平 成29年 度(2017年 度)学 位 論 文(修 士)
人工衛星 搭載用過 酸化水素水貯蔵 タ ンクの 内圧制御 に関す る研 究
StudyonPressureControlofHydrogenPeroxideTankforSatellites
首 都 大 学 東 京 大 学 院
シ ス テ ムデ ザ イ ン研 究 科 シ ステ ムデ ザ イ ン専 攻 航 空宇 宙 シ ステ ム エ学 域
学 修 番 号16891534
氏 名 伴 野 眞優
指導教員 佐 原 宏 典 教授
平 成30年(2018年)1月26日
摘要
近 年,小 型 衛 星 利 用 の 活 発 化 に 伴 い,入 手性 ・取 扱 性 に優 れ た60wt%過 酸 化 水 素 水(以 下,60Wt%H202) を 用 い た 推 進 系 の 開 発 が 行 わ れ て い る.そ の 実 用 化 に 向 け た 課 題 の 一 つ に タ ン ク 内 圧 上 昇 問 題 が 存 在 す
る.プ ラ ダや 配 管 等 の60Wto/,H202Sff触 面 で は 自然 分 解 が発 生 し,そ の 割 合 は 数kPa/day,す な わ ち衛 星 運 用 期 間 相 当 で あ る2年 間 で2〜3MPa程 度 上昇 す る.こ れ は 噴 射 に 適 した 圧 力300〜600kPa(Abs)に 比 べ て遥 か に 大 きな 圧 力 で あ る .ほ どよ し1号 お よび3号 に お け る宇 宙 実 証 の 際 に は,タ ン ク を 圧 力 上 昇 に 耐 え る よ うに 頑 丈 に 作 る こ とで 解 決 した が,軽 量 化 が 求 め られ る衛 星 搭 載 機 器 と して 得 策 とは 言 え な い.ま た,気 体 酸 素 が60wtO/,H202に 混 ざっ て ス ラス タ に 送 られ る こ と に よ る推 進 性 能 の 悪 化 も確 認 され て い る.こ れ らの こ とか ら,タ ン ク内 圧 制 御 手 法 が 求 め られ て い る.先 行 研 究 と して,チ ュ ー ブ の 気 体 透 過 性 を 用 い た 新 手 法 を 提 案 して お り,そ の 初 期 検 討 と して 行 わ れ た シ ミュ レー シ ョ ン の 結 果 で は,外 径 1/4イ ン チ のPFAチ ュー ブ1,25mを タ ン ク に 取 り付 け る こ とで 噴 射 に 適 した300〜600kPa(Abs)に 内圧 を保 持 す る こ とが 可 能 で あ る こ とが 分 か っ た,し か し,そ の 実 証 実 験 を 行 っ た と こ ろ,シ ミュ レー シ ョ ン 結 果 に反 し,チ ュ ー ブ 取 付 タ ン ク は タ ン ク 単体 に 比 べ て 圧 力 上 昇 率 が 大 き くな っ た.こ れ は シ ミュ レー タ に 組 込 ん だ 線 形 式 に よ る圧 力 上 昇 予 測 で は 不 十 分 で あ る こ とを 意 味 す る,タ ン ク 内 圧 制 御 手 法 を 実 験 の み で検 討 す る に は 一 回 の 実 験 に 年 単位 の時 間 を 要す る た め,シ ミュ レー タ の 高精 度 化 が 求 め られ て い る.
以 上 の 背 景 よ り,本 研 究 の 目的 を以 下 の3点 とす る, 1.タ ン ク 内 圧 変 動 因子 の分 析
II.タ ン ク 内 圧 上 昇 の モ デ ル 化 III.タ ン ク 内 圧 上 昇 抑 制 手 法 の 再 検 討
タ ン ク内 圧 変 動 因 子 の 分 析 で は,主 な 因 子 は① 押 しガ ス の熱 膨 張 ・熱 収 縮,② 継 ぎ 手 な ど に お け る リー ク,③60wt%H202自 然 分 解,④ チ ュ ー ブ の 気 体 透 過 の4つ で あ る と考 え,各 因 子 が タ ン ク 内 圧 変 動 に 与 え る 影 響 の 大 き さ につ い て比 較 を 行 っ た,ま た,各 因 子 の特 徴 と して,り 一 ク 量 は リー クデ ィテ ク タ の 最 小 検 出値 以 下 で は 特 定 困 難 で あ る こ と,60WtO/・H202自 然 分 解 は 温 度 依 存 性 が あ る た め貯 蔵 温 度 を 制 御 す
る こ とで 分 解 に よ る酸 素 発 生 量 を 制御 可 能 で あ る と い うこ と,気 体 透 過 性 は チ ュ ー ブ の 諸 元(長 さ,厚, 径,材 質 〉 を 変 え る こ とで透 過 量 を 自由 に 操 作 可 能 で あ る こ とが 挙 げ られ た,
タ ン ク内 圧 上 昇 の モ デ ル 化 で は,タ ン ク 内圧 変 動 因 子 分 析 で 得 た 知 見 を も とに,タ ン ク単 体 の 内 圧 変 動 及 び チ ュ ー ブ 単 体 の 内 圧 変 動 の モ デ ル 化 を行 っ た,各 モ デ ル を 表 す 数 式 を 基 本 式 と した シ ミ ュ レー タ を 構築 し,そ の シ ミ ュ レー タ の 妥 当性 を 示 す た め に 比 較 実 験 を行 っ た と こ ろ,実 験 値 とシ ミュ レー シ ョ ン結 果 の 平 均 誤 差 は ど ち ら も 数%程 度 と非 常 に 良 く一 致 した,
タ ン ク内 圧 上 昇 抑 制 手 法 の 再検 討 で は,変 動 因 子 分 析 を も と に 「低 温 貯 蔵 」 と 「チ ュー ブ の 気 体 透 過 性 を 利 用 した 手 法 」の 二 種 類 が 考 え られ,各 手 法 に つ い て シ ミュ レー シ ョ ン を行 った.低 温 貯 蔵 の シ ミュ レ ー シ ョ ン結 果 で は
,タ ン ク周 りを5℃ 以 下 に す る こ とで15年 程 度 の 期 間,噴 射 に適 した圧 力300〜600 kPa(Abs)に 保 つ こ とが で き る こ とが分 か っ た,チ ュー ブ の気 体 透 過 性 を利 用 した 手 法 の シ ミュ レー シ ョ
ンで は,1/8イ ン チ のPFAチ ュ ー ブ を2m取 り付 け,さ らに気 液 分 離 率98%以 上 の 気 液 分 離 機 構 を 取 り付 け る こ とで,2年 間 噴 射 に適 した 圧 力 に タ ン ク 内 圧 を保 つ こ とが 可能 で あ る こ と を 示 した,
た だ し,微 小 重 力 下 で 気 液 分 離 率98%を 実 現 す る方 法 は 未 だ 見 つ か っ て お らず,そ の 実 現 に 向 け た 研 究 開 発 が 今 後 の 課 題 で あ る,ま た,新 規 に 気 液 分 離 機 構 の 開発 を 行 うに は 時 間 を要 す る た め,低 温 貯 蔵 と チ ュ ー ブ の 利 用 の 二 手 法 を ハ イ ブ リ ッ ドで 組 み 合 わ せ,実 現 性 の 高 い 手 法 を 提 案 す る こ と も今 後 の 課 題 とす る.
目次
論景序背
章U
1第
1.1.1超 小 型 衛 星 と そ の 推 進 系 の 動 向
1.1.260wtO/・H202推 進 系 の タ ン ク 内 圧 上 昇 問 題
1.2目 的
222﹁﹂4.
第2章 過酸化水素水貯蔵タンク概要
2.160WtO/,H202一 液 式 推 進 系 2,2過 酸 化 水 素 水
2,3タ ン ク
2.4樹 脂 製 チ ュ ー一ブ 2.5タ ン ク 内 圧 制 御
ノ0/07'0ノ
11 12
第3章 タ ン ク内 圧 変 動 因子 分 析
3,1タ ン ク 内 押 しガ ス の 熱 膨 張 ・熱 収 縮 3.2継 手 や タ ン ク 蓋 に お け る リ ー ク 3,3接 触 面 に お け るH202自 然 分 解 3,4樹 脂 製 チ ュー ブ の 気 体 透 過 性 3.5圧 力 変 動 因 子 分析 ま と め
445︽げ門101且‑且‑11且‑う4
第4章 タ ン ク 内 圧 の モ デ ル 化
4.1タ ン ク 単 体 の 内圧 モ デ ル とそ の 妥 当性 検 証
4.1.1モ デ ル 化
4.1.2検 証
4.2チ ュ ー ブ 単 体 の 内圧 モ デ ル とそ の 妥 当性 検 証
4,2,1モ デ ル 化
4,2,2検 証
222﹂477'(U2222自∠う白り﹂
第5章 タンク内圧上昇抑制手法の再検討
5,1概 要
5,2低 温 貯 蔵 に よ る 内圧 上 昇 抑 制
5.3チ ュ ー ブ の気 体 透 過 性 を 用 い た 内 圧 上 昇抑 制
44F⊃﹁ノ心﹂︻﹂高﹂3
第6章 結 論
6.1結 論 6.2今 後 の 課 題
nUAUAU444
図 目次
図1‑1 図1‑2 図1‑3 図1‑4 図1‑5 図1‑6 図2‑1 図2‑2 図2‑3 図2‑4
Oneweb衛 星]) ASTROSCALEのELSA‑d2) SURREYのSNAP‑1MPS3) VACCOのHybridADNDelta‑V4)
樹脂製チューブの気体透過性を用いた圧力制御手法 チ ュー ブ 取 付 タ ン ク の圧 力 履歴
60wt・/。H20ユー 液 式 推 進 系 の 構 成 と仕 組 み 系 統 図(実 機 搭 載 用 の一 例)
図dAンンユユ体ンンユ験ユ体温温どユユ念H叩タタチチ気タタチ実チ低過低チチ概着弓16d121346め矧264づめ4唱d264づめ422333333444444445555555
図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図図
H202の 濃 度 に よ る 分 解 熱 と 蒸 発 潜 熱5)
推 進 剤 タ ン ク(a)タ ン ク 製 作 物,(b)タ ン クCAD図,(c)民 製 品 プ ラ ダ,(d)プ ラ ダ の 装 10
222244678
iumLeakDetector チ ュ ー ブ17) ク リ ー ク 箇 所
ク内圧上昇の時間履歴 一 ブ(① 満 充 填 時)内 圧 変 化
チ ュ ー ブ(②60wtO/.H20225m1充 填)内 圧 変 化
一 ブ(③ 気 体 酸 素満 充 填)内 圧 変 化 透 過 係 数 を 求 め るた め の フ ィ ッテ ィ ン グ
ク 内 圧 シ ミ ュ レ ー タ
Tl,T2に お け る タ ン ク 内 圧 上 昇 率XTaニ1.714 3日 目 の 合 せ 込 み(dvo2.Ta/dnニ17cc/day)
ク 内圧 の シ ミュ レー シ ョン結 果 と実 験 結 果 一 ブ 内 圧 シ ミ ュ レー タ
用 チ ュ ー ブ の 組 み 立 て
一 ブ 内 圧 の シ ミュ レー シ ョン結 果 と実 験 結 果
チ ュ ー ブ 内 圧 の シ ミュ レー シ ョン結 果 と実 験 結 果 く 酸 素 発 生 量 の減 衰 込 み 〉 気 体 混 入 時 の 噴 射(左1気 体 混 入 な し,右=気 体 混 入 あ り)
貯蔵
過 酸 化 水 素 水 の 沸 点 と凝 固 点S〕
低 温 貯 蔵 時 の シ ミュ レー シ ョン結 果
ほ ど よ し1号 の タ ン ク 周 辺 温 度(2014,ll,11〜2014.12.2)
一 ブ 取 付 タ ン ク
一 ブ 適 用 時 の シ ミ ュ レー シ ョ ン 結 果
1256889035679023456678911111112222223333333333
表 目次
表2‑1 表2‑2 表2‑3 表2‑4 表3‑1 表3‑2 表3‑3 表3‑4 表4‑1 表4‑2 表4‑3 表4‑4
60wt%H202特 †生8).̲..̲̲̲̲..̲...̲̲...̲̲̲.̲,7
改 良 版 タ ン ク の 諸 元̲̲̲̲̲̲.̲̲̲̲̲̲.̲.̲̲̲̲̲.̲̲̲̲̲̲.̲̲̲̲̲̲.̲̲II チ ュ ー ブ の 気 体 透 過 性1η.,.̲̲..̲̲.̲...̲....̲...,一̲̲̲̲̲.̲̲̲̲̲.̲12 PFAチ ュ ー ブ 諸 元19}.,12
押 し ガ ス の 熱 膨 張 ・ 熱 収 縮̲̲̲̲̲̲、̲̲̲̲̲̲,̲̲̲̲.̲.,̲.̲...̲̲14
自 然 分 解 率 測 定 実 験(タ ン ク1,タ ン ク2共 に 同 条 件)̲̲̲̲̲̲.̲̲̲̲̲̲̲.̲.16
チ ュ ー ブ 気 体 透 過 性 評 価 の 実 験 条 件.̲..̲....,̲一 一,一..̲.̲̲.̲̲̲.̲̲一....17 各 内 圧 変 動 因 子 の 圧 力 変 化 お よ び 気 体 変 化 量,,..̲.,21
タ ン ク 内 圧 モ デ ル 式 の 文 字̲̲̲̲̲̲,̲̲̲̲̲̲..̲̲̲̲̲̲...̲..̲.̲...̲̲̲̲22 タ ン ク 内 圧 シ ミ ュ レ ー シ ョ ン の 入 力 値̲̲̲̲̲̲,̲̲̲̲̲̲,̲̲̲̲̲̲,̲̲̲̲.26
チ ュ ー ブ 内 圧 モ デ ル 式 の 文 字̲...一 一一一.̲.28
チ ュ ー ブ 内 圧 シ ミ ュ レ ー シ ョ ン の 入 力 値̲̲...̲̲..31
第1章 序 論
1.1背 景
1.1.1超 小 型 衛 星 とそ の 推 進 系 の 動 向
近 年,超 小 型 衛 星 の 技 術 発 展 に 伴 い,多 種 多 様 な 超 小 型 衛 星 の 利 用 方 法 が 提 案 さ れ て お り,ビ ジ ネ ス 化 も 進 め られ て い る.OneWeb,SpaceX,Googleな ど が 進 め る 全 世 界 対 象 の 衛 星 イ ン タ ー ネ ッ トサ ー ビ ス や 画 像 提 供 サ ー ビ ス,ASTROSCALEが 進 め る デ ブ リ除 去 サ ー ビ ス の 構 想 な ど が そ の 一 例 で あ る(図1‑1,図1‑2).こ れ ら の ミ ッ シ ョ ン に は,コ ン ス テ レ ー シ ョ ン や ラ ン デ ブ ・ ド ッ キ ン グ な ど の 技 術 が 用 い ら れ,軌 道 制 御 手 段 を 必 要 と す る,し か し,従 来 使 わ れ て き た 推 進 系 の 多 く は ヒ ドラ ジ ン を 主 成 分 と し て 用 い た 推 進 剤 が 多 く,非 常 に 毒 性 の 強 い 推 進 剤 で あ る こ と か ら,超 小 型 衛 星 を 開 発 す る 新 規 参 入 企 業 や 大 学 に と っ て,非 常 に 取 扱 い の 難 し い も の で あ っ た,そ こ で,低 毒 性 推 進 剤 を 用 い た 推 進 系 の 開 発 が 世 界 各 国 で 盛 ん に 行 わ れ て い る.そ の 例 と し てSURREY社 の マ イ ク ロ サ ッ トSNAP‑1に 搭 載 さ れ たMPS3}(MicroPropulsionSystem,図1‑3)やVACCO社 製 の HybridADNDelta‑V̀)(図1‑4)な ど が 挙 げ られ る.MPSで は イ ソ ブ タ ン を 推 進 斉1」と し て 使 っ て お り,比 推 力 は 小 さ い が 入 手 性 は 良 い,ま た,HybridADNDelta‑Vは 推 進 剤 と し て ア ン モ ニ ウ ム ジ ニ ト ラ ミ ド(NH4N(NO2)2,以 下ADN)を 使 っ て お り,比 推 力 は 良 い が 入 手 性 は イ ソ ブ タ ン に 比 べ る と 劣 る.そ こ で,当 研 究 室 で は こ の 二 つ の 間 で あ る 「性 能 は そ こ そ こ で 入 手 性 の 良 い 推 進 剤 」 で 超 小 型 衛 星 向 け 推 進 系 を 作 る こ と が で き れ ば 需 要 が あ る と 考 え て い る.な お,近 年 で は 推 力 は 小 さ い が 効 率 の 良 い 電 気 推 進 の 流 行 に 伴 い,時 間 を か け て 軌 道 変 更 を 行 う 手 段 も使 わ れ て い る が,ド ッ キ ン グ 時 な ど 短 時 間 で 比 較 的 大 き な 推 力 を 得 る 需 要 に 対 し て 適 用 で き な い.
一 一磐̀齢
i㌔コ ・t
晦
一一︑一
図1‑10neweb律f星1}
『 一 一一
図1‑2ASTROSCALEのELSA‑dユ)
//11
桝 「'ぺ
し,
も,.菰 ・・ 冒 馴 ゴ
図1‑3SURREYのSNAP‑IMPS3} 図1‑4VACCOのHybridADNDelta‑V4)
取 扱 性 と性 能 を あ る 程 度 両 立 させ よ う とす る と き,当 研 究 室 で 考 え た の は60wt%過 酸 化 水 素 水 (以下60wtO/・H202)で あ る.H202は,高 い 濃 度 の も の が 当 初 よ り低 毒 性 推 進 剤 と して 次 世 代 型 ロ ケ ッ ト向 けて 使 わ れ て き た が,あ ら ゆ る不 純 物 が 引金 とな り意 図 せ ぬ タ イ ミ ン グ で 爆 発 的 分解 反 応
を起 こ し得 る た め,事 故 の 多 い 危 険 な 推 進 剤 で あ る とい う印 象 を持 た れ る傾 向 に あ る.し か し,約 65wt%以 下 の 濃 度 を採 用 す る こ とで 分 解 熱 が 蒸 発 潜 熱 よ り小 さ くな る5に とか ら,タ ン ク 内 で の 爆 発 的 な異 常 分 解 の 危 険 性 が極 め て 低 くな る,ま た,工 業 用 と して 一 般 に 入 手 可 能 で あ る こ とか ら, 世 界 中 の射 場 で 現 地 調 達 し充 填 ・排 出 作 業 を 行 うこ とが 可 能 と な る,さ らに,触 媒 に接 触 させ るだ け で60wtO/。H202は 分 解 し,触 媒 の予 熱 は不 要 で あ る.性 能 は推 力0.3N程 度(押 し圧 に よ り値 は 前 後 す る),比 推 力70秒 程 度 と想 定 され,噴 射 性 能 は そ こ そ こ で,入 手 性 ・取 扱 性 が 非 常 に 良 く,省 電 力 の推 進 系 で あ るた め,衛 星 開 発 を行 う大 学 や 新 規 参 入 企 業 に適 した 推 進 系 と して 需 要 が 見 込 ま れ て い る,本 研 究 室 で は 一 液 式 推 進 系 と,60wt・/。H202の他 にエ タ ノ ー ル を 用 い た 二 液 式 推 進 系 の 開 発 を行 っ て い る,一 液 式 推 進 系 は ほ どよ し3号,ほ ど よ し1号 に搭 載 して 宇 宙 実 証 を行 っ て お り, 軌 道 上 で の推 力 発 生 に成 功 して い る,し か しな が ら,そ の推 力 は設 計 推 力 を 下 回 っ て お りll),そ の 原 因 は供 給 系 統 の 問 題 で あ る と考 え て い る ①.供 給 系 統 の 問題 に 関 して は 次 項 で 説 明 す る.二 液 式
推 進 系 は 地 上 試 験 モ デ ル の 安 定 燃 焼 に 向 け て研 究 開発 中 で あ る ゆ.
1.1.260wtO/.H202推 進 系 の タ ン ク 内 圧 上 昇 問 題
60wtO/。H202推 進 系 の 課 題 と して,タ ン ク内 圧 上 昇 問題 が残 され て い る.前 述 の 通 り,60wt%に 希 釈 す る こ とで 貯 蔵 中 の 加 速 的 な 異 常 分 解 を 回 避 で き る も の の,タ ン ク 内圧 の 一 次 関 数 的 な 上 昇 は 確 認 され て い る.そ の 割 合 は,タ ン ク内 の 充填 割 合 に も依 存 す る が,お お よそ 数kPa/day,す な わ ち 超 小 型 衛 星 の 運 用 期 間 と して代 表 的 な2年 間 で2〜3MPa上 昇 す る とい う割 合 で あ る こ とが 確 認 さ れ て い る 恥.従 来 の 解 決 方 法 と して は,そ の 内圧 上 昇 に耐 え られ る よ う頑 丈 で 重 い タ ン ク を 採 用 す
る こ とで 安 全 性 を保 っ て き た が,重 星制 限 が 極 め て 厳 しい 超 小 型 衛 星 に とっ て,タ ン ク を頑 丈 に す る こ とに よ る 解 決 は 適 して い な い.タ ン ク を 頑 丈 に 作 り安 全 性 を確 保 した と して も,ス ラ ス タ の 噴 射 に適 した圧 力 は300kPa〜600kPa(Abs)6)で あ り,タ ン ク 内 圧 の 増 加 は プ ラ ダ 内 の 気 液 混 合 状 態 を=招くた め,噴 射 性能 の 悪 化 を 引 き起 こす こ と も確 認 され て い る(付 録B),ま た,ほ ど よ し3号 に よ る軌 道 上 実 証 で は 逆 に タ ン ク内 圧 の 低 下 に よ り所 定 の 噴 射 性 能 が 出 せ て お らず,こ の 原 因 は, 押 しガ ス 系 統 の配 管 に 樹 脂 製 チ ュー ブ を 用 い た た め,そ の 気 体 透 過 性 に よ り押 しガ ス で あ るヘ リウ
ム が外 に逃 げ て い る の で は な い か と考 え られ て い る.な お,こ の推 測 に つ い て は 簡 易 計 算 に よ り リ ー ク 量 とチ ュ ー ブ 表 面 にお け る透 過 量 の オ ー ダ ー が 一 致 して い る こ と が確 認 され て い る .こ の よ う に,衛 星 運 用 期 間2年 の 問,噴 射 に適 した圧 力300〜600kPa(Abs)程 度 に な る よ うに 押 しガ ス を 保 っ こ と に非 常 に 苦 戦 して お り,衛 星 搭 載 に 向 け て 長 期 的 なH202貯 蔵 タ ン ク の 内 圧 制 御 手 法 を確
立 す る こ と が急 務 とな っ て い る,そ こで,本 研 究 で は60wtO/。H20ユ 推 進 系 の 安 全 性 お よび 所 定 性 能 の 達 成 を 可 能 とす る タ ン ク の 実 現 に 向 け て,タ ンク 内圧 制 御 手 法 の 提 案 と検 証 を 目標 とす る,
先 行 研 究 と して,チ ュ ー ブ の 気 体 透 過 性 を 用 い た 圧 力 制 御 手 法 を 提 案 し(特 開2017‑140875),初 期 検 討 を行 っ て い る612).従 来 の 大 型 衛 星 の推 進 系 タ ン ク や 地 上 で の 貯 蔵 タ ン クで は 調 圧 弁 や 逃 し 弁 を使 用 す る 方法 が 用 い られ て き た が,調 圧 用 の 高 圧 ガ ス タ ン ク を 取 り入 れ る こ とは 搭 載 容 量 と重 量 に お い て 特 に厳 しい 制 限 が 課 せ られ る超 小 型 衛星 に は 適 して お らず,さ らに,逃 し弁 は微 小 重 力 ドで は 気 液 混 合 状 態 とな る た め気 体 の み を外 に 逃 す こ とは 困 難 で あ る.一 方,本 研 究 で提 案 す る 手 法 で は,図1‑5に 示 す よ うに タ ン ク か らス ラス タ ま で の 配 管 ま た は そ こ か ら枝 分 か れ した 樹 脂 製 チ ュー ブ に タ ン ク内 で発 生 した 酸 素 を送 り,そ こ で樹 脂 の 気 体 透 過 性 を用 い て 酸 素 を 外 に 逃 が す こ と で 供 給 系 全 体 と して の 圧 力 上 昇 を抑 制 す る とい う仕 組 み で あ る た め,省 スペ ー ス 化 ・軽 量 化 ・微 小 重 力 下 で の 適 応 性 の 全 て に お い て 優 れ た 手 法 で あ る と考 え る,な お,こ の 手 法 は,前 述 の 通 りほ ど
そ の初 期 検 討 と して 行 わ れ た シ ミュ レL‑・一一シ ョ ン の結 果 で は,外 径1/4イ ン チ のPFAチ ュー ブ1.25 mを タ ン ク に取 り付 け る こ とで噴 射 に 適 した300〜600kPa(Abs>に 内 圧 を保 持 す る こ と が 可 能 で あ る こ と が 分 か っ た,し か し,そ の 実 証 実 験 を行 っ た と こ ろ,シ ミュ レー シ ョン 結 果 に反 し,チ ュ ー ブ 取 付 タ ン ク は タ ン ク単 体 に比 べ て圧 力 上 昇 率 が 大 き くな っ た(図1 ‑6参 照) ,こ の とき用 い た シ ミュ レー シ ョ ンで は,線 形 式 で 表 した酸 素 発 生 量 と,気 体 透 過 係 数 を用 い た 理 論 式 で 表 した チ ュ ー ブ 表 面 に お け る気 体 透 過 量 の2成 分 の み しか 考 慮 して い な い ,そ のた め,シ ミュ レー シ ョンに組 込 め て い な い 物 理 現 象 が シ ミュ レー シ ョ ン と実験 の相 違 を 生 ん だ の だ と考 え られ る,タ ン ク 内 圧 制 御 手 法 を 実験 の み で 検 討 す る に は 一 回 の 実 験 で 年 単位 の 時 間 を要 す る た め,こ の 相 違 を 埋 め,高 精 度 化 した シ ミュ レー タ を構 築 す る こ とに よ り,研 究 を 効 率 化 す る こ とが 求 め られ て い る,
気体発生 圧力上昇
N2 押 しガ ス
気体透過 圧力減少
発 生 ガ ス(Oz、'
タン ク
図1‑5樹 脂 製 チ ュ ー ブ の 気 体 透 過 性 を 用 い た 圧 力 制 御 手 法
80 75 70 65
冨6。
亀55 R50 出45 心40 ハ35 尽 ヨ0
チ ュー ブ な し
チ ュ ー ブ あ り 含
チ ュ ー ブ 開 放(バ ル ブOpen) 051015
時間 旧 】
図1‑6チ ューブ取付 タンクの圧力履歴
30 25 20一
15豊毬
10田 日 5囮辰
o
1.2目 的
本 研 究 で は,H202貯 蔵 中 の タ ン ク内 圧 上 昇 問題 に 対 し,「継 続 的 な タ ン ク内 圧 制 御 手 法 」 を 実 現 す る こ とを 目標 と し,以 下 三 点 の 目的 を 掲 げ る,
1.タ ン ク内 圧 変 動 因 子 の 分 析 Il.タ ン ク内 圧 の モ デ ル 化 III.タ ン ク 内圧 制 御 手 法 を 再 検 討
目的1タ ン ク 内 圧 変 動 因 子 の 分 析 に 関 して は,先 行 研 究 に て 実 験 と シ ミ ュ レー シ ョ ンの 相 違 が 生 ま
れ た原 因 と考 え られ る タ ン ク 内圧 変 動 因 子 を ピ ッ ク ア ップ し,各 因 子 の 内 圧 変 動 に 与 え る影 響 の 大 き さを 比 較 す る,因 子 分 析 は モ デ ル 化 に組 込 む 現 象 を取 捨 選 択 す る こ とが 主 な 目的 で あ るが,目 的 皿 に お い て も,因 子 分 析 に よ り得 られ た 知 見 に よ り各 変 動 因子 の 特 徴 をふ ま え て よ り良 い タ ン ク 内 圧 制 御 手 法 を 提 案 す る こ と を 可能 に す る と考 え る.
目的IIタ ン ク 内 圧 の モ デ ル 化 に 関 して は,目 的1で 把 握 した 主 な 内 圧 変 動 因 子 を 定 式 化 し,タ ン ク 内圧 の モ デ ル 化 を 行 う.そ れ を も と に,タ ン ク 内圧 の 時 間履 歴 を 求 め る シ ミ ュ レー タ の構 築 を 目 指 す.従 来 の線 形 式 に よ る酸 素 発 生 量 と理 論 式 に よ る気 体 透 過 量 の2成 分 のみ を考 慮 した シ ミ ュ レ ー シ ョン と比 較 して ,よ り高精度 なシ ミュ レー シ ョンを行 うこ とが可能 となれ ば,タ ンク 内圧 制御 手 法 の検 討 を シ ミ ュ レー シ ョン に よ り行 うこ とが 可 能 とな る,さ らに,実 際 に衛 星 搭 載 され 運 用 す る 際 に は,圧 力 計 故 障 時 な ど に お い て も 内圧 予 測 が 可 能 とな った り,ま た,軌 道 上 で の 異 常 事 態(異 常 温 度,バ ル ブ 閉 塞 等)に 備 え た ハ ザ ー ド分 析 を 行 う上 で も役 に 立 っ と考 え られ る,
目的 皿 タ ン ク 内圧 糊 御 手 法 の 再 検 討 に 関 して は,先 行 研 究 で 提 案 して い る樹 脂 製 チ ュ ー ブ の 気 体 透 過 性 を 用 い た 内圧 制 御 手 法 に 加 え,目 的1で 行 う因 子 分 析 の 知 見 を も と に さ らに 適 した 内圧 制 御 手 法 を模 索 す る,各 手 法 に つ い て,目 的Hで 構 築 した シ ミュ レー タ の み に よ り効 果 を検 証 す る,こ
の シ ミュ レー シ ョ ン結 果 よ り最 適 な 手 法 を選 び,今 後 実 験 で タ ン ク 内 圧 制 御 の 検 証 を行 う際 の 条 件 決 定 に役 立 て る,
第2章 過 酸 化水 素 水貯 蔵 タ ンク概 要
本 章 で は,次 章 以 降 の 前 提 知 識 と な る60wt%H202貯 蔵 タ ン ク の 概 要 を 説 明 す る.2.1節 で は, 60Wt・/eH202一 液 式 推 進 系 概 要 を,2.2節 で は60Wt・/,H202の 一一般 的 な 特 性 と 選 定 理 由 を,23節 で は
タ ン ク の 諸 元 と 設 計 基 準 を,2.4節 で は 配 管 に 用 い ら れ る 樹 脂 製 チ ュ ー ブ の 諸 元 や 特 性 に つ い て 述 べ る .25節 で は,先 行 研 究 と し て 進 め ら れ て き た タ ン ク 内 圧 制 御 手 法 の 仕 組 み や 原 理 に つ い て 説 明 す る,
2.160wt%H202一 液 式 推 進 系
本 研 究 で 対 象 と す る60Wte/。H202一 液 式 推 進 系 の 概 要 を 説 明 す る.図2‑1は60wtf}/・H202一 液 式 推 進 系 の 基 本 要 素 と 推 力 発 生 の 仕 組 み を 図 示 し た も の で あ る,主 に 供 給 系 と ス ラ ス タ の 二 っ で 構 成 され て お り,供 給 系 は そ の 名 の と お り推 進 剤 を 貯 蔵 ・供 給 す る 役 割 を,ス ラ ス タ は 推 力 を 発 生 させ る 役 割 を 担 っ て い る.タ ン ク の 中 に 貯 蔵 され て い る 推 進 剤(60wtO/。H202)は,電 磁 弁 が 開 く と タ ン ク 内 の 押 し ガ ス に 押 され て 配 管 を 通 り ス ラ ス タ ま で 送 ら れ る.ス ラ ス タ に はTheLeeCompany製 の 噴 霧 器(AtomizingNozzle,IAZA1200110K)が つ い て お り,ス ラ ス タ ま で た ど り 着 い た 推 進 剤 は チ ャ ン バ 内 の 触 媒 に 向 け て 噴 霧 され る.こ の と き,噴 霧 器 の 特 性 上,上 流 と 下 流 の 圧 力 差 に よ り 流 量 が 決 ま る た め,押 し ガ ス 圧 力 は 推 進 剤 流 量 の 決 定 に 大 き く影 響 を 与 え る14).推 進 剤 は 触 媒 に よ り 分 解 反 応 を 起 こ し て チ ャ ン バ 圧 は 上 昇 し,ス ロ ー トか ら ノ ズ ル を 通 り加 速 さ れ た ガ ス が 噴 射 され,推 力 を 発 生 す る.実 機 に 搭 載 す る 場 合 に は,図2‑2の 系 統 図 で 表 さ れ る よ うな シ ス テ ム に な る,タ ン
ク に は 内 圧 を は か る 圧 力 計 と タ ン ク 側 面 の 雰 囲 気 温 度 を は か る 熱 電 対 が 取 り 付 け ら れ る.配 管 は 押 し ガ ス 側 は 金 属 配 管,Hユ02側 は 樹 脂 製 チ ュ ー ブ を 採 用 す る,
タンク ブラダ
L‑一 一 一 一 一 」L‑「 一 供給系
ノズル
ス ラスタ
叫
図2‑160wt%Hユ02一 液 式 推 進 系 の 構 成 と仕 組 み
G、DP
G.ip
冊 ・[〉
呵 〉 ↑ぐ 一
;
図2‑2
ーIII﹂
㊤・AYL一一
1紛怯
,11贈 乙,,1牒 い 甥 、II:1
・。1跡f齢 占」藩 匡麟 ・」ヨ丸1
、㌧uユ1{、'‑Ei1、 唱・ZT.ifま
、7,UI 一L
̲コ ゴー̲ユ ニー..L‑一二 「 ≦ 齢
い ん
・一区 ト 区 ト
類 喉 鰹
し ぱ
・噸 頗 珊 一 髪一
‑IlIL﹁III﹂
ξ鼻 巨ご譲 貯1き
・一塾 坐 一け 至'1;垂苔
P。'1・1△PC・'1'ILts阻 ∠ い 刷 △
IHR‑1iTIIR・1ヱIIIR・Lr+IHR‑L4
系 統 図(実 機 搭 載 用 の 一 例)
2.2過 酸 化 水 素 水
60WtO/・H202の 特 性 に つ い て 説 明 す る.H202の 物 理 的 性 質 は 表2‑1に 示 す 通 り で あ る.凝 固 点 が 低 い こ と が60WtO/eH202の 特 徴 で あ る.H202は 一 般 に 水 で 薄 め た 水 溶 液 と して 利 用 され,3wt%水 溶 液 は 傷 の 殺 菌 消 毒 に 使 わ れ て い る オ キ シ ドー ル と し て 親 し ま れ て い る,H202の 特 徴 の 一 つ と し
て,H202自 体 は 安 定 で あ る が,不 純 物 の 混 入 や 容 器 の 表 面 状 態 に よ り 容 易 に 分 解 す る こ と が 挙 げ ら れ る,H202分 解 の 熱 化 学 方 程 式 は 式(2‑1)で 表 さ れ る,
表2‑160WtO/,H202特 性8)
H・0・=H・0+20・+96140[1]1 (2‑1)
外 観 匂 い 凝 固 点[。C]
沸 点[。C]
引 火 点 自然 発 火 点 比 重
無 色 透 明 の 液 体 特 有 の 刺 激 臭
一5e i19 な し な し 1.24(2sec)
特 に,触 媒 に 接 触 す る と激 し く分 解 し,高 温 の 水 蒸 気 と酸 素 を発 生 す る,こ の 性 質 を利 用 し一 液 式 推 進 系 の推 力 を得 る,H202の 触 媒 に は 二 酸 化 マ ン ガ ン,プ ラ チ ナ,酸 化 鉄,白 金,パ ラ ジ ウ ム, 酵 素 の 一 種 の カ タ ラー ゼ な どが 挙 げ られ る が,Hユ02は 不 安 定 な た め に た い て い の 物 質 が触 媒 と し て は た ら く.そ の た め,容 器 の 内 側 に微 量 で あ っ て も 不 純 物 が っ い た ま まH202を 入 れ て 貯 蔵 す る と,式(2‑Dの 化 学 反 応 が お き る.た だ し,洗 浄 した タ ン ク 内 に は わず か な が ら も 不 純 物 が 残 存 し, そ れ に よ る分 解 を本 研 究 で は 自然 分 解 と呼ぶ こ と とす る,ま た,不 純 物 が な く と も,容 器 に 凹 凸 部
熱 と分 解 熱 の グ ラ フ が 交 差 して い る こ と が 分 か る,65wt%以 上 の 濃 度 で は 分 解 反 応 に よ り液 温が 上 昇 し,そ の 温 度 上昇 に伴 っ て 分 解 反 応 速 度 が 上 が る た め,爆 発 的(加 速 的)分 解 反 応 が 起 き る の だ と考 え られ る,す な わ ち,63〜64wt%以 下 で あ れ ば 分 解 熱 が 蒸 発 潜 熱 よ りも小 さ く な るた め,反 応 が 加 速 度 的 に進 む こ と は な い と考 え られ る.
Self‑AcceleratedDecomposition
置已95角露﹄蓄嵩﹂費一εく6﹄離謹己曇Ω冨0蜘O葛●=
800 700
600
500
柵 鋤
200
100 0
0102030串OSO60708090100
/
』
『
/ 、
一一Hoo ofd■ 切mpo5轍 旧
■一H■ 醜ofv8pq砲8tめn
闘20z{加"t航io傷wt.瓢
図2‑3H202の 濃 度 に よ る 分 解 熱 と蒸 発 潜 熱5)
次 に,60WtO/,H202を 超 小 型 衛 星 搭 載 用 化 学 推 進 系 の推 進 剤 と して 採 用 した理 由 を確 認 す る.選 定 の ポ イ ン トは 以 下3点 で あ る.
1,低 毒 性
2.入 手 性,低 価 格 3.安 定 性
ま ず,毒 性 に つ い て は 従 来 の 宇 宙機 用 推 進 系 で 広 く使 わ れ て き た ヒ ドラ ジ ン と比 較 す る.H202は ヒ ドラ ジ ン に 比 べ 極 め て 毒 性 が 低 く,環 境 負 荷 低 減,製 造 ・取 扱 い お よび 射 場 で の 運 用 コ ス ト低 減 とい っ た 大 き な メ リ ッ トを もつ,ヒ ドラ ジ ンは 高 い 毒 性 を 有 して お り,ヒ ドラ ジ ン の 人 に 対 す る急 性 影 響 と して は 呼 吸 障 害,中 枢 神 経 抑 制 作 用,肝 障 害,腎 障 害 等 が あ り,誤 飲 に よ る死 亡例 が 報 告 され て い る.そ れ に対 し,H202は 高 濃 度 の もの が 皮 膚 に付 着 す る と痛 み を と も な う 白斑 が 生 じ る と い う症 状 が あ る が,水 で よ く洗 い 流 す 程 度 の 処 置 で 済 む.発 が ん 性 にお い て比 較 して も,国 際 が ん 研 究 機 関IARCの 発 が ん 性 分 類15}に よれ ば,ヒ ドラ ジ ン は グル ー プ2B「 ヒ トに 対 す る発 癌 性 が 疑 わ れ る(Possiblycarcinogenictohumans)物 質 」 に 分 類 され る の に 対 して,H202は グ ル ー プ3「 ひ とに 対 す る発 が ん 性 が 分 類 で き な い(NotClassifiableastoitsCarcinogenic>物 質 」 と1ラ ン ク 下 の 分 類 に な っ て い る.各 薬 品 の 取 り扱 い に お い て も,ヒ ドラ ジ ン で は 防 護 服 を身 に 纏 うな どの 重 装 備 に加 え 有 毒 ガ ス モ ニ タ が 必 要 で あ る が,Hユ0ユの 場 合 は ゴ ム 手 袋 と保 護 め が ね な どの 軽 装 備 で よ い た め,運 用 性,取 り扱 い性 が 圧 倒 的 に 向 上 す る,2.1.1項 の 式(2‑1)か ら も分 か る とお り,反 応 に よ る 生 成 物 が 水
と酸 素 の み で あ る点 に 関 して も,非 常 に 環 境 に も人 に も優 しい 推 進 剤 で あ る.
ま た,近 年 低 毒 性 推 進 剤 と し て 注 目 され て い る 硝 酸 ヒ ド ロ キ シ ル ア ン モ ニ ウ ム(HAN:
NH30HNO3)と 比 較 す る と,入 手性 の 面 で 優 れ て い る,HAN系 推 進 剤 は安 定 した 燃 焼 が 困 難 で 高 温 ・高 圧 環 境 下 で 激 し く燃 焼 す る とい った 問題 点 か らHANに 安 定 化 させ るた め の 物 質 を 添加 す る 必 要 が あ る,す な わ ち市 販 品 を そ の ま ま推 進 剤 と して 用 い る こ とは で きな い,一 方 で60WtO/,H20ユ で あれ ば安 定 剤 も含 まれ た 市 販 品 が 世 界 中 ど こ で も安 価 で 手 に 入 る.射 場 が ど こ で あ っ て も,推 進 剤 を現 地 で 調 達 して 充 填 す る こ とが 可能 な の で あ る,こ の こ とに よ り,海 外 か ら打 ち 上 げ る際 に 最 大 の 問 題 と な る推 進 剤 輸 送 の 安 全 審 査 を省 く こ とが で き る,短 期 開 発 が 利 点 の 小 型 衛 星 に と っ て,
打 ち 上 げ ま で の 手 間 が 少 な くす む こ と は 大 き な メ リ ッ トで あ る.
最 後 にH202の 安 定1生 に つ い て は,60WtO/,H202で あ れ ば 分 解 熱 よ り も 蒸 発 潜 熱 の 方 が 大 き い と い う理 由 か ら加 速 的 な 反 応 は 抑 え られ る た め,貯 蔵 性 に 優 れ て い る,さ ら に 安 定 剤 が 入 っ て い る こ と か ら よ り安 全 性 が 増 し て い る.古 く か らH202を 利 用 し た 化 学 推 進 の 研 究 開 発 が 行 わ れ て き た が, 爆 発 事 故 等 が 相 次 ぎ 近 年 で はH202の 利 用 は 避 け られ て い た16),し か し,こ れ ら の 推 進 系 で 用 い て い たH202は70〜99%と 高 濃 度2⑪)であ っ た た め に 爆 発 事 故 が 起 き た の で あ っ て,今 回 使 用 す る60wtO/。
の 中 濃 度 で あ れ ば そ の 危 険 性 は 極 め て 少 な い と 考 え ら れ る.な お,本 研 究 室 で は タ ン ク 内 に 60wtO/,H202を 充 填 す る 際 に は,容 器 の 「枯 ら し」 と い う作 業 を 行 っ て い る,「 枯 ら し」 と は,容 器 内 を 蒸 留 水 で 数 回 す す い だ 後,60WtO/。H202を 充 填 し て 二 週 間 ほ ど 放 置 し て お く こ と で,容 器 と 60wtO/。H202の 反 応 が 弱 ま る こ と が 確 認 され て い る.「 枯 ら し 」 を 行 い,反 応 速 度 を 小 さ く す る こ と
も タ ン ク 内 貯 蔵 の 安 全 性 向 上 の 手 段 で あ る と 考 え て い る.
2.3タ ン ク
本 研 究 で 対 象 とす る60wt%H202一 液 式 推 進 系 の推 進 剤 供 給 方 式 は ブ ロー ダ ウ ン方 式 を 採 用 して い る.そ の た め,タ ン ク の 役 割 は 推 進 剤 で あ る60wtO/。H202の 貯 蔵 と押 しガ ス の 貯 蔵 の 二 っ で あ る.
充 填 可能 な 推 進 剤 の 容 量 は タ ン ク 容 量 の8分 の5程 度 で あ る,残 りの8分 の3に は 押 しガ ス が 充 填 され る,推 進 剤 と押 しガ ス の 充 填 容積 比5:3は,60wtO/。H202を 用 い た 本 推 進 系 の 開 発 を して き た 中 で,実 験 か ら最 適 な割 合 を 模 索 し,決 め た も の で あ る.
推 進 剤 で あ る60wtO/。H202は 金 属 タ ン ク の 中 に 直接 充 填 せ ず に,プ ラ ダ を タ ン ク内 に 装 着 して そ の 中 に60wtO/。H202を 充填 す る.押 しガ ス は プ ラ ダ の 外 に 充 填 す る,高 圧 の押 しガ ス が プ ラダ を押 す こ とで,60wtO/,H202を ス ラ ス タ まで 供 給 す る こ とが 可 能 とな る.ま た,軌 道 上 で は 微 少 重 力 環 境 に な るた め,同 じ空 問 に 気 体 と液 体 が 共 存 す る場 合,気 体 と液 体 が 混 合 して しま うが,プ ラダ に よ り押 しガ ス と推 進 剤 が わ け られ て い る た め そ の 恐 れ は な い.プ ラ ダ の製 作 は成 形 加 工 に よ り製 作 費 用 が 高 価 とい う問 題 点 が あ る た め,安 価 で 且 っ 強 度,耐 触 性,耐 薬 品性 に優 れ た 民 生 品 プ ラ ダ を採 用 す る 力.
タ ン ク本 体 に 関 して は 以 下 の5点 の 要 求 を満 た す うよ うに 設 計 され て い る.図2‑4に 推 進 剤 タ ン ク の 製 作 物 の側 面 図(a)お よびCAD図 の側 面 図(b),ま た タ ン ク 内 に 装 着 す るプ ラ ダ(c)と装 着 概 念 図 (d)を,表2‑2に タ ン ク の 諸 元 を示 す.
<要 求>
1.最 大 予 想 使 用 圧 力(MEOP=maximumexpectedoperatingpressure)2MPaと す る た め に,安 金 率 L5を か け た 内 圧3MPaに 耐 え ら れ る こ と,
2,外 部 リ ー ク(押 し ガ ス や60wt%H202が 本 体 と 蓋 の 隙 間 か ら 流 出)が1,0×10'5scc訴 未 満 で あ る こ と,
3.内 部 リ ー ク(プ ラ ダ の 内 外 で 通 じ 合 う)が1.0×10'Ssccs未 満 で あ る こ と.
4,タ ン ク 内 に 民 生 品 プ ラ ダ を 装 着 可 能 か つ 推 進 剤 の 重 量 で プ ラ ダ の 口 が 滑 り 落 ち る こ と の な い こ と,
5.60wto/・H202で 反 応 し な い(60wto/。H20ユ の 触 媒 と な ら な い)材 料 を 用 い る こ と9).
※sccs… 流 量 の 単 位,standardcc/sec,1atm(大 気 圧1013hPa),25℃
(a) (b) 210mm
一'〆ピ
(c)
■■■■ ■圏 璽寧 へ 胤
■ ■
(d)
濫
,、,嶺̀、
f
ノ き 一
戸
」
図2‑4推 進 剤 タ ン ク(a)タ ン ク 製 作 物,(b)タ ン クCAD図,(c)民 製 品 プ ラ ダ,(d)プ ラ ダ の 装 着 概 念 図
要 求1に 関 し て は 著 者 の 卒 業 論 文6)で 強 度 解 析 を 行 っ て い る た め そ ち ら を 参 照 し て ほ し い,要 求 2に 関 し て は 押 し ガ ス 側,推 進 剤 供 給 側 の 各 面 で 樹 』脂 製0リ ン グ2つ,メ タ ル0リ ン グ1つ に よ る3シ ー ル を 施 す こ と で,リ ー ク を 抑 え て い る.タ ン ク 製 作 会 社 で は 完 成 後,各 面1つ の 樹 脂 製0
リ ン グ で リー ク 試 験 を 行 い 要 求 流 量 以 下 で あ る こ と を 確 認 済 み で あ る.要 求3に 関 し て は,プ ラ ダ を タ ン ク の 口 に0リ ン グ で 押 し 当 て る こ と に よ り リー ク を 防 ぐ仕 組 み で あ る.こ の 方 法 に よ り 要 求4も 満 た す こ と が で き る.要 求5に 関 し て は,60wto/・H202と の 相 性9}と 強 度19)を 両 立 す るA5056‑
Hl12を タ ン ク 本 体 に,SUS316Lを タ ン ク 蓋 に 採 用 す る,強 度 に 関 し て はNASAに よ るMFSC‑STD‑
3029REV.AL9}を 判 断 基 準 と し て お り,SUS304は 応 力 腐 食 割 れ に 高 耐 性 を 有 す る こ と が 認 め ら れ て い る.ア ル ミニ ウ ム5000Seriesに つ い て は,高 マ グ ネ シ ウ ム 含 有 の も の はHl11,Hl12な ど の 処 理 を す べ き で あ る こ と が 記 され て い る.A5056の 成 分 はSi=O.30,Fe=O.40,Cu=O.10,Mn;O.OS〜O.2,
Mg=4.5・ ・5.6,Cr=0.05‑O.20,Zn=O.IOで あ る こ と か ら,マ グ ネ シ ウ ム45〜5.60/,と 高 含 有 率 で あ る た め,A5056HIl2を 採 用 し て い る.60wto/。H20ユ と の 相 性 が 良 い こ と と は,60wt%H202が そ の 物 質 に 触 れ る こ と に よ り 分 解 反 応 が 起 き な い こ と,そ の 物 質 が 腐 食 され な い こ と を 示 し て い る.
要 求2,3の リー ク に 関 し て は,本 研 究 室 で 定 め る 許 容 リー ク 量 を1.OXIO'5sccs未 満 と し て 供 給 系 の 組 み 立 て 時 に は 必 ず 毎 回 リ ー ク チ ェ ッ ク を 行 う よ う に し て い る.当 研 究 室 で 所 有 す るRESTEK 社 製HeliumLeakDetectorを 図2‑5に 示 す.最 小 で1.0×10'5sccsの ヘ リ ウ ム ガ ス を 検 出 す る こ と が で き る.
表2‑2改 良 版 タ ン ク の 諸 元 重 量
サ イ ズ
タ ン ク容 量(1本 当 た り) 推 進 剤 搭 載 可 能 量(1本 当 た り) 最 大 使 用 圧 力
耐 圧 試 験
kg mm
CC CC MPa MPa
1.7 φ100×L210
1150 720
2.0 3.0
幽
'
「
図2‑5HeliumLeakDetector
2.4樹 脂 製 チ ュ ー ブ
60wt%H202一 液 式 推 進 系 で は 樹 脂 製 チ ュ ー ブ を配 管 と して 採 用 して い る.採1・H理由 を以 下 に3点 示 す.
<採 用 理 由>
1,タ ン ク との 接 続 部 な ど,振 動 に よ る応 力 集 中 が 避 け られ る こ と, 2,耐 薬 品 性 に優 れ て い る こ と.
3.タ ン ク内 の 圧 力 上 昇 の 抑 制 が 期 待 で き る こ と,
採 用 理 由1の 背 景 に は,過 去 に 製 作 した金 属 配 管 を 用 い た 供 給 系 の 試 験 モ デ ル の 失 敗 が あ る.
そ の 失 敗 は,振 動 試 験 実 施 時 に タ ン ク の 溶 接 箇 所 が破 断 した こ とで あ る.樹 脂 製 の フ レキ シ ブル チ ュ ー ブ を 代 用 す る こ と で,振 動 に よ る接 続 部 の応 力 集 中 が 最 低 限 に抑 え られ る こ とが 期 待 で き
る.採 用 理 由2に っ い て は,フ レキ シ ブル チ ュー ブ の 中 で も耐 薬 品性 に優 れ て い るPFAチ ュ ー ブ (図2‑6)やFEPチ ュー ブ を 使 用 す る こ とが 適 切 だ と考 え られ る,PFAもFEPも ど ち ら も フ ッ素 樹 脂 で あ り,非 常 に似 た 性 質 を持 つ,FEPで も十 分 に要 求 性 能 を満 たす が,PFAに は 高 温 下 で も 耐 薬 品 性 が 良 い こ と,極 低 温 か ら高 温 まで 強 靭 さ と柔 軟 さ を保 っ な ど の メ リ ッ トを有 す る18),採 用 理 由3に 挙 げ られ る タ ン ク 内 圧 上 昇 の 抑 制 に っ い て は,樹 脂 製 チ ュー ブ表 面 の 気 体 透 過 性 を 利 用 す る こ とが 可 能 で あ る た め で あ る.配 置場 所 と して は,系 統 図(図2‑2)の 点線 で 示 され た 部 分
(60wtO/,H202の 流 路)で あ る.
本 研 究 で 対 象 と して い る推 進 系 は民 生 品 を 用 い る こ とで低 価 格 化 を 目指 して い る た め,チ ュ ー ブ も 市 販 品 を採 用 す る,本 研 究 で 用 い る株 式 会 社 潤 工 社 製PFAチ ュ ー ブ の 諸 元 を表2‑4に 示 す.な お,本 研 究 で は チ ュー ブ の 気 体 透 過 性 も注 目す べ き パ ラ メ ー タ の 一 つ で あ る が,製 造 及 び 販 売 を 行
う各 祉 が 公 開 す るチ ュ ー ブ の 気 体 透 過 係 数 は 異 な っ て い る.株 式 会 社 潤 工社 に よ るPFAチ ュ ー ブ の 気 体 透 過 係 数 の 公 開 は 無 か っ た た め,ダ イ キ ン 工業 株 式 会 社 が 公 開す る気 体 透 過 係 数 を 表2‑3に
表2‑3チ ュ ー ブ の 気 体 透 過 性t7}
PFAチ ュ ー ブFEPチ ュー ブ
素素窒酸 1.4x10‑8
4.8x10‑8
1.2×10‑8 3.7×10‑8
示 す, 図2‑6PFAチ ュ ー ブ17}
単 位=cm^3・ 。m/。m^2・s・atm
表2‑4PFAチ ュ ー ブ 諸 元L9〕
部品番号 チューブ寸法
mmXmm
破 壊 圧 力 MPa
最 高使 用 圧 力 MPa
最小 曲げ半径
mm
TA1/8G TA1/4G
3.18×1.65 6.35×3.96
=﹂06
0アrO
〈2.3
<L6
nU(U‑りρ
2.5タ ン ク 内 圧 制 御
60Wt・/。Hユ02一液 式 推 進 系 の 供 給 方 式 は ガ ス 加 圧 式 の 一 つ で あ る ブ ロー ダ ウ ン 方 式 を採 用 して い る.採 用 理 由 は 以 下 の 通 りで あ る.液 体 ロ ケ ッ トエ ン ジ ン の推 進 剤 供 給 方 式 に は ガ ス加 圧 式 と ター ボ ポ ン プ 式 が あ る が タ ー ボ ポ ン プ 式 は ター ビ ン を駆 動 し高 温 高 圧 の ガ ス を得 る 方 法 で あ る た め,衛 星 搭 載 に は 向 い て い な い.そ の た め,衛 星 で は ガ ス 加 圧 式 が 採 用 され る こ とが 一 般 的 で あ る,ガ ス 加 圧 式 の 中 に も調 圧 方 式 とブ ロー ダ ウ ン方 式 の 二 種 類 が あ る が,一 般 的 な 大 型 衛 星 に搭 載 す る 調 圧 方 式 で は,推 進 剤 を貯 蔵 す る タ ン クの ほ か に押 しガ ス を 蓄 え て お く高 圧 気 蓄 器 が 存 在 し,か つ 高 圧 の 一 次 圧 に 耐 え得 る調 圧 弁 が 必 要 と な るた め,搭 載 容 積 の都 合 上 小 型 衛 星 へ の 採 用 は 難 しい.こ れ らの 理 由 か ら,本 推 進 系 で は 気 蓄 器 を搭 載 せ ず に あ らか じめ推 進 剤 タ ン ク に封 入 し て お い た 高 圧 ガ ス の み で 推 進 剤 を 送 る ブ ロー ダ ウ ン方 式 を採 用 して い る,
しか し,ブ ロー ダ ウ ン方 式 に は デ メ リ ッ トも存 在 す る.そ れ は,推 進 剤 の 流 出 と と も に推 進 剤 タ ン ク圧 力 が 減 少 す る とい う こ とで あ る,ス ラ ス タ に 取 り付 け られ て い る噴 霧 器 は 前 述 の とお り上 流 と下 流 の 圧 力 差 に よ り決 ま っ た 流 量 を噴 霧 す る とい う仕 様 に な っ て い る た め,タ ン ク内 圧 の 低 下 は 流 量 の 低 下 に 直 結 す る.流 量 の低 下 は チ ャ ンバ 圧 の 低 下 や 燃 焼 不 安 定 に な る 可 能 性 が 考 え られ る, この デ メ リ ッ トに 対 して は,推 進 剤 を使 い 切 る ま で の 間,安 定 燃 焼 に 必 要 な タ ン ク 内 圧 を保 つ こ と が 可 能 な 押 しガ ス 量 を 充 填 して 打 ち 上 げ る こ とが 必 要 で あ る.な お,重 量 や 搭 載 容 積 が 大 き く な る こ と を 許 容 で き る の で あれ ば 気 蓄 器 を 追 加 し調 圧 式 に す る こ と も 可能 で あ る.そ うす る こ とで,推 進 剤 残 量 が 減 る に つ れ て タ ン ク内 圧 が 減 圧 す る こ と を避 け る こ とが 可 能 で あ る,実 際 に,現 在 開 発 中 の60wt%H202と エ タ ノー ル を 用 い た 二 液 式 推 進 系 は一 液 式 推 進 系 に 比 べ て 噴 射 に 適 した タ ン ク 内 圧 の 範 囲 が 非 常 に 小 さ い と 考 え られ る た め,調 圧 式 に す る こ と が 検 討 され て い る,た だ し, 60WtO/,H202貯 蔵 タ ン クの よ うに 増 圧 して しま う もの を減 圧 す る こ と は 従 来 の 推 進 系 タ ン ク で は 想
定 され て い な い,プ ラ ダ の 外 の 押 しガ ス を抜 く こ とで 減 圧 す る こ とも 考 え られ る が,そ れ で は プ ラ ダ は 風 船 の よ うに 膨 らみ タ ン ク の 凹 凸 や 押 しガ ス供 給 用 の 配 管 へ と食 い 込 み プ ラ ダ が破 れ て しま
う可 能 性 が危 惧 され る.プ ラ ダ 内 で発 生 した気 体 を外 に 出 す こ と に よ る減 圧 が 最 善 の 策 で あ る.
そ こで,「 樹 脂 製 チ ュー ブ の 気 体 透 過 性 を利 用 した タ ン ク内 圧 制 御 手 法 」 を2015年 度 著 者 の 卒 業 研 究 で 提 案 した.ま ず は こ の 方 法 に た ど り着 い た 経 緯 を 説 明 す る,前 述 され て い る よ うに, 60wt%H20ユ は 貯 蔵 中 に 自然 分 解 が発 生 す る.そ れ に伴 い気 体 酸 素 が 発 生 し,タ ン ク 内圧 は 上 昇 す る.
一 方 で継 手 や タ ン ク蓋 な どの接 続 部 に お い て微 量 の 気 体 リー ク が 生 じる こ とで 減 圧 す る .こ の タ ン ク 内圧 の 上 昇 と減 少 が 釣 り合 う事 で タ ン ク 内圧 は 一 定 に保 た れ る こ とが 実 験 に よ り確 認 され て い る,し か し,継 手 な ど の接 続 部 に お け る り一 ク を利 用 して タ ン ク 内 圧 の 上 昇 を 抑 制 す る こ とは 接 続 部 の リー ク 量 を正 確 に 量 る こ とが 出 来 な い 限 り困難 で あ る.な ぜ な らば,あ る一 定 の 気 体 発 生 量 の も とで は,終 端 圧 力(タ ン ク 内圧 変 化 が 一 定 に な る圧 力)を 決 定 す る の は リー ク 量 で あ る た め で あ る,す な わ ち リー ク量 に よ っ て は数MPa以 上 ま で 上 が っ た 末 に圧 力 が 一 定 に な る とい う こ とや, 逆 に噴 射 に 不 十 分 な数 十kPaま で 下 が る とい うこ と も あ り得 る.
そ こで,検 出 不 可 能 な不 特 定 の リー ク(継 手 な どの 接 続 部 で の リー ク)を 極 力 減 ら し,そ の 代 わ りに 特 定 可 能 な リー ク を 意 図 的 に 生 じ させ る こ とで,終 端 圧 力 を操 作 す る こ とが で き る と考 え る.
そ の一 つ の 手 段 と して,樹 脂 製 チ ュー ブ な どの 気 体 透 過 性 を利 用 で き る と考 え られ る,気 体 透 過 性 と は,材 料 の表 面 を 気 体 が 通 過 す る とい う性 質 で あ り,材 料 の種 類 や 肉 厚,圧 力 差,気 体 の 種 類 な ど に応 じて そ れ ぞ れ 程 度 は 異 な る,気 体 透 過 性 を持 つ 材 料 は 樹 脂 以 外 に も セ ラ ミ ック ス な ど あ る が, 推 進 系 で も と も と配 管 と して使 用 して い た樹 脂 製 チ ュ ー ブ に 注 目 した.本 推 進 系 に お い て透 過 した い 気 体 は60wtO/。H202の 反 応 に よ り発 生 した 酸 素 で あ る た め,推 進 剤 供 給 側 の 配 管 と して用 い られ る チ ュー ブ を タ ン ク 内圧 上 昇 抑 制 器 と して 利 用 す る こ とが 効 果 的 で あ る と考 え て い る.