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歌曲におけるピアノの役割について 一シューベルトの「冬の旅」の場合一

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(1)

歌曲におけるピアノの役割について 一シューベルトの「冬の旅」の場合一

臼 井 英 男*

(1988年9月12日受理)

On the Role of Piano in Song:

in the Case of F. Schubert s Winterreise

Hideo USUI

(Received September 12,1988)

1.は じ め に

歌とは,元来声のみによって,或いは打楽器のリズム奏を伴い,又は楽器の補助奏によって歌わ れたものであるが,ヨーロッパにおいては,ルネッサンス以降リュート属の弦楽器やオルガン,チェ ンバロ等の鍵盤楽器を伴奏として用いたケースが多く,ピアノの出現後は徐徐に同楽器を伴うよう になり,ハイドン(1732〜1809)の時代以後はピアノを伴うものが主流となっている。

歌曲におけるピアノの役割にも変遷があり,当初,ピアノの役割が単なる補助的なもの,即ち,

歌曲の旋律をなぞるか,旋律を支える和音を奏する程度であったものが,詩の心を声とピアノの緊 密な相互関係によって音楽化する方向へと発展してきた。それは,ハイドンのいくつかの歌曲にお ける芽生え,モーツァルト(1756〜1791)の確定的な方向づけ及びべ一トーヴェン(1770〜1827)

の連作歌曲等におけるピアノの意味づけの具体化を経て,シューベルトで揺るぎないものとなると 共に,歌曲は声とピアノのための作品としての資格を得た。声とピアノ両者の比重のかけ方は,個 個の作品により,勿論のこと異なるが,シューベルトに続くシューマン(1810〜1856)の歌曲にお いては,ピアノにより重きを置く作品が多く見い出され,このことは後のブラームス(1833〜1897),

ヴォルフ(1860〜1903),R.シュトラウス(1864〜1949)等においても,又フランスの近代歌 曲の作曲家達フォーレ(1845〜1924),ドビュッシー(1862〜1918),ラヴェル(1875〜1937),

プーランク(1899〜1963)等においても同様に指摘し得る。

ピアノという楽器が,歌曲の主なアンサンブル楽器となった理由は,第1に旋律は勿論のこと,

和音奏が容易であり,しかも10本の手指を駆使することによって高度の可能性を追求できること,

第2にタッチにより音色を変化させることができ,その上にペダル効果を十分にあげることができ ること,第3に,特にグランド・ピアノの場合,蓋を開ける程度によって音量の増滅がかなりの振

*茨城大学教育学部音楽研究室.

(2)

2         茨城大学教育学部紀要(人文・社会科学,芸術)38号(1989)

幅をもって可能であること,第4に,このことは近代において特に言えることであるが,演奏会場 の規模にかかわらず,音量上の條件を,弾き手によるとはいえ,満たすことができること等が考え

られる。

この小論は,歌曲におけるピアノの役割を,詩を歌うことによって,加えてそれは楽器ピアノと の緊密な相互作用によって芸術歌曲を確立したシューベルトの歌曲のうち,彼の代表作の一つであ る連作歌曲「冬の旅」の中から,特にピアノ・パートで特徴的であると考えられる作品5曲を取り あげて考察する。

2. 歌曲におけるピアノの役割 一「冬の旅」中の5曲を例として一

1)  おやすみ窟

「冬の旅」冒頭のこの曲は,前奏を持ち,詩       WlNTERREISE1)

の第1,2節共に同じであるが,第3,第4と       Wilhelm MUller 少しずつ変化を伴い,特に第4節では,第3節

までの二短調から二長調となり,後奏は主調の   Gute Nacht 二短調に戻る。形式は有節形式によっている。

詩第1節5行の Das M配chen sprach  Fremd bin ich eingezogen,

von Liebe, die Mutter gar von Eh (乙女は   Fremd zieh ich wieder aus.

恋を語り,彼女の母は婚礼について語った。)と   Der Mai war mir gewogen あるように,乙女への愛が失意のものとな   Mit manchem BlumenstrauB.

り,哀れな男は当てのない流浪の旅に出掛   Das M琶dchen sprach von Liebe,

ける。その悲痛な気持と旅への決意とが,声   Die Mutter gar von Eh一 とピアノに冷酷なほどに刻みつけられており,  Nun ist die Welt so tr廿be,

譜例12)に見られるように,ピアノは終始8分   Der Weg gehUllt in Schnee.

音符の動きに支えられ,決して休むことなく前

へ前へと進み続け,緊張感をみなぎらせている。  Ich kann zu meiner Reisen 前奏から提示される下行の旋律は,主人公の悲   Nicht wahlen mit der Zeit,

しみを,そして第2,3小節のfp記号は旅への   MuB selbst den Weg mir weisen 決意を,又第5小節の16分音符による流れに付   In dieser Dunkelheit.

したプラルラー記号は音楽の線を堅固にし,前   Es zieht ein Mondenschatten 奏そのもので第1曲 おやすみ の性格を十分   Als mein Gefahrte mit,

に表現している。前に触れた詩第1節の Das   Und auf den weiBen Matten M配chen sprach von Liebe では,詩の内容   Such ich des Wildes Tritt.

に従う声の部(第15小節より)の変化が当然

のことながらあり,声に対応するピアノは16  Was soll ich l琶nger weilen,

(3)

分音符を伴う重い引きずるような音楽となり,  DaB man mich trieb hinaus?

男にとっての悲しい,耐え難い気分の表現とな   LaB irre Hunde heulen る。又, die Mutter gar von Eh の旋律   Vor ihres Herren Haus!

を受けるピアノのfp(譜例2)3)は,悲しみの重   Die hebe liebt das Wandern一 圧感をひしひしと感じさせ,しかもオクターブ・  Gott hat sie so gemacht一 ユニゾンによる旋律は,飾りのないものである   Von einem zu dem andern だけにその効果を倍加させている。       Fein Liebchel1, gute Nacht!

詩第4節の内容は,前3節と大きく変わり,

恋人へのいたわりの気持を表現しているので,   Will dich im Traum nicht st6ren,

曲も二短調から二長調に転調し,柔らかな雰囲   W㌫schad um deine Ruh,

気を作るが,音楽の歩む速度は終始8分音符に   SoUst meinen Tritt nicht h6ren,

のって変わらない。ただ,声の最後の小節に  Sacht, sacht die T廿re zu!

un poco rit。の指定をして速度をゆるめる  Schreib im Vor蟻bergehen のは, an dich hab ich gedacht (譜例3)4)  Ans Tor dir:gute Nacht,

を繰り返し,しかも繰り返しの部分を二長調か   Damit du m6gest sehen,

ら主調の二短調へ戻すためと,後奏に入るため   An dich hab ich gedacht.

の備えのためである。各節の終止は,ピァノに

旋律を持たせるのは第1,2節で,声に持たせるのは第3,4節であり,声とピアノに相関性を与

えている。

後奏は,声の部最終小節の曲中唯一の弛緩する動きを受け,曲の特徴とも言える絶え間ない進行,

下降の音線,そしてディミヌエンドで終る。厳しい冬の旅に向う男の心情と,その旅が終りのない ものであることを予告する8分音符の連続である。

2)  春の夢

第11曲 春の夢 は,寒寒とした「冬の旅」   FrUhlingstraum の曲中にあっては,珍らしくほっとする音楽で

始まる。しかし,それは一時の夢。すぐに厳し   Ich traumte von bunten Blumen,

い現実へと引き戻されてしまう。        So wie sie wohl bl廿hen im Mai;

曲は,前奏を持ち,abcabcの有節形式で書か   Ich traumte von gr廿nen Wiesen,

れている。前奏によって提示されるイ長調の主   Von lustigem Vogelgeschrei.

題は,第1小節の甘さ,第2小節前半の安ら

ぎ,第3小節の付点音符にプラルラーを付して   Und als die H曲ne krahten,

の味付け,全てに自然で優雅であり,シューべ   Da ward mein Auge wach;

ルトの特微である詩を歌うことによって音楽化   Da war es kalt und finster,

する代表例でもある(譜例4)5)。ただし,偶   Es schrieen die Raben vom Dach.

然の一致であろうが,第1小節のリズムは,モ

一ツァルトのピアノ・ソナタK.V.331第玉   Doch an den Fensterscheiben,

(4)

4         茨城大学教育学部紀要(人文・社会科学,芸術)38号(1989)

楽章変奏曲の主題第1小節のリズムと同一であ   Wer malte die Blatter da?

り,又,調も同じである。声の部になると,ピ   Ihr lacht wohl廿ber den Tr加mer,

アノは単純な分散和音で控え目に支え,声の旋   Der Blumen im Winter sah?

律線を浮き彫りにする。      (以下3節省略)

第2節の Und als die Hahne krahten,da  ward mein Auge wach; (やがて,鶏の鳴き

声で,私は目覚めた。)で夢は破られ,作曲者のSchnell(速く)の指示に従って,ピアノはざわ ついた情景を16分音符の3連符によって描写し,ffの強奏に向う(譜例5)6)。静寂にもどるには 時間が必要。Langsam(遅く)とppの指示のついた小節から,ピアノは緩慢な動きとなり,うつ

ろの眼差しで窓ガラスに目を移す旅の男の動作を描写し,男は Doch an den Fenster schreiben,

wer malte die Blatter da? (あの窓ガラスに,誰れが木の葉を描いたのだ?)とつぶやく

(譜例6)7)。その後,abcと音楽は反復するが,詩の内容は変わるので,語により音符が僅ゆに 異なる。

3)  からす

通作形式による。まず,主題は前奏により奏   Die Krahe される。ピアノ上声部単音で奏される主題(譜

例7)8)は,2小節を単位とするフレーズであ   Eine Krahe war mit mir り,美しい旋律ながら,心に突き刺さるような   Aus der Stadt gezogen,

鋭さがある。ピアノという楽器にして初めて可   Ist bis heute fUr und f廿r 能となる音色を からす の旋律線は求める。   Um mein Haupt geflogen.

洋の東西を問わず,烏は不吉な鳥というらく印

を押されているが,その烏が旅を続ける男の頭   Krahe, wunderliches Tier,

上を朝から飛び回っている。この曲の特徴は,  Willst mich nicht verlassen?

烏のもたらす不吉さ及び男の頭上を飛び回り続   Meinst wohL bald als Beute hier ける鳥の執拗さの表現と詩第3節後半の異常な   Meinen Leib zu fassen?

盛りあげとにある。8分音符を軸とする旋律線

は,前奏及び後奏においてはピアノ上声部で,   Nun, es wird nicht weit mehr gehn 声とピアノのアンサンブルにおいては,声とピ   An dem Wanderstabe.

アノ下声部単旋律とそれぞれに対応しながら進   Krahe, laB・mich endlich sehn 行する。又,主題を声とピアノ両者によってユ   Treue bis zum Grabe!

ニゾンで強調もする。

烏の執拗な動きは,ピアノにより表現され,

前,後奏においては,16分音符の3連符により下声部左手によって,声が入ってからは,上声部右 手で16分休符を伴う3連符により休みなく奏される。詩第3節後半の Kr曲e, laB二hendlich

sehn Treue bis zum Grabe! i鳥よ,墓場に至るまで,私に忠実であることを私に示しては どうだ!)から大きな変化が生じる(譜例8)9)。これまでは前述の特徴を持ちながらも,起伏の少な

(5)

い動きであったが,詩の内容の変化に伴い,声は同一小節内において同一音の連続をした後に1オ クターブの跳躍進行をし,ピアノは声に伴い両外声の幅を順次拡大し,その最大幅は2オクターブ 以上にもおよぶ。その際のピアノの高音は,3点F音を3小節間に6度使用し,その直後に3点G 音を1小節間に4度の頻度をもって Grabe (墓場)という永遠の旅路を意味する「冬の旅」に おいては象徴的な語に向って直進する。身震いするほどの効果を持つ手法である。シューベルトが 歌曲において,このような高音をピアノで使用することは非常に稀である。

4)  勇気璽

「冬の旅」の中で,力強く鼓舞する音楽は,   Mut!

嵐の朝 とこの 勇気 のみである。詩は,

Fliegt der Schnee mir ins Gesicht,       Fliegt der Schnee mir ins Gesicht,

schUttl ich herunter (雪が私の顔にかか   SchUttl ich ihn herunter.

れば,払い落す。)で始まり, Will kein Gott   Wenn mein Herz im Busen spricht,

auf Erden sein, sind wir selber G6tter!    Sing ich heU und munter.

(神がおられぬなら,私達が神になろう!)で

終わり,旅の男は自らの意志を力強く表明す   H6re nicht, was es mir sagt,

る。 「冬の旅」第1曲の おやすみ では,悲   Habe keine Ohren,

痛の気持を持っての旅への決意であったが,こ   恥hle nicht, was es mir klagt,

こでは果敢な勇気を持って現実と明日へ挑戦す   Klagen ist f加Toren.

る男の姿を見ることができる。

ピアノによる力強い和音の引き出しによって   Lustig in die Welt hinein 提示される揺るぎのない旋律は,前奏及び後奏   Gegen Wind und Wetter!

において全く同じ姿で現われる。ピアノと声の   Will kein Gott auf Erden sein,

関係をみると,2つのフレーズによって作られ   Sind wir selber G6tter!

る声の旋律線は,ピアノによって先導される か,解決されるかのパターンを続け,両者は互

いに応答し合い,しかも前奏,後奏を同一の音楽で,文字通り曲の前後を揺るぎない,力強い音楽 で固めて曲構成をより堅固なものとしている。

調性について述べると,この曲はト短調及びト,二,変ロ各長調の計4種の調を持ち,前奏と後 奏はト短調,詩第1,2節の音楽はト短調一二長調一ト短調一ト長調の順,第3節は転調回数が多

くなり,ト長調一二長調一ト長調一ト短調一変ロ長調一ト長調と続く(譜例9)10)。旅の男が強く 意志を表示する場合には,全て長調で書かれ,それはト短調の決然たる音楽に対比して解放感さえ 感じさせる。

5)  辻音楽師

歌曲を作るという事は,作曲者が詩を透視して自らを  Der Leiermann

(6)

6         茨城大学教育学部紀要(人文・社会科学,芸術)38号(1989)

見い出し,湧き出る情感,主張を楽譜に記すことであ

るということを痛感させられるのがこの曲である。又   Dr廿ben hinterm Dorfe この曲は,極端に突き詰めた抑制と簡潔な表現によっ   Steht ein Leiermann,

ており,その特徴は他に例を見ない。この曲に用いら  Und mit starren Fingern れる素材そのものはシンプルであり,さほどの意味は   Dreht er, was er Kann.

持たないが,それ等素材の集合体は,全宇宙をも支え

得るような,びくともせぬ堅固さを保持している。   BarfuB auf dem Eise さすらう旅人は,「冬の旅」における終曲 辻音楽   Wankt er hin und her,

の場で,年老いたライアー11)回しの男に出合い,彼   Und sein kleiner Teller を熟視する。ラィァー回しの男は,凍えた指で懸命に   Bleibt ihm immer leer. 、 ライアーを回し,氷の上を素足のままで歩く。小さな

盆の中は空で,誰れも彼の音楽を聞こうともせず,た   Keiner mag ihn h6ren,

だ,男の回りで犬のみがうなっている。        Keiner sieht ihn an,

長い冬の旅を続けた男は,詩第5節で不思議なライ   Und die Hunde knurren アー回しの老人に興味を示し, Soll ich mit dir gehn?  Um den alten Mann.

(私はお前について行くことにするか?), Willst呂u

meinen Lidern deine・Leier drehn?(私の歌にお前   Und er IaBt es gehen のライアーを合わせてくれるだろうか?)とつぶやき,  Alles, wie es will,

「冬の旅」全曲が終っても,さらに続く旅を暗示す   Dreht, und seine Leier る。      Steht ihm nimmer still.

声はレチタティーヴォ風に始まり,続けられ,それ

はピアノによるライアーのドローン12)を示す付点2分   Wunderlicher Alter,

音符完全5度の和音上でっぶやく(譜例10)醜音型は5  Soll ich mit dir gehn?

種で,1頂に記すと,A(第1節)−B(第2節)−C   Willst zu meinen Liedern

(第2節後半の反復)−A(第3節)−B(第4節)   Deine Leier drehn?

一C(第4節の反復)−D(第5節前半)−E(第5 節後半)となる。音型AからDまでは1点A音を中心

として,Aは6度音域の範囲で動いて下行で落着き, Bは1オクターブで上行, Cは1オクターブ で上行と下行,Dは6度で動きは少ないが上行,最後のEでは9度と音域は広がり,オクターブ跳 躍が2小節間に3度も現われる(譜例11)14)。

これ等の音型は,前述の詩の内容と深く結びついている。詩第4節までの内容は,旅人のライアー 回しの男への観察であり,,音型A,B, Cは上行,下行等の動きによる効果を持つものの,動きそ のものの幅は少ない。しかし,第5節前半の「私はお前について行くことにするか?」は音型Dで 動きは少ないが上行で男の心の動きが描かれ,続く後半の「私の歌にお前のライアーを合わせてく れるだろうか?」では,男の願望が込められて音型Eのオクターブ跳躍となる。

ピアノは,完全5度の和音を曲中休みなぐ左手で奏し,声が沈黙するともの憂げなレチタティー ヴォ風の旋律と16分音符とアクセント記号を付された2分音符とによるフレーズが続く。前奏6小 節,後奏4小節は,前述のピアノの音型によって進行される。前奏は寒寒とした風景を描き,後奏

(7)

は終止音が消えても「冬の旅」に終止を与えていない。旅の男の願いは,誰れにも聞こえないつぶ やきであったのであろうか。最終小節直前の2分音符に付されたアクセント記号にシューベルトの 解釈が隠されている。

3. 結  び

ピアノ伴奏という,よく使われる言葉がある。歌曲において,厳密な意味で使われる「ピアノ伴 奏」という言葉は,ピアノが単に声の旋律をなぞるか,単に和音を支えること等の場合であり,シュ 一ベルトのような声とピアノのための歌曲では,「ピアノ伴奏」という言葉は不適当である。まし てや,シューマンの歌曲のように,詞が語るように扱われる歌曲においては,ピアノの存在がより 重視される。又,近代の作曲家達には, 声とピアノのための というタイトルを作品に付す例を 多く見受ける。これは,声とピアノが対等であるという主張に他ならない。

本小論では,シューベルトの連作歌曲「冬の旅」の中から5曲を取り上げて,,それぞれの曲にお けるピアノの役割について考察したが,5曲共に,声とピアノは一体となり,それぞれに不可欠の 要素を持って作用し合っている。

おやすみ の連動性はピアノにより, 春の夢 の詩の雰囲気作りはピアノが先導して行い,

変化の生ずる情景は,全てピアノで描いている。 からす の執拗さは,ピアノにより3連音符で 休みなく,そして最後の盛り上がりの圧巻は,ピアノの高音使用の効果によっている。 勇気!

におけるピアノの力強さと転調による変化は,色彩を添える。 辻音楽師 は,つやを消したピァ ノと声のピアニッシモによる寒寒とした一幅の絵であるが,ピアノ・声共に必要最少限の表現であ り,特に,ピアノのライアーの音を模した完全5度音は,聞く者に不安定感を与え,しかもその連 続使用は無気味な雰囲気を作る。

歌曲におけるピアノの役割は,声との関係で,声の優位,ピアノの優位,両者対等という図式は 考えられるが,シューベルトの「冬の旅」の場合の結論として,声とピアノの両者が錯そうし合っ て美を創造しているので,曲の一部を上述の図式で説明できる場合もあるが,曲全体を考えれば,

声と共にあるという結論に至る。

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(8)

8         茨城大学教育学部紀要(人文・社会科学,芸術)38号(1989)

譜例1.       譜例4.

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      臼井:歌曲におけるピアノの役割について       9

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(10)

10         茨城大学教育学部紀要(人文・社会科学,芸術)38号(1989)

1)Franz Schubert, L θdθr Bαπd 1 (Leipzig:Edition Peters), PP.54−121.

2)・め d.,P.54.

3)乃 d.,P.55.

4)乃 d.,P.57.

5)乃 d.,P.86.

6)乃 d.,P.86.

7)乃 d.,P.87.

8)1b d., P.98.

9)乃 d.,P.99.

10)乃 d.,P.117.

11)楽器ドレー・ライアー。

12)バッグ・パイプのドローンと同じで,楽器演奏中に常に出る低音。

13)Franz Schubert, o、ρ. c記., P.120.

14)乃 d.,P.122.

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