金沢大学 十 全 医学 会雑 誌 第朗巻 第5号 6 2 3 ‑6 3 0 (1 9 7 9)
新 鮮 骨 格 筋の凍 結 縦断切片 の コ ハ ク酸 脱水素酵素と
コ リ ン エ ス テ ラ ー ゼ 活性 の 同 時検出 法
金沢 大学 医学 部神経情 報研究 施設 (神 経 物性研究部門)
中 村 俊 雄
鳥 越 甲 順
金沢大 学 医学 部解剖 学 第三講 座
高 橋 暁
金 沢大学 医 学 部解剖学 第一講座
山 下 利 夫
( 昭和5 4年8 月2 0日受付)
本 給文の 一 部は
,
第3 7回 日本 解剖学 食 中部地方合に お いて発 表し た。
6 2 3
1 9 5 2年Padykulal)によって酵 素組 織 化 学 的研究 法 が, 骨格 筋の検 索に導 入さ れ るに及 び
,
骨格 筋は,
組 織化学 的 特徴を 異にす る数種の筋 線維がモザ イ ク状に 入 り 混 じった複 雑な構 築を有す ること が判 明し2I,さ ら に筋線 維の酵素 組 織 化 学 的特 徴が, 筋 線維の生理学 的 特徴と 密接に関連して いること が明ら かに な って き が州 .そ して筋線 絶の分 類と して組 織 化 学 的 分類が 一 般に広く 用いら れ る よ うにな り引〜川. こ の分 類は,
正常 骨格 筋のみ な ら ず種々 の骨 格 筋疾 患の 病理診 断 上に も. 重要な地 位を占めて いる.ところで こ の筋 線維は,
成熟し た 骨格 簸でも,
不変のもの でな く. 支 配 神経に よっ て強く影 響を受け,
異 な る 骨格 筋 間の支配神経 交 叉縫合実 験で筋線 維型の相互転換を起こせ ること も可 能になっ て いる12113 I. ま た筋 線維 型と神 経 筋 接 合 部の 形態間にも密 接な相関 が あ ること が示 唆さ れて い る14卜1引. ところで.
筋線維 型 と神 経筋 接合 部の相 関を 検索す る手段と して , Ko r n eliu s s e n ら は1 5)1 6)筋線 維 型 お よ び神経 筋 接 合 部の型の分 布を そ れ ぞ れ独 立に調べ. 相互の分布を対比 す る 間接 法を採っ て いる. し か し, 筋 線 維型 と神 経筋接 合 部を同 時に検 出す る直 接 法
の方が
.
こ のよ う な検 索につ い て は. は る かに優って いること は, 論 を侯た ない .現在
,
神 経 筋 接 合 部を確 実かつ容郵こ検 出す る方法は, コリン エス テ ラ ー ゼ(以下 「ch E」 と略 記) 活 性 検 出 法で■
ぁ る‑ 7I. こ の Cb E 活 性 検 出法と筋線 維型の同 定 指 標と な る酵 素 活 性の検 出法を組み合わ せ れ ば
,
筋 線 維 型と神経 筋 接 合 部の型 との対 応を直 接に観 察できる 訳であ る が.
後 述のよ うに,
模 本作 製 上の困難 性に阻 ま れてt
そのよ う な二重検 出法の報告は少な く,
著 者の報 告岬を含めて
.
わ ず か数 報を見るに過 ぎ ない柑I2り し か も,
これ らの報 告で用いら れ た方 法は,
な お不 備 な 点 が多く. 定量的な検 索には応用 しにくい.筋線 推 型と神 経 筋 接合 部の同 時 検 出標 本作 製 上の難 点は, 神経筋接 合 部の全貌を観 察す るには
,
骨格 筋の 厚い縦 断切 片を 必要と す る点と. 筋線 維型の同定 指 標 と な る酵 素の大 部 分は 固定 剤によって著し く活 性が低 下ま た は消 失す る点にあ る. 換 言す れ ば,
酵 素 活 性を 保存す る た め新 鮮骨格筋の凍 結 切片, し か も 3 0/上以上の厚い縦 断切片を 必要とすることであ る. こ のよ う な切 片を 通常の方 法で作 製す れ ば, 凍結 切 片の融 解 時に起
こる 筋線維の収 縮のた め
t
著しい変形が起き細雪 同 時に
,
神 経 筋接 合 部の形も変化す る2 2l.今臥 わ れ わ れ は,こ の よう な収 縮によ る人工的 変 化を. Ethyle n ed ia‑ min e‑ tetr a a C etate( 以下 「 E D T A 」 と略記) を 塗布
Sim ulta n e o u s De m o n stratio n of Su c cinic Dehydr oge n a s e a nd C holin e ste r a s e A ctivitie s
in the Fto ze n Lo ngitud in al Se ctio n of the Fr e sh S keletal m u s cle. T o shi。 N aka m ur a
& Eoju n T o rigo e, I k pa rtm e nt of B iophysic s
,
N e u r o‑Info r m atio n Re s e a r ch In stitute,
Scho ol of M ed icin e
,
A k ir a T akaha sh i & To shio Y a m a shita, Depa rtm e nt of A n ato my,
Scho ol of M edicin e
,
K an a Z a W a Univ e r sit y.6 2 4 中村
・
鳥越。
高橋・
山下し た カバ ー グラス の使用によっ て抑え
,
コ ハ ク酸 脱 水 素 酵 素 ( 以下「 S D H 」 と略記) とch E 活 性の両者を同時に検 出す る方 法を案 出し たの で報 告 する. 材料お よび 方法
材料と して
.
d dN 系マ ウ ス前 脛骨筋を用いた. 頸 椎 戚臼によっ て屠 殺し たマ ウ スか ら,
直ちに前 脛 骨 筋を,
そ の起始か ら停 止まで の全 長にわ たっ て取り出し
,
前 報2 2Iの方 法に従っ て,
クリオ スタッ ト(サ ク ラ・
コ ー ルド トー ムC M ‑ 4 1 型) 中で急 速に凍 結さ せ
,
1 5〟ま た は 3 0〝凍結 切 片を作 製し た.ま ず
,
先に報じ た筋 線維の人工的 収 縮 抑 制法2 2 I,
す な わ ち冷 却し た寒天塗布カバ ー グラ ス で凍っ た ま まの切 片を採取 し,
40c で1分 間ホ ル マリン蒸 気 処理 を行ってか ら
,
Na ch la sらの方 法珊に準L; てS D H 活 性 検 出法を 行ってみ た.その模 本を観 察 する と.
S D H 活 性は完 全に消 失して いること が判 明し た. そこ で. ホ ルマ リン 蒸気 処理 以外の方 法で
,
人工的 筋 収 縮を抑え. 同時に S D H な ら びにCh E 活性を保 存さ せ る方 法を探してみ た. その結 果.
筋収 縮連 関に関 与 する カルシ ウ ムイオン2 4)2 5)を
,
E D T A・
寒天溶 液塗布カバ ー グラ ス の使用によって除 去す る と
,
人工的 筋 収 縮が抑 制さ れ, 同 時に
.
S D H とcもE活 性の いずれ も保 存さ れ ること が判 明し た. 次に こ の知 見に基づい て,
S D H と Ch E 活 性の同 時検 出法を開発し たの で
,
その操作 法を記 載 する. S D H 活性 検 出法ほ Na ch la sらの方 法23),
C H E活 性 検 出法は Ka r n o v skyらの方 法珊 の著 者の変法2 2)によっ た.
1) E D T A 塗 布カバ ー グラ ス の作製
0.3 % 寒天水 溶液(6 50c) 10 0 m=こ
,
E D T A ‑ 2 N A と E D T A ‑ 4 N A ( 和 光純 薬) を各5g 溶 解し, こ の E D T A 一寒天溶 液に,
カバ ー グラ スを浸してか ら,
3 7qC で1 晩乾 燥 後
.
クリ オスタッ ト中で 冷や して お β=2) ク リ オスタッ ト切 片 作製
新 鮮 骨 格 筋の3 0〟凍 結 切片を前 述の方 法に従 っ て
クリオ スタット( ‑ 2 0Oc) で作 製し
,
冷や し た E D T A 塗布カバ ー グラ スを,
凍 結 切片の上か ら圧 迫し, 切 片をカ′ヾ‑ グラ ス に付 着さ せ る. 次い で
.
カバー
グラ ス に付 着し た切 片を, クリオ スタッ ト か ら取 出すと同 時に
,
手 早く,
ヘア・
ド ライ ヤ ー で室温 約1 0 分 間乾 燥す る.3) Ce1loi din ・‑ C O ating
S D H お よ ぴch E 基 質液に切 片を浸 溝 申. 酵 素の拡 散と カバ ー グラ スか らの切片の剥 離が おこる が, その
防止のた め
.
C hristie の方 法2 7 1に準L: て.
0.5 %c e1loi d in 溶 液で切片を コ N テン ダ す る. c elloi d in
はethyl alc ohol : ethyl ethe r : a C etO n の3 者 等 量i 昆合液に0.5 % の割に溶か し
.
あ ら か じ め ク リオスタット申で冷や してお く. こ の溶液に切 片を約2 秒間 浸し, 余 分の液 を濾紙で吸い取った後
,
クリオスタット申で約5 分 間 乾燥さ せ
,
次い で,
室 温で ヘ ア。
ド ラ イヤ ー を用い て約10 分 間乾燥さ せ る.4) S D H 活 性 検出法
基 質 液 〔0.2 M コハ ク酸ナ トリウ ム水 溶液 5 mエ,
0 .2 M リン酸緩 衝 液(pH 7.4) 5 mL ショ糖1.5g
,
ニトロブルー テ ト ラゾリ ウム 10 mg,蒸 溜 水1 0 m抽こ3 70c で 1 5分 間 浸 潰す る.
5) cb E 活性 検 出法
切 片を 1 0 % ホ ルマ リ ン の 0.9 % 食塩水 溶 液でt
40c
,
2 0分 間 固 定 後.
0 .9 % 食塩 水で, 約1 分 間洗 源 し,
基 質 液 〔1 / 7 M ベ ロ ナ ー ル ・ 酢 酸緩衝 液(pH 5 .5) 5.5 mエ
,
0.1 M クエ ン酸ナ トリウ ム水溶液 0.5 mL,3 0m M 硫酸銅水 溶 液1 .O mL .5m M 赤 血塩水溶 液 1 .O m£.
1 0 5M D F P の0.9 % 食塩 水溶液 1.O mエ. ホル マリン 1.0 山, 沃 化アセテルチ オコ リン5 mg〕に
370c
,
1 5 分 間浸 潰し,
蒸潜 水で1分 間洗 樅後,
エタノー ル脱 水
。
キシロ ー ル透 徹 後,
エ ンテ ラン( 和 光純薬)に封じ た.
成 績
通常の方 法で作 製し た新 鮮 前 脛骨 筋の凍結 横 断切片 に S D Ii 活性 検 出を施し た標 本を 写真 1,2 で 示 し た. S D H 活性反応 産 物であ る fo r ma z a n の青 色沈 澱 の多 寡によ り
,
S D H 活 性の強い筋 線経と活 性の弱い 筋 線 継が判 別でき る∴活 性の強い筋 線 維は,
Engel の分 類7IのⅠ型に
.
活 性の弱い筋 線 推は.
その‡塾に相当 する. 以下の筋線 維型 をこ の分 頓に従っ て記述 する.Ⅰ 型の筋 線 推は
,
‡ 型の筋線 維に比 して,
一般に細い.
そ れ ぞ れの型の筋 線 維は
.
数 本集って群を な して いる 場 合が多いが,
1本だ け 孤立して存 在 する場 合も 認 め ら れ る. こ の両 種の型の筋線 維群が お 互い に入り 混 じっ て
,
モザ イク状の外 観を 呈 L て いる(写真1). 強拡 大で観 察す る と S D H 活 性 反 応 産物は,
微細な蝮粒と して言忍 め ら れ る( 写 真2). S D H 癌 性が ミ トコ ン ド リ ヤに局 在して いること は,
すで に生 化 学 的28Iにも電 子顕 微鏡的 細 胞 化 学2 別によっても明ら かにさ れて いる こと か ら,
S D H 活 性 検 出 法によっ て見 出さ れ た鰭 粒 状 構 造 物は,
ミ トコ ン ドリ ヤに相 当す る と判断でき る・Ⅰ.型の筋線 絶に分 布す る S D H 活 性を示 す 青色顆 粒 は