1404 長崎医学会雑誌第32巻第11号1404−1420頁
肺吸虫症に関する研究
第一篇疫学的研究
長崎大学風土病研究所臨林部(指導 兼任所員 横 田素一郎教授)
長崎大学医学部内科学第一教室(主 任 横田素一郎教授)
田中德郎
J− なか ごく ろう
(本文の要旨は第23回及び24回日本寄彗虫学会稔会及び第9同日本寄生虫学会南日本安部大会 において発表した.)
緒 日本にほ現在4種の肺吸虫即ちPαγαg0ナ7′ー mus wesiermanli(KERBERT,1878)BRA UM,1899(以下P.wβ5£.と略記),P(汀α■
g0nimus0hiraiMIYAZAKI,1939,Para−
g0ntmuSiL0klsuememsis CHEM,1940 及び Pαγαg0mgmuぶゑβ出c0ffブWARD,1908の分布
が明らかにされているが,これら4種の肺 吸虫の中,人体に寄生することが稀でなく,
医学上最も重要なものほ P.00β∫よ。である.
P.00β払 の発育史についてほ,幾多先人 の業績がある.即ち1915年中川34)ほ台湾に おいてP0iam0n rathbuniDE MAN(ラス バンサワガニ)から最初の本虫メタセルカリ アを認め,叉 Poねm0m dβ如αm′ WIlITE
(サワガニ)及び扇γわcカβgγブ〃♪0mgcuぶDE HAAM(モクズガニ)からも本虫メタセル カリアを認めて報告した・次いで安藤3)4)ほ 岐阜県可児郡のサワガニ及びモクズガニから
日本内地における最初の本虫メタセルカリア を認め,1920年にほ第一中間宿主が河貝子で あることを実験的に決定して報告した・その 后更に横川57)は静岡県においてCαmあαγu∫
L:larkiiGIRART(アメリカザリガニ)から も本虫メタセルカリアを認めたので,現在日
(P
)
本におけるP・甜βざf.の第2中間宿主として は,モクズガニ,サワガニ及びアメリカザリ ガニの3種4−り51)と考えられている●
モクズガニはサワガニ及びアメリカザリガ ニに比して日本全国至る所に棲息し,一般に P.即βぶf.メタセルカリアの寄生率が高いばか りでなく,食用に供されることが多いので人 体肺吸虫症の最も重要な感染源となってい る.従ってモクズガニの調査ほ本症の発生状 況を究める上に疫学的に最も重要な因子とし て諸所で行われ,その地方におけるP.紺β吼 の分布を知る良い資料となっている.
長崎県下における人体肺吸虫症に関して
は,これまで諸氏1)2)15)18)1P)28)2n)43)54)
捕)により相当数の症例報告があり,又全県 下に亘る本症の発生状況も纏めて調査報告さ れているが,モクズガニに関してほ1〜2叉 ほ数ケ所の地区に限定した報告が多く,県下 全般に広範囲に亘って調査した報告ほ見当ら ないようである・著者ほ長崎県下一般に亘る 30ケ所のモクズガニについてP.00βぶf.メタ セルカリアの寄生状況を調査し,一部でほあ るが人体肺吸虫症並びに人以外の本虫終宿主 についても調査したのでその成績を報告する.
その− 長崎県下のモクズガニにおける肺吸虫メタセルカリ ア寄生状況について
調 査 方 法
昭和28年9月より昭和32年8月に至る間,長崎県
下一般に亘って凡そ30ケ。所のモクズガニを採集して
エヲ,肝及び筋肉を2枚の板ガラスにはさみ,10倍
肺吸虫症に関する研究 1405 の解剖同額徴鏡でメタセノ卜カリアの有無,その数班
びに種類を検索した・文一部のモクズガニについて はエヲ,肝,心,その他の内臓,脚部の筋肉及び休 部の筋肉に分別して詳細に親察した.メタセノンカリ アの種類の同定は宮崎訓)51)の鑑別法に従つたが,
文一部のメタセノトカリアを猫に経口投与して感染さ せ,その成虫について皮額の生え方1S)51)及び卵巣 の分蚊状態描)51)を観察して同定の参二者とした・
調 査 成 績
1° 河川(地区°別にみた寄生状況
長崎・県下各確(第1図°の3。河川(名が明らかで ない小川で採集したものは旧町村割こよる地区°に おけるモクズガニのメタセノしカリア寄生状況を調査 した結果,第1表にみる如く,30河川(地区°の 中,守Lり村 大正村,土黒村土黒目,有家町有家 川,北有馬村大手川 諌早市有喜町,江の浦村,戸 石村,矢上村中尾川,茂木町 目原村宮崎川,高浜 村,長崎市浦上川,式見村,柚木村,佐々町佐々川
及び志佐町志佐川の17ケ所のモクズガニに,メタセ ノ卜カリアを恵め,その中,寄生率の最高は土黒川の 69.4%にして,次いで式見村の50.4%,守山村及び 志佐川の50%,佐々川の45.4%,中尾川の40・2%,
北有庸村大芋川の37・4%の順となり,最佐は浦上川 の4.1%であった・而して湯江村堵川,島原市大芋 川,島原市音無川,望崎村,千々石町,団結村,探 婦村江川,長崎市戸町川,福■田村宇脚し三重村,押 頂村神酒川,七名村伊佐浦川及び田平町平戸口の13 ケ所のモクズガニには,全くメタセノ卜カリアを認め なかつた.以上総計すると,940匹中208匹陽性にし て,平均寄生率は23.2%であつた.
2° 雌雄別にみた寄生率
雌雄の判明した905匹のモクズガニにっいて雌雄 別にメタセルカリアの寄生率をみるに,第2表に元 す如く雄426匹中89匹(21.1%°,雌479匹中129匹
(26.9%°陽性にして,雌が雄よりも綿々高い寄生 率を元しているが,各河川・(地区°別にみるに第1 表1図 モクズガニを採集した場所
\_.
((●)平戸□° (志 (。)佐°
し ,
.(佐々°
.しこ釜)
.
(ヽ)、\
く柚木° \」・、ノ ヽ
ヽ
ノ
、\
ヽ
(湯江)
●し梱畠ヽ(.)
し三重−
(.)●l王\宛
(福田蛸.(・骨 旧姑)・(奉書)
・.矢上) (。).
・(p石)r江の削
.1F旧丁
.(渾堀、(。)伐木ヽ
申
((・)患血
・(大正)
●(寺山).(士官=
(島原)
.(千々石) …
(裾象)
(北看雪)。
・
(.)(堂痛j
表の如く畔雄の寄生率 は比較的まちまちで−▲
足しなかつた.
3° 甲.殻の大きさか らみた寄生率
モクズガニの甲殻の 大きさによってメタセ ノ1ノカリアの寄生率に差 異があるか否かをみた のであるが,第3表に 京す如く/.トさいカニ程 寄生率が高い傾向がみ られた.即ち甲談の最 大巾30mlTゝ以下のカニ では9匹中4匹(44.4
%°,31−40mlⅥのカニ では39匹中1S匹(38.4
%°,41−50mmのカニ では106匹中38匹(35.8
%°陽性にして,次 いで51〜・60mmのカニ 18.4%,61−701Ⅵmの カニ14・2%,71−80ml加 のカニ12.5%の順とな り,81mm以上の大き なカニでは9匹調べ,
総べてにメタセノ卜カリ
1406 田 中
第1表 河川(地区)別にみたメタセルカリア寄生率
誓。 鵜川 一 男 【検査カ. ニ数 一陽怪力ニ数 −寄生率( %° .療集年月日
。 靂洲 海 岸由 崇°い く… 三 i o 仁 + 卜32・5・ 13・
守 ・出 可 1う く…. 1圭 一 2く… 言 い6・ 6く…18. 再 . 12・2.
大・・ ・ . 正 ・ 朴 「 で … ・ 呂 ぃ く… 昌 一 50く… ・ 53 −  ̄29・ . 9・ 16・
忘 蒜忘附叫 36で …三 三 壬25く…1三 l 69. 4く…。 67喜一2∵ 1・ 10. .
( 意 志・弘 l 63く…三 … − o 1 −29.2・ 18⊥
。 富 買 寓 48く… .33 , 0 星 雲 … 二 I去 溜 望 崎 村 い く… ヨ − 0 ■ l 3キ . 1去 ・ .5.
。 書 芸 ・頼 9く− … 三 ∃ 3く…_ 3 ∃33. 3く…33. §−28.  ̄ ■ 11. 24.
高 志 日 逮 去° 巨55く…1畑 58く…三 三 −37. 4く…≡ 呂 ‥ …−… ≡ ニョ ‥ … 含 二
▼ 寸 々 去 町 −49く…. 4去 l o − 下 12. 4。
諌早市有喜町 い 0く… 雪 い く巨 = 10く…吋 28.12・ 8・
江 ?潤・ ・ 木 り 10く… 冒 t lく… 占 い 0く…11・ 去ト ・2・ 20.
田 結 甲 − 4く… … − 0 ≒ −28・ 11・自 . 戸 石 村 − 4く … … い くー …昌 l 25く…33. 3 _ 卜30. 12. 26二
, ( 美 空 射 77く…≡ 冒 1 31く…重 吉 ト0. 2く・ …≡ ∃ ‥ 喜一… 三 三 1≡ 三 三 三 三
− ・ 茂 木 町・ . i 31く…壬 喜 一 6く… ヨ ト9・ 辛 く …1。 ? 喜一 ■士 8.1云 . 2J∠ 。 掃 療 射 11く… 言 l 4く… 昌 一36. 4く…57・ 項 8. 11.9.
高 」 竺_ ″ 二 甲■ −28く…壬 ‡ … 2く… 圭 ト 塑 軒 28・10. 16・
。 芸 崎 旧° い 0く… 喜 ] o l l ∃ 宴 二1主 二∃ 二
。 冨崎品 古拙 35く… − 0 − Ⅰ28.10. 18・
㊦ 崎訪 平射 24く…王 ∃ い く… 2 i 4・ 1く… ̄ 。 ・ 3 l 3i・10・ 19・
肺吸虫症に関する.研究 14o7 第1表 (続 き°
河。 城川 讃 … 忘 査アニ数 陽性カニ数 寄生率( %° ト採集・ 年. 月日
( 議長鮎 弘 一. 53く…. … 3 ー 0 − ー_ … 三 オ i§ ‡・
式 見 村
2 8 ・ 9 . 19 ・ 2 9 ・ 10 ・ 16 .
107く…宝 ≡ 54く…∃ 冒 50. 4く…・ 芸 3: 三 … 三 三1書 … 去 … 三
32・ 6 . 3.
. 32. ・8 ・22.
三 選 村 14 く … . … − 0 − 卜30. 9.24.
神 浦 川
( 神 浦 村 神 浦°
− 30 く … 三 三 − 0 − 「 9.1°.26.
( 望 鮎 驚 払 34 く … 壬 喜 一 0. I
29.11・10・
柚 木 村 い 4 く … 喜 一 2 く … 呂 14 ・ 2 く ・ … 叫 29∴ 0.21・
( 筐 々 蒜 小 払 55 く … ∃ 万 一 25 く … 壬 § −45 . 4 く … 三 三‥ 書 .… 冒;三 三 − …2≡; − . 開 町平 戸 ロ ト く … ≡ o 1 −29.10. 6・
・ ( 霊 長 常 春 崖)ト 2 く . … .呂 】 1 く … 去 … 50 く …・ 自 3 .
29.10. 2・
合 ・ 計 .940 ト 218 − 23・ 2 −
第 2 表 雌雄別にみたメタセノ しカリア寄生撃 第 4 − 表 式見村のモクズガェにおける甲殻の
l宇 帯 雫 芋 °繁華襲撃 買… % °
4 1− 50 37 20 54 ・ 0 51 −60・ 9 5 55 ・ . 5 第 3 表 甲 殻 の 大 き さ別 にみ た メ タセ ノ しカ リ 6 ト 7 。 13 .5 38 . 4
ア寄 生 率 フ1以 上 . 1 0 0
亭雪 雲賢 巾l調 査 力ニ数 桓 性 カニ数 】寄 生 率 (窄 ) 計 104 − 49 4フ・ 1
30以下
31−40 41ー50 51−60 61−70 71−80
81以上 計
9 39 106 21フ 112 16 9 508
4 15 38 40 16 2 0 115
44.4 38・4 35・8 18.4 14.2 12.5 0
22.6
アを認めなかつた・しかし40m町場下のカニはほと んど比較的寄生率の高かつた式見:鞄区のカニなの で,同一地区にて式見産のカニのみにっいてみれ ば,第4表に京す如く51〜60mmのカニ9匹中5匹
(55.4%)場性にして最も寄生辛が高く,次いで41
〜50mmのカニ37匹中20匹(54フ左°,30mm以下の
カニ9匹中4匹(44.4%).31〜4〔mmのカニ35匹
中15匹(42・8%° 61−70Ⅱ]mのカニ13匹中5匹
1408 田 中
(3臥4%°の順となつた.
4° モクズガ二の部位別にみた寄生状況 佐々町及び式見村において採集したモクズガニの 中,メタセルカリアの寄生する21匹について,その メタセノしカリアの寄生する部位を検索したところ,
第5表に京す如くェヲに最も高率に寄生し21匹中20 匹場性にして,次いで脚部の筋肉19匹,肝8匹,体 部の筋肉7匹の順となり,心及びその他の内臓には 21匹申すべてに1偶のメタセルカリアも認められな
第5表 モクズガニの部位別にみたメタセルカ リア寄生率及び寄生数(検査カニ数21°
採集 地区
カ
姦
ヲ巾1碕譜儒
(陽性カニ数)驚頂部品
コニ
佐々 式見 計 メタセ ルカリ かつた.而して寄生数は脚部の筋肉に最も多く:19匹 ア総数
8 7 3 13 13 5 21 20 8
(95.2%°(38%)
593 216 26 0 0 0
0
0 8 4 0 11 3 0 19 7
(90.4%°(33.3%°
0 284 67
第6表 ァラの部位別にみたメタセルカリア寄生率及び寄生数(検査カニ数103°
右 1− (ー)2
3
カニ数 寄垂率
(%°
メタセノ1ノ カ リ ア
寄生数
22 21・3
33 26 25・2
69
糞 左
l4l5
葉 6 討 1 2 5 4 5 6 計 64
62.1
288
28 20 27.119.4
96 47 22 21.3
35
84 18 81・517・4
546 2ワ 29 28・1
64 49 47.5
232 28 2フ・1
9フ
14 9 13・6 8.フ
38 ■ 25
70 67.9
469
に合計284偶のメタセルカリアを認め,次いでエラ 216闇,体部の筋肉6フ個,肝26偶の順であつた・筒 調査対照には入れなかつたが随時観察したモクズガ ニの中でエラ及び筋肉に寄生を認めず肝のみに1偶 のメタセノトカリアを認めたものが北有馬村のものの 中に1匹(861Ⅰ加m°あつた.
5° エラにおける寄生状況
モクズガニのエラは右糞及び左糞忙分れており,
各糞は更に夫々第1糞より第6真に細く区別せられ る。メタセノトカリアの寄生を認めた103ー些のモクズ ガこにおいてエラの部位によつてメタセノゝカリアの 寄生に相違があるか否かをみたのであるが,第6 表に元す如く右第3真に寄生を試めたカニは64匹
(62・1%°にして寄生率において最高の値を元し,
次いで左第3糞49匹(47・5%°,左第2糞29匹(28.1
%°,右第4葉及び左第4糞28匹(2フ.1%°の順と なり,最低は左第6其の9匹(8・7%°であつた.
而してメタセノトカリアの寄生数は右第3糞が総数 288個で最も多く,左第3表…232個,左第4糞97偶の 順となり,最低は左第6糞の25個であつた.大体左 右とも第3莫が寄生率最も高く,叉寄生数において も最も多く,第3葉を中心としてこれより遠ざかる に従つて漸滅する傾向を末した.石其と左菜を比較
するに,右真の方が左糞よりも寄生率高く,右葉 103匹中84匹(81.5%°,左菜103匹中70匹(67.9%°
陽性であつた.叉寄生数においても右宴の方が左菓 よりも多く,それぞれ546個,469偶のメタセノトカリ アを認めた.侍1甲のカニのエラに最も多くメタセ ルカリアの寄生していたのは柚木村のものにて,
223個であつた.
6)採集時期別にみた寄生率
同一ケ所で2回以上採集し,メタセノトカリアの寄 生状況を観察した式見村,佐々町,矢上村及び北有 農村のカニによついて,採集時期によつてメタセノし カリアの寄生に相違があるか否かをみたのであるが,
第7蓑に戻す如く式見村のカニの1匝Ⅰに20匹以上調 べたものについてみれば,29年10月.30年11月及び 32年8月のものが何れも50%代であつたのに比し,
32年6月のものは38.4%にして可なり低く,,佐々町 のカニについては29年10月のものがフ5%であつたの に比し,30年11月28%,31年10月42.8%と低く,矢 上村のカニについても28年10月のものが73.9%であ つたのに比し,32年1月32%及び11%と低く,北有 馬村のカニについても28年9月のものが83.3%であ つたのに比し,32年4月12●8%となり著しく寄生辛
が低くなつた。
肺吸虫症に関する研究 1409 第7表 採集時期別にみたメタセノトカリア
地区桓査カニ数…陽
(寄生率)性カニ数.
[ 式
見
村
寄生率
(%) .! 採集年月日
3 30
.5 20 3 26 20
3 16 4 10 1 10 10
飴
.々
町 16 25 14 矢 上 村
23 28 26
12 7 6
100 53.3
80 50 33.3 38.4 50
28・9・19.
29.10.16.
30.2.12.
30.11。16.
32.5.24.
32.6・3.
32.8.22・
75 28 42.8
29.10.5・
30.11.25.
31.10.3.
17 9 5
73.9 32・1 10・9
28■10.19.
32.1.17・
32・1・28・
薫il三…
45 13
83.3 12・8
28.9・24.
32.4.16.
7° 他種のカニにおける成績
北高来郡湯江村境川のベンケイガニ10匹及び長崎 市煽闇柿伯のベンケイガニ5匹,計15匹について,
肝及びェテを検索したが,すべてにP・oん孟rα孟 メ タセルカリアを認めなかつた.
小括並びに考按
長崎県下30ケ所のモクズガこについて,P.棚c5ら のメタセルカリア寄生率を調査した結果,士黒川の 63.3%を最高に,式見村,佐々町,矢上村政び北有 村等相当高率を示した所もあり,17ケ所のものには
メタセノトカリアを認めたが,島原.市2ケ所の如く計 111匹調べて1匹も寄生を認めなかつた所もあり,
13ケ・所のものには全くメタセノンカリアを認めず,平 均23.1%の寄生率であつた・見出したメタセノトカリ
アはその大きさ及び形態カゝら,又径口的に与えて感 染せしめた猫の肺より摘出した成虫の哲郎より類推
して,すべてP.抑e∫J.であつた.
これまで長崎■県におけるモクズガニに関する報告 としては次の如きものがある.高村26)コァ°は北有馬 村,神代村及び加津睦町のカニに,又田中(暢)…り は長崎市浦上川のカニに,それぞれ肺吸虫メタセル カリアを認めているが,何れも寄生率についてはふ れてない.而して高村27)は口の津町20匹,大三東 村50匹,有家村35匹及び島原町音鮒−IlO匹のツガニ からは被蛮幼虫を認めることが出来なかつたと述べ
ている.著者は口の津町及び大三東村のものについ ては調査し得なかつたが,有家町では9匹中3匹に メタセノ1ノカリアを認めており,高村の成績と相違す るが,島尻市音簸川においては高村と同様に48匹申 すべてにメタセノトカリアを認めなかつた.昭和21年 西村36)は北有鷹村において41匹中30匹(73・1
%),加津佐町において35匹中10匹(28.5%°に P.紺c5£.メタセノしカリアを認め,岡部等11)]・ョ.)は 北有馬村に於いて昭和30年10月63%及び昭和31年10 月−32年1月43.5%,橡搬11リは岩井町においで46 匹中19匹(40%),志佐町において5匹中1匹腸性 であつたと報告している.従つて著者の調査によつ て今回初めてP.αeS ・メタセルカリアの認められ た鞄区は,南高来郡守山村,大正村,土黒村及び有 家町,諌早局有害町,北高来郡江の滴村及び戸石 村,西彼杵郡矢上村,茂木町.川原村,高浜村及び 式諷村,北松浦郡柚木村及び佐々町の14市町村であ る.
他.県での調査と比較するに,福岡,県t7)では8ケ 所平均36・2%,大分県17)ではフケ所平均41・6%
宮崎県t7)では9ケ所平均27.4%,熊本県では加搬 川㍑)20.4%,莱切川13)8.1%,錦冊13)14・6%,
熊本.市花園町L3)42.8%,鹿児島児12)では川内◆市 16%,川辺町5.1%,志布市前川91匹すべて陰性,
山口県では6ケ所7)8)43.5%〜80%,4ケ所22)23)
2i)ョ5)7.6%〜96.7%,高知県 )では20ケ所平均 66・3% 愛媛県では肱川即)ョ1)95・3%〜97.1%,広 見川流域2(−)90.4%−98%,・岩松川流域2o)92%〜
100%,兵庫,県oG°li7)では円山川12%〜20%,矢田 川36匹すべて陰性,瀬戸内海側4ケ所すべて陰性,
京都府67)では由良川1.フ%,福井県67)では三方砲 方9.4%,静岡県o7)では狩野川60%,新潟県巧詔)で は直江津地方8ケ所平均49・フ%となつており.,高知 県,愛媛県及びロー旧県でははとんどすぺての川に長 崎県において最高の寄生率を京した土是川と同等又 はそれ以上の寄生率を元している・又東九州におい ては平均して大分県に最も寄生辛が高く,次いで福 岡.県,宮崎県の順となり 何れも著者の長崎県の平 均を上廻つている.熊本県は最も数多く調べられた 加勢川,で20%にて,およそ長崎県と同程度の寄生率
と思われ,鹿児島県の3ケ所の調査から類推すると
は長崎県よりも低いように思われる.叉兵庫県以来
で静岡県狩野川流域ゑび新潟県直江津砲方の如き例
外もあるが,″.般に四国,山仁l県及び九州に比して
寄生率が低いように思われる.従つて県下一般に亘
1410 田 中 つて調査すれば,恐ら・く平均では長崎県よりも低い
ものと推察される.
モクズガこの雌雄別によるメタセノしカリアの寄生 率の差異について,三浦15)は何等特別甲差は見当 らないと報告しており,重見17)は雄(37.2%°が 雌(32.9%°よりも高い寄生率を示したが有意の差 ではないと報告している.文中島等85)の錘酎iIの 調査では雌(22年°が(雄18・.8%°よりも高い寄生率 を戻している・このように雌雄別によるメタセルカ
リアの寄生率は各研究者により区々であるが,著者 の調査では雌が雄よりも高い寄生率を示し,それぞ れ26・9%,21・1%であった.これを各河川(地区°
別にみればその成績は比較的まちまちであり,結局 雌雄別によるメタセルカリアの寄生率に一定の関係 が認められなかつたように思われる・
甲殻の大きさと寄生率との関係について,三浦45)
は高知県20ケ所のモクズガニ1666匹では41〜4Smm のカニが最高の寄生率を示し,それより小さく又は 大きくなるに従つて寄生率の漸減をみたと述べ,高 橋22)つ5)は吉田川の85匹では31〜40Ⅱ−mのものが最 高にして,第2位51−60mm,佐波川の65匹では40
〜50mmのものが最高にして,第2位51−60mm であるが,例数の多少から信頻度を考察して51〜
60m山大のカニが最も高いものと思われると述べ,
重見17)は東九州24ケ所2524匹のモクズカ㍉ニでは 46−50mm大のもの43.3%で第1位,次いで51,→
55ロ山一,4し一45mⅡ−,36ノー・40mmの順で4−5cn]の
ものに高く,それより大きく或は小さくなるに従つ て寄生率の減少をみたが,1位から4位までの差は 有意でなく,5位以下は有意であつたと報告してい る.・各研究者によつて異るが,凡そ4〜6cmのカニ に最も.寄生率が高いようである.著者の調査では比 較的小さいカニに寄生率高く,第1位30mⅡ】以 下のもの44.4%,韓2位31〜40mm,第3位41〜,
50mmであつた.しかしこれは40n】m以下の小さい カニがほとんどすべて長崎.県において比較的寄生率 の高かつた或見直のものであつたためと思われ,式 見産のもののみについて比較すると51−6011−−nのも のが最も寄生率高く,9匹中5匹に(55.5%°陽性に して 第2位41〜50II】m 37匹中20匹(54.0%°,
第3位30mm以下9一匹中4匹(44.4%° 第4位 31〜40mIカ3S匹中15匹(42.8%°,61〜フOmln13匹 中5匹(38・4%°の順であつた.この中41〜50Ⅱ】m のものは例数も多く比較的信頼度が高いので,41〜
50mmのカニが最も寄生率が高いも,のと考えられる.
モクズガニにおける部位によるチタセノトカリアの 寄生率について,三浦45°は高知県のカニ50匹につ いて体部筋肉,エヲ,瞑脚,肝,消化器の順に高率 にして,寄生数は体部筋肉特に体関節部の筋肉に最 も多く,肢脚,エヲ,肝,消化器の順に多数であつ たと述べ,高橋22)…3)25)は山口県の吉田川及び栗 野川における調査にて,寄生率においてエラが最高 の値を戻し,次いで脚関節部,脚筋,休閑節部,体 筋,肝,その他の臓器の順に高く,佐波川では体関 節部がェラに次いで第2位,寄生数において3河川
とも大体上記のような順に多数であつたと報告して い▲る.重見17)は東九州24ケ所のモクズダニに寄生 せる総数8323偶のメタセノしカリアの中,エラフ1。5
%,筋肉26・1%,肝2.4%にこれを認め,寄生数に おいてエラを最高と報告している.著者の調査で21 1空の揚性カニについては,寄生率においてエラが 95.2%にして最も高く,次に脚部の筋肉(90.4%°,
肝(38%° 体部の筋肉(33.3%°の順となり,寄 生数において脚部の筋肉が284偶にして最も多く,
次にエラが216偶にしてやや城少し,体部の筋肉6フ 個,肝26個の順となつた.従つてこの成績と従来の 文献とを合せ考えれば,モクズガニにおいてはエラ 及び筋肉に最も多くメタセノ卜カリアが見出されるも
のと考えられる・中州82)は甲殻の巾30tnm以下の 幼弱カニでは,エラよりも肝及び筋肉に多くのメタ セノしカリアを認めたと報告し,曇見16)も肝のみに 寄生を認め他の部に認めなかつたカニは18〜21Ⅰmn の小さいカニであつたと報告している.然るに著者 の調査で肝のみに寄生していたものⅠ匹を見出した が,これは北有薦村直のものにて61mm大のカニ であつた.消化藩22)23)25)45),心22)23)芦5),生 殖器23)等にも寄生をみた報告もあるが,著者の調 査した中では,・心及びその他の内臓に寄生を認めた
ものはなかつた.
ェラ別にみた成績では,三浦45?は左右とも第3.
菜に最も寄生率高くして寄生数も多く,第3糞を遠 ざかるに従つて漸減すると報告しているが,著者の 調査でも左右とも第3葉に最も寄生率高く,寄生し ていたメタセルカリアの数も多く,第3葉を遠ざか るに従つて漸減する傾向がみられた.ことに右第3 菜はエラの何れかの部に寄生を認めたカニ103匹の 中64匹(62・1%°に寄生を認め,級数288個のメタ セルカリアを認め,寄生数においても第1位であつ た.左右別にみれば右真の方が高く,右菜は84匹
(81.5%°にメタセルカリアを認め,左巽は70匹
肺吸虫症に関する研究 1411
(67・9%°に揚陸にして,それぞれに546個及び469 個のメタセノしカリアが寄生し,数においても石其の 方が多かつた・従つてエラの右第3糞は最も高率に 又最も多数にメタセルカリアの寄生を認める部位で あると思われる.ことにメタセノしカリア寄生数が少 い時,このような傾向がみられるようである.
採集時期別にみた寄生率では,同一ケ所で2珂以 上採集した式孟村,佐々町,矢上村及び北有薦村の モクズガニについて,可なりの差がみられた..即ち 式見村のものでは29年10月,30年11月及び32年8月 のものはおよそ同程度(50〜53%)の寄生率であつた が,.32年6月のものは38%で低く.,年度別の差はみ
られなかつたが,月別には6月が8〜,11月より低か った。佐々町のものでは29年10月上旬フ5%,31年10 月上旬42.8%となり,同じ10月上旬のものにて31年 のものが,29年のものに比し低かつた.叉30年11月 下旬のものは更に低く28・0%であった。矢上村のも
のでは28年10月73%のものが,32年1月32・1%−
10.9%と低くなっており,北有庸村のものでも28 年9月83・3%であつたのが,32年4月12.8%と著 しく低率となつている・筒北有馬村のものは岡部
等11)12)の成績においても30年10月6写%であつた のが31年10月〜32年1月43%となり低率となってい る.以上結合的に考えると,8〜10月項寄生率高 く,11月の終り頃から次第に減少して4〜5月頃最 も低くなるものと思われる.又年度別にも30年以后 は28年及び29年に比しいくらか寄生率が低下したの ではないかと考えられる.中島等35)は関本県加勢 川直のモクズガェについて1年間観察し,夏より秋 にかけて高く冬季に低いと報告しているが,以上の 成績から推してうなずかれる点があると思われる.
同種類のモクズガニで各人により,寄生率,寄生 部位及び寄生数等に異つた値が出るのは,調査地区 並びに調査時期がそれぞれ相違しているためと思わ れる.
他唾のカニにおける調査では,これまで熊本.県 51),宮崎県51),鹿児島県51),三星県51),兵庫■県 ぢ6),千葉,県83)及び静岡県64)のベンケイガニ,タ ロベンケイ,アシハラガこ等からP.oゐ£rαi.メタ セノしカリアが認められているが,長崎県15匹のベン ケイガニからはP・oゐ£rα孟のメタセノゝカリアは認 められなかつた.
その二 諌早附近における皮内反応による肺吸虫症検診成績 調 査 準 備
抗原の作製…横川等58)6e)81)の方法に従つて実 験的に感染せしめた猫め肺よりとり出したP.ぴe∫ . の成虫を凍結乾燥し,99倍量の生理的食塩水を加え て抽出液(遠沈,非働化及び1万倍の割にマーゾニ ンを加えた°を作つた.これを再乾燥せず更に10倍 稀釈して1千倍液とし,無菌なることを確めて,氷 室内に保存した.使周に際しては,生理的食塩:水で lO倍に稀釈し再び1万倍の割にマーゾニンを加えて,
1万倍液とした・
判定基準:丘疹の直径(縦横径の平均値°が4〜
5mmになるよう前糟皮内に注射し,15〜20分后の 丘疹の直径10mm以上を場性.8−9mmを疑場性
とした。
予階試験:健康者2年及び肺吸虫症の既往歴を 有するもの2名について,公衆衛生院大島智夫技官 より分与して頂いたVeronalbuffersalineextract(Ⅴ。
B.S。抗原°58)錮°82)による反応と自己作製の抗 原による反応の程度を5分毎に比較したが,両抗原 によつて同様に,健康賓2名はともに丘疹が殆んど 増大せず,既往歴を有する2名はともに丘疹が増大 しはじめ,その1名は15分后の丘疹の直径がⅤ.]う.
S・抗原匿よつて11ml¶,著者の抗原によつて同じ く11I刀m,又他の1名はそれぞれ15.5mn】,15Ⅱ一山 であつた.従つて両抗原による反応の程度は,】mm 単位の測定では大差なきものと認めた.
調査方溝:予め関係町村役場を通じて学校衰,
P.T。A・,教育委員の軒可を得た後,学級単位に 上記の抗原を用いて皮内反応を英施したが,愛野小 学校及び山田中学校の一部の学級については,Ⅴ.
お・S。抗原と比較対照して判定した・特に反応陽性 者については食塩水による皮内注射をも併せて行 い,強度の反応陽性者でも食塩水では陽性反応を呈 しないことを確めた.反応の程度は著者り抗原が
Ⅴ。B。S.抗原よりもいくらか微弱な例もあつた が,直径平均0・5工 m以内にしてmm単位の測定で は差支えないことを知り,以后自己作製の抗原・を単 独に使用した.
上述の判定基準にて皮内反応が腸性又は疑陽性を 呈したものについては,喀疾及び糞便の呈出を求 め,翌日回収して喀痍については塗棟,糞便に?(.
)い
ては宮崎一Richie集卵溝により肺吸虫卵の有無を
検索した.同時に血液塗抹標本を作製して好酸球の
増域を成案した.
1412 田 中 調 査 成 績
昭和31年5月16日よ.り6月27日に至る間,諌早市 及び諌早市近郊にある7ケ市町村における21の小。
中学校及び一部の高校生徒8117名に皮内反応を実施 し,第8表に表す如く,陽性者59名(0.72%°,疑
第8表 町村別の皮内反応揚性率
叫学校名−被検数仁傷性数ー疑場牌1雛群
愛 野 慧
(町)学霞†
軍学霞I
∴一端ま}
7
( 1計)408l513 341415
1841Gl
126513(1.02%°6(0・47%°19(1・49%°
潤……三ー:三
404 1 1
† 壷LI■!
中学校
小 計・11202(0・17%°1(0.∽%°
村 飯石繁華削 盛定竿筆削 村矧小計
0
1
2
3(0.25%°
398 9 2 11 182 5 0 5
58014(2・41%° 2(c.34%°16(2・75%°
飯盛東 校 高 校 江
†
† の
l・二さlご三三l二三二i
(分校)
1021 1 454 5 58 0
)小 計 15336(0・39%°
o
O
O
O
1
5
0
6(0・39%°
ヨ三
⊂コ,rヽ
旧
増 村
・
(村)).奈,J.:;左†
謂蒜†
皐学削 粘酎
イ1計
856 4 3 45 0 0 488 8 6 182 0 4
7
0
14
4
157112(0.67%°13(0.82%°25(1・49%°
雪忘警学畏†
輔冨学削
村矧小計
長 講 校
早音量
市 中 田小学
(孟至) 間瀬々 分校
田 自 分枚 学校 田
小 計
‡
†
† 二
(1)_−__三.
640 2
75 31 478 1224
0
0
0
7
3
10(1・21%°
0
0
0
2(0・16%°
0
0
0
0
0
2
0
o
O
2(0.16%°
1総計− 】 (8117)59(0.フ2%°…22(0・27%°i81(0.99%°
陽性者22名(0。27%°,計陽性群81名(0.99%°で あった.陽性群の場性率は長田地区(0.16.%°,森 山地区(0・25%°及び江の沼地区(0・39%°におい ては他の4増区に比し低いが,その他の地区にても 田結二鞄区(2。75%°を最高に,愛野地区及び山田鞄 区の1.49%,守山埴区1.21%にして,地域的に著し い差はみられなかつた.
陽性群の反応の程蜜についてみれば,第9表に元 す如く,丘疹の直径8〜1加】血を呈したものが大多
第9表 皮内反応場悼辞の反応の程度
毒横㌫品霊一人 数再若 考
8− 8.5 9・ 9.5
.小 計
10−10・5 11ー11・5 12−12・5
13■13.5
14■14.5
15ー15.5 16−16.5 17−1フ・5
18■18・5
19−19・5
20以上 イ、 計 総 計
12 10 22 19 16 11 3 2 3 2 1 0 2 0 59 81
東陽性
ク ク
陽 性
ク ク ク ク ク ク ク ク ク ク ク
数にして,13mm以上を呈した者は少数にて,最高 の腫脹を示したのは19m正=仁して,20mⅡ】以上を呈 したものは1名もなかつた.
陽性又は疑場性を呈したものでモクズガこを食べ た経験の有無にっいてみれば,第10表のとおり,有 ると答えたもの30名,無いと答えたもの12年,不明 39名であつた.
虫卵検索に当つて陽性群のもの81年すべてに喀疾 及び糞便の提出を求めたのであるが,喀疾及び糞便
第1o表 モクズガこ食間の経験の有無
皮内反応一 陽性者 疑陽性者
討
看 計
59 22 81 無 不 明
24 6 30
10 2 12
25
14
39
肺吸虫症に関する研究 1413 第1ー表 虫卵検索の例数
皮内反応 陽性者 疑陽性者 陽性群
喀疾糞便」
喀疾及 び糞便
9 2 11
計
2 5 7
37 9 46
48 16 64
又はその何れかが撞出され,虫卵の有無を検索した 例数は第11表に示す如く,陽性老中啄疾及び糞便に ついて9名,喀疾にっいて2名,糞便について3フ 名,計48名であつた.叉疑陽性着では啄疾及び糞便 について2名,喀疾について5各糞便について9 名,計16名にして,総討64名であつた.
喀疾検査にては第12表にみる如く,損性者11名中 第12表 喀疾の肺吸虫卵腸性率
被換者数 虫卵陽
性者数 陽性率(%°
場性者 窮境性者 陽性群
11 7 18
2 0 2
18.1 0 11・1
2名(山田中学校1名及び守山中学校1名°に肺吸 虫卵を認め 18・1%の陽性率であつたが,疑場性者 では7名すべてに陰性にして,従つて場性群では18 名中2名,11・1%の揚性率であつた.これら喀疾中 に肺吸虫卵を認めた2名の中,1名では糞便中に認 めず,他の1名では糞便の提出がなかつたので 糞便中の虫卵検索は出来なかつた.
糞度検査にては第13表に京す如く,陽性薯46名中 第13表 糞便の肺吸虫卵場性率
被故老数
46 11 57
虫卵陽 性者数 陽性者
疑場性者 場性群
揚性率(%°
1 :∠.1 0
1
0 1.7
1名(飯盛西中学校°に肺吸虫卵を認め,2.1%の 腸性率であつたが,疑場性着では11名すべてに陰性 にして,従つて陽性群では5フ名中1名 1・フ%の陽 性率であつた・この糞垣中に肺吸虫卵を認めた1名 は喀疾を境出しなかつたので,喀疾中の虫卵検索は 出来なかつた・
喀疾又は糞便の検査にては第14表にみる如く,陽
第14表 喀疾又は糞便の肺疲虫卵陽性率
∴三ミl ̄二 被後者数
虫卵陽 性者数 陽性者
東陽性者 場悼辞
48 16 64
■
3 0 3
陽性率(%°
6.2
。 4.7
性者48名中3名に肺吸虫卵を認め,6.2%の場性率 であつたが,疑陽性着では16名すべてに陰性にし て,従って腸性群では64名中3名 4■ファ左の場性率
となつた.
侍反応場性老中,上述の虫卵場性者の他に,時々 血疾を排出し,皮内反応が強場性を呈し,肺吸虫症 の疑濃厚と思われるものが山田中学校に1年,鶴田 小学校に1名,討2名あつたが,喀疾の埴出なく,
糞蟹のみの検査では肺吸虫卵陰性であつた.
陽性者28名,疑揚陸者7名について,血液塗珠標 本を作り,好願球の多少を検査した成績は第15表に みる如く,陽性着では28名中5%以下5名,6〜10
第15表 皮丹反応場性群の好酸球 好 酸 球(%) 陽性者 疑陽性著
5 以下
6 鮒10
ユ1−15 16 − 20
21以上 計
5 8 11 3 1 28
2 4 1 0 0 フ
%8名 11〜15%11名,16−20%3名及び21%以上 1名にして,最高は22%.最低1%,平均10.2%で あつた。叉疑陽性者では7名中5%以下2名,6〜
10%4名及び11〜15%1年にして,最高は13% 最 低3%,平均8%であつた・
これらの中から糞便中に他の寄生虫卵を認めたも の,又は糞便を撞出しなかつたものを除外すると第
第16表 地橿寄生虫卵陰性者の好酸球 好 酸 球(%° 陽性者 疑陽性者
5 以下
6 −10 11−15 16 − 20
計
3 5 2 2 12
1
1
1414 田 中 16表にみる如く,犠牲者では12名中5%以下3年,
6〜1。%5年,11〜ノ15%2年及び16〜20%2名に して,この中最高は19%,最低は3%,平均10・6%
であつた.叉疑場性者では4%のもの1名であつた.
小括並びに考接
肺吸虫症の皮内反応に関しては従来幾多の報告が あり,布上8S)は実験的に犬を感染させ,成虫乳剤 苦くはその新陳代謝産物を用いて本反応を実施し アレノしギ「皮膚反応甥象の存する事実を認め 富 永31)は5〜20%の成虫乳剤濾液,万納寺4叫ま5千
〜1万倍P・ohirai成虫食塩水抽出液,梅本等41)
は患者の喀疾中の虫体代謝産物をそれぞれ抗原とし て本反応を実施し,何れもその時異性を認めてい る.横川等59)61)62)はP・棚eざ£・セルカリア,メ タセルカリア及び成虫を用いて程々の抽出法により 抗原を作り,Ⅴ。B.S。抗原,成虫食塩水抽出液 成虫体外飼育液の3者が特に有効であるように思わ れたと述べ.抗原分析の結果,抗原性物質は低分子 の蛋白分劃と思われる部にあると云えようと結論 し,本反応を集団に実施して判定基準を丘疹の腫脹 差4mm以上を以て揚陸反応とすれほ,反応陽性老 群から40%前後に野吸虫卵を証明し 血清学的検討 により非感染者で陽性に出甥する率(誤認率°は 0.91%であると報告している・しかし他の吸虫症と の鑑別について,富永31°は日本住血吸虫症6例に おいては容易に区別出来たが,肝吸虫症23例中1例 に区別不韓であつたと述べ,万納寺42)は日本住血 吸虫症9例中5例,肝吸虫症3例中2例,異型吸虫 症5例中2例及び韓核症11例中1例に鑑別に困難を 来し,その本態は不明であると報告している.森 下55)は本反応場性者に,肝吸虫抗瞑,肝蛭抗原等 で交叉試験を実残し 類寓反応は免れないと述べて いる.このように各研究者により成竃は異るが,肺 吸虫症患者に本反応を実施した場合は何れも100%
に近く陽性に出現することを認めている.多少の類 属反応は免れないと思われるが,吸虫類の抗原の
中,肺吸虫抗原のように特展性のあるものはみられ ないようである.
著者はP.αcざら食塩水抽出1万倍液を用いて,
諌早市及びその近郊にあろ小,中学校及び一部の高 校を加えて21校の生徒8117孝往こ皮内反応による肺吸 虫症検診を実施したが,陽性者59名(0.72%°,擬 陽性者22名(0.2フ%°にて,陽性群計81年にして,
0.99%の場性率となつた.各地域によつて著しい差 は認められなかつたが,旧一間結村が2.75%で最高の
陽性率を束し,愛野町,旧山田村,旧守山村が残り の3地区に比し陽性率が高かつた.このことは前記 4地区には愛野町を除いて先年著者等】5)の調査で 各1名づゝ患者が発生しており,残りの他の3地区 には発壁をみていない点とよく符合するものと考え
られる.
岡部等11)]2)は肺吸虫成虫のコカ液抽出1万倍 液を抗原として,本県北有馬村で生徒853各及び一 般住民49フ名について皮内反応を実施し,それぞれ 20%,28%の陽性率(疑陽性者を含む°であつた が,大分川一流域では6503年調べて8.6%,鹿児島県 川辺郡で4860名及び日置郡で1835名詞べてそれぞれ 3.3%及び16.2%の場性率であつたと報告しており,
横丁り等帥)は新潟県直江津市附近の生徒5290年につ いてⅤ●B.S・抗原及び食塩水抽出1万倍液を用 いて皮内反応を実施し,場性者1.9%,疑陽性賓0・3
%であつたと報告している.著者の諌早市附近の成 績即ち場性群の場性率0.99%と比較すると何れも高 率で,ことに北有馬村及び鹿児島県日置郡の成績と は可なり著しい差が認められる.これは主として地 域的差即ち肺吸虫症侵浬程度の相違によるものと考 えられるが,使用した抗原の相違も一因と思われ
る.
陽性群の反応の程度をみた成績:では,丘疹の経 12mm以下を京したものが大多数にして,最高19 mmであつた・これは横川等61)の2mlTlごとのヒ
ストグラムで丘疹の腫脹差最高16mmにて,9mm 以上のものが5〜8mmのものゝり5以下であるの と比較して著しい差を認めないものと考えられる.
又岡部等1ョ)の成績では20mm以上を京すものが稀 でなく,最高2フmnlに及ぶものを認めているが,こ れは地域差にもよるが,俵田した抗原の抽出液の相 違によるのではないかと考えられる.
モクズガニを食べた経験の有無では,陽性群81年 中,食べたものが食べないものより多かつたが,食 べないもの12名及び分らないものが相当数あつた.
分らないと答えた者の中には記憶が不確実なもの及 び質問の意味を理解しないものレト学校低学年の中 にモクズガニ(俗年ッガこ°を知らないもの等〕\が あつたが,頻回モグズガニを食べているとは考えら れず,モクズガこの金田による感染以外に他の経路 による感染が可なりあるものと考えられる.
皮内反応場性群の肺吸虫卵検出率については,横
川等仰°は新潟県直江津市附近において,陽性者の
糞便検査にて88名中36名(40%°に,疑陽性者の糞
肺吸虫症に関する研究 1415 便検査にて16孝沖3名(18・7%°に肺吸虫卵を認
め,中川及び平野B3)は同増万並びに隣頃地区にお いて,場性者213名中81名(38%°に本虫卵を認め たと報告している.岡部等11)1ヨ)は本.県北着席村 において,喀疾検査にて生徒では88年中13名(14・9
%°に 一般債罠では42年中10名(23・8%°に,そ れぞれ本虫卵を認めており,叉大分川流域では410 年中26名(6.3%°に本虫卵を認めている・西本及 び坂本87)は高知.県高岡町において,曙疾検査に て陽性群254名中12年(4.フ%°に本虫卵を認めて いる.著者の謂賓にて場性群の虫卵検出率は,喀 疾検査では18名中2名(11.1%°であり,糞便検査 では57名中1年(1.ブタ;°にして例数は少いが,皮 内反応湯性群の虫卵検出率は 糞便によるものより 喀疾による場合が優れているようであつた.検査数 が異るので比較し難い点もあるが,曙疾による検出 率は岡部等12)の成績(北有馬村生徒14・9%°に比 し低く,大分川流域の6.3%,西本及び坂本37)の 高知県高岡■町における4.フ%に比し高く してメ 可 なりの検出率と思われるが,糞便による率は横川 等佃)の成礪40%に比し著しく低かつた.これは諌 早増方は直江津地方よりも感染初期で産卵に至らぬ 者,又軽症で彗然に治癒する者辛が多いため,皮内 反応のみ陽性を呈して虫卵を排出するに至らなかつ たものと考えられる● 例えば阿部等1ヨ)の成績に
て鹿児島児川辺瓢及び日置郡の陽性群293名には3 名(1%°に本虫卵を認めたのみで,最高の検出率を 京した北有烏村と著しい差を認めている.又塀川 等の共同研究者中川及び平野38)の成績において,.
谷釈他数増区の陽性者21名及び疑陽性要13年からは 1年も虫卵を認めておらず,前記38%の虫卵検出率 から除外している・このように同一抗原及び同一方 法により検索した場合でも,虫卵検出率には相当の 差異が認められるので,調査地によつて皮内反応腸 性者の虫卵検出率は可なり異るものと思われる.
皮内反応陽性群の血液所見にて,白血球中の好酸 球について,西本及び坂本37)は高知県高岡町にお ける反応陽性群31年を観察して最高8%,最低 0・4%,平均2・8%にして,肺吸虫症の診断に必ずし も役立つものでないと述べ,大鶴等1(りは対照に比 し反応湯性群は好酸球の増多が認められたと述べて いる・著者の調査では皮内反応陽性老中観察し得た 28例の好酸球は平均10・2%であり,疑陽性者7例の それは平均8%であり,何れも可なりの増加が認め られた。これらの中糞便中に他の寄生虫卵を認めた 者及び糞便の提出がなかつた者を除外した陽性者12 例についての成贋も平均10・6%にして,同様に増加 が認められたことは,本症の診断上の参考資料にな
るものと思われる.
その三 長崎市及び諌早附近の犬並びに壱岐のイタチに おける肺吸虫自然寄生例について
調査材料並びに調査方法
調査材料の犬は長崎市中央保健所及び諌早保健所 管内督二頓にて野犬として捕獲されたものであり,イ タチは長崎県杯■務課及び猟友会の協力を得て,壱岐 全島にて捕獲されたものである.
調査方法として犬は撲殺後置ちに,イタチは皮を 剥いだ後,それぞれその肺について視診出びに触診 を行つて,疑わしい所があれば,そこを切開して虫 感度び肺吸虫虫体の有無を検索した.
調 査 成 績
長崎市の犬は昭和29年6月21日から9月22馴こ至 る問,諌早附近の犬は昭和31年8月21日から9月30 日に至る間,調査したが,第1フ表にみる如く,長崎 市の犬では長崎駅以北のもの494頭中5頭(1・01%°,
長崎駅以南のもの511頭中1頭(0.19%°,計1005頭 中6頭(0・59%°に肺吸虫自然寄生を認めた.又諌 早附近の犬では,愛野町のもの9頭中1頭(11.11
第17表 犬における地区別にみた肺吸虫自然 捕獲地
(寄生率)区i雲憲一藍晶義軍簑デ
長崎市 長崎駅以北及び 対岸稲佐地区 ク 長
小 諌 早 市
ク
北 高
ク ク
南 高
,ク
ル 稔
崎駅以南
中 長 森 飯
「 愛
ヨ三
[=コ
訂・
央 都 田 町 山 村 盛 村 長 井
野 要
討 村 町 村
計
494 51 100
1 1
1 6 107 1 5 7 1 1 3 8 9 8 フ 2
5 1 6
\0 0 0 0 0 1 1 2 8
1.01 0・19 0.59
0 0 0 0 0 11.11
5・55
2.98
0.74
1416 田 中
%°及び吾妻村のもの18頭中1.頭(5.55%°に自然 寄生を認めたが,その他の地区のものではすべて陰 性にして,計6フ頭中2頭(2■98%°に肺吸虫官然等 量巨を認めた.従つて総計10フ2頭中8頭に場性にし て,0.74%の寄生率であつた・この中,長崎市の陽 性犬は稲佐町,本原町1丁目,木原町3丁目,駒場 町,本局町.及び八幡町で捕獲された6頭にして,そ の中4弱までは浦上川上流地域で捕獲されたもので あつた.性及び年令と肺吸虫自然寄生との関係は陽 性犬が少いので不明である.
これらの肺吸虫場性犬8頭の中,5頭について虫 嚢の数及び各虫嚢内に寄生する虫体数を調べた成置 は,第18表にみる如く,稲佐町で捕獲された犬では フ個の虫垂の中,右肺上糞のもの3個中2個忙2隻 づつの虫体,右肺下窯の1偶に2隻.左肺下葉の3 個・申その1備に2隻,他の2個にそれぞれ1隻づつ を見出した.かくの如くして5頭の犬から合計21価
の虫垂.と29隻の虫体を認めた.
第18表 肺吸虫陽性犬に於ける虫嚢数及び存 巻部位並びに虫体数
捕獲機 性別
稲佐町
木原町 1丁目
年
(8)令桓璧数…
虫璽の存在部位 及び虫体数 右肺上≡菓 2
ク 2 ク 0
右肺下葉 1 左肺下葉 2
ク 1 ク 1 1・5 フ
8 4 3
右肺上 左肺上
ク
菜 2 某 2
1
駒場町.〇
雪雲村 8
2
右肺上薬
ク
右肺中葉 フ. 左肺中葉
ク
左肺( )下葉
2 2 0 0 2 0 0
愛野町−〇2
(4) 1
(3)一
計l21一
石肺上葉 左肺上菜 左肺下葉
3 2 2
左肺上葉 2
29
第19表 捕獲地別にみたイタチの肺吸虫官然 捕獲場所
(寄生調査成績)−警警義一讐禁発
芦辺町講書 森 林 芦辺町国分 ク 芦辺町
フ 3 4
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