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社会的且つ文化的に構造化された世界の中の、

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(1)

1 緒言

 Lave(1 9 9 3)は正統的周辺参加論の中で学習 を「学ぶこと、考えること、さらに知ることが、

社会的且つ文化的に構造化された世界の中の、

世界と共にある、また世界から湧き起こってく る、活動に従事する人びとの関係だとする。 」 と述べ、 「参加」という概念を用いて、学習を 実践共同体への参加の度合の増加とらえている。

佐伯(1 9 9 5、pp.2−3 3)もまた学習とは「文化 的実践への参加」であると述べ、学習を「個人 の 頭の中 のことではない」と主張している。

すなわち、佐伯(1 9 9 5、pp.2−4)は従来の学 習観を「学習者個人が、頭の中に、特定のまと まりをもった知識や技能を獲得すること」 (表 象主義的知識観)と呼び、これを正統的周辺参 加論という立場から批判している。

 Gergen(2 0 0 4)は、社会構成主義の立場から

「自 己」の 問 題 を「個 人 主 義 的 な 自 己」か ら

「関係の中の自己」という考え方への移行を試 みている。同様に、松本ら(2 0 0 8)は社会構成 主義にみられる学習観を「共同体において学習 者が他者とかかわりのある活動を通して、意味

を構成していく社会的な行為」と述べ、 「知識」

は人々の関係の中で育まれるものととらえてい る。両者の主張は、 「知識」を従来のような学 習者が個人の心の中で獲得されていくという発 想から、学習者が他者とかかわり合う関係(共 同体)において、社会的な相互作用のプロセス として意味を構成していくものへと転換するも のである。

 このように正統的周辺参加論や社会構成主義 はともに人々の相互作用のプロセスを重視して おり、自己を関係性の中の存在として理解し、

学習をその中に見出そうとしている。つまり、

学習がもつ社会的な特性に着目し、その共同体 への参加を通して自己のアイデンティティを形 成していくととらえている。

 ところで、佐伯(1 9 9 5)は、学習とは「きわ めて個人的な 自分探し のいとなみでありな がら、同時にきわめて社会的な、人びととの共 同的ないとなみに、自らのユニークな 自分ら しさ を生かしながら、 加わっていく いと なみ」と述べ、学習における子どものアイデン ティティ形成における共同性の重要性を強調し て い る。同 様 に 藤 田(1 9 9 6、pp.4 3−5 1)も、

「集団のありようをどのようなものにしていく かは、生活とアイデンティティの根幹に関わる 問題」と述べ、共同体内の集団関係と役割関係、

─ 5 5 ─

「感覚的アプローチ」に基づく跳び箱運動における 学習の発展様相に関する研究

─「動く感じ」を中核とした意味生成に着目して─

成家 篤史

・鈴木 直樹

**

・寺坂 民明

***

キーワード:関係論的学習、感覚的アプローチ、跳び箱運動

埼玉大学紀要 教育学部,

(2):55─69(29)

  *  埼玉県越谷市立蒲生小学校

  **  埼玉大学教育学部保健体育講座

 ***  埼玉県飯能市飯能第二小学校

(2)

対人関係の3者の肯定的な関係とアイデンティ ティの形成における共同体の重要性を示唆して いる。なお、佐伯(1 9 9 5)は、 「ものごとの意 味の根源に立ち返り、ものごとを再吟味し、味 わいなおし 新たな文化の作り手 として世界 と関わる実践」を文化的実践と呼んでいる。そ して、文化的実践が「絶えず問い直され、修正 され、より広い社会との関係の網目がつむぎ出 されていくもの」とし、そのような共同的ない となみとその産物を「文化」としている。した がって、このような視点に立つならば、学習は、

共同体的な学習と考えられるのである。

 体育は身体活動が運動によって表出され、学 習成果が頭の中の出来事のアウトプットではな く、身体そのもののその場におけるあらわれ方 として現象化される。その為に、Laveや佐伯、

Gergenなどが主張する社会的相互作用による 学習の変化は、身体性と活動性によって意味づ けられていくといってもよい。すなわち、体育 授業の場をなす様々な諸要因の複雑な関係性の 中で意味生成がなされ、そこに意味ある世界と しての運動世界が、 「私ごと」として立ち現れ、

自己が私としてその世界を生きるのである。鈴 木(2 0 0 8a)は、体育授業における種々の関係 性に着目し、この意味生成過程を分析した結果、

「動く感じ」がその中核に位置付くことを明ら かにしている。運動に随伴して得られるものは、

その運動が内包する固有の「動く感じ」である。

その活動者にとって「動く感じ」は好嫌に関わ りなく必然的に伴う。この「動く感じ」が共同 体内での教師や仲間という他者との相互作用に より、自覚されたり、拡げられたりしていくの である。

  「感じる」とは「共同的に構成されたできご と」 (Gergen、2 0 0 4、p.1 5 5)と し て と ら え ら れ、特定の文化の中で意味をもつものとして考 えられている。また、鈴木(2 0 0 7、pp.6 3−6 9)

によれば、この「動く感じ」を中核として、子 どもにおける運動の意味が生成されていくと考 えられている。そこで本研究では、子どもの共

同性に着目し、 「動く感じ」を中核とした授業 を研究対象とすることとした。

  「動く感じ」を中核とした授業における運動 の意味は「伝達」されるものではなく、 「生成」

されていくものとしている。そのため、子ども には「跳び箱運動に関わる技術の獲得、技能の 向上」をさせることを柱として学習過程を仕組 むのではなく、 「跳び箱運動ならではの動きの 心地よさ」を味わうことを柱にして学習過程を 構成することにした。

 したがって、このような学習観は個人主義的 な「獲得」から共同体的な「参加」へと見方を 転換するために、正統的周辺参加論や社会構成 主義に基づく「参加」を鍵概念として考えるこ とができる。佐伯(1 9 9 6)はこのような考え方 を「さまざまなものごとの関係の網の目に注目 し、むしろその中で関係しあっているAとかB が『相互構成』されて浮かび上がってきている のだ」と述べ、このような見方を「関係論的視 点」と呼んだ。この視点を援用した体育授業を 関係論的なアプローチの体育授業と考えること ができる。

 例えば、岡野ら(2 0 0 6)は「自己(学習者)

と他者(人・モノ・自然など)との かかわり 合い によって 運動の世界 を重視し、今の 生にとって意味が生まれそれがもとになって連 続していく学習」として関係論的視点による体 育授業を提案している。また、鈴木(2 0 0 8b、

pp.1 8−2 6)は「子ども達が授業において関わ りながら、何かを学び合ったり、何かを創造し ていったりすることを学習ととらえる立場を

『関係論的な学習』 」としている。このような学 習観では、子ども自身が授業における様々な諸 要素とかかわりながら、学習へ参加するプロセ スそのもの、または、そのプロセスの中で自ら 工夫していく力を身に付けていくことであると とらえられている。また、このような授業実践 では湯口(2 0 0 6)が「意味付与された内容を他 者と自在にかかわることによって自己組織的に 追求していく」と報告しているように、友だち

─ 5 6 ─

(3)

や教師、跳び箱やマットなどを含めた環境とい うモノとの関係性の中で自己組織的に運動に意 味付与していく学習であるととらえられよう。

このことが子どもにとって生涯にわたって豊か なスポーツライフを営む基礎となる力を培って いくのだといえる。

 ところで、これまでの体育科授業や跳び箱運 動では、鈴木(2 0 0 4)が述べる「機能的特性に 縛られるあまり、結果的に、教材優先の授業づ くりがなされ、その教材に適合した子どもは運 動を楽しむことができるが、そうでない子ども はつまらないという状況を生んでしまってい る」や、山崎(2 0 0 8)が「跳び箱と自分との関 係が、 『できる』か『できない』かという、あ らかじめ決められた二者択一的な関係だけにな ってしまっている」と指摘しているように、教 師の指導目標が固定化されやすく、学習内容が 実体化されたものになるという問題があった。

その結果として、運動における優劣が学習者で ある子どもの意識の中に顕在化することを強め、

運動の好嫌や有能感に影響を及ぼしてきたので あろう。

 そこで、 「関係論的な学習」観といった立場 から、そのかかわり合いの中核として「動く感 じ」を位置づけ、授業づくりを行った。本稿で はこのように「動く感じ」を中核として、 「子 どもたちが跳び箱運動の心地よさを学び合った り、新たな跳び箱運動の心地よさを創造してい ったりする活動」を重視した授業を「感覚的ア プローチ」に基づく授業と定義し、跳び箱運動 の学習指導過程を提案し、子どもの学習の発展 様相を明らかにし、今後の体育授業を構想して いく際の手がかりとすることが目的である。

 研究の方法

 細 江(1 9 9 9) 、鈴 木(2 0 0 8a、2 0 0 8b) 、田 中

(2 0 0 6) 、山崎(2 0 0 8)が提案している「関係論 的な学習」観による体育授業の実践に従って、

授業づくりを行い、その授業を分析し、研究の

目的に迫ることとした。

 授業分析の方法は、第三者的な観察者を置き、

ビデオによるリフレクションに基づき、鈴木

(2 0 0 8c)が開発した質的な授業評価法(カード 構造化法)を用いて、子どもの学習を運動の意 味生成過程から明らかにした。また、この際に 分析者2名が互いに干渉し合うことなく、同じ 授業を分析しあうことで妥当性と信頼性を保証 することとした。

 なお、授業実践の概要は以下の通りである。

 実 践 時 期:平成2 1年 1月〜2月上旬に行 われた授業計7回

 実 施 学 年:5年生3 4名(男子1 7名 女子1 7 名)

 授業実践者:N教諭(7年目)  

 授業観察者:2名  

 研究対象となった授業

3.1 

「感覚的アプローチ」による授業づくり

 Gergen(2 0 0 4、p.1 5 5)によると「感じる」

とは「共同的に構成されたできごと」と述べて いるように、 「感じる」ことは特定の文化の中 に構成された共同体に起きるできごとであると とらえられる。加えて細江(1 9 9 9、p.1 3 1)は

「仲間と教え合ったり、励まし合ったり、ある いは共感したりという、他者や運動とのコミュ ニケーション、つまり『関わり合い』のなかで、

『自分や仲間にとっての運動の意味を創りだし ていくこと』に学習の価値をおく」と主張して おり、体育授業における子ども、教師、運動、

用具などの諸要素を一体としてとらえ、学習を 個人主義的な観点で構想するのではなく、共同 体的な観点で構想する学習観を提唱している。

そして、授業づくりにおいては子どもが味わう

「動く感じ」を共同体で学ぶ相互作用としての

「かかわり」の関係としてとらえた。

 跳び箱運動における「動く感じ」を以下の通 りに整理した。→は教師が子どもに分かりやす

─ 5 7 ─

(4)

い言葉で提示する時の擬音(山崎2 0 0 8、参考)

 ・踏み切り板で踏み切って、身体を投げ出し た感じが心地よい運動である。

  →「ふわっ」 「ビューン」

 ・跳び箱を跳び越した時の身体が浮いた感じ が心地よい運動である。

    →「ふわっ」 「ビューン」

 ・跳び箱の上を回った感じが心地よい運動で

ある。   →「くるっ」

 ・着地でピタッと止まれると心地よい運動で

ある。   →「ピタッ」

 ・友だちと動きをシンクロさせると心地よい 運動である。

 ・友だちとアイディアを出し合い、その文脈 に沿って活動すると心地よい運動である。

 ・友だちに自分たちのよさを知ってもらうと 心地よい運動である。

 ・新たな技ができたり、動きの上達がわかる と心地よい運動である。

 齋藤(2 0 0 4)が「子どもにとって『楽しい』

という実感は予感と回想の中にしか存在しな い」と述べるように、夢中で行っている最中の 子どもには「楽しい」または「動く感じ」は自 覚しづらいものであろう。そこで、子どもが

「楽しそう」だと予感する活動する場を単元初 期に提案し、単元通して子どもが「楽しそう」

または「やってみたい」と思えるような活動す る場づくりをすることに留意する。

 また、子どもが運動した感じを回想できるよ うに、学習カードには「どんな楽しさを発見で きたかな?」という感想文形式の学習カードに 記述することや友だちと対話すること、目を閉 じて視覚的情報を入らなくすることで、より内 省しやすくした。そして、内省することで「動 く感じ」の心地よさを実感させて、学びを振り 返らせるように授業のまとめを工夫した。この ような配慮をし、 「動く感じ」に気付き、拡げ ていくことを本単元のテーマとして考えた。

 授業ではこれらの心地よさを回想することで 実感として残るように仕組みづくりをする。本

─ 5 8 ─

図1 教師が提案する活動する場

(5)

研究では「身体を投げ出す心地よさ」を味わい やすい活動の場で、単元の導入時に活動するこ とを切り口にして授業を展開していく。

  「身体を投げ出す心地よさ」に焦点化する理 由の1つに、跳び箱を「跳び越えるもの」とい う子どもの先入観を崩す意図も含まれている。

子どもは既習の跳び箱運動の経験から「できる

─できない」の二項対立軸で運動をとらえる傾 向があると推測する。そこで、跳び箱を「跳び 越える」のではなく、 「跳び移る」活動を導入 した。これは「跳び移る」感覚そのものを楽し むための活動であり、 「体を投げ出す心地よさ」

を味わうことに焦点化した活動する場を活用す ることで、子どもの心と身体を跳び箱運動にな じませていくねらいがある。

3.2 

「学び」の見取りと支援

 

 〜「夢中」と「飽和」の連続性〜

 授業における子どもの「動く感じ」を中核と した意味生成過程では、夢中で運動することが 重視される。その、夢中で運動を行っている概 念 に フ ロ ー 体 験 が あ る。フ ロ ー 体 験 と は Jackson・Csikszentmihalvi(2 0 0 5)に よ れ ば

「フローとは、ものごとに心身を挙げて深く没 頭し、自分の能力を十分に発揮しているときに 生じる感情であり、挑戦的な活動にともなう感 情である。 」と述べているように、スポーツや 仕事などに深く没頭しているときに生じる感情 である。

 村越(1 9 9 4)はフロー体験について「 『楽し みの場』は『挑戦の場』と中程度の相関を持っ ている。これは課題への適度な挑戦や能力の発 揮が活動に没頭しそれを心から楽しんだフロー という状態を生み出すというCsikszentmihalvi の 主 張 と も 合 致 し て い る。 」と し、

Csikszentmihalviの「CSバランスがとれている ときに体感しやすい。 」という主張を支持して いる。このCSバランスのCはチャレンジ(挑 戦)でSはスキル(技術)である。つまり、行 う活動の挑戦課題の水準と、自分の技術が釣り

合っている状態が望ましいのである。このよう な状態を松田(2 0 0 1)は「できるかできないか わからない成功5 0%・失敗5 0%の状態」と表現 している。小学校体育科の授業でフロー体験を 味わうには、村越や松田が述べているように、

CSバランスが重要であるといえる。

 このように考えると子どもたちが構成する共 同体が、CSバランスが崩れた「飽和」状態時 に、もう一度「夢中」で活動できるようにする ために自らスキルに合った挑戦課題(子どもに とってはさらにおもしろくするための工夫)を 立て、再度「夢中」状態を希求するだろうと考 えている。その時に重視されるのが教師による 子どもの「学び」の見取りである。教師が子ど もの「学び」を見取る視点は「飽和」状態であ る。それは授業における子どもとの言語的・非 言語的コミュニケーションの中で構成されてい る。教師の主観に依拠して見取るため、子ども がどのような様相になったら「飽和」したとみ なすか。加えて、その場合どのような支援を行 うのかを予め考察している必要がある。教師は それをもとに新たな動きが創造されるように時 間的なゆとりを持たせたり、新たな動きが創造 されるような提案をしたり、複数で話し合わせ たり、自然と友達の動きが見えるような仕掛け をして、新たな動きが創造されるよう支援をす る。

 授業における子どもと教師の不断のコミュニ ケーションの中で学びを見取り支援していくこ とが、新たな跳び箱運動の心地よさを創造する ことにつながるのである。そのように考えると 跳び箱運動における子どもたちが新たな跳び箱 運動の心地よさを創造する契機は「飽和」して きたときだととらえられよう。

 新たな跳び箱運動の心地よさを創造するとい うことは、例えば身体を投げ出した感じの心地 よさを切り口に考えたら、さらに遠くに身体を 投げ出す心地よさや違う動き方で身体を投げ出 す心地よさ、友だちと呼吸を合わせて身体を投 げ出す心地よさなどを創造することが考えられ

─ 5 9 ─

(6)

よう(詳細 表1創造される心地よさ) 。この 橋渡し役を時には教師が支援しながら、子ども たちが共同体として、創造していけるように授 業を構築した。

 なお、 「飽和状態の基準」とその「支援」に ついて整理したのが表2である。

 このように、教師が子どもの学びの様子を見 て、意図的に「夢中─飽和」の連続性を仕組み、

新たな学びを創造させたり、次の活動へ移行し たりするのである。本研究の学習指導過程は子 どもと教師とのコミュニケーションによって弾 力的・流動的に授業を展開していくことである。

したがって、単元の流れは大筋で決まってはい るが、時間配分に関しては「いま―ここ」の子 どもの学びの様子を見取り展開していくもので ある。これが、 「夢中─飽和」の連続性に着目

─ 6 0 ─

表1 創造される心地よさ

拡げられた心地よさ 創造される心地よさ

・続けて体を投げ出す心地よさ

・より遠くに体を投げ出す心地よさ(イリンクスもある)

・違う動き方で体を投げ出す心地よさ(新たな動き、新たな技)

・友だちと呼吸を合わせて体を投げ出す心地よさ

・体を投げ出した感じの心地よさ

・踏み切りから一連の動作で跳び越す心地よさ

・より遠くに跳び越す心地よさ(イリンクスもある)

・違う動き方で跳び越す心地よさ(新たな動き、新たな技)

・跳び箱を跳び越した時の身体が浮いた感じの心 地よさ

・よりダイナミックに回った心地よさ(技の上達)

・今までとは違う動き方で回った心地よさ(新たな動き、新た な技)

・跳び箱の上を回った感じの心地よさ

・違う動き方でもピタッと止まれる(新たな動き、新たな技)

・より遠くに着地してもピタッと止まれる

・着地でピタッと止まれる心地よさ

・動き方を変えても動きが合う心地よさ

・友だちと動きをシンクロさせると心地よい運動 である。

・友だちとアイディアを出し合い、その文脈に沿 って活動すると心地よい運動である。

・友だちに自分たちのよさを知ってもらうと心地 よい運動である。

・新たな技ができたり、動きの上達がわかったり すると心地よい運動である。

表2 教師の主観で見る子どもの「飽和状態の基準」とその「支援」

教師の支援 子どもの様子

A 活動を中断し、話し合いの時間にする。

B 他のグループの活動を見学させたり、体験させたりする。

C 跳び方を変えさせる(準教科書も活用させる)

D 跳ぶタイミングを意識させ、集団跳びの要素を入れる。

E 助走の距離を変える。

F モノに意識させる。ex…調節板、段ボール物差し、高さ 活動の停滞

○ 表情に明るさがない

○ 動作に退屈さただよっている

○ 活動と関係のない話題を話す

A 他のグループの活動を見学させたり、体験させたりする。

B 跳び方を変えさせる(準教科書も活用させる)

C 跳ぶタイミングを意識させ、集団跳びの要素を入れる。

D モノに注目させる。ex…調節板、段ボール物差し、高さ 工夫の停滞

○ 話し合っているが場の工夫と動きの 工夫に行き詰まっている。

A 両者の意見2つともやらせてみる。

B 両者の意見のよいところを取り入れられるか考えさせる。

意見の食い違い

(7)

した学習指導過程である。

 また、 「夢中─飽和」の連続性は子ども一人 一人によって違う。そのため、授業の展開上で はそれぞれの子どもによって学びの様相が異な ってくると考えられよう。そのため、組織的側 面の学習形態での一斉学習は考えにくくなり、

より個別学習的になるだろう。したがって、学 習指導過程は流動的になり、子どもと教師の言 語的・非言語的コミュニケーションにより生成 されてくるととらえられる。そこで、本研究で は直線的な学習指導過程ではなく、流線型の学 習指導過程を提示し、子ども一人一人の「夢中

─飽和」の連続性に着目した授業を展開した。

 ここで示す流線型の学習指導過程とは、教師 からの一方向的な学習指導過程とは異なり、授 業における「子ども─教師─運動」の相互作用 により、学習指導過程が変容することを表した 学習指導過程である。個別学習的な展開になる が、それは求めるテーマに沿った個別学習的な 展開なため、グループ学習でも成立する。しか し、グループで同じ動きをする必然性はなく、

個々の文脈に応じた動きが発生してくると考え られる。

3. 3 共同体の生成

 学びを「個人のできごと」から「共同体にお けるできごと」へとパラダイム転換する。共通 のテーマを追求する仲間としてのグルーピング を行う。これを本授業における最小単位の共同 体 と し て 機 能 さ せ る。ま た、鈴 木(2 0 0 7)が

「教師や仲間、モノが独立した存在になってし まうと運動の意味生成が阻害される」と報告し ているように、共同体そのものの人間関係が学 習に大きな影響を与えるため、肯定的な共同体 の生成についてその方図を以下の通り考察した。

①共通テーマの設定  「創ろう! われらの跳 び箱テーマパーク」 : 「動く感じ」である心地 よさを発見・拡げることを学習のテーマとし て組織することで、グループ内で意見の交換 時の話題の焦点化を図る。意見の交換時に話

題の焦点化が図れないと活発な意見交換がで きないと考え、 「くるっと ふわっと ビュ ーン ピタッ」に沿ったおもしろいテーマパ ークづくりを提案した。 「くるっと ふわっ と ビューン ピタッ」に沿う活動が、 「身 体で感じること」につながってくると構想し た。

②共有:最小単位の各共同体での「創造した心 地よさ」を共有するため案内する人(キャス ト)と案内される人(ゲスト)に分かれ、他 のグループのテーマパークを体験することで 創りだした心地よさを共有し、それをもとに 自らの心地よさを拡げるヒントにする(本単 元では「体験タイム

1)

」と呼ぶ) 。

③ 自 己 原 因 性:佐 伯(2 0 0 3、p.1 7 2)が「大 切 なことは自分が何かの原因になりうる可能性 をもっていることを自覚すること」と述べる ように、自分が「必要とされる存在」だとい うことが感じられる手だてを講じた。そこで、

子どもが自由に自分の意見を表明できるよう に考えた。まず、共同体内の雰囲気を重視し、

「友だちの意見は宝物」という合い言葉を出 した。これにより、共同体内で安心して発言 できる雰囲気作りを演出した。

 また、1つの共同体の人数が多いと自分の 意見が反映されにくいと考え、跳び箱の数に 見合うだけ少人数として、6人から7人の人 数でグルーピングした。

 以上の①〜③の方図を手がかりにし、子ども たちの共同体への「参加」を促していきたい。

 授業の展開

4. 1 展開構成

 この授業では「身体を投げ出す心地よさ」と いう「動く感じ」をきっかけとして、動いて感 じる心地よさやおもしろさを体験し、拡げてい くことを学習の中核に位置づけている。またそ こには、子どもが先入観として抱いている「技 をたくさん身に付けなくてはいけない」や「跳

─ 6 1 ─

(8)

び箱は跳び越さなくてはいけない」という思い を崩すねらいももっている。

 授業が進むにつれ、さらに子どもたちが場を 作り替え、動きを工夫していくことで跳び箱運 動の心地よさを学び合ったり、新たな跳び箱運 動の心地よさを創造していったりする活動を促 していく。

 子どもたちはモノに誘発されて活動していく 中で、 「こうやったらもっとおもしろそうだ」

という直感を頼りに、活動する場を作り替えた り、動きを工夫していけるようにさせたい。な お、グループ分けは、技能が異なる男女混合の 6〜7名のグループで活動する。

 グループでテーマに向けて活動する場合(本 単元では「グループタイム

2)

」と呼ぶ。以下

「グループタイム」 )に話し合いで重視されるの が「みんなの思い」である。これは構成員一人 一人の「個人の思い」をすり合わせた結果、表 出されたものである。また、グループタイムで 創り出したテーマワークに則って学ぶことにも 価値があるが、一方で、グループでの活動の中 で発生する「個人の思い」も大切にしたいと考 えた。そこで、個人で自らのめあてに向けて活 動する時間である「こだわりタイム」を設定し た。この「個人の思い」も子どもの運動への意

味付与ととらえられよう。単元が進むにつれ、

「個 人 の 思 い」が ふ く ら み、 「こ だ わ り タ イ ム

 3)

      」の時間が長くなることも推測される。こ

れは子どもとのコミュニケーションの中で見取 り学習を展開した。

 なお、 「グループタイム」も「こだわりタイ ム」も共通していることは、 「動く感じ」で得 られる心地よさを発見・拡げることを目的とし ていることである。

 関係論的学習観に立った感覚的アプローチに よる跳び箱運動の授業の学習指導過程を表3の ように作成した。

4. 2 活動報告

 意識を焦点化することで話し合いや活動が行 いやすいと考え、第1時は身体を投げ出す「ビ ューン」を中心に味わおうと言葉掛けした。既 習の跳び箱運動の学習と活動する場やテーマが 異なるため、その新奇性や体を思い切って投げ 出す感じに没頭している段階であった。主に、

跳び箱を縦方向に開脚跳びで跳び越す活動が見 られた。

 第2時も身体を投げ出す「ビューン」を中心 に味わおうと言葉掛けした。子どもたちは身体 を思い切って投げ出す感じを基に続けて跳び箱

─ 6 2 ─

表3 学習指導過程

4) 

(9)

を跳び越える感じや高い跳び箱を跳び越えよう とすることに夢中になったり、友だちと同じ動 きをして一体感を楽しんだりする姿が見られた。

 第3時も身体を投げ出す「ビューン」を中心 に味わおうと言葉掛けした。跳び箱以外にマッ トを活用し、マットで前転や側方倒立回転など を入れて、跳び箱運動の楽しみ方を拡げている。

また、動きの飽和から新たな活動が導き出され、

ステージのマットにヘッドスプリングで乗った り、横跳びで乗ったり、ブリッジで乗ったりす る活動が見られた。

 第4時からはテーマを拡げ、 「くるっと ふ わっと ビューン ピタッのどの感じを追求し てもよいけど、どれを味わったかを言葉で言え るように」と言葉掛けをした。子どもたちは仲 間との一体感を楽しむ姿が多く見られた。例え ば、友だちと息を合わせ、跳び箱を縦横に跳ぶ 活動や順番に回転するように跳び箱を跳び、最 後に決めのポーズを決める姿が見られた。一方、

自分にとって高い段の跳び箱に挑戦したり、回 転技を行ったりして、新たな動きに挑戦して楽 しむ姿が見られた。

 第5時も「くるっと ふわっと ビューン  ピタッのどの感じを追求してもよいけど、どれ を味わったかを言葉で言えるように」と言葉掛 けをした。子どもたちは友だちと息を合わせ、

跳び箱を縦横に跳ぶ活動や順番に回転するよう に跳び箱を跳び、最後に決めのポーズを決める 活動など、仲間との一体感を味わう活動が見ら れた。また、友だちと第2空間の距離を競う姿 が見られた。このように、他者との関係性の中 で跳び箱運動の楽しみ方を拡げる姿が多かった。

また、ロイター板を導入したこともあり、用具 に引き出される新たな感覚を楽しむ姿も見られ た。

 第6時も「くるっと ふわっと ビューン  ピタッのどの感じを追求してもよいけど、どれ を味わったかを言葉で言えるように」と言葉掛 けをした。子どもたちは前時同様に仲間との一 体感を味わって楽しむ姿が多かった。一方、動

きは単元当初は開脚跳び中心だったのが、回転 技を行う姿が多く見られ、開脚跳びと台上前転 を交互に行う姿も見られた。

 第7時も「くるっと ふわっと ビューン  ピタッのどの感じを追求してもよいけど、どれ を味わったかを言葉で言えるように」と言葉掛 けをした。子どもたちは前時までと同様に仲間 との一体感を味わって楽しむ姿が多かった。そ の中で、友だちや連続して跳ぶことにリズムを 感じるように活動する姿が見られた。今まで以 上にダイナミックに動こうとする姿が見られ、

助走の勢いが速くなってきたように感じられた。

また、跳び箱を跳び越せない友だちに対して助 言をしたり、友だちが跳び越せたことに対して 自分のことのように喜んだりする姿が見られ、

子ども相互に教え合いをする雰囲気も感じられ た。

 授業実践の分析

5. 1 授業分析方法

 鈴木(2 0 0 8c)が開発した「カード構造化法 を応用した質的な授業分析法」と、感想文分析 という質的研究法を用いて「関係論的学習観に 立つ感覚的アプローチ」の跳び箱運動における 児童の学びを解釈することとした。 「カード構 造化法を応用した質的な授業分析法」は授業実 践者とは独立した評価者を1名と授業実践者が 分析に関わった。まず、独立評価者は授業参観 時にポストイットに観察された子どもの学びに 関わることを記述し、それをワークシートに分 類する。評価者は分類する作業を通して子ども の学びを解釈していく。

 一方、授業実践者は授業をビデオで録画した ものを活用し、独立評価者と同様の手続きをと って、子どもの学びを解釈していく。両者が単 元終了後、解釈したワークシートを持ち寄り、

そこから、導き出されたものを一般化し、まと めていく。

─ 6 3 ─

(10)

5.2

 学習様相の変容 

5.2.1 

身体を投げ出す心地よさで夢中になるお もしろい世界

 子どもたちは身体を空中に投げ出す感じを味 わうことを中心に据えて活動した。子どもたち は跳び箱を縦方向にし、助走に勢いをつけて跳 び越したり、逆に助走の勢いをつけないで跳び 越えたり、何度も開脚跳びをして、身体を思い 切って投げ出す感じや続けて自分の身体を投げ 出す感じのおもしろさ、空中に自分の身体があ る不安定な感じを楽しんでいるように解釈した。

 また、高さへのこだわりが強い傾向があり、

「○○段跳べたからよかった」などという言葉 や姿が見られた。これは跳び箱運動に対する挑 戦するおもしろさを感じて活動しているように 解釈された。子どもたちにとって、既習の跳び 箱運動と学習のコンセプトや活動する場が違う ため、その新奇性に興味を駆り立てられ、また、

そこで動いた心地よさを再度求めたいという欲 求に支えられて活動しているように捉えたおも しろい世界である。

5.2.2 

仲間と共に動くおもしろい世界

 第2時、第3時も子どもたちは授業の導入時 の「思い切って身体を投げ出す心地よさ」を味 わうことで意欲を掻き立てられて、次のグルー プタイムへ展開していった。子どもたちは1台 の跳び箱の縦方向と横方向の両方から友だちと タイミングを合わせて交互に跳んだり、2台の 跳び箱を連なってリズムよく跳んだりして、仲 間とともに活動することを楽しむ姿が多かった。

跳び箱を続けて跳び越えることでリズムを楽し んだり、高い跳び箱を跳び越えることで身体が 不安定になる感じを楽しんだりしていると解釈 した。

 また、友だちと同じ動きをして一体感を楽し んだりする姿も見られた。これら、身体で味わ うリズム、身体の不安定さ、他者との一体感は 日常生活では得られない非日常性であり、跳び 箱運動ならではのおもしろい世界であろう。こ の跳び箱運動ならではのおもしろい世界に意味

づけされて子どもの学びが展開されていったと 解釈されよう。

 この他にも、跳び箱以外にマットを活用し、

マットで前転や側方倒立回転などを入れたり、

ステージのマットにヘッドスプリングで乗った り、横跳びで乗ったり、ブリッジで乗ったりす る活動が見られた。これらは、今までの動きに 飽和し新たな動きによって導き出される動く感 じを楽しんでいると解釈された。

5.2.3 

動く感じの拡がりを楽しむおもしろい世

 単元の中盤の第4、5時以降は跳び箱を跳ん でその滞空時間や空中姿勢を楽しんでいる姿が 見られた。また、台上前転も加わり、回転する 心地よさを追求する姿が増え始めた。これは、

開脚跳びでは得られない動く感じを求めたため と解釈した。また、ロイター板を活用し、踏み 切り板では得られないより弾む感じを楽しむ姿 も多かった。

 跳べない高さへ挑戦する姿も依然として見ら れた。これは、できるかどうかわからない楽し さの追求、または、仲間と心地よく跳び合いた いという欲求から活動しているように解釈した。

 子どもたちは、新たな動きや新たな用具、挑 戦することなどによって、多様な動きの感じや 他者との動きの感じを求めて活動を展開してい ったと捉えられよう。そして、その運動の意味 に支えられ運動の世界を拡げ、追求していった と解釈された。

5.2.4 

多種多様なおもしろい世界

 単元の終盤の第6時、7時は開脚跳び、台上 前転、交互跳びや連なって跳ぶことなど様々な 活動の姿が見られた。これらの活動は子どもた ちの創意工夫の中から多種多様な拡がりを見せ ていた。いずれも跳び箱運動ならでは動きの心 地よさを追い求めていった結果、現れていた活 動であった。また、単元の中盤までは見られな かった、友だちの上達に対する喜びに関する感 想も見られるようになった。

 子どもたちは他者と同じ動きをしたり、リズ

─ 6 4 ─

(11)

ムを合わせたりして楽しむ世界に加えて、競争 したり、相互評価したりするなど他者との関係 性の中での楽しみ方も拡げられたと解釈した。

他者と競争することは、一般的に自らの技能を 他者と比較し、その優劣を競うものだが、子ど もたちは競争自体を楽しんでおり、 「できる─

できない」を越えた活動自体を楽しむおもしろ い世界だと解釈した。子どもたちは学びの中で 他者との関係性を拡げ、それにより跳び箱運動 の楽しみ方も拡げられたと捉えられよう。

6 結論

 本稿では「跳び箱運動ならではの動きの心地 よさ」を味わうことを柱にして学習指導過程を 構成した。子どもたちが「身体を投げ出す心地 よさ」をきっかけに跳び箱運動のおもしろい世 界に参加できるよう構想した。子どもたちから は「空をとんでるみたい。 」 、 「続けてやるのが 楽しかった。 」 、 「エバーマットに跳び込んだ時 にビューンを感じた。 」という感想が寄せられ たように、まず、身体を投げ出す心地よさに触 れることが学びのきっかけとなったといえよう。

 子どもは単元初期、躊躇しながらも徐々に思 い切って活動するようになり、個人的にその動 きの心地よさを探究した。その後、他者とリズ ムを合わせたり、他者の動きの真似をしたり、

他者に自分で創意工夫した動きを見せたりして 活動を拡げるようになった。いずれも、他者と のかかわりの中で生成され、意味づけられてい った活動だといえよう。

 単元を通して、思い切って跳び箱を何度も跳 び越す姿や身を物に委ねる姿が多く見られた。

それは、日常生活では得られない跳び箱運動な らではの動きの心地よさに酔いしれ、また、そ の感覚を得たいがために再度動きが生成されて いくように捉えた。さらに、活動もよりダイナ ミックな動きが生成されてくるようになり、ダ イナミックに動くことでこの感覚を追求する活 動であると解釈した。

 活動の中で、跳び箱運動ならではの「動く感 じ」を振り返りながら学習を展開した。子ども たちにとって「動く感じ」を中核とした感覚的 アプローチに基づいて授業づくりがされている ことで、授業での学びが「動きを感じる私」が 拡げられることに主眼が置かれ、生成的な学習 が展開されたといえよう。

 跳び箱運動における子どもたちが新たな跳び 箱運動の心地よさを創造する契機は「飽和」し てきたときだととらえ、 「夢中」と「飽和」の 連続性に着目して支援を行った。授業の実際で は、子どもたちの動きの大半は自ら創造し発展 していったものであった。また、子どもたちは 活動しながら、他のグループの様子も見ており、

おもしろそうなことはすぐに取り入れていった。

 授業中に「飽和」を見取り支援した具体例と して2点を挙げたい。それは、 「跳び箱やマッ トなど用具の置き方の助言」 、 「共に活動し、新 たな動きを見せる」である。用具の置き方で動 きが拡がるものである。マットを1枚足したり、

跳び箱の向きを変えたり、助走路を長くしたり することで子どもの動きに前転が加わったり、

思い切って助走し踏み切ったりするなど拡がり ができるようになった。また、教師が子どもと 共に動き、そのテーマパークの心地よさを共有 し、賞賛することが子どもの意欲につながった。

加えて、その場で教師が新たな動きを見せるこ とで、子どもが真似する姿も見られた。教師が

「飽和」を見取ろうという観点で子どもを見て、

評価していくことで子どもがさらに「夢中」で 活動していったように感じられた。

 子どもたちは授業を通して、他者との関係性 を拡げ、それにより跳び箱運動の楽しみ方も拡 げていったと捉えられよう。したがって、子ど もたちの共同体の有り様は非常に重要であった。

子どもたちは共通テーマを設定することで、学 びの方向性を意識して話し合いをしたり、活動 したりすることができた。さらに、体験タイム を行うことで、他のグループのテーマパークを 体験することで自らの心地よさを拡げるヒント

─ 6 5 ─

(12)

となった。

 課題としては、テーマから逸れてしまう活動 の方向修正と「動く感じ」へ子どもの意識を向 かわせる仕組み作りである。テーマから逸脱し てしまう活動を子どもの主体性を損なわずに軌 道修正するのは教師の言葉掛けに注意する必要 があるだろう。また、 「動く感じ」へ意識を向 かわせるために、話し合うテーマを具体的に提 示したり、学習カードの書き方の例示を示した り、教師の言葉掛けを「動く感じ」に焦点化し て行うことが仕組み作りとして考えられる。

1)体験タイム

  クラスをキャストとゲストに分け、他のグ ループの活動場所に移動し、実際にテーマパ ークを体験することで他のグループが創りだ した心地よさを共有し、それをもとに自らの 心地よさを拡げるヒントにする。各グループ 内で前・後半のキャストとゲストを決め、前 半・後半に区切って体験タイムを行う。

  単元中盤になり、子どもの創った場が似通 ってきて、体験タイムの効果が薄れてきたら 行わない。

2)グループタイム

  クラスを6〜7名の男女混合グループを5 グループ組織し、それぞれのグループごとに 自分たちが楽しめる跳び箱テーマパーク作り をする。各グループに跳び箱2台まで使用し てよいことにした。基本的には、中央に向か って跳ぶようにし、自然と他のグループの動 きが見えるようにした。

3)こだわりタイムまたは再グループタイム   体験タイム後、再び、自分たちのテーマパ

ークを作り替え活動する。また、個人的に1 つの技の練習に取り組みたい子どもに対して はそれを取り組んでよい時間とする。この時 間の持ち方は流動的であり、その授業の状況 と文脈に応じて変容する。  

4)ジャンピングタイム

 準備運動を行った後、 「ジャンピングタイム」

で教師が用意した「体を投げ出す心地よさ」

を体感しやすい場で活動する。この際、子ど もたちは4つの場を時間で区切ってローテー ションして活動する。留意点として、子ども が恐怖心を抱くような要因をマットなどで取 り除き、安心して取り組めるようにした。

引用・参考文献

細江文利(19) 子どもの心を開くこれからの体 育授業.大修館書店 pp.17−2

伊丹敬之(25) 場の論理とマネジメント.東洋 経済新聞社 pp.26−2

レイヴ&ウェンガー:佐伯胖訳(13)状況に埋め 込まれた学習.産業図書 pp.25−2

ガーゲン:東村知子訳(24)あなたへの社会構成 主義.ナカニシヤ出版 pp.71−2

松田恵示・山本俊彦編(21)『かかわり』を大切 にした小学校体育の35日.教育出版 pp.4−

松本大輔・細江文利・鈴木直樹・田中勝行(28)

ワークショップ形式の跳び箱運動における児 童の学びの解釈.東京学芸大学紀要 pp.1

−1

文部省 小学校学習指導要領解説(体育編,19) pp.8−9

村越真(14)スポーツ活動の意味づけが、心理 的健康に及ぼす影響.社団法人日本体育学会  体育学研究、39 pp.1−1

ジャクソン&チクセントミハイ:今村浩明ほか訳

(25)スポーツを楽しむ.世界思想社 岡野昇(26)関係論的アプローチによる新しい

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佐伯胖(23)『学び』を問いつづけて.小学館  p.12、pp.27−2

佐伯胖・藤田英典・佐藤学(15) 学びへの誘い.

東京大学出版会 pp.2−9、28−3

佐伯胖・藤田英典・佐藤学(16) 学び合う共同 体.東京大学出版会 pp.15−1

齋藤次郎(24)子どもが「楽しい」と感じると き.体育科教育第52巻第11号.大修館書店.

─ 6 6 ─

(13)

pp.10−1

鈴木直樹(24)みんながスポーツの楽しさを実 感する教師の指導力.体育科教育第52巻第1 号.大修館書店.pp.23−25 

鈴木直樹(27)運動の意味生成を支える体育授 業における諸要因に関する研究.臨床教科教 育学会 第7巻 第1号 pp.63−6

鈴木直樹(28a) 体育の学びを豊かにする『新 し い 学 習 評 価』の 考 え 方.大 学 教 育 出 版  pp.37−4

鈴木直樹(28b) 関係論に立つ 小学校体育の 授業づくり.大学教育出版 pp.18−2

鈴木直樹(28c) 体育授業の質的研究法の開発.

平成17年度〜平成19年度科学研究費補助金  研究成果報告書 pp.37−7

田中勝行(26) 運動の楽しさや喜びを味わわせ るための授業づくり.さいたま市長期研修教 員研修報告書

山 崎 大 志(28)実 践 報 告 創 ろ う!み ん な の 跳び箱ワールド .平成20年埼玉体育学会口 頭発表資料

  (2 0 0 9年3月2 5日提出)

  (2 0 0 9年4月1 7日受理)

─ 6 7 ─

(14)

─ 6 8 ─ 第1時 オリエンテーションのため感想文を書いていない。

第2時 ビューンを中心にという言葉掛け

   「空をとんでるみたい」 「ポーズを決めるのがおもしろかった」 「○○段の跳び箱を跳べて楽し かった」 「続けてやるのが楽しかった」 「エバーマットに跳び込んだ時にビューンを感じた」

第3時 ビューンを中心にという言葉掛け

   「工夫して跳び箱を置く所を作ったのが楽しかった。 」 「跳ぶところがふえてすごくよかった」

「前は、とべなかったけど今日はとべた。やったー!」 「新しいポーズがうまれました」 「8段で 前転ができたこと」 「○○段の跳び箱を跳べて楽しかった」 「8だんをこうごにやったこと」

第4時 ビューン以外のくるっと ふわっと ピタッも味わってこようという言葉掛け

   「回ってからとんだことが工夫して楽しかった」 「れんぞくでとべてよかった」 「だいじょうぜ んてんができてよかった」 「あたらしいとび方を考えた」 「ポーズがきまった」 「横にとんだとき 楽しかった(川跳びのような跳び方) 」 「跳び箱をクロスしてビューンをすごくかんじた」

第5時 ロイター板の導入

   「さらにむずかしくなっていて楽しかった」 「高い跳び箱から跳び下りたときビューンを感じ た」 「ロイター板でふわって感じでビューンってジャンプができた」 「ロイター板が来て楽しさ 1.5倍でした」 「新しいポーズになった」 「J1グランプリをやってビューンを感じた(跳び箱を

使った競争) 」 第6時

   「マットの所でぐるぐる回るところがあって楽しかった」 「エバーマットで前回りをした時くる っを感じました」 「8段の横をスムーズにビューンってジャンプできた」 「ロイター板でふわっと しました」 「8だんをたてと横をやってビューンを感じた」 「ロイター板をつかってとんでピタが できた」 「ジャンピングタイムで転回をやったらふわっとなった」 「今日は8だんがビューンとい って、とんでピタッと止まりました。今度はクルッといきたいです。 」 「台上前転した時くるんを 感じた」 「くるっとできた。たのしくできた」 「 (J1グランプリで)点数が高い技をやったとき うれしかった」 「自分の班の跳び箱を面白いとび方でビューンといけたこと」

第7時(最終)

   「8だんをとぶときにビューンという感じがした」 「○○さんが少しとべるようになったので、

今日は私もすごくうれしいです」 「じょそうをつけたときビューンを感じた」 「くるっと ふわっ と ビューン ピタをすべて8段でかんじた」 「8だんの上で三てんとうりつをしたときピタを 感じた」 「エバーマットでふわっと感じた」 「台上前転の8段がクルッとした」 「今日はビューン といくように友だちに教えててすごくおもしろかった」 「台上前転した時、ふわっとぐるんをか んじた」 「つづけてとんだときにビューンを感じた」 「とびこえたときビューンをかんじた」

資料1 子どもの感想

(15)

─ 6 9 ─

A  Study on the Changing Phase of the Learning in the  Vaulting Horse Unit which Introduced “Sensual Approach”.

─Focusing on generating the meaning based on “a feeling of the movement”─

Atsushi N ARIYA , Naoki S UZUKI  and Tamiaki T ERASAKA

Keywords:Learning of relationship theory, sensual approach, vaulting horse

  The  purpose  of  this  study  was  to  clarify  how  students  changed  in  the  learning  process 

through the vaulting horse unit.  The vaulting horse unit was constructed based on the approach of 

the relations theory.  Then, “the feeling of movement” was focused.   In order to analyze  this class, 

a  qualitative  method  of  researching  classes  was  implemented.  Educator  reflected  his  teaching 

while watching  a  video  after  class.  In  addition, other  people  constructed cards to recognize the 

class while making field notes in or after a lesson.  As a result, it became clear that learning spread 

through the comfortable feeling of movement only by playing a vaulting horse.  In other words the 

importance  of  touching  the  sensible  interesting  real  world  through  the  movement  had  became 

clear.  From the above, the effectiveness of the learning of playing a vaulting horse was found by 

the sunour approach.

参照

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図版出典

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Furuta, Log majorization via an order preserving operator inequality, Linear Algebra Appl.. Furuta, Operator functions on chaotic order involving order preserving operator

discrete ill-posed problems, Krylov projection methods, Tikhonov regularization, Lanczos bidiago- nalization, nonsymmetric Lanczos process, Arnoldi algorithm, discrepancy

Beyond proving existence, we can show that the solution given in Theorem 2.2 is of Laplace transform type, modulo an appropriate error, as shown in the next theorem..

ローマ日本文化会館 The Japan Cultural Institute in Rome The Japan Foundation ケルン日本文化会館 The Japan Cultural Institute in Cologne The Japan Foundation

Amount of Remuneration, etc. The Company does not pay to Directors who concurrently serve as Executive Officer the remuneration paid to Directors. Therefore, “Number of Persons”

定的に定まり具体化されたのは︑