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当科における顎顔面口腔外傷患者の臨床統計的観察

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Academic year: 2021

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臨床研究

当科における顎顔面口腔外傷患者の臨床統計的観察

高松赤十字病院 歯科口腔外科

米本 嘉憲,徳善 英紀,植松  彩

 要 旨 

 2011 年1月より 2015 年 12 月までの5年間に当科を受診した顎顔面口腔外傷患者 276 例 を対象とし,臨床統計的観察を行った.

 年別患者数は,2011 年は 44 例であったが,その後は年約 60 例であり,男女比は3:2 であった.年齢分布は 10 歳未満が最も多かった.来院経路は院内紹介,直接来院,院外医 療機関からの紹介による受診の順となっており,受傷原因は転倒・転落が最も多かった.受 傷部位の内訳は,軟組織外傷が最も多く,次いで歯の外傷,骨外傷の順であった.骨外傷に おいては,観血的整復固定術が 45.1%に施行されていた.

 今後も顎顔面口腔外傷の診療において,当科が総合病院の診療科として果たす役割りは大 きいと考えている.

 キーワード 

顎顔面口腔,外傷,臨床統計的観察

はじめに

 顎顔面口腔外傷は,出血,感染の制御に加え,

審美性,咬合・咀嚼機能の回復などを考慮した治 療を要するため,高い専門性が求められる.今 回,当科における顎顔面口腔外傷患者の実態を把 握し,今後の対応の一助とするべく,臨床統計的 観察を行い若干の知見を得たので報告する.

対象・方法

 2011 年1月より 2015 年 12 月までの5年間に 当科を受診した顎顔面口腔外傷患者 276 例を対象 とした.検索項目は,年別患者数,性別,年齢分 布,来院経路,受傷原因,受傷部位,受傷部位別 治療内容とし,外来,入院カルテの記載事項から 調査を行った.

結  果 1.年別患者数(図1)

 2011 年は 44 例であったが,その後は年 60 例 ほどとなっていた.

2.性別患者数(図1)

 男性 166 件,女性 110 件,男女比は3:2であっ た.

3.年齢分布(図2)

 10 歳未満が最も多く,次いで 10 歳代であった.

4.来院経路別患者数(図3)

  院 内 紹 介 に よ る 受 診 が 最 も 多 く 118 例

(42.8%), 次 い で 直 接 来 院 106 例(38.4%) で あった.院外医療機関からの紹介患者は 52 例

(18.8%)であった.

5.受傷原因の内訳(図4)

 転倒・転落が最も多く 154 例(55.8%),次い で交通事故 69 例(25.0%),スポーツ 23 例(8.3%)

の順であった.

6.受傷部位の内訳(図5)

 軟組織外傷が最も多く 126 例(45.7%),次い で歯の外傷 79 例(28.6%),骨外傷 71 例(25.7%)

の順であった.

7.受傷部位別治療内容(表1)

1)軟組織外傷においては縫合処置を要した症例 は 37 例(29.4%)であった.

2)歯の外傷における治療法は,経過観察が 40

■臨床研究 高松赤十字病院紀要Vol. 4:17-20,2016

17

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例(50.6%),整復固定術が 36 例(45.6%),抜 歯術が3例(3.8%)であった.

3)骨外傷における治療法は,観血的整復固定 術 32 例(45.1%), 非 観 血 整 復 固 定 術 22 例

(31.0%),経過観察 17 例(23.9%)であった.

考  察

 当院は 26 診療科を有する総合病院であり,地 域医療支援病院,第二次救急指定病院として救急 医療に積極的に取り組んでいる.今回,当科が関 わる救急患者の大半を占める顎顔面口腔外傷患者 について,2011 年1月より 2015 年 12 月までの 5年間に当科を受診した 276 例を対象とし,臨床 統計的観察を行った.

 年別患者数をみると,2011 年は 44 件であった がその後は年約 60 件で推移しており,今後も同 程度の患者数が見込まれる.

図1 年別および性別患者数

図1 年別および性別患者数 0

10 20 30 40 50 60

2011 2012 2013 2014 2015

21

40 35 34 36

23

19 24 26

18 女性

男性

年 患者数(例)

図2 年齢分布

図2 年齢分布 0 10 20 30 40 50 60

年齢(歳)

患者数(例)

図3 来院経路

図3 来院経路

院内 118

直接 106 院外医科

27

院外歯科 25

図4 受傷原因 図4 受傷原因

転倒・転落 交通事故

154

69

スポーツ

23

殴打

4

その他

26

図5 受傷部位 図5 受傷部位

軟組織 126

歯 79 頬骨

10 頰骨弓

上顎骨 17

下顎骨 30

歯槽骨 11

 患者性別は,男女比3:2で男性が多かった.

年齢分布は,10 歳未満が最も多く(21.3%),次

に 10 歳代(15.2%)が多かった.これらは他施

設の報告

1~6)

と同様であった.小児患者が多い要

因としては,活動性が高いにもかかわらず歩行が

不安定であること,転倒時に上肢で顎顔面口腔領

域を保護することが困難であることが挙げられ

18

(3)

臨床研究

7~9)

.しかし,近年は高齢者が転倒により顎顔 面口腔領域を受傷するケースも増加している.

 受傷原因については,これも他施設の報告

2~6)

と同様に転倒・転落による受傷が最も多かった

(55.8%).これは前述のように,小児,高齢患者 が本疾患の患者の主体になっていることが要因と 考える.

 来院経路については,院内他科からの紹介が最 も多く(42.8%),次いで直接来院(38.4%)の順 であった.院外医療機関からの紹介率は 18.8%で あり,これは当科の初診患者全体の紹介率 77.3%

(2014 年度)と比較すると低いものであった.緊 急を要する疾患の性格が,他の医療機関を経ずに 当院を直接受診している要因と考えられた.他施 設では歯科口腔外科を直接受診する場合が多いよ

うである

1,3,4)

が,当院では日中も救急患者につ

いては,救急部担当医師の診察の後に各診療科へ 紹介する体制になっているため,院内紹介患者の 割合が高くなっているものと考えられた.

 受傷部位の内訳では,軟組織外傷が 45.7%と最 も多く,次いで骨外傷が 25.7%であった.これは

他施設

1~3,5)

とほぼ同様であった.

 受傷部位別治療内容をみると,軟組織外傷例に おいては 29.4%に縫合処置が必要であった.また このうち5例(13.5%)に対しては全身麻酔下で の縫合処置が行われており,そのすべてが小児患 者であった.小児においては無理な局麻下での処 置は,精神的苦痛,偶発事故の危険性がある.審 美性も考慮した精密な縫合の必要性,既往症など も考慮し,今後も全身麻酔下での縫合処置の選択 肢を検討すべきであると考える.

  歯 の 外 傷 の 治 療 法 に つ い て は, 経 過 観 察

表1 受傷部位別治療内容

受傷部位 治療内容 症例数 軟組織外傷 経過観察  89

縫合処置  37(全身麻酔下:5)

計 126

歯の外傷 経過観察  40 整復固定術  36

抜歯術   3

計  79

骨外傷 経過観察  17 非観血的整復固定術  22 観血的整復固定術  32

計  71

50.6%,脱臼歯の整復・固定 45.6%,抜歯 3.8%

となっていた.当科では多くの症例で,処置の後 はかかりつけ歯科への紹介としている.

 骨外傷の治療法については観血的整復固定術 45.1%,非観血的整復術 31.0%,経過観察 23.9%

となっていた.手術症例の割合は他施設の報 告

1~3)

よりやや高いものとなっていた.これは当 院が第二次救急指定病院であること,麻酔科,手 術室スタッフなどのスムーズな手術への対応・協 力によるものと考える.今後も顎間固定期間・入 院期間の短縮,骨片固定の確実性などの手術の利 点,また患者の年齢,既往症などを考慮し,手術 治療の選択肢を慎重に検討していきたいと考え る.

 顎顔面口腔は耳鼻科,脳外科,皮膚科などと診 療領域が重なる部位である.また患者の高齢化に より全身管理に注意を要する症例の増加を認め,

内科,麻酔科などとの連携の重要性も高まってい る.今後も顎顔面口腔外傷の診療において,当科 が総合病院の診療科として果たす役割りは大きい と考えている.

おわりに

 今回われわれは 2011 年1月より 2015 年 12 月 までの5年間に当科を受診した顎顔面口腔外傷患 者 276 例に対して臨床統計的観察を行い,若干の 文献的考察を加えて報告した.

●文献

1)高田雅之,三好憲裕,西嶋克巳,他:口腔顎顔面 外傷 98 例に関する臨床統計的検討.日本口腔外 科学会雑誌 41:53-55,1995.

2)中川嗣文,石崎力久:当科における顔面外傷症 例の検討.市立室蘭総合病院医誌 33:40-44,

2008.

3)井手正俊,勝山直彦,奥山宜明,他:当科におけ る顎顔面外傷の臨床統計的検討(抄).日本口腔 外科学会雑誌 57:449,2008.

4)村岡重忠,李 進彰,小林正樹,他:神鋼加古川 病院における過去3年間の顎顔面外傷の臨床統計 的観察(抄).日本口腔外科学会雑誌 54:148,

2005.

5)岡本愛彦,本田武司:当科における顎顔面領域外 傷患者の臨床的検討(抄).スポーツ歯学 12:

96,2009.

6)山田 聡,森 敏雄,渡邉裕加,他:滋賀医科大

19

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学医学部付属病院歯科口腔外科における顎顔面外 傷患者の臨床統計学的検討(抄).滋賀県歯科医 学会雑誌 4:50,2016.

7)米本嘉憲,中山康弘,岩田雅裕:高松赤十字病院 歯科口腔外科における小児顎顔面口腔外傷の臨 床統計的観察.小児口腔外科 14(1):12-15,

2004.

8)伊藤良平,榊 宏剛,久保田耕世,他:当科にお ける小児口腔顎顔面外傷症例の臨床統計的検討.

小児口腔外科 24:161-169,2014.

9)喜多憲一郎,西村一行,岡野 健,他:当科にお ける過去7年間の小児顎顔面口腔外傷の臨床統計 的観察.小児口腔外科 25:1-7,2015.

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参照

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