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第40回山梨医科大学CPC記録:発熱と皮膚病変を伴い急激に増悪した下肢浮腫の1例 利用統計を見る

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症例提示 植木潤子大学院生(放射線医学) 症例:N.T. 76 歳,女性(ID215-525-0, AN1368) 主訴:耳閉感,嚥下痛 現病歴:平成 12 年 3 月より耳閉感,嚥下痛を 自覚し近医受診するも改善せず,4 月 17 日 近医耳鼻科受診し口蓋扁桃から上咽頭に広が る腫瘤を認め(図 1A),4 月 25 日当院耳鼻咽 喉科紹介受診された。同日咽頭より生検施行 した。5 月 11 日再度生検施行し,NK/T cell lymphoma を疑われ,5 月 30 日当科外来紹介 受診,6 月 1 日精査加療目的にて当科入院と なった。 既往歴: 48 歳,子宮筋腫にて子宮摘出術 家族歴:特記事項なし 患者背景:職業歴,農業;喫煙歴,なし;飲酒 歴,機会飲酒;アレルギー,サバ(本人談), ワソラン;常用薬物,メバロチン,ペルジピ ン LA,アルファロール。 入院時身体所見:身長 148 cm,体重 43.9 kg(3 カ 月 で 4 kg の減少),体温 37.3°C,血圧 130/70 mmHg,脈拍 80 bpm 整,皮膚 盗汗 あ り , 表 在 リ ン パ 節   左 頚 部 に 1 . 5 c m , 1.0 cm の圧痛のないリンパ節を 2 個触知す る,腋窩,鼠径部は触知せず,耳 明らかな 聴力低下なし,眼・鼻 異常なし,口腔・咽 頭 扁桃腫脹・発赤,上∼下咽頭壁の左優位 な腫脹及び発赤,左耳管開孔部の閉塞あり, 胸・腹部 右前胸部やや膨隆,圧痛ある以外 異常なし,四肢 右大腿前面に境界不明瞭な 腫脹あり,硬結なし,浮腫なし(図 2A)。 神経学的所見:異常なし。 入院時検査所見:血算,WBC 7,130/µl, (neut

52.0 %, eos 31.0 %, mono 3.0 %, lymph 14.0 %) RBC 400 万/µl, Hb 11.6 g/dl, Ht

35.3 %, Plt 28.5 万 /µl ;凝固,PTT 13.8 s,

APTT 39.6 s, Fib 254 mg/dl ;血液生化学, TP 7.5 g/dl, Alb 3.5 g/dl, CHE 245 IU/l, ZTT 13.4 KU, TTT 4.2 KU, T-Bil 0.6 mg/dl, D-Bil 0.2 mg/dl, ALP 281 IU/l, LAP 59 IU/l, γ-GT 11 IU/l, LDH 869 IU/l, (LDH1 23.1 %, LDH2 41.5 %, LDH3 22.4 %, LDH4 8.9 %, LDH5 4.1 %), AST 59 IU/l, ALT 72 IU/l, TG 79 mg/dl, T.chol 202 mg/dl, BUN 13 mg/dl, Cr 0.53 mg/dl, UA 4.9 mg/dl, Na 139 mEq/l, K 4.3 mEq/l, Cl 104 mEq/l, Ca 9.2 mg/dl, IP 3.5 mg/dl, CRP 2.1 mg/dl ;血沈,86.0 mm/hr ;感染症,梅毒 slide(−),TPHA (−),HBsAg(−),HCVAb(−),EBVIgG (+),EBVLgM(−),ICG15 分値 7.0 %, Ccr 119 ml/min,尿量 800 ml/day,IL-2R 第 40 回山梨医科大学 CPC 記録 日時:平成 12 年 10 月 18 日(水)午後 5 時 15 分∼ 6 時 45 分 場所:臨床講堂大講義室 司会:大西 洋講師(放射線医学),大井章史教授(病理学 1)

発熱と皮膚病変を伴い急激に増悪した下肢浮腫の 1 例

要 旨:症例は 76 歳の女性。口蓋扁桃から上咽頭に広がる腫瘤を認め,平成 12 年 4 月 25 日山梨 医大耳鼻科を受診,生検にて NK/T 細胞リンパ腫を疑われ,放射線科へ転科した。精査の結果, 上咽頭および右大腿筋内に腫瘍を認め,StageIIIB の診断のもとに CHOP 療法を開始した。化学 療法 1 クールで,軽度の治療効果を認めたが,MRSA の感染に続き DIC を併発し,第 33 病日に 死亡した。剖検では,全身リンパ節,諸臓器に広がる悪性リンパ腫で,リンパ腫細胞は陥入のめ だつ多形核を有しており,細胞表面マーカーの検索では,CD45R0,CD20 陰性,CD56 陰性であ り,末梢性 T 細胞リンパ腫(非特定型)とした。

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2270 U/ml, KL-6 343 U/ml

病理所見:脳脊髄液 class I,細胞数 0/3µl, 蛋

白 2 1 m g / d l , 糖 4 6 m g / d l ; 骨 髄 生 検 , hypocellular bone marrow, no malignancy ; 右 大 腿 部 腫 瘤 生 検 ( 6/7,8), T cell lym-phoma

入院後経過: staging を行い stage IIIB と診断 し , 6 月 13 日 よ り standard dose CHOP (CPA, DXR, VCR, PSL)療法を施行した。治 6 月 26 日(14 日目)の喀痰より黄色ブドウ 球菌を検出した。6 月 30 日(18 日目)の化 学 療 法 1 ク ー ル 後 C T に て , 治 療 効 果 は minor response であった。(図 1B, 2B)7 月 3 日(21 日目)の喀痰からは表皮ブドウ球菌 とカンジダを検出した。7 月 4 日(22 日目) より両下肢浮腫,尿量低下,低蛋白,低 Alb 血症を認め,アルブミン,ラシックス,少量 ドーパミン投与するも反応不良であった。 (6/30 から 7/10 で体重 10 kg 増加,TP 5.6->4.0, Alb 2.8->2.0, Ccr110->44)発熱に対して は抗生剤に加えて抗真菌剤,ヴェノグロブリ ン製剤を使用した。浮腫は全身に広がったが, 胸腹水は認めなかった。7 月 7 日(25 日目) から発熱は徐々に改善した。7 月 10 日(27 日目)頃から下肢内側に紫斑を認めた。7 月 11 日(28 日目)腎障害疑い抗生剤を中止し た。7 月 14 日(31 日目)嘔吐,傾眠傾向, 下痢を認め,同日の咽頭・便培養から MRSA が検出された。また血小板低下等があり DIC 治療を開始した。7 月 16 日(33 日目)再び 発熱,尿量の著明な低下,血圧低下を認め 7 月 17 日(34 日目)永眠された。 7/10 の検査所見:血算,WBC 13100 /µl, (Met

1.0 %, neut 96.0 %, mono 1.0 %, lymph 2.0 %) RBC 514 万/µl, Hb 14.9g/dl, Ht 44.7

%, Plt 34.2 万 /µl ;凝固,PTT 13.3 s, APTT

45.2 s, Fib 129 mg/dl ;血液生化学,TP 4.0 g/dl, Alb 2.0 g/dl, CHE 108 IU/l, T-Bil 0.5 mg/dl, D-Bil 0.2 mg/dl, ALP 319 IU/l, LAP 51 IU/l, γ-GT 15 IU/l, LDH 951 IU/l, AST 103 IU/l, ALT 106 IU/l, BUN 28 mg/dl, Cr 0.77 mg/dl, Na 134 mEq/l, K 4.2 mEq/l, Cl 97 mEq/l, CRP 3.6 mg/dl ; 血 沈 , 4.0 mm/hr ;尿化学,尿量 800 ml/day, 24 hrCcr 44 ml/min, Na 10 mEq/l, 総蛋白 640 mg/day, 図 1. 頸部造影 CT 像。治療前(6 月 2 日)で

は腫瘍による両則の咽頭壁の肥厚をみ とめる。(A, 矢印)治療後(6 月 30 日) では咽頭壁の肥厚の縮小がみられる。 (B)

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Albmin 16.8 mg/day, β2mG 3496 ng/dl, NAG 43.7 U/l ;尿浸透圧 468 osmo/l ;感染症, カンジダ抗原(−),クリプトコッカス抗原 (−),アスペルギルス抗原(−),サイトメ ガロウイルスアンチゲネミア 0 ; ICG15 分 値 46.8 %, IL-2R 2430 U/ml, KL-6 242 U/ml, 剖検目的:

1)T cell lymphoma の subtype の確定。 2)lymphoma の治療効果,再発の状況。直 接死因は lymphoma でよいか。 3)下肢から全身へ広がった浮腫の原因。 4)低蛋白,低アルブミン血症が急激に進行 し,治療抵抗性であった原因。 5)腎不全の詳細及び原因。 6)炎症の focus がどこかに存在したか。 病理所見と診断 近藤哲夫大学院生(病理学 2) 剖検番号: 1368,76 歳,女性 死亡年月日: 2000 年 7 月 17 日午前 1 時 38 分 剖検年月日: 2000 年 7 月 17 日午前 4 時 05 分 図 2. 大腿の造影 CT 像。治療前(6 月 2 日)では右大腿四頭筋内に腫瘍を示す低濃度域を認 める(A 矢印)。治療後(6 月 30 日)では,右大腿の腫瘍はやや縮小している(B)。

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体幹・四肢に高度の浮腫を認める。 両下腿に硬結あり。 下腿皮膚結節には真皮 下脂肪織に異型リンパ球の浸潤がみられる。 2.体腔液:胸水?,心嚢水少量,腹水少量 3 . 心 臓 ( 350 g):左室壁 10 mm,右室壁 2 mm,梗塞なし。冠状動脈に狭窄なし。弁 膜に異常なし。 4.大動脈その他血管系:大動脈全体に軽度の アテローム硬化を認める。 5.肺臓(左 430g,右 470g):両肺とも胸腔と 線維性癒着が軽度にみられ,全体に含気が低 下している。 組織学的には高度なうっ血とヘモジデリンを 貪食する肺胞マクロファージを認める。左上 葉には径 1.5cm 程の壊死性の結節があり,壊 死巣周囲に異型リンパ球の集簇がみられる。 6.肝臓(1360g):中心静脈を中心とした高 度なうっ血があり,5 ∼ 10 mm の出血壊死 巣が数カ所に認められる。壊死巣の周囲を中 心に異型リンパ球の集簇がみられる。 7.脾臓(80 g):高度なうっ血があり,リン パ濾胞は消失している。異型リンパ球の集簇 巣が散在してみられる。 8.膵臓(十二指腸と合わせ 150 g):高度なう っ血がある。 9.食道:著変なし。 10.胃:萎縮がみられるが,その他著変なし。 11.小腸・大腸:浮腫があり,粘膜面に数 mm の小びらんが散見してみられる。組織学的に は高度のうっ血とびらん部に壊死及び異型リ ンパ球の集簇を認めた。 12.腎臓(左 160 g,右 180g):うっ血を認め る他は,糸球体,尿細管に異常はない。一部 に異型リンパ球の集簇がみられる。腎盂粘膜 にごく軽度の慢性炎症細胞浸潤がみられる。 13.副腎(左 7.5 g,右 7 g):うっ血が高度に また好中球も減少している。異型リンパ球の 小集団が散在してみられる。 15.リンパ節:胸部大動脈周囲に径 1.5 cm の リンパ節腫大が 1 個,膵頭部周囲に腫大リン パ節が数個,腸間膜に 0.5 ∼ 2 cm の腫大し たリンパ節が多数みられる(図 3)。腹部大 動脈周囲,気管周囲,肺門にはリンパ節の腫 大はない。腫大したリンパ節は組織学的には, 異型の強い多形なリンパ球のびまん性増殖か らなり,また不規則な広汎な壊死巣を伴って いた(図 4)。一部に血管周囲性の増殖がみ られた。免疫染色では T-cell(CD45RO)+, B-cell(CD20)−,CD3 ±,CD56 −であっ 図 3. 腸間膜の肉眼像。径,約 2.0 cm 大までの 腫大したリンパ節を多数認める。 図 4. リンパ節の組織像。びまん性に増殖す るリンパ腫細胞は不規則な切れ込みが めだつ多形核を有している。

(5)

た。

16.咽頭(原発部位):解剖時に採取された咽 頭の組織片には,扁桃組織は採取されている が,腫瘍細胞の増殖はみられない。

病理診断

1.悪性リンパ腫(Peripheral T-cell lymphoma, unspecified) 1)外科材料(咽頭生検:# 64393,# 64547, 大腿生検:# 64844,# 64878) 2)リンパ節: 腸間膜,胸部大動脈周囲,膵 頭部周囲 3)臓器浸潤: 肺,肝,脾,腎,小腸,大腸, 皮膚,骨髄 2.高度うっ血:肺,肝,脾,腎,膵,副腎, 小腸,大腸 3.その他 1)過形成性骨髄 2)大動脈粥状硬化症 3)慢性萎縮性胃炎 死因:悪性リンパ腫の全身臓器への浸潤 考察 1.本例は上咽頭から発生した悪性リンパ腫で, 全身のリンパ節,諸臓器に拡がっていた。 組織学的にリンパ腫細胞は不規則な核の入 り組みが目立つ多形な核を有し,広範な壊 死を特徴とした。また一部では血管中心性 といえる所見も認められた。細胞表面マー カーの検索では CD45RO(Pan-T-cell)が 陽性で,CD20(Pan-B-cell)が陰性である ことより,T 細胞性の悪性リンパ腫と考え られる。Sub type の分類では,末梢性 T 細胞リンパ腫(非特定),鼻型 NK/T 細胞 リンパ腫などがある。広汎な壊死と一部で はあるが血管中心性の増殖がみられること などは鼻型 NK/T 細胞リンパ腫に compat-ible な所見ではあるが,NK 細胞の表面マ ーカーである CD56 が陰性であることか ら,最終的に末梢性 T 細胞リンパ腫(非 特定)と診断した。 補足として成人 T 細胞性リンパ腫/白血病 (ATLL)では多様な組織像,臨床像をとる ので,ATLL を除外するためには HTLV-1 抗体の確認が必要である。 2.腸間膜を中心に多数のリンパ節転移があり, また多くの臓器に腫瘍細胞の浸潤がみられ ることから,治療効果は乏しかったと考え られる。直接死因として一臓器のみをあげ ることは難しく,悪性リンパ腫の全身臓器 への浸潤を死因とした。 3.浮腫,低蛋白,低アルブミン血症となった 器質的な原因としては,悪性リンパ腫に全 身臓器への浸潤に伴う低栄養状態,肝機能 の障害に伴う蛋白・アルブミン合成の低 下,腸間壁・腸間膜リンパ節への腫瘍細胞 の浸潤に伴う吸収不良,蛋白漏出などが考 参考資料①(Lymphoma Study Group of Japanese Pathologist,Pathol Int 2000;50:696-702 より)

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えられるが,組織学的に特定するのは困難 である。 4.腎にはうっ血がみられるが,糸球体,尿細 管に腎不全となる器質的異常所見はみられ ない。 一部にリンパ腫細胞の浸潤もあるが,腎不 全の原因となるとは考えにくい。 腎前性の腎不全とすれば矛盾はない。 5.発熱の原因となる感染の focus は組織学的 には明らかではない。免疫抑制状態であっ たとすれば,感染巣に対しての炎症反応が 乏しいために,感染巣が組織学的に確認で きないという可能性はある。 発言 1 磯部公一(千葉大学放射線医学教室) 1)症例のまとめ 本症例は臨床的には咽頭・皮膚に病変を認 め,生検材料の免疫染色の結果 B 細胞性マー カ ー お よ び CD56 が陰性であり,CD45RO (UCHL-1)が陽性であることから Peripheral T-cell lymphoma, unspecified と診断されてい る。解剖所見では,主たる病変は肺,肝臓,消 化管(小腸・大腸),皮膚,リンパ節に認めら れた。これらの部位は,NK/T cell lymphoma が比較的浸潤しやすい場所である。顕微鏡的に は肺,肝臓,消化管の病変部では,大小様々な 大きさで強い異型性を示す核を有する腫瘍細胞 のびまん性浸潤と出血壊死が認められた。また, 一部では腫瘍細胞の血管浸潤性を示唆する所見 も観察された。免疫染色(パラフィン切片)で は CD56 が陰性であるが,病変の局在および特 徴的な出血壊死の像から推定すると NK/T cell lymphoma として compatible と考えられる。 しかし,これを証明するには T 細胞受容体遺 伝子および免疫グロブリン遺伝子の再構成がな いことが必須となる。また,腫瘍細胞に EBV の存在が証明できれば NK/T cell lymphoma で あることの傍証となるであろう。 現在では NK/T cell lymphoma の診断をつけ るためには,CD56 の発現の有無をフローサイ トメトリーあるいは免疫染色で確認することが 必須である。以前は抗 CD56 抗体は凍結材料で しか利用できなかったが,現在はパラフィン切 片でも応用可能なものが市販されている。本症 例ではパラフィン切片上で CD56 が陰性という 結果であったが,本当に陰性であるのか,ある いは技術的な問題で免疫染色が上手く行われて いないかは非常に重要な点である。本症例の生 検材料を CD56 の免疫染色が上手く行われてい る施設で免疫染色をしてもやはり陰性であっ た。したがって,本当に腫瘍細胞は CD56 が陰 性であるのか,あるいは免疫染色を行うまでの 過程,つまり,生検から標本作成までの過程に 問題があるか否かを検討する必要があると考え られる。実際,本症例の生検材料を別の抗体を 用いて免疫染色を行った標本では,検体の辺縁 の部分にのみ陽性像を認め,内部では何も反応 がみられないというものが散見された。このこ とは,固定を行う際に何らかの問題が存在する 可能性を示唆している。免疫染色を行う際に最 も重要な点の 1 つは,陽性および陰性のコント ロールを立てるということである。CD56 につ いては言えば,CD56 は神経細胞で陽性となる ので,消化管などの標本を陽性コントロールと して条件を設定し,改めて,本症例について検 討するのも 1 つの方法と考えられる。欲を言え ば,生検材料を凍結保存していれば,CD56 発 現の有無について更に検討が行えたであろう。

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2)現在の悪性リンパ腫の分類

REAL 分類(Revised European-American Classification of Lymphoid Neoplasms)が 1994 年に発表されるまでは,日本では WF 分類や LSG 分類が頻用されていた。これらの分類が 主として臨床経過や細胞形態に基づいた分類で ある一方,REAL 分類は腫瘍細胞の起源(正常 対応細胞)を想定した分類である。本分類では まず,悪性リンパ腫を B, T/NK 細胞性腫瘍と ホジキン病の 3 つのカテゴリーに分類した。元 来,腫瘍の分類はその腫瘍が由来する正常対応 細胞あるいは組織に基づいて分類されるべきも のであり,悪性リンパ腫がリンパ球の腫瘍であ る以上 B, T/NK 細胞性を区別するのは当然の ことである。また,ホジキン病もリンパ球の腫 瘍であるとしたことは注目に値する。しかしな がら,正常のリンパ球についてはその分化,成 熟過程,免疫形質,機能などがいまだ完全には 解明されていないのが現状であり,特に T/NK 細胞に関してはそうである。したがって,本分 類では現在の知識の範囲で出来るだけ正常対応 細胞の分化系列に沿って分類しようとの姿勢か ら,B, T/NK 細胞性の腫瘍については前駆細 胞性腫瘍(precursor)と,それ以外の末梢性 腫瘍(peripheral)とに区別した。次に,形態 学的,免疫学的,遺伝子学的に疾患単位として 確立されていると考えられるものを definite, おそらく独立した疾患概念であろうが更なる症 例の蓄積が必要なものを provisional とし,各 亜型の定義に合わないものを unclassifiable と した。さらに細分類項目それぞれに正常対応細 胞を想定し付記している。しかし,これら細分 類には腫瘍細胞の分化,成熟段階にこだわった ものだけでなく,腫瘍細胞の組織(リンパ節) 内での分布場所や発生臓器にちなんだ命名もあ り,リンパ腫のリストであるとされる理由の一 つとなっている。また,従来の悪性リンパ腫の 各種分類では,臨床的な予後との関連が重要視 されてきたが,本分類ではこの点はほとんど考 慮されていない。REAL 分類での最も大きな特 徴は,従来の低悪性度 B 細胞性リンパ腫に対

する認識であり,mantle cell lymphoma や marginal zone B-cell lymphoma といった疾患概 念を確立させたことにある。しかし,diffuse large B-cell lymphoma や peripheral T-cell lym-phoma, unspecified のように腫瘍細胞の発生母 地や起源を異にするものが混在する,ごみ箱的 なカテゴリーが記載されていることも事実であ る。しかしその後,様々な意見や批判も報告さ れたが概ね良心的に受け入れられ,REAL 分類 を基にした新 WHO 分類が間もなく刊行される 予定である。 3)良い標本を作製するための生検提出時の注 意点 正確な病理診断をするためには,より良い病 理標本が必須となる。複数部位のリンパ節が腫 脹している場合は,出来るだけ頚部リンパ節か ら生検を行うことが望ましい。鼠径リンパ節は 反応性に腫脹している場合も多く,また,腋窩 リンパ節は脂肪化などが目立つこともあるから である。生検に際しては,出来るだけ実質に外 力を加えないように被膜を無傷のまま,まるご と採取することが望ましい。扁桃や鼻腔ではど うしても生検時に外力が加わることは避けられ ないが,その影響を出来るだけ少なくするよう 努めるべきである。摘出されたリンパ節をその まま固定液に浸すと,被膜に近い部分のみ固定 され,内部にまで固定液が浸透せず細胞が変性 し,診断に適さない標本となってしまう。した がって,リンパ節には必ず割を入れてから固定 液に浸すべきである。できれば,免疫学的・分 子生物学的手法に応用できるよう,検体をいく つかに分けて保存することが望ましい。例えば, DNA 検索用,組織化学用,電子顕微鏡用など である。固定液としては,細胞形態や免疫染色 のための抗原性の保持,薄切の容易さ,染色性 など,多面的な条件に十分かなう 10 %中性緩 衝フォルマリンが広く用いられている。免疫染 色の成功の是非は,固定液として用いるフォル マリンの特性に大きく左右される。 4)抗原賦活化の方法 REAL あるいは新 WHO 分類に沿って悪性リ

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抗原性を賦活化させるため,様々な手法が用い られる。頻用される方法にはトリプシンやプロ テイナーゼなどの酵素を用いる方法と,マイク ロウエーブやオートクレーブなど加熱処理する 方法がある。どの方法が最適であるかは,利用 する抗体により様々である。さらに免疫染色の 感度を上げるため,各社より様々なキットが販 売されており,それらを用いるのも 1 つの方法 である。 質問 大西 洋講師(放射線科) 病態と初診時の状態から治療内容に問題は無 かったか? 応答 伊丹 純(国立医療センター・放射線部) T 細胞性リンパ腫は化学療法抵抗性とはい え,CHOP は golden standard であり,全身状 態も良好で,full-dose の CHOP は初回治療と して妥当と言える。腎障害は化学療法の合併症 というよりもリンパ腫の悪化に伴う二次的な変 化だろう。 質問 大西 洋(放射線科) 治療開始後状態が急激に悪化したことから, 化学療法がリンパ腫細胞を刺激して加速再増殖 のスイッチが入った可能性は考えられるか? 応答 伊丹 純(国立医療センター・放射線部) それは分からないが可能性としては考えられ る。retrospective にみて何もしなかったらもっ といい状態を保てたかどうかは分からないが, 基本的には治療開始せざるを得なかっただろ う。 質問2 磯部公一(千葉大医学部放射線科) 何故 2 回目の化学療法を開始しなかったの か? 応答 大西 洋(放射線科) 化学療法の効果が期待できず,全身状態の悪 化が著しく急速であったので,化学療法追加は 基本的には年齢が適応外。一部で骨髄移植を 併用した超大量化学療法が有効であったという 報告もあるが,未だ少数派でエビデンスではな く,現時点では薦められる治療法ではない。 質問4 大西 洋(放射線科) NK 細胞性と T 細胞性リンパ腫を病理学的な 困難を克服して鑑別することの臨床的な意義に ついて教えて下さい。 応答 伊丹 純(国立医療センター・放射線部) 一般的に,ATL/L を除いたいわゆる periph-eral T-cell lymphoma, unspecified(PTCL) では,B 細胞性のびまん性大細胞型リンパ腫 とその治療に対する反応性にはかわりがない といわれている。従って,その治療指針は, 一般的に B 細胞性びまん性大細胞型リンパ 腫とかわるところがないのが現状である。し かしながら,完全寛解獲得後の再発は PTCL でより多く見られるという報告もある。それ に対して NK/T リンパ腫では,病期が局所 に限局していても放射線治療抵抗性のことが おおく,60Gy というリンパ腫としては大量 の線量を投与しても局所病変が制御できない ことがままある。更に,化学療法も抵抗性で あり,全身に広がったⅢ期Ⅳ期では,超大量 化学療法+骨髄移植でも制御不可能なことが ほとんどである。 また,T 細胞性リンパ腫は一般的に多彩な cytokine を分泌することにより,polyclonal hypergammaglobulinemia,皮膚病変,自己 免疫性溶血性貧血などを呈することも多い。 そ れ に 対 し て は , ス テ ロ イ ド の 投 与 や , cyclosporin A の投与などが有効であること も報告されている。NK/T では,それが腫瘍 細胞による血管破壊とそれによる局所の壊死 として出現し,かつ hemophagocytic syn-drome などを呈することもあることは注意

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が必要であるが,一般的に免疫抑制剤が有効 であることは示されていない。 NK/T リンパ腫では,病期が局所に限局し た場合には,治療成績は芳しくないものの局 所放射線治療の適応となる。進行病期の場合, 現状では治癒不可能と考えるべきであり,今 後の新たな治療法の出現を待たざるをえな い。

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