重度知的障害児の要求選択行動 における好みの影響
村 中 智 彦
本研究 は,重度知的障害児の要求選択行動 を生起 させ るために, どの よ うな選択肢 を用意すればよ いかにつ いての手がか りを得 ることを 目的 とした。話 しことばを もたず,動作 による要求表現 も乏 し い重度知的障害児 1 名を対象 に, 2 つの遊具を提示 して 1 つを要求選択す る場面 において,対象児の 遊具 を見比べ る,接近す る,従事す る反応 の観察を行 った。対象児の 1 0 個 の遊具 に対す る好みの度合 いを査定 し, 5 つの提示 ペアを設 け, どの提示 ペアにおいて要求選択反応が生起す るのか,提示ペア の相違 によって要求選択反応 の生起 に違 いが見 られ るかの 2点 について分析 を行 った。その結果,す べての提示 ペアにおいて要求選択反応が認め られた こと,提示ペアの相違 によって接近す る反応 と従 事す る反応 の生起 に違 いが認め られた こと,好みの高い遊具 を含む提示 ペアでは接近す る反応 と従事 す る反応 の生起が高 まることを示唆 した。
キー ・7J ‑ ド :重度知的障害児 要求選択行動 好み
Ⅰ.同属の所在 と研 究の 目的
先頃文部省 よ り公表 された 「 教育課程基準 の改善 に ついて」 ( 文部省 ,1 9 9 8) の内容を見 ると,児童生徒の 主体性を重 ん じる教育の方針が明確 に打 ち出 されてい る。近年,障害児教育 において も,子 ども本人による 決定 とそれを実現す る取 り組みの重要性が指摘 され る よ うになった(日本特殊教育学会 ,1 99 5 ;山田 ,1 9 9 5;
加藤 ,1 99 5 ) 。この よ うに,子 どもの決定や主体性が重 視 され る背景 として,一つには,欧米を中心 に活発 に 行われてい る障害者 の 自己決定や選択 行動 ( c hoi c e ‑ maki ng) に関す る実証的研究があろ う ( 加藤 ,1 9 9 5 ) 0 障害者 の 自律や尊厳 を文脈 に,選択行動 を 自己決定を 実現す る手段 と位置 づ け,初 め て研 究 にのせ た の は Mi t haug& Hanawal t( 1 97 8) であった。以降,欧米 では,個人の権利 を尊重す る社会 に支 えられ,障害の ある当事者 の 「 生活 の質」の向上を 目的 とした選択行 動 に関す る論文 が 8 0 以上 にわ た って報 告 され て い る ( Lanc i onie ta1 . ,1 9 9 6 ) .She vi n & Kl e i n( 1 9 84 ) は,
「 子 どもは, 自ら決定を行 うことによって, 自ら環境 を変 える体験 を得 ることがで きる」 と指摘 している。
学習の主体者 である子 どもに とっての選択 ・決定 の教 育的意義 は, こ?点 にあると考 えられ る。
選択行動研究において主 な対象 となったのは,重度 もしくは最重度 の知的障害児 ( 以下,重度児)であっ
た ( Lanc i onie ta1 . ,1 9 9 6 ) 。知的障害が重 いために, 言語や動作サインな どの コ ミュニケーシ ョン行動 の獲 得 に困難 を示 す子 どもた ちで あった。 コ ミュニ ケー シ ョン行動 における選択行動 は,機能的には,要求首 語行動 といえる ( 藤原 ・ 大泉 ,1 9 9 3 ) 。 ある限 られた対 象物 ( 選択肢)の中か ら, 1 つを選 んで要求す る行動 ( 以下,要求選択行動) と捉 えられ る。要求選択行動 研究 における最 も大 きな成果 は,好み ( pr e f e r e nc e ) の 存在す ら疑わ しか った重度児の好みが明確 にあ り,逮 ばせ るい う事態 によって引 き出せ ることを明 らかに し た点であろ う ( e. g.Pe r s ons & Re i d,1 9 9 0; Si gaf oo s
& De mps y,1 9 92 ) 0Pe r s ons & Re i d( 1 9 9 0 ) は,対象
者 に 2品の食物 を繰 り返 し選 んで消費 してもら う手続
きを用 いて,信頼性のある好みの選択が確認で きるこ
とを示 した。望月 ( 1 9 9 6 ) 紘 , 「 与 えられた選択肢 の ど
ち らかに分化的反応 を示す選択 は,反応形式 か ら見れ
ば,非常 に簡単であ り,個人の意思表示 の中では最 も
単純 なものである」 と指摘 している。つ ま り,選択肢
を見 る ・取 るな どの表 出の容易な反応 によって要求 を
行 うことが可能 となる。ただ し,見かけ上 の選択肢 を
見 る ・取 る反応が,常 に,要求選択 であるか ど うかに
は注意す る必要があろ う。藤原 ・大泉 ( 1 9 9 3 ) 紘, 2
つの課題物 か ら 1 つを要求選択 させ る事態 において,
対象児が一方の課題物 のみを注視 しそれを要求 した反
応が認め られた ことを報告 している。そ して, この よ うな反応 は,一方の刺激 に統制 された反応であ り,選 択反応 とはいえないであろ うと示唆 している。つ ま り, 真 の好み にもとづいた要求選択反応であるためには, 対象者が与 えられた選択肢 のすべてに注意 を向けたか ど うか とい う反応 を捉 える必要があろ う 。Pe r s ons&
Rei d( 1 9 9 0 ) の研究 をは じめ,重度児の要求選択行動 の研究では, この点 についてはあま り考慮 されていな
い。上述の よ うに,要求選択行動 は,与 えられた選択肢 間における個人の 「 相対的 な好み」 にもとづいて生起 す ると考 えられている ( She vi n&Kl e i n,1 9 8 4; Gue s s e ta1 . ,1 9 8 5 ) 0 「 相対的 な好み」か らも分かるよ うに, 事物 に対 す る好 み には,好 み の度 合 い ( pr e f e r e nc e r anki ng) が階層的 に存在す ると考 えられ る。 もちろ
ん,好みの度合 いは,事物 に対応 して異 なるであろ う。
重度児の物品に対す る妊み の度合 いを測 る手だて とし て, Pac ee ta l . ( 1 9 8 5 ) 紘,対象者 に1つの物品を提示 し,対象者の物品に接近す る, もしくは従事す る反応 について観察 した結果,それ らの反応が好みを測 る行 動の指標 と成 り得 ることを示唆 した。 この手続 きの妥 当性 について議論の余地 はあるが,選択 させ る手続 き において も,選択肢 に対す る好みの度合いやそれ らの 組み合わせが,要求選択反応 の生起 に強 く影響 を及ぼ すのではないか と推測 され る。好みの他 にも,要求遠 択反応 に影響を及ぼす要因 として,提示す る選択肢 の 形式 ( Pe r s o nse ta1 . ,1 9 97 ) や選択肢 の提示方法 ( 槙 場 ・藤 田 ・井上 ,1 9 9 4 ) が示唆 されているが,選択肢 の好みの度合い との関連 について検討 した ものは見 あ た らなかった。
そ こで,本研究では,重度児の要求選択反応 の生起 と選択肢 に対す る好みについて検討 を行 った。重度児 に対 して, どの よ うな選択肢 を用意すれば要求選択反 応 を生起 させ ることが可能 となるかについての手がか りを得 ることを 目的 とした。話 しことばを もたず,動 作 による要求表現 も乏 しい重度児 1 名を対象 に, 対象児 の遊具に対す る好みの度合 いを査定 し,査定結果 にも とづ く提示ペアを 5 つ設定 して,どのよ うな好みの度合 いの提示ペアの ときに要求選択反応が生起す るのか, 提示ペアの違 いによって要求選択反応の生起状況に違 いが見 られ るかについて分析を行 った。
Ⅰ Ⅰ . 方 法 1 .対 象 児
観察開始時, 5 歳 9 ヶ月の男児。保育所 に適所 して
お り,所での一 日の多 くは,小集団で構成 された障害 . l E t T . 保育 クラスで活動 している .2 歳 1 1ヶ月の とき , 「自 閉的傾 向のある知的障害」 と診断 されているが,対人 的相互反応 における質的 な障害 ( APA,1 9 9 5 ) な どの 自閉症状 はそれ ほ ど見 られない。 5 歳 4 ヶ月の とき, 本学障害児教育実践 セ ンターの教 育相談 を初 め て受 け,その後週 1回の指導 を継続 している。主訴 は , 「こ とばの遅れ 」 「 排雅 な ど身辺 自立の未確立」 であった。
母親 は,本児か らの働 きかけについて,以下の よ う に報告 している。「 好 きなたべ ものが欲 しい とき」や「 嫌 な ことか ら逃れたい とき」 な どの要求時 に多 く見 られ る。欲 しい物 を見た り,相手 の腕や手 を持 って連れて い く伝 え方がほ とん どである。本児の要求意図を見過 ごした り,理解で きない ことも多 い。要求が充足 され ない と, 自分の顎 を叩 く動作 を繰 り返 した り,声 をあ げて泣 いて しま う。 また,大人か らの働 きかけに対す る応答 について,簡単 な指示 かけで も反応が見 られな か った り,指示 した内容 とは異 なる行動 を取 ることが 多 い 。「 ○ ○ちゃん」の呼びかけには, ときどき視線が 合 う。
津守式乳幼児発達検査 (5 歳 5 ヶ月実施) の結果で は,運動 2 歳 4 ヶ月,探索 ・操作 0歳 1 0 ヶ月,社会 0 歳 1 1ヶ月,生活習慣 1 歳 9 ヶ月,言語 0歳 9 ヶ月であっ た。言語では , 「テーブルをまわ って欲 しい物 を取 りに 行 く 」 「 絵本 な どのページをめ くる」の 2 項 目のみ 「明 らかにで きる」項 目であった。新版 K 式発達検査 (5 歳 6ヶ月実施)では,姿勢 ・運動 2 歳 1 1ヶ月,認知 ・ 適応 0歳 1 1ヶ月,言語 ・社会 0 歳 7 ヶ月であった。認 知 ・適応 の 「 横木」課題では,横木 を顎 に打ち当てる 操作 のみであった。「 小鈴 と瓶」課題 では,瓶 を振 って
′小鈴を鳴 らす操作が繰 り返 し見 られた。
2. 遊具の選定
以下の手続 きに よって観察 に使用す る遊具 を選定 し た。
まず,母親 に対 して, 2 つのチ ェック リス トを用 い て聞 き取 り調査 を行 った。食べ物,飲み物,遊 び,チ レビ番組 な どの好みの調査 と, 日常生活 における日課 や活動 の調査 を実施 した。 それ らの結果 を もとに,以 下の条件 を満たす遊具 を選定 した。
・日常の遊 びの レパ ー トリーにあるもの
。・簡単 な操作で遊べ るもの。
・観察場面 に導入す ることが可能であるもの。
そ して , 「 食べ物絵本 」 「 起 きあが りこぼ し型 のアン
バソマンの人形 ( 以下, アンパ ン人形) 」 「 押す と音が
鳴る アンパ ンマンの人形 ( 以下, アンパ ン音) 」 「 鈴」
「 新聞紙 」 「ひも」の 6 つを選 び出 した。 さらに,幼児 が一般的に好む と思われ る 「 触れ るとメロデ ィーが流 れ る くるま( 以下, くるま ) 」 「ミニカ ‑ 」 「ベ ビーブ ッ ク 」 「 木琴」の 4 つを付 け足 して,計 1 0 個 の遊具 を選定 した。
3 .好みの査定
選定 した 1 0 種 の遊具 に対す る好みの度合 いを査定す るために,以下の観察を行 った。観察 は,週 1 回約 1 時間の教育相談 ( 知覚 ・認知, コ ミュニケ「シ ョソを 学習のね らい とした課題学習)の終了後,約 1 5 分を利 用 して行 った。使用 した部屋 (6 mX 4 m) の設定 を 図 1に示 した。 なお, この観察の前 に,本児 と観察者 紘,先の部屋 において,本児が選定 した 1 0 種 の遊具 に 自由にアクセスで きるセ ッシ ョン ( 約 1 5 分) を 3 回実 施 した。
観察の手続 きは, Pa c ee ta l . ( 1 9 8 5 ) の 「 単一 の刺 激を提示 し,その刺激 に対す る対象者 の反応 を観察す る」方法 を使用 した。 まず,図 1 の よ うに,本児 と観 察者 は机 を挟 んで対座 した。観察者 は,本児が観察者 を注視 した と同時 に, あ らか じめ道具箱の中か ら取 り 出して身体 の後 ろに隠 しておいた 1つの遊具 を机上 に 置 いて本児 の遊具 に対 す る反 応 を観 察 した。 1セ ッ シ ョンは,選定 した1 0 種 の遊具 を一つずつ提示す る1 0 試行か らな り,計 5 セ ッシ ョンを実施 した。遊具 を提 示す る順 は,セ ッシ ョン毎 に ランダムに行 った。
帆
図 1 観 察 場 面 A :1 遊 具 の 提 示位 置
B :2 遊 具 の 提 示位 置 ( 遊 具 間 は 40c m)
遊具 に対す る好みの度合 いを測 る反応 として ,Pac e e ta l . ( 1 9 85 ) を参照 し,接近反応 と従事反応 の 2 つの 反応 を標的 とした。接近反応 とは,遊具が提示 された
後 の 5 秒以内において,遊具 に向か う ・触れ る動作, もしくは積極的 な表情や発声が, 3 秒以上継続 して認 め られ る反応 と定義 した。従事反応 とは,接近反応が 確認 された直後 よ り30 秒以上継続 して,先 に挙 げた動 作や表情,発声が認め られ る反応 と定義 した。
観察者 は,本児の接近反応 を観察 しない とき,提示 した遊具をすみやかに取 り去 り,次の試行 に移行 した。
接近反応 を観察 した ときには,その後遊具 に向か う動 作等が 5 秒間中断 した ときに,遊具 を取 り去 り次 の試 行 に移行 した。 また,従事反応 を認めた後, 3 分以上 経過 して も,遊具 に向か う ・触れ る動作等の中断が認 め られない ときには , 「ち ょ‑だい」といって手渡 しさ せた。本児が遊具 を持 って席 を離れても,す ぐに席へ 連れ戻す ことはせず,遊具 に向か う動作等の中断を確 認 した際 に席へ誘導 した。
観察の結果 は,録画 テープにもとづ き,各遊具 とも 計 5 試行 における接近反応 と従事反応 の生起数 を記録
した。
計 5 試行 における各遊具の接近,従事反応 の生起数 を図 2に示 した。図 2か らも明 らかなよ うに,食べ物 絵本,鈴,新聞紙, ひも,ベ ビーブ ックの 5 つの遊具 では,接近,従事反応が, 5 試行のすべてにおいて観 察 された。木琴, アンパ ン音, アンパ ン人形, くるま の 4 つの遊具では, 接近 はいずれ も 5 回観察 されたが, 従事 は 4 回 もしくは 3 回であった。 ミニカーでは,接 近が 3 回,従事が 1 回の生起 しか観察 されなかった。
4. 遊具の提示ペア
図 2 で示 した よ うに,査定結果 に基づ いて, Hi gh‑
Pr e f e r( HP) , Lo w‑ Pr e f e r( LP) , ・N
o‑Pr e f e r( NP) の 3 つの好みの度合 いを設定 した。
選択肢 の提示方法 は, 「2 つの選択肢 の どち らかを選 ぶ」 とい う並列報酬法 ( 高橋 ・岩本 ,1 9 82 ) を採用 し た。 この方法 は, Pe r s o ns & Re i d ( 1 9 9 0 ) , Si ga f oo s
&.De mps y ( 1 9 9 2 ) をは じめ,選択行動研究において 最 も多 く使用 されている。 日常場面で も頻繁 に遭遇す る提示方法 と考 えた。 この提示方法 を用いると,先 に 設定 した 3つの好みの度合いか ら, 6つの提示ペアが 設定 で きる。即 ち,好み の度合 いが 同 じペ アで あ る
「 HP 遊具 vsHP 遊具 」「 LP 遊具 vsLP 遊具 」「 NP 遊具 vsNP 遊具」,また,好みの度合 いが異 なる 「 HP 遊具 vsLP 遊具 」「 HP 遊具 vsNP 遊具 」「 LP 遊具 vs NP 遊具」である。 しか し,図 2 よ り, NP 遊具 は ミニ
カーの 1 つであったために ,「 NP 遊具 vsNP 遊具」の
ペアを取 り入れ ることはで きず,それを除 いた 5 つの
提示ペアを観察 に使用 した。
41 ギ
雛や 漂 t J l :i
・,11 ㌢㌔ 遊具
図 2 遊具 に対す る接近 ・従事反応
5.観察の手続 き
使用 した部屋 とセ ッティングは ,3. 好みの度合 いの 査定 と同 じであった。
図 1の よ うに,本児 と観察者 は机 を挟 んで対座 した。
観察者 は本児 に注 目し,本児が観察者 を注視 した と同 時 に, あ らか じめ道具箱 の中か ら取 り出 して身体 の後 ろに隠 しておいた 2つ の遊 具 を同時 に机 上 に置 き,
「どっちに しますか」 と言 って, 2 つの遊具 に対す る 本児の反応 を観察 した。
1 セ ッシ ョンは ,5 つの提示 ペ アをそれぞれ 1 回ずつ 提示す る計 5 試行 を行 い, 計 5 セ ッシ ョンを実施 した。
なお,各提示 ペ アに使用 した遊具 の組み合わせ は,読 行毎 に, セ ッシ ョン毎 に ランダムとし, ミニカーを除 いた 9 種 の遊具が, ほぼ同 じ提示 回数 になるよ うにカ ウンターバ ランスを行 った。
標的 とした本児の反応 は,見比べ反応,接近反応, 従事反応 の 3 つ とした。見比べ反応 とは, 2 つの遊具 が机上 に置 かれた直後 か ら 5 秒以 内 もしくは接近反応 が見 られ る直前 に,両方 の遊具 に対 して視線 もし くは 顔 を向ける反応 と定義 した。接近反応 とは, 2 つの遊 具が提示 された後 の 5 秒以内において, いずれかの遊 具 に向か う ・触れ る動作, もし くは積極的 な表情や発 声が, 3 秒以上継続 して認 め られ る反応 と定義 した。
従事反応 とは,接近反応が確認 された直後 よ り 3 0 秒以 上継続 して,先 に挙 げた動作や表情,発声 が認 め られ
る反応 と定義 した。
観察者 は,本児のいずれかの遊具へ の接近 を認 めた とき, も う一方 の遊具 をすみやかに取 り去 った。接近 反応後,従事反応 も確認 した とき,本児の遊具へ向か
う・ 触れ る動作等が 5 秒間中断 した ときに遊具 を取 り去 り,次 の試行 に移行 した。従事反応 を確認 し, その後 3 分 以上経 過 して も遊 具 との中断 が見 られ ない とき は,「ち ょ‑だい」といって手渡 しさせた。接近反応 を 確認 で きない とき, また接近反応 を確認 し, その後 3 0 秒以内に接触 の中断が 5 秒間見 られた ときも,遊具 を 取 り去 り,次 の試行 に移行 した。 また, 1 つの遊具 で はな く,机上 に置 かれた 2 つ の遊具 に対 して, はば同 時 に接近反応 を認 めた ときは, いずれの遊具 も提示 し た ままに し, いずれの遊具 に対 して も 5 秒間の中断を 確認 した とき,遊具 を取 り去 った。
6.観察の記銀 と結果の処理
観察 の記録 に使用 した 8 ミリビデオカメラは, 図 1 の よ うに配置 した。記録者 は,遊具 を選択す る場面で は本 児 の上 半 身 を中心 に視線 の動 きが お さま る よ う に,従事場面では遊具への従事 の様子がお さまるよ う に記録 を行 った。
観察終了後,観察者 1名が,錠画 テープに もとづい て,各試行 における見比べ,接近,従事反応 の生起 を 記録 した。 そ して,各提示 ごとに,計 5 試行 における 見比べ反応 が生起 した回数,見比べ ・接近反応 が連鎖 して生起 した回数,見比べ ・接近 ・従事反応 が連鎖 し て生起 した回数 を求めた。
Ⅰ Ⅰ Ⅰ . 結 果
各提示 ペ アにおけ る 「 見比べ 」 「 見比べ +接近 」 「 見 比べ +接近 +従事」 の生起数 を図 3 に示 した。例 えは,
「 LP v s NP 」の提示 ベ アでは,全試行回数 5 回の うち,
見比べ反応 は 5 回 とも観察 され,見比べ反応 と接近反
応が連鎖 して観察 されたのは 3 回,見比べ反応 と接近, 従事反応が連鎖 して観察 されたのは 2回であった こと を表 している。
まず,提示 ペアごとに,各反応 の生起状況 について 述べ る。
図 3 か らも明 らかなよ うに, 「 HPvsHP 」の提示 ペ アでは,全試行 とも,見比べ反応後 にいずれかの遊具
‑の接近,従事反応が観察 された。
「 LPvsLP 」の提示 ペアでは,見比べ反応 は全試行 とも観察 されたが,「 見比べ +接近」 「 見比べ +接近 + 従事」 はいずれ も 3 回であった。 これは,見比べ反応 が観察 された後 に ,2 つの遊具 に対 して,はば同時に, 両手で触れ,その後 も 2 つの遊具 に従事 し続 ける反応 が 2回認め られたか らである。
「 HPvsLP 」の提示 ペアでは,「 見比べ」「 見比べ + 接近 」 「 見比べ +接近 +従事」のいずれ も 4 回であった。
これは,選択肢 である HP と LP の遊具 の両者 を見比 べ るのではな く ,HP の遊具のみを注視 した後 に,その 遊具‑接近,従事す る反応 が1回観察 された か らで あ
る。
「 HPv sNP 」の提示 ペアでは,「 見比べ」が 5 回,
「 見比べ +接近」「 見比べ +接近 +従事」が 4 回であっ た。 これ は,見比べ反応 が観察 された後 に,席 を離れ 窓の方へ 向か って外 を見 る反応 が1回観察 されたか ら である。
「 LPvsNP 」の提示 ペアでは,「 見比べ」が 5 回,
「 見比べ +接近」が 3回,「 見比べ +接近 +従事」が 2 回であった。 5回の うち 2回は,先の 「 LPvsLP 」の 提示ペアで述べた反応 と同様 の, 2 つの遊具 に対 して 両手で触れ,従事 し続 ける反応 が観察 された。 また, 見比べ反応 と接近反応 が観察 された後 ,3 0 秒以内に遊
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