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アナリシス JOGMEC 大貫憲二 欧州における LNG ビジネス動向 はじめに 欧州の 年の LNG 輸入量は 6,249 万トンで 欧州天然ガス全消費量の19% を占める 欧州では 2008 年以降の景気後退や安価な米国産石炭の流入 再生可能エネルギーの急激な導入等により天然ガス

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欧州における LNG ビジネス動向

じめに

 欧州の2011年のLNG輸入量は6,249万トンで、欧州天然ガス全消費量の19%を占める。  欧州では、2008年以降の景気後退や安価な米国産石炭の流入、再生可能エネルギーの急激な導入 等により天然ガス使用量は減少し、市場価格も低迷している。このため、調達した LNGを更に価 格の高い市場に転売することの利益性が注目され、2008年以降、再輸出ビジネスが出現した。  欧州の LNG基地は再輸出ビジネスに対する関心が高く、2012 年 4 月にはフランスの Montoirde Bretagne基地、9月にはポルトガルのSines基地で再輸出が開始された。  これら再輸出ビジネスに関連し、トレーダーの動きも活発になってきている。  欧州におけるLNGビジネスは、企業カテゴリー別に以下の動向が見られる。  ①欧州ユーティリティー企業のLNGビジネス動向   ・LNGを調達し、天然ガスとして市場で販売するため、受入基地の使用権を保有。   ・欧州ユーティリティー企業によるLNG上流権益の保有は、欧州全輸入量の5%と少ない。   ・一方で、長期契約で購入している LNGを原資とし、売り主として他のユーティリティー企業に 対し「ポートフォリオLNG」販売を行う企業が出現(GDFSuez、Iberdrola等)。   ・ポートフォリオLNG販売には再輸出可能なLNG基地の使用権を保有することが重要な要素の一 つである。  ②メジャー、上流事業者、LNG生産国NOCのLNGビジネス動向   ・LNGバリューチェーンを拡充するため、欧州の受入基地使用権を保有。   ・自社が上流権益を保有する LNGに対し価格面や仕向け地について優位な条件を持っており、再 輸出ビジネスを行う必要性がない(または必要性が低い)。  ③欧州トレーダーのLNGビジネス動向   ・Vitolは2012年に230万トンのLNGを売買。    ⇒トレーダーの存在感が増している。   ・LNG生産者、あるいは欧州・米国のLNG再輸出可能な基地にアクセスし、購入したLNGを北東 アジアや南米等、価格の高い地域に転売。    ⇒アービトレージ(価格差により利益を得る)ビジネスであることから、現状はトレーダーにとっ て大きなチャンス。  欧州では、スペイン、イタリア、フランスが、伝統的 な LNG輸入者として 1960 年代末より LNGを輸入、再 ガス化し、それぞれ自国市場に供給してきた。当初、自 国市場に安定的に天然ガスを供給することを目的に LNG輸入が行われており、限定された地域にしか LNG 受入基地はなく、その数は前世紀末時点で7基地に過ぎ なかった(フランス:2、スペイン:3、イタリア:1、ベ ルギー:1)。しかし、1990 年代以降の欧州天然ガス市 場の統合と自由化により欧州域内のガスフローに流動性 が生まれたことや、経済成長による需要の増加等により、 欧州域内各地に LNG受入基地が建設されるようになっ た。また、英国では英領北海での天然ガス生産量低下に

1.

欧州でのLNGを取り巻く状況

(2)

2.

欧州におけるLNG動向

対するエネルギーセキュリティーの強化を目的に、LNG 受入基地が建設されるようになり、2013 年 3 月現在で 19基地が操業されるまでに至った。  一方、2008 年以降の景気減退によるエネルギー使用 量の減少や、米国のシェールガス革命の余波として米国 内で競争力を失った石炭(欧州では天然ガスよりも価格 が安く、競争力を持つ)が欧州に流入してきたこと等に より、天然ガス使用量が減少し、その市場価格(ハブ価格) が安くなっている。この結果、LNGは欧州で価格競争 力が弱くなっており、LNGを輸入しても再ガス化し販 売する利益性が小さくなっている。この打開策として、 現状、欧州よりも価格が高い北東アジアや南米向けに再 輸出し、転売により利ザヤを稼ぐ、再輸出ビジネスが行 われるようになってきている。また、これらの LNGを 取り扱うトレーダーの動きも活発になっている。  欧州での LNGビジネスのプレーヤーとしては、欧州 ユーティリティー企業やメジャー企業、トレーダー等が あるが、これら欧州企業の LNGビジネス動向について 概観しておきたい。 (1)欧州天然ガス市場のLNG輸入割合  欧州(EU加盟27カ国)は、2011年に天然ガスを4,479 億㎥消費した。これに対し、調達数量は域内生産が1,550 億㎥(34.6%)、パイプライン輸入2,085億㎥(46.6%)、 LNG輸入は844億㎥で、18.8%を占めた(BP統計より)。 欧州の LNG 受入基地と主要天然ガスパイプライン 図1 出所:各種資料を基に JOGMEC 作成 35 40 45 50 55 フランス フランス ドイツ ドイツ デンマーク デンマーク ノルウェー ノルウェー ポーランド ポーランド ルーマニア ルーマニア ベラルーシ ベラルーシ ロシア ロシア ウクライナ ウクライナ ギリシャ ギリシャ イタリア イタリア スイス スイス オーストリアオーストリア チェコ チェコ スロバキア スロバキア ハンガリー ハンガリー ベルギー ベルギー オランダ オランダ アイルランド アイルランド イギリス イギリス モロッコ モロッコ アルジェリアアルジェリア チュニジアチュニジア ポルトガル ポルトガル スロベニア スロベニア スペイン スペイン ブルガリア ブルガリア セルビア セルビア South Hook LNG South Hook LNG Dragon LNG Dragon LNG Teesside GasPort(FSRU) Teesside GasPort(FSRU) Isle of Grain Isle of Grain Zeebrugge Zeebrugge Gate LNG Gate LNG Montoir de Bretagne Montoir de Bretagne Reganosa Reganosa Bilbao Bilbao Sagunto Sagunto Barcelona Barcelona Fos Cavaou Fos Cavaou Panigaglia Panigaglia Adriatic LNG Adriatic LNG Revithoussa Revithoussa Fos Tonkin Fos Tonkin Sines Sines Huelva Huelva Cartagena Cartagena 0 500 1,000km ガスパイプライン LNG受入基地 FSRU 主要なガス田

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(2)LNG基地利用形態の変化  欧州ではかつて、天然ガス消費量が多い国がある一方 で、資源に乏しく生産量の少ない国(スペイン、イタリア、 フランス等)を中心にLNGが輸入されていた。近年では、 ベルギーの Zeebruggeやオランダの Gate等、欧州の天 然ガスグリッドにアクセスしやすく、取引の拠点となる ハブ近傍に建設される基地も見られ、多様な原料ソース の一つとして、重要な役割を担っている。  一方、LNG受入基地の利用については、欧州での 2008年以降の景気後退や財政危機、ガス市場価格低迷、 LNG価格高等で基地稼働率が低下し、使用権保有は一 部企業にとって重荷になっている。2012 年に稼働を開 始したオランダの Gate基地は稼働率が低迷し、基地使 用権を持つDONGEnergy(デンマーク)は、使用権の一 部を2015年までの期間限定で他社に譲渡(3Bcm/年の うち、1Bcm/年をEnecoへ)したし、他社もEDFに権益 の一部を期間限定で譲渡している(数量、企業名は非公 開)。  このようななか、従来の LNG再ガス化による天然ガ ス供給に加え、基地使用権および購入した LNGの有効 利用策として、LNG再輸出(再販)ビジネスが始まり、 各基地が再輸出ビジネスに名乗りを上げている(2.(4) に詳述)。 稼働中の欧州 LNG 基地 表1 地域 国名 プラント名 (万トン)受入能力 貯蔵容量 合計 (万 kL)貯蔵設備 貯蔵容量 内訳 (kL) 受入開始年 会社および参加者(所有割合) 主な LNG 輸入先 欧州

オランダ Gate LNG、Rotterdam 880 54 3 3 × 180,000 2011 Vopak 42.5%、Gasunie 42.5%、Dong Energy 5%、 OMV 5%、E.ON Ruhrgas 5% N.A.

ベルギー Zeebrugge 660 38 4 1 × 140,0003 × 80,000 1987 Fluxys アルジェリア、カタール、トリニダード・トバゴ イギリス Isle of Grain 330 20 4 4 × 50,000 2005 National Grid アルジェリア、エジプト、トリニ ダード・トバゴ <expansion、Phase 2> 650 57 3 3 × 190,000 2008 N.A. <expansion、Phase 3> 500 19 1 1 × 190,000 2010 N.A. Teesside GasPort/Offshore (EBRV) 300 13.8 1 1 × 138,000 2007 Excelerate Energy N.A. Dragon LNG/Milford Haven 441 33 2 2 × 165,000 2009 BG 50%、Petronas 30%、4Gas 20% エジプト South Hook LNG/Milford Haven 1,550 77.5 5 (Expansion)5 × 155,000 2009 Qatar Petroleum 67.5%、ExxonMobil 24.15%、Total

8.35% カタール

フランス

Fos-Tonkin (Fos-sur-Mer) 404 15 3 2 × 35,000 1 × 80,000 1972 Elengy (GDF Suez100% ) アルジェリア、エジプト Montoir de Bretagne 735 36 3 3 × 120,000 1980 Elengy (GDF Suez100% ) アルジェリア、ナイジェリア、エジプト Fos-Cavaou 600 33 3 3 × 110,000 2010 Societe du Terminal Methanier de Fos Cavaou: Elengy (GDF

Suez100%) 72%、Total28% アルジェリア、ナイジェリア、エ ジプト スペイン Barcelona 1,260 84 8 2 × 40,000 2 × 80,000 4 × 150,000 1969 Enagas アルジェリア、アブダビ、リビア、 カタール、ナイジェリア、トリニ ダード・トバゴ Huelva 870 61.5 5 1 × 105,000 1 × 60,000 3 × 150,000 1988 Enagas アルジェリア、アブダビ、リビア、 カタール、ナイジェリア、トリニ ダード・トバゴ Cartagena 870 58.7 5 1 × 55,000 1 × 105,000 1 × 127,000 2 × 150,000 1989 Enagas アルジェリア、アブダビ、リビア、カタール、ナイジェリア、トリニ ダード・トバゴ Bilbao 520 30 2 2 × 150,000 2 × 150,000 (planned) 2003 Enagas 40%、RREEF 30%、 EVE 30% アルジェリア、ナイジェリア、カタール、トリニダード・トバゴ Sagunto LNG 640 45 3 3 × 150,000 2006 Saggas

(Union Fenosa Gas〈Eni 50%、 Gas Natural Fenosa 50%〉 42.5%、RREEF 30%、大阪ガ ス 20%、Oman Oil 7.5%) Xunta de Galicia 10%、 Commonwealth Bank 26%、 Union Fenosa Gas(Eni 50%、 Gas Natural Fenosa 50% ) 21%、Grupo Tojeiro 18%、 Caixa Galicia 10%、Sonatrach 10%、 Caixanova 5%

エジプト、オマーン エジプト、オマーン El ferrol LNG (Reganosa) 260 30 2 2 × 150,000 2 × 150,000

(planned) 2007

ポルトガル Sines 588 39 3 2 × 120,000 1 × 150,000 2003 Ren Atlantico ナイジェリア、カタール

イタリア

Panigaglia(la spezia) 260 10 2 2 × 50,000 1969 Eni アルジェリア Isola Di Porto Levante (Adriatic LNG)

/Offshore(GBS) 590 25 2 2 × 125,000 2009

Terminale GNL Adriatico Sri (ExxonMobil 70.7%、Qatar

Petroleum 22%、Edison 7.3% )カタール

ギリシャ Revithoussa 190 13 2 2 × 65,000 2000 DESFA アルジェリア

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(3)LNG輸入量の推移  欧州のLNG輸入量は2002年時点で2,496 万トンであったが、2011年には6,249万 トンとなり、10年間で2.5倍と大きな伸び を示した。これは、2008年以前の経済成 長期における消費量の増加に加え、英国 のLNG輸入開始が大きく影響している。  国別の輸入量推移を見ると、英国の輸 入量の伸びが著しいことが分かる。2011 年には1,873 万トンを輸入し、これまで 欧 州 第 一 の 輸 入 国 で あった スペ イン (1,788万トン)を抜き、欧州第1位(世界 では日本、韓国に次ぎ、第3位)の輸入国 となった。  英国では、北海での天然ガス発見と生 産開始に伴ってLNGの輸入の必要がなく なり、長らくその輸入は行われていなかっ た。しかし、2000年をピークに天然ガス 生産量が減少し続けていることを受け、 エネルギーセキュリティー上、LNGの導 入が必要と判断された。その結果、長く 操業を停止していたIsleofGrain基地の 運用再開(2005 年)とその後の拡張、 TeessideLNG基地(浮体式貯蔵・気化設 備FloatingStorageandRe-gasification Unit:FSRU方式、2007年開始)、South HookLNG基地、DragonLNG基地の運 用開始(2009年)によりLNG輸入インフ ラが整い、輸入量を大きく増やしている。  そのほか、イタリアの輸入量が 2010 年に増加しているが、これは Atlantic LNG受入基地の操業開始(2009年)によ るものである。同基地は、イタリアのユー ティリティー企業 Edisonが 80 %の基地 使用権を保有し、RasGas(カタール)との 460万トン/年の長期契約により主に同国 から供給されている。  産ガス国別の LNG輸入量推移を見る と、カタール産 LNGの輸入量の伸びが 著しいことが分かる。2002 年には欧州 の LNG輸入の 65 %を占めていたアル ジェリア産 LNGが 2011 年には 15 %程 度まで低下する一方、カタール産 LNG の輸入割合は 2002 年の 8 %から、2009 年以降急伸し、2011年には51 %を占め 0 10 20 30 40 50 60 70 80 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 United Kingdom Spain Portugal Netherlands Italy Greece France Belgium 百万トン 年 欧州 LNG 輸入量推移(合計値) 図2 出所:BP 統計 百万トン 年 0 5 10 15 20 25 30 35 40 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 Belgium France Greece Italy Netherlands Portugal Spain United Kingdom 欧州 LNG 輸入量推移(国別) 図3 出所:BP 統計 百万トン/年 年 0 5 10 15 20 25 30 35 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 U.S.

Trinidad & Tobago Peru Belgium Norway Spain Russian Federation Oman Qatar

United Arab Emirates Yemen Algeria Egypt Equatorial Guinea Libya Nigeria Australia Brunei Indonesia Malaysia 欧州における産ガス国別 LNG 輸入量 図4 出所:BP 統計

(5)

るまでになっている。  カタール産 LNG輸入量の急激な 伸びの要因は、2009 年をピークに 多くの LNG基地が新たに運用を開 始したこと、また、それに合わせ て多くの長期契約がカタール LNG (QatargasとRasGas)と結ばれ、そ れが履行されていることである。 図 4 および図 6 のとおり、欧州向 け長期契約数量の変化と輸入量実 績の推移は一致しており、2011 年 の長期契約数量である年間 3,200 万 トンに対し、実輸入量は 3,200 万ト ンであった。  一方、欧州全体の LNG長期契約 数量は、2011 年は年間 7,300 万ト ンであったが、実輸入量合計は6,250 万トンと、大きく乖か い り離している。こ れは前述のように、欧州における天 然ガス消費量の減少と、市場価格低 下に伴う逆ザヤの発生が欧州内で割 高な LNGの消費に影響したためで ある。しかし、多くの長期契約の LNGにはtakeorpay条項が存在し、 契約数量を引き取るか、引き取れな い場合には罰金を支払うことが必要 である。通常、takeorpay条項では、 契約数量に対し、例えば90 ~ 95% などの引き取り義務(契約により割 合は異なる。個々の契約における条 件は公開されていないため、詳細は 不明)があるため、契約数量より若干は引き取り数量を減 らすことができても、これほど減少するには何らかの対 応が必要だが、以下の対応が行われていると考えられる。  ①takeorpay条項の範囲内で許可された数量まで引 き取り量を減少させる  ②仕向け地条項がない、あるいは仕向け地条項が緩や かなLNGを他の地域・国(アジア、南米等)に転売 する  ※欧州向けのアルジェリア LNG、ナイジェリア LNG は仕向け地条項がない  ※イエメン LNGも仕向け地条項が緩やかと言われて いる  ③いったん欧州の LNG基地で受け入れ、他の地域・ 国(アジア・南米等)に再輸出する (4)LNG再輸出  欧州のLNG動向で特徴的なのは、「再輸出」というビ ジネスモデルである。再輸出とは、一度欧州の LNG基 地で荷降ろしを行った後、再ガス化を行わず、他の買い 主を見つけた上で再度 LNG船に積み込み、販売する方 式である。石油等で従来行われている方式が、LNGに 適用された一例である。  LNG再輸出は、2008 年にベルギーの Zeebrugge基地 で初めて行われた。2011 年から、スペインの 3 基地 (Huelva、Cartagena、Mugardos)からも行われるよう になり、2011 年の欧州基地からの再輸出量は約 100 万 トンであった。欧州全体の輸入量に対しては 1.6 %であ るが、スペインでは3.0 %、ベルギーでは9.3 %を占める 等、国・企業の状況にもよるが割合は今後もある程度増 % 年 0 10 20 30 40 50 60 70 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 U.S.

Trinidad & Tobago Peru Belgium Norway Spain Russian Federation Oman Qatar

United Arab Emirates Yemen Algeria Egypt Equatorial Guinea Libya Nigeria Australia Brunei Indonesia Malaysia 欧州における産ガス国別 LNG 輸入割合 図5 出所:BP 統計 欧州向けカタール産 LNG 長期契約数量 図6 出所:JOGMEC「天然ガスリファレンスブック」を基に筆者作成 0 5 10 15 20 30 35 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2016 2017 2018 2019 2020 百万トン/年 年 Poland United Kingdom Italy France Belgium Spain Europe(行き先不定)

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加していく可能性がある。  LNG再輸出が行われる理由は、 二つ考えられる。一つは、国内で 輸入した LNGを消費しきれず、 引き取り条項(TakeorPay)を満 たすために行うことが考えられ る。スペインは、景気後退や財政 危機によるエネルギー消費量の減 少、再生可能エネルギー導入量の 急伸により、天然ガス消費量が減 少しているが、LNGの長期契約 を多く抱えており、引き取り条項 を満たすためには LNGを再販す ることが必要なためである。  もう一つの理由は、トレーディ ング要素である。欧州の LNG価 格 は、 北 東 ア ジ ア や 南 米 向 け LNG価格より安いため、価格の 高い地域の顧客を見つけ出して 利ザヤを得ることができれば、 欧州でLNGを扱う企業(特にユー ティリティーやトレーダー)に とって利益性のある事業になる と思われる。  一つ目の理由(国内で消費しき れないLNGの再販)による再輸出 も、同様に LNG価格の高い他の 地域に販売することで利益を生み 出すことができ、地域の特性を生 かすことができるビジネスモデル となっている。  なお、本来なら再輸出を行わず、 LNG液化基地から直接買い手に 輸送できれば最も効率的だが、仕 向け地条項(長期契約等で行き先 が限定される条項)により、それができない場合は一度 基地で荷降ろしを行うことで契約条件を満たす、という ことになる。  再輸出については、ベルギー、スペイン以外の欧州基 地でも関心が高く、フランスのMontoirdeBretagne基地 では、操業者Elengy(GDFSuezの100%子会社)が2012 年1月に政府より承認を受け、再出荷が可能になった(2012 年 4月より再輸出開始)。また、ポルトガルのSines基地 も拡張工事完了後の2012年9月より再輸出事業を開始し、 再輸出可能なLNG受入基地は現在 7 基地となっている。 また、2013年にスペインのSagunto基地が再輸出を開始 する予定であり、オランダのGateLNG基地でも再輸出 について検討を行っている、と言われている。 (5)欧州の LNG ビジネス動向  欧州での LNGプレーヤーは、主にユーティリティー 企業、メジャー・上流事業者、トレーダー等であるが、 カテゴリーによって取り組み方は大きく異なる。それ ぞれのカテゴリーでの特徴的な動きについて、見てみ よう。 欧州 LNG 再輸出量推移 図7 出所:BP 統計 百万トン 年 0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 1.2 2007 2008 2009 2010 Spain Belgium 欧州 LNG 再輸出割合推移 図8 出所:BP 統計 % 年 0 2 4 6 8 10 12 14 16 18 20 2007 2008 2009 2010 2011 欧州LNG再輸出割合 Belgium再輸出割合 Spain再輸出割合

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(1)欧州ユーティリティー企業が保有するLNG上流権益  欧州ユーティリティー企業のLNG上流権益(自社権益 と し て ア ク セ ス で き る LNG数 量 ) は、GasNatural Fenosa(214万トン/年)以外少なく、GDFSuezの68万 トン/年、RWE:12万トン/年の3社、合計294万トン /年で2011年の欧州全輸入量の約5%に過ぎない。現下、 欧州ユーティリティー企業のなかには将来の LNGプロ ジェクトに対する権益保有を目指す動きも見られる (GasNaturalFenosa:AngolaLNGTrain2/GDFSuez: BonaparteFLNG〈オーストラリア〉/E.ON:アルジェリ ア/RWE:赤道ギニア/Centrica:OKLNG〈ナイジェリ ア〉。いずれも検討段階)。 (2) 欧州ユーティリティー企業が売り主となるLNG長期 契約(LNG上流権益保有分/ポートフォリオLNG)  上述のように、LNG上流権益を持つ欧州ユーティリ ティーは3社、合計294万トン/年であるが、RWEの保 有する SnohvitLNGの 12 万トン /年は自社以外の企業 に販売する長期契約を締結しているので自由度が低い (Trading等 へ の 活 用 が で き な い ) が、GasNatural Fenosa(UnionFenosaGasを含む)の214万トン/年お よび GDFSuezの 68 万トン /年は自社向けであるため、 自由度が高い。  一方、LNG上流権益を保有していない、あるいは決 して多い量とは言えないにもかかわらず、自ら購入した 長期契約LNGを活用し、「ポートフォリオ契約」として 自 ら LNGの 売 り 主 と し て 販 売 を 行 う 企 業 が あ る。 Iberdrola(スペイン)とGDFSuez(フランス)である。 ①Iberdrola  Iberdrolaは、スペインの LNG受入基地でいったん荷 降ろしをした後、スペインの基地を出荷元として、自身 の LNG長期購入契約をポートフォリオとして用いた ポートフォリオLNG販売に乗り出し、2011年に二つの 長期契約を結んだ。一つはデンマークのDONGEnergy に対し、GateLNG受入基地(オランダ)へ73万5,000ト ン/年、もう一つは、BPに対し英国のIsleofGrain基地 へ 36 万トン /年を供給するものである。同社の長期 LNG購入契約数量458万トン/年に対し、ポートフォリ オ販売契約は109万5,000トン/年で、約24%に及ぶ。  一方、欧州向けのアルジェリア LNGおよびナイジェ リア LNGは仕向け地条項がないため、LNG再出荷より も生産国から直接輸送したほうが有利と思われるが、 ポートフォリオ販売はスペインの基地からの再輸出を基 本としている。これは、両プロジェクトからの受け渡し 契約がEx-Ship(売り主側がLNG船を手配し、受け渡し 地点まで輸送)であり、船団の効率的な運用のため必要 最少限の船腹しかないことから、新たな LNG船の手配 が必要になることが大きな要因と考えられる。  スペインは、経済危機と国内市場での天然ガス販売量 の低下を受け、長期契約で購入した LNGの引き取り数 量を確保するため一部を販売する必要があるが、北東ア ジアや南米といった、より価格の高い市場へ再販するこ とで利益も生み出すことが可能となるビジネスモデルを 採っている。 ②GDF Suez  GDFSuezは 2011 年末までに、第三者向けに累計 135 カーゴ(820 万トン)の LNGを販売した。また、 2011年には、第三者向けとして48カーゴ、43.6TWh(約 285万トン、2010年比27%増)、アジア向けには25カー ゴ、23.3TWh(約 158 万トン、2010 年比 60 %増)の LNGを販売した。  GDFSuezは近年、アジアの主要なLNG買い主と短期、 中期の LNG売買契約を結んでおり、2010 ~ 2016 年の 間に合計1,080万トン(2012年9月現在)のLNGを販売 する計画を掲げている。契約により期間が異なるが、平

3.

欧州ユーティリティー企業のLNGビジネス動向

企業名 合計数量 内訳(万トン / 年)

Gas Natural Fenosa(Spain) 2 1 4 万トン / 年 SEGAS(Egypt):2 0 0、Qalhat(Oman):1 4 GDF Suez(France) 6 8 万トン / 年 Snohvit(Norway):5 0、Egyptian LNG:1 8

RWE(Germany) 1 2 万トン / 年 Snohvit:1 2

欧州ユーティリティー企業の LNG 上流権益

表2

(8)

均すると販売数量は長期 LNG購入数量の約 11 %に達す る。なお、現時点で長期のポートフォリオ契約はない。  GDFSuezにおいても Iberdrolaと同様、欧州向けの アルジェリア LNGとナイジェリア LNGは仕向け地条項 がないため、LNG再出荷よりも生産国から直接輸送し たほうが有利と思われるが、フランス国内の LNG基地 を再輸出可能とする取り組みを積極的に行ってきた。 GDFSuezの場合、ナイジェリアLNGは受け渡し条件が FOB(買い主側がLNG船を手配し、液化基地で受け取る) で買い主側の都合がつきやすいが、Ex-Shipと同様、 GDFSuezが保有、あるいは傭ようせん船する船団の効率的な運 用のため必要最低限の船腹しか持たないことから、新た な LNG船の手配が必要となることが大きな要因と考え られる。一方、イエメン LNGについては、アメリカ向 けで受け渡し条件が FOBのため、北東アジア向けに行 き先を変更しても船腹に余裕がある。このため、結果と 売り主 買い主 プロジェクト 数量(万トン / 年) Gas Natural Fenosa(Spain) →

Iberdrola Nigeria LNG 1 0 0 GAIL(India) 不明 (合計)2 2 0 Gas Natural Fenosa Qalhat LNG(1 4) 1 6 5 Union Fenosa Gas

(GNF(注):5 0 % -Eni:5 0 %) → Union Fenosa Gas(Spain) SEGAS LNG(2 0 0) 3 0 0

GDF Suez(France) →

GDF Suez Egyptian LNG(1 8) 3 6 0 欧州基地 Snohvit LNG(5 0) 5 0

GDF Portfolio(後述) ※(後述) 計 1,0 8 0(2 0 1 0~2 0 1 6) RWE(Germany) → Statoil(Norway) Snohvit LNG(1 2) ~ 1 7 5

Iberdrola Snohvit LNG ~ 1 1 3 Iberdrola(Spain) → DONG Energy(Denmark) スペイン基地より 7 3.5

BP(UK:Isle of Grain 向け) スペイン基地より 3 6 欧州ユーティリティー企業の売り主としての LNG 長期契約 表3 (注)GNF:GasNaturalFenosa 出所:各種情報、JOGMEC「天然ガスリファレンスブック」 ‥‥‥プロジェクト長期契約(上流権益保有分の販売) ‥‥‥ポートフォリオ契約 輸出国 プロジェクト 売り主 (万トン / 年)契約数量 契約期間(年) Algeria Arzew, Skikda Sonatrach 1 1 5 2 0 0 2 ~ 2 0 2 1 Nigeria Nigeria LNG Nigeria LNG 3 8 2 0 0 5 ~ 2 0 2 5 Nigeria LNG Gas Natural Fenosa 1 0 0 2 0 0 3 ~ 2 0 2 0 Norway Snohvit Statoil/RWE/Hess 1 1 3 2 0 0 6 ~ 2 0 2 3 - Eni ポートフォリオ Eni 9 2 2 0 0 2 ~ 2 0 1 8 長期契約数量合計 4 5 8 -Iberdrola の LNG 長期購入契約 表4 出所:JOGMEC「天然ガスリファレンスブック」 売り主 買い主 プロジェクト 数量(万トン / 年) 契約期間(年) Iberdrola → DONG Energy(Gate 向け) スペイン基地より 7 3.5 2 0 1 1 ~ 2 0 2 1 BP(UK:Isle of Grain 向け) スペイン基地より 3 6 2 0 1 2 ~ 2 0 2 2

ポートフォリオ LNG 販売契約数量 合計 1 0 9.5

-Iberdrola のポートフォリオ LNG 販売契約

表5

(9)

して仕向け地条項が緩やかと言われるイエメン LNGの 北東アジアへの仕向け地変更が、有用な手段として採ら れていると考えられる。  上流権益を多く持たないこれらのユーティリティー企 業が、長期契約で購入した LNGをポートフォリオとし て、売り主の立場で販売するためには、仕向け地条項が ない、あるいは柔軟な契約の LNGを持つか、仕向け地 条項を満たすためいったん受け入れを行い、再輸出する 必要がある。再輸出ビジネスを行う企業にとって、再輸 出可能な基地の使用権を持つことが重要な要素の一つと 思われる(3.(4)に詳述)。 (3) 欧州 LNG基地における使用権(regasification capacity)の保有  フランス、スペインといった従来 LNGを受け入れて きた国のユーティリティー企業は、自国内に多くの基地 使用権(再ガス化能力)を保有している(GDFSuez、ス ペイン企業等)。  一方、欧州域内での販売先の拡大や他国の市場へのア クセス、原料多様化の目的等から、現在では、伝統的な LNG輸入国以外のユーティリティー企業やメジャー企 業、上流事業者(LNG生産国のNOC)が、受入基地の使 用権を保有している。  ユーティリティー企業の LNG受入基地使用権の保有 は、GDFSuezが圧倒しており、欧州域内で 1,890 万ト ン/年(約26Bcm/年)、次いでE.ONの510万トン/年(約 7Bcm/年)となっている。これに、2009 年に稼働を開 始 し た イ タ リ ア の AdriaticLNGの 使 用 権 を 有 す る Edisonの460万トン/年(約6.3Bcm/年)、英国のIsleof Grain基地の使用権を持つ Centricaの 420 万トン /年、 オランダの Gate 基地の使用権を持つ DONGEnergyや EconGas、RWEの220万トン/年(3Bcm/年)が続く。 GDF Suez の LNG 長期購入契約 表6 輸出国 プロジェクト 売り主 (万トン / 年)契約数量 契約期間(年) Algeria Arzew, Skikda Sonatrach 2 5 03 7 0

1 3 0

1 9 7 2 ~ 2 0 1 9 1 9 7 6 ~ 2 0 1 9 1 9 9 2 ~ 2 0 1 9 Nigeria Nigeria LNG Nigeria LNG 3 3 1 9 9 9 ~ 2 0 2 1 Egypt Egyptian LNG El Behera NationalGas Liquefaction 3 6 0 2 0 0 5 ~ 2 0 2 5 Norway Snohvit GDF Suez 5 0 2 0 0 7 ~ Trinidad & Tobago Atlantic LNG BP/BG/Repsol 1 6 3(米国向け)3 4(米国向け) 1 9 9 9 ~ 2 0 1 82 0 0 0 ~ 2 0 2 0

Yemen Yemen LNG Total/Hunt/YemenGas/SK/KOGAS/

Hundai/Yemen 政府 2 5 5(米国向け) 2 0 0 9 ~ 2 0 2 9 長期契約数量合計 1,6 4 5 -出所:各種情報、JOGMEC「天然ガスリファレンスブック」 GDF Suez のポートフォリオ LNG 販売契約 (短・中期、2012 年 9 月現在) 表7 買い主 数量 締結時期 期間 KOGAS(韓国) 合計250万トン(41カーゴ) 2 0 1 0 年 9 月 2 0 1 0 年 9 月から 3.5 年間 CNOOC(中国) 合計260万トン(44カーゴ) 2 0 1 0 年 1 0 月 2 0 1 3 年から 4 年間 Petronas(マレーシア) 合計250万トン(41カーゴ) 2 0 1 1 年 5 月 2 0 1 2 年 8 月から 3.5 年間 Petronet(インド) 合計 6 0 万トン(9 カーゴ) 2 0 1 1 年 1 1 月 2 0 1 2 年 PTT(タイ) 合計 2 0 万トン(3 カーゴ) 2 0 1 2 年 6 月 2 0 1 2 年 KOGAS 合計160万トン(24カーゴ) 2 0 1 2 年 8 月 2 0 1 3 ~ 2 0 1 4 年(2 年間) GAIL(インド) 合計 8 0 万トン(1 2 カーゴ) 2 0 1 2 年 8 月 2 0 1 3 ~ 2 0 1 4 年(2 年間) 合計(2 0 1 0 ~ 2 0 1 6) 1,0 8 0 万トン(1 7 4 カーゴ) - 2 0 1 0 ~ 2 0 1 6 年 出所:JOGMEC「天然ガスリファレンスブック」

(10)

欧州 LNG 基地における基地使用権と再輸出可否

表8

国名 基地名 (百万トン / 年)再ガス化能力 所有権 (百万トン / 年)使用権 再輸出

UK

Isle of Grain 1,4 8 0 National Grid 1 0 0 % BP、Sonatrach:3 3 0Centrica、GDF、Sonatrach:6 5 0

Centrica、E.ON、Iberdrola:5 0 0 ─

Teesside(FSRU) 3 0 0 Excelerate Energy 1 0 0 % ─ ─

South Hook 1,5 6 0 Qatar Petroleum 6 7.5 %、ExxonMobil 2 4.1 5 %、Total 8.3 5 % Total、ConocoPhillips、EGL Chevron、Noble Clean Energy、Trafigura

(※数量不明) ─

Dragon LNG 6 0 0 BG 5 0 %、Petronas 3 0 %、4Gas 2 0 % BG Group + Petronas:6 0 0 ─

Belgium Zeebrugge (0.9Bcf/d)6 5 0 Fluxys 1 0 0 % Qatar Petroleum & ExxonMobil:3 3 0Distrigas:2 0 0

GDF Suez:1 3 0 ○

Netherlands Gate (1 2Bcm)8 8 0 Vopak 4 2.5%、 Gasunie 4 2.5%、 Dong Energy 5%、 OMV 5%、 E.ON Ruhrgas 5%

DONG Energy:1 4 0(2 0 1 5 ~:2 2 0) EconGas:2 2 0

RWE Supply & Trading:2 2 0 E.ON Ruhrgas:2 2 0 Eneco:7 0(~ 2 0 1 5) EDF:数量不明(~ 2 0 1 5)

France

Fos-Tonkin 3 8 0 Elengy(GDF Suez 1 0 0%) GDF Suez:3 8 0 ─

Montoir de Bretagne (1 0Bcm)7 2 0 Elengy(GDF Suez 1 0 0%) GDF Suez:6 5 0 EDF & 三井物産:7 0

Fos-Cavaou 6 0 0(8.2 5Bcm) Elengy(GDF Suez 1 0 0%)7 2% Total2 8% GDF Suez:3 2 0 Total:1 6 0

その他(第三者向け) ○

Spain

Barcelona 1,2 4 0(1.9 5 MM ㎥ /h) Enagas 1 0 0% E.ON:9 0 その他非公開* ─

Huelva 8 6 0(1.3 5 MM ㎥ /h) Enagas 1 0 0% GDF Suez:4 0、 Shell:3 0 E.ON:6 0

その他非公開* ○

Cartagena 8 6 0(1.3 5 MM ㎥ /h) Enagas 1 0 0% GDF Suez:1 2 0 その他非公開* ○

Bilbao 5 2 0 Enagas 4 0%、 RREEF 3 0%、EVE 3 0% 非公開*

Sagunto 6 4 0

Saggas(Union Fenosa Gas〈Eni 5 0%、 Gas Natural Fenosa 5 0%〉4 2.5%、 RREEF 3 0%、 大阪ガス 2 0%、 Oman Oil 7.5%)

非公開*

Reganosa 2 6 0(0.4 1 MM ㎥ /h)

Xunta de Galicia 1 0%、 Commonwealth Bank 2 6%、 Union Fenosa Gas(Eni 5 0%、 Gas Natural Fenosa 5 0%)2 1%、 Grupo Tojeiro 1 8%、 Caixa Galicia 1 0%、 Sonatrach 1 0%、 Caixanova 5%

非公開*

Portugal Sines 5 2 0(7.2Bcm) Ren Atlanco 1 0 0% 非公開※受け入れの90%がGalp Energia (2011年)

Italy

Panigaglia 2 6 0 Snam 1 0 0% 非公開(スポット /1 年 / 複数年の契約あり)※送出量の 7 0%(9 6 万トン)が Enel Trade、

2 9%(4 0 万トン)が Eni(2 0 1 1 年) ─

Adriatic LNG 5 8 0(8Bcm) Terminale GNL Adriatico Sri (ExxonMobil 7 0.7%、 Qatar Petroleum 2 2%、 Edison

7.3%) 1 0 0 %

Edison:4 6 0(8 0%)

第三者アクセス用:1 2 0(2 0%) ─

Greece Revithoussa 1 9 0 Desfa 1 0 0% 非公開(使用権申請方式) ※ DEPA:アルジェリアと 5 0 万トン /

年の LNG 長期契約を保有 ─

*スペイン基地使用権の詳細は非公開のため、使用企業の公表分のみ記載。スペイン企業各社(Endesa,GasNaturalFenosa,Iberdrola ほか) が使用権を有すると思われる。

(11)

(4) ユーティリティー企業における LNG再輸出ビジネ スの可能性  LNG再輸出ビジネスを行うには、再輸出が可能な設 備を保有した上で、政府に承認された基地からでなけれ ば再輸出は行えない。このことから、再輸出を行うため には LNGの再輸出が可能な基地の使用権を持つ必要が ある。  表9に見るように、ユーティリティー企業の再輸出可 能な基地の使用権保有についても、GDFSuezが他企業 を圧倒し、現状 1,270 万トン /年を有している。また、 数量は不明だが、スペイン企業も国内の LNG基地使用 権を有している。このような形で多くの欧州のユーティ リティー企業は、域内供給だけでなく再輸出の可能性も 持つことになると思われる。ただし、LNG基地使用権 すべてをそのまま再輸出に利用できるわけではない。荷 降ろしおよび再積み込みのため、LNG基地に 2 度にわ たって LNG船を着船させる必要があることから、全量 再輸出するとしても基地使用権の半分が限度であるし、 また、基地設備の冷却維持やボイルオフガスの発生によ る LNGの目減りも発生することから、実際には数量に 更に制約が発生する。その上、基地使用料金の支払いも 必要で、これらのコストを加算しても利益性のある地域 に販売することが可能であることが再輸出ビジネスを行 う上での条件となる。 欧州ユーティリティー企業の LNG 基地使用権 表9 企業名 国名 基地名 所有権 (万トン / 年)使用権 再輸出 GDF Suez (フランス) フランス Montoir de Bretagne 1 0 0 % 6 5 0 ○ Fos Tonkin 1 0 0 % 3 8 0 ─ Fos Cavaou 7 2 % 3 2 0 ○ ベルギー Zeebrugge ─ 1 4 0 ○ スペイン Huelva ─ 4 0 ○ Cartagena ─ 1 2 0 ○ 英国 Isle of Grain ─ 2 4 0 ─ 使用権合計:1,8 9 0(うち再輸出可能な基地使用権:1,2 7 0) E.ON (ドイツ) オランダ Gate 5 % 2 2 0 ─ スペイン Huelva ─ 6 0 ○ Barcelona ─ 9 0 ─ 英国 Isle of Grain ─ 1 4 0 ─ 使用権合計:5 1 0(うち再輸出可能な基地使用権:6 0) Distrigas (ベルギー) ベルギー Zeebrugge ─ 2 0 0 ○ 使用権合計:2 0 0(うち再輸出可能な基地使用権:2 0 0) DONG Energy (デンマーク) オランダ Gate 5 % 1 4 0(~ 2 0 1 5)2 2 0(2 0 1 5 ~) ─ EconGas (オーストリア) オランダ Gate 5 % 2 2 0 ─ RWE(ドイツ) オランダ Gate 5 % 2 2 0 ─ Edison(イタリア) イタリア Adriatic LNG 7.3 % 4 6 0 ─ Centrica(英国) 英国 Isle of Grain ─ 4 2 0 ─ Endesa(スペイン) スペイン 不明(スペイン国内) ─ 不明 ○ Iberdrola(スペイン) スペイン 不明(スペイン国内) ─ 不明 ○ 英国 Isle of Grain ─ 不明 ─ Gas Natural Fenosa

(スペイン) スペイン 不明(スペイン国内) ─ 不明 ○

(12)

(1)欧州下流事業(基地所有権、使用権保有)への参入  メジャー企業やLNG上流事業者、LNG生産国NOCの LNG基地使用権保有については、ベルギーのZeebrugge 基地(ExxonMobilおよびQatarPetroleum)およびフラ ンスのFos-Cavaou(Total)を除くと、2009年に運用を 開始した英国の SouthHookおよび DragonLNGに集中 する。また、既存基地への参入数量はわずかであり、 LNG下流事業への参入は最近の動きであることが分か る。また、英国ではNBP(NationalBalancingPoint)市 場価格にリンクして取引されているが、その価格で LNGを持ち込めることがメジャーや上流事業者の強み であろう。  LNG生産国 NOCの参入も見られるが、特にカタール の QatarPetroleumの受入基地事業参入が興味深い。 Zeebruggeや SouthHookで所有権、あるいは使用権を 保有する企業は、主にカタールでQatarPetroleumとと もに LNG開発を行っているメジャー企業である。特に ExxonMobilと共同で多くの所有権、もしくは使用権を 保有している。このことが、近年、英国とベルギーでカ タール LNGの輸入量、輸入比率が飛躍的に増加してい る大きな要因と思われる(カタールLNGについては、英 国の Centricaも 2011 年 4 月、英国の IsleofGrain基地 向けに240万トン/年の3年契約を結んでいる)。 (2) メジャー・上流事業者における LNG再輸出ビジネ スの可能性  メジャーや上流事業者も再輸出可能な基地使用権を一 部保有してはいるが、そもそも自社が上流権益から保有 する LNGに対し価格面や仕向け地について優位な条件 を持っていると思われることから、再輸出ビジネスを行 う必要性はない、あるいは必要性がかなり低いビジネス である、と言える(表10)。

4.

メジャー・上流事業者、LNG生産国NOCのLNGビジネス動向

メジャー・上流事業者、LNG 生産国 NOC の LNG 基地使用権 表10 企業名 国名 基地名 所有権 (万トン / 年)使用権 再輸出 BP 英国 Isle of Grain ─ 不明 ─ Shell スペイン Huelva ─ 3 0 ○ Barcelona ─ 9 0 ─ Total フランス Fos-Cavaou 2 8 % 1 6 0 ○ 英国 South Hook 8.3 5 % 不明 ─ ConocoPhillips 英国 South Hook ─ 不明 ─ Chevron 英国 South Hook ─ 不明 ─ ExxonMobil

ベルギー Zeebrugge ─ 3 3 0(QP と共有) ○ 英国 South Hook 2 4.1 5 % ─ ─ イタリア Adriatic LNG 7 0.7 % ─ ─ BG Group 英国 Dragon LNG 5 0 % (Petronas と共有)6 0 0 ─ Sonatrach

(アルジェリア NOC) 英国 Isle of Grain ─ 不明 ─ Petronas (マレーシア NOC) 英国 Dragon LNG 3 0 % 6 0 0(BG と共有) ─ Qatar Petroleum (カタール NOC) ベルギー Zeebrugge ─ (Exxon と共有)3 3 0 ○ 英国 South Hook 6 7.5 % ─ ─ イタリア Adriatic LNG 2 2 % ─ ─ 出所:各種情報、JOGMEC「天然ガスリファレンスブック」

(13)

 近年、トレーダーによる LNGの動きも活発になって いると考えられる。ただし、その取り扱い数量や商流の 詳細について把握することは難しい。  こうしたなか、Vitolは実取引数量を公表しているが、 それによると、2012 年の欧州向け天然ガスの数量は 250 億㎥で、欧州全体の天然ガス消費量の約 6 %、LNG 取り扱い数量が230万トンで世界全体のLNG取引量(2 億4,100万トン)の約1%と、プレゼンスを見せ始めてい る様子がうかがえる。  主なトレーダーによる LNG・天然ガスの取り扱い状 況(表11)から、以下の動きがうかがえる。  ① 天然ガス市場が存在する欧州、北米で、天然ガスの トレーディングビジネスを展開  ②LNG生産者からLNGを購入し、LNG消費国の企業 に販売(LNGトレーディング)  ③欧州や米国の LNG再輸出施設にアクセスし、余剰 LNGの購入・販売を実施(LNGトレーディング)  いずれも価格が安い地域でLNG・天然ガスを購入し、 価格が高い地域に売却する、アービトレージ(鞘さや取り)ビ ジネスである。世界3大ガス市場間のガス価格差が大き く、欧州で天然ガス消費量が落ちている一方、北東アジ アや南米で旺盛な需要がある現状は、トレーダーにとっ てチャンスであると言える。

5.

トレーダーのLNGビジネス動向

主なトレーダーによる LNG・天然ガス取り扱い状況 表11 企業名 総売上高(十億ドル)(2 0 1 2 年) 取り扱い品目 動向 LNG 天然ガス Vitol Group (スイス・オランダ) 3 0 3 ○ ○ 欧州向け天然ガス:2 5Bcm/ 年(2 0 1 2 年) LNG取り扱い量:230万トン/年(2012年) ※いずれも実取引数量 Glencore International (スイス) 2 1 4 - ○ 主に欧州で天然ガス取引西アフリカで石油ガス探鉱・生産活動 Cargill(米) 1 3 4 - ○ 北米、欧州で天然ガス取引 Trafigura(スイス) 1 2 0 ○ ○ ・ アルゼンチン、チリ、インド、ドバイ、 クウェート、北東アジアで LNG 供給契約 を保有 ・ 欧州、米国の LNG 再輸出施設へのアク セス ・ 2 0 1 3 年 2 月、アンゴラの国営企業 Sonangol のトレーディング部門 Soraci と Trafigura 子会社 DT Group が LNG のト レーディング JV を設立 ・ 北米、欧州の天然ガスハブで活動 KOCH INDUSTRIES(米) 1 1 5 ○ ○ 2 0 1 2 年に LNG 事業開始主に欧州で天然ガス取引 NOBLE GROUP (中国〈香港〉) 9 4 ○ ○ 2 0 1 2 年 1 0 月、英国 South Hook LNG 基 地のスペア LNG 輸入キャパシティーを獲 得(数量不明) Gunvor International (オランダ・スイス) (2 0 1 1 年)8 0 ○ ○ ・ ペルー、ナイジェリア、カタール、トリ ニダード & トバゴ等の LNG のアービト レージ ・ 欧州、米国の LNG 再輸出施設へのアク セス MERCURIA ENERGY GROUP(スイス) (2 0 1 1 年)7 6 ○ ○ 欧州および北米の天然ガス卸売市場に参画LNG取引も実施 ※ Vitol を除き、LNG 取り扱い数量に関する記載はない。 出所:各社ホームページ

(14)

 欧州では、従来の LNGビジネスに加え、これまで述 べてきたような LNG再輸出ビジネスや LNGトレーディ ングといった、従来とは異なる動きが見られることはお 分かりいただけたと思う。とりわけ LNG再輸出ビジネ スは一つの顕著なトレンドであり、以下にそのインプリ ケーションをまとめておきたい。  ①LNG再輸出ビジネスは、欧州企業が以前から石油 で行っているスキームの LNGへの適用である。市 場を俯ふ か ん瞰し、自らが利益を生み出すためのスキーム を見出すプロセスには、学ぶべきところがある。  ②しかし、日本を拠点に行うのはどうか。LNG購入 価格が最も高い地域で、転売で差益を出すことが非 常に難しい環境にあること、また、最大の消費国で、 ストックの余裕も限定的であることから、LNG再 輸出ビジネスを日本を拠点に行うのは、なじまない ビジネスモデルと思われる。  ③ とはいえ、このビジネスモデルを活用できるか、検 証することは重要と思われる。例えば、日本のユー ティリティー企業や商社が、再輸出可能な基地に使 用権を保有し、安い市場で購入した LNGを持ち込 む、またはスワップすることは可能か、といったス タディーも意義あるものと思われる。  ④ただし、これはあくまで過渡的な対応と思われる。 日本に適切な価格で天然ガスを導入するためには、 そのための価格交渉や、仕向け地条項の撤廃等が必 要で、それには時間を要するが最も正攻法的な対処 の仕方であると思われる。

6.

インプリケーション

執筆者紹介 大貫 憲二(おおぬき けんじ) 早稲田大学大学院修了。 東京ガス株式会社入社後、主に LNG 受入基地の操業技術、操業管理等に従事。2011 年 7 月より JOGMEC に勤務し、2013 年 4 月、 東京ガスに復職。 趣味は温泉巡り。かつて 1 日に 6 湯巡ったこともあったが、温泉巡りが思った以上にハードであると分かり、現在は一つの温泉をゆっ くり楽しむことにしている。

参照

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