , ど ん な 事 業 に も ア ウ ト カ ム を 設 定 し な け れ ば な ら な い と い う 考 え 方 が 主 流 で あ っ た 。こ の た め , 実 際 に 測 定 で き な い 指 標 や 無 理 に 複 雑 な 計 算 を し て ア ウ ト カ ム を 算 出 し よ う と い う 動 き も あ っ た 。 こ れ を 筆 者 が 独 自 に “ ア ウ ト カ ム 信 仰 ” と 表 現 し た 。
- 15 - 化 し た 成 果 指 標 な ど を 事 務 事 業 の 評 価 , 進 行 管 理 に 活 用 し , 従 来 の 予 算 主 義 , 事 業 量 偏 重 の 行 政 の 進 め 方 か ら 成 果 の 向 上 を 目 指 し た シ ス テ ム へ 変 革 し て い こ う と い う 気 運 が 高 ま っ て い っ た 。 ( 3 ) 評 価 の 高 度 化 , 階 層 化 そ の 後 , 評 価 シ ス テ ム の 高 度 化 が 進 み , 数 値 目 標 の 設 定 や 住 民 満 足 重 視 の 仕 組 み を 志 向 し た 仕 組 み が 登 場 し た 。2 0 0 0 年 , 長 期 総 合 計 画 に 政 策 指 標 を 設 定 し た 東 京 都 政 策 指 標( チ ェ ッ ク ア ッ プ ・ リ ス ト )1 9は , 日 本 で の ベ ン チ マ ー ク2 0の 先 駆 け と 言 え よ う 。 特 に 注 目 さ れ る の は , 青 森 県 政 策 マ ー ケ ッ テ ィ ン グ ブ ッ ク2 1で あ る 。 こ れ は , 民 間 企 業 の マ ー ケ テ ィ ン グ ( 市 場 調 査 ・ 活 動 ) 手 法 を 取 り 入 れ て 指 標 を 設 定 し て い る こ と が 特 徴 で あ る 。 評 価 は , 県 民 の 代 表 や 専 門 家 な ど で 構 成 す る 第 三 者 機 関 「 政 策 マ ー ケ テ ィ ン グ 委 員 会 」 が 主 体 的 に 実 施 し て い る 。「 マ ー ケ ッ テ ィ ン グ ブ ッ ク 」 は , 近 い 将 来 ( 5 年 後 ) に 実 現 す べ き 県 民 生 活 の 水 準 を 「 め ざ そ う 値 」( ベ ン チ マ ー ク ) と し て 示 し て い る 。 こ の 指 標 は , 国 , 県 , 市 町 村 や 県 民 な ど 誰 が ど の 程 度 の 役 割 を 果 た す べ き か と い う 「 分 担 値 」 も 設 定 し , 外 国 に も 例 の な い 青 森 県 独 自 の も の で あ る 。 関 係 す る 主 体 が 目 指 す 政 策 の 成 果 は , 「 め ざ そ う 値 」 の 達 成 度 で 測 定 し , そ れ ぞ れ の 次 の 行 動 に 反 映 さ せ , い わ ば 社 会 の 協 働 を 目 指 し た も の と 言 え よ う 。 た だ , 参 加 型 評 価 の 一 形 態 で あ る が , 県 民 に 定 着 し た と は 言 い が た く , 具 体 的 な 成 果 は 今 後 に 期 待 さ れ る 。 1 9 東 京 都 の H P h t t p : / / w w w . c h i j i h o n b u . m e t r o . t o k y o . j p / k e i k a k u / 2 0 0 0 / s o u r o n / 5 s h i h y o . h t m 参 照 2 0 基 準 と な る 指 標 ( ベ ン チ マ ー ク ) を 設 定 し , 継 続 し て 実 績 値 と 比 較 す る こ と で 達 成 度 を 評 価 す る 手 法 の こ と 。 2 1 青 森 県 の H P h t t p : / / w w w . p r e f . a o m o r i . j p / k o u t y o u / m a r k e t i n g / i n d e x . h t m l 参 照
- 16 - こ う し た ベ ン チ マ ー ク の 取 り 組 み は , 全 国 的 に も 広 が っ て い る 。 例 え ば , 地 域 性 に こ だ わ り を も っ て 指 標 を 設 定 し て い る 「 し が ベ ン チ マ ー ク 」( 2000 年 か ら 作 成 , 滋 賀 県 )2 2, 既 存 計 画 に 指 標 を 後 か ら 設 定 し た 「 第 三 次 北 海 道 長 期 総 合 計 画 」2 3(2001 年 に 設 定 ) , 子 供 に も 分 か り や す く , 近 未 来 を ス ト ー リ ー で 語 り な が ら , 対 応 す る 指 標 と 社 会 像 の 達 成 状 況 を 示 す 「 美 し い 兵 庫 指 標 」2 4( 兵 庫 県 2002 年 策 定 ) な ど と い う ユ ニ ー ク な 取 り 組 み が あ る 。 ま た ,1999 年 に は 組 織 全 体 の 包 括 的 な 評 価 で あ る 三 鷹 市 の 「 行 政 経 営 品 質 評 価 」2 5と い っ た 外 部 評 価 が 登 場 し て き た 。「 経 営 ビ ジ ョ ン と リ ー ダ ー シ ッ プ 」「 業 務 プ ロ セ ス の 管 理 」「 市 民 の 要 望 ・ 期 待 の 理 解 と 対 応 」「 経 営 戦 略 の 策 定 と 展 開 」 な ど , 8 つ の 評 価 項 目 か ら , 市 政 運 営 の 仕 組 み や 成 果 に つ い て 自 ら 記 述 し , こ れ を 外 部 機 関 が ヒ ア リ ン グ を 行 い , 総 合 的 な 行 政 運 営 の レ ベ ル を 評 価 す る も の で あ る 。 評 価 対 象 で は , 体 系 的 評 価 を 志 向 し , 当 初 の 事 務 事 業 評 価 か ら , 施 策 評 価 へ , そ し て 政 策 評 価 へ と い っ た 動 き が 加 速 し , 評 価 シ ス テ ム の 高 度 化 や 階 層 化 が し だ い に 広 が っ て い る 。 ( 4 ) 評 価 の 多 様 化 最 近 は , 評 価 の 経 営 へ の 活 用 を 目 的 に し , 戦 略 経 営 を 志 向 し た 三 重 県 の「 政 策 推 進 シ ス テ ム 」2 6( 2002 年 に 導 入 ) な ど が 生 ま れ た 。 ま た , 個 別 具 体 的 な , い わ ば “ セ グ メ ン ト 評 価 (分 野 別 評 価 ) ”, さ ら に は 外 郭 2 2 滋 賀 県 の H P h t t p : / / w w w . p r e f . s h i g a . j p / g y o k a k u / m a r k 2 0 0 2 / 参 照 2 3 第 3 次 北 海 道 長 期 総 合 計 画 で は , 道 民 へ の 意 見 募 集 も し な が ら 既 存 計 画 に 成 果 指 標 と 数 値 目 標 を 設 定 し て い る 。 2 4 兵 庫 県 の H P h t t p : / / w e b . p r e f . h y o g o . j p / v i s i o n / u h s / 参 照 2 5 三 鷹 市 の H P h t t p : / / w w w . c i t y . m i t a k a . t o k y o . j p / e v a l u a t i o n / 参 照 2 6 三 重 県 の H P h t t p : / / w w w . p r e f . m i e . j p / G Y O U S E I / p l a n / j i m u 0 2 k / s y s t e m / 参 照
- 17 - 団 体 の 経 営 評 価 も 取 り 組 ま れ は じ め る な ど 多 様 化 が 進 ん で い る 。 セ グ メ ン ト 評 価 の 代 表 的 な も の と し て は ,宮 城 県 の「 補 助 金 総 点 検 」 2 7, 京 都 市 の 「 公 の 施 設 評 価 」2 8な ど が あ る 。「 補 助 金 総 点 検 」 は , 県 が 支 出 し て い る 補 助 金 に つ い て , 補 助 の 妥 当 性 , 運 用 の 在 り 方 な ど に つ い て 総 点 検 を 行 い , 広 く 県 民 か ら 意 見 を 聴 取 し て , 補 助 金 を 再 検 証 す る と と も に , 補 助 金 制 度 や 手 続 き の 改 善 の ほ か , 補 助 金 に 代 わ り う る 施 策 の 検 討 な ど も 実 施 し て い る 。 ま た ,「 公 の 施 設 評 価 」 は , 公 の 施 設 を 対 象 に , 公 共 性 , 行 政 関 与 の 妥 当 性 , 受 益 者 負 担 の 妥 当 性 な ど の ほ か , 目 標 達 成 度 評 価 , 効 率 性 評 価 , 受 益 者 負 担 の 適 正 性 評 価 な ど を 経 て , 一 次 , 二 次 に わ た る 総 合 評 価 を 行 う も の で あ る 。 二 次 評 価 は , 有 識 者 か ら な る 外 部 評 価 委 員 会 が 提 言 し , 施 設 の 具 体 的 な 改 革 , 改 善 に 生 か し て い く シ ス テ ム で あ る 。 外 郭 団 体 の 経 営 評 価 で は , 北 海 道 の 「 関 与 団 体 点 検 評 価 」 な ど が あ る 。 こ れ は , 団 体 の 効 率 的 運 営 や 効 果 的 な 活 用 な ど , 関 与 団 体 の 運 営 状 況 や 道 の 関 与 の あ り 方 な ど に つ い て 点 検 評 価 し , 団 体 の 効 率 的 運 営 や 効 果 的 な 活 用 を 図 る も の で あ る 。 こ う し た 自 治 体 の 評 価 シ ス テ ム の 多 様 化 に つ い て は ,19 頁 の 図 表 2 − 1 「 自 治 体 の 評 価 の 類 型 と 特 徴 」 に 整 理 し た 。 最 近 は , 民 間 企 業 で 活 用 さ れ て い る バ ラ ン ス ・ ス コ ア ・ カ ー ド29と い う 多 元 的 な 業 績 評 価 も 導 入 が は じ ま っ て い る 。 今 後 , 自 治 体 に お い て は , さ ら に 多 様 な 評 価 シ ス テ ム の 導 入 が 予 想 さ れ る 。 2 7 宮 城 県 の H P h t t p : / / w w w . p r e f . m i y a g i . j p / g y o u k a k u / h o j o k i n . h t m) 参 照 2 8 京 都 市 の H P h t t p : / / w w w . c i t y . k y o t o . j p / s o m u / g y o k a k u / p a g e 0 1 3 6 . h t m l) 参 照 2 9 B S C と い わ れ , 財 務 , 顧 客 , 内 部 プ ロ セ ス , 学 習 と 成 長 の 4 つ の 視 点 か ら 評 価 す る 多 元 的 な 評 価 シ ス テ ム で ハ ー バ ー ド 大 学 の R . S . K A P L A N な ど が 考 案 し た 。 ロ バ ー ト ・ S ・ キ ャ プ ラ ン , デ ビ ッ ト ・ P ・ ノ ー ト ン 「 バ ラ ン ス ・ ス コ ア ・ カ ー ド ー 新 し い 経 営 指 標 に よ る 企 業 変 革 」 1 9 9 7 年 生 産 性 出 版 参 照 。 自 治 体 で は 三 重 県 立 病 院 改 革 へ の B S C 活 用 な ど の 事 例 が あ る 。
- 18 - ( 5 ) 評 価 の 外 部 化 自 治 体 の 評 価 シ ス テ ム 導 入 の 経 過 を 概 観 し た が , 一 部 を 除 い て 行 政 内 部 の 自 己 評 価 が 中 心 で あ る 。 内 部 評 価 は , お 手 盛 り 評 価 に な り が ち と い う 批 判 も あ る 。 こ の た め , よ り 客 観 的 な 評 価 を 目 指 し て , 外 部 の 視 点 を 取 り 入 れ た 評 価 に 取 り 組 む 自 治 体 が 増 加 し て い る 。 外 部 評 価 の 事 例 に つ い て は , 第 4 章 以 降 で 詳 述 す る が , 主 と し て 委 員 会 形 式 で 外 部 の 意 見 を 聴 く タ イ プ や 市 民 満 足 度 調 査 を 取 り 入 れ た タ イ プ な ど が あ る 。 外 部 評 価 は , 評 価 対 象 も 政 策 , 施 策 に 限 定 す る も の か ら 事 務 事 業 ま で 様 々 で あ る 。 い ず れ に し て も , 市 民 参 加 が 叫 ば れ る 今 日 , 何 ら か の 形 で 外 部 評 価 を 導 入 す る こ と は , 行 政 評 価 の 重 要 な 要 素 に な り そ う で あ る 。
- 19 - ■図表2−1 地方自治体の主な評価の類型と特徴 評価類型 評価の目的・特徴 評価の対象 評価の視点 特徴 実施自治体 業績評価型 (政策,施 策,事務事業 評価型) 目標とその達成度に着目した業績評 価。成果を数値目標との比較により明 確にして評価を行う。目的,目標,意 図や手段の妥当性,コスト,市民ニー ズなど様々な視点で多角的に検討して 評価する。 政策 施策 事務事業 目標達成度,必 要性,妥当性, 効率性,有効 性,経済性,顧 客満足など評価 の重点により視 点が多数有り 簡易な手法 アウトカムの設定 行政評価実施の ほとんどの自治 体がこの例(た だし,評価レベ ルは事業まだ, もしくは施策ま でのところも) 業務棚卸評価 組織単位(課・室)の目標を明確にし て,組織単位のもつ任務を対象とする 政策評価。業務の問題点発見や投入の 無駄を発見し,目的への適切な手段を 選択する。 評価対象が事 務事業ではな く政策・施策 単位 目的,管理指 標,実績,困難 度,人工 問題発見の容易性 全事業を網羅 簡易性,見た目の分 かりやすさ 静岡県 四日市 市他 コミュニ ティ・ベンチ マーク型 大きなテーマの具体的な数値指標を 設定して,その達成度を図るもの。総 合的な政策のパフォーマンス評価。目 標達成のための改善,施策の立案につ なげる。 政策または, 事務事業,施 策,政策を包 含したもの 目標達成度 水準,ベストプ ラクティス,顧 客満足 市民の分かりやすさ 市民参加を志向した ものもある 青森県 東京都 滋賀県 和歌山 県 兵庫県 愛 媛県 座間市 袖ケ浦市 舞鶴 市 福井市 枚 方市 神戸市他 公共事業評価 型 経済性を重視して,主に大規模な公 共事業を評価するタイプ。例えば,道 路の交通機能に対する評価,事業支出 に対する評価,貨幣との比較による便 益評価など 道路,港湾, 空港など大規 模公共事業 費用便益 費用効果 専門的な科学的手法 が必要 北海道,宮城 県,愛知県ほ か,都道府県の 多くが実施。川 崎市,京都市, 大阪市他 事業再評価型 財政的な視点からの行政改革の取り 組みで事業の見直しが主眼。また,時 代に変化に対応して事業の見直しを行 うもの。 主に停滞し ている大規模 事業など。 目的,効果,緊 急性,公民の役 割分担,費用便 益, 社会経済情勢の変化 等などからの事業の 見直しが主眼。 北海道 宮城県 東京都 京都府 大阪府 川崎市 大阪市他 セグメント評 価 (分野別評価) 特定の事業や分野(施設,補助金, 研究)などを対象にし,行政活動の態 様に着目して個別の評価の視点を設け たもの。 公共施設,補 助金,研究な ど 目標達成度,効 率性,事業領域 (施設),必要 性,事業の方向 性(補助金)な ど 特定の観点からの評 価。 北海道 大阪府 札幌市 八王子 京都市他 包括評価型 (行政経営品 質) 事業や施策でなく,組織,マネジメ ントそのものの品質評価を行い,市民 ニーズに対応する組織や質の高いサー ビスを目指すもの。 組織,マネジ メントの品質 ビジョン,顧客 満足 外部評価機関が評価 滝沢村 岩手県 三鷹市 三重県 松阪市 神戸市 高知県 市民満足度, 重要度調査型 市民アンケートによる調査。政策, 施策ごとに満足度,重要度を調査し, 満足,重要の2軸でマトリクス分析を行 うものもある。 市民満足 定性評価(重要 度,満足度) 業績評価との組み合 わせて評価するタイ プもある。 宮城県 太田市 東金市 上越市 長野県 小田原 市 京都市他 行政サービス 評価型 個別のサービスそのものを評価する もの。接遇などの事務改善により市民 サービスの向上につなげる。 サービスの質 (あいさつ, 身だしなみ, ことばづか い,態度,説 明の仕方な ど) 定性評価(満足 度) 市民のアンケート調 査により評価。 江別市 青森市 仙台市 小田原 市 長岡市 京 都市 山口市 臼杵市 群馬県 愛知県 山口県 他 事業評価手法 による行政監 査型 監査委員による行政監査で,有効 性,効率性,経済性を中心にしたも の。 事業など 有効性,効率性 などいわゆる3 Eが中心 VFM(金額に見合 う価値)、BV (サービスの質と改 善可能性の評価)の 視点も。 東京都 三重県 久留米市他 外郭団体等経 営評価型 三セク等外郭団体の経営を中心とし た評価。自己評価と所管部局の評価な どを組み合わせて行う。 収支や利用状 況,団体 経営の健全性や 改善の方向 主に企業経営的な視 点からの経営状況分 析などにより経営課 題を把握し,改善に 生かす。 北海道 秋田県 愛知県 福岡県 札幌市 杉並区 川崎市 名古屋 市 岡山市他 各種資料,自治体ホームページから筆者作成
- 20 - 2 行 政 評 価 の 問 題 点 自 治 体 が 行 政 評 価 を 導 入 す る 理 由 と し て は , 政 策 , 施 策 , 事 務 事 業 の レ ベ ル に よ っ て 異 な る が ,「 行 政 活 動 の 成 果 向 上 」「 資 源 配 分 の 改 善 」「 住 民 と の コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 」 を 掲 げ る と こ ろ が 多 い ( 三 菱 総 合 研 究 所 の 調 査3 0に よ る )。し か し ,そ れ ぞ れ の 目 的 に 対 す る 成 果 は ど う か と 言 う と , 市 ・ 区 に お い て は レ ベ ル , 目 的 の 内 容 に 関 わ ら ず , 成 果 が 「 ま だ わ か ら な い 」 と 回 答 し た 自 治 体 が 大 半 と い う 結 果 で あ っ た 。 ま た , ホ ー ム ペ ー ジ 上 に 行 政 評 価 の 職 員 ア ン ケ ー ト を 公 開 し て い る 自 治 体 の 中 で , 評 価 シ ス テ ム を 導 入 し て 3 年 目 の “ A 市 ” の 例 を 取 り 上 げ て み よ う 。 「 あ な た が か か わ っ て い る 仕 事 に つ い て , 市 民 に 説 明 で き ま す か ( 複 数 回 答 可 )」 と い う 設 問 の 回 答 で は ,「 ① サ ー ビ ス の 内 容 を 説 明 で き る 」 が 2 5 .9 %,「 ② 誰 の た め の サ ー ビ ス か 説 明 で き る 」 が 22. 7%,「 ③ 目 的 ( 何 の た め に や っ て い る か ) を 説 明 で き る 」 が 32.5% ,「 ④ ど の よ う な 成 果 が 期 待 で き る か 説 明 で き る 」 が 14.9% な ど と い う 結 果 で あ っ た 。 ま た ,「 仕 事 を し て い て , 市 民 と の 意 識 の ず れ を 感 じ た こ と が あ り ま す か 」 と い う 設 問 で は , 84.6 % が 「 あ る 」 と い う 回 答 で あ っ た 。 こ こ に は , 仕 事 の 目 的 が 何 か を 理 解 し て い な い , ま た , 市 民 に 対 す る 説 明 責 任 も 十 分 果 た す こ と で き な い , 市 民 の 意 識 と 遊 離 し た 行 政 職 員 の 姿 が あ る 。 こ れ ら を 一 般 化 す る こ と は 問 題 か も し れ な い が ,「 行 政 活 動 の 成 果 向 上 」「 資 源 配 分 の 改 善 」「 住 民 と の コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン 」 と い う 行 政 評 価 の 目 的 を 果 た す こ と が い か に 難 し い か を 示 し て い る 一 例 と 言 え よ う 。 3 0 株 式 会 社 三 菱 総 合 研 究 所 「 地 方 自 治 体 に お け る 行 政 評 価 へ の 取 り 組 み に 関 す る 実 態 調 査 2 0 0 2 年 調 査 結 果 」
- 21 - 第 3 章 な ぜ , 日 本 の 行 政 評 価 は 機 能 し て い な い の か こ こ 数 年 に わ た る 自 治 体 の 行 政 評 価 の 導 入 は ,目 覚 し い も の が あ っ た 。 し か し , な ぜ , わ が 国 の 行 政 評 価 は 成 果 が 認 識 さ れ な い , い わ ば 機 能 し て い な い の で あ ろ う か 。 制 度 的 な 側 面 , 技 術 的 な 側 面 , 組 織 風 土 ・ 文 化 の 三 つ の 側 面 か ら 分 析 し , 併 せ て , 評 価 と 市 民 参 加 の 関 係 を 考 察 し て み よ う 。 1 制 度 的 な 側 面 制 度 面 で は , ① 具 体 的 な 戦 略 性 を 欠 い た 自 治 体 の 体 質 , ② 評 価 調 書 の 作 成 者 に 事 業 の 可 否 な ど を 判 断 す る 権 限 が な い と い う 「 権 限 と 評 価 者 と の ミ ス マ ッ チ 」, ③ 評 価 調 書 の 偏 重 , ④ 評 価 の 目 的 ・ 活 用 方 法 の 不 明 確 さ な ど が 問 題 点 と し て 指 摘 で き る 。 以 下 具 体 的 に 考 察 し て み た い 。 ( 1 ) 総 花 的 な 総 合 計 画 市 町 村 は , 地 方 自 治 法 第 2 条 第 5 項 に よ り 地 域 に お け る 総 合 的 か つ 計 画 的 な 行 政 の 運 営 を 図 る た め の 基 本 構 想 を 定 め る こ と に な っ て い る 。 こ れ を 受 け て , 多 く の 自 治 体 は ,基 本 構 想 と 基 本 計 画 で 構 成 す る 長 期 の 総 合 計 画 を 策 定 し て い る 。 一 般 的 に こ の 計 画 に は ,「 何 を 」「 ど の よ う な 状 態 に し た い か 」 と い う 成 果 目 標 や , 目 標 達 成 の た め に ど の よ う な 資 源 を 「 い つ ま で 」「 ど の よ う に 」 投 入 す る か な ど は 盛 り 込 ま れ て い な い 。 非 常 に 総 花 的 で , 抽 象 的 で あ る 。 日 本 都 市 セ ン タ ー が 2002 年 に 実
- 22 - 施 し た ア ン ケ ー ト3 1に よ る と , 市 ・ 区 の 都 市 自 治 体 で 基 本 計 画 に 「 定 量 的 な 目 標 設 定 を し て い な い 」 自 治 体 が 6 5 . 4% , 実 施 計 画 に つ い て も 同 様 に 51.4 % と い う 結 果 で あ っ た 。 ま た , 行 政 評 価 で は , 成 果 指 標 が 最 も 大 切 な 要 素 と な る 。 し か し , 具 体 的 な 指 標 を 用 い て 「 主 要 な 施 策 等 に 対 し て 成 果 目 標 を 設 定 」 す る 自 治 体 は , 基 本 計 画 で 7.3 % , 実 施 計 画 で は 6.7 % の み で あ る 。 行 政 評 価 は ,「 計 画 ― 実 施 ― 評 価 」と い う マ ネ ジ メ ン ト サ イ ク ル の 一 部 を 構 成 し て い る 。 こ の サ イ ク ル で 行 政 運 営 を 進 め よ う と し な が ら , 基 本 的 な 計 画 に , 成 果 を 捉 え た 明 確 な 目 標 を 設 定 し て い な い 自 治 体 の 姿 が 浮 き 彫 り に な っ て い る 。 ( 2 ) 評 価 者 と 権 限 の ミ ス マ ッ チ 次 に , 評 価 者 と 権 限 と い う 問 題 が あ る 。 行 政 の 意 思 決 定 は , 通 常 は 担 当 ― 係 長 ― 課 長 ― 部 長 な ど の ボ ト ム ア ッ プ で 行 わ れ る 。行 政 評 価 は , 評 価 調 書 を 用 い る こ と が 一 般 的 で あ る 。 し か し , 例 え ば 事 業 の 可 否 を 決 定 す る 権 限 が な い 担 当 者 が 記 入 し て , 稟 議 と い う 形 で 権 限 者 の 意 思 決 定 を 伺 い , 評 価 内 容 を オ ー ソ ラ イ ズ す る 。 し か し , 権 限 の な い 担 当 者 が 事 業 自 体 の 要 不 要 を 率 直 に 公 式 の 意 思 決 定 の 場 面 で 表 明 す る こ と は 難 し い 。事 業 の 事 務 は 担 っ て い て も , 自 ら の 意 思 で 拡 大 し , も し く は 中 止 す る な ど の 権 限 は な い の で あ る 。 一 部 の 自 治 体 で は , 評 価 調 書 を 管 理 職 が 書 く と い う 事 例3 2は あ る が 極 め て 例 外 的 で あ る 。 評 価 制 度 が , 評 価 調 書 の 記 入 と い う 単 な る 書 類 の 作 成 3 1 日 本 都 市 セ ン タ ー 「 自 治 体 の 計 画 行 政 に 関 す る ア ン ケ ー ト 調 査 」( 2 0 0 2 年 に 671 市 , 2 3 特 別 区 ,4 7 都 道 府 県 の 総 合 計 画 担 当 課 長 あ て に 実 施 。 市 ・ 区 7 5 . 4 % , 都 道 府 県 8 9 . 1 % の 回 答 を 得 て い る ), 4 5- 220 頁 参 照 。 3 2 名 古 屋 市 の 行 政 評 価 は , 基 本 的 に 課 長 職 が 評 価 調 書 を 記 入 す る 。 h t t p : / / w w w . g y o u s e i h y o u k a . c i t y . n a g o y a . j p / 参 照
- 23 - 作 業 と し て ル ー テ ィ ン 化 し て い る 。 行 政 評 価 は , 人 や 資 金 を , 使 命 や 一 定 の 目 的 の た め の 資 源 と 認 識 し て 機 能 面 か ら 統 制 す る 「 ミ ッ シ ョ ン ・ ド ラ イ ブ 型 」3 3の 行 政 を 想 定 し て い る 。 そ れ ら を 管 理 の 対 象 と し て 認 識 し , 規 律 に よ っ て 統 制 す る 旧 来 の 「 ル ー ル ・ ド ラ イ ブ 型 」 の ま ま で 行 政 評 価 を 運 用 す れ ば , 形 骸 化 は 必 然 で あ る 。 (3) あ い ま い な 評 価 の 活 用 法 行 政 評 価 は 何 の た め に 行 う の か 。業 務 の 改 善 ,予 算 や 計 画 と の 連 携 , 市 民 へ の 説 明 責 任 が そ の 理 由 と し て よ く 挙 げ ら れ る 。 し か し , 具 体 的 な 活 用 法 は , 果 た し て 目 的 ど お り で あ ろ う か 。 例 え ば , 計 画 と の 連 携 で 考 え て み よ う 。 自 治 体 の 行 政 評 価 は , 目 標 を 成 果 指 標 で 設 定 し , そ の 達 成 度 を 図 る 目 標 管 理 型 の 業 績 評 価 タ イ プ が 多 く な っ て い る3 4。 欧 米 の 評 価 手 法 の 著 名 な 例 を 挙 げ る と , イ ギ リ ス の ベ ス ト ・ バ リ ュ ー , ア メ リ カ 政 府 の 政 府 業 績 成 果 法 ( Government
Performance and Results Act: GPRA )3 5に し て も 業 績 評 価 タ イ プ で あ
る 。 こ れ ら は , 評 価 の 前 に , 戦 略 的 な 計 画 が 策 定 さ れ て 計 画 と の 連 携
が 前 提 と さ れ て い る 。 ベ ス ト ・ バ リ ュ ー は ,「 Best Value Performance
Plan」 と い う 計 画 に 目 標 を 業 績 指 標 ( performance indicators ) で 設
定 し , 毎 年 そ の 達 成 度 を 測 定 す る 。 ま た , GP RA は , 5 年 以 上 を 期 間 と す る 戦 略 計 画 ( s t r a t e g i c p l a n ) と 毎 年 の 年 次 業 績 計 画 ( a n n u a l 3 3 ミ ッ シ ョ ン ・ ド ラ イ ブ と ル ー ル ・ ド ラ イ ブ の 定 義 は , 宮 脇 淳 「 公 共 経 済 諭 」 2 0 0 3 年 , 1 2 頁 を 参 照 。 3 4 日 本 の 行 政 評 価 は , 定 量 的 な 業 績 測 定 タ イ プ に , 必 要 性 , 妥 当 性 , 成 果 向 上 余 地 , 官 民 の 役 割 分 担 な ど の 定 性 評 価 も 付 加 し た り , 資 源 の 投 入 か ら , 活 動 , 結 果 , 成 果 ま で の 因 果 関 係 を 評 価 す る セ オ リ ー 評 価 な ど の 要 素 を 取 り 入 れ る な ど し た も の が 多 い 。 3 5 日 本 評 価 学 会 第 4 回 全 国 大 会 論 文 ・ 田 中 啓 「 ア メ リ カ の G P R A − 10 年 の 評 価 よ 日 本 へ の 含 意 」 2 0 0 3 年 富 士 通 総 研 経 済 研 究 所 を 参 照 。
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performance plan ) を 作 成 し , 同 様 に 業 績 を 測 定 す る こ と が 基 本 と し
て 組 み 込 ま れ て い る 。 戦 略 が あ っ て こ そ の 評 価 で あ り , 測 定 な の で あ
る 。戦 略 と は ,「 組 織 の 使 命 ,将 来 像 ,お よ び 目 標( mission, vision and
objectives)を ど の よ う に し て 実 現 す る か を 明 示 し た 総 合 的 な プ ラ ン 」 3 6で あ る 。 こ れ ら の 計 画 は , 多 く の 自 治 体 が 策 定 し て い る 総 合 計 画 と は そ も そ も タ イ プ が 異 な る 。 成 果 目 標 す ら 設 定 し て い な い 自 治 体 の 計 画 を そ の ま ま に し て , 明 確 な 使 命 や ビ ジ ョ ン , 目 標 が 必 要 な 目 標 管 理 型 の 行 政 評 価 に 結 び つ け る こ と は , 極 め て 困 難 で あ る 。 ま た , 予 算 と の リ ン ク と い わ れ る が , 事 務 事 業 評 価 で 事 業 間 の 重 づ け を 決 定 す る こ と は で き な い 。 高 齢 者 の 交 通 費 等 が 無 料 に な る 敬 老 パ ス 事 業 と 雇 用 創 出 の た め の コ ー ル セ ン タ ー 誘 致 事 業 で は 追 及 し て い る 価 値 が 全 く 異 な る 。 佐 藤 克 廣 は , 政 策 評 価 と い う の は 事 実 前 提 を 明 ら か に す る も の で あ り ,「 価 値 観 に 基 づ い た 選 択 」 と い う こ と に な る と , 政 策 評 価 は 全 然 役 に た た な い と 指 摘3 7し て い る が , 行 政 評 価 は 意 思 決 定 す る た め の ひ と つ の 材 料 に な り 得 て も , 決 定 そ の も の は 担 え な い の で あ る 。 予 算 を 作 成 す る と き , 行 政 評 価 を ど の よ う に 活 用 す る の か , 明 確 な 方 法 諭 は 確 立 さ れ て い な い 。 ( 4 ) 評 価 情 報 の 理 解 困 難 性 行 政 が 情 報 を 独 占 す る 情 報 の 非 対 称 性 を 解 消 す る こ と が “ 共 治 ” を 進 め る 前 提 条 件 と な る 。 上 山 信 一 は , 行 政 評 価 を 「 住 民 が 首 長 以 下 の 行 政 の 仕 事 振 り を チ ェ ッ ク す る た め の も の に な る 」38と 述 べ て い る 。 3 6 龍 慶 昭 ・ 佐 々 木 亮 「 戦 略 策 定 の 理 論 と 技 法 」 2 0 0 2 年 多 賀 出 版 , 53 頁 3 7 佐 藤 克 廣 「 地 方 自 治 土 曜 講 座 ブ ッ ク レ ッ ト 〈 N o . 5 2 〉 ー 自 治 体 に お け る 政 策 評 価 の 課 題 」 1 9 9 9 年 公 人 の 友 社 , 12 頁 参 照 。 3 8 上 山 信 一 監 訳 ・ 監 修 「 行 政 評 価 の 世 界 標 準 モ デ ル 」, 4 頁 。
- 25 - 行 政 評 価 は , 市 民 に と っ て , 行 政 が 何 を ど う 考 え , ど の よ う に 取 り 組 ん で い る か を 明 ら か に す る 。 こ れ に よ り , 市 民 が 行 政 を チ ェ ッ ク す る と と も に , 行 政 と 市 民 が コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン を は か る 道 具 と も な る の で あ る 。 し か し , 政 策 , 施 策 , 事 業 の 背 景 な ど に 関 し , 十 分 な 情 報 を 持 ち 合 わ せ て い な い 市 民 に と っ て , 現 行 の 行 政 評 価 は , 容 易 に 理 解 で き る 代 物 で は な い 。 行 政 職 員 で あ っ て も , 担 当 が 異 な っ て 他 の 周 辺 情 報 を 持 っ て い な け れ ば , 評 価 調 書 の 情 報 だ け は 内 容 を 十 分 理 解 で き な い で あ ろ う 。 ま た , 行 政 評 価 は ,「 名 前 は 行 政 評 価 で あ っ て も , そ の 本 質 は 行 政 内 部 の 自 己 点 検 活 動 で し か な い 。」39と 言 わ れ る 。 さ ら に ,40 年 以 上 前 の 著 作 で サ イ モ ン は ,「 な ぜ , 行 政 活 動 の 測 定 を 行 う の か 。( 中 略 ) そ れ は 議 員 や 行 政 担 当 者 が 種 々 の 活 動 方 針 の 中 か ら 選 ぶ 際 の 実 際 的 必 要 に 役 立 つ 実 際 的 要 具 な の で あ る 。」40と 述 べ て い る 。し か し , 現 行 の 行 政 評 価 は , 行 政 の マ ネ ジ メ ン ト ツ ー ル と し て も , 市 民 へ の 説 明 責 任 を 果 た す た め の ツ ー ル と し て も 機 能 は 不 十 分 で あ る 。 内 部 の 自 己 点 検 活 動 で あ っ て も , 誰 も が わ か り や す く 取 り 組 め る こ と は 重 要 で あ る 。 行 政 職 員 に と っ て も 市 民 に と っ て も , 十 分 な 情 報 提 供 が あ る こ と を 前 提 と し て , 一 般 の 常 識 的 感 覚 を も っ た 人 が 見 て , 分 か っ て , そ し て 議 論 に 参 加 で き る 評 価 シ ス テ ム で な け れ ば , 使 い こ な す こ と は 難 し い と 言 え よ う 。 3 9 上 山 信 一 監 訳 ・ 監 修 「 行 政 評 価 の 世 界 標 準 モ デ ル 」 2 0 0 1 年 東 京 法 令 , 4 頁 。 4 0 サ イ モ ン , ハ ー バ ー ト ・ A , ク ラ レ ン ス ・ E ・ リ ド レ ー 「 行 政 評 価 の 基 準 ― 自 治 体 活 動 の 測 定 」 1 9 9 9 年 北 樹 出 版 , 27 頁 。