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密教研究 Vol. 1927 No. 27 001森田 龍僊「「御入定大事」の研究 P1-43」

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(1)

﹁御

( 一 ) 大 師 の 御 入 定 は 、 晩 年 の 動 静 を 熟 察 す る な ら ば 、 そ れ が 決 し て 一 朝 一 夕 の で き ご と で は な く て 、 や ゝ 久 し き に 亘 る 修 練 準 備 を な し 玉 ふ た 結 果 な る こ と に 想 到 さ れ る も の で あ る 。 こ れ わ が 事 相 門 に 特 に ﹁ 御 入 定 大 事 ﹂ て ふ 秘 傳 が 存 す る 所 以 で あ る 。 こ の 大 事 は 、 嚴 密 に 尋 ね て 見 る と 、 所 謂 異 説 紛 然 た る も の が あ つ て 、 そ の 取 捨 に は 少 か ら す 迷 は し め る の で あ る か ら 、 中 に お い て 最 も 正 統 に 属 す る と 思 ふ 相 傳 を よ く 看 定 め て 、 こ れ に よ つ て 観 察 を こ ら す べ き こ と で あ る 。 慶 長 六 年 に 京 都 浮 土 宗 大 雲 院 の 貞 安 が 阿 波 に 下 つ て 盛 ん に 澤 土 門 を 宣 傳 す る に 當 り 、 我 田 引 水 的 の 説 を な し て 曰 く 、 天 竺 の 達 磨 、 日 本 の 弘 法 と い は ヾ 聖 道 門 傑 出 の 組 師 た る は い ふ 迄 も な い が 、 然 る に そ の 終 焉 の み ぎ り に は と も に 彌 陀 の 名 號 を 唱 ふ る こ と を 唯 一 の 秘 事 と さ れ て ゐ た 。 そ の 證 擦 を い は ヾ 達 磨 の 碑 文 に は ﹁ 念 無 念 を 超 ゆ る 念 佛 三 昧 。 生 、 無 生 に 勝 る 往 生 浄 土 門 ﹂ と い ひ 、 弘 法 の 入 定 記 に は ﹁ 我 山 は 眞 言 上 乗 の 地 な り 、 更 に 餘 宗 は 建 立 す べ か ら す 、 但 し 念 佛 は 制 の 外 な り 、 空 海 念 佛 し て 承 和 二 年 御 入 定 大 事 の 研 究 一

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御 入 定 大 事 の 研 究 二 に 入 定 せ む ﹂ こ い へ る が 即 ち こ れ で あ る と 。 當 時 偶 々 高 野 蓮 華 三 昧 院 の 頼 慶 が 所 用 の た め に 同 國 に 掩 留 せ し が 、 獣 過 す る に 忍 び す し て 之 を 破 し て 曰 く 、 達 磨 は 面 壁 悟 道 の 聖 者 に し て 大 師 は 即 身 成 佛 の 大 権 で あ る 。 悟 道 の 聖 者 が 臨 終 の み ぎ り 再 び 凡 夫 と な つ て 念 佛 し て 見 た り 、 大 日 法 王 が 還 て 衆 生 と 作 つ て 浄 土 を 欣 求 す る と い ふ が 如 き は 非 理 の 至 り で あ る 。 達 磨 碑 文 の か の 一 節 の 如 き は 且 ら く 度 生 方 便 の 言 で あ り 、 大 師 の 作 と い ふ 入 定 記 に 至 つ て は 敢 て 辮 す る 迄 も な き 僞 作 で あ る 。 そ の 故 は 大 師 の 當 時 に は 念 佛 宗 が 未 だ 起 ら な い の で あ り 、 之 を 諸 宗 建 立 の 制 の 外 な ぞ と 葡 別 し や う が な い 一 事 に よ る も 明 か な る か ら で あ る 。 い か に も 高 野 に は 古 來 ﹁ 聖 ﹂ ( ヒ ジ リ ) て ふ 念 佛 爲 本 の 一 派 が こ れ あ る も 、 こ は 入 定 四 百 年 後 に 一 遍 上 人 が こ の 山 に 寄 寓 し て 念 佛 三 昧 を 事 と し 、 之 に 共 鳴 す る 幾 多 の 隠 遁 者 が つ い に 一 集 團 を な す に 至 れ る も の ゝ こ と で あ り 、 こ れ 等 は も と よ り 純 な る 大 師 の 門 流 で は な い か ら 問 題 と は な ら 漁 と 。 詳 細 は 同 師 の 駁 文 た る 貞 安 問 答 一 巻 を 見 る べ き で あ る 。 又 わ が 國 の 左 道 密 教 立 川 流 に は 、 ﹁ 堀 出 法 ﹂ と い ひ 、 ﹁ 飛 行 自 在 法 ﹂ こ い ひ 、 ﹁ 渡 天 大 事 ﹂ と い ひ 、 ﹁ 手 足 不 二 大 事 ﹂ と い ひ 、 ﹁ 三 世 常 恒 法 ﹂ な ご い ふ 種 々 の 大 事 が あ り 、 就 中 ﹁ 十 甘 露 法 ﹂ と い ひ 、 又 は ﹁彳 入宀 ( 御 入 定 の 略 字 ) 大 事 ﹂ と い ふ が 如 き 種 類 は 、 何 れ も 斯 流 捏 造 の 御 入 定 大 事 で あ つ て 勿 論 信 す べ か ら ざ る も の で あ る 。 宥 快 師 は 寳 鏡 抄 に ﹁ 明 澄 、 賢 誓 等 の 名 字 あ る 血 脉 の 中 に は 多 く 邪 法 あ り ﹂ と い は れ て ゐ る が 明 澄 の 作 た る 南 山 記 や 、 又 明 澄 、 道 範 作 の 合 集 と も 見 ら る べ き 高 野 秘 記 な ご に は 、 こ の 大 事 に つ い て

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甚 だ 怪 し い 記 事 が 散 在 し て ゐ る 。 所 謂 秘 記 に は ﹁ 御 入 定 の 印 に 十 六 重 の 極 秘 あ り 、 委 細 々 々 に 尋 ね 習 ふ べ し と ﹂ い ひ 、 ﹁ 御 入 定 の 印 は 一 説 に は 大 塔 中 尊 の 印 云 云 。 十 六 重 の 印 を 結 び 給 ふ 云 云 ﹂ と い ひ 、 ﹁ 御 入 定 の 法 は 不 動 七 種 の 大 法 な り 、 大 師 の 種 子 は 香 字 云 云 ﹂ と い ひ 、 又 南 山 記 に は ﹁ 一 、 延 喜 廿 一 年 辛 已 正 月 十 二 日 鬼 宿 、 眞 言 院 に 於 て 後 七 日 御 修 法 の 時 、 普 賢 延 命 の 大 法 勤 行 の 次 で に 藥 師 供 私 に 行 す 云 云 。 観 賢 信 正 御 入 定 法 の 中 の 不 審 に 依 て 誓 願 を 立 て 申 す ﹂ と い ひ 、 同 師 の 開 廟 戚 見 を 記 す る に 當 り 、 ﹁ 観 賢 俗 正 重 々 の 事 を 問 ひ 奉 る 中 に 、 大 師 の 仰 に 曰 く 、 入 定 法 の 中 の 五 色 成 就 の 印 に 聖 寳 口 傳 を か き そ わ た り 、 彼 の 法 の 印 相 等 は 、 面 授 口 傳 の た め に 大 様 に 書 き お く 、 此 れ 即 ち 鷲 峯 の 親 聴 な り ﹂ と い ひ 、 ﹁ 不 動 七 種 御 入 定 法 の 大 事 は 、 眞 然 僧 正 御 房 に 醍 醐 の 本 願 聖 寳 信 正 御 重 授 の 法 を 観 賢 相 承 す 云 云 ﹂ と い ふ が 如 き こ れ で あ る 。 い ふ 所 の 十 六 重 の 印 と い ひ 、 不 動 七 種 の 大 法 と い ひ 、 五 色 成 就 の 印 な ぞ と い ふ も の は 野 澤 正 流 の 何 処 を 尋 ね て も 、 さ ら に も つ て 沙 汰 し な い も の ゝ み で あ り 、 要 す る に こ れ 等 は み な 立 川 流 の 所 傳 に 囑 す べ き も の で あ る 。 大 師 の 正 統 た る 野 澤 諸 流 に 傳 ふ る 根 本 の 密 法 は 、 す べ て 大 師 よ り 相 傳 し 來 れ る も の な る が 、 然 る に そ の 中 に 大 師 相 傳 の 何 々 大 事 と い ふ 特 殊 秘 傳 な る も の が 往 々 に こ れ あ る 。 試 み に 今 か の 大 事 及 び 大 師 に 關 し て の 諸 大 事 を 敷 へ る と 、

(

)

御 入 定 大 事 の 研 究 三

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御 入 定 大 富 の 研 究 四 ( 二 ) 田 夫 口 傳 ︱ 西 大 寺 流 の 相 傳 。 こ れ は 大 師 出 雲 に て 稻 荷 明 神 よ り 受 け 玉 ふ た と い ふ 除 怖 畏 の 法 で あ る 。 ( 三 ) 大 師 詫 宣 文 ︱ 寳 性 院 の 経 庫 (秘 密 略 要 の 説 )。 ( 四 ) 智 泉 臨 終 秘 明 ︱ 中 院 及 び 三 寳 院 の 相 傳 。 ( 五 ) 自 身 引 導 作 法 ︱ 中 院 の 相 傳 。 之 は 明 算 が 承 和 元 年 十 二 月 十 三 日 鬼 宿 、 大 師 御 影 堂 に 於 て 御 行 法 の 時 、 眞 然 に 授 け 玉 ふ の 大 事 な り と 偶 然 と し て 夢 中 に 戚 得 せ し も の で あ る 。 か の 蓮 華 三 昧 経 の 有 名 な る 八 句 の 文 に 対 し て 、 一 々 に 相 応 の 印 明 を 配 し た も の で あ り 、 そ の 配 し 方 が い か に も 理 を つ く し て ゐ る 。 ( 六 ) 大 師 御 引 導 作 法 ︱ 中 院 相 傳 。 之 は 大 日 経 悉 地 出 現 品 の ﹁ 不 捨 於 此 身 ﹂ 等 の 四 句 の 文 に 、 智 拳 印 を 配 し た る も の で あ る 。 (七 ) 都 率 上 生 大 事 ︱ 同 相 傳 。 之 は 眞 然 秘 訣 に あ る も の で 、 取 ち 承 和 二 年 乙 卯 三 月 七 日 、 大 師 と 大 明 神 と の 御 契 約 で あ る 。 ( 八 ) 並 更 座 大 事 ︱ 西 大 寺 相 傳 。 之 は 恵 果 、 大 師 生 々 互 爲 師 弟 の 大 事 で あ る 。 ( 九 ) 雨 部 大 阿 闊 梨 位 印 ︱ 又 は 天 長 印 信 と も い ひ 、 ﹁ 天 長 二 年 乙 巳 三 月 五 日 、 於 東 寺 眞 雅 大 法 師 傳 之 ﹂ と の 奥 書 あ る 大 師 親 筆 の 印 信 な り と し て 、 諸 流 に は 大 抵 こ れ を 傳 ふ る 。 就 中 、 地 藏 院 覚 雄 方 や 安

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流 な ぞ は 特 に 秘 重 す る も の で あ る 。 し か し 、 大 師 當 時 に 筆 録 に な れ る 印 信 が あ る と い ふ こ と さ へ 既 に 疑 問 で あ り 、 又 こ の 印 信 の 文 句 が 鄙 拙 な る も ま た 疑 問 の 鮎 で あ る 。

(十

)

(十 一 ) 即 身 成 佛 義 大 事 傳 法 院 相 傳 。 之 は ( 六 )大 師 御 引 導 作 法 と 同 工 異 曲 で あ る 。 (十 二 ) 大 師 御 影 大 事 ︱ 秘 密 略 要 。 ( 十 三 ) 大 師 量 子 形 大 事 ︱ 同 前 。 (十 四 ) 御 遺 告 大 事 ︱ 峯 不 越 大 事 と も い ひ 、 中 院 の 相 傳 で あ る 。 ( 十 五 ) 大 師 拝 見 大 事 ︱ 諸 流 大 抵 相 傳 。 之 は 南 池 院 源 仁 が 直 接 に 大 師 よ り 授 か ら れ た も の で あ り ﹁ 千 金 莫 傳 ﹂ と し て 最 も 秘 藏 す る も の で あ る 。 ( 十 六 ) 御 入 定 大 事 ︱ 之 は 本 篇 の 研 究 題 目 で あ る 。 大 師 よ り す る 特 種 相 傳 の 大 事 及 び 大 師 に 關 す る 大 事 な る も の 大 都 か く の 如 く で あ る 。 い ふ 所 の 大 師 相 傳 の 大 事 な る も の ゝ す べ て が 、 事 實 大 師 の 相 傳 な り と は 直 ち に 信 じ 難 い も 、 但 し か の ( 五 )自 身 引 導 作 法 の 例 の 如 く 、 た と ひ 後 世 に 造 ら れ た と し て も 、 大 師 を 信 す る こ と の 厚 き 結 果 が 、 逡 に 天 來 の 啓 示 と な つ て 具 化 せ し こ と は 眞 正 な 事 實 な り と し な け ば な ら ぬ 。 殊 に 前 掲 ( 十 五 ) 、 (十 六 ) の 二 種 大 事 の 如 き は 、 事 相 門 の 極 秘 で あ つ て 吾 等 が 特 に 潜 心 留 意 す べ き も の で あ る 。 今 こ れ を 交 書 に 露 は す と い ふ こ と 御 入 定 大 事 の 研 究 五

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御 入 定 大 事 の 研 究 六 は 甚 だ し き 非 法 な ら む も 、 し か し 堅 信 を 起 さ ん と す る に は 研 究 を 要 し 、 研 究 に は 自 か ら 赤 裸 の 發 表 を 要 す る か ら 、 こ の 意 味 に お い て 以 下 謹 ん で ( 十 六 ) の 内 容 に ふ れ て 見 る 。 ( 二 ) 御 入 定 の 大 事 圏 い ふ は 、 大 師 が ま さ に 豫 定 の 金 剛 定 に 入 ら む と す る に 臨 み 、 最 略 に し て 而 も 最 要 な る あ る 一 種 の 三 密 行 を 修 錬 し て 、 之 を そ の 加 行 即 ち 前 方 便 と な し 玉 ふ こ と を 意 味 す る の で あ る 。 從 つ て 又 末 代 の 吾 等 と 錐 も こ の 法 則 に よ つ て 如 實 に 修 錬 す る に 於 て は 、 必 定 し て 大 師 と 同 一 の 境 地 に 安 佳 し 得 ら れ る 。 設 ひ 劣 機 に し て 同 一 の 境 地 に 安 住 し 得 ら れ す と も 、 必 す や 臨 終 正 念 に し て 未 來 に は 大 師 に 値 遇 し 成 佛 し 得 べ し と の 信 仰 の も と に 師 資 嫡 々 相 傳 し 來 れ る も の で あ る 。 而 し て 之 れ は 野 澤 七 十 餘 流 の 中 で は 獨 り 高 野 の 持 明 院 流 に の み 最 も 完 全 に 傳 へ ら れ て ゐ る の で あ る 。 持 明 院 流 と い ふ は 持 明 房 虞 春 上 人 創 始 の 法 流 な ゐ が 、 眞 轡 は 登 山 の 初 め に は 北 室 院 良 禅 に 師 事 し て 密 灌 を 受 け 、 そ の 後 保 安 三 年 十 月 廿 日 、 仁 和 寺 に 入 り 廣 澤 流 の 亘 華 た る 成 就 院 寛 助 の 門 に 入 つ て 再 び 密 灌 を 受 け た .り こ の 時 に 寛 助 は 眞 暴 が 高 野 の 佳 侶 で あ る こ と ゝ 、 そ し て 肝 心 の 高 野 に も 今 は 殆 ん ご こ の 大 事 の 傳 を 失 つ て ゐ る の を 察 し て 、 特 に 祇 を 抜 き 源 を 蜴 し て 授 け ら れ た の で あ る 。 眞 與 は 受 法 を は つ て 山 に 帰 り 、 南 谷 に 二 院 を 開 き 大 い に 法 瞳 を 振 ふ に 至 つ た 。 興 教 大 師 畳 鍍 上 人 も ま た 豫 て よ り そ の 徳 に 帰 し 、 眞 與 に つ い て こ の 大 事 を 受 げ ら れ た の で あ る 。 長 承 三 年 夏 五 月 、 上 人 の 推 奏 に よ つ て 金 剛 峯 寺 及 び 大 傳 法 院 の 本 末 両

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座 主 に 任 せ ら れ 、 保 延 三 年 正 月 十 五 日 ( 定 後 二 九 七 ) に 入 寂 さ れ た 。 後 世 そ の 佳 坊 を 持 明 院 と 幕 し 法 流 を 持 明 院 流 (略 符 に て は 寺 月 流 と も い ふ ) と 呼 ぶ に 至 つ た の で あ る 。 眞 與 の 付 弟 は 義 明 房 禅 信 と い へ る 人 で あ り 、 師 跡 に 任 し て 法 流 宣 揚 の 任 に 當 つ た 。 然 る に 當 時 持 明 院 に は 器 量 の 嫡 弟 之 れ な か り し た め に 、 禅 信 は 巳 む な く 之 を 報 恩 院 の 宗 禅 及 び 三 寳 院 の 寛 験 と 勝 心 と に 傳 へ た の で あ る 。 そ し て 宗 禅 は 之 を 同 院 畳 傳 に 傳 へ 、 覚 傳 は 之 を 繹 迦 文 院 の 教 悟 房 幸 明 に 傳 へ 、 幸 明 は 之 を 寳 性 院 の 眞 乗 房 玄 海 、 最 勝 院 の 慶 算 及 び 三 寳 院 の 観 舜 房 勝 金 の 三 人 に 傳 へ 、 玄 海 は 之 を 再 び 顔 算 、 勝 金 の 三 人 よ り 受 け 之 を 寳 性 院 の 秘 事 と な し 、 快 成 、 信 弘 、 宥 快 、 成 雄 等 と 同 院 の 師 資 が 累 代 相 承 す る に 至 つ た 。 一 方 三 寳 院 の 方 は 、 勝 心 は 寛 験 よ り 再 受 し て 之 を 遊 定 房 勝 秀 に 傳 へ 、 勝 秀 は 之 を 琳 定 房 源 眞 に 傳 へ 、 源 眞 は 之 を 前 記 の 勝 金 に 傳 へ 、 勝 金 の 時 に 前 の 如 く 寳 性 院 に 流 れ 入 つ た も の で あ る 。 わ か り 易 く そ の 系 脉 を 圖 す る と 左 の 如 く で あ る 。 御 入 定 大 事 の 研 究 七

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御 入 定 大 事 の 研 究 八 凡 そ 持 流 相 傅 の 印 信 と い は や ( 一 ) 、 寺 月 詞 印 信 一 紙 ( 二 ) 、 持 明 院 傳 法 印 信 同 一 紙 血 脉 一 紙 ( 三 ) 、 同 三 重 大 事 同 一 紙 同 一 紙 ( 四 ) 、 五 宮 大 事 同 一 紙 ( 五 ) 、 持 明 院 流 大 事 同 一 紙 同 一 紙 の 五 通 な る が 、 こ の 中 後 の 三 通 を ﹁ 三 ケ 大 事 ﹂ ご 稱 す る 。 こ の 三 通 の 中 で も ( 三 ) ( 五 ) の 二 通 は 當 流 特 有 の 規 模 と す る 所 の も の で あ る 。 ( 四 ) 五 宮 大 事 と い ふ は 、 禅 信 が 眞 譽 よ り 付 法 さ れ し 後 に 、 さ ら に 御 室 覚 法 親 王 の 付 弟 た る 紫 金 壷 寺 覚 性 親 王 ( 鳥 朋 帝 第 五 の 皇 子 ) に つ い て 再 び 御 入 定 大 事 を 傳 へ 同 時 に 受 け し 所 の 両 部 の 大 事 で あ る 。 ( 五 ) 持 明 院 流 大 事 と い ふ は 一 名 御 入 定 大 事 と も い ひ 、 ﹁ 三 ケ 大 事 ﹂ 中 の 大 事 と さ れ て ゐ る も の で あ り 、 そ う し て こ の 申 に も ま た 自 か ら ﹁ 三 ヶ 大 事 ﹂ な る も の が あ る 。 こ の 御 入 定 大 事 の 印 言 に つ い て は 、 最 勝 院 現 算 の 相 傳 と 寳 性 院 玄 海 の 相 傳 と に は 少 異 の 黙 あ る が 、 そ の 詳 細 は 後 に 至 つ て 現 は れ て ゆ く 。 又 前 述 の 如 く 覚 鍵 は 眞 與 より こ の 大 事 を 受 け ら れ た か ら 、 從 つ て 又 こ れ が 自 か ら

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傳 法 院 流 の 中 に も 含 ま れ て ゐ る 。 即 ち ( 一 ) 、 持 明 院 柿 袋 秘 法 一 紙 ( 二 )、 同 口 訣 同 ( 三 )、 同 大 事 記 同 ( 四 ) 、 同 口 訣 注 解 同 ( 五 )、 十 六 大 菩 薩 総 灌 頂 密 印 同 の 五 通 一 包 は 全 く こ の 大 事 に 外 な ら ぬ 。 こ の 五 通 は 自 か ら ﹁ 柿 袋 大 事 ﹂ と ﹁ 十 六 大 菩 薩 大 事 し と の 二 種 に 分 れ て あ り 、 前 者 は 白 毫 寺 勝 圃 ( 性 遍 又 は 勝 慧 と も い ふ ) の 相 傳 に 属 し 、 後 者 は 傳 法 院 寺 信 智 位 房 源 意 の 相 傳 に 属 す る 。 さ て 傳 流 相 承 の 分 と 持 明 院 本 流 相 承 の 分 と を 比 較 す る に 大 い な る 不 同 が あ る 。 本 流 の 嫡 傳 た る 禅 信 も 、 傳 流 の 始 租 た る 覚 鍵 も 、 と も に 等 し く 眞 與 よ り こ の 大 事 を う け た る に も 拘 は ら す 何 が 故 に 雨 者 間 に 大 い な る 不 同 が あ る の で あ ら う か は 甚 だ も つ て 了 解 に 苦 し ま ざ る を 得 な い 。 私 に 考 ふ る に 、 こ れ は そ の 源 眞 譽 が 寛 助 よ り こ の 大 事 を う く る に 當 り 、 雨 様 の 口 傳 を 井 べ 傳 へ ら れ し も 、 こ の 中 に 於 て 本 流 相 承 の 分 は そ の 正 意 と す る 所 で あ り 、 綾 上 人 に 傳 ふ る 分 は そ の 兼 意 と す る 所 で あ り 、 千 金 莫 傳 の こ の 正 意 の 分 は 、 自 か ら が 深 く 信 任 す る 唯 一 嫡 弟 以 外 に は 授 け ら れ な か つ た も の で は あ る ま い か 。 こ れ は 機 を 観 て 法 を 授 け る 阿 闊 梨 の 常 の 例 で あ る か ら 、 深 く 怪 し む に も 及 ば な い で あ ら う 。 御 入 定 大 事 の 研 究 九

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御 入 定 大 事 の 研 究 一 〇 而 し て 又 こ の 傳 流 の 中 で も 前 の 如 く 勝 圓 相 傳 と 源 意 相 傳 と の 二 様 に 分 れ て 、 そ の 間 に ま た 少 異 の 貼 あ る こ と 、 恰 か も 本 流 相 傳 中 に お け る 現 算 、 玄 海 の そ れ の 如 く で あ る 。 持 流 御 入 定 大 事 に 就 て の 血 脉 分 派 は 大 體 か く の 如 く な る が 、 か の 応 永 廿 年 十 月 廿 三 日 付 の 宥 快 口 、 快 全 記 た る 阿 底 川 藥 草 中 記 に よ ら ば 、 賓 性 院 玄 海 が こ の 大 事 を 幸 明 に う け し 上 に 、 さ ら に 臨 終 時 に お け る 瑳 算 よ り も 相 傳 し 、 持 明 院 嫡 流 の こ の 大 事 口 訣 が す べ て 寳 性 院 に 流 入 す る こ と ゝ な つ た 。 現 算 は そ の 弟 子 了 算 に は 直 接 之 を 授 け す に 、 汝 は 我 が 滅 後 玄 海 よ り う く べ し と 遺 言 し て 入 滅 し た 。 そ の 後 了 算 は 華 王 院 に て 之 を 受 け 玄 海 よ り は 終 に 之 れ を 受 け な か つ た か ら 、 そ の 相 傳 は 直 系 の も の で は な い と い ひ 、 そ れ か ら 又 こ の 大 事 は 獨 り 持 流 の み に 限 つ た わ け の も の で は な い 。 か の 維 範 、 琳 賢 の 如 き は 子 嶋 流 に 属 す る が 、 常 に こ の 法 を 修 し て ゐ た の で あ る か ら 、 實 に こ れ 子 嶋 流 の 大 串 と い ふ べ き 筋 の も の で あ る と い ふ の で あ る 。 故 に 云 く 、 問 て 云 く 入 定 の 御 大 事 と い ふ は 如 何 。 師 云 く 、 先 づ 持 明 院 流 に 付 て 秘 事 と 爲 す 此 の 大 事 も 悉 く 當 院 に 有 り 。 但 し 最 勝 院 顔 算 に も 之 を 傳 ふ る な り 、 理 算 は 弟 子 了 算 に は 之 を 傳 へ す 、 玄 海 を 請 し て 内 よ り 箱 を 三 合 取 出 だ し て 、 了 算 に は 頂 戴 さ せ て 、 後 玄 海 に 傳 受 す べ し と 遺 言 し て 入 滅 す 。 而 る に 了 算 は 華 王 院 に 付 い て 成 就 院 の 法 流 を 習 ふ て 玄 海 に は 相 傳 せ す 、 此 大 事 等 を 自 見 し て 、 御 入 定 の 大 事 を 惣 持 院 に 傳 ふ 。 惣 持 院 今 の 持 明 院 井 に 覚 定 房 、 宣 眞 房 等 に 傳 ふ る な り 、 仍 て 相 傳 分 明 な ら す 故 に 傳

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へ て 傳 へ ざ る が 如 し 云 云 。 又 云 く 、 一 、 御 入 定 の 大 事 は 必 す し も 持 朋 院 流 不 共 に 非 す 、 持 明 房 初 め に は 明 算 に 付 い て 受 法 す 。 其 の 後 仁 和 寺 に 於 て 、 成 就 院 寛 助 信 正 に 廣 澤 を 習 ふ 、 此 の 時 に 御 入 定 大 事 を 別 に 之 を 習 ふ て 人 に 授 く 。 仍 て 此 の 法 を 修 し て 入 定 せ し 人 は 子 島 の 維 範 、 琳 賢 等 な り 、 仍 て 持 明 院 流 に 限 ら す 、 但 だ 是 れ 子 島 流 の 大 事 な り 。 子 島 流 と は 小 野 、 廣 澤 の 二 流 が 未 た 分 れ ざ り し 以 前 の 古 流 な る が 、 し か し そ の 囁 属 を い は ヾ 小 野 に 馬 す べ き も の で あ る o こ の 流 の 始 祓 は 法 相 宗 の 碩 學 に し て 後 入 密 せ し 眞 興 俗 都 そ の 人 で あ る 。 信 都 は 六 十 二 代 朱 雀 帝 の 承 李 四 年 ( 定 後 百 年 ) 印 午 正 月 朔 日 、 河 内 國 石 川 郡 平 石 の 名 門 に 生 れ 、 天 慶 入 年 四 月 八 日 十 二 歳 に し て 南 郡 興 輻 寺 空 晴 ( コ ヲ ゼ ウ )僧 都 に つ い て 出 家 し 、 松 室 仲 算 に つ い て 法 相 の 奥 義 を 究 め 、 永 観 元 年 癸 未 十 一 月 二 日 五 十 一 歳 に し て 、 吉 野 山 仁 賀 に つ い て 密 灌 を う け し 後 は 專 ら 密 教 に 沈 潜 し 、 寛 弘 元 年 甲 辰 十 月 十 四 日 七 十 一 歳 を も つ て 、 大 和 國 高 市 郡 子 島 山 観 覚 寺 千 手 院 に 於 て 入 寂 さ れ た 、 そ の 一 代 の 行 欺 は 頗 る 神 変 奇 蹟 に 富 む で ゐ る 。 師 は 叉 曾 て 高 野 に 止 佳 さ れ た こ と が あ り 、 後 世 そ の 住 院 を 南 院 と 稱 す る に 至 つ た の で あ る 。 そ の 門 人 に は 春 秀 、 利 朝 、 清 雅 、 恩 倫 等 の 十 名 が あ る 。 こ の 流 後 に 至 つ て ( 一 )壷 坂 山 大 門 方 、 ( 二 ) 同 山 中 之 坊 方 、 ( 三 )安 倍 山 印 上 寺 方 、 ( 四 ) 高 野 南 院 方 の 四 方 に 分 れ た 。 四 方 所 傳 の 印 信 は 合 計 二 十 通 な る が 。 こ の 中 に は 御 入 定 大 事 な る も の が こ れ な い 。 こ は 二 十 通 以 外 の 御 入 定 大 事 の 研 究 一 一

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御 入 定 大 事 の 研 究 一 二 特 殊 大 事 と し て 殆 ん ど 以 心 傳 心 的 に 師 資 相 承 さ れ て ゐ た も の と 見 え て 、 現 今 に て は 惜 い か な 全 く そ の 傳 を 失 つ て ゐ る 。 血 脉 の 次 第 は 、 ( 等 南 院 方 に つ く ) こ れ で あ る 。 聖 寳 、 観 賢 等 と 次 第 す る か ら 、 こ れ そ の 小 野 流 に 属 す べ き 所 以 で あ る 。 か の 三 寳 院 の 一 派 金 剛 王 院 流 に 属 す る 岩 藏 方 に 傳 ふ る ﹁ 御 入 定 大 事 ﹂ は 、 け だ し こ の 子 島 相 傳 の 分 が 展 縛 し て 流 入 せ し も の で あ ら う が 、 但 し 口 訣 が 不 十 分 な た め に 實 義 を 得 る こ と が 至 難 で あ る 。 か ゝ る 理 由 に よ つ て ﹁ 御 入 定 大 事 ﹂ は 全 く 持 流 不 共 な り と い ひ 得 ら れ る 所 以 の も の で あ る 。 而 し て そ の 正 統 は 寳 性 院 に お い て 代 々 相 承 し 來 り し が 、 そ れ が 師 資 相 承 し て つ い に 今 日 に 及 ん で ゐ る 。 も し そ れ 無 量 壽 院 の 方 は 、 等 と 次 第 し て 之 を 相 承 し て ゐ る 。 猶 三 寳 院 憲 深 方 の 法 華 大 事 と い ひ 、 木 幡 眞 空 の 所 傳 と い ふ が 如 き は 、 か の 傳 流 相 傳 の 分 と は 相 似 て ゐ る 鮎 が あ り 、 自 性 上 人 所 傳 の ﹁ 御 入 定 時 の 印 ﹂ の 如 き は 持 傳 両 流 と は 全 く 別 系 の も の で あ る 。 そ の 一 々 の 樹 照 は 下 節 に 譲 る こ と ゝ す る 。

(13)

(

)

若 其 時 不 結 印 兼 日 可 結 也 巳 上 持 此 法 有 勝 験 人 圓 如 房 十 餘 年 御 入 定 大 事 の 研 究 一 三

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御 入 定 大 事 の 研 究 一 四 維 範 阿 閣 梨 十 二 年 年 號 月 日 授 某 傳 授 阿 闊 梨 某 以 上 恭 翁 の 口 訣 に は 、 ﹁ 惣 じ て 此 の 印 信 は 見 悪 き 様 に 記 し 給 ふ と 云 ふ こ と 古 來 よ り の 口 説 な り 、 口 傳 に 非 す ん ば 意 味 顯 は れ 難 し ﹂ と い ひ 、 又 仔 遍 の 記 に も 、﹁ 所 詮 今 の 印 信 に は 、 態 と 見 悪 き 様 に 書 き 玉 へ り ﹂ と い へ る と ほ り 、 軍 に 印 信 の み に て は 意 味 も 行 様 も さ ら に 不 可 解 の も の で あ る 。 し か る に 幸 に も こ の 印 信 と ゝ も に 玄 海 の 手 に な れ る 二 紙 の 口 訣 が 存 し て ゐ る か ら 、 こ れ に よ る と 聯 か 判 明 す る わ け で あ る 。 そ の 口 訣 に 云 く 、 御 入 定 口 云 先 降 三 世 印 明 順 逆 三 反

註 内 五 古 者 是 也 巳 上 書 注 之

(15)

廿

義 明 房 注 橋

正 等 房 律 師

遊 定 房 阿 闇 梨

琳 定 房 學 頭

観 舜 房 阿 闇 梨

以 上 ﹁ 御 入 定 大 事 ﹂ は 瑚 上 の 印 信 及 び 口 訣 の 二 紙 を 一 包 と す る が 、 そ の 包 紙 の 裏 に 宥 快 師 は 師 た る 信 弘 の 口 訣 及 び 相 承 の 由 來 を 略 記 し て 曰 く 、 師 仰 云 大 轉 法 輪 印 大 金 剛 輪 印 也 或 小 呪 丈 是 小 金 剛 輪 呪 也 御 入 定 井 三 ケ 大 事 也 自 高 野 三 寳 院 勝 金 方 當 院 先 徳 玄 海 法 印 御 房 相 承 之 不 出 寳 性 院 脛 藏 大 事 口 傳 也 今 撰 法 器 授 成 雄 畢 宥 快 云 云 以 上 御 入 定 大 事 の 研 究 一 五

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御 入 定 大 事 の 研 究 一 六 信 弘 の 口 訣 は そ の 源 玄 海 に 存 す る の で あ る か ら 、 こ れ を か の 玄 海 一 紙 の 口 訣 に 補 足 し て 見 る と 、 か の 印 信 は ま さ に 下 述 の や う な 意 味 と な る の で あ る 。 ﹁ 大 轉 法 輪 印 呪 三 遍 大 呪 或 小 呪 ﹂ と は 、 大 金 剛 輪 の 印 を 結 で 同 呪 を 誦 す る こ と 三 遍 す る か 、 も し く ば 小 金 剛 輪 の 印 を 結 で 同 呪 を 誦 す る こ と 三 遍 す る か は 任 意 な り と い ふ の で あ る 。 ﹁ 先 結 降 三 世 印 結 界 我 身 明 日 爽 ﹂ と は 、 降 三 世 の 大 印 を 結 で 字 を 誦 じ つ ゝ 順 に 三 遍 逆 に 三 遍 我 が 身 を 加 持 す る こ と で あ る 。 ﹁ 次 結 轉 法 輪 印 内 五 古 と は 等 の 五 智 の 明 は 、 轉 法 輪 と 内 五 古 と の 二 印 に 相 通 す る 義 を 現 は さ ん と す る に あ る が 、 こ の 轉 法 輪 の 印 を 結 ぶ に あ た り 、 二 小 、 二 無 名 、 二 中 、 二 頭 、 三 大 指 を 順 次 に 鉤 結 し ゆ く と ゝ も に か の 五 智 の 明 を 順 次 二 字 づ ゝ 誦 す る の で あ る 。 以 上 の 大 金 剛 輸 ( 又 は 小 金 剛 輪 ) 、降 三 世 、 轉 法 輪 の 三 種 は 次 で の 如 く 自 己 を 曼 茶 羅 の 體 と な す こ と ゝ 、 本 具 の 無 明 三 毒 を 降 伏 し て 浮 化 せ し む る こ と ゝ 、 五 大 五 智 の 法 界 體 と な ら し む る こ と ゝ に し て 、 こ れ 即 ち 先 づ 自 身 を 結 界 し て 金 剛 不 壌 な ら し む る 所 以 の 法 で あ る 。 か く て 入 定 の 實 義 こ の 三 つ を 離 れ て 求 む べ き も の が な い と も い へ る 。 次 に ﹁ 内 五 古 ﹂ 等 と は 、 先 づ 左 右 の 二 拳 向 へ 合 せ て と 誦 じ 、 次 に 内 縛 し て と 誦 じ 、 次 に 二 中 指 を 立 て ゝ 次 に 二 小 指 を 立 て ゝ 、 次 に 右 の 頭 指 を 立 て ゝ 、 次 に 二 大 指 を 立 て ゝ 縦 、 最 後 に 左 の 頭 指 を 立 て ゝ と 誦 す 。 二 中 、 二 小 、 右 頭 、 二 大 、 左 頭 は 次 で の 如 く 中 東 南 西 北 の 五 方 五 佛 の 義

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で あ る 。 さ て こ の 次 に 二 頭 を 二 中 の 背 に 合 し 、 二 大 を 二 中 に 合 し て 郡 ( ス ベ ) 五 股 の 印 と な し て 可 の 一 字 明 を 誦 す る 。 こ れ は 前 の 四 方 四 佛 が 中 央 二 毘 盧 舎 那 の 體 に 冥 合 す る 義 で あ る 。 さ て こ の 次 に 無 所 不 至 塔 郁 に て , 外 縛 二 大 を 弁 べ 入 れ て 亡 と 誦 す る の で あ る が 、 か の 内 五 股 以 下 の 三 印 言 を 稱 し て ﹁ 御 入 定 三 ク 大 事 ﹂ と は い ふ の で あ る 。 こ の ﹁ 三 ヶ 大 事 ﹂ と は い か な る 義 で あ る か と い ふ に 、 恭 翁 の 口 訣 に は 、 巳 上 の 三 箇 大 事 に 各 々 に 不 二 の 義 を 示 す 、 深 中 の 深 、 秘 中 の 秘 な り 。 始 は 金 の 不 二 、 中 は 胎 の 不 二 、 絡 は 生 佛 不 二 又 雨 部 不 二 な り 。 暫 ら く 一 途 に 約 し て 之 を 謂 ふ 、 實 に は 三 印 何 れ も 雨 部 不 二 の 義 あ る べ し 。 深 義 失 ふべ か ら す 、 後 學 意 を 留 め て 察 す べ し と い つ て ゐ る 。 即 ち 第 一 の 内 五 股 は 金 界 の 五 智 五 佛 の 表 示 な る が 、 こ れ を 都 五 股 に な す は 五 佛 一 體 不 二 の 表 示 で あ る か ら 、 こ れ を 金 の 不 二 と な す 所 以 で あ る 。 第 二 の 塔 印 は 胎 藏 大 日 の 三 昧 耶 形 た る 五 大 法 性 の 塔 婆 で あ る 。 し か る に こ の 塔 印 に は 開 閉 の 二 種 が あ る 。 開 塔 は 四 重 圓 壇 の 差 別 顯 現 を 表 は し 、 閉 塔 は そ れ が 一 毘 盧 舎 那 の 體 に 還 入 す る 義 を 表 は す の で あ る が 、 今 閉 塔 に な す は 四 重 圓 壇 の 諸 尊 即 ち 不 二 一 體 な る 義 の 表 示 で あ る か ら 、 こ れ を ば 胎 の 不 三 と な す 所 以 で あ る 。 第 三 の 二 大 を 入 る ゝ 縛 印 は 入 指 は 即 ち 入 葉 の 心 蓮 、 二 大 は 即 ち 生 佛 の 二 者 で あ る 。 生 佛 こ も に 八 葉 の 心 蓮 に 坐 し て 二 味 平 等 な る 義 の 表 示 で あ る か ら 、 こ れ を ば 生 佛 不 二 と な す 所 以 で あ る 。 二 往 は 三 印 を か く 三 重 の 不 二 に 分 け て 見 御 入 定 大 事 の 研 究 一 七

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御 入 定 大 事 の 研 究 一 八 る も 、 理 實 に は 三 印 何 れ も み な 両 部 不 二 、 生 佛 不 二 の 義 を 具 す る も の で あ る 。 大 師 入 定 の 境 智 は 即 ち 大 毘 盧 舎 那 の 三 昧 で あ り 、 大 毘 盧 舎 那 の 三 昧 は 即 ち 雨 部 不 二 、 生 佛 不 二 と し て の 不 二 の 究 極 で あ る 。 よ つ て 案 す る に 、 先 づ 初 め に は 大 金 剛 輪 、 降 三 世 、 轉 法 輸 の 三 印 言 に よ つ て 自 身 を 結 界 し て 金 剛 不 壊 な ら し め 、 そ の 後 に さ ら に ﹁ 三 ヶ 大 事 ﹂ の 印 言 に よ つ て 不 二 の 極 理 に 安 住 す る の で あ り 、 か く て 最 簡 易 の 行 體 で は あ る が . こ の 中 に 雨 部 大 経 の 眞 髄 を う つ て 二 丸 と な し て 、 些 の 聞 隙 の こ れ な き も の と い は ざ る を 得 な い 。 そ れ か ら か の 印 信 の 績 き の 文 に 、 ﹁ 慈 尊 下 生 時 必 死 骸 又 成 肉 身 一成 佛 値 遇 大 師 是 則 即 身 成 佛 云 云 ﹂ と あ る が 、 こ の 意 味 は 、 末 世 の 行 者 と 錐 も こ の 大 事 を 修 し て 薫 習 す る に お い て は 、 そ の 死 骸 は 全 身 舎 利 の 堅 體 と な つ て 永 久 に 留 ま り 、 當 來 彌 勒 慈 尊 の 出 世 の 曉 に は 大 師 に 値 遇 し 奉 つ り 、 大 師 と 共 に 慈 尊 の 教 化 を 助 け て 普 賢 行 願 の 實 を あ げ る こ と が で き る と い ふ の で あ る 。 ﹁ 成 佛 し て 大 師 に 値 遇 し た て ま つ る ﹂ と 讃 ま な け れ ば 義 通 じ な い 。 こ れ は 後 に 引 く 岩 藏 方 の 印 信 を 見 る と 判 明 す る で あ ら う 。 ﹁ 持 様 若 其 時 看 紺 印 兼 日 可 結 也 ﹂ と は 、 持 榛 と は こ の 大 事 誦 持 の 行 様 の こ と で あ る 。 よ つ て 正 し く 臨 終 時 に こ れ を 行 せ す と も 、 宜 し く 条 日 平 素 よ り 修 行 し て お く べ し と の 注 意 で あ る 。 ﹁ 持 此 法 有 勝 験 人 ﹂ 以 下 は 、 こ の 大 事 の 達 人 の 例 證 を あ げ し も の な る が 、 こ の 例 證 に つ い て は 節 を 改

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め て 述 べ る こ と ゝ す る 。 以 上 は 玄 海 の 口 訣 を と う し て 見 た る 印 信 の 意 味 で あ る 。 以 下 こ の 玄 海 相 傳 と 少 異 な る 環 算 相 傳 に つ い て 考 ふ る に 、 そ の 口 訣 に 云 く 、 持 明 院 三 ケ 大 事 一 ス ヘ 五 股 先 づ 降 三 世 の 印 を 結 で 一 反 我 が 身 を 結 界 す る な り 。 次 に 轉 法 翰 の 印 を 結 び 、 明 は を 誦 す 。 轉 法 輪 の 印 は 、 小 指 を 結 ぶ 時 に を 誦 じ 、 乃 至 大 指 を 結 ぶ 時 に 趣 を 誦 じ 、 五 指 に て 各 々 結 ぶ 時 に 五 字 各 々 一 字 づ ゝ 之 を 誦 す 。 次 に 雨 手 金 拳 に し て 左 右 共 に あ ふ げ て を 誦 じ 、 次 に 雨 手 内 縛 に し て を 誦 じ 、 次 に 二 中 指 を 指 出 し 合 し て を 誦 じ 、 次 に 二 小 指 を 指 出 し て を 誦 じ 右 の 風 指 を 指 出 し て 季 を 誦 じ 、 次 に 二 大 指 を 指 出 し 合 し て 熱 を 誦 ぐ 、 次 に 左 の 風 指 を 指 出 し て 嚢 と 誦 す 。 即 ち 内 縛 五 股 の 印 を 結 ぷ に 随 て 各 々 五 字 の 明 之 を 誦 す 。 其 次 に 二 風 指 を 二 中 指 の う し ろ に つ け 、 二 大 指 を 二 中 指 の 中 節 に つ け て を 誦 す 、 是 へ 五 股 の 印 な り (是 一 )。 一 、 率 都 婆 印 、 明 (是 一 )。 一 、 外 縛 し て 二 大 指 を 内 に 入 る 、 明 (是 一 ) 云 云 。 寳 性 院 の 仟 遍 は こ の 現 算 口 を 本 と し て か の 印 信 を 解 す る の で あ る が 、 同 師 口 訣 の 一 節 に 云 く 、 御 入 定 伝 大 轉 法 輪 印 呪 三 反 大 呪 或 小 呪 。 口 に 云 く 、 此 は 今 の 大 事 の 印 明 を ぱ 総 束 し て 粗 之 を 畢 ぐ 、 先 結 以 下 は 上 の 事 を 委 細 に 切 別 せ ら る ゝ 也 。 三 反 大 呪 或 は 小 呪 と い ふ は 降 三 世 結 界 の 呪 遍 な り 。 大 呪 と は ソ バ ニ 等 の 呪 な り 小 呪 と は 今 出 す 所 の 字 な り 。 次 に 結 轉 法 輪 、 内 五 古 丈 。 上 に 大 轉 法 翰 御 入 定 大 事 の 研 究 一 九

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御 入 定 大 事 の 研 究 二 〇 印 呪 と 云 は 此 な り 。 其 れ に 付 て 轉 法 輪 印 と 内 五 古 と は 二 印 各 別 な り 云 云 。 こ れ に よ る と 、﹁ 大 轉 法 輪 印 呪 三 反 大 呪 或 小 呪 ﹂ と は 、 ﹁ 先 結 ﹂ 以 下 の 降 三 世 、 轉 法 輪 の 三 種 を 惣 束 し て 初 め に あ げ た も の で 、 快 師 の い ふ が 如 く 必 す し も 大 金 剛 輪 又 は 小 金 剛 翰 こ い ふ こ で は な い 。 從 つ て 大 小 の 二 呪 と は 全 く 降 三 世 の 大 小 二 呪 の こ と で あ り 、 大 呪 は 常 の 如 く な る も 小 呪 は 常 の ざ は ち が つ た 轟 の 一 字 呪 な る こ と を 示 す べ く 、 次 下 に ﹁ 明 日 ﹂ と あ る 所 以 で あ る と い ふ の で あ る 。 こ の 鮎 は 玄 海 相 傳 と は や ゝ 異 な つ て ゐ る し 、 そ れ か ら 又 玄 海 は 降 三 世 の 一 字 明 に よ つ て 順 に 三 遍 逆 に 三 遍 の 六 遍 加 待 と 見 る も 、 瑳 算 は た ヾ 二 遍 加 持 と 見 る の も ま た そ の 少 異 の 黙 で あ る 。 も し そ れ 轉 法 翰 及 び 三 ケ 大 事 に 至 つ て は 雨 傳 全 く 一 致 で あ る 。 即 信 に ﹁ 先 結 降 三 世 印 ﹂ と あ る ﹁ 先 ﹂ の 言 は 、 も し も 降 三 世 以 前 に 大 金 剛 輪 の 印 あ る に 於 て は そ の 義 を な さ な い こ と ゝ な る か ら 、 こ は や は り 惣 束 と 見 る 環 算 の 傳 が ど う も よ く 理 を つ く し て ゐ る や う に 思 は れ る し 、 又 降 三 世 の 印 に て 順 逆 三 反 づ ゝ 加 持 す る と い ふ よ り は 、 たヾ一 反 加 持 と い ふ 算 傳 の 方 が こ の 緊 張 し た る 場 合 に は 尤 も ふ さ わ し く 思 は れ る の で あ る 。 玄 海 は 前 述 の 如 く 無 論 こ の 算 傳 を も う け て は ゐ る が 、 今 は 且 ら く 勝 金 の 口 傳 を 本 と し て 前 の 口 訣 を 書 か れ た も の で あ る 。 猶 又 ﹁ 三 ケ 大 事 ﹂ を 具 足 し て 授 く る は 唯 授 一 人 に し て 、 常 に は そ の 随 一 を 授 く るこ と ゝ な つ て ゐ る 。 故 に 硬 算 は ﹁ 三 ケ 具 足 し て 傳 授 の 條 は 能 く く 愼 む べ し ﹂ と い ひ 、 仟 遍 は ﹁ 大 都 は 随 一 を 授 く る な り 、 三 ケ 具 足 し て 授 與 す る こ と は 唯 授 一 人 な り ﹂ と い っ て ゐ る 。

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持 流 正 統 相 傳 の 御 入 定 大 事 の 意 義 は 大 郡 か く の 如 く な る が 、 さ て こ ゝ に 三 寳 院 岩 藏 方 澄 圓 相 承 の 百 入 通 の 印 信 中 に も や は り 同 大 事 の 一 通 が あ る こ と を 注 意 し な け れ ば な ら 蹟 。 云 く 、 御 入 定 法 大 轉 法 輪 印 呪 先 結 降 三 世 印 結 界 我 身 明 日 次 結 轉 法 輪 印 内 五 股 印

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又 説 種 三 輪 口 云 先 内 縛 本 有 成 佛 念 以 二 火 立 合 誦 次 二 小 立 合 次 右 風 立 次 二 大 立 合 後 立 左 風 誦 云 云 異 云 師 資 相 承 最 極 秘 事 也 不 可 傳 之 三 寳 境 界 知 見 可 怖 也 矣 以 上 こ れ ま た 持 流 と 同 種 な る が 如 き も 、 三 身 の 印 言 が 加 は つ て ゐ る あ た り は よ ほ ど 違 つ て ゐ る し 、 三 ヶ 大 事 な ぞ 全 く 闘 げ て ゐ る 。 こ れ は 前 に も い つ て お い た と ほ り 、 恐 ら く か の 子 島 流 の 大 事 が 展 轉 流 入 し た 御 入 定 大 事 の 研 究 二 一

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御 入 定 大 事 の 研 究 二 二 る も の で あ ら う 。 殊 に 深 秘 の 口 訣 を 傳 へ て ゐ な い か ら 、 到 底 持 流 の 大 事 に は 比 す べ く も な い 。 ( 四 ) 以 下 は 次 に 傳 流 相 承 の 分 に つ い て 考 察 す る 。 前 に も い ふ が 如 く 當 流 の 相 承 は 、 白 毫 寺 勝 圓 相 傳 の ﹁ 柿 袋 大 事 ﹂ と 傳 法 院 源 意 の ﹁ 十 六 大 菩 薩 惣 灌 頂 密 印 ﹂ と の 雨 檬 に 分 れ て あ り 、 そ し て 二 者 を 対 照 す る に 大 同 少 異 で あ る 。 中 に 於 て 先 づ ﹁ 柿 袋 大 皐 ﹂ よ り 述 べ て 見 や う 。 抑 々 ﹁ 柿 袋 大 事 ﹂ と い ふ は 、 傳 流 の 所 傳 に よ ら ば 、 持 明 院 眞 譽 は 、 か の 成 就 院 寛 助 よ り 傳 受 し た る 秘 法 を ば 、 常 に 柿 色 の 袋 に 臓 め て そ の 座 右 よ り 離 さ な か つ た が 、 こ ゝ に 諸 弟 子 た ち は そ の 秘 法 を 羨 望 し て や ま な い 。 そ こ で 眞 譽 は 然 る べ き 機 根 を 観 て は 時 に 態 じ て 甲 に は 一 つ .乙 に は 二 つ と い ふ 風 に こ れ を ば 斷 片 的 に 授 け 、 か く て 年 所 を ふ る に 随 ふ て 秘 法 の 全 部 は 逮 に 傳 授 さ れ を は つ た 。 然 る に そ の 付 弟 た る 禅 信 は 、 ひ そ か に 以 爲 べ ら く か ゝ る 秘 法 は 宜 し く 我 に こ そ 授 け ら る べ き も の な る に , 諸 人 に 授 け て 我 を 顧 み ざ る は 不 可 解 な り と 。 よ つ て 師 の 態 度 に は 砂 か ら す 不 満 を 懐 い て ゐ た の で あ る 。 禅 信 あ る 時 師 に 劉 し て 遂 一 年 來 の 不 満 を 訴 へ た 。 然 る に 師 は こ れ に 対 し て は さ ら に 元 言 の 懸 答 を も 與 へ な い 。 こ ゝ に お い て 禅 信 は 盆 々 怪 討 の 念 に か ら れ つ ゝ も 、 そ の 以 後 は 強 て 忍 で 再 び 迫 ら な か つ た 。 敷 年 後 に 至 り 、 師 は 既 に 室 し く な り し か の 柿 袋 を も つ て 禅 信 に 告 げ て 曰 く 、 そ れ 柿 は 實 こ そ 甘 ふ し て 味 あ る も 種 と 皮 と は 詮 が な い 。 我 が 既 に 多 く の 弟 子 に 授 け を は り し 所 の も の は た ヾ 種 と 皮 の み で あ る が 、 實 は 今

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こ そ 始 め て 汝 の み に 付 囑 せ む ご い つ て 、 か の 袋 の 中 を 見 せ し む る に 、 何 も の も こ れ な く て 唯 だ の 一 字 あ る の み で あ る 。 而 し て 曰 く 、 大 師 御 入 定 の 大 事 と い ふ は こ の 咽 字 を 措 い て 求 む べ き も の が な い と 、 乃 ち 具 さ に 佳 入 出 の 三 時 の 法 を 傳 授 し た 。 こ ゝ に 於 て 持 流 の 極 意 は 全 く 禅 信 の 手 中 に 落 ち た わ け で あ る 。 こ れ が ﹁ 柿 袋 大 事 ﹂ て ふ 名 稱 の あ る 由 來 因 縁 で あ る と い ふ の で あ る 。 さ て こ の 柿 袋 の 印 信 に 曰 く 、 持 明 院 柿 袋 秘 法 大 師 御 入 定 佳 人 出 之 三 時 之 法 有 之 住 者 御 在 生 也 入 者 御 入 定 也 出 者 御 出 定 也 住 印 虚 合 明 入 印 虚 合 二 塞 入 掌 明 出 印 虚 合 二 空 仰 出 明 秘 決 云 住 印 者 胎 藏 本 有 之 九 識 也 微 細 定 也 喩 祇 維 如 秋 八 月 霧 ○ 是 各 微 細 定 文 可 思 之 此 印 即 本 有 金 剛 薩 唾 薩 唾 即 遍 照 金 剛 全 體 也 秘 々 次 入 印 者 御 入 定 之 義 也 即 還 住 花 藏 世 界 八 葉 蓮 皇 也 於 此 位 十 六 大

御 入 定 大 事 の 研 究 二 三

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御 入 定 大 事 の 研 究 二 四 右 持 明 院 柿 袋 者 一 宗 大 事 高 祖 心 肝 也 餘 流 人 不 知 唯 持 明 院 流 知 之 也 大 師 御 入 定 事 毎 人 錐 相 傳 眞 實 大 師 御 入 定 密 意 餘 流 絶 相 傳 極 秘 也 々 々 々 可 秘 々 々 槻 圓 定 恵 光 遍 性 遍 以 上 こ れ に よ ら ば た ゝ 虚 心 合 掌 の 上 の 二 大 指 が 二 頭 を 押 す と 、 掌 内 に 入 る ゝ と 、 掌 外 に 離 し 立 つ る と に よ つ て 、 次 で の 如 く 大 師 の 住 世 、 入 定 、 出 定 の 三 位 に 習 ひ 合 は す も の で あ り 、 明 は 三 位 と も に の 一 字 明 で あ る 。 こ れ に 対 す る 謙 順 相 承 の 口 訣 に 云 く 、 三 十 入 轉 圖 に 二 手 を も つ て 面 に 覆 ひ 、 生 時 に 及 ぶ の 時 、 三 手 を 引 分 け て 二 拳 に 作 し て 生 る ゝ な り 、 二 手 側 め 合 せ 二 空 掌 に 入 れ て 面 を お ふ へ り 。 八 指 は 即 ち 八 葉 、 面 は 是 れ 即 ち 本 有 の 月 相 な り 、 生 時 に 及 ぶ 時 二 手 各 二 拳 に ゝ ぎ る 事 は 佛 身 圓 蒲 な り 、 北 方 拳 菩 薩 の 印 な り 、 三 十 七 尊 本 有 の 形 髄 な り 、 能 く く 留 意 し て 之 を 思 ふ べ し 。 こ の 胎 内 三 十 八 轉 と 入 出 定 と の 關 係 に つ い て 、 恵 燈 之 を 注 解 し て 曰 く 、

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問 、 此 の 三 十 八 轉 は 是 れ 生 死 流 轉 の 法 な り 、 何 ぞ 大 師 御 出 定 の 竈 鏡 と す る や 。 答 、 私 解 に い は く 、 此 の 大 事 に 於 て 三 重 の 法 理 あ る か 。 一 つ に は 金 剛 薩 埋 法 爾 慮 住 十 六 大 菩 薩 の 正 覚 の 次 位 な り 。 二 つ に は 生 死 流 轉 に 即 ず る 法 爾 の 次 位 、 今 の 三 十 八 轉 是 れ な り 。 三 っ に は 大 師 今 日 始 覚 圓 満 の 法 爾 の 道 是 れ な り 。 今 の 大 事 は 此 の 三 法 冥 然 と し て 相 応 せ り o 此 の 義 を 顯 は さ ん が 爲 め に 三 十 八 轉 の 例 を 出 し て 所 合 と な す 、 今 の 大 事 の 正 宗 と す る に は あ る ざ る な り 。 こ の 注 解 あ る も が そ の 意 味 は 猶 私 に は 未 だ 十 分 に こ れ を 解 し え な い 。 同 師 は さ ら に 住 入 出 の 三 法 と 雨 部 不 二 と の 關 係 を ば 、 但 し 今 は 印 の 虚 合 は 是 れ 胎 戯 な り 、 明 の 字 は 即 ち 金 界 な り 、 雨 部 不 二 の 深 意 な る べ し 。 又 更 に 甚 深 の 秘 決 之 れ あ る べ き か 。 抑 々 此 の 住 入 出 の 三 重 を 両 部 に 分 た ば 、 初 の 住 入 の 二 位 は 胎 藏 を 本 と 爲 し 金 を 兼 て 不 二 な り 、 後 の 出 は 金 を 本 と 爲 し 胎 .を 兼 て 不 二 な り 。 問 出 の 印 も 亦 是 れ 虚 合 な り 。 何 ぞ 金 を 本 と す と 云 ふ か 。 答 、 二 空 を 仰 げ て 拳 薩 唾 と す が 故 に 、 胎 藏 の 印 を 動 せ す し て 金 こ す る が 故 に 、 當 に 知 る べ し 金 を 本 と す る と い ふ こ と を と 辮 じ て ゐ る 。 こ れ 即 ち 即 身 成 佛 の 大 聖 た る 大 師 住 入 出 の 三 位 は 、 す べ て 爾 部 不 二 の 理 を 離 れ ざ る こ と を い は ん と す る も の で あ る 。 同 師 は 又 三 位 中 の 出 の 義 に つ い て 、﹁ 問 、 出 と い ふ は 何 れ の 時 そ や 。 答 解 す ら く 、 慈 尊 の 出 を さ す か 、 又 は 随 機 慮 現 の 時 を 云 ふ か ﹂ と い ひ 、 又 成 佛 の 境 地 よ り い は ヾ 、 住 入 御 入 定 大 事 の 研 究 二 五

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御 入 定 大 事 の 研 究 二 六 出 の 三 法 は 實 は 一 味 圓 融 し て 同 時 不 離 な れ ば 、 常 情 の 思 議 す る が 如 き 差 別 の 三 位 に 非 ざ る こ と を 示 さ ん が た め に 、 ﹁ 或 は 三 法 は 無 磯 に し て 倶 行 倶 轉 の 義 等 之 れ あ る べ き か ﹂ と い つ て ゐ る 。 出 に つ い て は 御 出 胎 の 義 と 見 る 一 傳 も こ れ あ る 。 こ の 意 は 大 師 御 誕 生 の 印 言 が 法 爾 と し て 前 記 出 定 の 印 言 で あ る と い ふ の で あ る 。 し か し 入 定 と い ふ こ と が あ る 以 上 は 、 又 出 定 と い ふ こ と こ れ あ る べ き で あ る か ら 、 や は b 出 胎 と 見 る よ り は 出 定 と 見 る の が 正 し い や う に 思 ふ 。 以 上 は 柿 袋 大 事 の 要 な る が 、 以 下 は ﹁ 十 六 大 菩 薩 惣 灌 頂 密 印 の ﹂ 要 を 語 ら う 。 十 六 大 菩 薩 惣 灌 頂 密 印 源 意 阿 闊 梨 賜 之 智 位 房 傳 法 院 寺 僧 也 秘 密 灌 頂 印 言 結 誦 浄 三 業 印 言 誦 浄 三 業 印 二 大 指 入 掌 中 明 高 祖 大 師 御 入 定 之 時 印 明 也 御 出 世 之 時 御 出 生 印 秘 口 合 掌 印 誦 浮 三 業 明 給 ( 原 本 は 結 な る も 今 口 訣 に 依 て 給 と な す ) 御 入 定 之 時 (原 本 時 を 明 に 作 る も 口 訣 に 依 て 改 む ) 二 大 指 並 入 當 噸 下 御 入 定 共 彼 此 皆 言 剥 是 也

圓 如 房 谷 上 彌 勒 院

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山 一 箱 者 此 印 言 也 慈 覚 慈 恵 雨 大 師 結 此 印 誦 此 明 入 滅 云 云 以 上 こ れ が 即 ち 智 位 房 源 意 閣 梨 相 傳 の 御 入 定 大 事 で あ る 。 こ れ に よ ら ば 印 は 前 の と 同 じ き も 眞 言 は 、 き 唄 と い へ る 浄 三 業 十 六 字 の 明 の 上 に 字 を 加 誦 す る 所 が 違 つ て ゐ る 。 そ れ か ら 又 今 は 入 定 出 定 の み で 住 世 の 義 が 之 れ な い 。 十 六 字 の 明 を 十 六 大 菩 薩 の 種 子 と す る 本 説 は 、 常 に 大 師 の 御 作 と い つ て ゐ る 無 審 藍 嚴 藏 次 第 で あ る 。 こ の 次 第 の 作 者 に つ い て は 古 來 ( 一 )大 師 、 ( 二 )宗 叡 、 ( 三 ) 玄 静 の 三 説 あ る が 、 こ の 中 玄 静 説 が 正 し い や う で あ る 。 し か し そ の 口 訣 は 源 大 師 よ り 出 で た る も の と い ふ に 至 つ て は 異 論 が な い 。 こ の 中 に 云 く 、 方 に 浄 三 業 の 明 を 誦 せ よ 、 其 明 に 十 六 字 有 り 、 此 れ 即 ち 十 六 大 菩 薩 の 種 子 に 配 す る が 故 に 。 此 の 眞 , 言 を 誦 す る 時 、 即 ち 十 六 大 生 一 念 に 圓 満 し 、 劫 数 を 過 ぎ す し て 本 尊 の 果 を 證 す る な り ( 全 集 十 二 、 二 二七 ) 。 さ て こ の 十 六 字 明 の 上 に の 一 字 を 加 誦 す る 意 味 は 、 十 六 字 は 即 ち 十 六 大 菩 薩 で あ り 、 十 六 大 菩 薩 は 本 有 の 因 徳 で あ り 、  字 は 即 ち 大 日 に し て 本 有 の 果 徳 で あ る か ら 、 こ の 因 果 不 二 の 義 を 示 す に あ る 。 又 十 六 大 菩 薩 は 金 界 で あ り 、 字 は 胎 藏 大 日 の 種 子 で あ る か ら 、 こ れ に よ つ て 爾 部 不 二 の 義 も ま た 具 し て ゐ る 。 由 門 一 箱 と は 窟 恰 法 印 の 記 に ﹁ 一 箱 ( イ テ ノ ハ コ ) 青 蓮 院 相 承 箱 也 ﹂ と あ り 、 又 慈 覚 慈 恵 の 両 大 師 も ま た 前 記 の 印 言 を 臨 終 の 大 事 と さ れ た と の 意 味 よ り 考 ふ る に 、 こ れ は 台 密 山 門 派 秘 藏 の 聖 教 箱 御 入 定 大 事 の 研 究 二 七

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御 入 定 大 事 の 研 究 二 八 と い ふ こ と で あ ら う 。 し か る に 大 師 御 入 定 の 大 事 が 直 ち に 又 山 門 の 慈 覚 慈 恵 の 臨 終 大 事 と 全 同 な り と い ふ に 至 つ て は 甚 だ 解 し 兼 ね る 貼 で あ る 。 加 之 、 大 師 が か の 御 入 定 の 印 を 傾 下 に 入 れ て 入 定 し 玉 ふ た と い ふ の は こ は 果 し て い か な る こ と を 意 味 す る の で あ ら う か 、 こ れ 又 不 可 解 の 鮎 で あ る 。 源 意 相 傳 の 大 事 な る も の は 粗 か く の 如 く で あ る 。 以 上 の 二 傳 を 対 照 す る に 、 初 傳 は 字 に 重 き を お き 後 傳 は 字 に 重 き を お い て ゐ る や う に 見 え る 。 さ ら に か の 持 流 の 正 統 に つ く も 二 字 の 中 で は 字 が そ の 主 體 と な つ て ゐ る 。 こ れ に つ い て は 、 持 流 ﹁ 三 重 大 事 ﹂ 中 の 第 三 重 所 用 の 字 に 対 す る 同 流 口 訣 に は 、 ﹁ 此 の も 理 智 不 二 の と 意 得 べ き な り 、 此 の 看 に の 義 を 具 足 す る な り 或 は 此 の 不 二 を 外 五 股 に て と も 誦 す べ き な り 、 夷 に も 又 の 義 存 す べ き な り 、 所 詮 六 大 四 曼 三 密 重 々 無 壷 の 不 二 の 義 之 れ 有 る べ し ﹂ と い ひ 、 又 繹 迦 文 院 乗 體 は ﹁ 此 の 不 二 の 印 を 結 で を 誦 す る な り 、 バ ァ ン な り 、 両 部 不 二 な り ﹂ と い ひ 、 又 傳 流 恵 燈 の 注 解 に は ﹁ 等 の の 字 に 皆 微 細 定 あ る べ き か ﹂ と い ひ 、 又 甲 山 神 呪 寺 蓮 眼 の 同 流 口 訣 に は ﹁ 共 に 五 字 具 足 の 両 部 の 惣 脱 な れ ば 、 全 く 勝 劣 な か る べ し ﹂ と い へ る 等 に よ つ て 考 ふ る に 、 二 字 は 互 に 融 通 無 磯 し て ゐ る か ら 強 て 一 方 に 局 執 す べ き も の で は な い と 思 ふ 。 頼 喩 の 眞 俗 雑 記 第 八 に ﹁ 大 師 御 入 定 秘 事 ﹂ と 標 し て あ げ て ゐ る 木 幡 眞 室 の 口 傳 の 如 き は 、 こ の 傳 流 二 様 中 の 源 意 相 傳 に 合 し て ゐ る 點 が あ る 。 云 く 、

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木 幡 の 古 決 に 云 く 、 浮 三 業 の 印 二 火 の 端 開 か す 、 二 大 並 べ て 掌 内 に 少 し 之 を 入 る 、 即 ち 入 定 の 義 な り 。 密 宗 の 大 事 は 偏 へ に 此 の 印 に あ り 、 明 は 範 を 誦 す る な り 。 謂 く 初 誕 生 の 時 に は 此 の 印 三 大 を 並 べ 立 て ゝ 少 し 外 に 開 く 、 是 れ 即 ち 最 初 金 剛 薩 唾 の 菩 提 心 を 開 發 す る 義 な り 。 最 後 入 滅 の 時 に は 二 大 を 少 し く 内 に 入 れ て 最 後 入 滅 の 義 を 示 す 、 是 れ 金 剛 拳 の 位 に し て 入 浬 繋 の 至 極 の 義 な り 。 浮 三 業 の 眞 言 十 六 字 に 契 を 加 ふ 、 是 れ 次 で の 如 く 十 六 大 菩 薩 の 種 子 眞 言 な り 云 云 。 猶 三 寳 院 憲 深 の 口 た る 三 寳 院 大 事 に は 、 法 華 経 の 大 事 を も つ て 、 直 ち に 大 師 御 入 定 の 大 事 に 習 ひ 合 は さ ん と す る も の な る が 、 こ れ ま た 傳 流 に 似 通 ふ て ゐ る 點 が あ る と 思 は れ る 。 云 く 、 一 法 華 経 大 事 小 野 の 嚴 果 信 郡 日 く 、 随 心 院 宣 嚴 曰 く 、 故 大 俗 正 御 房 親 嚴 の 仰 に 曰 く 、 今 此 の 印 は 法 華 の 大 事 な り 、 所 謂 十 方 諸 佛 多 し と 雌 も 繹 迦 一 佛 を 出 で す 、 入 萬 聖 教 弘 し と 錐 も 法 華 妙 文 に 過 ぎ す 。 疏 に 云 く 、 妙 法 蓮 華 経 の 最 深 秘 処 文 軌 に 云 く 、 遍 照 如 來 成 道 の 法 文 。 本 と 迩 と の 二 門 は 20 ち 金 胎 雨 部 な り 。 寳 塔 品 に 曰 く 、 爾 の 時 に 佛 大 樂 説 菩 薩 に 告 げ 玉 は く 、 此 の 寳 塔 の 中 に 如 來 の 全 身 舎 利 有 り 文 。 如 來 の 全 身 と い ふ は 即 ち 金 剛 の な り 。 今 の 大 事 を 舎 利 と 習 ふ は 即 ち 至 極 な り 。 二 佛 同 座 と い ふ は 繹 迦 (化 身 ) 、 多 寳 (報 身 ) 、 塔 ( 法 身 ) は 彼 宗 の 三 身 相 即 の 義 な り 。 菩 提 心 論 に 曰 く 、 云 何 が 能 く 無 上 菩 提 を 證 す る や 、 當 に 知 る べ し 洪 爾 に 応 に 普 賢 大 菩 提 心 に 佳 す べ し 、 一 切 衆 生 本 有 薩 唾 文 。 二 其 の 端 を 横 御 入 定 大 事 の 研 究 二 九

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御 入 定 大 事 の 研 究 三 〇 へ 、 雙 本 に 依 る 文 。 即 ち 二 大 指 の 本 を 内 に 入 る ゝ は 、 則 ち 粋 迦 多 寳 の 二 佛 な り 。 一 此 の 印 を 即 ち 大 師 御 入 定 の 印 と 習 ,諭 事 。 夫 れ 高 祖 大 師 は 微 細 定 に 住 し て 法 界 貧 里 の 衆 生 を 利 盆 し 玉 ふ 。 大 師 の 御 身 は 即 ち 浄 菩 提 心 如 意 賓 珠 の 體 な り 、 経 に 曰 く 、 如 秋 八 月 霧 微 細 清 浄 光 文 。 閻 浮 提 の 草 木 、 諸 菓 の 結 成 、 偏 へ に 大 師 御 入 定 の 幅 徳 の 威 力 に 依 る な り 。 大 師 法 界 定 に 佳 し て 日 月 の 用 を 現 じ 衆 生 を 照 養 す る も の な り 。 是 の 印 は 即 ち 三 辮 寳 珠 な り 、 大 師 即 ち 寳 珠 の 御 禮 な り 。 天 に 三 辮 寳 珠 あ り と い ふ は 日 月 諸 星 な り 。 地 に 三 辮 寳 珠 あ り と い ふ は 、 ( 一 山 能 作 性 の 玉 と 、 御 入 定 の 大 師 と , 東 寺 の 御 舎 利 と な り 。 三 辮 寳 珠 と い ふ は 理 智 事 の 三 點 な り , 身 口 意 の 三 密 な り 、 佛 法 俗 の 三 賓 な り 、 心 佛 衆 生 の 三 種 な り 。 但 し 大 師 御 入 定 の 威 儀 は 、 必 す し も 此 の 印 を 結 び 給 ふ に は 非 す 。 所 詮 如 意 珠 微 細 定 に 住 し 給 ふ が 故 に 、 此 の 印 を 以 て 大 師 御 入 定 の 印 と 名 く 、 謬 ま る べ か ら ざ る も の な り 。 こ の 外 に 自 性 上 人 の 槙 尾 問 答 鋤 に あ る ﹁ 大 師 御 入 定 事 ﹂ の 如 き は 、 持 傳 両 流 と は 別 系 の も の で あ る 。 云 く 、 問 、 大 師 御 入 定 の 時 に 何 の 印 を 結 び 給 ふ や 、 答 、 當 時 御 影 の 五 古 念 珠 は 化 他 の 儀 相 な り 。 正 し く 御 入 定 の 時 は 外 縛 二 大 を 相 並 ぶ と 云 云 。 恵 果 も 縛 印 を 結 び 玉 ふ 、 但 し 二 中 指 掌 内 に 入 る 。 不 空 も 縛 印 を 結 び 玉 ふ 、 但 し 二 大 指 掌 内 に 入 る 。 此 の 縛 印 を 横 五 古 の 印 ご 云 ふ 、 種 々 の 口 決 あ り 。 三 責 院 槽 信 正 縛 印 を 結 び 、 喩 舐 経 の 於 本 有 金 剛 等 の 呪 を 誦 じ 、 朝 日 を 拝 し て 臨 絡 し 玉 ふ 。 今 行 者 閉 眼 の 時 は 尤

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も 此 の 印 を 結 ぶ べ し . 生 死 の 印 に 習 ひ 合 は す べ し 。 八 指 相 交 ふ る は 入 葉 の 心 蓮 な り 、 二 掌 の 間 の 圓 か な る は 月 輪 な り 云 云 。 (五 ) ﹁ 御 入 定 大 事 ﹂ の 研 究 は 、 ど う し て も 室 生 山 の 堅 恵 大 徳 を 初 め と し 、 降 つ て は 維 範 、 琳 賢 、 覚 鍵 等 の 行 蹟 に つ い て 一 通 り の 観 察 を な す べ き 必 要 が あ る 。 大 和 の 室 生 山 は 、 も と は 賓 鎚 年 中 に 興 幅 寺 の 賢 憬 の 開 創 に な れ る が 、 そ の 後 堅 悪 大 徳 に よ つ て 鬱 興 し 、 東 寺 及 び 高 野 に つ ぐ 密 教 の 根 本 道 場 と な り し も の で あ る 。 大 徳 は も と 久 し く 南 都 に あ り て 法 相 三 論 を 學 び 、 遂 に 錫 を 室 生 山 に 駐 め ら れ た 。 大 師 は 入 唐 以 前 に 行 脚 し て こ の 山 に 登 り 、 始 め て 大 徳 と 相 見 さ れ る や 、 肝 謄 相 照 ら し 、 言 は す し て 師 資 の 契 り が 深 く 結 ば れ た の で あ る 。 ﹁ 室 生 山 佛 隆 寺 鐘 銘 ﹂ や 貞 観 十 四 年 六 月 十 九 日 付 に な れ る 、 か の 寺 檜 観 信 、 観 敏 等 の 記 録 に よ る と 、 延 暦 廿 三 年 に 大 師 入 唐 の み ぎ り 、 大 徳 は 随 從 し て 形 影 の 如 く に 相 離 れ な か つ た と あ る が 、 こ れ は 他 に 徴 す べ き 文 献 が な い か ら 容 易 に 信 じ が た い も 、大 師 が 多 歎 の 御 弟 子 中 に て も 、 特 に 器 敬 し 信 任 し 玉 ひ し こ と は 明 か な 事 實 で あ る 。 そ れ は 大 師 が 傳 教 へ の 返 書 に 、 ﹁ 今 思 は く 、 我 が 金 蘭 及 ば 室 山 と 二 処 に 集 會 し て 、 佛 法 の 大 事 因 縁 を 商 量 し 、 共 に 法 瞳 を 建 て ゝ 佛 の 恩 徳 に 報 ぜ む ﹂ と あ る が 、 い ふ 所 の 室 山 と は 大 徳 を 指 し た も の で あ り 、 即 ち 大 師 が 金 蘭 の 契 り あ る 傳 教 、 及 び 常 に 大 器 と し て 信 任 し 玉 へ る 大 徳 と 二 堂 に 會 し て 、 互 に 胸 襟 を 開 御 入 定 大 事 の 研 究 三一

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御 入 定 大 事 の 研 究 三 二 い て 佛 法 弘 通 の 大 事 因 縁 を 討 議 し て 見 た い と の 意 味 で あ る 。 又 二 十 五 條 の 御 遺 告 中 の 最 秘 の 部 分 た る 第 二 十 三 、 四 、 五 の 三 ケ 條 は 何 れ も 大 徳 と 密 切 の 關 係 を 有 し て ゐ る 等 に よ つ て そ の 一 斑 が 知 ら れ る 。 眞 言 宗 骨 目 集 中 の 最 極 記 に 云 く 、 ﹁ 承 和 二 年 正 月 廿 八 日 、 最 後 耳 語 の 法 を 土 心 水 師 ( 堅 恵 法 師 の 略 字 ) に 之 を 授 け 、 語 る こ と 勿 れ 、 語 る こ と 勿 れ と て 三 巻 の 秘 書 を 授 與 し 玉 ふ 。 一 巻 は 入 定 の 問 ( 間 の 一 字 意 味 不 明 蓋 し 爲 誤 か ) 、 二 譽 は 傳 法 大 事 等 な り ﹂ と 。 こ の 三 巻 秘 書 中 の 二 巻 が 特 に 入 定 の 大 事 に つ く も の で あ る と い ふ が 如 き は 、 注 意 し な け れ ば な ら ぬ 點 で あ る 。 さ て 大 徳 は 嘉 群 三 年 に 山 麓 を ト し 道 傷 を 創 し て 佛 隆 寺 と 號 し 、 晩 年 は こ の 処 に 佳 し 世 縁 を 絶 ち 修 観 に 專 注 さ れ て ゐ た 。 そ の 終 焉 の 年 月 が 分 明 な ら ざ る も 、 諸 記 に よ る に 多 く は 入 定 と な つ て ゐ る 。 即 ち 弟 子 譜 第 三 の 同 傳 に は 、 某 の 年 佛 隆 に 在 て 入 定 す 。 其 の 徒 眞 身 を 奉 じ て 室 生 の 窟 に容 す 、 蓋 し 其 の よ る 所 に 從 ふ な り と い ひ 、 阿 底 川 日 記 の 御 遺 告 口 決 下 に は 、 竹 木 目 底 ( 箱 底 ) と い ふ は 、 堅 恵 入 定 の 在 所 に 之 れ 在 る な り と い ひ 、 又宀 一山 秘 訣 に は 、 或 秘 記 に 云 く 、 空 海 と 土 心 と は 本 有 と 修 生 と な り 、 同 処 に 御 入 定 し 、 大 師 の 御 隣 の 下 に 住 し て 御 座 す 云 云 と い ふ が 如 き こ れ で あ る 。 何 れ の 傳 録 に よ る も 、 常 に 鬼 神 を 使 役 し て 戚 応 掌 に あ り と の 法 験 が 傳 へ ら

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れ て あ る し 、 勧 流 師 口 第 二 の 裏 の 御 遺 告 口 傳 に は 、﹁ 恵 果 生 れ て 大 師 の 御 弟 子 と 成 る と い ふ は 土 心 水 師 な り ﹂ と い ひ 、 心 覚 の 鶴 林 抄 第 四 に は 、 ﹁ 堅 惑 の 事 、 或 入 云 く 、 珠 、 理 性 房 云 く 恵 果 の 後 身 云 云 ﹂ と い ひ 、 弟 子 譜 に は ﹁ 恵 果 の 分 身 ﹂ と い ふ が 如 き は 、 こ の 入 .定 説 を 裏 書 き し た る も の と も 見 ら れ う る 。 か の 最 極 記 な る も の が 、 何 人 の 筆 に し て 幾 何 の 信 用 程 度 を 有 す る か は 、 私 に は 未 だ 不 明 な る も 、 い ふ 所 の 三 巻 の 秘 書 な る も の が も し 事 實 大 師 の 授 け 玉 ひ し も の な ら ば 、 そ は 蓋 し 持 流 正 統 の ﹁ 御 入 定 大 事 ﹂ の 本 源 で あ ら う し 、 又 堅 恵 の 入 定 が 事 實 な ら ば 、 そ れ は 又 大 師 所 授 の ﹁ 御 入 定 大 事 ﹂ の 修 錬 に 原 因 す る も の と も 聯 想 し 得 ら れ る 。 大 徳 に つ い て の 考 察 は こ れ 位 に な し て 、 次 に は 維 範 、 琳 賢 等 に つ い て 考 へ て 見 る 。 高 野 の 高 信 傳 中 に お い て 、 修 観 爲 本 の 人 と い はヾ 先 づ 如 法 、 覚 海 、 維 範 、 琳 賢 、 覚 緩 の 五 師 を 数 へ な け れ ば な ら ぬ 。 こ の 中 、 如 法 は 明 王 院 の 先 師 で あ り 、 山 史 に よ る に 、 七 十 六 代 近 衛 帝 の 久 安 元 年 四 月 十 日 (定 後 三一 一 年 ) に 、 壇 上 の ﹁ 三 會 曉 松 ﹂ よ り 瓢 々 飛 び 去 つ て 雲 中 に 入 る と い ひ 、 そ の 生 涯 は 全 く 木 食 草 衣 の 頭 陀 行 で あ り 、 あ る 時 は 荘 嚴 無 比 の 相 好 を 湛 ね た る 丹 生 大 明 神 を 戚 見 し て 慈 謳 に 接 せ ら れ た と 傳 へ て ゐ る 。 覚 海 は 南 勝 院 に 住 し 、 高 野 の 守 護 神 を 以 て 自 か ら 任 す べ く 下 品 の 悉 地 を 獲 得 し 、 入 十 六 代 後 堀 河 帝 の 貞 応 二 年 八 月 十 七 日 (定 後 二 八 九 年 ) 、 両 腋 忽 ち に 羽翻 を 生 じ て 昇 天 し た と 傳 へ ら れ て ゐ る 。 こ の 二 御 入 定 大 事 の 研 究 三 三

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