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鈴 木 満 直

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一41一

〈 研 究 ノ ー ト〉

ウ ィ ク セ ル の 資 本 お よ び 貨 幣 理 論 鈴 木 満 直

1.ま え が き

ア ダム ・ス ミスは,資 本は固定 資本 と 流動 資本 よ りな り,固 定 資本は 設備 ・機械 な ど,流 動資本は貨 幣 ・原料 ・完成 品な どか ら構成 され,固 定 資本は所有 主をかえ ること な く利潤を うみ,流 動資本は 所有主 を 変更す る ことに よって 利潤を うむ とす る。 しか し,資 本 の積極的 作用お よび利潤 と市場 利子 との関係は ど うかな どにつ いての積極的 説 明は全 くみあた らない。J・s・ ミルにな る と,以 上 の諸問題は多少 明瞭 に な る。 市場 利 子率がそれ を中心 に して変動 し,つ ね に復 帰せん とす る均 衡利子率は,一 部は蓄積 の 高に よって,一 部 は社会 の嗜好が 活発 な る産業に傾け るか いなか に依存 し,市 場利子率 は 資金の需給 に よって決定 され る とす る。ス ミスに比 して,資 本お よび利子を実物面 と 貨 幣面 には っき りと二分 してい る。 しか し,依 然 として,資 本の積極的 作用お よび利潤 も しくは実 物利子 と貨 幣 も しくは市場 利子 との綜合 に関 しては極 めて粗 朴 な る説明 しか 加え てお らない。 い うまで もな く,資 本 の 積極的 作用 につい て 先駆的 研究 をな した の は,資 本は迂回生 産を 可能 な らしめ る とい う リカー ドの 資本理 論 を発展 させた ボ ェー ム ・パ ヴエ ル クで あ り,綜 合化は ウ ィクセルで あ る。 しか も,こ の綜 合化は ボ ェーム ・ パ ヴェル クの資本理 論の再検討 の うえ にな され てい るので,ウ ィクセルを現代 資本 お よ び利子 論の パイオ ニア と称す る ことは決 して過 言では ない と思 う。 さらに,こ の ウ ィク セル理 論は ケイ ンズ,ハ イエ クな どに極 めて重大 な影響 を与えてい るので,彼 等 諸理 論 の解 明 とい う観 点か らも,ウ ィクセル理論 の再検討は不 可欠であ る。

(1)

2.ボ ェ ■ 一 ・ 一 一ム ・ バ ヴ エ ル ク の 資 本 お よ び 利 子 論

ウ ィ ク セ ル 資 本 理 論 を 理 解 す るた め に は,そ の 基 礎 に な っ た ボ ェ ー ム ・パ ヴ エ ル クの

串 原 稿 受 領1971年2月15日

(1)E.VonBδhm・Bawerk,KapitalundKapital2ins,II,PositiveTheoriedesKapitaleb,1・

Bd.4.Auftage,Jenal921

(2)

一42一 商 学 討 究 第21巻 第4号

理 論 を説 明す る必要が あ る。

ボ ェー ムは彼 の資本 ・利 子論を展 開す るにあた って,つ ぎの よ うな仮定 を設定 した。

1.定 常状態 。

2.耐 久生産財 は存在 しない。耐 久生産 財の耐用年数 を伸ばす のは,単 に生産期間 を 延 長す るにす ぎない とい う理 由で無視 す る。 したが って,通 常 の理 解では,資 本 と は生産要素 と中間生産物 を意味す る。

3.生 産要素は 労働 のみ で,す べ ての労働は同質で あ る。土地は 自由に解放 され てい る。

4,資 本 を生存基 金(Subsistenzmitte】fonds)と 考 え所 与 とす る。

5.資 本す なわ ち生存基 金に よって生産迂 回が可能 にな り生産は増大 す るが,生 産 力 は 生産過程 の長 さよ りも緩慢 に増大 す る。

6.企 業 と労働者間 には競争が存 在す る。

7.す べ ての生産 部門におい て,生 産関数は相等 しい。一 種類の生産物 が生産 され る ことを意味す る。

8.生 産過 程は一様 に経過す る生 産期 間であ る。一 様 に とは各 生産期間 に等 しい労働 量が 投下 され ることであ る。

ボ ェー ムは以上 の仮定 に もとつ いて,四 つの未知数,す なわち生産量,利 子,賃 金 お よび絶対 的生産期間 を決定す る。

まず一企 業を問題 にす る。

tを 年 で表わ され た生産期間 と し,Pを 一 労働 者 の年平均 生産物 とすれ ば,生 産 関数 は仮定 に よ り,

P=f(り(1)

最 終生産物 の価値 をSと すれ ば,そ れは 生産に用 い られ,前 払 され る全 資本(労 働 者 の生計費)と それ に対 す る利子か ら構 成 され る。1を 一 労働者の年生計 費 も しくは賃

金 とし,産 出高一単位 を計算単位 とすれ ば,最 終 生産物 の価値 は, s=tl十tl・Zt

資本が賦 払的 に投資 され る とすれば,

IZ{・+(t‑一 一1)… …+1}‑IZ!(7")一'LZ(t;+t)

単位生産期間 を小 とすれば,彦 は が に比 して極め て小 な るゆえ に無視 しうる。

(3)

ウィクセルの資本 お よび貨 幣理論(鈴 木) 一43・

し た が っ て,

1■彦1 彦

=〃 ・z‑tl・z峠 22

仮定 され る 単利 の場合 には,利 子総額は 賃 金総額 に 利子率(Z)と 平均的 生産期間 ('2)を 乗 ずれば よい ことにな 者1'

賦 払を前提 とし,両 辺 を1で 除す ると 物 を表 わす。

,夢 は い うまで もな く一 労働者 の 年平均 生産

し た が っ て,

P・1(Zt1十 一一 一

2) (2)

変 形 す る と,

P

= Z

つ乙チ﹃

1

﹂ (2)'

上 式は利子率 は平 均的生産 期間で割 った内部収益率 に等 しい ことを意 味す る。

利 子 率 を 最 大 に す る た め に,(2)式 の 両 辺 をtに 関 し て 微 分 す る と, 4PIz

dt2 (3)

1を 所 与 と す る と,(1)(2)(3)式 よ り 求 め るP,Z,tが 決 定 さ れ る 。Zを 所 与 と し,1 を 変 数 と す る と き に も(3)式 は 不 変 で あ る ゆ え に,(1)(2)(3)式 よ りP,1,tが 決 定 さ れ る 。

い ま(3)式 のzを(2)'式 に 代 入 す る と, 4PP‑1

4t '

す なわ ち、利 子率が最大 な るときには,限 界生産物 は時 間単位(年)当 りの利子 に等

(2}・ 一 …様 に 経 過 し な い 生 産 期 間 お よ び 一 様 に経 過 して も複 利 の 場 合 に は,平 均 的 生 産 期 間 の 計 算 は 極 め て 複 雑 に な り困 難 と な る。 し た が っ て.ボ ェ ー ム の 資 本 お よ び 利 子 論 は 単 利 を 仮 定 し.一 様 に経 過 す る 生 産 期 間 も し く は 近 似 的 に そ れ で 表 わ し う る極 め て 限 定 さ れ た 現 実 の 一 面 の み を 問 題 に した に す ぎ な い 。 資 本 お よ び 利 子 論 の 一 般 化 は 平均 的 生 産 期 間 の 否 定 に 通 ず る 。 そ れ ゆ え,ボ ェ ー ム の 生 産 関 数 を ウ ィ ク セ ル に 従 っ て 絶 対 的 生 産 期 間 ω で 表 わ し た 。 平 均 的 生 産 期 間 で 表 わ し た も の に F.Lutz,TheT漉oワofInterst.Zurich1966.し か し,こ の 絶 対 的 生 産 期 聞 に も 問 題 が あ る 。 本 源 的 生 産 要 素 が 消 費 者 に ま で 成 熟 す る 期 間 の こ と で あ る が,現 実 の 経 済 で は.固 定 資 産 か 自 己 再 生 産 して い る 。 した が っ て.生 産 期 間 を 考 慮 す る と す れ ば,「 こ の 期 間 は あ る 一 定 段 階 の 生 産 物 を 資 本 財 と し て 買 入 れ,そ れ か ら進 み て め ざす と こ ろ の 消 費 財(も し く は 資 本 財 と し て の 完 成 財)に 到 達 す る ま で の 期 間 で あ る。 あ る 中 途 の 段 階 か ら,す な わ ち資 本 を も っ て 調 達 した る形 の 生 産 財 か

ら完 成 財 ま で の 成 熟 期 間 で あ る.と い う 意 味 に お い て 相 対 的 で あ る 」(高 田 保 馬 著.「 利 子 論 』(岩

波 書 店,昭 和12年)262頁 。

(4)

一44一 商 学 討 究 第21巻 第4号

しくそ の ときの利 子率は(・脚 こよ り,器 号,す なわち半年単位 の資本の限界生産物 を賃 金で割 った ものに等 しい。

以 上の内容 を図示 すれば以下 の とお りであ る。彦お よびPを それ ぞれX軸,y軸 に

と り,(1)式 の 生産 関数 を 図示 す る ρ

と,仮 定 に よ りX軸 に対 して 凹 な る形 とな る。 また資本 な き即時 生産 におい て も若 干生 産 され るゆ えに, 原点 よ り上 のあ る一 定点 におい てy 軸 と交 る。y軸 上 に原 点 よ り1(所 与)の 距離 にあ る点 を と り,そ の点

よ り生産関数 に切線 を ひ くと,こ の

購 は 蚤 のところで 鞠 こ交

る 。 よ っ てZが 決 定 さ れ る。 た と え ば,‑2=40で 2 あ れ ば,Zは0.5と な る 。 ま た,こ の 切 線 が 生 産 関 数 に 切 す る 点 でPお よ びtが 決 定 さ れ る 。 証 明 は(2)式 を つ ぎ の よ うに 変 形 す れ ば 容 易 と な る 。

P・1‑(参+う ・量

1に つ い て も,1の 代 り にZを 所 与 とす る こ と に よ っ て,tを 決 定 す る こ と が で き る ば か りか,そ れ に 対 応 す るP,彦 を 決 定 す る こ とが で き る 。

と こ ろ で,ボ ェ ー ム は,経 済 の 均 衡 に お い て は,資 本 総 額 と全 労 働 者 は 雇 用 され る と 想 定 す る 。Kを 資 本 総 額(所 与),Aを 全 労 働 者(所 与)と す れ ば,仮 定 に よ り平 均 的

'

生 産 期 間 は 一 で あ る か ら,次 式 が 成 立 す る 。

2

Alt K=一 一 一(4)

2

よ っ て,(1)(2)(3){4)式 を 用 い て,未 知 数,P,t,Z,1を 決 定 す る こ とが で き る 。 ボ ェ ー ムが 関 心 を も っ た 利 子 は ②'式 か ら 明 か な よ うに 本 源 的 利 子,す な わ ち 生 産 が そ れ に 投 ぜ られ た 資 本 の うえ に も た らす 収 益 率 の こ と で あ っ て,市 場 利 子 で は な い 。 彼 に よ れ ば,市 場 利 子 は 均 衡 の 場 合 こ の 本 源 的 利 子 を そ の ま ま反 映 す る に す ぎ な い 。 した が っ て,ボ ェ ー ム の 利 子 論 は 実 物 利 子 論 とい う こ と が で き る の で あ る 。

ボ ェ ー ム は,一 般 に,現 在 財 は 同 種 同 量 の 将 来 財 よ り も価 値 が 高 い と い う 命 題 が 彼 の 利 子 理 論 の 基 本 で あ る と い う。 ボ ェ ー ム の 現 在 財 が 将 来 財 よ り も価 値 が 高 い 理 由 は,基

σ

1

2 '

}

z

(5)

ウ ィ ク セ ル の 資 本 お よ び 貨 幣 理 論(鈴 木)‑45‑・

(3)

本 的 に は3つ あ る 。

(1)欲 望 を 充 足 さ せ る た め の 手 段 の 欠 亡 に よ り現 在 財 と将 来 財 と の 間 に 差 が 存 す る 。 理 .由

a ,若 干 の 人 は 彼 等 の 所 得 能 力 が 現 在 相 対 的 に 小 で あ る と認 め る 。 b .若 干 の 人 は 病 気,損 失 な ど の た め に,現 在 財 に 対 す る必 要 性 が 高 い 。 c.以 上 の 両 要 因 は 逆 に な る 場 合 も あ る 。

(2)現 在 財 に 比 し て 将 来 財 を 過 小 評 価 す る 。 a .想 像 力 の 欠 如 、

b .意 志 薄 弱

c.寿 命 に つ い て の 不 確 実 性

(3)現 在 財 は 将 来 財 に 比 し て 技 術 的 優 秀 性 を 有 す る 。

こ こで 取 り上 げ た 資 本 の 生 産 力 に も と つ く利 子 の 存 在 理 由 は,い う ま で も な く,主 と して 上 記 の ㈲ に 属 す る 。 絶 対 的 生 産 期 間 の 長 さ に 比 例 し て 生 産 能 力 が 増 大 す る と い う こ とは,投 資 時 点 の 相 異 に よ る 生 産 期 間 の 相 異 か ら,現 在 財 が 将 来 財 に 比 して 技 術 的 優 秀 性 を 有 す る と い う こ とで あ る 。 と こ ろ で,現 在 財 が 相 対 的 に 拉 術 的 陵 秀 性 を 有 す れ ば,資 本 総 額 が 所 与 で あ って も な く て も,最 大 利 子 も し くは 最 適 生 産 期 間 を 決 定 す る こ

とは 不 可 能 に な る 。 そ れ ゆ え,上 記 の よ うに 生 産 関 数 に つ い て あ る 種 の 条 件 が 必 要 に な る 。 しか し,そ れ だ け で は 不 十 分 で あ る 。 資 本 の 供 給 側 の 事 情 が 生 産 期 間 の 延 長 に 微 妙 な 影 響 を 与 え る か らで あ る 。 ボ ェ ー ム の(1)(2)の 理 由 が そ れ で あ る 。 ボ ェ ー ム お よ び つ ぎ に 取 り上 げ る ウ ィ ク セ ル に お い て は,定 常 状 態 を 前 提 に し て い る ゆ え に,資 本 総 額 は 所 与 で あ る と す る 。 こ の よ う な 前 提 が 妥 当 す る に して も,ボ ェ ー ム の ω 〔2)の理 由 は, 資 本 家 は 資 本 が 消 費 さ れ な い 程 度 に 現 在 財 を 将 来 財 に 比 し て 評 価 し て い る と い う意 味 で 無 視 で き な い 。 した が っ て,資 本 総 額 所 与 は 時 間 選 好 が そ の よ うに 働 くか ら な の で あ る。 い う まで も な く,ボ ェ ー ム の(1×2)に 対 す る 再 検 討 お よび そ れ ら と(3)と の 統 合 は 発 展 経 済 を 前 提 と した フ ィ ッ シ ャ ー に よ っ て な さ れ た 。(F・Knight,Capital&Interest,

EncycloPediaBrittanica,Vo1.IV,1946.)

(3)ポ ェ ー ム の 三 理 由 は コ ナ ー ド に 従 っ た 。

J.Conard,Introduction'otheTheorpuoflnteresらuniversityofcaliforniaPress.1963.

(6)

一一46‑一 商 学 討 究 第21巻 第4号

(4ン

3.r価 値,資 本 お よ び 地 代 』に お け る ウ ィ ク セ ル の 資 本 理 論

ウ ィクセルが この著 書で資 本理論 を展 開す るにあた り意 図 してい る ものは 二つあ る。

ただ一 つの財が ただ一つの生産要素 に よ って生産 され る とい うボ ェーム理論 の前提 条件 を取 り除 き理論 の現実 化をは か る と同時 に,ワ ル ラス理論 との統 合を な しとげ る ことで あ る。すなわ ち,ウ ィクセルは ワル ラス体系 とは異 な り,時 間要 素を考慮 したあ る種 の 一般均衡理 論体系 を,生 産要素 と生 産物 の種類 の複 数化に よ り展開 してい るのであ る。

しか し,ボ ェー ム理論 の ところで 問題に な った平均 的生産期 間の概念を依然 と して使用 した り,ボ ェーム と同様に耐 久生産 財の存在 を軽視 し,単 利 を仮定 してい る ことな どか ら,彼 の理 論 の妥 当範 囲が極 めて制限的 であ る ことは否 定で きない。

ウィクセルは ボ ェー ム理 論 の完全化 を二段階 にわ けてい る。第一 次完全化 におけ る仮 定はつ ぎの とお りであ る。

(1)定 常状態 。

(2)耐 久生産財 は存在 しない。 ウ ィクセルは 土地概 念に地代財(Rentengut),た と えば道路,鉄 道、家屋 な どを包摂 させ る。 これ らの財 の本源的費用が 家賃や 鉄道 の 運賃率 になん ら影響を 与えない とい うのがその理 由で あ る。

(3)生 産要素 は労働 お よび土地 の二種類 よ りな り,す べ ての労働お よび土地はそれ ぞ れ 同質で あ る。

〈4)資 本 を生存基 金 と考 え所 与 とす る。

(5)企 業 と労働者間 には競争が存 在す る。

{6)資 本に よって生 産迂 回が可能 とな り生 産は 増大す るが,特 定点以降 増加率は逓減 す る。

(7)す べての生産部門 におい て生産 関数は相等 しい。

(8)生 産過程 は一様 に経 過す る生産期 間。

(9)労 働 者一 人に与 え られ る土地面積 の量が増大 すれば,そ れ だけそ の生産物 も増大 す るが収獲逓 減 の法 則が作用す る。

⑳ 第一 の財一単位 を計算単位 とす る。

(4)KWicksel1,tiberVVert,KapilalundRente,NachdenNeuerenNationa1δkonomig.chen Theorien,Jena,1893.

北 野 熊 喜 男.『 ウ ィ ク セ ル 価 値 資 本 及 地 代 』(日 本 評 論 社,昭 和12年)

(7)

ウ ィ ク セ ル の 資 本 お よ び 貨 幣 理 論(鈴 木)‑47一

土 地 を 労 働 と 同 様 に 生 産 要 素 と して い る の で,Pを 一 労 働 者 の 年 平 均 生 産 物,hを 労 働 者 一 人 当 りの 土 地 必 要 量 と す れ ば,生 産 関 数 は 仮 定 に よ り,

1=)===ノfi(t,h)(5)

ボ ェ ー ム と 同 様 に,地 代 お よ び 賃 金 は 賦 払 的 に 支 払 わ れ る と 想 定 し て い る の で,必 要

'

とされ る資本 の 前払期間 は 絶対 的生産期 間の 半分 とな り,平 均的 生産期間は7と な る 。

1を 一 労 働 者 の 年 賃 金,ヘ ク タ ー ル ご と の 地 代 をrと す れ ば,一 一労 働 者 当 りの 年 資 本 支 出 は1+勿 と な り,(2)式 の 代 りに,

P‑(1+hr)(1+ぞ)

利 子 率 を 最 大 に す る た め に(C,)式 の 両 辺 をtお よ びhで 微 分 す る と,

∂Pz 万=(1+h「)i

器 一イ1+ぞ)

⑥ 式 のzを(7)式 に 代 入 す る と,

dPP・‑1・ 一 一hr dtt

(6)

(7)

(8)

したが って,利 子率が最大 な るときには,資 本 の限界生産物は時 間(年)単 位 当 りの dP2

利 子 に 等 し く,そ の と き の 利 子 率 は(7)式 に よ り,万 ・1+hr,す な わ ち,半 年 単 位 の 資 本 の 限 界 収 益 率 に 等 し い 。

ま た ⑥ 式 と(8)式 か らzを 消 去 す る と, 墾

∂hP rl十hγ

土地 の限界生産物 を地代で割 った ものは,労 働 者一人 当 りの年資本支 出に対 す る粗平 均収益 率に等 しい。 この式に(6)式 のPを 代入す ると,

̲==7 ∂乃 1十 Zt

2

土 地 の 限 界 生 産 物 を 半 年 単 位 の 利 子 率 で 割 り引 い た も の は 地 代 に 等 しい 。

と こ ろ で,仮 定 に よ り.総 資 本K(所 与)は 問 題 お る 生 産 期 間 の 長 さ と土 地 使 用 の 比

(8)

一48一 商 学 討 究 第21巻 第4号

率 の も とに あ って,存 在す る労働 者全体 を完全 に就業せ しめ,か つ その際 必要な る地代 を支払 うに十分で なければ な らない。労働者数 を オ(所 与)と す る と,

=一 'K ●A.(1十h●r)(9) 2

' も し く はK

===一(Al+B「) 2

さ らに仮定に よ り,存 在す る土地 面積 の全 部が 資本 に よって需 要 され ねば な らない。

当然の ことではあ るが,均 衡 におい ては,各 労働 者あ た りの最有利 の土地 使用比率が全 国民経済 内に存 在す る土地 ヘ クタール数の全労働者数 に対す る比率 に一致 しなけれ ばな

らない 。全土地 ヘ クタール数をB(所 与)と すれば,

乃=一 一 B ⑩

(5>一 一ω 式 に よ っ て,未 知 数6,す な わ ち,P,t,h,1,r,zが 決 定 され る 。 第2次 完 全 化 の 主 た る 特 徴 は 生 産 物 を2種 類 に し て い る こ とで あ る 。

第2の 財 を 導 入 す れ ば,2個 の 生 産 関 数,Pi・=f(t,hi),P,・g(t2,h2)と 上 記 の(6)(7) (8)式 に そ れ ぞ れ 対 応 し て6個 の 方 程 式 が 追 加 さ れ,結 局 生 産 関 数 と合 せ て 合 計8個 の 方 程 式 が 与 え られ る 。 さ らに,こ れ に 加 え て 次 の 諸 方 程 式 が 成 立 す る 。

尾一丑 ω

乃=童 'A ⑫

2

Kl=一(A,1十B,r)⑯ '

2 '

K2=一(A21+Bり(1の 2

A=A,+/望2㈱

B=B,十B2㈹

K=K十K2㈹

し た が っ て,15の 方 程 式 と15の 未 知 数(P、,P2,Z,r,1,h、,h‑,tl,t2,Bt,・B2,A,,

為,瓦,瓦)が 存 在 し,す べ て の 未 知 数 は 決 定 で き そ う に 思 え る が,実 は こ の 方 程 式 体 系 に は さ ら に 一 つ の 未 知 数 が 存 在 し て い る 。

P,を 計 算 単 位 と す る と,生 産 関 数P,=ノ(hi,t、)は そ の ま ま で よ い が,P2は 今 度 は 労

(9)

ウィクセルの資本お よび貨 幣理論(鈴 木) 一49一

働者 が生産 した 価 値 とな る。 労働者 の生産 した 第2財 の数量 をg2と すれば,.P2=四2 で あ る。 ここに πは財Piを 価値 単位 とした場 合 のg2の 単位価格 であ る。両財 の交換 市場 の考 慮か ら,独 立 した一つ の方程式を導 出 しなければ な らない。両財 のそれぞれ に 対す る各経済主体 の需 要は,周 知 の よ うに,既 知 と仮定 され たそれぞれ の財 に対 す る限 界効用 関数 と所得 曲線 が与え られ ると決定 され る。

い ま,一 労働者 の年所得 を θ とすれ ば,

e・1+br+KZ(δ 保 有 し て い る と 仮 定 す る ア ー ル の 土 地 と κ の 資 本 を

。) 仮 定 に よ っ て,彼 は 貯 蓄 し な い か ら,κ と ッ を 君 お よ び 鳥 財 に 対 す る 需 要 とす れ ば,

θ=κ十 πア

ま た,f(X),g(夕)をXお よびyの 限 界 効 用 の 関 数 と す れ ば,両 財 の そ れ ぞ れ に 対 す る 限 界 効 用 関 数 の 関 係 か ら,

ノ(x)=9(夕)=1:π 最 後 の 両 方 程 式 か ら 万 と ッ が 決 定 さ れ る 。

か か る 操 作 を 国 民 経 済 の 構 成 員 そ れ ぞ れ に つ い て な せ ぽ,均 衡 に お い て は,需 要 は 供 給 に 等 し く な け れ ば な ら な い ゆ え,次 式 が 成 立 す る 。

x=Σx=・4、P、

も し くはy==Σy=A,& π

よ っ て16の 未 知 数 す べ て が 決 定 で き る の で あ る 。

(5)

4.『 国 民 経 済 学 講 義 』 に お け る 資 本 理 論

『国民経 済学講 義』 のなかで ウ ィクセルが 展開 してい る資本 お よび 利 子論は,前 者

『価値,資 本お よび地 代』に対比 した とき 格段 の進 歩がみ られ る。 たびたび問題に して きた平均的 生産期間 の概 念を放棄 し,絶 対的生産期 間だけを使用 して も分析で き るよ う な事 例,た とえば生産要素はす べて生産 の初期 に投入 され る場 合を,単 利 では な く複 利 を前提に して取 り上げ てい るか らであ る。

諸仮定は つ ぎの とお りであ る。

(5}KWicksell,LèturesonPoliticalÈoηo〃2y,Vo1.1,GeneralTheory.NewYork,1967.

(10)

一50一 商 学 討 究 第21巻 第4号

(1)定 常状態 。

(2)生 産物 は ブ ドウ酒一種 類。

(3)生 産要 素は労働 のみ で,す べ て同質 。 土地 は 自由財 。(一 般化 の段 階で は,生 産 要素は労働 と土地 の二要 素)。

(4)生 産要 素は生 産の初 期に一度 だけ投入 され る。

㈲ ブ ドウ栽培に要す る資本は無 視す る。 したが って,社 会 の資本は もっぱ ら貯蔵 さ れた ブ ドウ酒 の価 値(別 言すれ ば 前払賃金総額 と それ に 対す る 複 利合計)に 等 し

い 。

〈6)ブ ドウ酒 の 価 格 は 生 産 期 間 の 長 さ と と も に 上 昇 す る が,上 昇 率 は 逓 減 的 。 (7)ブ ド ウ酒 の 生 産 と 売 却 は 継 続 的 に 行 わ れ る 。

以 上 の 仮 定 に も とづ き 未 知 数4(均 衡 利 子 率,生 ブ ド ウ酒 の 価 格,ブ ドウ 酒 の 価 格, 生 産 期 問)が 決 定 され る最 も簡 単 な 事 例 か ら取 り上 げ る こ と に し よ う。

い ま,三 種 類 の ブ ドウ 酒,す な わ ち3年 も の ブ ドウ酒 を1ヘ ク トロ リ ッ タ ー 当 り90 シ リ ン グ,4年 も の ブ ド ウ酒1ヘ ク トロ リ ッ タ ー 当 り100シ リ ン グ,5年 も の ブ ドウ 酒

1ヘ ク ト ロ ッ リタ ー 当 り110シ リ ン グ,お よび 年 々 の 生 産 量 を100万 ヘ ク トロ リ ッ タ ー

(6)

と 仮 定 し,い ず れ の 生 産 期 間 が 選 択 さ れ る か と い う事 例 で あ る 。

均 衡 利 子 率 は 三 種 類 の ブ ドウ酒 の 価 格 比 較 か ら,年10%以 上,11%(正 確 に い う と 11.11%)以 下 の 範 囲 に 決 定 され る 。10%で あ る と,5年 も の は4年 も の と同 じ収 益 を あ げ る こ と に な り生 産 期 間 は 不 決 定 と な る 。11%を こ え る と 同 様 に 生 産 期 間 は 不 決 定 と な る。 多 少 雑 な 計 算 を す れ ば,一 年 未 満 の 端 数 を 無 視 す る と き4年 も の ブ ドウ 酒 が 選 択 さ れ,現 実 の 利 子 率 は10垂%に 決 定 さ れ る で あ ろ う。

利 子 率 が 決 定 さ れ る と,他 の 未 知 数 は 容 易 に 導 出 で き る 。3年 も の の1ヘ ク トロ リ ッ タ ー 当 りの 価 格 をV3と す れ ば,

V3=(1 .105)‑1×100シ リング

V3は4年 も の を 選 択 し た ゆ え に,市 場 価 格90シ リ ン グ よ りは 少 し高 い 。 同 様 に,V2, V,,V。 を 同 量 の2年 も の,1年 も の お よ び0年 も の の 価 格 と す れ ぽ,

V2=(1 .105)‑2×100シ リ グ

(6)Moneyが 導 入 さ れ て い る の は,資 本 に 関 す る 前2著 蕎 の な か で わ ず か の 割 合 を 占 め る こ の 事 例 だ け で あ る 。 した が っ て.ウ ィ ク セ ル の 資 本 理 論 はMoneyな き経 済 す な わ ち 実 物 経 済 を前 提 に

して い る と い っ て も さ しつ か え な い 。

(11)

,

ウ ィクセルの資本お よび貨 幣理 論(鈴 木) 一51一

Vo=(1.105)‑4×100シ リング=67シ リング

67シ リ ン グ は 生 ブ ト ウ 酒 の 価 格,も し く は1ヘ ク トPリ ッ タ ー 当 り の 賃 金 で あ る 。 仮 定 に よ り,社 会 の 資 本 は 貯 蔵 さ れ た ブ ド ウ 酒 の 価 値 に 等 し く,か つ 年 々 の 生 産 額 は 100万 ヘ ク ト ロ リ ッ タ ー で あ る か ら,社 会 の 総 資 本 をKと す れ ば,

K=〔(1.105)唱4+(1.104)‑3+(1.105)‑2+(1.105)"1コ ×100シvン グ

=31 ,400万 シリング も し くは

K=6,700万 シリング[1十1.105十(1.105)2十(1.105)3コ ー67∫1・105)』L‑31 ,4。。万 … グ

0.105

社会 の総 資本が31,400万 シ リングで あれば,以 上 で未知数 のす べてが 決定 され る。

しか し,社 会の総資本が過 剰 も しくは不足 してい るときには,す べての未知数 が変化す る。た とえば,不 足す る場合 には,生 ブ ドウ酒 の価格,し たが って賃金は下落 し,以 前 よ りも短 い生産期間(貯 蔵期 間)が 選択 され る。短 い生産期間 の方 が利 子率が 高 くな る か らで あ る。過剰 な ときには逆 の現 象が お こる。

以上 の一般的 展開はつ ぎの とお りで あ る。

一 労働者 に よって生産 され た生 ブ ドウ酒の価 値(産 出物一 単位 を計算単位 とす る)を 玲,絶 対的生 産期間の 関数 として表 わ され た 一 労働 者 あた りの ブ ドウ酒 の価値 を 研 と す れば,v。 プ ラス蓄積 された複利合計 はwに 等 しくなけれ ぽな らない。tを 絶対的 生

産期間(も しくは貯蔵期 間),ρ を利 子率 とすれ ば, 躍=f(彦)(1)

W==VGeP̀(2)

も し くは ・一 里̀7'蝿(・)'

個 々 の 企 業 家 はVoが 所 与 で あ る か ら,利 子 率 ρ を 最 大 に し よ う とす る。 ρ を 最 大 に す る た め に,(2)'式 をtに 関 し て 微 分 し,0と お く と,

Hlt

d,t'ii]一 一(logW'"logV・) π万=t2=o

よ っ て 最 大 値 ρ は,

睾 】ogWヲ'09互 一・(・)

(12)

一52一 商 学 討 究 第21巻 第4号

均 衡にお いては,利 子率(平 均 収益率)は ブ ドウ酒の貯蔵 を単位期間 だけ延 長す るに 要す る資本 の限界 効率に等 しい。

以上3個 の方程 式か ら,V。 が 所与 な るときt,Wお よび ρが,ま た,ρ が所与 な る とき%,'お よび 確 が決定 され る。

ところが,全 体系 におい ては 上記 の事 例か ら 明 らか な よ うに,Voは 所与では ない。

した が って,も う一 つの方程式が 必要に な る。所 与 と仮定 され る社会 の総 資本(所 与) は,生 産,販 売,在 庫が完全 に連 続 な場合,賃 金に全生産期 間中の労働数 躍(所 与)を 乗 じ,そ れに蓄積利 子を加 えた ものに等 しい とい う方程式 を有 す る。

κ を総 資本 とすれ ば,

κ一砺 ∫評 網 撃(・)

よ っ て4未 知 数 が 決 定 で き る 。

以 上 の 説 明 を 図 示 す る と つ ぎ の よ うに な る 。 説 明 の 便 宜 上,生 産 関 数 を つ ぎ の よ うに 表 わ す 。

ツ=φ(t)=10ge(VVt) さ ら に.loge(Wt)をY軸,tを

X軸 に と り,loge(V。)をyoと よ ぶ と,tの す べ て の 値 に 対 し て,(2)' 式 か ら

y一 ソo ρ='

す な わ ち,ρ はy軸 上 のlogeV,。 と 生 産 関 数 上 の さ ま ざ ま なloge(Wt) の 値 を 結 ぶ 直 線 の 勾 配 と な る 。 した が っ て,

れ る 。 つ い で,

1・9eVo

'

'

この直線が 生産 関数 に接 した とき,ρ は 最大 とな り,生 産期 間は'、 と決定 さ

ウィクセルは,生 産要 素が二要素(労 働 と土地)で それぞれが一 度だけ異 な った時 点に投 入 され るよ り一般的場 合,た とえば,ブ ドウ酒が 自然の産物 で,ま ず地代 が支払 われ ついで ブ ドウ酒の生産 に労働 が雇用 され る場 合を取 り上 げ る。

aを 雇 用労働者数,bを 土地 面積,tlを 労働 の投資期間,ち を土地 の投資期間,1を

一労働者 の賃金 ,γ を土地一 単位の地代,躍 を全 生産物,産 出物 一 単位 を計 算単位 と

(13)

ウ ィ ク セ ル の 資 本 お よ び 貨 幣 理 論(鈴 木)L‑・ 一 一53‑一

す れ ば,生 産 関 数 は,

レV==ノてa,b,tl,t2)(5)

・ 躍 は 支 払 地 代 お よ び 賃 金 プ ラ ス 蓄 積 利 子 に 等 し く な け れ ば な ら な い 。

w・alei't・+b・ ・')"2{6)

利 子 率 ρ を 最 大 に す る た め に は,ρ を 一 定 に し て,a,b,t、,t2に 関 し て く6)を 偏 微 分 す れ ば よ い 。

∂躍 =」 〆1(7)

∂α

労 働 の 投 入 時 点 ま で 割 引 か れ た 労 働 の 限 界 生 産 物 は 賃 金 に 等 し い 。

鰐 一沸(・)

土地の投入時点 まで割引かれた土地の限界生産物は地代に等 しい。

誓 一副1ゆ

筈 一・ δ ぬ ⑳

利 子 率 は 両 投 入 物 の そ れ ぞ れ の 投 資 期 間 の 長 さ の 限 界 生 産 物 を,そ れ ぞ れ の 投 入 量 (利 子 を 含 む)の 産 出 物 に 占 め る割 合 に よ っ て 割 っ た も の に 等 しい 。

ブ ドウ 酒 の 生 産 はa,bの 一 次 同 次 関 数 と 仮 定 さ れ て い る の で,〈6)式 は(7)(8)式 か ら 独 立 で は な い 。 した が っ て,未 知 数8(W・a,b・tl,t2,p・e・r)に 対 し て 方 程 式 は5で あ る の で,3方 程 式 が 不 足 す る 。

仮 定 に よ り,す べ て の 労 働 者 は 雇 用 され ね ば な ら な い か ら, a=A(所 与)ω

土 地 に つ い て も 同 様 に,

b=B(所 与)ω 総 資 本 の 仮 定 か ら,

K‑al∫le"̀idt,+br∫1・"'・at2〈13)

(14)

一54一 商 学 討 究 第21巻 第4号

(7)

5.ウ ィ ク セ ル の 貨 幣 理 論

ウ ィクセル の 貨幣理論は,「 数量 説を批 判す ることは容易で あ るが,こ の学 説のか わ

(8)

りに さらに良 く又 よ り正 しき見解 を置 き換 え る ことは困難 で あ る」 とい う主張か らも明 らか な よ うに,貨 幣数量 説の メ リッ トは認 め るが,純 粋 な信用経済 を前提 にす るとき, この理論 を もって しては貨 幣の流通速度,し たが って貨幣価値,一 般物価 水準を 明 らか にす ることはで きない とい う認識 に立 って,利 子論 を中心 に した新 しい貨幣価値 論 も し

くは一般物 価水準(資 本理 論の ところで明か に した よ うに,ウ ィクセルは耐 久生 産財の 存在を 軽視 してい るので,厳 密にい うと 消費財価格 で ある)論 を 展開 して ゆ くのであ

る。

ウ ィクセルは 金属貨 幣だけを貨 幣 と定 義 し,貨 幣の機能 は価値尺度,価 値保蔵手段 お よび交換 手段 の三つ あ るが,そ のなか で貨 幣の特徴 た る ものは交換 手段で あ ると述べ, 交換手段 の機能 を特別 に重視 し,ミ ル ・ソー ン トンと異 な り第一順 位に お くのであ る。

価値尺度 と して役立つ財 の本質的特 性は価値 の安定 にあ るが,こ れ は交換手段 と しての 財に不可欠 の要因では ない とい う。歴史的 に,貴 金属が交換手段 と して使用 され,穀 物 が価値手段 と して利用 された事実が あ るか らで あ る。 しか し,交 換 手段 として使 用 され てい る財 が財お よびサー ビスの取 引の価値 尺度 と して も利用 され る ことは極 めて便利で あ るため に,貨 幣は漸 次一 般的価値尺 度 として転 用 された のであ り,し たが って価 値尺 度の機能 は第2義 的 あ るとい う。価値保 蔵 の機能 も同 じように貨 幣の本質的特性 では な い とい う。貨幣を保蔵す る人 に とって考慮 され るものは貨 幣 自身の効用では な くして, 貨幣 の交 換価値で あ り,し たが って保 蔵 され る ものは将 来 の交換手段 としての貨幣で あ

る とす る。均 衡 においては,あ らゆ る財 の需給は 一致 しなけれ ばな らない。 すなわ ち, あ る財 の限界効用は,個 々の消費 者に と ってそ の価 格に比 例す る。 しか し,貨 幣は消費

され ないか ら限界効用 を保 有す る ことはない。保有 してい るのは貨幣の交換価値 も し く は購 買力に依存す る間接的限界効 用であ る となす 。

以 上 の よ うな貨 幣 観 に た てば,当 然 の こ とで あ るが,実 際 の取 引に 必 要 な 期 間 以 外 に

(7)K,wicksell.GeldzinsundGi'terPt'eise,Jena,1898

豊 崎 稔 訳 「物 価 と 金 利 』(高 陽 書 院.昭 和12年) K.Wicksell.LecturesonPoliticalÈoηo醒y,Vo1.II.Money.NewYork,1967.

(8}KWicksell,Geld2insttndGtiterpreise,P39.

豊 崎 稔 訳.前 掲 書.52頁 。

(15)

ウィクセルの資本 お よび 貨幣理 論(鈴 木) 一55一

貨 幣の流通速 度を決定す る ものはない。 しか も現在の発達 した経 済制度 の もとにおい て は,取 引期間は 極めてわず か であ るか ら貨 幣の流通速度は無 限大 に な ることであ ろ う。

しか し,現 実 には予想 され る将 来 の売 買のための準備 もし くは不確実 な負債 の準備 とし て交 換手段た る貨 幣を保有す る。 この貨幣が い うまで もな く価値 保蔵手段で あ り,貨 幣 の流 通速度を 決定す る とい う。す なわ ち,貨 幣需 要を調整 し,制 限 し,貨 幣価値 を修正 す るものは個 々人の現 金残 高であ る とい う。 しか し,信 用 の存 在を無視 した場 合の こと であ り,信 用 の発達,と くに純粋 な信用経済(ウ ィクセルは この制度が最 も望 しい とす るが,そ の根拠は貨 幣の価 値尺度 と しての機能 の軽 視にあ る)を 前提 にす る とき,貨 幣 の流通速 度お よび需 要の決定 は不定 にな り,可 変にな る と主張す る。す なわ ち,ウ ィク セルは 信用の重視か ら,貨 幣数量 説のす べて とは いえない まで も,貨 幣数量 説に よる貨 幣価値 も しくは一般物価 論を否定す るのであ る。

他方,同 じよ うな理 由か ら,マ ル クスな どに よって代表 され る生産費説に よる貨 幣価 値 もし くは 一 般物 価 論 も否定す る。 「 銀行券,小 切 手,為 替手形,も しくは信用 お よび 銀行制度 の一般的発展 に よる銀行 にあ る全 ス トックの効 率的使用は,金 の生産 とは比較 にな らぬ ほ ど交換手段 の量 を増大 させ る し,他 方,長 期間 にわた って,金 生産 の減少 の

(9〕

効果を 中和 させ るであ ろ う」 とい うのが理 由であ る。

また,ト ゥー ク,ミ ルな どに よ って代表 され る銀行主義学 派に対 しては,ト ゥー クな どの物価は貨 幣数量に依存 しない とい う主張 は多 くの真理 を含 んでい るが,貨 幣価値 の 決定 原因 につ いては全然な ん らの解明 も与 えていない ので,彼 等 の主張は あ くまで も数 量 説批 判に とどま り,一 貨 幣学 説を形成す る ものではない と主張す る。

以上 の三学説 の批 判の基礎 にな ってい るのは,す でに 明 らか な よ うに,信 用の重視 に あ るが,信 用を極 めて重視 したのは,い うまで もな く銀行 主義学 派であ る。に もかかわ らず,銀 行主義学派 の主張を全 く受 けいれない のは,銀 行 主義学派 は長期的 には財 とし ての金 と貨幣 としての金を媒 介に した貨幣価値論 を肯 定 してい るゆえに,ウ ィクセルの 根拠は誤 りであ り,実 は ミルな どが最 も重視 した貨 幣の価値尺度 と して の機能 の軽 視 に

(10)

あ る と考 え る。 金 価 格 の 不安 定 とい う 認 識 が この主 張 の 背 景 に あ る ので あ る。 す な わ ち,1870年 代 に金価格が 安定 して いたのは,「19世 紀 後半 におけ る金お よび銀 の大 発見 が多 くの国におけ る人 口の急増 お よび物 々交換か ら貨 幣取 引へ の移転 とと もにお こり,

(g)KWickseH.Lectures,Vol.II.p.149.

(10>拙 稿,古 典 派 の 貨 幣 ・信 用 理 論 お よ び 政 策,商 学 討 究 第21巻 第3号,参 照 。

(16)

一56一 商 学 討 究 第2倦 第4号

それゆ えに,金 の需要 は信用制度 の発 達に もかかわ らず 極め て増大 した とい う事実 に よ る。 しか も,さ らに重要 な こ とは,こ れ らの発見 に伴 って金 も しくは 同種 の本位 制の一 般的採用が 実現 し,銀 がた んな る財 にな った ことであ る。 しか しなが ら,こ れ らの要因 は大 な り小な り偶発 的で あ り,こ れ らの望 ま しい方 向へ の組合 せは,1893‑1913年 間 の 異常 な高物価水準が示 す よ うに,常 にあ てにす ることはで きない。それゆ えに,わ れわ れ の現在 の貨幣制度が 傑 出 してい るとい うのは大 いに錯覚 なのでなので あ り,わ れわれ の全経 済制度を貴金属 の よ うな気 まぐれな ものに依存 させ る ことは 危険で あ り,こ の危

(11)

険 は おそか れはやかれ 明 らかにな るで あ ろ う」 とい う。 よ って,ウ ィクセルは,貨 幣価 値を安定 させ るため には,貨 幣価値 を貴金属か ら分 離 し,信 用経 済を発展 させ るこ とで あ る とし,こ の発展は貴 金属 の生産的使 用 もし くは貴 金属生産 に投 入 され ていた資本の

(12)

解放 とい う長所を も保 有す る と。

それでは,ウ ィクセル の重視す る信用 ・貨 幣 ・資本 との関係は ど うなのであ ろ うか。

貨 幣 と信用 との関係は,信 用が流通速 度 を増大 させ,貨 幣準 備を減少 させ る最良の 挺に な るばか りで な く,信 用供 与お よび資本移転が貨 幣の形態 においてな され る側面にお い て も密接 であ り,信 用 の両側面は たえず重複 し完全 に差別 で きないので,貨 幣市場 と資 本市場は全 く同一の ものであ る とい う。 しか し,貨 幣は貯蓄 移転 も しくは資 本移転手段 であ り,資 本は生産 に利 用 され る実物 資本で あ るゆえに,貨 幣量 と資本量 との間には な んの 関係 もない とす る。

以上 で明 らかに した よ うに,貨 幣価 値,も しくは一 般物価 水準決定 の諸理 論 すなわ ち数量 説お よび生産 費説 な どを否定 した ウ ィクセルは,二 つの利子率,す なわち実物利 子率(資 本理論か ら)と 貨 幣利 子率(貸 付 資金説に も とつ く)と の 関係か ら,貨 幣価値

もし くは物 価変動 を説明 してい くのであ る。

「貸付利子が物価 に対 して全 く中立 的 であ り,財 貨 の価格 を高めた り,あ るいは低下 せ しめた りす る傾 向を有 しない場合 の利 子率 は,一 般に少 しも貨幣取 引を利 用す る こと

のない,従 って 自然 の形態 におけ る実物 資本が貸付 け られ る場 合,需 要供給 に よ って決

(13)

定 さ れ る 利 子 率 と 丁 度 同 一 で あ る 」。 し か し な が ら,実 物 利 子 率 に 相 当 す る 利 子 率 よ り,

(11)K.Wicksell,1・ectttt〔es.Vol.II,PP.125‑126・

(12)rGeldzin』 とrLectUt'es.V■1.IL』 と の 最 大 の 相 違 点 は ・ 後 著 が 貨 幣 の 機 能 を 三 機 能 と し(前 著 で は 貨 幣 の 機 能 は 交 換 弄段 と価 値 保 蔵 手 段 の2つ だ け).そ れ ら に 順 位 を 与 え.純 枠 な 信 用 経 済

が 最 も 望 しい こ と を よ り鮮 明 に す る こ と に よ っ て,自 説 の 正 当 性 を 強 調 し た こ と に あ る と思 う。

(13}K.WickselLGeldzin,P.122.

豊 崎 稔 訳.前 掲 書.93頁 。

(17)

ウ ィクセルの資 本お よび貨 幣理 論(鈴 木) 一57一

よ り低い 「利 子率 を もって銀行 お よびそ の他 の貨 幣貸付者が貨 幣を貸付 け るとす る。そ の場 合には,当 該 経済 関係 の経済 的均衡状態は確 に事実上 崩壊す る。 ……物価 に変化 な けれ ば,企 業者は(資 本家を犠牲 に して)本 来的 企業利得 あるいは労賃以上 に特 別利得 を獲得 し,し か も,こ の利得は 貸付利子が 同一 の相対的状態 に とどま ってい るか ぎ り繰 り返 え され る。 これ に よって企業 者は確 にその事 業を拡張す る刺 戟を うけ,有 利 な る好 景 気をで き るだ け利用 しよ うとす る。 しか して,普 通 よ りもよ り多 くの人 々が また こ う

した事業を営 ま うとす る。す なわ ち,労 働 原料 財貨一般 に対す る需 要は 増加 し,物 価

(14)

は必 然に騰貴す る」。 他方,「 利 子率が上 昇す る場 合には,こ れ らの総 ての ことは反対 の 事 がお こる。 す なわち,企 業者は物価 が 動か ない結果,そ の普 通の所得 では損 失を蒙 り,そ の結果事 業は よ り有 利な る部門へ制 限せ られ る とい う傾 向が お こって くる。す な わち,財 貨 お よび労働 に対す る需 要は減 少 し,あ るいは常 に供給 以下 に とどまる。 した

(15)

が って物価は下落 す る」。

それ では,両 利子率 に差 があ る場合,両 者が一致す るメカ ニズムお よびそれ と物価 変 動 との関係は ど うな るのか 。貸付利 子率 が実物 利子率 よ り低い場 合 には,い うまで もな く資 金需 要は増大す る。 しか し,銀 行の現金準備 との関係で資金供給 は減少 してい き, 貸付 利子率は上昇 して実物 利子率 に一致す る。他方,貸 付利子率が実物 利子率 よ りも高 い ときには,逆 の現 象が生 じ,資 金需 要 の減少か ら貸付利子率は下落 して実物利 子率 に 一致す る とす る 。両 利子率が一致す るまで の期間は,貨 幣制度が弾 力性に富めば 富む ほ ど,一 般に貨幣制度 が物価 の変 動に対 して反応す る ことが少 なけれ ば少ない ほ ど,長 期 化 し,物 価 にお よぼす影響は ます ます 甚だ し くな る とい う。 「 銀行の利 子政策 に関 して は,個 々の銀行 も,ま た個 々の国の諸銀行 も,他 の諸銀行 の営 業方法 と関連 な しには 自 己の手腕 を もって利子政策 を規制す る ことがで きない とい う事 実。 この事実のなか に一 度確定 され た利 子率を保存 しよ うとす る非常 に強い動 因が存在す る ことは確であ る。 た とえ公 開の市場が なん らか よ り生 き生 き と した構 図を示す のが普通 であ る場合 に も,貸 付利子 の高 さが実物利 子の運動に追従 す るのは決 して直接的で な く,概 してただ 遅 々 と

(10K.Wicksell.Geld2in,p96.豊 崎 稔 訳,前 掲 書,126頁 。

貯 誇 は 貸 付 利 子 率 が 実 物 利 子率 よ り低 い 場 合 に は 低 ト し.高 い 場 合 に は 下 落 して 物 価 変 動 に 影 響 を与 え る(Lectures,Vol.II.p.194)と い う謙 論 も あ る が 資 本 理 論 の 定 常 状 態 と い う 前 提 か ら 明 ら か な よ う.に.体 系 的 な も の で は な い 。 そ れ ゆ え に ミル ダ ー ル ・ケ イ ン ズ な ど の 研 究 が 発 表 さ れ た の で あ る 。

(15)K.Wicksell.Geld2in.p96.豊 崎 稔 訳.前 掲,穿.126頁 。

こ こ の 議 論 で は 現 実 の 信 用 経 済 を 前 提 。

(18)

一58一 商 学 討 究 第21巻 第4号

(16)

してい る ことは ほ とん ど確実 であ る」。 だか ら して,物 価変 動の累積過程が お こる とす る。

それでは,不 均衡 すなわ ち両利 子率の不一致 をひ きお こす主 た る原因は なんであ る のか。 金 生産の変化 に よる 影 響を別にすれ ば,技 術革新 な どに もとつ く実物利 子率の 時 々の変化が原因 であ り,貸 付資 金市場 におけ る銀 行行動の保守的 性格か ら物価変 動が

(17) お こる とい う。

しか し,周 知 の よ うに,こ の ウ ィクセルの物 価理 論,す なわ ち,実 物利 子率 と貸付利 子率が一致す る ときには価格水 準は安定す るとい う主張は,ダ ヴ ィッ トソンな どに よっ て きび しく批判 された。 「 他 の事情 を等 しとして も,も しなん らか の理 由か ら生産手段 の技 術的生産力が 高 まるな らば,完 成財 の物価 水準は それ に応 じて下落 しなければ な ら ない。そ うでな いか ぎ り,貨 幣的 システ ム全体 は均 衡を逸脱 して典型的 な る上 昇的累積

(19)

過程が惹 起 され る ことにな る」。 す なわ ち,生 産力の変化 の生ず るか ぎ り,不 変の物価 水準は貨 幣利 子率 と実物 利子率 との一致を保証 す る ものでない と批判す るのであ る。

6.む す び

ウ ィ ク セ ル の 研 究 に は,す で に た び た び 指 摘 し て お い た よ う に,い くつ か の 残 さ れ た 重 要 な 問 題 が 内 在 し て い る 。 し か し な が ら,彼 の 経 済 学 と く に 資 本 お よ び 貨 幣 論 の 発 展 に 対 す る 貢 献 は,ケ イ ソ ズ,ハ イ エ ク な ど に 対 す る 極 め て 重 要 な る 影 響 か ら も 明 ら か な よ う に,極 め て 偉 大 な る も の が あ る 。

そ の 第 一 は,い う ま で も な く,古 典 派 の 人 達 に よ っ て と か く軽 視 さ れ が ち で あ っ た 資 本 を め ぐ る 諸 問 題 を 特 に 重 点 的 に 取 り上 げ,整 理 し,一 般 均 衡 理 論 の な か に 位 置 づ け し た こ と で あ る 。 彼 の 貨 幣 価 値 の 理 論 は ダ ヴ ィ ッ ド ソ ン,ミ ル ダ ー ル な ど の 批 判 に よ っ て,妥 当 範 囲 が 短 期 理 論 の み に 限 定 さ れ て し ま っ た が,そ の 分 析 お よ び 論 争 結 果 か ら, 実 物 利 子 率 と 貨 幣 利 子 率 と の 一 致 が 均 衡 条 件 の 一 つ で あ り,さ ら に 貯 蓄 と 投 資 の 等 し い

こ と が 均 衡 条 件 の 第 二 で あ る こ と が 明 確 に な り,そ の 結 果 ケ イ ン ズ 経 済 学 が 誕 生 し た こ と は 重 視 し な け れ ば な る ま い 。 ウ ィ ク セ ル に お い て は,貨 幣 は 必 ず し も ベ ェ ー ル で は な

(16)KWicksell.Geld:in,p110豊 崎 稔 訳.前 掲 蕎.142頁u

αη 貨 幣 利 ヂ率 が 先 に 変動 す る場 合 も あ るが 少 な い 斜例 で あ る とい う。

K.Wicksell,Lectui‑es,VolILp206.

(18)G.Myrdal.MonetatrvEqttilib"ittm.1939.pp.129̲130

傍 島 省 三 訳.『 貨 幣 的 均 衡 論 』(実 業之 日本 社,昭 和18年)

(19)

ウ ィ クセ ル の 資 本 お よび 貨 幣 理 論(鈴 木) 一59一

い。貨 幣利 子率 の相対 的水準いか んが経 済変動 をひ きお こす か らで あ る。 しか し,古 典 派 と同 様に過 渡的な場合 だけであ って,一 般 には貨 幣利子率 は実物利子率 に追従す る,

いわゆ る実物経 済優先 の原則 が支配 してい るのであ る。 この よ うな原則が貨 幣市場 と資

本市場 の同質性 とい う非現実 的見解を もた らした もの と考 え る。異質性を強調 すれば,

実物利 子率 とは長期 利子率(Lectures,VoLII,P.191.)の ことであ るか ら,こ の段 階で

興 味あ る金利構造 論が展開で きたであ ろ うと思 う。問題は貨 幣面 だけにか ぎ らない。実

物面 において も,耐 久生産財 を軽視 して しま ったために,生 産構造 観が単線的 にな って

しまった し,一 般 に静体を前提 に したために,実 物利 子論の面で もす でに指摘 したい く

つか の課 題を の こす ことにな って しまったので あ る。

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