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三里浜砂丘(福井市)の植生について

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(1)

三里浜砂丘(福井市)の植生について

著者 横山 俊一

雑誌名 福井大学地域環境研究教育センター研究紀要 「日

本海地域の自然と環境」

巻 2

ページ 9‑17

発行年 1995‑09‑01

URL http://hdl.handle.net/10098/7843

(2)

福井大学積雪研究室研究紀要

「日海地域の自然と環境」

No.2 , 9  -17 , 1 9 9 5  

三里浜砂丘(福井市)の植生について

On C o a s t a l  V e g i t a t i o n  o f  Sanrihama (Fukui C i t y )  

横山俊一*

(福井大学教育学部)

.はじめに

三里浜砂丘は丹生山地の北端浜住から九頭龍河口左岸まで、の約 12km にわたって形成された海岸砂丘 である

三里浜砂丘はかなりの長い間自然条件下におかれていたことから北陸地方の中でも大規模な 砂丘植生が形成きれているところとして知られている。

しかし、三里浜海岸の砂丘地の自然環境は、昭和 46年に始まった福井臨海工業地帯の造成及び企業 導入に伴い大きく変えられてきている。さらに、福井市は平成 4 年に海浜植生で唯一自然環境が維持 きれてきた三里浜の西部海岸に、国道305号線に平行して、福井市免鳥町から西畑町まで、のほぼ1.2km の長さに、鷹巣海岸道路(シーサイドロード)を建設した。これで三里浜全域が人工的に改変された ことになる。この鷹巣海岸道路に沿って海側に砂丘草原がひろがってており(写真 1 )、これらへの影 響が心配きれるところである。また、防風、防砂、防塩の役割を果たしているマ、ソ林への影響が心配

されるところである。

本報告は、鷹巣海岸道路の建設以後の海岸砂丘植生を調べたものである。

2. 調査方法

(1) 調査対象地域

三里浜の西端に位置する福井市西畑町から免鳥町にかけてのシーサイドロード沿いに広がる主に砂 丘草原を対象とした(図 1 )

(2) 群落の調査

砂丘草原全体を見わたすことにより、その相観からいくつかの群落に分けられる。群落の調査を行 う際、群落内のある地点を抽出して、そこに方形枠を置き調査を行フ。 Braun-Blanquet法により被 度、群度の調査を行う(本報告では被度のみをあつかう)。平均被度は被度の合計値をその群落内に設 けた枠数で割った値である。頻度は全被度調査値数に対する同一植物の出てきた割合をいう。

(3) ベルトトランセクト嗣査

海から内陸部にかけての植生配分をより詳細に把握するために、砂丘草原の代表的な地点(図 2 の X 線)をえらぴ、幅 1m 、長き 40m のベルトトランセクトを設定して、 1m X1m ごとに植生調査を行った。

3. 砂丘植生

(1)主な群落とその特徴

三里浜砂丘における主な植物の各種群落構造は次のようである。

(キーワード:海浜植物、環境保全、砂丘植生、帯状分布)

• S h u n i c h i  Y  okoyama 

F a c u l t y  o f  Education , F u k u i  U n i v e r s i t y  

(3)

横山俊一

S也."‘IftT

。 lon 2nll 附

図 l 調査地域近辺の地図

a. コウボウムギーハマヒルガオ群落

本群落は、常時塩分を含む海風を受け、砂の移動の最も激しい所に生育する先駆砂丘植物群落で、

砂丘草原の前面に 20m

150m の範囲で群落を形成している。その構成種はコウボウムギ(写真 2 )が 最優占し、その他にハマヒルガオ、ハマニガナ、オニシパが混成する。この群落の構成種は砂の移動 によって埋もれたり、掘り出きれたりしても生育活動ができるような広〈深い根茎を持っている。一 時は海水浴客などによって踏み荒らされて減少していたが、踏み込みが制限されたことから今は回復

しつつある。

平均被度 頻度 コウボウムギ

ハマヒル yゲオ

3 . 5   2 . 0  

b. ハマグルマーハマニガナ群落

1 0 0   8 0  

ハマニガナ オニシパ

平均被度 頻度

1 . 8  0 . 4  

8 0   1 0  

この群落は砂丘草原の前面の砂の移動の激しいところから、移動のやや弱まったところにかけて(不 安定帯、半安定帯)分布する。ハマグ‘ルマ(写真 3) 、ハマニガナが優占しハマコ。ウ、ウンラン、ハマ

ヒルガオ、ハマボウフ(写真 4 )を含む。

平均被度 頻度 平均被度 頻度

ハマグルマ

3.0  1 0 0  

ハマゴウ

1 . 0  8 0  

ハマニガナ

2 . 0   1 0 0  

カワラヨモギ

0 . 2   4 0  

ハマヒル方、オ

1 . 5  8 0  

ハマボウフ

0 . 5   8 0  

ウンラン

0.5  6 0  

その他 スミレ、コマツナギ

C. カワラヨモギーハマゴウ群落

砂の移動が少し弱まったところに本群落が広がる。本群落は砂正草原の中で最も発達している。本 群落の構成種は、樹木のハマゴウと中茎草本のカワラヨモギが高常在度、高優占度で生育し、ハマニ yゲナ、ハマグルマ、ハマボウフ、ウンランなどが生育する。

本群落の中には、本県では希少種となっているハマウツボ(写真 5 )が生育する。ハマウツボは寄 生植物で、カワラヨモギに寄生して生活をしている。今回の調査で、本群落の中に 10m

100m の範囲

(4)

三里浜砂丘(福井市)の植生について

にわたってかなりの密度 (5mX5m の中に約 40本)で生育しているのが確認された。又同じ寄生植 物である、ハマネナシカズラがハマゴウに寄生しているのがみられる。

平均被度 頻度 平均被度 頻度

ハマゴウ

3 . 7   1 0 0  

ハマボウフ

0 . 2   3 0  

カワラヨモギ

3 . 0   1 0 0  

スミレ

0 . 5   7 0  

マヒルガオ

1 . 5  8 0  

ハマベノギク

0 . 5   3 0  

ハマニ yゲナ

0 . 8   7 0  

ウンラン

0 . 3   8 0  

ハマグルマ

0 . 3   5 0  

ハマウツボ

0 . 2   4 0  

その他 コマツナギ、ハマダイコン、アレチマ、ソヨイグサ、ハマネナシカズラ、クズ

d. チガヤーハマゴウ群落

砂丘斜面の最後方の最も高くなったところに帯状に本群落は形成している(写真 6) 。ここは砂の移 動は弱まり、風衝の強い植物が優占する。本群落はチガヤ、ハマゴウが高常在度かつ高優占度で生育 するほか、カワラヨモギ、アレチマツヨイグサ、ハマハタザオ、ハマヒルガオ、などが生育する。ハ マゴウは、本砂丘地では砂丘植物が生育する前面から後背地にかけて広く分布する。前面に生育する ハマゴウの樹形は背丈が低く枝を地に這わせて伸ぴ、後方に行くにしたがって背丈が高くなる。腐植 の進んで、いるところではハマゴウの低木林を形成する。ハマゴウは地上部に比べて地下部が大きいこ

とである。この根によって砂の移動、砂丘の崩壊が防止されている。

平均被度 頻度 平均被度 頻度

チガヤ

4.3  1 0 0  

ハマハタザオ

0 . 7   7 0  

ハマゴウ

3 . 4   1 0 0  

ハマヒル方、オ

0 . 5   7 0  

カワラヨモギ

1 . 3  8 0  

カワラマツノて

0 . 3   4 0  

アレチマツヨイグサ

1 . 0  8 0  

コノ〈ンソウ

0 . 5   2 0  

その他 スミレ、スイパ、コマツナギ、ハマベノギク(写真 7) 、ハマエンドウ、ハマボウフ

e. 力ワラマツバーハマゴウ群落

西畑町側の砂丘後背地のマツ林前の風の最も弱まったところに中茎のカワラマ、ソパが優占する植分 がみられる(写真 8 )。

平均被度 頻度 平均被度 頻度

カワラマツノて

4 . 5   1 0 0  

ハマエンドウ

0 . 5   5 0  

ハマゴウ

2.0  1 0 0  

チヌゲヤ

0 . 1   3 0  

ニンジン

0 . 5   3 0  

その他ハマハタザオ、ハマヒルガオ、カワラヨモギ、ナワシロイチゴ、ムシトリナデシコ

.ハマナス群落

三里浜の後背地の砂丘に約 50m2の面積でソj、群落を形成している(写真 9 )。かつてはハマナスの生育 地はオフロードのコースとなって荒らされ、ハマナスは絶滅の危機にさらされていたが、自動車の乗

り入れが制限されてから少しずつで、あるが回復しつつある。

ハマナス群落の構成種は極めて単純で、ある。ハマナスが最優占する他、帰化種のコパンソウとカワ

(5)

横山俊一

ラマツバ、ハマハタザオ、ハマヒル方

、オを含む。

ハマナスは本県の海岸に僅かに分散するだけで、本地域に小面積ながら残っていることは極めて貴 重である。 ハマナスの分布は太平洋側では関東地方の北部から北におよび、日本海側では鳥取県から 北、及び北海道から、千島、カラフトにおよんでいる。 花期は本県では 5 月ころで、果実が赤く熟す と食べることができるので別名ノ\マナシともよよ。ハマナスの名はハマナシの東北弁のなまりからき たものである。

平均被度 頻度 平均被度 頻度

ハマナス

4 . 0   1 0 0  

ハマヒルズf オ

0 . 7   5 0  

コノてンソウ

2 . 0   1 0 0  

ハマハタザオ

0 . 1   2 0  

カワラマツノ〈

0 . 5   5 0  

g. 

クロマツヰ本

新設された道路は海側よりにクロマツ林を縦断するように通っている。道路の建設によってマツ林

内への乾燥が心配きれるところであるが、現植生からは今のところ、その心配はみられない。道路に

接した林縁部にはススキ、ヨモギなどの草本植物が生育してソデ群落が発達してきている。林内は幾

分光が入るようになったことからクロマツに絡んで、成長しているナツズタが目立つ(写真10) 。キャ

←海

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図 2 ベルトトランセクト調査にみる植生 (数字は Braun-Blanquet法による被度)

(6)

三里浜砂丘(福井市)の植生について

ンプ場の廃止によってマツ林内の踏圧による被害の心配はなくなった。

本地域のマ、ソ林は、林床に生育する植物からススキ型、ネザサ型に分けられる。このクロマ、ソ林は 樹高は 10-15m で、樹径10-20cm、樹齢30年ぐらいの若令と考えられる。密度としては 10m' あたり 20 本程度である。

(2) 帯状分布

海岸は、内陸の平地に比べて温暖であっても紫外規が強〈、塩分の影響を受けるため植物が生育す るには厳しい環境である。また絶えず風によって砂が動いているところでもある。砂丘ではこれらの 厳しい環境に適した植物が生育するようになる。海浜砂丘植物の分布は、砂の移動の影響によって決

まる。砂丘の形状によって一定ではないが帯状分布を示す。

図 2 は、三里浜砂丘の汀線側から内陸に向かつて帯状に分布する砂丘植物群落について 1 m 幅のベ ルトトランセクト法による分析調査を行ったものである。砂丘草原の前面の砂の移動の最も激しいと ころにはコウボウムギ、ハマヒル yゲオ、ハマニガナなどが生育し、コウボウムギーハマヒル方、オ群落 を形成する(不安定性砂丘地群落帯)。砂の移動が少し弱まる砂丘草原傾斜地の下端からは、ハマヒル ガオ、ハマニ方、ナ、ハマグルマ、ハマゴウ、カワラヨモギ等生育するようになり、ハマグルマーハマ ニかナ群落、カワラヨモギーハマゴウ群落を形成する(半安定性砂丘地群落帯)。後方にいくにしたが って草丈も高くなる。

砂丘草原傾斜地の最後方(安定性砂丘地群落帯)にはチ方ヤ、ハマゴウが優占となるチカ、、ヤーハマ コゃウ群落が成立する。この群落帯域は砂の移動が弱まり、風衝の強い植物が優占する。この辺りにな ると茎も高くなる。砂丘草原のその後方にはマツ林が広がる。

4. おわり(一環境保全一)

今回の調査対象となった地域には安定した砂丘草原が広がっており、多様な植物群落が確認された。

また、これらの各種群落は汀線から内陸に向かつて帯状に分布していることが確認された。

道路の建設によって砂丘草原への影響が心配されたが、いまのところその影響はみられない。荒地 の公園化、海水浴のための浜茶屋の制限、キャンプ場の廃止、砂丘草原への自動車の乗り入れの制限、

人の踏み込みの制限など砂丘草原維持への積極的な保護措置によって植物の生育環境が改善きれつつ ある。たとえば、本県の稀少種であるハマナスは、かつてはこの生育地はオフロードのコースとなっ て絶滅が心配きれたが自動車の乗り入れができなくなってから生育面積を広げつつある。また同じく 稀少種であるハマウツボは今回の調査でかなりの本数が生育していることが確認できた。コウボウム

ギは砂丘草原の前面に小さな群落であるがしっかりと生活の場を築いている。

しかし、海岸砂丘は特殊な環境だから少し人工の手が加えられるだけで海岸線の自然植生は大きな 影響を受けること懸念きれることから、今後心しなければならない問題も抱えている。

道路の建設によって新たな植物が侵入して生態系に影響を及ぼす心配もある。今まで目立たなかっ た植物が繁茂してきている。道路の建設によって目立つようになった植物としては道路沿いにナガミ

ヒナゲシ、ハマヒエカゃエリがあげられる。また、野生化したニンジン(ノラニンジン)が道路脇に繁 茂してきている(写真11) 。コパンソウが繁茂してきている。

マツの樹勢が弱まるなどによってマックイムシなどによるマ、ソ枯れが生じる心配があり、マツ枯れ の防止に努める必要がある。砂丘草原には、まだ自動車の乗り入れた跡がみられることから、砂丘草 原への自動車の乗り入れの禁止を図る必要がある。また、むやみな砂丘草原への人の踏み込みを禁止 する必要がある。

全体的にはシーサイドロード建設による砂丘植生への影響は今のところ大きな変化は認められなか ったが、今後とも監視の目を向けていく必要がある。

(7)

横山俊一

参考文献

福井市. 1991: 福井市鷹巣海岸道路建設に伴う自然環境影響調査報告書.

8 4 ‑ 1 1 4  

宮脇 昭. 1985: 日本の植生.学研.

p p . 5 3 5 .  

宮脇 昭・奥田重俊. 1990: 日本植物群落図説.至文堂.

p p . 7 8 4 .  

鈴木時夫. 1985: 植物社会学.朝倉.

p p . 3 5 7 .  

(8)

写真

1

三里浜砂丘の草原(西畑町側から免鳥町側を写す)写真

2

砂丘前線に分布するコウボウムギ 写真

3

ハマグルマ(またはネコノシタ)写真

4

ハマポウフ 川畑策号同(猷ヰ卦)

3

菌降打。τ

(9)

写真

5

カワラヨモギに寄生して生活するハマウツボ

写真

6

砂丘草原の後背地に分布するチガヤーハマゴウ群落 写真

7

ハマぺノギク

戸幸

(10)

写真

8

砂丘草原の後背地に介布する力ワラマツバーハマゴウ群落写真

9

福井県では希少種となっているハマナス 写真

10

マツ林写真

11

道路脇に繁茂している野生化したニンジン(ノラニンジン) 畑満期VH附(猷ヰ掛)

3

議除打。τ

参照

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