妥当性のある根拠を探り合い,文章に説得力を持た せる : 論説文の読み取りを「書く」活動につなげ る(国語科第3学年)
著者 柳原 有紀
雑誌名 福井大学教育実践研究
巻 33
ページ 101‑106
発行年 2009‑01‑31
URL http://hdl.handle.net/10098/1949
1 学びのストーリー
(1)筆者の主張を読み取る(第1時〜2.5時)
教師:今日から「生き物として生きる」という論説文につい て学習していきます。その中で,「説得力のある文章」
の書き方について考えていきたいと思います。まず,
この題名を読んで,筆者は私たち読者に何を伝えよう としているか考えてみましょう。
子どもたちに,「書く」という意識を持たせるために,
最初に今回の授業の目的を伝えた。
まずは本文の内容に興味を持たせようと考えた。
(※以下に出てくる子どもの名前はすべて仮名です)
奈津:自然や動物と一緒に生きることを考える。
光夫:人間だけが別格ではない。
麻衣:生き物は機械とは違う。
昭子:生き物にしかできないこと,生き物にしかないことを 考えよう。
諒太:光夫くんに付け足して,人間だけが別格と思っている 現代の日本に注意を呼びかけている。
琴菜:自然を守るなど,生き物として当然のことをする。
地球温暖化などの環境問題について,ニュースで報道 されていることもあり,他の生き物との共生についての 文章であると予測した子どもが多い。
次に,本文を読み,筆者の主張について考えていく。
昭子:生き物だけが持つ特有の仕組みがあるから,生き物と して生きる暮らし方を考える必要がある。
誠司:便利さだけを求め,生き物にまでそれを当てはめよう とするのは間違っている。
諒太:誠司くんのも確かに主張みたいなんだけど,結局筆者 は,「便利さだけを求め,生き物にまでそれを当ては めるのは間違っている」から,「生き物として生きる 暮らし方を考える必要がある」って言ってるんじゃな いかな。
諒太の発言によって,昭子の意見が筆者の主張である とまとまった。
(2)筆者の工夫を探る(第2.5時〜3時)
自身の主張を支えるために,筆者は文章中にどのよう な工夫を凝らしているのだろうか。班で出し合って付箋 に記入し,台紙に貼っていく。それをグルーピングし,
各グループに名前を付けている班が見られたため,他の 班に紹介し,同様にまとめるよう促した。
各班から挙げられたものを「構成」,「例・比較」,「内 容・書き方」というグループでまとめた。また,これま での説明的な文章の学習を思い出し,他にどんな工夫が 考えられるかについても出し合った。
〔構成〕
・身近なところから展開している。機械→野菜→人間
・「機械」から「思いどおり」までをうまくつなげている。
*起承転結,はじめ・なか・おわり,序論・本論・結論,
問題提起
〔例・比較〕
・身近な例を出している。トマト,子供,機械の設計図,
妥当性のある根拠を探り合い,文章に説得力を持たせる
−論説文の読み取りを「書く」活動につなげる ( 国語科 第3学年 ) −
福井大学教育地域科学部附属中学校
!
原 有 紀 教育実践報告子どもたちは様々な場面で「書く」活動を行っている。しかし,なかなか自分が納得できるような文 章を書くことができずにいる。自分が感じたことや考えたことをどのように文章に表せばよいのか。相 手に伝わる文章とはどのようなものなのか。論説文を読み,筆者の主張を読み取るだけでなく,その主 張を読者に伝えるための筆者の工夫に気づくことで,自分の主張が明確な文章を書く活動につなげてい く。そして,主張を支えるための妥当性のある根拠について探り合うことで,文章に説得力を持たせる 視点を獲得していく。
キーワード:国語教育,論説文,根拠,書く
筆者の工夫をグルーピングする
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料理のレシピ
・単語の意味を比べる。「作る」,「便利」
*事実と意見を分ける。
*図や表,グラフを書く。
〔内容・書き方〕
・文末表現。(呼びかけ,問題提起,言い切りの形)
・根拠をしっかり。
・接続する言葉,文のはじめの言葉。例えば,しかし(*
まず,はじめに,したがって,よって,つまり,一つめ)
※・:本教材の工夫,*:他の教材の工夫
ここで,教科書の題材「説得力のある文章を書こう」
を参照し,「頭括式・尾括式・双括式」という構成のし かたについておさえ,今回は特に,根拠を明確にして文 章を書くことを提案した。
(3)効果的な根拠の述べ方を探る(第4時〜5.5時)
筆者は自身の主張を支えるために,どのような根拠を 提示しているのだろうか。班で出し合っていく。
昭子:先生,根拠って筆者の考えとは違うんですか。筆者の 意見みたいなのがたくさん書いてあるので,よくわか らないんですけど。
教師:今,7班から質問が出たんだけど,根拠って何なのか な。筆者の考えや意見とは違うのかな。
京一:証拠みたいなもの。○○だから△△。考えではだめ。
事実。
教師:京一くんの言うように,自分たちが書いた根拠をもう 一度見直して,事実の部分とそうでない部分に分けて みよう。
根拠について,何を本文中から探せばよいのか迷って いる子どもがたくさんおり,筆者の考えや意見も根拠と して挙げている班がほとんどであった。そこで,「事実」
というキーワードをもとに見直すことで,筆者が根拠と して挙げている部分が見えてきたようである。
根拠は次のようにまとまった。
・安易に人間が手を加えることによって,予測できない結 果が生まれる危険性もある。
・環境の違いで遺伝子の働きが変わってくる。生き物は遺 伝子という基本を決めるものを共通にもちながら,一つ 一つが皆違ってできるような仕組みになっている。思い どおりにしようとするなら必ず無理が出てくる。
教師:筆者の根拠については明らかになったけど,筆者 の根拠は妥当性があるかな。考えてみよう。
題材「生き物として生きる」は教科書用に筆者が書き 下ろした作品である。限られた字数の中で主張と根拠を 書くため,内容が限定される。したがって,筆者の文章 に疑問を感じる子どもたちもいるのではないだろうか。
筆者の提示している根拠の妥当性について話し合うこと で,自分たちが根拠を挙げるときの参考にしてほしいと 考えた。
しかし,子どもたちは何を答えてよいのかとまどって いるように見えた。教科書の文章を否定的に読む経験が ないからである。
そこで,前出の題材「説得力のある文章を書こう」に 載せられている「生徒作品」の意見文に挙げられている 根拠の妥当性について考えていくことにした。
教師:この「生徒作品」に書かれてある根拠は妥当性がある かな。
諒太:主張に「自分と違う世代の人」って書かれてあるのに,
根拠は「小さな子供」に限定して書いてある。
昭子:「子育てをするときに役立つ」って書かれてあるけど,
子育てなんて先のことだし,忘れちゃうと思う。
教師:亮太くんの言うように,さまざまな視点から根拠は出 さないといけないし,昭子さんの言うように,多くの 人を納得させられるような根拠じゃないと「説得力の ある文章」とは言えないよね。
そこで,右の3点を妥当性のあ る根拠の条件として提示した。
京一:③って無理なんじゃないで すか。
教師:100%というわけではなく,
反対の意見にもできるだけ 対応できるような根拠だと 説得力が増すよね。
「生き物として生きる」は主張や根拠がはっきりと書 かれているので共感できると感じている子どもが多かっ たが,振り返りを見ると,筆者の主張や根拠に疑問を感 じている子どもも見られた。
筆者の主張は読者に呼びかけて終わっているようなタイプだ ったので探すのは少し難しかった。根拠も疑問で終わっている ので,もっとはっきりしてほしいと思った。(琴菜)
筆者の主張とそれを支える根拠は何かを考えた。主張である
(と思われる)「生き物として生きる生き方を考える必要があ る」を立たせるために,筆者は身近な例を出して分かりやすく していた。(雅人)
(※下線は本人が付けたもの)
この視点を次時に生かしていく。
根拠を探す
!原 有紀
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(4)自分の考えを文章に表す(第5.5時〜9時)
(a)主張したいことは何か
前時に挙げた根拠の条件を念頭に置きながら,教科書 を再度読み直し,説明の不十分な部分や疑問に感じた部 分をもとに,自分の主張を考え,根拠を明確にして作文 を書く学習を設定した。本文を大きく※4つのまとまり に分け,その中から一つを選び,さらにそのまとまりの 中で着目した部分をワークシートに記入していった。
(※①のまとまり:形式段落1〜8,②のまとまり:9
〜12,③のまとまり:13〜15,④のまとまり:16・17)
第6時では,選んだまとまりごとに新しい班を編制し た。まとまりが同じ班の方が主張や根拠が似かよってく るため,話しやすいと考えたからである。
着目した部分をもとに,自分が主張したいこととそれ を支える根拠を考えていく。
生徒:着目した部分と主張が同じでもいいんですか。
教師:いいですよ。
京一:主張だから,「〜なのか。」って疑問系じゃだめなんで すよね。
教師:そうですね。しっかりと「〜である。」という形にし ないと。
筆者の文章を読んで疑問に感じることやさらに調べた いことはあっても,それをもとに自分の主張を考えるこ とはかなり難しいようである。何度も書き直したり,文 末が疑問の形になったりしている子どもが見られた。
そこで,早くできあがっていた茉莉の主張とその根拠 を紹介することにした。
教師:ある人の主張と根拠を(黒板に)書きました。この根 拠で十分か考えてください。主張は「誕生にかかわる 医療技術はいったいどのようなものなのか。」です。
この根拠として,「医療技術が実際にどれぐらい利用 されているか」と,「今後の進歩の予想をデータから 読み取る」です。前の時間に確認した「根拠の条件」
を頭において考えてみてください。
京一:データは信用してもらった方がいいから,例えば名前 で信頼してもらうために,「東大の○○教授が…」と いう方法もあると思います。
昭子:主張に「どのようなものか」って疑問形で書いてある けど,「どのようなものである」って主張するのだか ら,根拠は,どのくらい利用されているか説明するの ではなくて,誕生にかかわる医療技術を例として挙げ て,そこから,実際にどのくらい利用されているかっ てつなげていく方が,主張とのつながりができると思 います。
琴菜:この根拠だと説明ばかりになるので,(医療技術を用 いると)どうなるかとか,いい方向,悪い方向を書く と,いろんな説得ができると思います。
誠司:今の琴菜さんのを,「今後の進歩の予想」につなげて,
今は悪いけど将来的にはどのようによくなるのか書く といいと思います。
昭子が主張の書き方と根拠とのつながりについての発 言をした。私自身,この段階でたくさんの子どもが,文 末を疑問にしたままであったことに気づきながら,もう 一度主張の書き方について確認できなかったことを悔や んだ。結局この時間に修正することはできなかったため,
次時の調査活動の前に,確認することにした。
(b)根拠の妥当性について探り合う
教師:ワークシートに書かれている①〜⑥の根拠の中で重要 なのが,①の「理由」と②の「データ」です。そのこ とを意識しながら班で話し合って,アドバイスし合っ てください。
〔※22班の話し合いの様子〕
(※班ナンバーの10の位が,選んだまとまりを表す)
京一:実験内容も書いた方がいいんじゃない。
彩花:人間の仕組みって変えてないんじゃない。だから,動 物とかについて調べて,人間もそうなるか考えたら。
京一:医療以外の視点で考えたら。
静恵:医療以外って。
美優:植物の遺伝子組み換えとか。
京一:遺伝子組み換えってすごいよな。虫とかつかなくなる んやろ。
彩花:でも,人間への影響ってないんかな。
麻衣:食べたくない。
京一:知らないうちに食べてるかもしれん。表示義務はない らしい。
美優:こわいよね。
静恵のワークシートより
○着目した部分
予測できない結果が生まれる危険性もあるということ になる。→予測できない結果?
主張と根拠に悩む子どもたち
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○主張したいこと
「子供を作る」という考えで,自分の思いどおりにし ようと手を加えると,予測できない結果が生まれてくる 危険性がある。だから,「人間や生き物の仕組みを思い どおりに変えてはいけない。」
○必要な根拠
・人間の生まれてくるまでの仕組みを変えた結果(いいの も悪いのも)
美優:(黒板に貼ってある根拠の条件を指さしながら)あれ にあてはまるようにたくさんのデータが必要だよね。
麻衣:多方向からっていうのが難しそう。
京一のワークシートより
○着目した部分
複雑な体の仕組みがよくわかってないから,安易に人 間が手を加えることによって,予測できない結果が生ま れる危険性もある。思いどおりにしたいという思いには 歯止めをかける必要がある。→違うと思う。
○主張したいこと
安易に手を加えると,予測できない結果が出るが,そ れを恐れていては前に進めない。
○必要な根拠
①人間は,数百年前まで宇宙がどのようなものかわかって いなかった。→月面着陸
②遺伝子を設計図として見るからこそわかることがある。
→遺伝子についての実験
話し合った根拠について,次時でインターネットを使 って調べ学習を予定していた。しかし,これまでインタ ーネットを使って調べても,上手く資料を探せなかった り,自分に都合のいい資料が一つ手に入っただけで満足 したりする様子が見られた。そのため,内閣府が出して いる「クローン技術に関する世論調査結果」を提示し,
同じ資料を用いても,提示のしかたや切り取る部分の違 いでさまざまな視点が生まれ,クローン技術に賛成する 根拠も反対する根拠も得られるということを再確認した。
(c)妥当性のある根拠を探す
前時で確認できなかった主張の書き方について押さえ 直してから,調べ学習に入った。インターネットによる 検索には慣れているものの,思っていたような資料が見 つからなかったり,見つかっても,理解するためには専 門的な知識が必要であったりなど,かなり苦戦している ように見受けられた。前時に同じ班だった友達のところ にいき,資料や情報を共有している様子も見られた。
調べ学習の次の時間は,収集した情報の吟味に入った。
資料に向き合い,主張を支える妥当性のある根拠と言え るのかを考える。前時に引き続き,班で情報を共有した り,分からない言葉を教え合ったりしている。
生徒:作文の字数はどれだけですか。
教師:600〜800字です。
生徒:資料を読んだんですけど,これではやっぱり根拠とし ては不十分です。もう一度コンピュータ室に行きたい
んですけど。
教師:他にももう一度コンピュータ室に行きたいって人い る?
生徒:(半数以上が挙手)
教師:じゃあ,次の時間もコンピュータ室を使えるようにし ます。でも,時間の無駄がないように,調べたいこと やキーワードをしっかりとメモしておくこと。
納得のいく根拠を見つけた上で,文章を書いてほしい と考え,次の時間も調べ学習に使ってもよいこととした。
班での話し合いで決まった根拠そのものを代える子ども も出てきた。植物の遺伝子組み換えが人間に適用される 可能性について調べようとしていた静恵はクローン技術 について調べることにした。
班で決まったこと(根拠)を調べてみましたが,出てこない ものやずれているものもあって,十分に根拠として出せるもの は少なくて,文章を書くには無理だったので,今度はどう調べ ればいいのか考えてみました。初めに調べていたことは自分の 主張につながりにくいものでしたが,調べ直すとちゃんと人と つながりそうなものがありました。(静恵)
インターネットでは十分に資料を探せず,本で調べた 子どももいた。
コンピュータで調べましたが,あまりよい情報がなかったの で,本を使って根拠を挙げました。たくさんある情報の中で,
「最も身近で一回読んだだけでわかるようなものにしよう」と 考えていたので,情報をしぼることはそこまで難しくはありま せんでした。(武史)
今回は根拠を意識させようと考えていた。しかし,子 どもたちがここまで説得力にこだわりを見せることに驚 いた。班で根拠について話し合ったことと「生き物」と いう自分たちにとって身近な問題がテーマだったことが 原因であろう。
(d)説得力のある文章を書く
教師:文章を書きましょう。ワークシートを参考にしてくだ さい。特に主張と根拠を意識しましょう。
!原 有紀
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限られた時間と限られた字数の中で,自分の主張と根 拠を書くことに苦労したようである。字数の指定はした ものの,書ききれずに字数を超えたり,説明を省いたり する子どもも見られた。また,根拠が自分の中で上手く まとまらず,同じようなテーマを選んだ友達にアドバイ スを求める姿も見られた。
(5)お互いの文章を評価し合い,単元を振り返る
(第10時)
教師:いつもの生活班で読み合いをしましょう。ここでのポ イントも主張と根拠です。評価も忘れずにしてくださ い。
〔京一の作文に対する班員の評価〕
分かりやすい。主張もしっかりしてるし,根拠もちゃんとし てる。文末が「〜である」のようになっている。
〔静恵の作文に対する班員の評価〕
主張が分かりやすい。クローンの作り方の部分はなくてもい いかも。まとめがちゃんと書けてる。
子どもたちの作文の中には,主張と根拠がつながって いないものや,資料が思うように集まらなかったため,
自分の考えのみを根拠として提示しているものも見られ た。書いているときは気づかなかった,自身の作文のず れを,友達の作文を読み,評価し合うことによって感じ 取ることができたのである。
京一は自身の作文について次のように振り返っている。
ぼくは筆者に反対の意見が多く,反対の資料をたくさん集め ました。それは結構難しい内容のもの(「ヒトゲノム」について)
だったので,自分が一番理解しやすい青バラを例に出しました。
また,文末を決めつけるようなものにし,説得力を持たせるも
のにしました。
また,奈津の振り返りからは,「根拠」というものに ついて改めて理解した様子がうかがえる。
初めに,筆者の主張を見つけ,その工夫を探したとき,私た ちは工夫の中の一つに「根拠」を挙げました。でも,そのとき は,全然根拠のことなど分かっていなくて,ただ書いてみたと いう感じでした。しかし,その次の授業から根拠についての学 習が始まり,根拠とは主張を明確にし,その主張に説得力を持 たせるものだということが分かりました。自分で根拠を調べ,
説得力をもたせるのは,すごく大変なことでした。
作文のレベルに差はあるものの,一人一人が主張と根 拠を意識して書くことができたため,次の書く活動につ ながっていくのではないだろうか。
2 省察
(1)核となるカリキュラムを意識して
国語科における核となるカリキュラムは「国語研究 録」である。国語研究録を書くこという学習は,将来自 分の考えを論理的に文章に表すことにつながる。今回の 授業後の振り返りにも次のような記述が見られる。
説得力のある文章を書く力というのは,社会に出てからも必 ず必要になってくると思います。だから,これからは,根拠に 基づいた説得力のある文章を書いていくように心がけていきた いと思います。(奈津)
この授業で感じたことを,これから書くレポートや※卒研な どに活かしていきたい。(彩子)
(※卒 業 研 究 の 略:選 択 の 時 間 に,3年 生 が 各 教 科 に 分 か れ,1年間を通して各自が設定したテーマについて研究し,レ ポートにまとめる学習)
今回思うような文章が書けなかった子どもの振り返り 京一の作文
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には,「次はしっかり書きたい。」と書かれてあった。国 語に限らず,学校生活においてさまざまな場面で書くこ とが求められているからである。
しかし,私自身国語研究録の指導に2年間取り組んで みて,子どもたちが持っている書く力に頼りすぎている のではないかと感じるようになった。そこで,論理的に 書くことを意識した学習ができないかと考え,本単元を 設定した。
附属中学校に赴任してからの2年間,説明的な文章の 学習は,教育実習生に担当してもらってきた。もちろん,
授業は教育実習生と共に創り上げていくが,「国語研究 録」とのつながりや説明的な文章の学習における3年間 の繰り上がりを意識して授業を構想してこなかった。
それを,今回いきなり3年生で実践しようと試みた。
しかし,やはり無理があった。今回は主張と根拠を明確 にすることを目標に設定したが,それ以外にも付けたい 力や気づかせたいことがたくさんあり,私自身の見通し が甘かった。また,実際に3年生の子どもたちが論理的 に書くことについて,どれぐらい学んでいるのかという 下調べも不十分であった。
京一の作文を見ると,はじめに考えていた主張したい こととはずいぶん変わってしまっている。グループでの 話し合いや調べ学習で情報が十分に得られず,根拠とし て提示できそうなものから主張を考えたようである。は じめの思いとは変わってしまったが,自身の作文には満 足しているようだ。しかし,根拠の妥当性や文章を省い た点など改善すべき部分がまだある。
論理的に書く力をどのように付けていくか,小学校で の学びをふまえた上で,3年間の学びの繰り上がりを意識 した単元構想について,今後研究していきたい。
(2)効果的に学ぶために
今回は中村桂子さんの「生き物として生きる」を扱っ た。しかし,この文章は論理の展開を学ばせるには適し た題材と言えるのかと助言者の先生に指摘された。正直,
考えてもみなかった。国語研究録を意識して,論説文を 読む学習を書く活動につなげたいという思いだけで授業 を構想し,題材の吟味を怠った。また,班での話し合い 活動を何回か取り入れたが,第6時では話し合う視点が 明確でないというご指摘を受けた。さらに,同じまとま りを選んだ者同士で新しい班を編制したが,話し合いが 上手く進まない班もみられたため,筆者の考えに賛成か 反対かという立場で班を編制してもよかったのではない かというアドバイスもいただいた。
当たり前のことだが,効果的に学ぶためには,学ばせ たいポイントをしぼることはもちろん,題材の吟味,協 働の場面の設定,グループ作りと考える視点はさまざま であることを改めて感じた。
(3)子どもの学びを見取るために
前述したように,今回の実践は,まず,本単元での見 取りの前に,説明的な文章の学習における,これまでの 子どもたちの学びについての見取りが甘かった。さらに は,単元を越えた学びの見取りの視点にも欠けていた。
では,本単元での見取りはどうであったのか。筆者の 工夫や根拠を読み取る学習では,班での話し合いの様子 が子どもたち自身にも一目で分かるように台紙に記録を させた。特に根拠を探る学習の際には,その記録用紙か ら,事実と意見が混乱している様子を見て取ることがで きた。また,実際に根拠を明らかにして自分の主張を書 く場面では,ワークシートを準備し,何に着目し,どの ような主張を考え,そのためにどのような根拠を探そう としているのかについて読み取ることができた。しかし,
それで学びを見取ったといえるのだろうか。学びを見取 り,それを効果的に次の学習や子どもの学びにつなげて こそ,学びを見取ると言えると思う。本実践第6時では 昭子の発言を活かし,全体に広げることができなかった。
また,自分の考えた根拠について妥当性があるかを話し 合っていたとき,光夫が妥当性の有無ではなく,生き物 に対する考え方そのものを班員から責められていること に気づけなかった。責めている方に逆に,なぜあなたた ちの考えが正しいのかを投げかけることができれば,責 めている方の根拠も,より説得力を持たせられただろう。
そういう点で学びを見取り,つなげることを難しさを再 認識することができた。
子どもの学びを見取るために,単元の構想をしっかり と持ち,どのように子どもの学びに寄りそい,つなげた り返したりするかを今後も考えていきたい。
参考文献
森田信義 (1989) 筆者の工夫を評価する説明的文章 の指導 明治図書
吉岡友治 (2006) だまされない〈議論力〉 講談社 河野庸介 (2006) 中学校「読解力」を鍛える説明文
指導の新展開 明治図書
福井大学教育地域科学部附属中学校 (2007) 研究紀 要第36号
The Students Investigate the Appropriate Basis to make Their Compositions More Persuasive
−Set Reading and Understanding of Editorials on the Writing Activities(Japanese Language : the Third Grade)−
Yuki YANAGIHARA
Key words :Japanese Language,Editorials,Basis,Writing
!原 有紀
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