543公海における旗国の排他的管轄権の例外
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(2) 早法七五巻二号︵二〇〇〇︶. 一〇六. と略す︒︶の保存管理に関する国連会議において最も争われた困難な問題の一つは︑まさにそのような例外につい. てであった︒すなわち︑公海において越境分布資源の保存管理に関する国際的規制を遵守しない漁船に対し︑その. 旗国以外の国は︑その取締りのため︑いかなる場合にどの程度管轄権を行使することができるか︑という問題であ る︒. 国連総会によって招集された上記国連会議は︑一九九五年八月四日︑﹁ストラドリング漁業資源と高度回遊性漁 ︵3︶. 業資源の保存・管理に関わる一九八二年︼二月一〇日の海洋法条約諸規定の実施に関する協定﹂︵以下︑コ九九五 ︵4︶. 年協定﹂と略す︒︶を採択したが︑同協定の公海上の取締り制度に関する規定は︑同年秋の総会において︑多くの代 表から画期的なものとして歓迎された︒. 本稿は︑公海上における漁船に対する国際的︵地域的︶漁業管理措置の非旗国による取締りの権限についての同. 協定の第二一及び二二条を分析し︑その一般国際法及び国連海洋法条約︵以下︑﹁海洋法条約﹂と略す︒︶上の意義を. 検討することを目的とする︒これら諸規定は︑公海において︑地域的漁業機関または取極め︵以下︑双方をあわせ. て﹁地域的機関﹂と略す︒︶が採択する資源保存管理措置を遵守しない漁船に対し︑当該漁船の旗国以外の国が特定. の取締り措置をとることを例外的に認める手続きを定めるものである︒越境分布資源に関する国連会議は︑普遍的. 会議としては︑この国際法上先例のない規定を起草する機会を与えられたわけであるが︑こうしたなりゆきは︑当. ︵6︶. 初から予期されていたわけではなく︑またそのプロセスも︑決してスムースなものではなかった︒したがって︑こ ︵5︶ れら諸規定の正しい理解にはその立法過程の分析も不可欠であるが︑筆者はその過程に親しく関与していたため︑ 後世に記録を残す意味でもやや詳述しておくこととしたい︒.
(3) 一般国際法における公海上の船舶に対する管轄権. 公海上の船舶に対する旗国以外の国による取締り︵林︶. 一〇七. 国際法委員会はその後︑それまでいくつかのテーマに分けて起草してきた海洋法に関する条項草案を一本にまと. ﹁船舶はそれが登録した国の国籍を有する︒船舶はその旗を掲げて航行すものとし︑公海において︑国際条 ︵11︶ 約または本条約条項に明文の規定がある例外的場合を除き︑同国の排他的管轄権に服する︒﹂. えられた︒. 致で採択されたが︑最終的には︑起草委貝会の勧告に基づいて︑一定の例外を認める形の次のような条文に書き換. ︵10︶. の管轄権のみに服する︒﹂との条文案を提案した︒この草案は一九五五年︑そのまま委員会の第一読会では全会一. ︵9︶. の公海の法制度に関する第六報告書において︑﹁公海上を航行する商船は︑他のすべての権力を排して︑その旗国. この原則は国際法委員会の公海の法制度に関する特別報告者フランソワ教授にも受け継がれ︑同教授は一九五四年. ︵8︶ ならない︒﹂. における領域主権の欠如︑のため︑いかなる国家もいかなる管轄権をも公海上の外国船舶に対して行使しては. ﹁公海上の船舶は︑その掲げる旗の国以外のいかなる権力にも服しない︒海洋の自由の原則︑すなわち公海. な形で表明された︒. 年のローチュス号事件判決において︑常設国際司法裁判所によって次のように極めて明確にしてかつカテゴリカル. ︵7︶ 一般国際法上︑公海にある船舶は原則として︑その掲げる旗の国の排他的管轄権に服する︒この原則は一九二七. 2.
(4) 早法七五巻二号︵二〇〇〇︶. 一〇八. め︑一九五六年に包括的な﹁海洋法に関する条項﹂草案として採択した︒その第三〇条︵船舶の地位︶は﹁船舶は. 一つの国のみの旗を掲げて航行するものとし︑国際条約または本条約に明文の規定がある例外的場合を除くほか︑ ︵12︶ 公海においてその国の排他的管轄権に服する︒﹂と規定している︒同条文に関するコメンタリーにおいて︑国際法 ︵13︶. 委員会は︑海洋自由原則の不可欠の付属物の一つは︑船舶は一国の旗を掲げて航行しなければならず︑かつその国. の管轄権に従いつづけることであるとし︑さらに︑ある場合には︑軍艦が外国船舶に対する警察権を条約によって ︵14︶ 認める場合があるが︑そのような条約規定は未だ一般国際法の一部を構成するとは言えない︑としている︒. 一九五八年ジュネーヴ海洋法会議は上記草案を再び四つの主題に分割し︑同草案第三〇条を公海に関する条約第. 六条一項として採択した︒この条文はその後︑ほとんど議論されることなく︑起草上のわずかな変更を加え︑海洋 法条約第九二条一項となった︒. 上記の考察から︑ジュネーヴ公海条約によって法典化され︑海洋法条約に反映された一般国際法上︑公海上の船. 舶は︑これらの諸条約及び関係国が締結する個々の条約に特に規定する場合を除いて︑その旗国の排他的管轄権に. 服する︑と結論づけることができる︒それでは︑ここに言う例外の場合とは具体的にいかなるものであるか︒その. ような例外は︑どのような分野ないし問題について認められているであろうか︒以下これらについて︑まずジュネ. ーヴ公海条約に基づいた海洋法条約の規定から検討し︑次いでその他の条約について考察する︒.
(5) 公海における旗国の排他的管轄権の例外. 国連海洋法条約の規定する例外. 公海上の船舶に対する旗国以外の国による取締り︵林︶. 一〇九. 及び政府の公務に使用されているその他の船舶は︑上記ωから㈲までのケースを疑うに足りる十分な根拠がある場. るものと︑それ以上に船舶の掌捕︑容疑者の逮捕︑そして訴追等までも含み得るものに分けられる︒一般に︑軍艦. また︑取締り行為の種類ないし程度について言えば︑臨検︑すなわち乗船と書類の検閲や船内の検査のみに留ま. ができる︒. ㈲外国旗を掲げるかまたはその旗を示すことを拒否する行動︑㈲追跡権行使の対象となっているもの︑と言うこと. 点を当てて整理しなおせば︑これら例外は︑ω海賊行為︑ω奴隷取引︑@許可無き海上放送︑ω国籍なしの運航︑. 活動を基準にするものと︑取締り行為の種類︵臨検︶に基づくものとを混合していが︑船舶の行動・活動のみに焦. 上記国際法委員会のコメンタリーは︑旗国の排他的管轄権の例外を説明するにあたって︑当該船舶の行動ないし. 公海からの許可なき放送活動を追加した︒. るものである︒これらの例外は一般国際法の一部をなすとみなされる︒これらの三つの例外の他に︑海洋法条約は. ︵15﹀. 壬二条に相当するもので︑夫々海賊船及び海賊行為によって奪取された船舶︑臨検の権利︑ならびに追跡権に関す. 草案第四三︑四六及び四七条の規定するケースをあげている︒これらは︑ジュネーヴ公海条約の第一九︑二二及び. 上述の国際法委員会の一九五六年草案第三〇条に関するコメンタリーは︑同条に言及されている例外として︑同. ︵1︶. 3.
(6) 早法七五巻二号︵二〇〇〇︶. 二〇. 合には︑当該船舶を臨検することができ︑また㈲についても︑当該船舶が実際には臨検国の国籍を持つ場合にも同. 様である︒そして当初の検査で嫌疑が残る場合には船上で検査を続行することができる︒ただし︑嫌疑に根拠がな ︵16︶. いことが判明し︑かつ嫌疑を正当化するいかなる行為も行っていなかった場合には︑同船舶に対しその被った損. 失・損害について補償しなければならない︒船内で一層の検査をした結果政府船舶はどのような措置をとりうるか. は︑容疑行為の性質により異なる︒㈲は︑追跡国の管轄水域内での措置の継続であり︑他のケースとは若干ことな. 海賊行為. る︒以下これら例外の夫々の場合について見てみよう︒. ア. 海賊行為とは︑私有の船舶︵または航空機︶の乗組員または乗客が私的目的のために︑公海上の他の船舶︵また ︵17︶ は航空機︶もしくはその船上の人または財産に対して行う不法な暴力行為︑抑留または略奪行為をいい︑そのよう. な場合には︑いかなる国でも海賊船または海賊行為によって奪取されかつ海賊の支配下にある船舶を傘捕し︑同船 ︵18︶. 舶上の者を逮捕し︑財産を押収することができる︒また︑掌捕を行った国の裁判所は︑科すべき刑罰を決定し︑当 ︵19︶. 該財産についてとるべき措置を決定することができる︒事実︑全ての国は︑公海上での海賊行為の抑止に可能な限. 奴隷取引. り協力する義務を負っている︒. イ. 奴隷取引については︑海洋法条約は︑各国は自国の船舶による奴隷の運送を防止し︑処罰するため︑また奴隷の ︵20︶ 運送のために自国の旗が不法に使用されることを防ぐために実効的な措置をとる義務を確認するが︑奴隷取引に従. 事していることを疑うに足りる十分な根拠を有する外国船舶は︑当該船舶を臨検の対象とすることができる︒しか.
(7) 許可なき海上放送活動. しそれ以上の措置については海洋法条約の規定は無く︑また慣習法上も︑例えば船舶の掌捕︑関係者の処罰などに ︵21︶ ついては﹁支持が極めて少なく﹂︑したがって一般的に臨検国にできることは事件を同旗国に報告するのみである︒ ウ. 公海上の船舶または設備から国際規則に反して行われるラジオまたはテレビ放送は比較的最近の現象で︑ジュネ. ーヴ公海条約が採択されたのちに︑一九六〇年代初期からとくに西ヨーロッパの海域でみられるようになったもの. である︒ヨーロッパ諸国は︑国内及び国際的規則を無視したこれらのいわゆる﹁海賊放送﹂に対処するため︑一九 ︵22︶ 六五年︑﹁国家領域外の基地から発信される放送の防止のための欧州条約﹂を締結した︒同条約は︑締約国に対し︑ ︵23︶. 自国旗下の船舶上で許可なき放送に従事し︑またはこれを助ける者を処罰する義務を課しており︑この旗国の排他 的管轄権に対しては例外を認めていない︒. 海洋法条約は︑はじめて︑取締りの権限を旗国以外にも認め︑そのような放送によって影響を受ける諸国にも︑ ︵24︶. 臨検に加え放送に従事する者を公海において逮捕し︑船舶を掌捕し︑また放送機器を押収する権限を与えた.これ ︵25︶. ら諸国には放送設備の登録国︑放送従事者が国籍を有する国︑放送の受信可能な国︑及び合法的無線通信が同放送 ︵26︶. によって妨害を受ける国︑が含まれる︒条約はさらに︑全ての国に対してそのような放送の取締りに協力する義務. 国籍を持たない船舶の運航. を課している︒. 工. ︵27﹀. 国籍を有しない公海上の船舶は︑必ずしも﹁外国﹂船舶とはいえないが︑そのような船舶は︑一国のみの旗を掲. 二一. げて航行することを要求する海洋法条約規定に反し︑いかなる国の権限ある船舶でも︑その疑いが十分根拠ある場 公海上の船舶に対する旗国以外の国による取締り︵林︶.
(8) 早法七五巻二号︵二〇〇〇︶. ︵28︶. 一一二. 合には︑これを臨検できる︒それ以上の措置については規定は無く︑例えば船長の国籍国などへの通報にとどまら. 外国旗の掲揚または旗の提示の拒否. ざるを得ないであろう︒. オ. ある国の権限ある船舶は︑公海上の船舶が前者以外の旗を掲げているか︑または旗を示すことを拒否する場合︑. 実際にはそれが前者と同じ国籍を持つと疑うに足りる十分な根拠がある場合には︑これを臨検することができる. が︑それ以上の規定は存しない︒しかし︑被臨検船が現実に臨検国と同一の国籍を持つことが証明される限り︑取 締りの全過程において臨検国の管轄権に服すことは当然である︒. 力 追跡権の対象となる活動. 沿岸国の政府船舶または航空機は︑外国船舶が自国の法令に違反したと信ずるに足りる十分な理由がある場合に. は︑同船舶を公海上まで追跡し︑掌捕することができる︒そのような追跡は︑同船舶が領海の外縁より内側の水域. 内かまたは接続水域内にあるときに開始され︑掌捕にいたるまで中断されてはならない︒なお接続水域内からの追 ︵29︶ 跡は︑同水域が保護することをねらう権利の侵害があった場合に限り認められる︒ ︵30︶. 海洋法条約はこの伝統的追跡権をさらに拡大して︑排他的経済水域︵以下﹁EEZ﹂と略す︒︶および大陸棚に関 する沿岸国の関連法令の違反についても準用している︒. 沿岸国は︑もしこの追跡権を正当な方法によらないで行使し︑公海を含め︑領海外で船舶を停止させ︑掌捕した ︵31︶ 場合には︑その結果同船舶が蒙った損失または損害に対し補償しなければならない︒.
(9) ︵2︶個々の条 約 の 規 定 す る 例 外 ︵32︶. ︵33︶. ︵34︶. ︵35︶. ジュネーヴ公海条約及び海洋法条約以外の個々の特別条約が定める旗国の排他的管轄権の例外に関しては︑古く. は奴隷取引︑海底ケーブルの保護︑酒の密輸及び不法入国に関していくつかの先例が見られる︒さらに最近︑海上. における麻薬取引の取締りに関しても︑重要な進展が見られた︒また︑公海漁業に関しては多くの条約が存在す. 麻薬取引の取締り. る︒以下においては︑これら二つの分野についてより詳しく考察する︒. ア. 海洋法条約は全ての国に対し︑公海上で船舶が国際条約に反して麻薬または向精神剤の取引を行うことを防止す. るために他の国と協力する義務を課している︒またいずれの国も︑自国の旗を掲げる船舶が麻薬・向精神剤の不法 ︵36︶. 取引に従事していると信ずるに足りる合理的な理由がある場合には︑同取引の防止のために他の国の協力を要請す. ることができる︒しかしながら︑同条約は旗国以外の国に対しては︑公海において︑たとえ不法麻薬取引の疑いの ある船舶に遭遇しても︑いかなる措置をとる権限をも与えていない︒. ところが︑同条約の採択後まもなく︑海上における麻薬の不法取引がますます増大し︑同条約の規定は十分でな. いことが指摘されるに至った︒ただし︑それ以前においても︑法執行官が旗国以外の船舶に対しても臨検を行うこ ︵37︶. とが必要となることは︑一九六一年の麻薬単一条約の再検討を委ねられた国連経済社会理事会の専門家グループの 席上︑カナダの専門家によって指摘されてはいた.. 一九八八年︑国連麻薬委員会の準備した草案に基づき︑﹁麻薬及び向精神剤の不法取引を取締るための国連条約﹂. 一二二. がそのために開催されたウィーン会議で採択された︒同条約は︑第一七条において︑海上での麻薬不法取引に関し 公海上の船舶に対する旗国以外の国による取締り︵林︶.
(10) 早法七五巻二号︵二〇〇〇︶. 二四. て詳しい規定を設けている︒第一七条三項によれば︑﹁国際法に従って航行の自由を行使し︑他の締約国の旗を掲. げるかまたは他の締約国の登録表示をしている船舶が違法取引に従事している﹂と疑うに足りる合理的理由がある. 締約国は︑これを旗国に通報し︑その船舶の登録の確認を要請することができ︑同確認があった場合には︑同船舶. に対して適当な措置をとるための許可を旗国に求めることができる︒同条四項は︑そのような要請にしたがって︑. または当該締約国間の協定ないし取極めに基づいて︑旗国は要請国に対して︑同船舶に乗船︑捜索し︑もし違法取. 引に従事している証拠がある場合には︑同船舶及びその船上の者と積荷について適当な措置をとること︑等を許可. することができると定める︒また︑そのような取締り行為は軍艦︑軍用機︑もしくは政府の役務に使用されている. かまたはその目的のために許可されたその他の船舶または航空機のみが行うことができる︵同一〇項︶︒第一七条. は︑さらに︑締約国に対し︑海洋法に従い︑﹁海上における違法取引の取締りのために可能な限り十分な協力をす. る﹂義務︵同一項︶︑及び︑自国旗を掲げている船舶が事実その権限を有するか否かを決定する他の締約国からの 要請と上記第三項に基づく許可要請に速やかに応ずる義務を課している︵同七項︶︒. 上記一七条四項から明らかなように︑一九八八年国連麻薬条約は︑公海における麻薬取引の取締りを旗国以外の. 公海漁業. 船舶にも認めているが︑旗国以外の船舶による乗船・捜索を含むいかなる強制措置も︑当該旗国との間の既存のま ︵38︶ たはその度ごとの協定︑もしくはその他の方法での合意を前提としている︒当初の乗船と捜索を超えてどのような ︵39︶ 取締り措置が認められるかについては︑もっぱら関係国間の合意による︒ イ. 公海上で一国の政府船舶が他の旗国の漁船に対して種々の程度の警察権・取締り権を行使することは多くの協定.
(11) で認められてきた︒そのあるものは乗船・検査のみを認めるものであるが︑他のものはそれを超えて船舶の掌捕︑ ︵40︶. ︵41︶. ︵42︶. 乗組員の逮捕の権限などまで規定する︒前者の例としては︑一九六五年のタラバガニに関する米ソ協定︑一九六七 ︵43︶. 年の北大西洋における漁業活動に関する条約︑一九七入年の北西大西洋漁業条約︑および一九九四年の中央べーリ ︵44︶. ︵45︶. ︵46︶. ング海スケトウダラ資源保存管理条約などがある.また後者の例としては︑一八八二年の北海漁業の警察規制に関 ︵47︶. ︵48︶. ︵50︶. 一九五三年の米. する条約︑一九五二年の北太平洋公海漁業条約︑一九五七年の北太平洋オットセイ条約︑一九九二年北太平洋湖河 ︵49︶. 性漁業資源の保存に関する条約︑並びに一九三〇年の米加フレイザー河のベニザケに関する条約︑. 加オヒョウ漁業条約︑日ソ北西太平洋公海漁業協定などの二国間条約がある︒しかしこれら条約は︑いずれも︑容 ︵51︶. 疑者を訴追することまでは認めていない︒事実︑これらの殆どは︑旗国のみが当該犯罪について裁判権を有し︑そ. のための刑罰を科することができることを明規している︒ ︵52︶ ︵53︶ 乗船と検査を認める条約の中でも︑米ソ・タラバガニ協定と中央べーリング海条約は︑そのような行動を︑同条. 約または条約規定に基づいてとられる規制措置の違反の疑いを前提とすることなく認めている︒しかしながら︑そ. ︵56︶. ︵57︶. の他の殆どの多数国間条約は︑そのような違反があったかまたはあると疑うに足りる合理的根拠がある場合にのみ ︵54︶ ︵55︶ 乗船と検査を許している︒そのような条約には︑北太平洋公海漁業条約︑北太平洋オットセイ条約︑北大西洋漁業. ︵8 5︶. 操業条約︑北太平洋潮河性漁業資源条約︑などの多数国間条約があるが︑これに加え︑日ソ間の北西太平洋漁業 条約もあげられる︒. 以上の考察から︑国際的合意措置を執行する︑旗国の排他的権限の条約に基づく例外について︑国家の実行の傾. 二五. 向を見ることができる.すなわち︑ある締約国の官憲が他の締約国を旗国とする漁船に公海上で乗船し︑検査する 公海上の船舶に対する旗国以外の国による取締り︵林︶.
(12) 早法七五巻二号︵二〇〇〇︶. 二六. ことはいくつかの条約で認められている︒そのような多数国間および二国間条約の一部は︑さらに︑前者が同漁船. を掌捕し︑抑留し︑または船舶および乗組貝を逮捕することも可能にしている︒しかしながらこれらの条約は︑い. ずれも特定海域かまたは特定資源を対象としたものに限られている.また︑旗国以外の漁船に対して強い取締り権. 限を認めるのは︑一般に︑二国間条約かまたは少数の主要漁業国間のものに限られている︒これらの条約は全て特. 定海域のみを対象とするものであり︑世界の海洋全体に適用される一般条約は存在しない︒. 越境分布資源協定の下での非旗国による取締り制度. のタラ等資源の急速な壊滅に直面したカナダは︑自国の二〇〇カイリ水域の外でも効果的な資源保存管理措置をと. 的根拠は必ずしも明確なものではなかった︒こうした背景から︑世界有数の漁場のひとつであるグランドバンクス. ︵60︶. り︑沿岸国としては︑たとえ同漁業がEEZ内の資源に悪影響を与えるおそれがあっても︑とりうる措置の国際法. 域において︑ことに越境分布資源が過剰に獲られ始めたが︑当該海域について何らかの国際的取極めがないかぎ. ︵59︶. こうした状況のなかで︑二〇〇ヵイリEEZの設定が一般化して間もなく︑EEZに隣接するいくつかの公海海. 約に鑑みれば︑上に見たような例外規定はほんのわずかであるといえよう︒. は比較的多くの条約規定がみられるが︑世界の数多くの海域について存在する極めて多くの二国間及び多数国間条. 約を通じて認められてきているが︑それらは極めて限られた例外であるということができる︒漁業の分野において. 以上から明らかなように︑公海上の船舶に対する旗国の排他的管轄権の例外は︑若干の分野について︑特別の条. 4.
(13) る必要性を強調し︑緊急にグローバルな対策を協議することをまず国連環境開発会議の準備委員会で提案するに至. った︒一九九二年の国連環境開発会議は︑越境分布資源に関する国連会議を招集して間題の詳細を検討するよう勧. 告し︑これを受けた同年の国連総会は正式に同会議を招集した︒会議は︑翌一九九三年に始まり︑一九九五年八月 に冒頭で述べた越境分布資源協定を採択するに至った︒. 非旗国による公海上での漁業の取締り問題は同会議において最大の争点となり︑同間題に関する二つの長い条文. は︑会議が主として非公式会合の形で他のどの条項よりも多くの時間を費やしたものとなった︒. 同会議は︑一九九三年四月の組織会合において︑議長に対し︑その作業のべースとなるべき﹁主題と争点﹂のリ. ストの作成を要請し︑同時に参加国に対し同リストに加えるべき主題と争点の提案を出すよう求めた︒いくつかの. 代表団はそのような提案のみならず︑同会議の趣旨に関わる提案︑ポジション・ぺーパーなども提出した︒その中. で公海上の取締りに触れたものは僅かであったが︑その一つ︑米国の﹁立場表明﹂は︑﹁保存管理措置は効果的に ︵包 執行されるべきであり︑地域的機関がこの問題を検討すべきである﹂として︑地域的アプローチを示唆している︒. 他方カナダの﹁主要争点リスト﹂は︑公海での乗船︑検査︑逮捕︑などに関するグローバルな規則をねらった次の ような条項案を含んでいる.. ﹁いかなる国の当局も︑保存管理措置の適用の対象となっている公海区域において︑﹇地域機関の﹈他の加. 盟国の旗を掲げる権利を有する船舶がそのような措置に違反したと信ずるに足りる合理的根拠がある場合に. 二七. は︑同船舶に乗船し︑これを検査し︑また傘捕することができる︒掌捕国はそのとった措置を旗国に通知し︑ ︵62︶ さらに︑旗国または旗国の同意のもとに掌捕国が適当な行動をとるのを待って︑抑留するものとする︒﹂ 公海上の船舶に対する旗国以外の国による取締り︵林︶.
(14) 早法七五巻二号︵二〇〇〇︶ ︵63︶. 一一八. これらの提案を基にし︑議長は︑﹁会議における争点に関するガイド﹂︵以下︑コ九九三年ガイド﹂と略す︒︶を一. 九九三年七月の第二会期に提出した︒その後︑議長は︑会議が最終的に検討すべき最終協定草案を作成するまで. に︑各交渉段階での進展を反映した﹁交渉テキスト﹂︑﹁改訂交渉テキスト﹂︑﹁協定草案﹂︑﹁改訂協定草案﹂を次々. 一九九三年ガ イ ド. と作成︑配布した︒以下︑これら文書のテキストを通じて最終草案に至った経緯と背景︑主な問題点等を考察す る︒. ア. 一九九三年ガイドは︑﹁公海漁業の取締り・保存管理措置﹂とのタイトルのもとに︑旗国の責任をいくつかの具. 4︶. 体的措置を規定することによって強化せんと試みた︒そして非旗国船舶については︑﹁㈲ 旗国の責任遂行を補足 ︵6 する目的の︑地域的漁業取極め又は合意の一部としての協力体制の確立﹂と︑きわめて一般的な文言で触れたのみ. であった︒このように︑議長の当初の見方は︑非旗国による漁船に対する執行権を認める地域的協力制度を設ける. とすれば︑地域的協定・取極めに︑旗国の責任を補足するものとして規定すべきであるとするものであった︒. 同じ会期において︑チリ︑コロンビア︑エクアドル︑ペルーなどの太平洋側南米諸国は﹁越境分布漁業資源及び ︵65︶ 高度回遊性漁業資源の保存管理に関する国際協定の要素﹂と題する作業文書を提出した︒同作業文書は合意措置の. 執行について明確に地域的アプローチを採用し︑地域的機関のもとで採用されるべき監視︑規制及び取締り制度は. 合意された保存管理措置の履行を確認し得るものであることを要するとし︑さらにそのために次の規定を設けてい た︒. ﹁効果的な取締り制度の確立︒逮捕及び訴追が旗国によって行われるか否か︑沿岸国との間に共同取締り手.
(15) 続きが合意されているか否か︑またはいかなる締約国︵特に沿岸国の利益に直接関わる違反の場合には当該沿岸 ︵66︶ 国︶による逮捕・訴追も可能なことを相互に事前に認め合っているか否か︑を問わない︒﹂. さらに︑アルゼンチン︑カナダ︑チリ︑アイスランドおよびニュージーランドからなるもう一つのグループ︵会 ︵67︶. ︵68︶. 議のリード役を担ったいわゆる沿岸国グループ︶は﹁公海における越境分布資源の保存管理に関する条約草案﹂を提. 出し︑同会期末には会期中の議論を踏まえてこれを改訂した︒同改訂草案第一三条は上記カナダ案に基づき︑次の ような規定を設けている︒ ﹁二二条︵ 公 海 に お け る 乗 船 ︑ 検 査 及 び 逮 捕 ︶. ﹇本条約の﹈いかなる締約国の当局も︑規制区域において漁獲を行っている他の締約国の旗を掲げる権利を有. する船舶に乗船し︑これを検査し︑さらに同船舶が国際的保存管理措置の実効性を害した十分な証拠がある場. 合には︑これを掌捕することができる︒傘捕国は︑とった行動を旗国に通報し︑旗国又は旗国の同意の下に掌 捕国が適用な行動をとるまで︑これを抑留するものとする︒﹂. この草案で注目すべき点は︑地域機関に何らの直接的言及もないことである︒確かに﹁規制区域四お讐一緯o曙. 貰$﹂と﹁国際的保存管理措置ぎ9ヨ讐一9巴8霧段く讐一8餌pαBき鎚oヨ①艮B$ω霞霧﹂には言及しているが︑. 同条約草案によれば︑同条約のいかなる締約国でも︑他の締約国の船舶に乗船し︑検査し︑そして状況によっては. これを傘捕することが可能となる︒したがって︑規制区域や保存管理措置の存在を前提にしてはいるものの︑それ. ら措置の決定に関わった国であるか否かを問わず︑いかなる国であっても同条約の締約国である限り︑乗船・逮捕. 二九. 等の執行または対象国となりうる︒よって︑このアプローチは︑すでに見た議長のコ九九三年ガイド﹂及び南米 公海上の船舶に対する旗国以外の国による取締り︵林︶.
(16) 早法七五巻二号︵二〇〇〇︶. 四力国提案とは根本的に異なるものということができる︒. イ一九九三年交渉テキスト ︵69︶. 一二〇. 第二会期中の提案︑交渉の結果等を踏まえ︑議長は︑会期末に﹁交渉テキスト﹂を提出したが︑同文書において. も議長は︑公海上の非旗国による取締り問題を履行及び取締りに関する地域的機関についてのセクションで扱って. いる︒最終的に採択されるべき文書の性格が依然未確定であった同テキストは次のように述べている︒. ﹁29.旗国は︑漁業の監視と法執行について地域的に合意される手続きを作成するために︑関係沿岸国と︑. また地域的漁業管理機関又は取極めを通じて協力すべきである︒地域内又は小地域内において︑国家は︑その. ための特別協定の締結も含め︑自国の漁業関係法令の執行のために協力すべきである︒このため国家は︑なか. んずく一国の当局が︑他の国の旗を掲げる権利を有する漁船に乗船し︑これを検査し︑適当な場合には掌捕し ︵70︶. 得る手続きに合意すべきである︒そのような手続きには︑そのような行動の通報と一国が他国の船舶を抑留で きる手続きも含まれるものとする︒﹂. 議長の﹁交渉テキスト﹂は︑つまり︑以前に提出されたコ九九三年ガイド﹂が言及していた地域的合意ないし. 取極めの枠内での﹁協力的メカニズム﹂をより具体的に示したものでるが︑その内容は依然きわめて一般的なもの. 改訂交渉テキスト︵一九九四年︶. で︑詳細は各地域的合意に委ねている︒ ウ. 第三会期において︑会議推進派諸国は会議の最終文書を条約の形にすべきことを要求し︑議長の交渉テキストを ︵71︶ 規範的に強化することに努めた︒同会期の交渉を踏まえ︑会期末に議長は﹁改訂交渉テキスト﹂を作成したが︑上.
(17) 1として次のように改められた︒ 記のパラグラフ29は︑パラグラフ3. ﹁旗国は︑自国の旗を掲げる権利を有する船舶についての義務を果たすことに加え︑漁業の監視︑規制︑監. 督及び法執行のために地域的に合意された手続きを作成するために︑沿岸国と直接に︑及び地域的・小地域的. 漁業管理機関ないし取極めを通じて協力しなければならない︒適当な場合には︑漁業の監視・監督は地域的に. 合意される手続きに従って行われるものとする︒地域ないし小地域において︑国家は︑なかんずく一国が他の. 国の旗を掲げる権限を有する漁船に乗船し︑これを検査し︑適当な場合には掌捕することができる手続きに合. 意するものとする︒これには︑そのような措置の通報義務と︑また一国が他の国の船舶を抑留する手続きも含 まれる︒全ての捜査及び裁判手続きは迅速に行われなければならない︒﹂. 本テキストが導入した主要な変更は︑全体を法的拘束力のある形に書き換えたことである︒会議の最終的産物を. どのようなもとして採択するかについて未だ正面からな討議したことがなく︑決定的なトレンドも予測困難な状況. にあったが︑これは条約の形を提案しても大きな抵抗はないであろうとの議長の判断に基づくものであった︒. 同テキストは︑一九九四年八月の第四会期において詳細な審議の対象となった︒議論はまた︑会期直前に会議の. 外で起こった重要な進展にも影響され︑しばしば白熱したものとなった︒すなわち︑同年五月︑会議の推進役たる. カナダが︑自国の﹁沿岸漁業保護法﹂を改正し︑北西大西洋漁業機関︵Z︾男○︶の規制する公海区域にある漁船に. 一二一. も乗船し︑これを検査し︑さらに定められた保存管理措置に違反してストラドリング魚業資源を捕獲する船舶を掌 ︵72︶ 捕しうる権限を同国の当局に付与したのであった︒ 工 条約草案︵一九九四年︶. 公海上の船舶に対する旗国以外の国による取締り︵林︶.
(18) 早法七五巻二号︵二〇〇〇︶. 一二二. 第四会期末︑議長は会期中の交渉の成果を反映させて改定交渉テキストをさらに修正し︑これを越境資源の保存. 管理に関する海洋法条約規定の履行のための条約草案との趣旨のタイトルを付して提出した︒その第二〇条一項に は︑公海上の取締りに関する次の条項案を設けていた︒. ﹁1.旗国は︑自国の旗を掲げる船舶についての義務を果すことに加え︑漁業の監視︑規制︑監督と法執行. のための地域的に合意される手続きを作成するため︑沿岸国と直接および地域的漁業管理機関・取極めを通じ. て︑協力しなければならない︒適当な場合には︑監視︑規制︑監督︑執行はそのような地域的に合意された手 続きに従って行われるものとする︒. 履行と執行に関する地域的取極めの枠内で︑国家は一国の適当な当局が他国の旗を掲げる漁船に乗船し︑こ. れを検査しうる手続きに合意するものとする︒そのような合意には通報要件と他国の旗を掲げる漁船を掌捕 し︑抑留する手続きも含まれる︒﹂. 本テキストは︑実質的に改訂交渉テキストと殆ど変わらないが︑唯一の意義ある変更は掌捕の手続きを乗船・検. 査のそれと区別して抑留と一緒に扱ったことで︑傘捕は乗船・検査から一段階進んだものであることを明らかにし. たことである︒しかしながら︑このテキストは間もなく︑多くの代表団にとって満足できないものであることが判. 明した︒すなわち︑いくつかの沿岸諸国は︑とくに取締り措置をとり得ないかまたはとることを好まない旗国によ. る保存管理措置の執行を確保するには弱すぎるとし︑さらに︑そのような地域的取極めに合意せず︑そのような取 締り体制の枠外に留まる国家を効果的にコントロールし得ないと主張した︒. そこで議長は︑会期末まで︑主要代表団と非公式に交渉を重ねてテキストの改善に努めた︒その席上︑ノルウエ.
(19) 1代表は全く新しいアイデアを示唆し︑これがのちに合意フォーミュラを見出すための突破口となった︒ノルウエ. 検査国は︑被検査漁船による国際的に合意された措置の違反を証明する十分な証拠がある場合には︑直ち. ー案は次の四つの要素からなっていた︒. ω. ω. 旗国の異議が﹇48﹈時間以内にない場合には︑その同意があったものとみなす︒. 旗国または旗国の同意の下で検査国が適当な行動をとるまで︑検査国は乗船を継続する︒. に旗国に通報し︑同船の掌捕と訴追についての見解を求める.. ㈹. 旗国は︑掌捕がその同意なしに行われたと考える場合には︑当該船舶の即時釈放を要求し︑適当な場合に ︵73︶. ㈹ は紛争解決手続に訴えることができる︒. 4︶. ノルウエー提案はさらに︑そのような取締り措置は︑本件国連会議が将来採択する協定のいかなる締約国の漁船に ︵7 対しても︑同国が当該地域的機関の当事国であるか否かを問わず︑とり得ることを定めている︒このように︑ノル. ウェー案は︑それまでの議長提案と異なり︑明らかに全ての地域の適用されるグローバルな最低限の取締り基準を 設定せんとしたものであった︒ ︵75︶. 議長は︑第五会期の前︵一九九五年二月一三−一七日︶に二五力国ほどの主要代表をジュネーヴに招き︑残された. 問題についての非公式折衝を行ったが︑公海上の非旗国による取締り問題については進展なく終わり︑これについ. ては第五会期においてはじめて包括的に検討されるにこととなった︒主要な交渉は殆ど非公式の場で行われたが︑ 争点はほぼ以下の六点にしぼられた.. 二三. まず第一は︑執行の対象となるべき規則・規制措置で︑当初はこれに沿岸国の法令をも含むべきであるとの提案 公海上の船舶に対する旗国以外の国による取締り︵林︶.
(20) 早法七五巻二号︵二〇〇〇︶. 一二四. もあったが︑関係地域機関の下で採択される規制措置︵地域的規制措置︶であることにコンセンサスがかたまった︒. 第二は︑旗国以外にどの国が地域的規制措置を執行し得るかで︑協定草案では地域機関の当事国たるいかなる国. でも含まれるとなっていたが︑将来採択される本件協定の締約国のみに限られるべきとの見解が一般的に受け入れ られた︒. 第三は誰が取締りの対象となるかで︑協定草案はこれを地域機関の当事国の漁船に限ることを示唆していた︒し. かし︑この規定振りでは︑漁業国はそのような機関に参加しないことにより取締りを免れ得るとの懸念が広まり︑. 上記のノルウェー案のように︑地域的機関の当事国であるか否かを問わず︑将来採択予定の本件協定の全締約国が 対象となるべきとの考えが一般化した︒. 第四はどのような取締り行為が許されるかである︒この点協定草案は乗船・検査のほか船舶の掌捕・抑留まで規. 定しているが︑その手続きの詳細は地域機関に委ねている︒非公式折衝では︑この問題についての立場が相対する. 二つのグループに分かれた︒一つのグループは主要遠洋漁業国︵以下︑DWFN︶からなり︑乗船・検査を含め全. ての取締り行為は地域的機関によって採択される手続きに沿ってとられるべきであると主張した︒そのうちのいく. つかの国は︑非旗国による取締り行為は乗船・検査に限られるとした︒これに反し︑沿岸国グループのいくつかの. 国は︑将来採択される協定は︑地域機関が逮捕・抑留も含め︑非旗国による取締りの詳細手続きを採択しなければ. ならない旨のグローバルな規則を打ち出すべきであると主張した︒そのうち若干の国は︑同協定が基本的な規則を. 設定し︑地域機関において︑とくに取締り行為の限界など︑その手続きについてのある程度の柔軟性を定めるべき. であるとした︒また︑ある沿岸国代表は︑グローバルな規則は保存管理規制措置の﹁重大な違反﹂に適用されるべ.
(21) きで︑もし旗国が四八時間内に救済措置をとらなければ︑同旗国は検査国が当該船舶を港まで引致し︑更なる捜査 ︵76︶ と場合によっては訴追することを認めなければならないと主張した︒. 第五の問題は非旗国による取締り権の法的根拠は何かということである︒すでに見たように︑公海上の漁船は海. 洋法条約又は他の条約が別段の規定を設けていない限り︑帰国の排他的管轄権に服する︒将来採択される本件協定. がそのような﹁他の条約﹂たりうることは問題ないが︑いくつかの沿岸国はまさに本件協定が︑非旗国による強制. 的取締りの手続きを定めるべきであるとしたのに反し︑DWFNは一般に地域的レヴェルにおける国家間の協定の. みがそのような﹁他の協定﹂となりうると主張した︒さらに︑掌捕のような検査を超える措置については︑個々の 場合ごとに旗国の許可が必要であるとの条件を加えるものもあった︒. 第六は︑取締り措置をどこでとることができるかという問題で︑それは沿岸国の管轄水域に隣接する公海上の. ﹁規制区域﹂内︑すなわち︑地域的機関の下で資源の保存管理措置が採択され︑適用されている区域内︑との認識. に一般的合意がみられた︒ただし︑その後第六会期においてこの範囲を拡大し︑規制区域内での違法操業後漁船が. 他の公海区域またはEEZに移動してからも取締まり措置がとれる旨の提案があり︑結局後に見るように︑検査国 の管轄水域にある場合にはこれが認められることとなった︒ オ 改訂協定草案︵一九九五年︶ 7︶. ︵7 以上のような折衝の結果︑第五会期末︑議長は協定草案の改訂版を配布した︒これは︑はじめて公海上の取締り. 二五. に関する詳細な規定を含むもので︑その中心的規定の第一二条とその後に配布された二一条罫は採択された協定 の第二一および二二条の原型となった︒ 公海上の船舶に対する旗国以外の国による取締り︵林︶.
(22) 早法七五巻二号︵二〇〇〇︶. 一二六. これらの規定は︑基本的には地域機関内で適当な取締り手続きに合意するよう懲悪するかまたは合意する義務を. 規定するに留まっていたそれまでの草案とは対照的に︑取締り行為の具体的内容とその実施のための手続きを含む. 実質規定であった︒より詳細な手続きは地域的なレヴェルでの合意にゆだねてはいるが︑上記規定はいずれの地域. においても義務的に適用されるべき最低限のグローバルな基準を設けた点で画期的なものである︒. 一九九五年七ー八月の第六︵最終︶会期に先立ち︑公海上の非旗国による取締り問題に絞った非公式協議が二度. 開催された︒ひとつは米国がワシントンに少数の主要代表と議長を招いて開いたもので︑協議後︑米国代表はその ︵78︶ 結果を踏まえ第二一条に関する包括的作業文書︵以下︑﹁米国ぺーパー﹂︶を配布した︒もう一つは︑第六会期直前. の三日間議長が全ての代表団を対象に主催したものであった︒これらの協議は︑いくつかの残された争点に関して の見解の相違を調整するための貴重な機会となった︒. 米国ぺーパーは︑公海上の取締り問題についてコンセンサスを達成するための重要な材料となった二つの新しい. 要素を導入するものであった︒一つは︑乗船と検査の標準手続きを規定した新しい協定草案付属書で︑これには地. 域的機関が乗船・検査に関しての手続きを採択していない場合にその採択まで適用すべき手続きも含まれていた︒. なお︑この付属書の規定は後ほど修正のうえ議長により第一二条騨に移された︒もう一つは﹁重大な違反﹂の概. 念で︑そのような違反が存在する場合にのみ︑検査国は一定の条件の下により厳しい取締り措置をとりうるとする. ものである︒ただし︑﹁重大は違反﹂概念そのものは︑すでに触れたように全く新しいものではない︒. 米国ぺーパーは改訂協定草案とともに︑第六会期直前の非公式協議と同会期中︑議長によって討議のべースとし. て使用された︒こうした作業の成果は会期末日に採択された最終テキストに盛り込まれるにいたったが︑その間に.
(23) 問題となった主な争点は︑採択された第二一及び二二条に沿って振り返れば︑次の通りである︒なお︑これら二か 条のテキスト全文は参考までに末尾に添付する︒. まず第二一条一項は︑本協定締約国による他の締約国の漁船に対する乗船・検査権を定めるもので︑内容は改訂. 協定草案及び米国ぺーパーとほぼ同一であるが︑あるDWFN諸国は乗船・検査は対象の漁船が保存管理措置に違. 反したと疑うに足りる合理的な根拠がある場合のみに許されるべきであると主張した︒しかしこれは︑沿岸国の強 い反対のため︑会議の受け入れるところとならなかった︒. 第二項は地域的機関による乗船・検査に関する詳細規定の設定義務を定めるもので︑この基本的義務は改訂協定. 草案に沿う︒しかしそれに加え︑上記米国ぺーパーの付属書に掲げた乗船・検査手続きの最低基準案が第二一条. として受け入れられ︑最終的に第二二条となった︒そして︑第二一条二項にこの第二二条への言及を挿入する. 公海上の船舶に対する旗国以外の国による取締り︵林︶. 一二七. 場合には︑同条項の規定に取って代わることができる旨の新たな追加規定を提案した︒これに対しては︑沿岸諸国. この条項に関連し︑いくつかのDWFNは︑ある地域機関が同条項と同様に効果的な代替的取締り制度を採択した. 定める基本的最低基準の手続きが適用されるとしているが︑これは上記の通り米国ぺーパーに基づくものである︒. 第三項は︑本協定採択後二年以内に地域的機関が上記の手続きを設定していない場合には︑本状及び第二二条の. ︵79︶. 項に挿入することとなった︒. れ︑地域的に設定する手続きは当該地域機関の非加盟国に対して差別的なものであってはならない旨の一文を第二. れるべきことを再度主張したが︑沿岸国の反対で議長は却下した︒その代わりに︑議長は︑DWFNの要求を入. こととなった︒審議過程において︑若干のDWFNは乗船・検査は地域的に合意される手続きにおいてのみ認めら. 窯。・.
(24) 早法七五巻二号︵二〇〇〇︶. 一二八. が︑同提案は第三項の適用回避を容易に認めることになりかねないとして反対した︒その結果︑そのような場合に. は︑当該機関の加入国の間で第一項の規定の適用を制限することに合意することができる︑との内容で︑第一五項 として挿入されることになった︒. 第四項は検査官の身分証明書の他の関係国への通報︑政府取締り船の識別などの要件を規定する新しい規定で︑ 第五項以下の適用を容易にするため挿入された︒. 第五項は違法行為の存在を信ずるに足りる明確な根拠があった場合の乗船・検査国による証拠確保と旗国への通. 報義務を定めるものである︒改訂協定草案には︑そのような通報を受けた旗国は自ら取締り措置をとるかまたは検. 査国に取締り措置をとることを許可しなければならない旨の規定があったが︑これはDWFN諸国の反対で弱めら れ︑第六及び七項の規定に反映されることとなった︒. 第六項は︑上記の通報を受取った旗国は所定期間内に回答し︑同時に自ら調査し適当な取締り措置をとるか︑ま. たは検査国に違反容疑の調査を許可する義務を定める︒以前の提案では検査国の権限に船舶の掌捕︑抑留等までも 含み得る可能性があったので︑最終テキストでは明確に﹁調査﹂のみに限定された︒. 第七項は︑旗国が調査権限を検査国に与えた場合︑その報告に基づいて旗国は自ら取締り措置をとるか︑または. 検査国に対して﹁旗国が明示する取締り措置﹂をとることを許可することができると定め︑旗国の意思に反した措. 置を検査国がとれないようにした︒また旗国にはそのような許可を検査国に与える義務は無いことが明確にされ た︒. 第八項は上記の米国ぺーパーの﹁重大な違反﹂条項に基づくもので︑乗船・検査の結果︑後︵第11項︶に定義す.
(25) る重大な違反があったと信ずるに足りる明確な根拠があった場合で︑しかも旗国が必要な回答をしないかまたは措. 置をとらなかった場合には︑検査国は乗船を継続して証拠を確保し︑さらに当該漁船を最寄の港に移動させること. も含めて︑追加的な調査を行うことができるとする︒なお同ぺーパーには︑検査国が当該船舶をその﹁監督下に置. く﹂との語句があったが︑これは掌捕につながる可能性があるとしてDWFN諸国が反対したため︑継続した証拠 確保におきかえられた︒. 第九項は検査国による調査の報告義務を定めるもので︑この点は問題なく採択された︒しかし︑違反証拠がある. 場合に検査国が訴追することについて旗国の同意を求めることができる趣旨の改訂協定草案第八項の規定は削除さ れた︒. 第一〇項は︑検査官の守るべき一般的国際基準に関するもので︑検査国による乗船・検査時の過度な行動を防止. する目的で︑DWFN諸国の要求で挿入されたものである︒なお︑その一部は改訂協定草案の第一四項を反映した ものである︒. 第二項は︑すでに述べたように︑﹁重大な違反﹂の定義を掲げている︒. 第一二項は︑本第二一条の規定にかかわらず︑旗国は︑たとえ同国船舶が違反の容疑で他国による検査中であっ. ても︑いつでもその基本的義務に基づき︑同船舶に対する措置をとることができることを確認したもので︑その原 案はすでに改訂協定草案第九項に存在していた︒. コ一九. 第一三項は︑違反船舶に対し旗国の制裁等を自国の法律に従って科す権利を確認したもので︑改訂協定草案第一 八項の規定に沿ったものである︒ 公海上の船舶に対する旗国以外の国による取締り︵林︶.
(26) 早法七五巻二号︵二〇〇〇︶. 一三〇. 第一四項は︑本条の規定する非旗国による取締り措置を︑対象違反容疑船舶が違反行為を犯した後︑同一航海中. に当該検査国の管轄水域に入域したと信ずるに足りる明確な根拠がある場合にも準用するものである︒すでに触れ. たように︑この新条項は︑そのような取締り権の行使を広く規制水域以外においても認めるべきだとする提案に基. づくものである︒そのような権限拡大は︑規制区域内での取締りを前提とする第一項の規定に反するほか他国のE. EZ内での非沿岸国による取締り行為は海洋法条約上問題があると指摘され︑結局︑検査国の管轄水域のみでしか も違反時と﹁同一航海中﹂の船舶に限って認められることとなった︒. 第一五項はすでに述べたように︑本協定と同様に効果的な代替的取り締まり制度を地域的機関が採択した場合に ︵80︶. その適用を容認する規定である︒そのような代替的制度の例としては︑漁船上に旗国国民以外のオブザーバーを乗 船させる制度が指摘されよう︒. 第一六項は非旗国による取締り措置は違反の重大さと釣合いのとれたものであることを要するとの規定である が︑これは改定協定草案の第一二項にあったものである︒. 第一七項はある漁船が無国籍であると信ずるに足りる妥当な根拠がある場合には︑いずれの国もこれに乗船し検. 査をし︑さらに証拠次第では国際法に沿った適当な措置をとることを認めている︒改訂協定草案第一五項では︑証. 拠次第では国際法及び国内法に従って﹁嘆08aぎ鴨を開始できる﹂となっていたが︑日本の代表が︑これは掌. 1︶. 捕︑起訴︑処分まで含み海洋法条約を超えるおそれがあること︑および国内法によっては一方的な取締りに通じる ︵8 おそれがあることから問題視したため︑修正されたものである︒. 最後に第一八項は︑本条に基づいてとる措置が違法であったり︑合理的限度を超えている場合には︑それにより.
(27) 生ずる損害・損失について責任を負う旨の規定であるが︑これはDWFN諸国の強い要請で海洋法条約第二三二条. の規定をモデルに起草されたものである︒この規定に関しては︑責任についての協定第三五条でカヴァーされると. の指摘があったが︑議長は本項は国家よりも民間の利害に対する損害・損失を意味すると説明した︒. 第二二条は︑上述のように議長が二一条黛Gりとして配布したテキストに基づいたものであるが︑主な争点は次の 通りである︒. 第一項は検査国が自国の検査官に遵守せしめるべき行動基準を六項目にわたって定めているが︑とくに間題にな. ったのはωの武力行使の限度である︒この点︑当初の第二一条騨の議長案では︑検査官による武力行使を﹁検査. 官の指令遵守を確保するために必要な最低限に﹂限定していたが︑武力行使は検査官の自衛の場合と︑その任務の. 遂行に対する妨害の際のみに厳に限られるべきであるとの多くの代表の見解をいれ︑最終テキストの形となった︒ ︵82﹀. にも拘わらず︑ヨーロッパ共同体の代表は同テキストでも武力行使に対する十分な法的保障を規定していないと協 ︵83︶. 定採択時に述べ︑また中国は︑協定採択後の国連総会で︑同条項が武力の濫用の根拠を与えかねないとの強い疑念 を表明した︒. 第二及び三項については大きな問題なく第二一条窯のの規定が若干補完されて採択された︒. 第四項は乗船の対象となる漁船の船長が乗船・検査を拒否する場合の規定で︑第二一条騨では︑同漁船の旗国. は直ちに漁業許可を取り消し︑帰港を命じる旨の厳しい規定振りであったが︑最終的には一般的に受け入れられた. 二三. 海上安全規則等に基づく乗船の遅延を認め︑さらに即座の漁業許可取り消しのまえに︑旗国に対して船長に乗船・ 検査の受け入れを指示するチャンスを与えることなった︒ 公海上の船舶に対する旗国以外の国による取締り︵林︶.
(28) 結. 早法七五巻二号︵二〇〇〇︶. 5. 一三二. さらに︑そのような検査は地域的措置の﹁遵守を確保する目的で﹂行われるため︑本協定締約国は自国が当事国. 的措置の遵守に関して検査を受けることに合意したわけである. 域的に適用されている措置の当事国でなくとも︑自国の漁船が公海において︑協定の他の締約国によって当該地域. れを検査することを認める初めての世界的ルールを設けた︒換言すれば︑世界の諸国は︑同協定を通じて︑例え地. 機関の参加国であるか否かを問わず︑同機関の下での資源保存管理措置の遵守を確保するために︑乗船し︑かつこ. 同協定は︑地域的機関に参加しているその締約国に対し︑他のいかなる締約国の漁船にでも︑後者がそのような. 4︶. にそのような手続きを採択しない場合には︑その採択までの間︑協定第二一及び二二条所定の規則・手続きを適用 ︵8 しなければならない︒さらに︑そのような規則・手続きは極めて詳細で︑この点も同協定の大きな成果と言える︒. 従って地域的レヴェルでの取締り手続きを採択するよう義務づけ︑もし地域的漁業管理機関が協定採択後二年以内. 続きを定めたはじめてのグローバルな条約である︒同協定は締約国に対し︑同協定が設定したグローバルな基準に. 同協定は︑公海において他国の漁船に乗船し︑これを検査することを同船舶の旗国以外の国に認め︑かつその手. するものと言うことができよう︒その最も注目すべき点は次のように要約できよう︒. の道を開くものであり︑また越境分布資源の保存管理に関する国際的措置の実施メカニズムに重要な新側面を追加. 以上の考察から︑コンセンサスで採択された一九九五年協定の公海漁船取締り関係規定は国際法上の新しい進展. 論.
(29) となっていない地域的措置にも間接的に拘束されるわけである︒これは︑全ての漁業国は︑本協定の締約国になる ︵85︶. ことによって︑ニカ国以上の国が世界のいかなる公海海域においても採択する越境分布資源の保存管理措置を︑そ. れらが海洋法条約に反映された国際法の関係規則に合致する限り︑遵守しなければならないことを意味するもので ある︒. 同協定はまた︑検査国が︑容疑漁船が同協定が定義する﹁重大な違反﹂を犯したと信ずるに足りる合理的根拠が. ある場合には︑追加的調査のため港に引致することを認めるグローバルな法的基盤となる︒. 各国が最終的にこの規定に拘束されるか否かは︑当然ながら︑協定の発効と各国による批准・加入が前提とな. る︒しかし︑世界のどの公海海域に関して採択される地域的資源保存管理措置についても︑その採択に全く関与し. ない国でも遵守しなければならない義務を世界的条約で合意したことは︑ことに公海漁業の自由の原則に鑑み大き な意義があるとといわざるを得ない︒. このような︑公海漁業の分野で成し遂げれれた重要な進展が︑はたしてその他の分野での先例になるかは容易に. 予測しがたい︒上記の考察から引き出し得る結論は︑公海漁業は地域機関が採択した措置の共同執行の合意も含. め︑すでに多くの二国間及び地域的協力が存在していたユニークな分野であるといえる︒さらに︑海洋法条約は︑. ことに越境分布資源の保存管理に関し︑国際協力とその更なる強化を奨励するのみならずこれを義務としている.. 一九九五年協定の新取締り制度の基盤となったのは︑まさにこの地域的制度とグローバルな義務とのあいだの相互. 連携であるといえる︒そのような相互関係は︑従来は︑地域的制度についてはその関係国のみに法的枠組みが限ら. 二二三. れていたが︑一九九五年協定はこれを普遍的な関係に発展させ得る重要なリンクを構成するものと言える︒つま 公海上の船舶に対する旗国以外の国による取締り︵林︶.
(30) 早法七五巻二号︵二〇〇〇︶. 一三四. り︑このリンケージを通じて︑地域的保存管理制度が事実上普遍的効力をもつに至る可能性が与えられたわけであ. る︒その意味では︑同協定は︑多くの国に受け容れられたあかつきには︑海洋法条約規定の実施という協定の目的. を超え︑普遍的制度と地域的制度との相互連携に関する新たなレジームの構築の効果も生み出すことになろう︒. ﹁分布範囲が排他的経済水域の内外に存在する魚類資源︵ストラドリング魚類資源︶及び高度回遊性魚類資源. の保存及び管理に関する一九八二年一二月一〇日の海洋法に関する国際連合条約の規定の実施のための協定﹂ 第二一及び二二条︵政府仮訳︶. 第一コ条 導守及ぴ取締りのための地域的な合意及び取極. 1.小地域的又は地域的な漁業管理のための機関又は取極が対象とする公海水域において︑当該機関の加盟国. 又は取極の参加国である締約国は︑当該機関又は取極によって定められたストラドリング魚類資源及ぴ高度回. 遊性魚類資源の保存管理措置の遵守を確保するため︑2.の規定に従い︑正当な権限を与えられた自国の検査. 官により︑この協定の他の締約国︵当該機関の加盟国又は取極の参加国であるか否かを問わない︒︶を旗国とする. 漁船に乗船しこれを検査することができる︒. 2.いずれの国も︑小地域的又は地域的な漁業管理のための機関又は取極を通じ︑1.の規定に基づいて行わ. れる乗船及び検査の手続並びにこの条の他の規定を実施するための手続を定める︒この手続は︑この条及び次.
(31) 条に規定された基本的な手続に合致するものとし︑また︑当該機関の非加盟国又は取極の非参加国を差別する. ものであってはならない︒乗船及び検査並びにその後の取締措置は︑そのような手続に従って行われる︒いず れの国も︑この2.の規定に従って定められた手続を適当に公表する︒. 3.この協定を採択した後二年以内に小地域的又は地域的な漁業管理のための機関又は取極が2.に定める手. 続を定めない場合には︑当該手続が定められるまでの問︑1.の規定に従って行われる乗船及び検査並びにそ の後の取締措置は︑この条及び次条に規定された基本的な手続に従って行われる︒. 4.この条の規定に基づく措置をとるに先立ち︑検査国は︑直接に又は関連する小地域的若しくは地域的な漁. 業管理のための機関若しくは取極を通じて︑当該小地域又は地域の公海において自国の漁船が漁獲を行ってい. るすべての国に対し︑正当な権限を与えられた自国の検査官に対して発行された身分証明書の様式を通報す. る︒乗船及ぴ検査に用いられる船舶は︑政府の公務に使用されていることが明らかに表示されておりかつ識別. されることのできるものとする︒いずれの国も︑この協定の締結の際に︑この条に基づく通報を受け取る適切. な当局を指定し︑関連する小地域的又は地域的な漁業管理のための機関又は取極を通じてその指定を適当に公 表する︒. 5.乗船及ぴ検査の結果︑当該漁船がー.の保存管理措置に反する活動に従事したと信ずるに足りる明確な根. 拠があった場合には︑検査国は︑適当なときは︑証拠を確保し︑旗国に対し速やかに違反の容疑を通報しなけ ればならない︒. 二二五. 6.当該旗国は︑5.に定める通報に対し︑その受領から三作業日以内又は2.の規定に従って定められた手 公海上の船舶に対する旗国以外の国による取締り︵林︶.
(32) 早法七五巻二号︵一一〇〇〇︶. 続に定めるその他の期間内に回答するものとし︑次のいずれかのことを行う︒. 一三六. ⑥ 当該漁船に関して調査を行い及び︑証拠により正当化される場合には︑取締措置をとるという第十九条に. 定める義務を遅滞なく遂行すること︒この場合において︑旗国は︑検査国に対し︑調査の結果及びとられた取. 検査国が調査を行うことを許可すること︒. 締借置について速やかに通報する︒. ㈲. 7.旗国が検査国に対して違反の容疑を調査することを許可する場合には︑当該検査国は︑遅滞なく調査結果. を旗国に通報する︒旗国は︑証拠により正当化される場合には︑当該漁船に関して取締借置をとるという義務. を履行する︒これに代え︑旗国は︑この協定に基づく旗国の権利及び義務に合致するように︑検査国に対し︑ 当該漁船に関して旗国が明示する取締措置をとることを許可することができる︒. 8.乗船及ぴ検査の結果︑当該漁船が重大な違反を行っていたと信ずるに足りる明確な根拠があった場合で︑. 旗国が6.又は7.の規定に基づいて必要とされる回答を行わなかったか又は措置をとらなかったときは︑検. 査官は︑乗船を継続し証拠を確保することができ︑また︑船長に対し︑適当な場合には当該漁船を最も近い適. 当な港又は2.の規定に基づいて定められた手続に定める他の港に移動させることを含め︑追加的な調査に協. 力することを要請することができる︒検査国は︑当該漁船が向かっている港の名称を直ちに旗国に通報する︒. 当該検査国︑旗国及び︑適当な場合には︑寄港国は︑船員の国籍のいかんを問わず︑船員の福祉を確保するた めに必要なすべての措置をとる︒. 9.検査国は︑旗国及び関連する機関又は関連する取極の参加国に対して追加的な調査の結果を通報する︒.
(33) 検査国は︑自国の検査官に対し︑船舶及び船員の安全に関する一般的に受け入れられている国際的な規. 第一八条三⑥の規定に基づいて旗国によって発給される有効な免許︑承認又は許可を有せずに漁獲を行う. 関連する小地域的又は地域的な漁業管理のための機関又は取極によって義務付けられている漁獲量の正確. 禁漁区域において漁獲を行うこと︑禁漁期において漁獲を行うこと及び関連する小地域的又は地域的な漁. @. ⑥. 漁船の表示︑識別又は登録を偽造し又は隠ぺいすること︒. 禁止されている漁具を使用すること︒. 漁獲停止措置の対象とされている資源又は漁獲が禁止されている資源を主な対象とする漁獲を行うこと︒. ⑧ 調査に関連する証拠を隠ぺいし︑改ざんし又は処分すること︒ 公海上の船舶に対する旗国以外の国による取締り︵林︶. 二二七. ω. 行うこと︒. 業管理のための機関又は取極によって設定された漁獲割当てを有せずに又は当該漁獲割当ての達成後に漁獲を. @. 量の重大な誤報告を行うこと︒. な記録及び漁獲量に関連するデータを維持しないこと並びに当該機関又は取極の漁獲量報告義務に反して漁獲. ㈲. こと︒. @. n.この条の適用上︑重大な違反とは次のことをいう︒. 対する嫌がらせとなるような方法で実施されないことを確保する︒. 質に悪影響を与えるような行動を実行可能な限り避けることを義務付ける︒検査国は︑乗船及び検査が漁船に. 則︑手続及び方式を遵守すること︑漁獲操業に対する干渉を最小限のものとすること並びに船上の漁獲物の品. 10..
(34) 早法七五巻二号︵二〇〇〇︶. 二二八. 関連する小地域的又は地域的な漁業管理のための機関又は取極によって作成された手続において重大な違. ㈲ すべてを合わせると保存管理措置の重大な不履行となるような複数の違反を行うこと︒. ω 反と定められた他の違反を行うこと︒. この条の他の規定にかかわらず︑旗国は︑いつでも︑違反の容疑に関し︑第19条の規定に基づく義務を履. 参加国は︑関連する公海水域において定められた保存管理措置に関し︑これらの国々の問においてー.の規定. 履行する制度であってー.に定める制度に代わるものを設定した場合には︑当該機関の加盟国又は当該取極の. 機関又は取極によって定められた保存管理措置の道守を確保するというこの協定の下における義務を効果的に. 小地域的又は地域的な漁業管理のための機関又は取極が︑当該機関の加盟国又は当該取極の参加国が当該. び検査に準用される︒. の管轄の下にある水域に入域したと信ずるに足りる明確な根拠を有している場合に︑当該検査国が行う乗船及. の関連する保存管理措置に反する活動に従事し︑かつ︑当該漁船がその後︑同一の操業航海中に︑当該検査国. る締約国が︑この協定の他の締約国を旗国とする漁船が当該機関又は取極が対象とする公海水域においてー.. この条の規定は︑小地域的又は地域的な漁業管理のための機関の加盟国又はそのような取極の参加国であ. ない︒. この条の規定は︑自国の法律に従って措置︵制裁を課す手続を含む︒︶をとる旗国の権利を妨げるものでは. より︑自国が行った調査の進行状況及び結果と共に当該漁船を旗国に引き渡す︒. 行するための措置をとることができる︒漁船が検査国の指揮下にある場合には︑当該検査国は︑旗国の要請に. 12. 13. 14.. 15..
(35) の適用を制限することを合意することができる︒. 小地域的又は地域的な保存管理措置に反する活動に従事した漁船に関し︑旗国以外の国によってとられる. 前条による乗船及び検査のための基本的な手続き. 乗船及び検査を行う時点において旗国への通報を開始すること︒. 一三九. 漁船の船長に身分証明書を提示し︑また︑当該公海水域において有効な関連する保存管理措置又はこれら. ㈲. 乗船及び検査を行っている間︑船長が旗国の当局と連絡をとることを妨げないこと︒ 公海上の船舶に対する旗国以外の国による取締り︵林︶. @. の措置に従って実施されている規則の写しを提示すること︒. ⑥. 1.検査国は︑自国の正当な権限を与えられた検査官が次のことを行うことを確保する︒. 第二二条. ものに対し責任を有する︒. 度を超えている場合には︑いずれの国も︑このような措置に起因する損害又は損失であって自国に帰せられる. この条に基づいてとった措置が違法であった場合又は入手可能な情報に照らして合理的に必要とされる限. な措置をとることができる︒. 漁船に乗船し及びこれを検査することができる.証拠が十分である場合には︑当該国は︑同際法に従った適当. 公海上の漁船が国籍を有していないことを疑うに足りる妥当な根拠がある場合には︑いずれの国も︑当該. 措置は︑違反の重大さに対応するものとする︒. 16.. 17. 18..
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