JAIST Repository: 多様な建築物を対象とした立地選定支援システムに関する研究
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(2) 多様な建築物を対象とした 立地選定支援システムに関する研究 910077 中野由紀子 北陸先端科学技術大学院大学 情報科学研究科. 2001 年 2 月 15 日 キーワード: 立地選定,. 1. GIS,. 建築基準法,. AHP,. 内部従属法.. はじめに. 近年,都市の構造が益々複雑化しているため,都市計画は膨大な量の情報を扱い慎重に 行う必要がある.都市計画の立案において,建築物の立地選定は重要なプロセスであり, 必要な作業のほとんどを占めている.大規模な都市計画の場合や,既に建築物が存在する 都市の再開発計画の場合,建築物の立地選定は複雑な問題となり,計算機による自動化が 必要とされている. 都市計画の立案に際し,地理情報システム (GIS) を用いることで,統合された地理情 報を利用し計算機による立地選定を自動的に行うための研究が現在盛んに行われている. 瀬川等 (1996) は保育施設を対象とし,保護者が施設を経由し通勤する行動をモデル化す ることで,最適な立地選定を行うシステムを提案している.奥貫等 (1997) は店舗を対象 とし,売上の推定に従来のハフモデルにネットワーク距離を用いたネットワークハフモデ ルを提案し,これを用いた店舗立地最適化手法を提案している.また,立地選定を意思決 定問題として扱い,この解決に AHP(Analytic Hierarchy Process) 法を用いた研究がいく つか存在する.Abdullah 等 (1994) はレクリエーション施設を対象に AHP を応用し,対 象エリアを建築物用,公園用,保護区用の 3 通りで評価する手法を提案し,実際のゾーニ ング計画との比較を行っている.百合本等 (1991) は工場の海外への立地を対象とし,立 地選定のプロセスを階層構造化し,AHP を応用した意思決定支援システムを構築してい る.しかし,これらの手法は,特定の建築物のみを対象としているため様々な種類の建築 物の立地選定を必要とする都市全体の計画には適用できない.. Copyright c 2001 by Yukiko Nakano 1.
(3) そこで本研究では多様な建築物を対象とした立地選定を行うシステムを提案する.最適 な立地位置の選定条件は,対象とする建築物によって大きく異なるため,AHP の階層構 造の最上層の評価基準に利用者からの立地に関する指定を直接用い,様々な建築物への対 応を考える.. 2. AHP(階層分析法). 立地選定を意思決定問題として扱い,この解決に AHP(解析分析) 法を用いた研究がい くつかある.AHP は Thomas L.Saaty(1980) が提案した解析手法であり,意思決定問題 を階層的に分解しモデル化する.このモデルは,人の持っている主観や勘が反映され,曖 昧な環境を明確に説明でき,意思決定者が容易に扱うことのできるモデルである.しか しながら,同一階層に取り入れる要素(評価基準)は互いに独立であることや,各要素に ウェイトを付けるための一対比較は利用者への負担となるため,要素数を 7 個程度に控え る必要がある.同一階層内の要素間に従属性を考慮した手法に内部従属法がある.これ は,同一レベルにある評価基準間あるいは代替案間において従属性 (相互影響) がある場 合に対して,別にペア比較で測定して,従属関係を定量的に内包したモデルである.本研 究で扱う利用者からの立地選定に関する指定には,従属性が考えられるため,この内部従 属法を参考にした立地選定手法を提案する.. 3. 立地選定支援システム 提案するシステム内の選定処理は次の 3 ステップから成る.. . . . 第 1 ステップでは,建築対象地域の地形や既に建物が存在する場所を調査し,物理 的に建築が不可能な個所を除く. 建築対象エリアの地形を表す地形データ,既存の土地の用途を表す状況データ,対 象建築物の外形および敷地の形状を表す建物 CAD データを用い候補地を絞る. 第 2 ステップでは,建築対象地域の用途計画や規制を調査し,建築基準法を用い法 的に建築が不可能な個所を除く. 建築対象エリアの用途計画や規制に関する情報を表す規制データ,対象建築物の材 料(木材,鉄筋等)を表すデータ,対象建築物の用途(住居,商業,工業等)を表 すデータを用い,建築基準法を適用させ,対象エリアから法的に建築不可能な個所 を除去する. 第 3 ステップでは,AHP を用い利用者からの様々な指定による選定を行う. 立地に関する指定の多くは,対象エリア内の施設や建築物,道路や鉄道等,GIS に よって得られるオブジェクトまでの距離に関する評価に置き換えられることに着目 した.選定処理を行う階層構造の最上層(レベル 1)の評価基準には,利用者から 2.
(4) の立地に関する指定を直接用いる.評価基準は,様々な建築物で要求されている条 件を調査し,また利用者の負担や過去の AHP に間する研究結果を考慮し, 「人口が 多い」, 「人の集まりやすさ」, 「交通の利便性」, 「周辺環境の安全性」, 「文化施設の 充実性」, 「都市的機能の充実性」, 「土地の購入のしやすさ」の 7 つに統合する.レ ベル 1 の評価基準では,従来の AHP での処理通り,一対比較によりウェイト付け を行う.次層のレベル 2 では,レベル 1 で指定された基準を建築対象エリア内のオ ブジェクトまでの距離に基づく評価基準の荷重線形和に分解する.評価基準の数は, 地理情報から得られるオブジェクトの種類によって定まる.レベル 2 のウェイトは レベル 1 の評価基準毎に「オブジェクトから離れているとよい」∼「どちらでもよ い」∼「近いとよい」を表す 3; 2; 1; 0; 1; 2; 3 の 7 段階で付けられる.対象エリ アをメッシュ状に分割し,各メッシュ毎にエリア内のオブジェクトまでの距離を求 め,7 段階のウェイトを用いた線形和によりレベル 2 の評価値を求める.最終的な 総合評価値は,レベル 1 のウェイトとレベル 2 の評価値の線形和で求められる.. 4. 提案システムを用いた実験結果. 国土地理院「数値地図 2500」を利用し,提案システムによる立地選定実験を行った.処 理は,1 図葉 (2km 1.5km) を 1 単位として処理を行い,対象エリア内のオブジェクトとし て公共の建物 17 種類,道路 4 種類,鉄道の駅の合計 22 種類を用いた.対象建築物を「住 宅」, 「病院」, 「コンビニエンスストア」, 「自動車修理工場」とし,対象毎にレベル 1 のウェ イト付けを行い,実験を行った.その結果,対象建築物によって選定位置が異なる結果が 現れ,提案システムの汎用性を示した.選定処理は,第 3 ステップの AHP を用いた立地 に関する指定による選定に最も処理時間が必要とされた.第 1 ステップの物理的な選定, および第 2 ステップの法的選定により選定エリアを絞ることで,第 3 ステップの処理を最 大で約半分に抑えることができた.. . 5. まとめ. 本研究では,多様な建築物を対象とした立地選定システムを提案した.本システムでは, AHP の階層構造の最上層の評価基準に,利用者からの立地に関する指定を直接用い,様々 な建築物への対応を試みた.また,建築基準法を取り入れ,対象建築物の用途等によって 建築不可能なエリアを除く等の処理を行い,選定結果の現実性の向上と,選定処理の高速 化を行った.本システムを用い,4 種類の対象建築物を想定した立地選定実験を行ったと ころ,建築物毎に異なる立地選定結果が得られ,システムの汎用性を示した.様々な建築 物が存在する都市全体の立地選定に応用できると考えられる.今後,個々の立地選定結果 の評価を行う必要がある.. 3.
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