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中学校第1学年の液体窒素に対する認識

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Academic year: 2021

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(1)Title. 中学校第1学年の液体窒素に対する認識. Author(s). 森, 健一郎. Citation. 釧路論集 : 北海道教育大学釧路校研究紀要, 第46号: 113-121. Issue Date. 2014-12. URL. http://s-ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/handle/123456789/7751. Rights. Hokkaido University of Education.

(2) 釧路論集 −北海道教育大学釧路校研究紀要−第46号(平成26年度) Kushiro Ronshu, - Journal of Hokkaido University of Education at Kushiro - No.46(2014):113-121. 中学校第1学年の液体窒素に対する認識 森   健一郎 北海道教育大学大学院教育学研究科高度教職実践専攻. Cognition on Liquid Nitrogen for Lower Secondary School Students Kenichiro MORI Hokkaido University of Education Advanced Teacher Professional Development Program. 要 旨  科学の基礎的・基本的な概念を身に付けさせるため,学習指導要領理科編では「エネルギー」 ,「粒子」などの枠組みが 示されている。本研究では, 「状態変化」を「粒子」の概念で捉えさせるための具体例として液体窒素の実験を取り上げ, その効果を検討した。公立中学校第1学年で実験を取り入れた授業を実施し,授業の振り返りを生徒に記述してもらい, その文章をテキストマイニングの手法で分析した。その結果, 「風船」 , 「花」など実験に用いた物体の変化に関する語や, 「面白い」 ,「入れる」など感覚や行為に関する語が相対的に多く見られ,「液体」, 「沸騰」などの状態変化や粒子に関す る記述は相対的に少なかった。これらのことから,液体窒素を用いた授業で状態変化についての理解を深めるためには, 「風船」など生徒の印象に残りやすい物体の変化と,内部の空気の動きとを関連づけるような事後学習を設定する必要性 があることが示唆された。. として紹介され,実践例も多数公開されている。ここで,. 1 序論. 液体窒素を中学校理科で活用した実践についての先行研究.  本研究のテーマは,粒子概念と関連づけた指導が期待さ. のうちで主なものを概観する4)。. れている中学校第1学年の状態変化の単元で液体窒素を教.  宮内(2012)は,第1学年「身のまわりの物質」単元に. 材として用いたときの生徒の認識の状態を検証し,より効. おいて「生徒を引きつける観察実験」という立場から,演. 果的な指導のあり方を検討することである。. 示実験の実例をいくつか示している。ここでは,沸騰する.  現行の学習指導要領における理科の指導内容について. 液体窒素の様子を観察させること,液体窒素に入れた物体. は,科学の概念の理解など基礎的・基本的な知識・技能の. (花,野菜,風船など)を用いた観察・実験,液体窒素に. 確実な定着を図る観点から, 「エネルギー」 , 「粒子」 , 「生. よって液化させた窒素を用いた観察・実験などが安全面の. 命」, 「地球」という4つの枠組みが示されている(文部科. 留意事項とともに紹介されている。. 学省,2008) 。そして,各学年の指導内容が,これらの枠.  薗部ら(2011)は,熱と運動に関した粒子概念の形成を. 組みによって再構成されて示されている。粒子の枠組みに. 促すため,第3学年を対象に,電流の内容と関連づけた実. よって再構成されている第1学年の指導内容は,「物質の. 践をおこなっている。これらの実践はミニテストと定期テ. 1). 2). 3). すがた 」, 「水溶液 」 , 「状態変化 」である。つまり,. ストによって評価がなされ,その結果,粒子の概念で現象. これらの内容を扱う際,粒子概念を意識した指導が教員に. を解釈する生徒が増加したことを報告している。そして,. は求められることになる。本研究では「状態変化」の理解. 粒子の概念は,さまざまな場面で繰り返し触れていくこと. を深めるために,液体窒素を教材として用い,生徒の認識. が必要であると述べている。. の状態を検証し,より効果的な指導のあり方を検討するこ.  山田ら(2010)は,小学校第3学年を対象に,「興味・. とを目的とした。このことは,学習指導要領に示されてい. 関心を高めさせる授業づくり」という観点から実践研究を. る学習内容の再構成を具体的な実践例として提案すること. おこなっている。実験と並行して,考えさせる課題を児童. に役立つと考える。. に示す形がとられている。この実践では,事前と事後のア.  液体窒素は,中学校の理科学習において,標準的な教材. ンケート調査の結果を比較することでその効果を検証して. ではないものの,理科に対する生徒の興味・関心を高める. いる。この実践の結果, 考えさせる課題を途中に入れても,. ための教材として,また,物質に関する理解を深める教材. 児童の好意的なアンケート結果が得られている。. − 113 −.

(3) 森   健一郎 山田ら(2006,2005)は,中学生にとって魅力のある授業. 筆者がまず1学級,その他の2学級を通常の教科担任が担. を展開するという観点から,液体窒素を用いた授業プラン. 当した。演示とグループでの観察・実験を組み合わせるか. をいくつか作成し,第1学年と第3学年を対象とした実践. たちをとって1単位時間(50分)で実施した。当該の単元. を多数実施し,生徒の理解度,集中度,興味・関心につい. 「身のまわりの物質」は,第1学年の最初に学習する単元. て評価をおこなったところ,どの項目でも高い評価が得ら. であるため,本来であれば単元の学習が終わり次第,発展. れたことを報告している。. 的な内容として扱うことが望ましいが,試験の時期や全体.  これらの先行研究から言えることは,1)液体窒素の実. の進行状況を考慮して,年度末の実施とした。. 験を取り入れることによって,生徒の集中度,興味・関心 の度合いなどが高くなること,2)特に第3学年について. (2)授業の流れ. は,粒子の概念と関連づけて考えられる生徒が増すこと,.  以下のような流れで授業を実施した。授業のねらいは授. の2つである。これらの報告の他にも,多数実践がなされ. 業者が意識するものとし,生徒には直接示してはいない。. ているものと思われるが,現段階においては,第1学年の. 問いを考え,その答えを教師が説明するときに,粒子概念. 理解の状況について,詳細な分析結果が報告されてはいな. が意識させることを心がけた。. い状況であるといえる。  そこで,科学の基礎的・基本的な概念を身に付けさせる. 授業のねらい. ための方法および内容を明らかにする研究の一部として,. 「物質の状態変化を粒子概念から捉えることができる」. 第1学年を対象に,液体窒素を教材とした授業を構想する.  ①「沸騰」とは「液体が表面から気化することであるこ. こととした。粒子概念と関連づけた指導が期待されている. と」を教科書5) の写真を見ながら復習する。この復. 状態変化の単元において,液体窒素を使った実験がどのよ. 習が必要なのは,「沸騰」を「液体の温度が100℃にな. うな面で効果的であるのかを明らかにすることで,より効. ること」と捉えている生徒がしばしば見られるためで. 果的な指導をするための視点が提供できると考える。. ある。.  効果的な面および効果的ではない面を明らかにするため.  ②液体窒素が−196℃であることを教科書6)に示された. に,構想した授業を実施した後,生徒に感想文を自由記述. 「主な物質の沸点」の表で確認してから,グループ毎. のかたちで書いてもらい,その文章をテキストマイニング. に液体窒素を配り,沸騰する様子を観察する。このと. の手法で分析した。調査票や実験のワークシートなどでは. き,一瞬であれば手を入れても大丈夫であることを演. なく,自由記述の感想文を調査の対象とした理由は,感想. 示によって示し,その理由を考えさせる7)。. 文の形式であれば,生徒が普段から用いている語彙や考え.  ③試験管に液体窒素を入れてから,試験管の表面をし. 方が出現しやすいと判断したからである。調査票や実験の. ばらく観察させる。沸点が窒素よりも高い酸素(−. ワークシートの場合,生徒自身が曖昧な理解しかなれさて. 183℃)が液化して表面に付着し始めるので,この物. いない理科用語でも, 「教科書に掲載されているから」 ,. 質が何であるかを考えさせる。また,空の試験管を液. 「ノートに書いてあるから」などの理由で書かれることが. 体窒素に入れると酸素が液化して試験管の底に溜まる. 考えられる。. が,このことも予想させた上で観察させる。.  分析の結果,「風船」, 「入れる」といった具体的な名詞.  ④膨らませてある風船8) を液体窒素に入れると中の空. や動詞を含む文章が最も多く書かれ,状態変化や粒子に関. 気が急激に収縮・液化するので,風船も急激に縮む。. する文章はあまり書かれていないことが明らかとなった。. その変化の様子を予想した上で観察させる。そして,. つまり,目の前の現象や,実験時におこなった自分の行為. 縮んだ風船を空気中に置くと,収縮・液化した風船が. についての印象が強く残っていることが示唆された。指導. もとに戻るので, その様子も予想した上で観察させる。. の際は,こういった傾向があることを意識した上で授業を.  ⑤風船に少量の液体窒素を入れ,風船の口をふさぐと中 の窒素が気化するため,風船が膨らんでくる。この変. 構想していく必要があると考えられる。. 化を予想させた上で観察させる。.  以下,その経過について報告する。.  ⑥ふたを閉めたペットボトルを液体窒素に入れると,風 船と同様に中の空気が急激に収縮・液化するので急激. 2 方法. に凹む。その変化の様子を予想した上で観察させる。.  構想した授業を実施し,生徒に感想文を書いてもらい,. そして,凹んだペットボトルを空気中に置くと,風船. それをテキストマイニングの手法で分析するという方法を. と同様にもとに戻るので,その様子も予想した上で観 察させる。. とった。.  ⑦金属製の鈴を液体窒素の中に入れ,冷やしてから取り (1)授業の概要. 出して振ると,入れる前よりも音が高くなる。その理.  釧路市内の公立中学校の第1学年3学級(計84名)であ. 由を考えさせる。これは, 金属が低温によって収縮し,. る。実施した時期は,平成25年の3月である。授業者は,. 振動数が増加するためである。. − 114 −.

(4) 中学校第1学年の液体窒素に対する認識 になるように配慮した上で,書き言葉に訂正した。.  ⑧液体窒素の中に花や野菜を入れて凍結させ,手で握る. (思ったけど→思ったけれど,してた→していた,な. などして砕いてみる。. ど).  ⑨液体窒素の中に炭酸水を入れて,ドライアイスができ ることを確認(ただし,実践時は固体ができたことは.  ③文法的に間違いのある表現は,意味を推測した上で訂. 確認できたが,氷とドライアイスの区別はつけられな. 正した。 (例:見れて→見られて,作れて→作ること. かった)。. ができて,など).  ⑩授業の後,考えたことやわかったこと,感想などを自.  ④1つの語としての「液体窒素」が「液体」と「窒素」 に分割されて抽出されないよう,「液体窒素」をひと. 由記述のかたちで記述させた。. つの語として抽出する設定とした。なお, 「液体」と「窒 (3)分析の手法. 素」がもともと離れて記述されている場合は,それぞ.  状態変化に関する生徒の認識に液体窒素を用いた実践が. れ別の語として抽出される。その他,いくつかの表現. どのような印象を与えたのかを生徒による自由記述から検. については,分割の必要がないと判断し,1つの語と. 証することとした。検証のために,自由記述の内容を分析. して抽出するものとした(例:今までで一番,興味深. する必要があるが,分析のプロセスを客観的にするため. い,など) 。. に,ソフトウェアによるテキストマイニングを行うことと.  ⑤生徒が書いた文章は,ほとんどのものが1人あたり複. した。. 数の段落から構成されていた。今回の分析では全体の.  利用したテキストマイニングソフトは,フリーソフト. 傾向を把握するという目的から,1文毎に改行をして. として公開されているKH Coder 2.beta.31である(樋口,. テキストファイルを作成し,個人の属性を含まない. 2012)。このソフトは,テキストデータから自動抽出した. データとした。その際,「また」 「そして」などの接続. 語を集計し,多く出現している語の確認,語と語との結び. 詞も削除した。さらに,原文の意味を損なわないよう. つきを解析,テキストの部分ごとの特徴の探索,内容が似. に句読点を調整した。. た文章の群の探索などをすることができる。これによって.  これらの処理の後,生徒がどのような語句を用いて本実. 恣意的な判断を排除し,得られたテキストデータの傾向を. 践を記述したのかを定量的に分析するために,頻出語を抽. つかむことができると考えた。. 出した9)。この表をもとに,分析と関係のない語句を削除.  授業の後に書かせた文章は,各自に本実践を通して考え. する作業をおこなった。例えば,「今日は液体窒素の実験. たこと・わかったこと・感想などを自由記述のかたちで作. をしました」という内容に由来する「今日」 , 「理科」,「実. 成させたものである。これらの文章をテキストファイルに. 験」の語句は,本実践の評価とは関係がないものと判断し. し,分析のためのデータとした。分析の流れとしては,ま. 削除した。また,文章表現一般に用いられる「思う」も削. ず,多く出現していた語を確認した。次に語と語の結びつ. 除した。ただし「今日の授業は楽しかったです」など,情. きの強さを階層的クラスター分析によって樹形図として確. 意面の評価に関わる記述は残した。これらの手順を経て,. 認し,書かれた語句をいくつのカテゴリーに分けるべきか. 84名の生徒から得られた文章は228本となった。そしてこ. を判断する。さらに,語と語の結びつきをネットワーク図. れらの文章を構成していた語数の総計は3681語であった。. (共起ネットワーク)として確認し,語句同士の関わりの. これらのうち,データのノイズを減らすために削除した語. 状態から,頻繁に見られた文章のパターンを考察する。こ. 句があるため, 分析対象となるのは1367語であった。また,. のことによって,生徒が実験からどのようなことを考え,. 異なる語の数は382語で,分析対象となるのは297語であっ. また感じとっていたのかを学級全体の傾向として総括する. た。この作業を経て得られた頻出150語が表1である。. ことができると考えた。このことは,授業の効果の評価と.  次に,この頻出150語の表をもとに,さらに分析対象と. しても有効であると思われる。. する語を出現回数が5回以下の語に限定した。これは,対 象となる語数が多すぎた場合,作成される図も煩雑なもの. (4)分析手順の詳細. になり,視覚化による分析が困難になるためである。基本.  授業の後に書かせた文章をテキストファイルにする際,. データとして,語と語の結びつきの強さを視覚化した階. 分析のノイズをできるだけ少なくするために以下のような. 層的クラスター分析による樹形図を得た(図1)。この図. 処理をおこなった。. では,最も結びつきの強い語同士が隣接するように描かれ.  ①ひらがなによる記述と漢字による記述が,異なる語と. る。この結果から書かれた語句をいくつのカテゴリーに分. 認識されることを防ぐため,生徒の記述の一部を漢字. けるべきかを判断したところ,5個のカテゴリーに分類す. に直した。 (例:けむり→煙,すごい→凄い,つめた. ることが適切であると判断した。. い→冷たい,よかった→良かった,さわる→触る,も.  さらに,語と語の結びつきをネットワーク図(共起ネッ. どる→戻る,わかる→解る,ちぢむ→縮む,ふくらむ. トワーク)として確認した(図2) 。この図の特徴として,. →膨らむ,くだける→砕ける,など). 1)強い共起関係(同時に出現する確率)が高いほど,太.  ②書き言葉と話し言葉が混在していたため,意味が同じ. い線で描かれること,2)出現数が多い語ほど大きい円で. − 115 −.

(5) 森   健一郎. − 116 −.

(6) 中学校第1学年の液体窒素に対する認識.       ࠗ㕥ࡢᐇ㦂࠘      ࠗ㢼⯪࡜࣌ࢵࢺ࣎ࢺࣝࡢኚ໬࠘      ࠗⰼ࡜㔝⳯ࡢኚ໬࠘          ࠗឤぬ࡟ࡘ࠸࡚ࡢグ㏙࠘              ࠗᾮయ❅⣲࡜Ⅳ㓟Ỉࡢ཯ᛂ࠘      ᅗ㸯 㝵ᒙⓗࢡࣛࢫࢱ࣮ศᯒ࡟ࡼࡗ࡚ᚓࡽࢀࡓᶞᙧᅗ࠾ࡼࡧ࢝ࢸࢦ࣮ࣜྡ ͤᩘ್ࡣ㠀㢮ఝᗘࢆ♧ࡍ㸦ᑠࡉࡃ࡞ࡿ࡯࡝㢮ఝᗘࡀᙉ࠸㸧 ࠋ − 117 −.

(7) 森   健一郎. ᅗ㸰 ඹ㉳ࢿࢵࢺ࣮࣡ࢡᅗ  ͤⰍࡢ⃰ࡉࡣㄒྠኈࢆ፹௓ࡋ࡚࠸ࡿ⛬ᗘࡢ┦ᑐⓗ࡞ᙉࡉ㸦⃰࠸࡯࡝ᙉࡃ࡞ࡿ㸧ࢆ⾲ࡋ㸪⥺ ࡢኴࡉࡣㄒྠኈࡢඹ㉳ࡢ┦ᑐⓗ࡞ᙉࡉ㸦ኴ࠸࡯࡝ᙉࡃ࡞ࡿ㸧ࢆ⾲ࡍࠋ 描かれること,3)語同士の結びつきを媒介している程度. カテゴリーの種類が多い場合,それぞれのカテゴリーの特. が円の濃さで表現されること, などが挙げられる。 例えば,. 徴が曖昧になるため,カテゴライズの効果が少なくなるこ. 図2の「風船」は「液体窒素」よりも出現回数が少ないた. とが予想される。今回は,5種類のカテゴリーに分割し. め,やや小さい円で描かれているが,媒介している語の数. た。これにより,書かれた文章が5種類の傾向に分けられ. は「液体窒素」よりも多いため,濃い色で描かれている。. ることになる。これらの結果については,上から順番にカ テゴリーに番号を付けて記述し,考察のために,含まれる 主な語句を参考にしてカテゴリー名を付けた。. 3 結果.  1番目のカテゴリーは,「音(出現回数13:以下数値の.  頻出150語のリストから樹形図(図1)と共起ネットワー. み記載)」 ,「鈴(12)」 ,「音(13) 」の3語のみで構成され. ク図(図2)を得た。まず,樹形図の結果を述べ,次に共. ている。語の組み合わせからカテゴリー名を『鈴の実験』. 起ネットワークの結果を述べる。. とした。  2番目のカテゴリーは, 「風船(47)」, 「縮む(22) 」, 「ペッ. (1)樹形図の結果. トボトル(16)」 ,「膨らむ(14) 」などの9語から構成され.  得られた樹形図は,任意の類似度の値を指定すること. ていた。語の組み合わせからカテゴリー名を『風船とペッ. で,いくつかのカテゴリーに分割することが可能である。. トボトルの変化』とした。. − 118 −.

(8) 中学校第1学年の液体窒素に対する認識  3番目のカテゴリーは,「花(30) 」 , 「野菜(21) 」 ,「パ. る状態変化の単元において,効果的な教材として認識され. リパリ(13)」の3語のみで構成されている。語の組み合. ている液体窒素を使った実験が,中学校第1学年の生徒に. わせからカテゴリー名を『花と野菜の変化』とした。. 対してどのような面で効果的であるのか,そして,どのよ.  4番目のカテゴリーは, 「楽しい(37) 」 , 「窒素(32)」 ,. うな面で効果が上がりにくいのかを明らかにすることが目. 「見る(25) 」 ,「びっくり(22) 」 , 「凍る(21) 」 , 「冷たい. 的であった。. (18) 」などの18語から構成されていた。18語中, 名詞は「窒.  頻出150語のリスト,樹形図から判断した5種類のカテゴ. 素(32) 」,「液体(12)」 , 「酸素(8)」 , 「テレビ(5)」の4. リー,共起ネットワークの結果から,今回の実践について. 語のみで,その他は感覚に関する語であった。組み合わせ. 考察されたことは以下の5点である。. からカテゴリー名を『感覚についての記述』とした。  5番目のカテゴリーは, 「液体窒素 (58)」 「入れる , (48)」,. (1) 『液体窒素と炭酸水との反応』のカテゴリーに含ま. 「面白い(46)」, 「凄い (43) 」 「炭酸水 , (26) 」 「出る , (18)」 「煙 ,. れる語は, 「液体窒素(58)」 ,「入れる(48) 」,「凄. (15)」などの9語から構成されていた。語の組み合わせか. い(43) 」, 「炭酸水(26) 」, 「出る(18)」 , 「煙(15) 」. らカテゴリー名を『液体窒素と炭酸水との反応』とした。. などの9語であった。これらの語の関係を共起ネッ トワークから判断すると,このカテゴリーは,『感. (2)共起ネットワークの結果. 覚についての記述』のカテゴリーと近い関係にある.  共起ネットワークを作成したところ,図2のような結果. と同時に, 「面白い(46) 」 ,「凄い(43) 」の語も含. が得られた。円の大きさは出現回数の相対的な差を示し,. んでいる。したがって,生徒の興味・関心を喚起で. 円の濃さは語同士を媒介している程度の相対的な強さ表し. きていたことは,このカテゴリーからも判断する. ている(濃いほど媒介している語が多い)。円と円をつな. ことができる。共起ネットワークを見ると,『花と. ぐ線は太いほど結びつきが相対的に強いことを示す。今回. 野菜の変化』 ,『感覚についての記述』 , 『液体窒素と. の分析では線の本数を60本と設定した。これ以上の本数に. 炭酸水との反応』のカテゴリーに含まれる語が,記. なると図が煩雑になり,可視化のメリットが損なわれると. 述全体の媒介をしていると判断することができる。. 判断したためである。したがって,登場回数が多くても他. しかし,これら3つのカテゴリーには状態変化に関. の語とのつながりが相対的に小さい語は,この図に描かれ. 係する語との関連が相対的に弱く,例えば「液体. ないことになる(例:登場回数37の「楽しい」 ) 。なお,こ. (12)」 ,「沸騰(7) 」 ,「空気(10) 」などの語は,共. の図は語相互のつながりの強さを相対的に可視化するため. 起ネットワークにおいては,ほとんど関連がないも. のものであるため,円の配置自体に特別な意味はなく,数. のとして描かれている。. 値を用いた記述にはならない。これらの特徴を踏まえたう. (2) 『鈴の実験』のカテゴリーに含まれる文章が,他の. えで,結果を以下のように整理した。1)語同士を媒介す. カテゴリーに含まれる語とほとんど関連していない. る頻度が最も多かった語は「入れる」と「風船」であった(ほ. ため,鈴の実験で音の高さが変化したことは印象に. ぼ同程度)。生徒が書いた文章は使用されている語の種類. 残ったものの,その他の現象と関連づけられていな. や数によってさまざまなパターンに分けることが可能であ. い可能性が高い。音が変化した理由を考察する場面. るが,この結果は,この2つの語が相対的に多くのカテゴ. は設けていたが,現象面にのみ注目していた生徒が. リーに出現していたことを意味する。2)次いで,語同士. ほとんどであったと考えられる。. を媒介する頻度が多かった語は「面白い」 「液体窒素」 , 「炭 ,. (3) 『風船とペットボトルの変化』のカテゴリーに含ま. 酸水」, 「花」であった(ほぼ同程度) 。これは,この4つの. れる語は, 「風船(47) 」 , 「縮む(22) 」 ,「ペットボ. 語が「入れる」と「風船」ほどではないが,相対的に多く. トル(16) 」, 「膨らむ(14) 」 などの9語である。共起ネッ. のカテゴリーに出現していたことを意味する。3)対照的. トワークから判断すると,このカテゴリーも他のカ. に,他の語とのつながりが相対的にほとんど見られなった. テゴリーとの関連が相対的に弱い。風船とペットボ. 語として「たくさん」, 「液体」 , 「沸騰」 , 「触る」 , 「知る」 , 「空. トルを用いた実験は,液体窒素を用いる際に紹介. 気」 ,「最初」 , 「テレビ」 , 「ドライアイス」の9語が挙げら. される代表的な実験であるが,今回の実践に関する. れる。これらの語は小さい円で描かれており,線も1本し. 記述は,現象面の変化を示す語のみで構成されてお. か描かれていない。相対的に少ないパターンの文章にしか. り,状態変化と関連づけた記述がほとんど見られな. 出現しておらず,なおかつ,その文章の数も少ないことを. い。風船やペットボトルの形の変化が強い印象を与. 意味する。4)「音」 , 「鈴」 , 「高い」 , 「知る」で構成され. えたものと考えられる。. た語群が他とつながらずに独立した状態で描かれている。. (4)『花と野菜の変化』のカテゴリーに含まれる語は, 「花(30) 」, 「野菜(21) 」 , 「パリパリ(13) 」の3.  . 語のみであった。共起ネットワークを見ると,この. 4 考察. カテゴリーも他との関連が相対的に弱い。『花と野.  本研究では,粒子概念と関連づけた指導が期待されてい. − 119 −. 菜の変化』の実験も, 『風船とペットボトルの変化』.

(9) 森   健一郎 の実験と同様に,液体窒素を用いる際に紹介される. とについては不十分であったと判断された。学習内容自体. 代表的な実験であるが,実験そのものの特殊性(凍. は印象に残っていたので,観察・考察する視点を検討する. 結した花や野菜の様子)が強い印象を与えたものと. ことによって,状態変化についての理解が深まると思われ. 考えられる。. る。. (5)『感覚についての記述』のカテゴリーに含まれる語 は, 「楽しい(37) 」 「窒素(32) , 」 「見る(25) , 」, 「びっ くり(22) 」, 「凍る(21) 」 , 「冷たい(18) 」などの. 謝辞. 18語であり,これらのうち14語は感覚に関する語で.  授業実践ならびに調査に協力していただいた釧路市立春. あった。 「楽しい(37) 」 ,「びっくり(22) 」などの. 採中学校の藤枝彰恵教諭に深く感謝申し上げます。また,. 語が相対的に多く出現していることから,生徒の興. 本稿の作成に際しましては,島根大学教育学部の栢野彰秀. 味・関心を喚起することは十分にできていたと思わ. 教授から貴重なご助言をいただきました。記して感謝いた. れる。. します。.  これらのことを総合すると,今回の実践では,印象に残 る実験によって,生徒の興味・関心を高めることはできた. 註. が,状態変化と関連づけることについては不十分であった. 1)主な指導内容は「身のまわりの物質とその性質(プラ. といえる。各カテゴリーを見ると,実験した内容はすべて. スチックを含む)」, 「気体の発生と性質」である。. 記述されていたので,学習内容自体は印象に残っていると. 2)主な指導内容は「物質の溶解」, 「溶解度と再結晶」で ある。. 判断できる。しかし,液体窒素の実験を経験するだけでは, 単元の学習内容の理解の深化に必ずしもつながらないこと. 3)主な指導内容は「状態変化と熱」, 「物質の融点と沸点」 である。. が示唆された。したがって,学習内容の相互の関連を意識 させるためには,観察・考察する視点についての指導方法. 4)「液体窒素」,「理科」 というキーワードでサイニィ. を検討しておく必要があると思われる。. (CiNii:NII学術情報ナビゲータ)による検索をおこ.  今回の記述の全体的な傾向として,「風船」が多くの語. なった結果である。これらの報告の他にも,多数の実. を媒介していたこと,また,「液体」や「沸騰」の語の使. 践がなされていると思われるが,研究の資料として公. 用回数が相対的に少なく,かつ,他の語との関連も少なかっ. 開されているものは,ここで言及した4報であった. たことが挙げられる。つまり,今回の授業においては, 「物. (2014年6月14日確認)。. 質の状態変化を粒子概念から捉えることができる」という. 5)教育出版『自然の探究 中学校理科1』 ,p.42. ねらいは設定されていたが,それが十分に達成されたとは. 6)教育出版『自然の探究 中学校理科1』 ,p.49. いえない。これらを考慮すると,「液体窒素に風船を入れ. 7)液体窒素の温度に比べると,手の表面の温度は非常に. た時の風船の変化」を「粒子概念から捉えさせる」という. 高温であるため,短時間であれば液体窒素中に手を入. 方向性で,具体的な課題を提示することが望ましい。具体. れても,気化した窒素が手の表面に被膜状に生じる。. 的な課題の書き方としては,「液体窒素に風船を入れた時. 安全面を考慮すると,この実験については教師の演示. の風船の変化を中の空気に注目して説明しよう」などが適. にとどめるほうが良い。. 切と思われる。「中の空気」で「風船の変化」を説明しよ. 8)この実験をする際は,丸い風船よりも細長い風船を用 いたほうが変化をすぐに観察できる。. うとすると,粒子の動きのモデルを用いることにつながり やすい。このような課題を中心に授業を構成し,事後に図. 9)このソフトでは,活用のある語は自動で基本形に訂正. 示や文章でまとめるなどの活動を加えることで, 当初の「物. がなされ,その上で抽出が実行される。. 質の状態変化を粒子概念から捉えることができる」という ねらいが効果的に達成されるものと思われる。. 参考文献 樋口耕一(2012),「社会調査における軽量テキスト分析の. 5 結果. 手順と実際−アンケートの自由回答を中心に−」,コー.  状態変化についての理解を深めるために,中学校第1学. パスとテキストマイニング,石田基広・金明哲編著,共. 年を対象に液体窒素を用いた授業を計画して実践し,授業. 立出版,pp.119-128. の後,自由記述の形式で感想文を書いてもらった。それら. 文部科学省(2008), 「学習指導要領解説理科編」,pp.3-15. の文章をテキストマイニングの手法を用いて分析したとこ. 薗 部 幸 枝,仲 矢 史 雄,増 田 伸 江,佐 藤 明 子,佐 藤 瑞 希,村 上 祐. ろ,今回の実践では,印象に残る実験によって生徒の興味・. (2011),「熱と運動に着目した粒子概念形成:電流から. 関心を高めることはできたが,全体としては,現象面や感. 「物質のミクロな状態」を考える」,日本理科教育学会. 覚に関する記述が相対的に多く,状態変化と関連づけるこ. 全国大会要項(61),p.174. − 120 −.

(10) 中学校第1学年の液体窒素に対する認識 山田洋一,黒鵜英輝,鈴木勲,黒鵜英輝,鈴木勲(2010), 「小学校3年生の理科の重要性について:理科教材とし て液体窒素を用いた授業実例研究」,宇都宮大学教育学 部紀要第2部60号,pp.7-14 山田洋一,南伸昌,鈴木勲,高山芳樹,松本良雄(2006) , 「中 学生に魅力ある理科授業展開(第3報):マイナス200℃か ら1000℃までの物質の姿」 ,宇都宮大学教育学部教育実 践総合センター紀要29号,pp.145-151 山田洋一,南伸昌,村上歩(2005) , 「中学生に魅力ある理 科授業展開(第2報) 」 ,宇都宮大学教育学部教育実践総 合センター紀要28号,pp.93-101. − 121 −.

(11)

参照

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