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74 J リーグのスタジアム集客率からみた入場者数決定要因 ンス 3) において,Jリーグに対する国民の関心が落ち込んでいることに対して危機感を示すと共に, 新規ファンの獲得が必要であると述べている. この現状を打開するには,Jリーグのクラブがホームゲームにおける入場者数を増加させることに尽力しなけ

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上であると報告されている(Jリーグ観戦者 調査サマリーレポート20131)).その一方で, J.LEAGUE Data Site2)の集計によれば,1年 間の総入場者数は減少傾向にある.またチェア マンは,2014年Jリーグキックオフカンファレ 1.は じ め に  1993年に開幕したJリーグは,観戦歴が10 年を超えるファンが全体の40%以上を占めて おり,クラブによっては,その割合が7割以  †原稿受付 2015年8月27日  原稿受諾 2016年1月12日  *同志社大学大学院 〒610-0394 京都府京田辺市多々羅都谷1-3 **同志社大学 〒610-0394 京都府京田辺市多々羅都谷1-3

 *Graduate School of Doshisha University, 1-3, Tatara Miyakodani, Kyotanabe, Kyoto, Japan (610-0394) **Doshisha University, 1-3, Tatara Miyakodani, Kyotanabe, Kyoto, Japan (610-0394)

Jリーグのスタジアム集客率からみた入場者数の決定要因:

2013年シーズン試合記録の分析

辻   和 真

  二 宮 浩 彰

**

Determinants of Fan Attendance at J. League Matches:

An Analysis Based on 2013 Average Attendance Rate Data

Kazuma TSUJI

and Hiroaki NINOMIYA

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Abstract

  The J.League, which began in 1993, has had some problems with regard to stagnation of the number of fans attending matches and their increasing average age, which are awaiting solution. To gain new fans and overcome the present situation, first it is essential that the de-terminants of fan visits to stadiums be understood. The purpose of this study was to clarify the factors affecting attendance at J.League matches, using the 2013 data based on the average at-tendance rate. In this analysis, we roughly divided the independent variables into five: econom-ic variables, stadium variables, condition of club’s record variables, attractiveness of match variables, and environmental variables. The dependent variable was the number of fans attend-ing a match. Furthermore, we divided the clubs into high average attendance rate and low aver-age attendance rate groups based on their averaver-age attendance rates to analyze the basis of each club’s operating conditions. Our multiple regression analysis showed that the number of fans attending a match depends on various factors, such as population, day of the week of game, or opening game. Moreover, these determinants differ with the average filling rate between the high and low rate groups, suggesting that the determinants of the number of fans attending a match depends on the average attendance rate. This study indicates that the J.League needs to take innovative steps to gain new fans and increase fan attendance. This is a mission not for the J.League alone, but for every J.Club. We hope that the factors determining fan attendance at the J.League will soon be clarified and steps will be taken to develop the league further.

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ンス3)において,Jリーグに対する国民の関心 が落ち込んでいることに対して危機感を示すと 共に,新規ファンの獲得が必要であると述べて いる.この現状を打開するには,Jリーグのク ラブがホームゲームにおける入場者数を増加さ せることに尽力しなければならない.そのため には,ファンがスタジアムに訪れる要因がどの ようなものかを知る必要がある.そこで本研究 では,Jリーグの試合に訪れるファンの数に影 響を及ぼす要因について明らかにすることを目 的とする.まずは,プロサッカーリーグ観戦の 需要に焦点を当てた先行研究をレビューし,入 場者数の決定要因を分析するための研究方法に ついて検討する.そして,Jリーグに関する基 礎資料を用いてデータの分析を行い,入場者数 の増加を目指すにはどのようにすればよいのか という観点から考察を行う. 2.先 行 研 究 2.1 入場者数の決定要因の検討  先行研究のレビューにおいては,Jリーグ の入場者数に影響を及ぼす変数を設定するた めに,プロサッカーリーグにおける入場者数 の決定要因について検討する.Hart et al.4)は, 1970年代のイングランドにおけるプロサッカー リーグを対象として,入場者数の決定要因を独 立変数とし,試合の入場者数を従属変数とした 回帰分析を行った.その結果から,アウェイク ラブのファンの移動距離やクラブが所在する地 域の人口が入場者数に影響を及ぼすことが明ら かにされている.Hart et al.4)と同様に,イン グランドにおけるプロサッカーリーグを対象 としたForrest and Simmons5)の研究において は,リーグにおけるカテゴリーの違いに着目 した研究結果が報告されている.Division1, Division2,Division3それぞれのカテゴリー における回帰分析の結果から,ダービーや試合 開催曜日が3カテゴリー共通の決定要因になっ ていることを突き止めた.スペインのプロサッ カーリーグを研究対象としたGarcía and Rodrí-guez6)は,試合観戦チケットにおける価格弾力 性に着目し,独立変数としてチケット価格を設 定した.そのうえで,試合の入場者数を従属変 数とした分析の結果から,チケット価格とテレ ビ中継の有無が入場者数に影響を及ぼすと報告 している.また,プロサッカーリーグ以外でも, アメリカの大学サッカーを対象としたTimothy and Paul7)は,天候やクラブの勝率が入場者数 の決定要因になることを明らかにしている.  一方,Jリーグの観戦需要についての研究で は,河合・平田8)がJリーグの入場者数の決定 要因を分析し,海外の先行研究で示された要因 に加えてJリーグ特有の要因があることを明ら かにしている.例えば,ホームタウンにプロ野 球チームが存在するクラブで負の影響がみられ たことや,4月,10月といった日本国民の恒例 行事(入学式,入社式,運動会など)が行われ る時期には,入場者数が減少することを報告し, チケット価格の引き下げや試合開催日程の変更 などが効果的であると指摘している.鈴木・平 田9)は,Jリーグにおける入場者数の決定要因 を明らかにするうえでプロ野球チームの存在に 着目し,プロ野球チームの新規フランチャイズ 及びJリーグの試合日との重複を変数に加えて 分析を行っている.その結果から,プロ野球の 試合日程を考慮したうえで,Jリーグの試合日 程を調整する必要があると指摘している. 2.2 スタジアム集客率の検討  一般的に,クラブの規模や集客状況を測る指 標としては,スタジアムの入場者数が評価され ている.これは,スタジアムにおけるファンの 入場料収入が,プロスポーツクラブの経営に とって欠かすことのできない収入源になるため である.しかし,クラブによって使用するスタ ジアムやその収容人数が異なるため,入場者数 だけでクラブの集客状況を評価することは難し いと考えられる.  福田10)は,入場者数がクラブの人気を示すバ ロメーターであるとしているのに加え,ファン で溢れるスタジアムの雰囲気にこそ価値があ り,それによって付随する放映権やスポンサー

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権も価値が上昇すると述べている.そのうえで, Jクラブのスタジアムにおける集客率に着目し てJリーグの現状と課題に言及している.スタ ジアムの集客率は,試合の入場者数をスタジア ムの収容人数で割ることで求めており,入場者 数だけでは評価することができない,スタジア ムの収容人数の違いを踏まえた研究を可能にし ている.その結果として,集客率とクラブの順 位や収容人数,アクセス時間との関係を明らか にしている.また今後の課題として,Jクラブ がそのコンテンツ価値を高めるためには,試合 日のスタジアムにおける入場者数だけでなく, 集客率を高める必要があるとしている.そのた めには,ファンに対して試合当日だけでなく, 試合前の興味喚起や試合後のフォローを行うべ きだと述べている.Jクラブにとって,ファン のロイヤルティを高め,次なる観戦者を獲得, 維持することが,入場者数並びにスタジアム集 客率を増加させることにつながるのである.ま た出口11)は,入場者数を用いた観戦需要研究は, スタジアムの収容人数の違いによる影響を受け るとしている.またクラブの経営を考慮しても, スタジアムの集客率に関わらず,チケット収入 が多く,入場者数が多い方が短期的な収益はあ がるが,満員のスタジアムにこそ価値があり, それこそが長期的な収益につながると述べてい る.  要するに,収容人数が少ないスタジアムを使 用するクラブは,集客に成功しても収容人数以 上の入場者は動員できないという限界がある. 一方で,収容人数が多いスタジアムを使用する クラブは,集客がうまくいかず空席が多くても, 入場者数の多さから集客に成功しているように みえてしまう.つまり,スタジアムの収容人数 を考慮せずに入場者数だけを評価すると,クラ ブの集客状況を読み間違えてしまう可能性があ る.したがって,収容人数の違いを踏まえて分 析できるスタジアムの集客率は,クラブの集客 状況を評価するのに有用な変数であるといえ る.以上のことから,満員のスタジアムには付 加価値があり,プロスポーツクラブの収入源と なる重要な要素であるとしたうえで,今後の満 席率を変数とした観戦需要研究を行うための基 礎とすることを目的として,より正確に満席率 を算出している.  スタジアムの集客率に言及した種子田12)は, 試合開始72時間前までにチケットが完売してい ない場合,スタジアムから75マイル以内の地域 で試合のライブ放映を規制するというNFLの ブラックアウト・ルールを取り上げ,スタジア ムが満員の観客で埋め尽くされることで,そ の価値を高めるとしている.また上條13)も同様 にNFLの事例を取り上げているほか,ドイツ・ ブンデスリーガに所属するバイエル・レバー クーゼンが,スタジアムを常にファンで埋め尽 くすため意図的にスタジアムの規模を抑えた例 を挙げ,満員のスタジアムが醸し出す熱狂的な 雰囲気が収入の源泉になると述べている.これ らのことから本研究では,満員のスタジアムが クラブにとって集客の成功を示すものであると 考え,スタジアム集客率に着目することにした. 3.研 究 の 目 的  以上のように,先行研究を踏まえて入場者数 の決定要因の検討,及びスタジアム集客率の検 討を行ったところ,プロスポーツクラブの試合 における入場者数に影響を及ぼす様々な要因が 分析されてきたが,クラブの規模や集客状況を 考慮した研究は行われていないことが分かっ た.そこで本研究では,スタジアム集客率に着 目することにより,クラブの集客状況を考慮し たうえで,Jリーグの試合に訪れるファンの数 に影響を及ぼす要因について明らかにすること を目的とする. 4.変 数 の 設 定  本研究における変数の設定では,「入場者数 に影響を及ぼす要因」を独立変数とし,「入場 者数」を従属変数として分析を行う.独立変数 については,プロサッカーリーグにおける入場 者数の決定要因を分析した先行研究をレビュー することによって抽出することにした.表1に

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チケット価格のように数千,数万単位の値は, 分析に用いるうえで値が大きく桁数も多い.そ のため本研究の計算においては,García and Rodríguez6)や河合・平田8)の研究と同様に対 数変換を行うことで,大きく散らばる値を整理 し,分析に適した値にしたものを「チケット 価格」とした.対数変換の作業にあたっては, IBM SPSS Statistics 22の変数計算ツールに対 象となる項目の値を入力し,対数変換の計算を 行った.なお,以下における対数変換の作業は, 全てこの手法を用いている. 4. 1. 2 ホームタウンの人口  Hart et al.4)は,入場者数に影響を及ぼす経 済的要因の1つとして地域の人口を用いた研究 を行っており,地域の人口が入場者数に正の影 響を及ぼすことが明らかにされている.また Timothy and Paul7)の研究においても,入場 者数の決定要因としてホームタウンの人口が用 いられている.本研究におけるホームタウンの 人口は,Jリーグ公式サイト17)に登録されてい るクラブのホームタウンの情報から設定する. 分析に用いるデータは,総務省統計局のオフィ シャルホームページ18)から収集し,各クラブの ホームタウンの人口を合計して対数変換したも のを「ホームタウンの人口」とした. 4. 1. 3 都道府県の平均年収

 García and Rodríguez6)は,入場者数に影響 を及ぼす要因の1つとしてホームタウンの収入 を指摘している.河合・平田8)は,ホームタウ ンの住民の世帯所得が入場者数に負の影響を与 えることを明らかにしている.本研究において は,Jリーグの試合観戦に訪れるファンの中に は,ホームタウン以外の市区町村から来場して は,Jリーグの入場者数に影響を及ぼす可能性 がある独立変数を,それらの特性によって5つ の要因に分類して列挙している.以下において, 本研究における変数を設定するため,「経済的 要因」,「スタジアム要因」,「成績要因」,「魅力 要因」,「環境要因」の5つの要因について,先 行研究を踏まえて検討していく. 4.1 経済的要因の設定 4. 1. 1 チケット価格

 Borland and Macdonald14)は,プロスポーツ の観戦需要に関するレビュー研究において,チ ケット価格が入場者数に影響を及ぼすと述べて いる.またGarcía and Rodríguez6)は,入場者 数を決定する経済的な要因としてチケット価格 を用いているほか,Timothy and Paul7)や河 合・平田8)も同様に,チケット価格が入場者数 に影響を及ぼすとしている.本研究においては, 全てのクラブのオフィシャルホームページから チケット価格についての情報を収集し,García and Rodríguez6)や河合・平田8)の研究に倣い, 複数ある券種のうち,最低価格帯の金額を使用 する.これは,最低価格帯のチケットは販売枚 数が最も多く,「サポーター」と呼ばれる最も 熱心なファンが主に購入している券種であるほ か,ファンがチケットを購入する際に金銭的な 負担が少ないと考えられるからである.なお, ここでいう「サポーター」とは,日本サッカー 協会オフィシャルホームページ15)の『JFA・J リーグ サッカー用語集』16)に記載されている, 「特定のクラブを熱心に応援するファン」のこ とである.また,Jクラブのチケット価格は, どのクラブでも2,000円前後に設定されている. 表1 先行研究から抽出したJリーグの入場者数に影響を及ぼす可能性のある変数 経済的要因 スタジアム要因 成績要因 魅力要因 環境要因 チケット価格 屋根の有無 昨年度からの成績 地元出身選手の数 天候 ホームタウンの人口 収容人数 試合前の順位 直近の日本代表戦 試合開催日 都道府県の平均年収 専用スタジアム 直近試合の結果 対戦相手,日本代表選手 キックオフ時間 クラブの営業収益 最寄り駅からの所要時間 連勝数 ダービー テレビ中継の有無 シャトルバスの有無 連敗数 開幕戦・最終戦

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4. 1. 4 クラブの営業収益  福原・原田19)は,Jクラブの順位と収入の関 係を明らかにしており,クラブの営業収入は経 営の安定化を保証する最大の要因であると述 べている.また福原20)がクラブの勝率と営業収 益の関係を明らかにしているほか,García and Rodríguez6)の研究においても,クラブの予算 が入場者数に関与すると示唆されている.本研 究では,Jリーグ公式サイト17)にて公開されて いる2013年シーズンの「Jクラブ個別経営情報 開示資料」21)から,クラブの営業収益を変数と して設定する.各クラブの営業収益を対数変換 いるファンも存在するほか,全クラブについて 統一した基準で分析を行うために,クラブが所 在する都道府県における住民の平均世帯年収に 着目した.総務省統計局のオフィシャルホーム ページ18)から得られたデータにより,対象とな る都道府県における住民の平均世帯年収を確認 して対数変換したものを「クラブが所在する都 道府県における住民の平均世帯年収」とし,変 数名を短縮するため,「都道府県の平均年収」 とした.なお,Jリーグの観戦者は,様々な世 帯に所属していると考えられることから,全世 帯の平均収入を用いた. 表2 J1クラブのホームタウン,チケット価格,人口,平均年収 クラブ名 ホームタウン チケット価格 ホームタウンの人口 都道府県の平均年収 ベガルタ仙台 仙台市 2,500円 1,045,986人 420万円 鹿島アントラーズ 鹿島市,潮来市,神栖市,行方市,鉾田市 2,000円 279,189人 483万円 浦和レッドダイヤモンズ さいたま市 2,000円 1,222,434人 462万円 大宮アルディージャ さいたま市 2,200円 1,222,434人 462万円 柏レイソル 柏市 2,300円 404,012人 464万円 FC東京 東京都 2,300円 13,230,000人 582万円 川崎フロンターレ 川崎市 2,300円 1,425,512人 532万円 横浜F・マリノス 横浜市,横須賀市 2,500円 4,107,098人 532万円 湘南ベルマーレ 厚木市,伊勢原市,小田原市,茅ヶ崎市,秦野市,平塚市, 藤沢市,大磯町,寒川町,二宮町 2,600円 1,709,653人 532万円 ヴァンフォーレ甲府 甲府市,韮崎市 2,600円 231,469人 430万円 アルビレックス新潟 新潟市,聖籠町 2,100円 825,625人 398万円 清水エスパルス 静岡市 2,500円 (IAIスタジアム日本平) 2,700円 (エコパスタジアム) 716,197人 458万円 ジュビロ磐田 磐田市 2,500円 168,625人 458万円 名古屋グランパス 名古屋市,豊田市,みよし市 2,300円 2,745,479人 518万円 セレッソ大阪 大阪市,堺市 2,200円 3,507,280人 483万円 サンフレッチェ広島 広島市 2,100円 1,173,843人 450万円 サガン鳥栖 鳥栖市 2,000円 69,074人 367万円 大分トリニータ 大分市,別府市,佐伯市 2,000円 676,430人 375万円

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格,ホームタウンの人口,都道府県の平均年収 をまとめた一覧である.表3が,J2クラブの ホームタウンとチケット価格,ホームタウンの 人口,都道府県の平均年収をまとめた一覧であ る. したものを「クラブの営業収益」とした.  以上のように先行研究でみられた分類から, クラブが所在する都道府県や市区町村などの地 域,クラブ自体の収益といった,経済的な面に 関する要因を,「経済的要因」とした.また表 2が,J1クラブのホームタウンとチケット価 表3 J2クラブのホームタウン,チケット価格,人口,平均年収 クラブ名 ホームタウン チケット価格 ホームタウンの人口 都道府県の平均年収 コンサドーレ札幌 札幌市 2,200円 (札幌ドーム) 2,000円 (札幌厚別公園陸上競技場) 1,913,545人 386万円 モンテディオ山形 山形市,天童市,鶴岡市 2,000円 453,081人 364万円 水戸ホーリーホック 水戸市 1,500円 268,750人 483万円 栃木SC 宇都宮市 1,500円 511,739人 457万円 ザスパクサツ群馬 草津町,前橋市 1,600円 347,451人 446万円 ジェフユナイテッド千葉 市原市,千葉市 2,600円 1,242,165人 464万円 東京ヴェルディ 東京都 2,100円 13,230,000人 582万円 横浜FC 横浜市 2,100円 3,688,773人 532万円 松本山雅FC 松本市,塩尻市,山形村,安曇野市 1,500円 415,611人 430万円 カターレ富山 富山市 1,600円 421,953人 430万円 FC岐阜 岐阜市 1,600円 413,136人 432万円 京都サンガFC 京都市,宇治市,城陽市,向日市,長岡京市,京田辺市, 木津川市,亀岡市 1,540円 2,107,903人 497万円 ガンバ大阪 吹田市,茨木市,高槻市,豊中市 2,100円 1,377,320人 483万円 ヴィッセル神戸 神戸市 2,200円 1,544,200人 477万円 ガイナーレ鳥取 鳥取市,米子市,倉古市,境港市 1,300円 431,699人 377万円 ファジアーノ岡山 岡山市,倉敷市,津山市 1,300円 1,291,885人 441万円 徳島ヴォルティス 徳島市,鳴門市,美馬市,板野町,松茂町,藍住町,北島町 2,000円 442,852人 408万円 愛媛FC 松山市 1,500円 517,231人 396万円 アビスパ福岡 福岡市 1,600円 1,463,743人 430万円 ギラヴァンツ北九州 北九州市 1,500円 976,846人 430万円 V・ファーレン長崎 長崎市,諫早市 1,500円 584,518人 388万円 ロアッソ熊本 熊本市 2,000円 734,474人 397万円

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4. 2. 4 最寄り駅からの所要時間

 庄子ら24)は,ファンの居住地とクラブの本拠 地との距離が,入場者数に影響を及ぼす要因に なるとしているほか,Hart et al.4)は,対戦ク ラブ間の移動距離が入場者数に負の影響を及ぼ すことを示している.またGarcía and Rodrí-guez6)は,対戦クラブ間の移動に伴う交通費 が入場者数に負の影響を及ぼすことを明らかに している.これらの研究で検討されている要因 は,ファンがスタジアムに訪れる際の移動に関 するものである.河合・平田8)は,試合観戦に 伴うファンの移動を考慮するために,移動距離 という変数を設定し,対戦クラブのホームタウ ンにおける主要駅間の距離と定義している.し かし,ファンが実際に公共交通機関を利用して スタジアムに訪れる際の身体的な負担は,最寄 り駅からスタジアムまでの徒歩移動であると考 えられる.そのため,対戦クラブの主要駅間の 距離は,ファンの移動を考慮した変数であると は言い難い.そこで本研究では,ファンが公共 交通機関を利用してスタジアムに訪れる際の負 担を考え,最寄り駅からの所要時間を変数とし て設定した.最寄り駅からの所要時間は,Jリー グ公式サイト17)に記載されている所要時間,す なわちスタジアムの最寄り駅から徒歩でスタジ アムまで訪れた場合の時間とし,「最寄り駅か らの所要時間」 とした. 4. 2. 5 シャトルバスの有無  Hart et al.4)は,ファンの移動距離が入場者 数に負の影響を及ぼすことを示唆している.J リーグでは,クラブによってファンの移動に関 する負担を軽減するため,試合が開催されるス タジアム周辺の主要駅からシャトルバスが運行 されていることがある.本研究においてこの シャトルバスの運行は,入場者数に負の影響を 及ぼすファンの移動距離を軽減するものと考え た.そこで,最寄り駅からの所要時間と同様に, ファンの負担を考えてシャトルバスの有無を変 数として設定した.シャトルバスの情報に関し ては,全クラブのオフィシャルホームページを 調べ,試合当日に臨時シャトルバスが運行され 4. 2 スタジアム要因の設定 4. 2. 1 屋根の有無

 Borland and Macdonald14)は,入場者数に影 響を与える要因として,クラブのホームスタジ アムの質について言及している.本研究では, スタジアムの質を示す1つの基準として,雨風 をしのぐことができる屋根の存在が関与すると 考えた.屋根の有無については,Jリーグ公式 サイト17)内の成績・データ22)に記録されている 公式記録において,「屋内」と記録される4ヶ 所のスタジアム(豊田スタジアム,大分銀行ドー ム,札幌ドーム,ノエビアスタジアム神戸)に 限定し,「屋根」としてダミー変数を用いた. 4. 2. 2 収容人数

 Borland and Macdonald14)は,ホームスタジ アムの質を示す指標として収容人数を挙げ,分 析に用いている.本研究でも,ホームスタジア ムの規模を表す変数として,収容人数を設定す る.収容人数は,Jリーグ公式サイト17)内のス タジアム情報23)における各スタジアムの収容人 数を調べ,対数変換したものを「収容人数」と した. 4. 2. 3 専用スタジアム  Jリーグにおいて,新設・改修などでホーム スタジアムを新たにするクラブが存在してい る.その際,サッカーを始めとする球技専用ス タジアムをホームスタジアムとするクラブがみ られる.欧米の主要リーグでは,サッカー専用 スタジアムでの試合開催は珍しくないが,J リーグでは,半数以上のクラブが陸上競技場を ホームスタジアムとしている.陸上競技場で試 合を開催する際,ファンは観客席から陸上のト ラックを挟んで試合を観戦することになる.観 客席とピッチの間に陸上トラックがある場合, トラックがなくピッチにより近いサッカー専用 スタジアムよりも臨場感に欠けると考えられ る.そこで本研究では,陸上競技場とサッカー 専用スタジアムでの試合開催が混在しているこ とがJリーグの特徴であると考え,陸上トラッ クがないスタジアムを「専用スタジアム」とし てダミー変数を用いた.

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は,直近3試合での試合結果を変数に用いた分 析を行っている.本研究における直近試合の結 果は,前節の結果がファンの観戦意欲につなが ると考え,試合記録より2013年シーズンの試合 結果を使用し,分析の対象となる試合の1試合 前の試合結果とする.その試合に勝利していた 場合に「勝利」としてダミー変数を用いた. 4. 3. 4 連勝数

 García and Rodríguez6)や河合・平田8)は, ホームクラブの連勝数が入場者数に正の影響を 及ぼすとしている.本研究では,試合記録より 2013年シーズンの試合結果から,分析の対象と なる試合の1試合前終了時までの試合結果を調 べ,連勝があった場合に 「連勝数」 として設定 した.なお,連勝がない場合は0とした. 4. 3. 5 連敗数

 Hart et al.4)やTimothy and Paul7)は,クラ ブの勝利数や勝率を変数とした分析を行ってい る.本研究では,勝利だけでなく敗北にも着目 する必要があると考えた.そこで本研究では, 試合記録より2013年シーズンの試合結果から, 分析の対象となる試合の1試合前終了時までの 試合結果を調べ,連敗があった場合に 「連敗数 」 として設定した.なお,連敗がない場合は0 とした.  以上のように,先行研究でみられたクラブの 試合結果や順位変動に加え,本研究で設定した 連敗数といったクラブの成績を反映した要因 を,「成績要因」とした. 4.4 魅力要因の設定 4. 4. 1 地元出身選手の数  二宮26)27)は,ファンのプロスポーツ観戦に対 する関与や,プロスポーツクラブへの愛着が強 いほど,地域に対する愛着が高まるとしている. その結果として,ファンの地域愛着に着目する ことが,ファン獲得の一助になるとしている. その一方で,地域への愛着がプロスポーツ観戦 行動やクラブに対する愛着に及ぼす影響につい ては検討されておらず,今後の研究が必要だと 述べている.クラブへの愛着に着目した仲澤ら28) るスタジアムを確認した.そして,シャトルバ スの運行が確認できた26ヶ所のスタジアムに, 「シャトルバス」としてダミー変数を用いた.  以上のように,先行研究でみられたスタジア ムへの移動に関する変数や,ホームスタジアム の質など,それぞれのスタジアムの特性やアク セスといったスタジアムについての要因を,「ス タジアム要因」とした. 4.3 成績要因の設定 4. 3. 1 昨年度からの成績  河合・平田8)は,試合の内容に関する要因と して,昇格後1年目という変数を設定した分析 の結果から,昇格が入場者数に正の影響を及ぼ すことを示している.本研究では,昇格を含め たクラブの成績向上を考慮するべきであると考 え,昨年度からの成績という変数を設定した. 昨年度からの成績は,2011年シーズン終了時の 順位と2012年シーズン終了時の順位を比較する ことで設定する.順位が上昇したクラブについ て「上昇」としてダミー変数を用いた.なお, 2012年シーズン終了時にJ2からJ1へ昇格し たチームも「上昇」に含めた. 4. 3. 2 試合前の順位

 Hart et al.4)やForrest and Simmons5)は,試 合前のホームクラブの順位が入場者数に影響を 及ぼすとしている.Jリーグに関する研究にお いても,河合・平田8)や鈴木・平田9)がクラブ の順位を変数に用いた分析を行っている.本研 究における試合前の順位は,順位の変動を反映 するために,『選手名鑑 2014 J1&J2&J3』25) から分析の対象となる試合の2節前終了時にお ける順位と,1節前終了時における順位とを比 較して設定した.順位が上昇したクラブについ て「上昇」としてダミー変数を用いた.なお第 1節と第2節は直前に試合がないため,分析の 対象外とした. 4. 3. 3 直近試合の結果

 Timothy and Paul7)は,ホームクラブの勝率 が高いほど,入場者数に正の影響を及ぼすこと を示唆している.またGarcía and Rodríguez6)

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るアウェイクラブとする.1つのクラブがア ウェイクラブとして敵地で試合を行う際の影響 をみるために,全クラブにダミー変数を用いた. 4. 4. 4 対戦相手の日本代表選手  畔蒜ら31)は,対戦相手の人気によってホーム ゲームの入場者数が増加すると示唆している. 本研究では,ホームクラブのファンからみた対 戦相手の人気を示す指標として,対戦相手の日 本代表選手を考慮に入れた.対戦相手の日本代 表選手は,対戦するチームに2013年における日 本代表の試合で招集された選手が何名いるかで 判断する.代表戦の招集選手は日本サッカー協 会のオフィシャルホームページ11)から確認し, 試合出場がない場合も日本代表選手として変数 に組み込み,「対戦相手の日本代表選手」とし た.なお,選手プロフィールに記載されないた め,世代別の日本代表選手は含まない. 4. 4. 5 ダービー

 Forrest and Simmons5)は,同一地域に存在 するクラブ同士の対戦をダービーとし,入場者 数に正の影響を及ぼすとしている.また河合・ 平田8)は,対戦クラブ間のホームタウンにおけ る主要駅の距離からダービーを定義し,変数と して分析を行った結果から,入場者数に正の影 響を与えることを示している.本研究では,よ り多くのファンがライバル意識をもって試合に 訪れると考え,対戦クラブ間の距離ではなく, ファンやメディアによって取り上げられている ものに着目すべきだと考えた.その際,対象と なるクラブのオフィシャルホームページに掲載 のあるものをクラブ公認であると考え,「ダー ビー」としてダミー変数を用いた.表4が,本 研究で設定したダービーの一覧である. 4. 4. 6 開幕戦  Hart et al.4)や河合・平田8)は,ホームクラ ブにおける開幕戦が入場者数に正の影響を及ぼ すとしている.本研究における開幕戦は,年間 試合日程を参照することで定める.分析対象の 試合の中で,2013年シーズンの各クラブにおけ る最初のホームゲームを「開幕戦」としてダミー 変数を用いた. は,クラブへの愛着がファンの観戦頻度に正の 影響を及ぼすとしている.その際,クラブへの 愛着を形成する因子として,地域への愛着や選 手への愛着などを用いている.そこで本研究で は,ファンのクラブに対する愛着の指標として, 地元出身選手の数に着目した.地元出身選手の 数は,2013年シーズン開幕時に出版された『選 手名鑑 2013 J1&J2』29)の選手プロフィール から設定する.クラブが所在する都道府県と同 じ都道府県出身の選手の数を調べ,「地元出身 選手の数」とした. 4. 4. 2 直近の日本代表戦  平田・シマンスキー30)は,2002年に開催され た日韓W杯がJリーグの観客数に正の影響を 及ぼしたことを示している.このことから本研 究では,日本代表戦の開催を考慮に入れるべき であると考えた.本研究が分析の対象とする 2013年シーズンには,W杯は開催されていな いが,日本代表の試合は行われている.そこで 本研究では,日本サッカー協会のオフィシャル ホームページ11)にて,2013年シーズン中に行わ れた日本代表戦の日程を確認することで,日本 代表戦に関する変数を設定する.分析対象の試 合が行われた日程と代表戦の日程を照らし合わ せ,Jリーグの試合が開催される基本的な間隔 である1週間を基準とし,試合日の前1週間以 内に代表戦があったかどうかを判断する.そし て,代表戦が行われた場合に「代表戦」として ダミー変数を用いた.なお,代表戦が複数あっ た場合も含める.また,試合の勝敗ではなく, 試合を観ることが観戦のきっかけとなると考 え,試合の勝敗は考慮に入れない. 4. 4. 3 対戦相手

 García and Rodríguez6)は,特定のクラブを 対戦相手として変数に用いた分析を行ってい る.また畔蒜ら31)は,Jリーグにおいても対戦 するクラブの平均入場者数によって,入場者数 に正の影響を及ぼすことを示している.本研究 においても,アウェイクラブの影響を考慮する ために,対戦相手を変数として設定した.本研 究における対戦相手は,分析対象の試合におけ

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4. 5. 2 試合開催日

 Forrest and Simmons5)やGarcía and Rodrí-guez6)は,平日に開催される試合で負の影響が みられることを示している.また河合・平田8) も同様に平日開催の試合を変数として分析を行 い,負の影響を及ぼすことを明らかにしている. 本研究においても,Jリーグの年間試合日程を 参照することで,土,日,祝日ではなく,平日 に行われた試合を確認し,「平日」としてダミー 変数を用いた. 4. 5. 3 キックオフ時間  Jリーグには,13時など昼の時間帯にキック オフされる試合から,19時以降に開始となる試 合もみられる.またNumber Web32)の調査に よれば,子どもを連れて行く際や,遠方から訪 れるファンから,キックオフ時間を早くしてほ しいという要望があがっていると報告されてい る.本研究では,試合開催日だけでなくキック オフの時間もファンの観戦に影響すると考え, 変数を設定することとした.キックオフ時間は, 年間試合日程を参照することによって18時以降 のキックオフである試合を調べ,「夜」として ダミー変数を用いた. 4. 5. 4 テレビ中継の有無

 Babatunde Buraimo et al.33)は,イングラン ド及びスペインのプロサッカーリーグにおい て,テレビ中継の有無が入場者数に影響を及ぼ すことを示唆している.Borland and Macdon-ald14)も同様に,テレビ中継の有無に着目して 研究を行っている.本研究におけるテレビ中継 の有無は,年間試合日程を参照することで定め る.ホームクラブの所在する都道府県内で,地 上波またはNHK BS1で生中継があった場合 に,「地上波生中継」としてダミー変数を用いた.  以上のように,先行研究でみられた変数に加 え,ファンがスタジアムに訪れる,また訪れた 際の周囲の環境に関する要因について,「環境 要因」とした. 4. 4. 7 最終戦

 García and Rodríguez6)は,ホームクラブの 優勝や降格の可能性に関わる変数を用いた分析 を行っている.本研究では,優勝争いや降格争 いが佳境となり,1シーズンを締めくくる最終 戦を考慮に入れるべきと考え,変数として設定 した.最終戦は,年間試合日程を参照すること で定める.分析対象の試合の中で,2013年シー ズンの各クラブにおける最後のホームゲームを 「最終戦」としてダミー変数を用いた.  以上のように,ファンや観戦者が試合に訪 れるきっかけになると考えられることや,試 合に対して魅力を感じると予想される要因を, Timothy and Paul7)の分類から,「魅力要因」 とした.

4.5 環境要因の設定 4. 5. 1 天候

 Timothy and Paul7) やGarcía and Rodríguez6) は,試合開催日の天候を変数とした分析を行っ ている.また河合・平田8)は,試合開催日の天 候が雨だった場合に,入場者数に負の影響を及 ぼすことを示している.本研究における天候は, Jリーグ公式サイト17)内における成績・データ22) の試合記録に掲載されている公式記録の天候を 参照することで定める.雨または雪の試合を 「雨」とし,ダミー変数を用いた. 表4 ダービーの一覧 ダービー名 対象のクラブ 試合数 北関東ダービー 水戸,群馬,栃木 6試合 さいたまダービー 浦和,大宮 2試合 多摩川クラシコ F東京,川崎 2試合 SKYシリーズ 川崎,横浜FM,湘南 6試合 静岡ダービー 清水,磐田 2試合 関西ダービー 京都,G大阪,神戸 6試合 海峡ダービー 神戸,徳島 2試合 四国ダービー 徳島,愛媛 2試合 バトルオブ九州 鳥栖,大分(J1) 福岡,北九州,長崎, 熊本(J2) 14試合

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22クラブ全てのリーグ戦におけるホームゲーム の462試合,計768試合とした.試合ごとに設定 した変数を入力して分析を行った.分析方法に ついては,入場者数に影響を及ぼす要因という 複数の独立変数が,入場者数という1つの従属 変数に与える影響の強さを検討することができ るよう,重回帰分析を行った.土田ら35)によれ ば,重回帰分析とは,2個以上の独立変数が従 属変数にどのような影響を与えているのかを明 らかにする方法である.分析にあたっては,小 塩36)の手法を参考にして,IBM SPSS Statistics 22を用いた. 5.3 データの分割  Jリーグのクラブにとって,満員のスタジア ムが試合の価値を高めると考え,評価の指標 となる集客状況を踏まえた分析を行うために, データの分割を行う.集客率に着目した福田10) 出口11)の計算方法を参考にして,試合の入場者 数をそのスタジアムの収容人数で除すことで, スタジアム集客率を算出する.この作業によっ て得られたスタジアム集客率から,全クラブの 年間平均スタジアム集客率を設定する.スタジ 5.研 究 方 法 5.1 データの収集  試合結果や天候,出場選手といった試合当 日のデータは,Jリーグ公式サイト17)内で公開 されている2013年シーズンの試合記録(成績・ データ)22)から収集する.また,クラブやスタ ジアムの情報に関しては,Jリーグ公式サイト17) に掲載されているスタジアム情報23)に加え, 2013年シーズンにJ1及びJ2に所属していた全 クラブのオフィシャルホームページと,全スタ ジアムのオフィシャルホームページの情報,J リーグ公認ファンサイトである『J’s GOAL』34) の情報を使用する.これらのデータに加え,『選 手名鑑 2013 J1&J2』29)『選手名鑑 2014 J1& J2&J3』25)から,選手の経歴やクラブの成績 推移といったシーズンを通したデータを使用す る. 5.2 分析対象  分析対象は,2013年シーズンにJ1に所属し ていた18クラブ全てのリーグ戦におけるホーム ゲームである306試合,及びJ2に所属していた 仙台 鹿島 浦和 大宮 柏 F東京 川崎 横浜FM 湘南 甲府 新潟 清水 磐田 名古屋 C大阪 広島 鳥栖 大分 札幌 山形 水戸 栃木 群馬 千葉 東京V 横浜C 松本 富山 岐阜 京都 G大阪 神戸 岡山 鳥取徳島 愛媛 福岡 北九州 長崎 熊本 10.0 20.0 30.0 40.0 50.0 60.0 70.0 80.0 平 均 集 客 率 % 北 南 北 南 2 J 1 J 図1 年間平均スタジアム集客率のプロット

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値の増減ではなく,その項目に該当するかしな いかで,入場者数への影響を判断する.本論文 においては,偏回帰係数の値が正である場合に 「正の相関がある」,負である場合に「負の相関 がある」と表現している.以下において,設定 した独立変数についての結果を示す.なお,独 立変数である魅力要因の対戦相手については, 有意差が認められたクラブのみを記載してい る. 6.1 経済的要因  チケット価格では,集客率高群では相関がみ られず,集客率低群では負の相関がみられた. ホームタウンの人口においては,集客率高群で は正の相関が,集客率低群では負の相関が認め られた.都道府県の平均年収では,集客率高群 では相関がなく,集客率低群では正の相関があ るという結果となった.クラブの営業収益では, 集客率高群・低群ともに正の相関が確認できた.  チケット価格について,集客率高群では相関 がみられなかったことから,集客率高群に属す るクラブでは,入場者数を増加させるためにチ ケット価格を引き下げることは有効でないとい える.一方で集客に苦戦するクラブでは,チケッ ト価格を安く設定することが入場者数につなが ると考えられる.これは,福田10)や出口11)が述 べているように,短期的にチケット収入をあげ ることではなく,試合観戦経験の少ないファン がスタジアムに訪れるきっかけを創出し,スタ ジアムを満員に近づけることで,長期的な収益 を得ることをねらいとしている.ホームタウン の人口について,集客率高群で正の相関がみら れたことから,大都市に存在することによって 集客率が高まり,入場者数も増加すると推測さ れる.それに対して集客率低群で負の相関がみ られたことから,集客率が低いクラブでは同一 地区に複数のクラブ,特に入場者数が多いクラ ブがあると人気が偏り,入場者数が伸び悩んで いると考えられる.都道府県の平均年収に関し ては,集客率低群でのみ正の相関があったこと から,集客率が低いクラブにおいては,地域の アム集客率に着目することで,クラブの経営状 況を評価することができる.またJリーグでは, 2010年度までにJクラブ主催の試合における入 場者数の合計を1,100万人以上にすることを目 標とした「Jリーグ イレブンミリオンプロジェ クト」を行っており,この目標を達成するため には,J1クラブで70%,J2クラブで50%の集 客率が必要とされていた.本研究では,J2ク ラブの目標値である50%を目安として,クラブ の集客率を評価することとした.以上のように して設定したスタジアム平均集客率をプロット したところ,49.0%と42.9%の差が最も大きく, 全体を二分する境界線ができた.図1が,スタ ジアム平均集客率をプロットした結果であり, 最も大きな差がみられた境界線を基準として, 集客率が高い方の18クラブを集客率高群,集客 率が低い方の22クラブを集客率低群とした.な お,図1における横軸の基準は,左方の18ク ラブがJ1のクラブであり,右方の22クラブが J2のクラブである.クラブの配列順に関して は,Jリーグ公式サイト17)を参考にし,クラブ の所在地に基づいて左から右へ南下するように 配列している. 6.結 果 と 考 察  表5は,集客率高群における重回帰分析の結 果であり,調整済みR2乗(自由度調整済み決 定係数)の値が0.830であることから,独立変 数が従属変数の83.0%を説明できることを示し ている.また表6は,集客率低群における重回 帰分析の結果であり,調整済みR2乗(自由度 調整済み決定係数)の値が0.785であることか ら,独立変数が従属変数の78.5%を説明できる ことを示している.  それぞれの独立変数が入場者数に与える影響 については,表5,表6における偏回帰係数の 値から読み取ることができる.偏回帰係数の値 が正ならば,その項目の値が増加するほど入場 者数も増加し,負ならば,その項目の値が増加 するほど,入場者数が減少することを示してい る.また,ダミー変数を用いた項目については,

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表5 平均集客率高群における重回帰分析の結果 従属変数(入場者数) 独立変数(入場者数に影響を及ぼす要因) 偏回帰係数 標準偏差誤差 ベータ t値 有意確率 定数項 2.38 8.46 - 0.28 .779 経済的要因 チケット価格 -0.50 0.29 -0.09 -1.75 .082 ホームタウンの人口 0.11 0.04 0.26 2.70 .008* 都道府県の平均年収 -0.10 0.56 -0.02 -0.17 .864 クラブの営業収益 0.30 0.11 0.24 2.84 .005* スタジアム要因 屋根 -0.28 0.15 -0.12 -1.88 .062 収容人数 0.47 0.09 0.51 5.07 .000* 専用スタジアム 0.05 0.08 0.05 0.60 .547 最寄り駅からの所要時間 0.00 0.01 0.03 0.32 .748 シャトルバス 0.27 0.08 0.20 3.36 .001* 成績要因 昨年度からの成績(上昇) 0.01 0.09 0.01 0.13 .894 試合前の順位(上昇) -0.02 0.04 -0.02 -0.48 .629 直近試合の結果(勝利) 0.00 0.04 0.00 -0.08 .936 連勝数 0.01 0.02 0.03 0.72 .470 連敗数 -0.03 0.01 -0.07 -2.08 .039* 魅力要因 地元出身選手の数 -0.03 0.02 -0.18 -1.71 .089 代表戦 0.03 0.04 0.03 0.89 .377 仙台 -0.35 0.09 -0.15 -3.85 .000* 川崎 -0.26 0.09 -0.11 -2.93 .004* 湘南 -0.22 0.09 -0.09 -2.38 .019* 甲府 -0.28 0.09 -0.12 -3.12 .002* 新潟 -0.26 0.09 -0.12 -2.89 .004* 清水 -0.23 0.09 -0.10 -2.58 .011* 磐田 -0.20 0.09 -0.09 -2.32 .022* 鳥栖 -0.27 0.10 -0.11 -2.84 .005* 大分 -0.36 0.09 -0.16 -3.90 .000* 山形 -0.39 0.17 -0.08 -2.26 .025* 水戸 -0.57 0.17 -0.11 -3.39 .001* 対戦相手の日本代表選手 - - - - - ダービー 0.16 0.07 0.08 2.40 .018* 開幕戦 0.14 0.07 0.07 2.08 .039* 最終戦 0.33 0.07 0.16 4.97 .000* 環境要因 雨 -0.22 0.05 -0.15 -4.55 .000* 平日 -0.31 0.05 -0.20 -6.27 .000* 夜 0.10 0.04 0.11 2.90 .004* 地上波生中継 -0.02 0.04 -0.02 -0.60 .551 R2乗(決定係数) 0.876 調整済みR2乗(自由度調整済み決定係数) 0.830 F値 18.84 有意確率 .000* 注:*p<0.05

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表6 平均集客率低群における重回帰分析の結果 独立変数(入場者数に影響を及ぼす要因) 偏回帰係数 標準偏差誤差 ベータ従属変数(入場者数)t値 有意確率 定数項 -22.73 9.00 - -2.53 .012* 経済的要因 チケット価格 -1.13 0.19 -0.33 -6.05 .000* ホームタウンの人口 -0.24 0.09 -0.41 -2.64 .009* 都道府県の平均年収 2.17 0.69 0.48 3.16 .002* クラブの営業収益 0.34 0.15 0.31 2.31 .022* スタジアム要因 屋根 0.59 0.15 0.33 3.95 .000* 収容人数 0.20 0.11 0.14 1.77 .078 専用スタジアム -0.02 0.08 -0.02 -0.30 .767 最寄り駅からの所要時間 0.03 0.01 0.53 4.48 .000* シャトルバス -0.43 0.11 -0.37 -3.77 .000* 成績要因 昨年度からの成績(上昇) 0.45 0.08 0.39 5.46 .000* 試合前の順位(上昇) -0.09 0.05 -0.07 -1.69 .092 直近試合の結果(勝利) 0.14 0.05 0.12 2.57 .011* 連勝数 0.05 0.02 0.09 2.31 .022* 連敗数 -0.02 0.02 -0.02 -0.70 .488 魅力要因 地元出身選手の数 0.10 0.01 0.81 7.19 .000* 代表戦 0.05 0.05 0.04 1.15 .252 仙台 0.87 0.30 0.14 2.92 .004* 鹿島 0.97 0.35 0.11 2.78 .006* 浦和 1.24 0.30 0.20 4.19 .000* 大宮 1.00 0.30 0.16 3.36 .001* 柏 0.83 0.30 0.13 2.80 .006* F東京 0.85 0.30 0.13 2.88 .005* 川崎 0.98 0.30 0.15 3.30 .001* 横浜FM 0.70 0.30 0.11 2.32 .021* 湘南 1.00 0.30 0.16 3.33 .001* 新潟 0.95 0.30 0.15 3.21 .002* 清水 0.61 0.30 0.10 2.01 .046* 磐田 0.83 0.30 0.13 2.75 .007* 名古屋 1.00 0.29 0.16 3.41 .001* C大阪 0.81 0.30 0.13 2.75 .007* 広島 0.89 0.38 0.10 2.37 .019* 鳥栖 0.74 0.30 0.12 2.50 .013* 横浜C 0.33 0.12 0.11 2.64 .009* 富山 -0.30 0.13 -0.10 -2.43 .016* G大阪 0.77 0.12 0.27 6.43 .000* 対戦相手の日本代表選手 - - - - - ダービー 0.25 0.08 0.11 3.14 .002* 開幕戦 0.33 0.09 0.13 3.69 .000* 最終戦 0.45 0.10 0.17 4.54 .000* 環境要因 雨 -0.05 0.07 -0.02 -0.64 .526 平日 -0.46 0.07 -0.25 -6.77 .000* 夜 0.04 0.05 0.03 0.79 .433 地上波生中継 0.12 0.05 0.08 2.21 .028* R2乗(決定係数) 0.840 調整済みR2乗(自由度調整済み決定係数) 0.785 F値 15.22 有意確率 .000* 注:*p<0.05

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は負の相関がみられたことから,シャトルバス が必要になるような立地条件にあるスタジアム での入場者数増加は見込みづらいといえる.  ところで,最寄り駅からの所要時間とシャト ルバスの有無という2つの項目について,シャ トルバスの運行は,最寄り駅からの所要時間が 長いスタジアムに多くみられると考えられるた め,互いに関連している可能性がある.そのた め,今後同様の研究を行うにあたって変数を設 定する際には,慎重に検討する必要があるとい えるだろう. 6.3 成績要因  昨年度からの成績(上昇)では,集客率高群 では相関が認められず,集客率低群で正の相関 が認められた.試合前の順位(上昇)において は,両群で相関がみられないという結果であっ た.直近試合の結果(勝利)については,集客 率高群では相関がなく,集客率低群で正の相関 が認められた.連勝数では,集客率高群では相 関がみられず,集客率低群では正の相関がみら れた.連敗数では,集客率高群では負の相関が みられたのに対し,集客率低群では相関がない という結果となった.  集客率低群では,昨年度の順位(上昇),直 近試合の結果(勝利),連勝数で正の相関がみ られたことから,安定した集客が見込めていな いクラブでも,好成績を収めることによって地 元メディア等での露出が増えるなどして,興味 を持ってスタジアムに訪れるファンがいると考 えられる.一方で集客率高群では,昨年度の順 位(上昇),試合前順位(上昇),直近試合の結 果(勝利),連勝数で相関がみられなかったこ とから,クラブの成績が芳しくなくても試合に 訪れるファンが多く,1シーズン,翌シーズン と長期的な応援を続けているファンの存在が予 想される.そういったファンがいることで,安 定した集客率が見込めていると考えられる.ま た,連敗数では集客率高群で負の相関がみられ たことから,クラブが勝利から見放されると, スタジアムに訪れるファンの足取りも重くなる 平均年収が増加して経済的な余裕が生まれるこ とによって,入場者数の増加を見込むことがで きるだろう.また,クラブの営業収益ではどち らの群でも正の相関がみられたことから,クラ ブの収益が大きく,有名選手の獲得などが可能 なクラブが注目を集め,入場者数が増加してい ると考えられる. 6.2 スタジアム要因  屋根の有無では,集客率高群では相関がみら れず,集客率低群でのみ正の相関がみられた. 収容人数については,集客率高群では正の相関 が認められ,集客率低群では相関がなかった. 専用スタジアムにおいては,どちらの群でも相 関がみられなかった.最寄り駅からの所要時間 では,集客率高群では相関がなかったが,集客 率低群では正の相関が確認できた.シャトルバ スの有無では,集客率高群では正の相関が,集 客率低群では負の相関が認められた.  屋根の有無については,集客率低群のみで正 の相関がみられたことから,屋根があることで, 天候や日差しに左右されず快適に観戦できる環 境下でのみスタジアムに訪れるファンがいると 推測できる.収容人数では,集客率高群で正の 相関がみられたことから,より多くの入場者数 を見込むためには,規模が大きなスタジアムを 使用することや,席種を工夫し,多くのファン が快適に観戦できるようにすることが必要であ るといえる.専用スタジアムについてはどちら の群でも相関がみられなかったことから,J リーグに訪れるファンは陸上のトラックをあま り重要視していないと考えられる.最寄り駅か らの所要時間については,集客率低群で正の相 関がみられたことから,最寄り駅から遠い場所 にスタジアムがある場合,自家用車や自転車な どでスタジアムに訪れるファンが存在すると推 測できる.またシャトルバスの有無については, 集客率高群では正の相関がみられたことから, バスの本数の増加や,運賃の値下げなどにより 混雑を緩和し,より快適なスタジアム創りを目 指すことが効果的である.一方で集客率低群で

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本代表の中心選手も所属するガンバ大阪が2013 年シーズンはJ2で戦ったことで,ガンバ大阪 がアウェイクラブとして地元に訪れた際に,そ の試合を一目見ようと集まったファンが多数い たことが分かる.それに対して日本代表戦や日 本代表選手については,どちらの群でも変数が 除去され,分析が不可能であったことから,今 後,変数の定義を2013年シーズンに限定しない 日本代表歴を持つ選手に変更するなど,変数に 改変が必要である.またダービーで両群共に正 の相関がみられたことから,同じ都道府県や 同一地区に存在するクラブとの試合では特に, ファン同士のライバル意識が強くなることで, 入場者数の増加が見込める.加えて移動距離が 比較的短くなるため,アウェイクラブのファン も訪れやすいと予想される.開幕戦で両群共に 正の相関がみられたことから,シーズンの最初 の試合では注目度が高まり,多くのファンが新 シーズンに期待を寄せて観戦に訪れると考えら れる.同様に最終戦でも両群共に正の相関がみ られたことから,シーズンを締めくくる一戦に 訪れるファンも多くなることが分かる.また最 終戦に関しては,シーズン終盤であるため,優 勝が決まる試合や残留争いなど白熱した試合展 開になる可能性が高い.加えて引退を表明した 選手がいれば,その選手にとって現役最後の試 合となる.その姿を一目見ようと観戦に訪れる ファンの存在も考えられ,これらが入場者数の 増加に影響していると推測できる.ダービー, 開幕戦,最終戦の結果から分かるように,注目 度の高い試合や節目の試合では入場者数が増加 することが予想される.クラブはこういった試 合で大きなイベントを行ったり,入場者に特典 をつけたりするなどして,より一層の集客を図 ることが必要である. 6.5 環境要因  天候(雨)では,集客率高群では負の相関が みられ,集客率低群では相関がみられなかった. 試合開催日(平日)においては,両群で負の相 関が確認できた.キックオフ時間(夜)では, といえる. 6.4 魅力要因  地元出身選手の数では,集客率高群では相関 がみられず,集客率低群では正の相関がみられ た.直近の日本代表戦においては,集客率高群・ 低群ともに相関がなかった.対戦相手では,集 客率高群では仙台,川崎,湘南,甲府,新潟, 清水,磐田,鳥栖,大分,山形,水戸で負の 相関が確認できた.また集客率低群では仙台, 鹿島,浦和,大宮,柏,F東京,川崎,横浜 FM,湘南,新潟,清水,磐田,名古屋,C大 阪,広島,鳥栖,横浜C,G大阪で正の相関が みられ,富山で負の相関がみられた.対戦相手 の日本代表選手については,該当する試合数が 768試合中208試合と少なかったことや,該当す る試合でも,日本代表選手の数が1~5人と少 なかったことにより,どちらの群でも変数が除 去され分析が不可能であった.また,ダービー, 開幕戦,最終戦の3つの変数では,集客率高群・ 低群ともに正の相関が認められた.  地元出身選手の数では,集客率低群のみで正 の相関がみられたことから,集客に苦戦するク ラブは,ユース年代の育成を強化したり,地元 出身選手を積極的に獲得したりするなどして, 地元ファンの後押しを多く受けられるようにす ることが有効である.特にユース年代の育成に ついては,兼清・平田37)がJリーグのクラブに おけるユース出身選手に着目した研究を行って おり,Jリーグのユース育成は,日本サッカー の強化につながるとしている.その結果から今 後の課題として,トップチームで戦力となる選 手の育成・輩出が挙げられていることからも, ユース年代の育成が求められるといえるだろ う.対戦相手については,特定のクラブで正負 の相関がみられたことから,試合の入場者数に おけるアウェイクラブのファン数が影響を及ぼ していることが考えられる.特に集客率低群で は,ファンの規模が非常に大きい浦和レッズに ついてより強い正の相関がみられた.また集客 率低群での結果から,J1で優勝経験があり日

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人気を示すバロメーターであるスタジアム集客 率に着目し,平均集客率を高群と低群に二分し て分析を行った.その結果から,クラブの集客 率によって入場者数に影響を及ぼす要因が異な ることを示すことができた.本研究の結果は, 入場者数のみを変数とした従来の研究では考慮 されていなかった,スタジアムの収容人数によ る違いを明らかにできたことに意義があるとい えるだろう.例えば,集客率が高いクラブにお いて,シャトルバスが正の影響を及ぼしている ことから,その本数を増やしたり,料金を低く したりすることで,入場者数の増加を見込むこ とができる.また,雨が負の影響を及ぼしてい ることから,雨の日限定のサービスを行うなど して観戦に訪れる魅力を生むことで,客足の減 少を防ぐことができるだろう.そして,集客率 が低いクラブでは,地元出身選手の数が正の影 響を及ぼしていることから,ユースや地元高校 出身の選手を積極的に補強することで,入場者 数の増加につながるであろう.一方で,チケッ ト価格が負の影響を及ぼしていることから,チ ケットの価格を引き下げることで入場者数の減 少を防ぐことができるだろう.また,集客率の 高いクラブ,低いクラブ共にダービーが正の影 響を及ぼしていることから,試合当日のイベン トやサービスをより充実させ,ファンが次の試 合にも訪れたいと感じる仕組みを作ることで, 入場者数の増加を見込むことができる.  以上のように,クラブの集客率の違いにより, 入場者数を増加させるための施策が異なること が考えられる.これらの結果を踏まえ,Jリー グのクラブは,より多くの入場者数を確保して スタジアムを満席にすることを目指し,獲得し たファンを定着させたうえで試合を魅力的なも のにしていく必要がある.そのためには,クラ ブがその集客状況を理解したうえで,それに見 合ったクラブ独自の施策が求められよう.  一方で,本研究と同様に観戦需要の分析を 行っている先行研究はみられるが,その変数の 設定は研究者の裁量に委ねられている面が大き い.本研究では,先行研究で用いられてきた変 集客率高群では正の相関がみられ,集客率低群 では相関がみられなかった.テレビ中継の有無 (地上波生中継)については,集客率高群では 相関がなく,集客率高群で正の相関が認められ た.  天候(雨)では,集客率高群で負の相関がみ られたことから,安定した集客が見込めている クラブでも,雨天の際には入場者数の減少が予 想される.そのため,雨天限定の特典をつける などして入場者数の確保を目指すことが必要で ある.試合開催日(平日)では両群で負の相関 がみられたことから,平日に試合を行うことは どのクラブにとっても入場者数の減少は避けら れないといえる.平日限定のチケット割引や特 典をつけるなど,事前に対策をすることは可能 である.しかし,これはクラブが大幅に改善す ることができることではなく,Jリーグ全体と して試合の日程を見直す必要がある.J1では 2015年シーズンからリーグの制度を大きく変更 することが決まっているが,それにより平日開 催の試合が増加するようなことがあれば,その 変更を再検討することが必要になるだろう.ま たキックオフ時間については,集客率高群で正 の相関がみられたことから,集客率の高いクラ ブでは注目試合を夜のキックオフにすること で,より多くのファンが訪れると考えられる. 集客率低群でテレビ中継の有無(地上波生中継) に正の相関がみられたことから,地元のテレビ 局によって生中継される試合の注目度の高さが 窺える.クラブはこれを利用し,次の試合を宣 伝するなどして集客につなげることが有効であ る. 7.結     論  本研究では,Jリーグの入場者数に影響を及 ぼす要因を独立変数として設定し,入場者数を 従属変数として重回帰分析を行うことにより, Jリーグの入場者数に影響を及ぼす要因を検討 した.その際,スタジアムの収容人数が異なる ため,入場者数だけでクラブの集客状況を評価 することは難しいと考えた.そこで,クラブの

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2002. 8)河合慎祐, 平田竹男;Jリーグの観客数に影 響を与える要因に関する研究, スポーツ産業 学研究, Vol.18, No.2, pp.11-19, 2008. 9)鈴木直樹, 平田竹男;Jリーグクラブ所在地域 へのプロ野球チーム新規フランチャイズがJ リーグクラブの観客数に与えた影響, スポー ツ産業学研究, Vol.22, No.2, pp,305-310, 2012. 10)福田拓哉;Jリーグ・イレブンミリオンプロ ジェクト達成に向けた課題-スタジアムの集 客率に着目した現状分析-, 新潟経営大学紀 要, Vol.15, pp.131-148, 2009. 11)出口順子;Jリーグにおける集客に関する基 礎的研究-満席率に着目して-, 東海学園大 学研究紀要, 社会科学研究編, Vol.19, pp.93-103, 2014. 12)種子田穣;アメリカンスポーツビジネス NFL の 経 営 学, 初 版, 角 川 学 芸 出 版, pp.153-154, 2007. 13)上條典夫;スポーツ経済効果で元気になった 街と国, 第1刷, 講談社+α新書, pp.119-122, 2002.

14)Jeffery Borland and Robert Macdonald;De-mand for Sport, Oxford Review of Economic Policy, Vol.19, No.4, pp.478-502, 2003.

15)日本サッカー協会オフィシャルホームページ http://www.jfa.or.jp/jfa/. 16)日本サッカー協会オフィシャルホームページ JFA・Jリーグ サッカー用語集.   http://www.jfa.or.jp/jfa/terminology/ 17)Jリーグ公式サイト http://www.j-league. or.jp/. 18)総務省統計局 http://www.stat.go.jp/. 19)福原崇之, 原田宗彦;Jリーグクラブにおけ る順位と収入の関係:パネル分析を用いて,  スポーツマネジメント研究, Vol.6, No.1, 2013. 20)福原崇之;プロサッカーリーグの勝率と利潤 の関係-パネル分析による検証-, 青山経済 論集, Vol.61, No.1, pp.1-22, 2009. 21)Jクラブ個別経営情報開示資料 http://www. jleague.jp/aboutj/management/club-h25kaiji. html. 22)Jリーグ公式サイト 成績・データ http: //www.jleague.jp/stats/SFMS01.html. 23)Jリーグ公式サイト スタジアム情報 http: 数について検討を加え,スタジアムまでの道程 やクラブの成績といった変数を新たに設定し た.それは,スタジアムに訪れるファンの目線 に立った分析を行うためである.また本研究で は,これまで着目されていなかったクラブの集 客率を取り上げることで,クラブの集客状況を 踏まえた分析を行うことを可能にした.このこ とは,集客力が異なるJリーグのそれぞれのク ラブが入場者数の増加を目指すうえで,マーケ ティングの一助となるであろう.  今後の研究においては,入場者数の決定要因 になる変数を再検討した研究や,1シーズンに 限定せず,数シーズンにまたがった縦断研究が なされることを期待したい.また,Jリーグ観 戦の需要分析モデルを再構築し,統計的により 精度の高い実証研究を行うことが求められよ う. 参 考 文 献 1)Jリーグ観戦者調査2013サマリーレポート  http://www.jleague.jp/docs/aboutj/spectators -2013.pdf.

2)J.LEAGUE Data Site https://data.j-league. or.jp/SFTP01/.

3)Jリーグ公式サイト2014年キックオフカンファ レ ン ス http://www.jleague.jp/release/ar-ticle-00005644/.

4)Hart, R. A., et al.;A statistical analysis of association football attendances, Applied Sta-tistics, Vol.24, No.1, pp.17-27, 1975.

5)David Forrest and Rob Simmons;New Is-sues Attendance Demand:The Case of the English Football League, Journal of Sports Economics, Vol.7, No.3, pp.247-266, 2006. 6)Jaume García and Plácido Rodríguez;The

Determinants of Football Match Attendance Revisited:Empirical Evidence From the Spanish Football League, Journal of Sports Economics, Vol.3, No.1, pp.18-38, 2002. 7)Timothy D. DeSchriver and Paul E. Jensen;

Determinants of Spectator Attendance at NCAA Division Ⅱ Football Contests, Journal of Sport Management, Vol.16, pp.311-330,

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参照

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