• 検索結果がありません。

明治期における小学校二部教授の実態

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "明治期における小学校二部教授の実態"

Copied!
14
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)Title. 明治期における小学校二部教授の実態. Author(s). 佐竹, 道盛. Citation. 北海道教育大学紀要. 第一部. C, 教育科学編, 42(2): 17-29. Issue Date. 1992-02. URL. http://s-ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/handle/123456789/5211. Rights. Hokkaido University of Education.

(2) . 2巻 第2号 北海道教育大学紀要 (第1部C) 第4 i i ty ofEducat t Journalof Hokkaido Universi on(Sec onI C) Vol .42 .2 , No. 平成 4・年2月 Febma ly,1992. 明治期における小学校二部教授の実態. 佐 竹 道 盛. 目. 次. は じめ に. 1 二部教授の制度化 1 1 二部教授の推進 1. 二部教授の推進策 2‐ 二部教授の全国的実態 皿 官立・公立学校における二部教授の実況 1‐ 北海道の小学校 (以上, 本号) 2. 長野県師範学校付属小学校 3‐ 兵庫・広島・熊本3県下の小学校 4. 横浜市戸部小学校 5. 東京高等師範学校付属小学校 6‐ 女師高等師範学校付属小学校 おわりに (以上, 継続). はじめ に 我が国の明治期における学齢児童の就学率は, 文部省年報によれば, 明治1 0年39.88パ ーセ ン ト, 20 年 に は45‐00 パ ー セ ン ト, 30 年 66.65 パ ー セ ン ト, そ し て 40 年 に は 97‐38 パ ー セ ン ト と,上 ′ 昇 の 一 途 をた どっ た よ う に 報 告 さ れ て い る.. しかし,実際にはそれほど単純ではなく,就学が停滞した時期があっ たほか,日々出席率を考慮 し 1 ) た実質就学率は,上記の数字をはかる に下回るものであっ たようである( . ところで, 実質就学率でみても, 就学率の上昇は明らかな事実であるが, 就学者の増大に伴っ て, 教育の質を左右する重大な事態が我が国の小学校で起こっていた. いわゆる二部教授の問題がそれ で ある.. 二部教授は, 就学児童の増加に対応する教員及び校舎の確保ができないため, 全校もしくは一部 学級の児童を前後二部に分け, 前部の教授の終了後に後部の教授を行う変則的な教授方式 である. 二部教授では通常同一の教員及び校舎が前後二度使用されるのである. 二部教授は本来不正常なも のであるだけに, 教育界では批判や問題点の指摘が絶えなかっ た. 本稿は, 明治期の教育政策と小学校教育の内実をよりリアルに把握するため, 二部教授の全国的 な実態を明らかにすることを意図するものである.. 1 二部教授の制度化 二部教授の制度化は, 明治36年の小学令施行規則の一部改正によっ て実現するのであるが, 原初 17.

(3) . 佐 竹 道 盛. 的な形態は, 明治23年公布の第 二次小学校令下ですでに姿を現わしている. 2号 「学級編制等ニ関スル規則」 において,次のように規定 明治24年11月17日付け文部省令第1 2 ) されているのが二部教授の端緒的な形態とみられる( . 第9条 尋常小学校ニ於テハ 左ノ場合ニハ全校ノ児童ヲ二部ニ区分シ其一部ノ教授了ル後他ノ ー ) 3 部 ヲ 教授 ス ル コ ト ラ 得{. 尋常小学校において, 全校の児童を前後の二部に区分し, 前の部の教授終了後に後の部の教授を 行う, というものである. また, こうした教授を行い得る条件として省令は次のような規定 を設け て い る.. 一 全校児童ノ数七十人以上百人未満ニシテ本科正教員一人及本科准教員 (補助教授スル者) - 人ヲ置クコト能ハサ ルトキ ニ. 全校児童ノ数百人以上百四十人未満ニシテ本科正教員二人ヲ置クコト能ハサ ルトキ. 三. 同時ニ全校ノ児童ヲ容ルルニ足ルヘキ教室ヲ設クルコト能ハサルトキ. 前項ノ場合ニ於テハ毎日ノ教授時間ヲ各部三時トナシ若クハ年長ノ部ヲ四時, 年少ノ部ヲ二時ト ナス ヘ シ. 要するに, 教員及び教室の不足に対処するため, 児童を前後二部に分ち教授 しようとするものと い える.. この規定が実際に小学校で実施されたか どうかは, 今, 詳かにし得ない. ただ, 明治27年に, 文 部省は, 訓令第1号によっ て二部に区分する教授の奨励を行っ ていた. 小学校ノ校舎狭睦ナルカ為ニ学齢児童就学ノ便ヲ欠クモ市町村ニ於テ更ニ設備ヲ為スノ負担ニ. 、某級ノ児童 堪へサル場合ニ於テハ明治二十四年文部省令第十二号第九条ノ旨趣ヲ適用シ全校又ノ 4 )シ ヲ二部ニ区分シテ教授スルノ方法ニ依ラシムルノ注意ヲ怠ラサルヘ( 4号 「小学校令施行規則」 次いで, 明治33年公布の第三次小学校令に基づく同年の文部省令第1 4号には次のような規定が みられる. によっ て, 半日小学校の編制 が規定された. 省令第1 第三十四条 左ノ各号ノーニ該当スルトキハ尋常小学校若ハ其ノ分教場ニ於テノ、児童ヲ二部ニ 分チ其ノー部ノ教授了リタル後他ノ 一部ヲ教授スルコトラ得 一. 児童ノ数七十人以上百四十人未満ニシテ本科正教員一人及准教員 一人ヲ置クコト能ハサ ル トキ. ニ. 児童ヲ同時ニ容ルルニ足ルヘキ校舎ノ 設ケナキトキ. 前項ノ場合ニ於テハ毎日ノ教授時間ヲ各部三時以上トス但シ年少ノ部ニ在りテハ之ヲ二時ト 5 ) 為 ス コ ト ラ 得(. 尋常小学校について, 教員及び教室の不足に対処するために設けられた規定であるが, これを半 日小学校と呼ぶことが省令の第39条に規定されている. 「第三十四条ノ規定ニ依り児童ラニ部ニ分 テ教授スル学校ヲ半日小学校トス」 というものである. 明治36年3月, 文部省令第11号による小学校令施行規則の改正によっ て二部教授という呼称 が 6 } 明確に規定されたが, この二部教授については, 省令第34条に次のように規定されるに至った.( 、一部ノ児童ヲ前後二部ニ分 左ノ各号ノーニ該当スルトキハ小学校若ノ 、其ノ分教場ニ於テ全部若ノ チテ教授スルコトラ得 一. 一学級毎ニ本科正教員一人ヲ置クコト能ハサルトキ. ニ. 児童ヲ同時ニ容ルルニ足ルヘキ校舎ノ設ケナキトキ. 三. 児童ノ就学上又ノ ・教授上特別ノ必要アルトキ. この規定により, 尋常小学校のみならず高等小学校をも含めた 小学校において, 二部教授の編制 18.

(4) . 明治期における小学校二部教授の実態. が可能となっ たのである. 同時に, 二部教授編制の条件として, 教員及び教室の不足のほか, 新た. に就学上又は教授上の特別の必要が規定に組み込まれ, 二部教授編制の可能性が一段と拡大される こ と と な っ た.. この前後に, 小学校の二部教授の実施が増加していったよう である.. 1 エ ニ部教授の推進. 1. 二部教授の推進策. 改正された小学校令施行規則に規定された 二部教授は久保田譲文相の 「学制改革の訓示」 によっ 7 ) 文相は 「教育制度及教育行政改正の方針」 30項目中 て, 明治37年1月に, 拡張が指示された( , ‐ の1項目に, 「二部教授 (半日学校) の法を拡張する事」 を含めているのである. 一方, 帝国教育会では文相の訓示に応えて, 「二部教授 (半日学校) の法を拡張する事」 を審査す 8 ) る こ と を 決 定 して い た( .. 同じころ, 文部省では, 東京高等師範学校及 び女子高等師範学校に対し, 次のように訓令を発し, 二部教授の学理及び実際の研究を指示していっ た.. 小学校令施行規則第3 4条規定の二部教授に関する学理及実際を攻究し併て生徒をして実地授 業を練習せしむるの目的を以て明治三十七年 四月より其の校附属小学校第二部又は第三部に於て 9 ) 其の児童の一部を前後二部に分ちて教授すべし{ 同時に, 文部省普通学務局長は地方長官あてに通牒を発して, 府県の師範学校附属小学校におい て二部教授を研究し師範学校生徒の実習を行うよう指示している.. 小学校令施行規則第三十四条規定の二部教授は施行後日尚浅く学理方法とも攻究の余地少しとせ ず且教員校舎其他の都合上此の編制を要する場合多々可有之候に付可成師範学校附属小学校に之 1 0 } を施設し教授法を攻究し生徒をして実地授業を練習せ しめられ候様致度依命比段及通牒候也( こうした通牒が, 府県の師範学校附属小学校の二部教授の実施を促進したものと思われるが, こ の こ と につ い て は 後 に 検 討 す る こ と に した い.. 次いで, 日露戦争の勃発に伴う諸経費節減の必要から二部教授の奨励策がとられ, 二部教授の実 施に拍車が加えられることとなった. 久保田文相により, 明治37年2月 20 日に発せられた訓令第3号は, 二部教授の実施を, 次のと お り 指 示 して い る‐. 軍費供給の必要は教育費にも影響を及ぼし新事業又は設備等に関し一時の緊縮を来すは己むを得 さる所とす然れども之が為め教員の俸給を削減し又は児童の就学数を減少し其他教育の効果を減 退せしむるが如きことあら ば国家発展の基礎を損傷すること大なれ ば努めて之を避けざる可らず 而して経済上節約を図らんが為 には小学校に於て二部教授の法を採り其他の学校に於ても亦臨時 1 1 ) 適宜の方法を講ずる等適当の措置を為すべし{ . さらに明治37年3月, 文部省は各地方庁あてに学校経費節減についての通牒を発したが, 教育費 の節減項目の第4番目に, 二部教授による節減があ げられて いる. 不十分なる教員を強て各学級に配置して教育するよりは優良なる教員を以て二部教授を為す方教. 育上寧ろ其の利あるべきを以て土地の資力校舎の広狭教員採用難易等に考へ適宜二部教授の実施 1 2 } を奨励すること此の場合に於ては相当の手当てを給するは勿論なること( こう して, 東京高等師範学校附属小学校及 び女子高等師範学校附属小学校をはじめとし, 各地の 小学校でもつ ぎつ ぎと二部教授が実施に移されていった. 19.

(5) . 佐 竹 道 盛. ここで, 全国に先がけて二部教授を実施し, その経験をもとに二部教授の推進をとなえる報告書 を文部省に提出した神奈川 県程谷小学校について検討を加えてみたい. 1 3 ) 教育界にかなりの影響を与 えたのではな 同校の報告書は各地の教育雑誌にも掲載されており{ , いかと考えられる. 凡そ天下の事其永遠と隆盛とを期せん と欲せば先つ其経済の法を講せざるべからず若し夫れ経済 の法に拠らず漫に天下の事業に従事するに於ては恰も沙上に屋を造ると一般終 には傾覆の禍を免 れさるに至るべし国家事業多く而して我が普通教育より重且つ大なるはなし殊 に彼の文明と富強 とを以て永く天下に誇称せる泰西諸国と共に馳購 し或は之を凌駕せんとする に於ては独り我が普 通教育をして愈々益々 隆盛ならしむるの一方あるのみ所謂普通教育の弛張は国家の隆替 に係るも の即是なり 故に我が普通教育をして永遠に且つ隆盛ならしめんと欲せば主として教育経済の法を講せざるべ 1 4 )… … か ら ず{ 。. 報告書はこのように, 国家の隆盛に深くかかわる普通教育 の永遠の隆盛をはかるために, 教育経 済が必要であると説いている. 報告書は, 第1号以下第4号までの表を掲げて, 就学児童の増加に伴う教員の不足を指摘し 本 , 科正教員の不足を補充するのに, 年々 1万人の教員 を増加するとしても, なお1 0年を要するとみて いる. 仮に各年度1万人の補充ができたと しても, それに伴う諸経費の増加額年56 7万円を負担す ることは, 市町村にとってほとん ど不可能であろう, という. このようなことから二部教授を積極 的に推進する必要のあることが説かれることとなる‐ 想ふに我が邦現時の状態を以て年々一万人の教員を補充すると殆と六百万円の経費を増加すると は恐らくは成し難きの事情ならん是を慮らずして漫 に我が普通教育の隆盛を企図するは恰も沙上 に屋を造ると一般ならん今にして之が根本的革新を為さすんば我が普通教育の前途真に憂ふべき に至らん然らば則根本的な革新と は何ぞ他なし二部教授を以て我が国普通教育の本体と為すに在 り … …。. このように, 報告書は, 二部教授をもっ て我が国普通教育の本体とせよ, とまで主張している の である. 教育界の二部教授論の中でも, 最も積極的な推進論であるといえよう . 二部教授を強力 に推す根拠として報告書は,現状における諸経費と二部教授実施後の諸経費を比較する三つの表(第 5号~7号) を掲げ, 二部教授の実施によっ て削減可能な経費を, 年額約7 00万円と計算している. このような計算を基礎に, 報告書は人, 金, 物, 時の経済の面から二部教授 に拠るほうが有利で あると説くのである. 機械的な計算を基 にしたほとんど暴論ともいえる議論を展開しているが 引 , 用は差し控えたい. 要するに報告書の結論は次のような ことになる . 二部教授制に依る時は主として教員補充の煩累を省き経費増加の憂慮を除き用を節し時を利し以 て我が普通教育をして永久安全に前途多望ならしむるを得へし こう した経済上の利点と称するものを挙げた後, 報告書は二部教授の教育上 の利益を次のように 掲げている.. 父兄及児童に対する利益 ”) 土地の事情又は家事上の都合に依り全日就学せしめ難く為めに不就学若くは末卒業に終る者 をして就学せしめ又卒業せしめ得ること に ) 中産以下の家に於ては児童殊に女児 に児守其他家事の手伝をなさしむるに都合よきこと 内. 家事上の都合により後部若くは前部の児童が其時間に出席し難き用事あるときは之を他の部 に転して教授し得ろを以て欠席数を減 し得ること. 20.

(6) . 明治期における小学校二部教授の実態. 婦. 一学科若くは二学科に劣等の児童は毎日一時若くは二時他の部の教授時間に於て再び同一教 科の教授を受くるを得ること. 的 的. 前部の児童は全体, 後部の児童は時期に依り弁当携帯の煩を省く こと 硯石の外用具悉皆を携帯して昇降せしむるを以て自然自己の物品を整頓する習慣と机内を清 潔にする美風とを養成し大に朕上訓練上に利益を与ふること. ( ト ) 前部の児童の残せる墨汁を後部の児童に使用せしむるを以て 一 は墨汁を委棄するの時間を省 き一は些細の物たりとも無益に委棄することなく成るへく利用すへきを知らしむ 家事や子守など手伝いを必要とする児童に, 二部教授が時間を与え得ることを説く(イ)(ロ)(ハ) などは, 当時の国民の生活の実態を背景にしたものであり注目さ れるところである. 次いで報告書は, 教育する側の教師の立場から -みた利益を次のとおり列挙している. 教員自身に対する利益 粉. 劣等の教員を淘汰し比較的優良の教員 を多からしむるを以て自然其地位の高まること. ) 世人 一般をして教員の有形的勤労と普通教育の価値とを知らしめ随て大 に父兄の尊敬心を惹 ( リ 起すを以て一は教員の待遇を高め一は児童の就学上訓練上等に便宜を与ふること 伝) 優良なる同一教員の薫陶の下に同一の歩調を以て多数の児童を養成することを得随て児童は 不知不識の間に親切, 勤勉, 服従等善良の感化を受くること の 一人の教員にて前後二部を教授するを以て其教授訓練等を一致せしむるを得るのみならず二 重又は二種 (二学年以上を二部として教授する場合) の経験を為し得ること ( ) 摘字, 書取, 綴方に於ける模範文, 言語文字等の誤謬訂正, 其他各科の問題等を示す時一回 ヲ 小黒板に記載し置き之を前後二部に使用するを以て教授上大に手数を省き得ること ( ヮ ) 施行規則第三十三条の規定に依り修身若くは唱歌の合併教授を為す時 (一週凡そ三時) の外 は在校児童は全児童の半数なるを以て管理に便なると出入に費す時間を減少するの利あり ヵ ( ) 一人 の教員にて二学級の児童を教授し管理するを以て其職務の 繁忙なるに要求せられ自然教 授管理の研究を為ささるを得さるに至る随て教員は不知不識の間に教育的活動を為す人物と為 ること. 以上の引用から明らかなように, 報告書は, 経済上の利益の他に教育上の利益として, 二部教授 が, 全日教授では不就学に終る児童を就学させ得ること, 児童に家事手伝いの時間を与えること, いわゆる劣等児には同一の教授を二度にわた って受けさせられること, 資質不十分な教員を整理し て優秀な教員を残すことによっ て教員の社会的地位を向上させ得ること, 教員に1日2種の教育経 験をさせ得ること, 教員を研究熱心にさせ得ること, な どをあげて, 二部教授を普通教育の本体と す る こ と を提 唱 して い る の で あ る.. 二部教授推進の方針をとっ ている文部省の意図に沿う立論といえる. この報告書が官報に掲載紹 1 5 } 介 さ れた の も も っ と も な こ と と い え る( .. いずれにせよ, 就学児童の増加で教員や校舎の確保に多大な財政負担を強いられて, 身動きのと れなくなっ ていた市町村の窮状を打開する提案として当局から重視されていたことがうかがえる. 二部教授推進の一翼を担う報告書であっ たといえよう.. 2. 二部教授の全国的な実態 明治37年に勃発した日露戦争の影響は,府県並びに市町村の歳出予算及び教育費歳出予算にも及 び, いずれも節減を余儀なくされていた. 1 6 ) 戦局の教育全般への影響について, 文部省は, 「時局の教育に及せる影響取調」と題する小冊子{ 21.

(7) . 佐 竹 道 盛. を印刷し, 各府県に配布していた. この調査報告書では, 戦争の府県並びに市町村歳出予算への影響が検討されて いる. いずれも戦 争前に比べて減少を余儀なくされていることが明らかにされ, そうした背景のもとで二部教授が全 国的に実施されるに至ったことを伝えている. ここでまず, 調査報告書の指摘する日露戦争の府県 (北海道を含む) の歳出予算への影響を検討 して み た い.. 明治三十七年度に於ける府県 (北海道を含む) 歳出予算は経常費約三千二百四十四万円臨時費 約九百八十五万円合計, 約四千二百二十九万円にして之を明治三十六年度に於ける予算経常費約 三千二百四十七万円臨時費約千八百十六万円合計約五千六十二万円に比すれば経常費にありては 約三万円臨時費にありては約八百三十万円総額に於て約八百三十三万円即ち約一割七分を減少し 1 6 } た り(. 府県歳出予算の大幅な減少が明らかであるが, このような減少の傾向は, 府県教育費にも及んで い る.. 府県費減少の結果教育費に及へるも亦自然の数なり今三十六, 三十七両年度に於ける教育費予算 を比較するに三十六年度にありては総額約一千六十七万円にして三十七年度は約九百六万円なり. 即ち其減少額は実に百六十余万円なり 教育費の減少率は歳出予算のそれを下回っ ているが, それでも約15パ ーセ ントの減少をみてい る. ただ, こうした府県レベルの歳出予算は, 本稿の考察の対象である小学校に直接関係するもの ではない. そこで, 小学校教育に直接関係する市町村歳出予算及び教育費歳出予算の年度比較をみていくこ とにしたい. 文部省調査報告書では, 市町村関係の資料が不備で, 一部の市町村の資料に頼るほか ないが, 府県同様の減少傾向は明らかであるといえる.. 明治三十七年度における市 (群馬外十三府県) 歳出予算は経常費約四百九万円臨時費約百三十四 万円合計約五百四十三万円, 町村 (群馬外十六府県) 歳出予算は経常費千七百八十一万円臨時費 約百六十六万円合計千九百四十七万円にして之を明治三十六年度に於ける市 (同上) 予算経常費 約五百五十五万円臨時費約二百三十五万円合計約七百九十万円町村予算経常費約二千二百八十三 万円臨時費約五百四十万円合計約二千八百二十二万円に比すれば経常費にありては市約百四十六 1 7 } 万円町村約五百二万円臨時費にありては市約百二万円町村約三百七十四万円……減少したり( . 市町村ともに, 経常費, 臨時費のいずれも減少を示している. この減少傾向は当然教育費にも及 ぶものである. 教育費歳出予算の減少について, 文部省調査報告書は次のとおり要約している. 市町村費中教育費を観るに三十六年度にありては総額市約二百十五万円, 町村約千百十六万円に. して三十七年度は市約百五十三万円町村約八百二十五万円なり即ち其減少額は市に於て約六十三 1 7 ) 万円町村に於て約二百九十一万円なりとす( こう した市町村教育費の減少が, 二部教授な どのような学校の編制にも大きく影響していくので ある. この時期に二部教授が全国的に拡大していく. 1 8 )る 明治37年1月以降 表1は, 同じく文部省の調査報告書の伝える全国の二部教授の状況であ( . の文部省による督励と, 続いて起こった日露戦争の影響が変則的な教授方式である二部教授の普及 を促したものとみられる.. 22.

(8) . . 明治期における小学校二部教授の実態. 表1. 道府県二部教授施行学校数・学級数一覧 従前より施行の分. 道府県. 2. 8 4 1. 伽7. 即 -7. 盟主. 5. 19. 42. 4. 4. 7 I 18 13. 21. 33 124. 2 拓 ) 9 8 ) ( ( 3 3 ) ( 2 15 5 I. 13 56 6 2. 8 I. 18 24. 6 4 18 4 7. ) 4 ) ( ( 2 ) ( 4 I. 3. 6. I. 3. 10. 29. ( ) l o 29. 学校. ( 2 4 ). 6 2 17. 20 4 40. 3 13. 4 3 I. 10 8 2. 7 9. 4 4. 鹿児島 沖 縄. 3. I. 2. I. 3. I. 3. 8. 10. 48. 総 計. 115. 4. 6 2. 59 127. 24 26. 41 64. 3 2 5 5 12 10 42 22 14. 6 4 30 10 31 36 98 70 39. 19 4. 42 { 1 ) i 2 21. 33. 124. ( 5 9 ). 1 0 7 4 } {嫌) ( , 8 19 23 5 7 8 I. 29 66 33 14 26 18 24. ( 4 ). ( 8 ). 4. 8. ( 2 7 ) 84. (蛸 ( 3 0 ). ( 1脚 (uの. 9 15 17. 36 44 40. ( 2 ) 3. ( ) 7 6. 11 12 I. 28 32 2. ( 2 ). ( ) 6. 5 14. 19 58. 3 458. 3 6 3 1 ,. 0. 17. l 0. 18 24. 4 3 I. 0 3 ≧. 16 10. I 10. 3 8. 149 430 170 475 264 830 194. 玄 導 キ 託. 32. ( ) 2 0. 16 40. 括. 25 21. ( 2 2 ) 74. { 2 0 ) 4 2 3. 23. I 10. I. 13 22. h V^ U 7+^ / ムハ h V ー“ ガハ. ( 9 ). 3 2 I 5 12 3 41 4. 20 10 6 4 2 10 31 14 96 10. 11 4. 3. ー. 4. 江. I. 2m 7 2 6 - - 1 2 1 2. 2. ( 2 ) 1. 7. 25 59 18 117. h. -. 8 4 1 2. .▲. 4i -ゴ ー. 201 一 ド ー. 総. I 十 ▲‘ = UAT 4 ー ー RU ー ー n 乙 )ィ^. - 4 4 18 4 I n x UI. 2. 現在施行総数. ^ “ U. 一. ー. 5 I 18 13. 8 一 一8 2 0 4 刀 4 - -2 1 6 3. -. 4. 0 1. 26. 2鰯. 取 根 山 島 ロ 島 川 媛 知 崎 岡 分 賀 本 崎. - - -、 4 ー ー - -. 1 1 一1. 鳥 島 岡 広 山 徳 香 愛 高 長 福 大 佐 熊 宮. 5. - - - 2 - - - -. 2 2 12 - 66 8. 13 2. 8. 和歌山. -. 3. -. 城 島 手 森 形 田 都 阪 庫 良 重 知 賀 阜 井 川 山. u. 宮 福 岩 ‐ 青 山 秋 京 大 兵 奈 三 愛 滋 岐 福 石 富. M. 4 0 m 一2 4 一8 9 1 1 3 2 一. 北海道. ー. l 41 ■. 7 3 m. 静 岡 山 梨 長 野. - ー. 5 一1 2 一4 6 3 5 1 1 一. 栃 木. 221 - ー. (明治37年5月調). 校舎狭 隣に 他の理由に 校舎狭陸に 他の理由に よるもの よるもの よるもの 6 1 4. 潟 玉 葉 城 馬. 6 3 1 6 4 2 一 1 1 6 一2. 新 埼 千 茨 群. こ “鱈 夢に 傍 夢み 4 9 1. 東 京. 神奈川. 7年度新に施行の分 3. 1 ) 5 8 3 {蛾) ( ,. 5日) 9号(明治37年9月1 (注)1‐ 「時局の教育に及せる影響取調」 文部省, 『教育時論』 第69 2. ( ) を施したものは不備のため計算外である. 23.

(9) . 佐 竹 道 盛. 明治37年における全国の二部教授実施状況について,文部省の調査報告書は次のような要約をし て いる.. 本年五月調によれば全国 (新潟, 岩手, 京都, 徳島, 熊本を省く) の市町村立小学校に於て二部 教授を施行せるもの合計九百四十校にして其内全校二部編制なるあり又一部の学級に施行せるも (前後各 一学級として算す) 合計約三千なりとす而して其の最も多きは兵庫県に のありて学級数・ して約三百校千学級, 之に次 ぐは山形県の五十九校百二十学級広島県の四十四校百八十八学級,. 北海道の四十二校九十八学級にして其の他鳥取県を除くの外各府県何れも多少二部教授の施行を 見ざるはなし本年三月末調によれ ば全国僅に百六十五校に過 ぎざりしか今回時局の為め校舎の新 営増築を一時中止し又教員数を減少したろ等の結果各地大に之が編制を見るに至り遂に今日の数 1 8 ) に 達 した り … …( 。. 明治37年3月に二部教授実施校が1 65校で, 2か月後の5月に940にまで増加したのは, 上記引 用にもみられるとおり, 日露戦争に伴う校舎新営の中止や教員数の減少が影響しているのである. 時局の影響が二部教授の増加をもたらしたといえよう.. m 官立・公立学校における二部教授の実況 1. 北海道の小学校 『北海道教育雑誌』 第149号は 北海道庁教育課の調査による 「本道二部教授施行( 1 9 }状況」 を掲 , 載している. 道内の二部教授の実態を伝えるものとして興味深い記事である. 以下同誌によって北 海道の二部教授の実況をみていくことにしたい. 道庁教育課の調査は, 8項目にわたっ て行われているが調査項目は表2のとおりである. なお, 以下の叙述では, 道庁教育課の調査報告を 「教育課調査報告」 と呼ぶことにする. 表2 北海道庁教育課の二部教授調査の項目一覧 ( ) 児童の出席に及せる影響 1. ( 2 ) 児童の学業成績及進度に及せる影響 ( ) 二部教授施行に対する家庭の感情並に其の事由 3 ( 4 ) 前後各部児童を交代せしむる利害若し交代せしむるを利とせば其適 当なる期間 ( ) 教授時数の不足に基く教授の効果の欠損を補ふ為め実行せし家庭練 5. 習等特殊の方法 ( 6 ) 二部教授に伴ふ著しき利害. ( 7 ) 全校児童に二部教授を施行せる各学校に於て二部教授施行以前に比 し右施行の為め特に増減せりと認むべき費用の全額及其事由. ( ) 編制上教授上管理上其の他衛生上等に付き特に研究実施せるものあ 8 らば其の状況. 以下, 各項目について教育課調査報告の結果をみていくことにする. まず児童の出席に対する二 部教授の影響であるが, 教育課調査報告は,「学校によりて多少の欠席者を増加したる傾向あるも大 24.

(10) . 明治期における小学校二部教授の実態. 体より言ふ時は二部教授施行の結果, 児童の出席に及 ぼせる影響として認むべきものなし」 としな がらも, 次の事項が認められるとしている. ( ) 兄弟姉妹若く は近隣者の同伴を得ざるが為め梢出席を厭ふの観あり 1 ( 2 ) 後部の児童には遅刻者及欠席者比較的多し殊 に冬期にありては後部に属する年少者の児童は 父兄に於て其帰途を慮るの結果出席せしめざるもの多し これらの事項は, 一般的にも予想されるものであるが冬期の気象条件など地域 的な事情と二部教 授が重なり合っ て, 児童の出席に影響している様子もうかがわれて興味深いものがある . 次に, 児童の学業成績及び進度に対する影響 について, 教育課調査報告は次のような調査結果の 要約をし, 各教科について概評を掲 げて いる. 本道に於て二部教授を施行せるは尋常小学校にして新に児童を収容したろ結果校舎 に狭溢を告げ 増築を為すの間一時的に実施したるもの多く従っ て一学年を通じて実施 したるものは少数なるを 以て学業成績進度の如きも精確 に調査したろ材料に乏しく参考に資する に足るものなしと難も其 の要領を挙んに教科目中前の部に属するものは特に不成績と認むべきものなしと難も一般より言 ふ時は後の部に属するものは出席前に於て過度の遊戯に耽り身心疲労等の為 め課業に往々堪へ得 ざるものあり 道内の二部教授は, 校舎増築中の一時的なものであり, 二部教授の一般的な傾向を示すものでは ないという趣旨の指摘はもっ ともなことである. 後部の児童に心身の疲労が残り授業に影響するこ とは一般的に指摘されて いたことである. 表3に, 教育課調査報告に掲載された各教科の成績概要を示すことにする . 表3 二部教授成績概要 教. 科. 修 国. 身 語. 算 体 唱 裁 図. 術 操 歌 縫 画. 成. 績. 概. 要. 本科は概して時間を減少せず従て著しき影響を認めず ”)読方 著しき影響なし に )書方 普通編制の学年に比し習 熟の度を欠くを以て一般 に劣れるものの如し (ハ)綴方 著 しき影響なし 普通編制の学年 に比し一般に劣れるものの如し 著しき影響なし 亦た同じ 亦た同じ 手工を加設したるも のにして之を施行したるものなし故 に実 地の成績としては記すべきものなし. 書き方, 算術な ど基礎的な教科の成績が不十分であると指摘されて いるが, これは二部教授に伴 う時間数の減少が影響 しているためとも考えられ興味深いところである 教育課調査報告では簡単 . に触れられているだけであるが, 小学校の教育の根幹にかかわる点であるといえる それだけに決 . して ゆる が せ に で き な い 事 柄 で あ っ た と い え る .. 二部教授の実施には, 各家庭の理解 が不可欠 な事柄とされており 当時もこの点についてはいる , いると配慮がなされていた. 教育課調査報告でも, 各家庭の感情をまとめている . 二部教授は労働者の年長児童 (殊に女子) に対しては比較的家庭の業務に従事せしむる時間多き を以て多少便宜を感ずるものなきにあらずと錐も一般の父兄は単に変則的の方法にして児童の教 授時数を減じ従て其成績も薄弱ならしむるものなりとの信念よりして之を嫌忌するの風あり必寛 25.

(11) . 佐 竹 道 盛. するに其利害の講究不十分にして主張する 所確固たる理由とするに足らず今其中に就き主として 主張する所を挙れ ば左 の如し ここには二部教授に対する国民の健 全な感情が露呈しているといえる. 当局や一部の小学校がい かに推賞しようとも, 所詮二部教授は変則であり, 不正常なものなのである. 当時の教育界の大方 の見方もこれを疑問視しているの が大勢であったのである. ともあれ教育課調査報告の伝える各家 庭の声を聞くことにしよう. 3 )兄姉等と 2 )労働者の年少児童 (殊に初学年) に不便を与ふること ( ( 1 ) 教授時数の短きこと ( 4 )後の部の出席を厭ふこと 共に出校若くは退校し得 ざること ( 官庁資料であるにもかかわらず, 民衆の声がもれ伝わる趣 がある。 ということは, 報告者の姿勢 をうかがうこともできるということだろう. 二部教授では, 前部と後部の入れ換えやその時期 が重要なこととして議論されていた. 教育課調 査報告もこの点に触れている. 通学距離年少により前後を区分したるものには往々 前後各部を交代せしめざるものあるも多数は 交代の方法を採れり而して前後の関係は始業午前七時若く ば八時よりする場合に於ては始業時よ り三時間を前の部 とし引続き二時間を後の部とする者と全く午前午後に区分する ものとあり 前部と後部を固定しているものは少なくて, 大部分は交代制を採っ ていることがわかる. 交代の 一定していないとされているが, その種類は, ①1か月交代②一週間交代 時期は土地の状況により・ 0月31日までは年長を前とし年少を後とし,11月1日より3月31 ③-日毎の交代④4月1日より1 日まで年少を前とし年長を後とするもの, などがあるとされている. 交代期間は, それこそ土地の 事情により多様になっ ていることが知られる. 次に二部教授実施に伴う時間数の減少を補うための家庭の助力が十分でなく, 効果を収めていな いとしている が, 普通に行われている方法として次のようなものをあ げている. ( )復習会予習会を開設せしめ最寄児童三名乃至四名を一団とし各自の家に輪番に之を開き学校よ 1 り日に具案的に所要の事項復習予習の仕方, 分量等を指示し復習若く ば予習をなさしむること但 )成績不良の者は 3 2 )宿題を課し自ら研究せしめ答案を求むること ( 教師時々訪問監督すること ( )成績の劣等なる児童に対しては特に或期間に於て夜学を開始 4 他の部に入れ練習せしむること ( し各自成績の不良なる教科目に就き特別教授を為すこと これらの方法は, 一般に初学年の児童に対しては行わず, 教科については, 読み方の復習予習, 文字文句の書取, 算術の練習, 綴方の記述浄書等とし, 時間は1時間ないし2時間をあてているこ とを, 教育課報告は伝えている. 算術や書き方の力が二部教授実施校の場合に劣っ ていることが, 同じ報告の中で指摘されていた が, 算術や文字書取の家庭学習が奨励されているのは, しかるべき 動 き で あ っ た と い え る.. 自習のための問題提出についてもそれなりの配慮 があったようである. 次のように報告されてい る.. 問題提出の上に就ても十分に注意を加へ難題を課して児童をして嫌忌せしむるか如きことなから しめ且問題は父兄其他の助力を受けず自力を以て為さしめ自治的の良習慣を養成せんことを望む 自習を奨励するに当っ て, 難問題を課して学習意欲をそぐことのないよう 配慮をするとともに, 家庭における自習の機会を自治的習慣の養成に役立てるよう 考慮をしている点注目されるところで ある. 不利な条件を, 教育的に プラスの方向へ活用しようとする 教育者の意欲と良識がうかがえる も の で ある.. 教育課調査報告は, 二部教授実施に伴う著しい利害を列挙している. 二部教授そのものの評価に 26.

(12) . 明治期における小学校二部教授の実態. 役立つ事項として注目される‐ 一覧するために表4として掲げる. 表4 二部教授の利害調査の結果一覧 ( 1 ) 費用を節約し児童を多数に収容し得ること ) 校舎改増築等には学 校を休業することなく 教授し得ること ( 2 ( 3 ) 教員の感化を多数の児童に及すこと訓練教授を一致統一せしむるに便なること ( ) 或度迄は家庭は便宜を計り出席上の便あること 4 ( 5 ) 劣等児童に補ひ を与ふるの便あること ( 6 ) 行厨の煩を省くこと ( ) 同学年の二部教授に於ては同一教案を反覆するを以て教材数量等の欠点を発見す 7 る こと. ( ) 二部教授は教授時数を減少するを以て児 童学力の進度全日教授に比して劣ること 8 ) 後の部は児童の身心共に疲労し受業の趣味を感ずること薄弱なること ( 9 Qの 教師に於て執務時間多き が為め心身疲労の度増すを以て後の部の教授不活発に陥 り易 きこ と. P 師弟の親しむ時間少きこと ( I Q 2 ) 在校時間幾分か減 ずるを以て社会の悪風に感染し易きこ と ( ) 寒暑共に後の部児童の受る不便多きこと 1 3 ( 1 4 ) 机腰掛は共通なる を以て往々児童の身長に適応せざるものあること Q 5 ) 児童の登校 一致せざるを以て管理上不便なること 注. 『北海道教育雑誌』 第1 「本道二部教授施行状況」 ( 49号, 明治38年6月 25日). 8 )~( 1 5 )のような弊害もあ 7 1 )~( )のように二部教授の利益を示すものもある が,( 表中の諸項目は,( どには教育界の反応が積極的でなか っ たのも理由の ることを示 している. 当局者が督励しているほ ある こ と と い え よう.. 全校児童を対象に二部教授を実施している学校について, 二部教授実施前後の費用の増減を調査 した結果は, 道内の二部教授実施の理由が校舎狭隆にある こと, また 一時的なものであることなど から, 費用の増加はあっ ても減少の事例は皆無とされている. 二部教授実施の利点とされているこ と が, こ こ で は見 ら れ な い と も い え る.. 最後に二部教授をめ ぐる編制, 教授, 管理, 衛生等の面での研究実践を問う項目があるが, その 結果は, 表5に掲げる. 表5 二部教授編制等研究実施事項調査結果一覧 ( 1 ) 二部教授開始に当り其方法時間割等を父兄に通知し出席の刻限及復習等に就き補 助を請ふべきこと特に注意 を要する学科に就きては謄写版等軽便なる印刷物を用い 其箇所を通知して援助を求むる等の工夫を要すること ( 2 ) 二部教授受持教員は比較 的身体健全学力優良にして教育に経験ある者をして担任 せ しむ る こ と 27.

(13) . 佐 竹 道 盛. ( ) 教室体操場等の許す限りに於て唱歌体操等は前後の二部児童共通教授を為すの方 3 針を執ること但し其便宜 あるときに限る ( 4 ) 学用品は混乱するを以 て持帰らしむること但筆等は鉄葉製の筆入等を携 帯せ しめ て区分せしむるも一方なること ( 5 ) 机腰掛等の共通校 具は殊に衛生上に注意し若し伝染性の病毒あるを認めたろ時は 其座席を区別し置く こと ( 6 ) 後の部に属する授業の午前より午後 に渉る時は学校付近の外に弁当を携帯せしむ る こと. ( 7 ) 同学年の二部教授は其他のものに比 し多少教師の疲 労を補ふこと ( 8 ) 単級小学校に二部教授を施行する時は児童控室の必要あること但多級学校に於て も屋内体操場なき時は其必要を認む 我が国の学齢児就学率は, 実質就学率でみて も, 明治30年代後半には著しい上昇を示し 日露戦 ,. 争 前後 に は 80 パ ー セ ン ト 台 を こ え 90 パ ー セ ン ト に 近 づ く 勢 い を み せ て い た , .. このことは, この時期の市町村に対して校舎の新増築や教員増加の圧力が高まったことを意味し , 財政的な負担の増大が求められた ことを示すものと言える しかし 市町村の財政はとう ていそう , . した事態に応じられる状況にはなかったのである . 一方, 時あたかも日露戦争が勃発し 府県はもとより市町村も諸経費の節減が求め られる事態に , な っ て い っ た.. こうした状況のもとで, 校舎及び教員をふやさずに しかも教育の効果をさほど減退させる こと , のない学校編制の方法として二部教授が注目を集め, 文部省の督励と一部 ・学校の実践をてこに , 日露戦争時に二部教授推進の動きが強まり, 明治37年中に全国的な普及をみるに至ったのである . 本稿は, この時期の二部教授の制度化, その推進及び全 国的な実態を検討してきたが 実態につ , いての続稿を今後に予定しているので, 事実についての総括的な考察は後日を期することとしたい . ここでは二部教授の実態 を丹念に浮かび上がらせるよう努めたものである . なお, 明治期の考察の後に, 引き続き大正期 の二部教授の考察も予定している .. ;王 『教育学研究』 第29巻第3号 昭和3 ( ) 安川寿之輔 「義務教育における就学の史的考察」 ( 1 「 7年9月) , , 義務教育 『日本の教育史学』 第7集 昭和37年1 就学の史的分析」 ( 0月) 参照 , ( 2 ) 国立教育研究所 『日本近代教育百年史4』 では, 二部教授に関する考察を 明治2 4年の文部省令第12号から , 始 めて いる‐. ( ) 3 ( ) 4 ( 5 ) ( 6 ) ) ( 7 ( 8 ) ( ) 9 回 り QD 鰹 ). 28. 内閣官報局編 『明治年間法令全書』 明治24年一2 内閣官報局編 『明治年間法令全書』 明治27年-3 内閣官報局編 『明治年間法令全書』 明治3 3年- 6 内閣官報局編 『明治年間法令全書』 明治36年-3 『教育公報』 第28 0号, 明治37年2月 25 日発行 31頁 『教育公報』 第2 81号, 明治37年3月1 5日発行 7ー8頁 「二部教授と訓令」 『教育時論 第67 8号, 明治37年2月15日発刊 3 4頁 』 , 同上 「文部省訓令第3号」 『教育時論 第67 9号, 明治37年2月 25日発刊 3 4頁-3 5頁 』 , 「学校経費節減方針 『北海道教育雑誌 第1 3 5号 明治3 7年4月2 5日発行 2頁 4 」 』 , , ,.

(14) . 明治期における小学校二部教授の実態 『 5日) 2号(明治37年4月1 餌 ) 神奈川県程谷小学校の二部教授調査報告書については, 『教育公報』第28 , 信濃教育 『 2 5 ) などの教育雑誌に 日 7年4月 第1 3 5号 ( 明治3 北海道教育雑誌 5日 ) 7年4月2 会雑誌』 第21 1号 (明治3 』 , 82号は, この記事が3月24日付官報からの転載であることを注記してい 紹介されている‐ なお, 『教育公報』 第2 た.. .. 『 0頁 以下, 引用はすべて 1 1号, 明治37年4月 25日発刊41一5 Q0 「二部教授調査並意見」 , 信濃教育会雑誌』第2 同誌による. 5日発行) 及び 『北海道教育雑誌』 (明治37年4月25日発行) の両誌 2号 (明治37年4月1 ) 『教育公報』 第28 0 5 を掲載している‐ なお, 筆者は官報は未見である‐ 程谷小学校の報告書 は, 官報に拠っていることを注記して, 『 「 教育時論 第6 9 6号 ( 1 ) 時局の教育に及せる影響取調 Q ) 6 』 」 , 明治37年8月15日発刊, 25-27頁, なお, この調 , 9号(明 )同第69 4 ( )同第698号(明治37年9月5日) 5日) )『教育時論』第6 97号(明治37年8月2 2 査報告は,( ,( ,3 86号 25 日) に連載されている. そのほか, 『教育公報』 第2 7年9月 明治3 同第7 0 0号( ( 完 ) 治37年9月15日) , が掲載されている 5日 ) にもこの調査報告 ( 明治3 7年9月1 7号 同第2 8 (明治37年8月15日) . , 3一24頁 5日発刊, 2 97号, 明治37年8月2 Q ) 「時局の教育に及せる影響取調 (2)」 7 , 『教育時論』 第6 『 2 8頁 「 7年9月1 5日発刊 第6 9 9号 明治3 教育時論 ( ) 4 時局の教育に及せる影響取調 餌 ) 』 , 5一2 」 , , 『 なお, 以下の引 2 5 5 6 一 5 8頁 日発行 8年6月 9号 明治3 第1 4 北海道教育雑誌 ( 1 9 ) 「本道二部教授施行状況」 』 , , , (本学教授函館分校) 用はすべて同誌によっている.. 29.

(15)

参照

関連したドキュメント

工学部の川西琢也助教授が「米 国におけるファカルティディベ ロップメントと遠隔地 学習の実 態」について,また医学系研究科

断面が変化する個所には伸縮継目を設けるとともに、斜面部においては、継目部受け台とすべり止め

ハンブルク大学の Harunaga Isaacson 教授も,ポスドク研究員としてオックスフォード

児童生徒の長期的な体力低下が指摘されてから 久しい。 文部科学省の調査結果からも 1985 年前 後の体力ピーク時から

小・中学校における環境教育を通して、子供 たちに省エネなど環境に配慮した行動の実践 をさせることにより、CO 2

小学校における環境教育の中で、子供たちに家庭 における省エネなど環境に配慮した行動の実践を させることにより、CO 2

を育成することを使命としており、その実現に向けて、すべての学生が卒業時に学部の区別なく共通に

を育成することを使命としており、その実現に向けて、すべての学生が卒業時に学部の区別なく共通に