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The Abilities of Consultation Activities that Apprentices Lack -From Analysis of Verbatim Records-

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(1)

養護実習生に不足している健康相談活動の力

-逐語録の分析を通して-

鈴木裕美*・斉藤ふくみ**

(2011 年 11 月 25 日受理)

The Abilities of Consultation Activities that Apprentices Lack -From Analysis of Verbatim Records-

Hiromi S

UZUKI*

and Fukumi S

AITO**

(Received November 25,2011)

Ⅰ はじめに

 Ⅰ大学における養護実習の目的は,「養護実習を通し,大学で習得した教職教養・専門教養,知識・

技能を学校教育現場で活用し,理論と実践を結びつけるとともに,教育全般にわたる基本的理解を 通して教職員としての自覚・態度を身につけ,さらに養護教諭としての専門的なものの見方や考え 方を育てていくための学び方を身につけることをめざす1)」ことである。また,今日の教員養成の ねらいは,採用後,自ら力量形成を行える土台を培うことである1)。つまり,養護実習では,学校 教育に携わる教職員としての学びと学校保健の専門職である養護教諭としての学びを目的としてい る。さらに,実習後省察を行うことで,その後の力量形成につなげることもねらいである。また,

I大学では,到達目標として

14

項目の具体的目標をあげている1)。この項目の内容は,三つに大 別でき,一つは,教育目標や教育計画といった学校教育全般への理解と教職員との連携に関する項 目である。もう一つは,児童生徒と健康課題に関する項目である。そして,残りは,養護教諭の専 門性に関する項目である。この

14

項目を到達目標にすると同時に,省察の視点としている。

 しかし,上記の目的や目標を前に,養護実習を控えた学生の心情は,期待以上に不安が大きいと 推測する。事前指導等で実習前に実習校を訪れた際に,養護教諭や教職員から説明を受けたり,学 校現場を観察したりすることにより,学習不足を実感し,さらに不安が増すと思われる。しかし一 方で,いざ実習が始まると,不安を抱えている暇はなく,徐々に職務をこなせるようになる学生が 多いと考える。

茨城大学大学院教育学研究科(Laboratory of Education, College of Education, Ibaraki University, Mito,Japan). 茨城大学教育学部教育保健教室(〒310-8512 水戸市文京2-1-1; Laboratory of Health Education, College of Education, Ibaraki University, Mito 310-8512 Japan).

*

**

(2)

 では,養護教諭の職務や役割にはどのようなものがあるのか。近年では,社会環境や生活様式の 急激な変化が,児童生徒の心身に大きな影響を与え,健康課題の多様化が生じている2)。この問題 に対応するために提言された,中央教育審議会答申(平成

20

年1月)では,学校保健関係者の役 割が明確化され,養護教諭に関する項目は8項目にわたる。第2項目では,養護教諭の職務に関し て述べられており,「救急処置,健康診断,疾病予防などの保健管理,保健教育,健康相談活動,

保健室経営,保健組織活動2)」があげられている。また,養護教諭の役割を「中核的な役割」,「コー ディネーターの役割」,並びに保健室を「センター的役割」と表記している2)。このように,養護 教諭の職務や役割は,多岐にわたっている。

 著者は,拡大しつつある養護教諭の職務や役割の中でも,特に健康相談活動に着目した。健康相 談活動は,保健体育審議会答申(平成

9

年)及び中央教育審議会答申(平成

20

年)において重要 性が強調されている。保健室利用状況に関する調査結果(平成

18

年度調査結果)における,平成

13

年度の調査との比較検討によると,保健室利用状況は,中学校,高等学校では同傾向であるも のの,小学校では増加している3)。また,全校種で,一人あたりの対応時間は増加している3)。著 者は,健康問題の多様化や保健室利用状況の変化に伴い,ますます健康相談活動が重要になってく ると考えた。

 しかし,養護実習において,一人の実習生が経験できる事例は決して多いとは言えない。また,

実習校や地域,校種によって,来室理由に違い及び偏りが生じると推測する。そこで,知識や技術 及び経験が未熟である実習前並びに新任前の学生にとって意義ある研究にしたいと考え,本研究で は,養護実習において実習生が行った健康相談活動の逐語録を分析することにより,学生に不足し ている知識及び技術等を明らかにすることを目的とする。

Ⅱ 対象及び方法

1.対象

 対象は,筆者が所属した

I

大学養護教諭養成課程の

S

卒論ゼミの学生

10

名が,養護実習で記録 した逐語録である。逐語録は,小学校

10

事例,中学校

14

事例の計

24

事例である。本研究では,

実習生が行った健康相談活動の逐語録のみを対象として選択した。なお,

I

大学では3年次におい て2週間の小学校実習と,おおむね3か月後に2~3週間の中学校実習を実施している。

2.方法

 研究方法は,逐語録の事例を学年別,男女別,主訴別に分類し,実習生(学生),児童生徒,養護教諭,

担任の発話数と内容の比較を行った。その際,研究者自身の分析も付加した。発話内容は,谷津4) の方法を参考に,発話解釈,コード化,カテゴリー化を行った。最終的に収集されたカテゴリーを 質的に比較し,分析を行った。

3.倫理的配慮

 逐語録の使用に関しては,研究対象とした

S

卒論ゼミの学生に対し,口頭及び署名により同意を

(3)

得た。逐語録の記入者及び逐語録に記入されてある児童生徒等の情報は,本研究のみに使用し,情 報が外部に漏れることのないように丁重に使用及び管理し,研究終了後は破棄することを約束した。

Ⅲ 結果

1.逐語録の概要

 逐語録には,児童生徒の学年・組,イニシャル,性別,主訴,テーマが記録されてある。これら の情報を「逐語録の概要」としてまとめた(表1・表2)。

 逐語録は,小学校を「1」とし,中学校を「2」とした。小学校の事例数は,

10

事例(

1-1

から

1-10

)であった。また,中学校の事例数は,

14

事例(

2-1

から

2-14

)であった。

2.逐語録の比較 1)学年別の事例数

 小学校の事例数は,1年生で2事例,2年生及び4 年生で各3事例,5年生及び6年生で各1事例であっ た。3年生の来室はなく,事例はなかった。

 中学校の事例数は,1年生で7事例,2年生で3事 例,3年生で4事例であった(表3)。

(4)

2)男女別の事例数

 小学校では,男子児童2事例,女子児童8事例であっ た。中学校では,男子生徒2事例,女子生徒

12

事例であっ た(表4)。

3)主訴別の事例数

 主訴を「内科的」と「外科的」に分類した。内科的主 訴は,「頭痛」,「腹痛」,「気分不良」,「だるい」,「その他」

の計5項目に分類した。外科的主訴は,部位別に,「手」,

「足」,「目」,「耳」の計4項目に分類した(表5)。

 「事例数」の数値は,来室した児童生徒の主訴の数を 表している。主訴は「逐語録の概要」の主訴欄に記述さ れている症状等のうち,最初の記述を表記した。括弧内 の数値は,主訴欄に記述されている症状等が複数あった 場合,二つ目以降を表している。

 小学校では,

10

事例中,内科的主訴が6事例,外科的主訴が4事例であった。内科的主訴では,「頭 痛」が3事例,「腹痛」及び「気分不良」,「その他」が各

1

事例であった。外科的主訴では,4項 目で各1事例ずつであった。なお,「その他」は,主訴の記述がなかったものである。また,「その 他」の括弧内は,逐語録に「その他(息苦しさ)」と記述されていたものを示した。

 中学校では,

14

事例全てが内科的主訴であり,外科的主訴での来室は見られない。内科的主訴では,

「頭痛」が2事例,「腹痛」が5事例,「気分不良」及び「その他」が各

3

事例,「だるい」が1事例であっ た。なお,「その他」3事例中の2事例は,主訴の記述がなかったものである。残りの1事例の主訴は,

「胸が苦しい」であった。また,「その他」の括弧内は,「眠い」と「教室へ行きたくない」の

2

つであった。

4)逐語録の発話数

 逐語録には,「実習生(学生)」,「児童生徒」,「養護教諭」,「担任」の発話が記録されてある。(表 6・表7)。なお,実習生(学生)を「G」,児童を「J」,生徒を「S」,養護教諭を「Y」,担任 を「T」とした。実習生が二人で対応した事例では,「

GA

」,「

GB

」とし,区別した。また,中学 校では,生徒が二人で来室した事例があったため,「

SA

」,「

SB

」とした。

 小学校では,実習生の発話数の最多は

18

回,最少は6回であった(表6)。また,

1-10

は,実習生 が二人で対応した事例である。児童の発話数の最多は

27

回,最少は8回であった。なお,児童複数 での来室は見られなかった。養護教諭の発話が見られる事例は,2事例であった。発話数の最多は 2回,最少は1回であった。担任の発話が見られる事例は1事例のみであり,発話数は1回であった。

 中学校では,実習生の発話数の最多は

13

回,最少は4回であった(表7)。また,

2-7

は,実習 生が二人で対応した事例である。生徒の発話数の最多は

14

回,最少は5回であった。また,

2-7

は,

生徒が二人で来室した事例である。養護教諭の発話が見られる事例は,7事例であった。発話数の 最多は4回,最少は1回であった。担任の発話が見られる事例は3事例であった。発話数の最多は 3回,最少は

1

回であった。

(5)

3.逐語録の分析

 工藤らの保健室活動場面における熟練養護教諭と新人養護教 諭の実践的思考に関する比較研究5)を参考に命題を作成し,そ の命題に関する具体的なカテゴリーを抽出した(表8)。命題は,

「児童・生徒」,「実習生」,「養護教諭」,「担任」,「その他」である。

さらに各命題に具体的なカテゴリーを設定した。児童生徒に関 するカテゴリーには,「来室」,「訴え」,「様子」,「返答」,「話」

の計5項目がある。実習生に関するカテゴリーには,「考え」,「疑 問」,「推測」,「判断」,「対応」,「様子」の計6項目がある。養 護教諭に関するカテゴリーには,「在

/

不在」,「判断」,「対応」,「指 示」の計4項目がある。担任に関するカテゴリーには,「来室」,

「判断」,「対応」の計3項目がある。その他に関するカテゴリー には,「明らかになった点」,「時間」,「情報」,「実習校の特徴」,

「言葉のニュアンス」の計5項目がある。また,著者自身の分 析中の思考に関するデータもカテゴリーにした。命題を「研究 者」とし,具体的なカテゴリーには,「考え」,「疑問」,「推測」,

「助言」の計4項目を加えた(表9)。

 また,抽出したカテゴリーのコード数を集計したところ,小 学校

417

,中学校

579

,計

996

となった(表

10

)。小学校における,

各コード数は

,

1「児童」の来室が8,2「児童」の訴えが

23

,3「児童」の様子が

55

,4「児童」

の返答が

22

,5「児童」の話が9,6「実習生」の考えが

11

,7「実習生」の疑問が3,8「実習生」

の推測が

12

,9「実習生」の判断が7,

10

「実習生」の対応が

144

11

「実習生」の様子が4,

12

「養 護教諭」の在

/

不在が2,

13

「養護教諭」の判断が3,

14

「養護教諭」の対応が3,

15

「養護教諭」

の指示が1,

16

「担任」の来室が0,

17

「担任」の判断が0,

18

「担任」の対応が0,

19

「明ら かになった点」が

70

20

「時間」が

12

21

「情報」が

18

22

「実習校の特徴」が1,

23

「言葉のニュ

(6)

アンス」が

7

である。

 中学校における各コード数は,1

「生徒」の来室が

14

,2「生徒」の訴 えが

54

,3「生徒」の様子が

86

,4

「生徒」の返答が

26

,5「生徒」の話 が

14

,6「実習生」の考えが

11

,7

「実習生」の疑問が1,8「実習生」の 推測が

18

,9「実習生」の判断が8,

10

「実習生」の対応が

168

11

「実習 生」の疑問が2,

12

「養護教諭」の 在

/

不在が5

,13

「養護教諭」の判断 が2,

14

「養護教諭」の対応が

11

15

「養護教諭」の指示が3,

16

「担任」

の来室が2,

17

「担任」の判断が2,

18

「担任」の対応が3

,19

「明らかになっ た点」が

56

20

「時間」が

24

21

「情 報」が

59

22

「実習校の特徴」が5,

23

「言葉のニュアンス」が4であった。

 また,「研究者」のコード数は,小 学校実習では,

24

「研究者」の考えが

143

25

「研究者」の疑問が

209

26

「研究者」の 推測が

143

27

「研究者」

の助言が

67

であっ た。また,中学校実習では,

24

「研究者」の 考えが

171

25

「研究者」の疑問が

228,26

「研 究者」の推測が

227

27

「研究者」の助言が

34

であった(表

11

)。

Ⅳ 考察

1.対象逐語録における健康相談活動の傾向 1)学年別の事例数

 小学校では,事例数が最多である学年は2年生と4年生であり,ともに3事例であった。一方,

事例数が最少の学年は3年生であり,事例はなかった。事例数を低学年・中学年・高学年別に比較 すると,低学年の来室が計5事例と多く,高学年の来室は計2事例と少ないことがわかる。中学年 の来室は4年生の事例のみであり,3年生の事例は見られなかった。

 一般に,小学校よりも中学校の方が,健康相談活動の機会が多いと考えられる。また,本研究に おいても,

S

卒論ゼミの学生

10

名が作成した逐語録

24

事例中,小学校が

10

事例,中学校が

14

(7)

例と若干ではあるが,中学校での実習の方が健康相談活動を経験できる機会が多いと考えられる。

その傾向から,小学校においても年齢が上がるにつれて健康相談活動の実施も多くなると予想でき る。しかし,本研究では,低学年の児童を対象にした健康相談活動が多い結果となった。この結果 には,実習校の規模や特徴,実習中の行事等による来室状況の違いや変化が関係していると推測する。

 中学校では,1年生の来室が7事例,2年生が3事例,3年生が4事例と1年生が一番多い結果 となった。中学校実習を行った9月頃は,1年生にとっては中学校生活に慣れてきた時期であるも のの夏休み後であり,新学期が始まった時期である。このような時期が,1年生の健康相談活動が 多い背景に関係していると推測する。中学生は,勉強,進路,部活,人間関係等,または思春期で あることが要因となり,ストレスや悩みを抱えやすい時期である。そのため,心身への対応の必要 性が高く,健康相談活動の機会も多いと予想できる。しかし,本研究では2年生及び3年生の来室 があまり多くない結果となった。この結果の背景には,対応者が養護教諭ではなく実習生であるこ とが関係していると考える。悩み等を打ち明ける場合,相手への信頼が重要となる。約2週間の実 習期間の中で,生徒との信頼関係を築くことは難しい。そのため,中学校での健康相談活動の機会 が少ないと推測する。これは,小学校実習においても同様のことが言えると考える。

2)男女別の事例数

 小学校では,

10

事例中,男子児童2事例,女子児童8事例であった。男子児童より女子児童の 方が多かった。一方,中学校においても,

14

事例中,男子生徒2事例,女子生徒

12

事例であり,

女子生徒の方が多かった。このことから,本研究で対象となった逐語録では,女子の事例が多い特 徴があり,実習生は,女子への健康相談活動の経験が主であったことがわかる。

 男子の事例が少ないことには,実習生であることに加えて,女性であることも少なからず関係し ていると推測する。男子児童生徒にとって,異性かつ年齢が若い実習生は,相談しにくい相手であ る可能性が示唆される。しかし,保健室利用状況に関する調査報告書では,性別の保健室利用者数 は,小学校,中学校,高等学校ともに,女子の方が男子より多い傾向が認められたとされている3)。 そのため,来室の多い女子児童生徒に対しての健康相談活動が多くなると考えることもできる。

3)主訴別の事例数

 主訴別の事例数に着目すると,小学校では,内科的主訴から健康相談活動に移行する事例が6事 例と多かった。また,外科的主訴から健康相談活動への移行は,4事例みられた。保健室利用状況 に関する調査報告書から,小学校の来室理由は,けがや鼻血の手当てが多いことがわかる3)。この ことも踏まえると,小学校では,内科的主訴だけでなく,外科的主訴での来室の際も健康相談活動 の必要性があると推測される。

 一方,中学校では,

14

事例全てが内科的主訴であった。また,1事例のみであるが,その他に“教 室へ行きたくない”と訴えた事例があり,その生徒に対する実習生の対応は,他の主訴とは異なり,

問診等が十分ではない傾向がみられた。保健室利用状況に関する調査報告書から,中学校の来室理 由は,体調が悪いが多く,またなんとなく保健室に来室している生徒が増えていることがわかる3)。 このことも踏まえると,内科的主訴または心因的主訴を訴える生徒への健康相談活動が必要である と考えられる。また,心因性と考えられる事例においてはとりわけ,満足感や安心感を与えるよう な,健康相談活動を通した支援を行うことが重要であると考える。

(8)

2.実施できている力  コード数の平均は,小 学 校

18.1

, 中 学 校

25.2

であった(表

10

)。

 特にコード数の増加が 見られた「児童・生徒」

に着目すると,その中で も,訴え,様子,話のコー ド数は,中学校実習で増

加していた(表

12

)。中学校実習において,小学校実習で学んだ対応や問診等を実施し,来室者の 訴えを聴き出していると考えられる。また,来室者の様子を観察する力が伸長していると考えられ る。

 また,「養護教諭」に着目すると,在

/

不在と対応にわずかに増加が見られた。中学校実習では,

養護教諭の対応を観察する機会が増加したことがうかがえ,養護教諭の対応を観察することによっ て,学ぶことができたと推測する。

 竹田らの調査では,8割強の機関が,養護実習を「実際に子どもと接する体験学習の場」と捉え,

次いで「養護教諭の相談的対応場面を実際に観察する場」「学校という現場の空気をはだで感じる場」

「子どもの心のサイン,観察のポイントを実際に知る場」と捉えており,「子どもの抱える問題を見 極め,その対処方法を知る」ために必要な体験学習の場と位置づけていた6)とされている。

S

卒論 ゼミの学生にとって養護実習は,少ないながらも体験の場となり,また養護教諭の相談的対応場面 を観察する場になったと考えられる。また,来室者を観察する力に伸長がみられることから,子ど もの心のサイン,観察のポイントを知る場にもなったと推測する。一方で,中学校実習では,記録 に慣れたことや中学生の発達段階の多様性がコード数の増加に関係している可能性があると考えら れる。

3.不足していると考えられる力

 「実習生」のコード数に着目すると,対応の内容については記録がされているが,その対応に至っ た考え,疑問,推測,判断についての記録が少ないことがわかる。このことから,実習生の判断が 曖昧である可能性も推測される。判断の曖昧さは,逐語録に記録されている実習生の対応からもう かがえる。逐語録の中には

,

問診が少ない,または詳細な問診ができていないため,最終的に原因 が明らかにならないまま,休養または教室に戻す事例があった。また,問診が一問一答に近く

,

児 童生徒に対して,実習生の見解や言葉かけ等が少ない事例もあった。

 次に,「養護教諭」及び「担任」のコード数に着目すると,養護教諭及び担任の発話がある事例 が少なく,実習生とのやり取りもほとんどなかった。実習生には,報告・連絡・相談等を行う力が 不足していると推測する。一方で,実習生の立場では,担任や保護者との連携は難しく感じられ,

また自分が行っても良いのかという不安もあるように思われる。さらに,逐語録に記録する内容を 指定されていなかったため,実習生と児童生徒の会話のみを記述した可能性があり,同時に事後指 導や経過観察等の記録もほとんどみられない結果につながったと考えられる。

(9)

 また,「その他」の時間のコード数に着目すると,中学校において増加しているものの,特に退 室時刻の記録が少なかった。来室時刻と退室時刻を把握することにより,対応時間等が明らかにな る。また,保健室にいた時間を明確にすることは重要であり,担任や保護者に伝える情報の一つで もある。来室時刻だけでなく,退室時刻も記録するように指示する必要があると考える。さらに,

情報のコード数に着目すると,中学校で増加している。中学校実習では,養護教諭とのかかわりを 通して学ぶ機会が増加したと推測される。情報に含まれる内容は,ほとんどが児童生徒の情報であ り,実習生が児童生徒から得る場合と養護教諭や担任から得る場合があった。また,対応前,対応 中,対応後と情報を得る状況は様々であった。

 不足している力を育成するためには,養護実習前の事前指導における学習が必要であることは言 うまでもないが,事後指導における復習等がより一層重要であると考える。実習中に体験した事例 をまとめ,一人一人の事例について相互に分析検討する機会や,逐語録を検討する場面等の授業 を設定することは,実践を力量に発展させることに繋がっていくと竹田ら6が述べているように,

養護実習での体験的な学習を次の学習に活かしていく必要があると考える。

 なお,「研究者」の推測のコード数に着目すると,中学校において増加している。推測した内容は,

児童生徒に関することが多い。筆者は分析を進めるにつれて,逐語録から状況を想像し,発話や備 考の内容をより深く考えるようになったと考えられる。

Ⅴ まとめ

 

S

卒論ゼミの学生

10

名が作成した逐語録

24

事例(小学校;

10

事例,中学校;

14

事例)を分析 した結果,以下の諸点を確認した。

1)実習生が経験した健康相談活動は,小学校実習より中学校実習の方が多く,対象者の男女別で は女子への健康相談活動が主であった。

2)主訴別では,小学校では,内科的主訴及び外科的主訴ともに,健康相談活動が必要であると推 測された。一方,中学校では,主に内科的主訴や心因的主訴に対する健康相談活動が必要であ ると推測された。

3)特にコード数の増加が見られた「児童・生徒」に着目すると,その中でも,訴え,様子,話の コード数は,中学校実習で増加していた。小学校及び中学校実習の経験を通して,実施できて いる力には,対応や問診等を通して訴えを聴き出す力,来室者の様子を観察する力が見出された。

4)不足していると考えられる力には,問診を行う力,判断力,報告・連絡・相談等を行う力,対 応を記録する力が見出された。

5)「研究者」の推測のコード数に着目すると,中学校において増加しており,筆者は分析を進め るにつれて,逐語録から状況を想像し,発話や備考の内容をより深く考えるようになったと考 えられる。

(10)

Ⅵ 研究の限界と今後の課題

 研究対象である逐語録が,小学校

10

事例,中学校

14

事例の計

24

事例であったため,情報量が 少なく,より詳細な比較が困難であった。また,

S

卒論ゼミの学生の中には,実習校が同じだった 学生がいるため,実習校の特徴等の関係から,来室理由や対応内容等に偏りが生じた可能性がある。

さらに,本研究では,逐語録に記述されていない情報を得ることができないため,実際に対応した 状況等背景の詳細がわからない点もあった。また,逐語録の分析では,分析等において考察の偏り が生じた可能性もある。また,カテゴリー分析の段階で,改善及び修正等を行う必要性が感じられ た。さらに,著者自身の知識・技術及び経験が不足している点も本研究の限界といえる。

 本研究では,実習生が対応した健康相談活動に着目したため,現職養護教諭が実施する健康相談 活動に関する分析は行わなかった。健康相談活動における現職養護教諭の対応に関する研究を今後 の課題とし,実習生の対応との比較も含めて,分析を行う予定である。

 最後に,逐語録の使用にご協力いただきました

S

卒論ゼミの皆様に,心より感謝いたします。

 なお,本研究の一部は,日本学校健康相談学会第

7

回学術集会(神奈川)において誌上発表した。

Ⅶ 引用文献

1)茨城大学教育学部:「茨城大学教育学部教育実習の手引き 養護実習編」,207-226,2008.

2)中央教育審議会:子どもの心身の健康を守り,安全・安心を確保するために学校全体としての取組を進め るための方策について(2008年1月17日).

  (http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/toushin/__icsFiles/afieldfile/2009/01/14/001_4.pdf) ア クセス日2010年4月10日.

3)財団法人日本学校保健会:保健室利用状況に関する調査報告書 平成18年度調査結果,2008.

4)谷津裕子:Start Up 質的看護研究,学研メディカル秀潤社,2010.

5)工藤宣子,栗林徹,森昭三:保健室活動場面における熟練養護教諭と新人養護教諭の実践的思考に関する 比較研究,学校保健研究,48(4),290-306,2006.

6)竹田由美子,大谷尚子,吉田あや子他:相談活動にかかわる養護教諭の力量形成 第7報―養護実習等の 機会を活用した養成教育の実態―,日本養護教諭教育学会誌,5(1),39-49,2002.

参照

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