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Microsoft Word - K  租税法務学会用原稿

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インバウンド観光業者の海外旅行会社に対するに対する消費税の輸出免税

税理士 向山 裕純 はじめに 日本の政策として日本への観光客の誘致を進めようと、国土交通省に観光庁が設置され、 海外からの観光客の誘致を積極的に進めている。その折りに3・11東日本大震災が発生 し、特に福島の原子力発電所のメルトダウンを嫌って、海外からの日本への観光客が大減 少している現実は知られていることだろう。 その日本に対する悪イメージを払拭させ、外国人観光客の誘致を図らなければならない ところ、日本の消費税制はそれを拒んでいるようである。本論では、包括型旅行商品(い わゆるパック旅行)について、消費税の輸出免税の考え方について考えてみたい。 なお、本事例は東京地裁に提訴されている。 1 事実 (1) 事案の概要 本件は、旅行業を営む審査請求人(以下「請求人」という。)が、日本国内旅行をパッケ ージ商品として外国法人に販売した取引は、消費税法第 7 条《輸出免税等》第 1 項各号に 規定する消費税が免除される課税資産の譲渡等(以下「輸出免税取引」という。)に該当す るとして、その売上げを消費税の課税標準に含めないで消費税及び地方消費税(以下「消 費税等」という。)の確定申告をしたのに対し、原処分庁が、当該売上げのうち日本国内に おける飲食、宿泊、輸送等のサービスの提供に係るものは、請求人の非居住者に対する日 本国内における役務提供の対価であり輸出免税取引には該当しないとして消費税等の各更 正処分及び過少申告加算税の各賦課決定処分をしたところ、請求人が、これらの処分の全 部の取消しを求めた事案である。 (2)基礎事実 イ 請求人は、平成 17 年 9 月○日に、旅行業及び観光ガイド業などを業務目的として、J 国に所在する E 社を主な出資者として設立された内国法人である。 ロ E 社は、J 国において旅行業を営んでおり、日本国内に支店、出張所その他の事務所を 有していない。 ハ 請求人は、E 社が主催する訪日旅行(以下「本件訪日ツアー」という。)に参加する J 国人旅行者(以下「本件旅行者」という。)の日本国内での飲食、宿泊、輸送等に係るサー ビスの提供機関(以下「各種サービス提供機関」という。)を手配し、それらを組み合わせ た日本国内旅行を企画し、パッケージ商品(以下「本件国内パッケージツアー」という。) 1

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として E 社に販売している(以下、この取引を「本件取引」という。)。 ニ E 社は、請求人から購入した本件国内パッケージツアーに J 国と日本との間の交通手段 等を組み合わせ、本件訪日ツアーとして J 国内で販売している。 ホ 請求人は、本件取引に当たり、E 社との間で、平成 17 年 10 月 31 日に、E 社に販売し た本件国内パッケージツアーの内容を履行する義務が請求人にあるとする内容の業務提携 契約及び業務提携附属約定を締結した。 へ 請求人は、本件国内パッケージツアーを企画するに当たり、日本国内のレストラン、 ホテル、バス会社等の各種サービス提供機関との間で各サービスに関する契約(又は覚書) を交わした。 ト 請求人は、本件訪日ツアーごとに作成した「ツアー別損益表」(以下「ツアー別損益表」 という。)に本件訪日ツアーに組み込まれた本件国内パッケージツアーに係る売上金額、仕 入金額等を記載している。ツアー別損益表の売上金額の合計額は、請求人の損益計算書の 本件取引に係る売上金額の合計額と一致している。また、ツアー別損益表の仕入金額には、 上記への契約により請求人が各種サービス提供機関に支払った金額が含まれている。 チ 請求人は、本件各課税期間において、本件取引を輸出免税取引としてその売上金額を 課税標準の額に含めず、また、各種サービス提供機関に支払った飲食、宿泊、輸送等の対 価(費用)の額を課税仕入れの額として消費税等の申告をした。 リ 原処分庁は、本件取引のうち日本国内における飲食、宿泊、輸送等の役務の提供につ いては、非居住者が国内において直接便益を享受するものであるから、消費税法施行令第 17 条第 2 項第 7 号の規定により輸出免税取引に該当しないとして本件各更正処分等をした。 2 争点 本件取引のうち飲食、宿泊、輸送等の役務の提供は、消費税法第 7 条第 1 項第 5 号及び 消費税法施行令第 17 条第 2 項第 7 号に規定する輸出免税取引に当たるか 2

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3 争点に対する当事者の主張 原処分庁 請求人 本件取引のうち日本国内における飲食、宿泊、輸送 本件取引は、請求人が、日本国内の各種サービス提 等の役務の提供については、請求人が各種サービス提 供機関からレストラン、ホテル、バス等の利用につき 供機関から役務の提供を受け E 社を経由して非居住者 購入した上、それらを自らの企画に基づき組み合わせ である本件旅行者に提供したものと認められる。 て、非居住者である E 社に対して一体となった本件国 これは、消費税法施行令第17条第2項第7号ロまたは 内パッケージツアーを販売しているものである。 ハの非居住者に対して行われる役務の提供で国内におけ 本件国内パッケージツアーにおける飲食、宿泊、輸 る飲食または宿泊及びこれらに準ずるもので国内におい 送等の役務は各種サービス提供機関から本件旅行者に て直接便益を享受するものに該当する。 提供されているものであり、請求人は E 社に対して飲 したがって、本件取引のうち日本国内における飲 食、宿泊、輸送等の役務の提供をしていない(E 社は 食、宿泊、輸送等の役務の提供については、輸出免税 国内において飲食、宿泊、輸送等の役務を直接享受 取引に該当しないから、原処分は適法である。 するものではない。)。 したがって、本件取引のうち日本国内における飲 食、宿泊、輸送等の役務の提供は、消費税法施行令第 17条第2項第7号ロまたはハには該当せず、輸出免税取 引に該当するから、原処分は違法である。 Ⅱ 審判所の判断 <平成23年6月14日裁決・棄却・裁決事例集83集1011頁(要旨)、LEX/DB26012477> (1) 認定事実(筆者において要約) 請求人の提出資料、原処分関係資料及び当審判所の調査の結果によれば、以下の事実が 認められる。 イ 本件取引の対価の額(売上金額)は、本件国内パッケージツアーに要する飲食、宿泊、 輸送等の対価の額を積み上げた金額に請求人の利益の額を上乗せした金額を基に決定され ている。 ロ 本件旅行者は、本件国内パッケージツアーの日程に基づき、国内において各種サービ ス提供機関から飲食、宿泊、輸送等の役務の提供を受けており、国内において直接便益を 享受している。 ハ 本件旅行者が本件国内パッケージツアーにおいて各種サービス提供機関から受けた飲 食、宿泊、輸送等の役務の提供に係る対価は、請求人から各種サービス提供機関に支払わ れている。 3

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(2)-略- (3) 当てはめ イ 本件取引について (イ) 請求人は、E 社に対して本件国内パッケージツアーを販売しているところ、本件取引 の対価の額は、飲食、宿泊、輸送等の役務の提供に係る対価の額を含む本件国内パッケー ジツアーに要する費用の額を積み上げた金額に請求人の利益の額を上乗せした金額を基に 決定されていること、本件国内パッケージツアーにおける本件旅行者の国内における飲食、 宿泊、輸送等の役務の提供に係る対価が請求人によって実際に各種サービス提供機関に支 払われていること等を考慮すると、請求人が E 社から受領する本件取引の対価の額の中に は、非居住者である本件旅行者が各種サービス提供機関から直接便益を享受する飲食、宿 泊、輸送等の役務の提供の対価に相当する金額が含まれているものと認められる。 (ロ) 本件旅行者が飲食、宿泊、輸送等について国内において直接便益を享受していると ころ、これは消費税法施行令第 17 条第 2 項第 7 号ロ又はハに該当し、また、本件通達の非 居住者に対する「国内における飲食又は宿泊」、「電車、バス、タクシー等による旅客の輸 送」に該当するから、本件国内パッケージツアーに含まれる飲食、宿泊、輸送等の役務の 提供は輸出免税取引に該当しないと判断するのが相当である。 (ハ) そうすると、本件取引の対価の額のうち請求人が支払った本件旅行者の各種サービ ス提供機関から受けた飲食、宿泊、輸送等の役務提供に係る対価(費用)の額に相当する 金額については輸出免税取引の対価の額に該当しないこととなる。 この結果、請求人が輸出免税取引に該当するとして確定申告した本件取引の対価の額の うち、請求人が支払った本件旅行者の各種サービス提供機関から受けた飲食、宿泊、輸送 等の役務提供に係る対価(費用)の額に相当する金額(税抜き)については、上記のとお り、輸出免税取引に係る売上金額に該当しないこととなるから、当該金額を課税標準額に 加算した本件各更正処分はいずれも適法である。 ロ 請求人の主張について 請求人は、本件国内パッケージツアーにおける飲食、宿泊、輸送等の役務は、各種サー ビス提供機関から本件旅行者に提供されているものであって、請求人は E 社に対して飲食、 宿泊、輸送等の役務の提供をしておらず、また、E 社は飲食、宿泊、輸送等の役務を国内に おいて直接享受するものではないから、消費税法施行令第 17 条第 2 項第 7 号ロ又はハには 該当せず輸出免税取引に該当するため、原処分は違法である旨主張する。 しかしながら、同号は、役務提供の内容(便益の享受つまり消費が国内で完結する性質) に着目した規定であって、非居住者に対する役務の提供で国内において直接便益を享受す るものは輸出免税取引には該当しない旨規定したものであるところ、請求人が直接に本件 旅行者又は E 社に対して国内における飲食、宿泊、輸送等の役務の提供を行うものではな いとしても、上記イのとおり、非居住者である本件旅行者が国内において直接便益を享受 する役務については、同号ロ又はハに当たり輸出免税取引に該当しないと解されるから、 4

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請求人の主張は採用できない。 Ⅲ 研究……裁決に反対 1 包括旅行のインバウンド商品は旅行者個人に販売するものではない 本件原処分庁および本件審判所は、「請求人が各種サービス提供機関から役務の提供を受 けE社を経由して非居住者である本件旅行者に提供したものと認められる。」と認定してい る。しかし、請求人は日本国内役務の提供を海外旅行業者E社に「包括的」に販売している だけであって、役務の提供の対価を支払っているのはE社の旅行に応募した外国人旅行社が、 間接的に支払っているだけである。請求人はE社の旅行者に対して、日本国内で本件役務提 供があったわけではない。現在、このような見解での消費税の輸出免税にかかる調査が続 出しており、看過する訳にはいかない。 調査担当者が頻繁に、請求人のようなインバウンド業者に見せる説明図は次のようなも のである。私は、決してこれを是認するものではないが、原処分庁の見解として、紹介し よう。 国 (経由) (経由) 山下学教授は、同様事案の「鑑定意見書(抄)」1で、「◎海外から日本への航空料金は, 包括型旅行商品の仕入れ先の収入となり,X社の利益の基盤となるのは,日本観光旅行の企 画商品料のみであり、日本観光旅行の受注に際しては,移動に係る費用(バスのチャーター 料代等),宿泊の費用,観光施設の入場料,通訳に支払う通訳料,ガイド料等を積算し,包 括的に利益が上がるようにして,料金設定をしているが、日本観光旅行の役務の提供は日 本国内で行われ,役務の提供の支払は消費税の課税対象となるが,この支払は海外の旅行 会社を通じて支払われた包括型企画旅行の対価の中から支払われている。 外旅行会社 当社 国内パック旅行 ホテル 飲食 交通 他 旅行者(個人) ← ← ← ← ↓ 役務の提供を受けているのは個人 (経由) 5

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しかしながら,X 社が役務の提供をしているのは,「包括型企画旅行」商品そのものであ り,事業として対価を得て行われる役務の提供は,「日本観光旅行の企画商品」であって, これを海外の旅行会社に譲渡しているものである。 消費税法第2条第8号では「資産の譲渡等 事業として対価を得て行われる資産の譲渡 及び貸付け並びに役務の提供をいう。」とし,役務の提供が「資産の譲渡等」に含まれるこ ととしている。そして,同法第4条では「国内において事業者が行つた資産の譲渡等には、 この法律により、消費税を課する。」としながら,同法同条第3項第2号では,「役務の提 供である場合 当該役務の提供が行われた場所」が国内か否かを判断材料としている。 海外旅行会社に対する「包括型企画旅行」は,非居住者に対して行われる役務の提供で, 消費税法施行令第17条第2項7号のイ,ロ,ハのどれにも該当しない。非居住者である 海外旅行会社に一括して譲渡される役務の提供である。 したがって,本事例の包括型企画旅行商品の海外旅行会社への役務の提供は,全てが一 つのパッケージとして,消費税法第7条第1項第5号に定める「輸出免税等」に該当する。」 「X 社が取引を行っているのは、外国法人への『包括旅行商品』であって、個別の日本国内 の宿泊、飲食、交通等の手配料ではない。X 社は、『包括旅行商品』を海外の旅行社に直接、 譲渡している。旅行申込者(旅行者)に対して直接、役務の提供を行っているのではない。」 と意見表明をされ、数件の小職が依頼を受けた税務調査ではこれで争った。 また、川田剛教授の本裁決の事例研究においても、「本件取引において輸出免税に該当す るか否かが争われているのは-略-本件取引とは無関係の者である」「国内において実際に 役務の提供を行っている者は-略-バス会社、ホテル等である。したがって、消費税法施 行令第17 条第 2 項第 7 号の規定の文言を素直に読む限り、請求人は輸出免税の適用が受け られない同号イ~ハのいずれにも該当しない。その結果、請求人は輸出免税の適用が受け られると解さざるを得ない。」と述べられている。2 2 包括旅行商品の法的性格と手配旅行との相違 ここで、包括旅行商品といわゆる個人旅行(手配旅行)の違いを考えなければならない。 (1) 旅行業法の平成 16 年 5 月 27 日の改正により、企画旅行契約が創設された。この企画 旅行契約は、募集型企画旅行契約と受注型企画旅行契約に分類される。前者は、平成 16 年 改正以前の旧旅行業法の主催旅行、後者は、同旧法の包括料金特約付き企画手配旅行に相 当する3 旅行契約は、旅行業法に規定はあるが、同法には、その法的性質又は旅行サービスの瑕 疵に基づいて旅行者に生じた損害に関する旅行業者の契約責任については、直接規定を設 けられていない。民法典、商法典等にも存在しない契約類型である。そこで、企画旅行契 約の法的性質が何であるか問題となる。この法的性質を決定することにより、旅行業者の 当該契約にかかる債務の内容およびその範囲が明らかになる。よって、法的性質論を決定 することは、企画旅行契約の法解釈にとり重要になる。 6

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旧旅行業法下の主催旅行契約について、法的性質について、学説上争いがあった。主催 旅行契約の法的性質を委任契約または委任契約に準じると考えるもの、請負契約または請 負契約に準じると考えるもの、売買契約または売買契約に準じると考えるもの、がある。 これに対し、裁判例では、一貫して主催旅行契約の法的性質は、委任契約に準じるものと して捉えてきたと考えられる。このような差異は、旅行業者の旅行契約における交通チケ ットの手配、宿泊手配、スポーツ観戦チケットの手配、旅程管理等々の債務が結果債務な のか手段債務なのかの差異が影響している4 このような旧旅行業法下での裁判例、学説、さらには新旅行業法下でのものも含めた学 説の状況を踏まえたうえで、新旅行業法下での法的性質を再検討してみたいと思う。 (2) 各学説の検討と本件インバウンド業界の射程 下記の学説は、すべて主催旅行を中心としたアウトバンド業界での論議である。そこで 本件インバンド業界に当てはめて検討が必要である。とくに受注型企画旅行契約に焦点を 当てたい。 (1)準委任契約説の検討 1)「自己の計算」での手配行為 新旅行業法では、企画旅行契約の定義規定が2条4項にある。同条同項が示す同条1項1号 および2号に掲げられた旅行業務は、旅行業者が旅行者に確実に提供されるために、運送等 (関連)サービスを提供する者との間で旅行業者が自己の計算で運送等(関連)サービスの提 供に係わる契約を締結することとしている。すなわち、旅行業者が自己の計算で旅行サー ビスの手配行為を行っていることになる。実際には旅行業者は自己の計算で宿泊業者、運 送業者等の旅行サービス提供業者と取引が行われており、今回の改正以前から指摘されて いたところである。そして、今回の改正により条文上も明らかになったといえる。この改 正の趣旨は、旅行業者が旅行者に提供する商品についての一次的責任を負わせることで、 商品の質的向上を図るべきことにある。そのことは、また旅行者という消費者の保護にも 資するものである)。 このように、今回の旅行業法の改正で、この自己の計算での手配行為ということが明示 されたにもかかわらず、旧旅行業法下での主催旅行契約の法的性質論の議論をそのまま踏 襲して考えているものもある)。 しかし、この自己の計算での手配行為の法的性質は、旅行業者は、旅行者とは別の独立 の法的地位を有するのであるから、自己行為(自己計算取引〉に該当する。また、裁判例が、 旅行契約を委任契約に準じるものとしてきたのは、旧旅行業法2条1項および5項により主催 旅行契約が旅行サービスの「代理、媒介、取次」と規定していたことが背景にある。それ が、今回の改正で企画旅行契約ついては、「代理、媒介、取次」という文言が示されてい ないことからも、旅行業者は旅行者とは別の独立の法的地位を有し、その旅行業者が自己 の計算で行っている手配行為は自己行為(自己計算取引)ということがここでも明文で示さ れたことになる。そうであるならば、手配行為は手段債務であって、旅行業者は合理的な 7

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債務者として取引・社会生活上期待される注意・努力(合理的行動)をして宿泊業者、運送 業者、現地企画業者に取り次げば、義務を果たしたことになり、旅行サービスの提供はあ くまで、宿泊業者、運送業者、現地企画業者が行うものであるので、企画旅行契約を委任 契約に準じるものであると考えることは理論的に困難である。 なお、旅行業法第12条の2第1項は、旅行業者は、旅行者と締結する旅行契約に関し、旅 行業約款を定め、国土交通大臣の認可を受けなければならないとしている。そして、同法 第12条の3は、国土交通大臣が定めた標準旅行業約款と同一のものを旅行業約款とする場合 には、同法第12条の2第1項の国土交通大臣の認可を受けたものとみなすとしている。ここ で示されている標準旅行業約款27条2項には、旅行者が、運送・宿泊機関等の旅行サービス の中止が旅行業者の帰責事由がない場合には、損害賠償責任を負わないとして旅行契約の 法的性質を持っている。しかし、手配債務は手段債務とは解さず、結果債務と解するので、 債務者が契約において引き受けた利益状態としては、ある結果発生についての保証引き受 けがされているものであり、運送・宿泊機関等の旅行サービスの中止が、免責事由として の不可抗力に相当するものであるのか否かで、旅行業者の損害賠償責任の有無を決すべき である。 2)旅行業者と旅行者との利益衡量 東京地判平成元年6月20日判時1341号20頁が、「旅行サービスは、運送、宿泊等種々のサ ービスからなり、そのすべてを一旅行業者が旅行者に提供することは実際上不可能である から、旅行業者は旅行サービスの全部又は一部を運送機関、宿泊機関等の専門業者の提供 するところに依存せざるを得ないこと、旅行業者は、実際に旅行サービスを提供する運送 機関、宿泊機関等の専門業者を必ずしも支配下においているわけではないから、これらの 専門業者に対しては、個々の契約を通じて旅行者に提供させるサービスの内容を間接的に 支配するほかないこと、特に当該主催旅行の目的地が海外である場合には、これらの専門 業者が外国政府の統治下にあるため、旅行者に提供させるサービスに関する支配は一層制 約を受けることとなること等を考慮すると、前示の標準約款制定の基本的考え及びこれに 基づく前記諸規定は、少なくとも海外を目的地とする主催旅行契約に関する限り、不合理 であるとはいえないものというべきである。」という実質的な観点からの論拠を示してい る。しかし、この論拠については、専ら旅行業者の立場で考えられており、旅行者の立場 との利益衡量がなされていないように感じられる。 旅行者は消費者契約法上の消費者に該当する場合が通常である。そして、消費者契約法 は、消費者と事業者との間の情報の質及び量並びに交渉力の格差により、消費者契約にお ける両当事者の間で意思表示が形式的に合致していても、それらの表示から客観的に推断 される意思の内容が、消費者の真意とは必ずしも合致せず、消費者契約にトラブルが生じ ている。そして、その格差から消費者に自己責任が問えない場合に、消費者を保護して、 そのトラブルを解決しようとするものである。この消費者契約法の立法趣旨からしても、 旅行業者と旅行者との間には情報の質および量の格差は大きいので、むしろ旅行者の方を 8

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より保護すべきと考えられる。旅行者は、この情報格差により、どこの宿泊業者、運送業 者等の業者とまたどのような内容で契約締結すればよいかの判断力が旅行業者よりは劣位 する。まして、募集型企画旅行契約においては、旅行業者が宿泊業者、運送業者等の業者 を選定し、しかもその料金まで交渉した上で、パックで旅行代金を設定してから、旅行者 を募っているものである。これに対し、旅行者は旅行業者から提案された旅行サービス(直 接提供する業者をどの業者にするかも含めて)を受領する受動的な立場である。このように 旅行業者が自ら設定した以上、大抵の場合、旅行業者にも旅行計画作成上の過失があり、 旅行者でなく旅行業者が直接サービス提供する業者の不履行にかかるリスクも負担すべき であると考える。 したがって、企画旅行契約の法的性質は、請負契約に準じるものか売買契約に準じるも のと考えられる。 3 本件取引の法的性格(取引主体が、誰と誰の取引かの検証) 請求人は、E社が主催する訪日旅行(以下「本件訪日ツアー」という。)に参加するJ国 人旅行者(以下「本件旅行者」という。)の日本国内での飲食、宿泊、輸送等に係るサー ビスの提供機関を手配し、それらを組み合わせた日本国内旅行を企画し、パッケージ商品 (以下「本件国内パッケージツアー」という。)としてE社に販売している。 輸出免税取引であるかどうかを検証する前に、誰と誰の間の、どの取引を検証するのか を明確にする必要がある。本件裁決にかかる請求の対象となる取引は、日本の旅行会社で あるE社と、海外の旅行会社との間で行われたものである。この取引が輸出免税取引にあた るかどうかが争点となる。 (1) 旅行者はE社の取引相手ではない。 まず取引相手であるということが前提で、その 取引が輸出にあたるかということが条件となるのではなかろうか。 そして、E社と海外からの旅行者の間にはそもそも取引関係がない。E社の顧客(取 引先)は海外の旅行会社であり、海外の旅行会社の顧客こそ、海外在住の旅行者であ る。 これは代金支払いの経路からして、疑う余地のない事実である。 (2) 施行令の解釈に論理の飛躍 裁決には、消費税法施行令第17条第2項第7号ロまたはハに、「非居住者に対する飲 食または宿泊、バス、タクシー等による旅客の輸送」は輸出免税取引に該当しないとある が、該当するかしないかに関わらず、日本の旅行社と海外からの旅行客の間には、そもそ も取引の事実がないのでこの解釈は意味を為さない。 この規定は、日本のホテル等が非居住者と、直接にせよ間接にせよ取引を行った場合に、 その取引が輸出免税にあたらないとしたものである。 (3) 本件原処分庁および本件審判所は、本件契約書を、「請求人が各種サービス提供機 関から役務の提供を受けE社を経由して非居住者である本件旅行者に提供したものと認め 9

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られる。」として、受注型企画旅行契約の法的性質を準委任契約(民法第656条)説に誘導 された結論である。東京地裁平成元年6月20日の「台湾バス事故事件」の準委任契約説 で判断している。 しかし、この考え方は、前述のとおり、明らかに誤りである。企画旅行契約の法的性質 は、請負契約に準ずるものか、売買契約に準ずるものである。 したがって、本件のようなパッケージ旅行の日本旅行部分(インバウンド)を提供する 請求人のような在日の旅行業者の、包括的旅行商品を海外旅行業者に販売する行為は「輸 出取引」であり、輸出免税が適用されてしかるべきである。 以上の理由から、本裁決は、旅行業の法的性格を見誤ったものといえ、賛同することは できない。 おわりに … 訪日旅行促進事業と国際課税の矛盾 「観光立国ニッポン」を掲げて観光庁が主導する訪日旅行促進事業「ビジット・ジャパ ン」は、インバウンド旅行者を3000万人にすることを将来的目標としている。計画で は、その第1期プログラムとして2013年までに1500万人を、目指すとして観光や 買い物の目的で個人観光VISAの発給条件を緩和するなどして、近隣アジア諸国からの 旅行者の増加を見込む。最近同業界では、「ダイレクト・ブックイング」なる方式で日本 の旅行業者を通さず取引がされている。これらの現象は、片方の行政が、「観光立国ニッ ポン」を推進する中で、課税庁が、国際的インバウンド業者の課税方式を、請負契約でみ ないやり方は、矛盾している。 この観点からも、看過できない裁決である。 1 市川税務署長及び芝税務署長、豊島税務署長宛の消費税の税務調査時における「鑑定意 見書」。紙幅の関係で、筆者がだいぶ省略した。 2 川田剛「外国旅行業者に販売したパッケージ商品と輸出免税のとの関係について」税務 事例第44 巻 1 号(2012 年 1 月) 3堀竹学「企画旅行契約の法的性質」参照。 4「北東アジア研究」第18・19 合併号(2010 年 3 月)を参考にした。 10

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1 的 性 格 取引の 契約主体、日本の旅行社と旅行者(国外旅行社を経由 して、旅行者に対してそのまま享受したもの) 日本の旅行会社と海外の旅行会社 契約主体、日本の旅行社と旅行者(国 外旅行社を経由して、旅行者に対してそ のまま享受したものの) 原処分庁 請求人 審判所 本件国内パッケージツアーにおける本 件旅行者の国内における飲食、宿泊、輸 送等の役務の提供に係る対価が請求人に よって実際に各種サービス提供機関に支 払われていること等を考慮すると、請求 人が E 社から受領する本件取引の対価の 額の中には、非居住者である本件旅行者 が各種サービス提供機関から直接便益を 享受する飲食、宿泊、輸送等の役務の提 供の対価に相当する金額が含まれている ものと認められる。 本件取引の対価の額のうち請求人が支 払った本件旅行者の各種サービス提供機 関から受けた飲食、宿泊、輸送等の役務 提供に係る対価(費用)の額に相当する 金額については輸出免税取引の対価の額 に該当しないこととなる。 輸 出 免 税 該 当 性 本件取引のうち日本国内における飲食、宿泊、輸送等の役務の提供 については、請求人が各種サービス提供機関から役務の提供を受け E 社を経由して非居住者である本件旅行者に提供したものと認め られる。 これは、消費税法施行令第17条第2項第7号ロまたはハの非居 住者に対して行われる役務の提供で国内における飲食または宿泊 及びこれらに準ずるもので国内において直接便益を享受するもの に該当する。 したがって、本件取引のうち日本国内における飲食、宿泊、輸送 等の役務の提供については、輸出免税取引に該当しないから、原処 分は適法である。 本件取引は、請求人が、日本国内の各種サービス提供機 関からレストラン、ホテル、バス等の利用につき購入した 上、それらを自らの企画に基づき組み合わせて、非居住者 である E 社に対して一体となった本件国内パッケージツ アーを販売しているものである。 本件国内パッケージツアーにおける飲食、宿泊、輸送等 の役務は各種サービス提供機関から本件旅行者に提供さ れているものであり、請求人は E 社に対して飲食、宿泊、 輸送等の役務の提供をしていない(E 社は国内において飲 食、宿泊、輸送等の役務を直接享受するものではない)。 したがって、本件取引のうち日本国内における飲食、宿 泊、輸送等の役務の提供は、消費税法施行令第17条第2 項第7号ロまたはハには該当せず、輸出免税取引に該当す るから、原処分は違法である。 役務提供の内容(便益の享受つまり消 費が国内で完結する性質)に着目した規 定であって、非居住者に対する役務の提 供で国内において直接便益を享受するも のは輸出免税取引には該当しない旨規定

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2 本件旅行者又は E 社に対して国内におけ る飲食、宿泊、輸送等の役務の提供を行 うものではないとしても、上記イのとお り、非居住者である本件旅行者が国内に おいて直接便益を享受する役務について は、同号ロ又はハに当たり輸出免税取引 に該当しないと解されるから、請求人の 主張は採用できない。 請求人は、E 社が主催する訪日旅行(以下「本件訪日ツアー」という。)に参加する J 国人旅行者(以下「本件旅行者」という。)の日本国内での飲食、宿泊、 輸送等に係るサービスの提供機関(以下「各種サービス提供機関」という。)を手配し、それらを組み合わせた日本国内旅行を企画し、パッケージ商品(以 下「本件国内パッケージツアー」という。)として E 社に販売している(以下、この取引を「本件取引」という。)。

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