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メタクリル酸メチル合成過程における反応生成物の定量法 利用統計を見る

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(1)

メタクリル酸メチル合成過程における

反応生成物の定量法

古澤源久

(昭和44年9月8日受理)

Determination of the Constituents in the

Reaction Product during Methyl Methacrylate Synthesis

MotohisaFURUSAWA

Synopsis  The determination of the constituents in the reaction product during methyl methacrylate industrial synthesis has been studied by the author. In this paper, the outline of the volumetric determination of ammonium, acid amide, methacrylic acid, methacrylamide and methyl meth. aCrylate iS giVen.

1.緒

言  メタクリル酸メチルは,現在工業的には主としてアセ トソシアソヒドリソを原料とする方法により製造されて いる。アセトソシアソヒドリソを濃硫酸中に添加して, ev・一スルポキシイソブチルアミドとし,これを加熱してメ タクリル酸アミドを生成させる。この混合物に水とメタ ノールを加えてエステル化を行ない,メタクリル酸メチ ルを合成する。得られたエステルは蒸留により分離し, 水洗,乾燥したのち精留する。この方法により合成する 際のメタクリル酸アミド合成工程の反応生成物中には主 成分のメタクリル酸アミドと硫酸以外にメタクリル酸, 硫酸アソモニウム,α一スルポキシイソブチルアミドな どが含まれている。またエステル化工程の反応牛成物中 にはこれらの物質以外にメタクリル酸メチル,メタノー ル,α一オキシイソラク酸メチルなどが含まれている。 このメタクリル酸メチル合成過程を検討するためには, これら多成分混合物中の各成分の分析法が必要である。 しかし,これらの定量法は従来なく,この面における合 成過程の検討を行なうことができなかった。著者らは反 応生成物中に含まれているアンモニア態窒素,酸アミド 態窒素,メタクリル酸,メタクリル酸アミドおよびメタ クリル酸メチルの定量法を研究し,この方法を確立した ので1)”5),これ.らの研究成果をまとめて報告する。 2. 定  量  法 2.1アンモニア態窒素の定量法 試料中に含まれている酸を中和したのち,ホルマリン を添加してアルカリ滴定することによりアソモニア態窒 素を定量する方法を考案した。酸を中和する際,メタク リル酸が比較的多量に存在すると,メチルレッドの終点 が正確な中和点を示さない。この影響を防ぐ方法を種々 検討した結果,煮沸すればメタクリル酸を水とともに揮 発させて除去しうることを見出した。この際,酸の濃度 が高いとメタクリル酸アミドが加水分解するので,硫酸 濃度は0.01N以下にすることが必要である。定量操作 法はつぎのようである。  試料容液を一定量分取し,メチルレッドを指示薬とし て1N水酸化ナトリウムで中和する。速やかに0.1N硫

酸5mlを加える。全体の液量を約70mlにして,約10

分間静かに沸とうしている状態で煮沸する。冷却した 後,炭酸ガスを含まない0.ユN水酸化ナトリウム水溶液 で中和する。ホルマリン10 mlを加え,フェノールフタ レインを指示薬として0.1N水酸化ナトリウム標準溶液 で滴定する。ホルマリンは市販品を水で2倍に希釈し, アルカリで中和したものを使用する。  2.2酸アミド態窒素の定量法  試料溶液に水酸化ナトリウムおよび硫酸第一鉄を添加 して蒸留すれば,酸アミド態窒素は定量的に加水分解さ れてアンモニアを生成し,最初から存在していたアンモ ニアとともに留出する。これをアルカリ滴定すれば,酸 アミド態窒素とアソモニア態窒素との合量を求めること ができる。アンモニア態窒素は2,1で述べた方法により 定量しうるので,この差より酸アミド態窒素の量を求め ることができる。硫酸第一鉄の添加はアセトソシアンヒ ドリンの影響を防ぐためである。操作法はつぎのようで

一5一

(2)

昭和44年12月 山梨大学工学部研究報告 第20号 ある。  試料溶液を一定量分取し,硫酸第一鉄溶液20r【11(1 g を0.1N硫酸20mlに溶解したもの)を加え,水で100 m》に希釈する。少量の亜鉛を加えた後,5・mol/1水酸 化ナトリウム水溶液100 mlを加え,ケルダール法によ りアソモニアを定量する場合のようにして蒸留を行な う。液量が約50mlになるまで蒸留を行ない,留出物は 0.1N硫酸に吸収させ,過剰の酸をメチルレッドを指示 薬として0.ユN水酸化ナトリウム標準溶液で滴定する。 消費された硫酸の量から酸アミド態窒素とアソモニア態 窒素との合量を求める。  2,3 メタクリル酸の定量法  メタクリル酸のアルカリ滴定を行なう際に妨害を与え る物質を釜残として残存させ,水と共に定量的に留出し たメタクリル酸をアルカリ滴定で求める分析方法を考案 した。試料をアルカリで中和した後,メタクリル酸アミ ドの加水分解を防ぐために酒石酸を添加し,さらにメタ クリル酸の留出速度を速くするために硫酸ナトリウムを 加えて蒸留を行なえぽ,メタクリル酸を定量的に分離す ることができる。メタクリル酸アミド合成工程の初期反 応生成物中には,アセトソシアンヒドリソが含まれてい る場合があるが,この影響は蒸留後ホルマリソを添加す れぽ除去しうる。定量操作法はつぎのようである。  試料を一定量300mZ丸底フラスコ中に分取し,全体 の液量が]OOmlになるように水を加える。メチルレッ ドを指示薬として,0.5N水酸化ナトリウム溶液を加え て中和し,速やかに酒石酸溶液(50mg/ml)10mZを添 加する。全体の液量を200mZにした後,少量の亜鉛お よび無水硫酸ナトリウム35gを加えて蒸留を行なう。 留分120 mlを採取し,必要に応じてホルマリン溶液 10mlを加え,フェノールフタレインを指示薬として 0.1N水酸化ナトリウム標準溶液で滴定する。ホルマリ ソ溶液は市販品を水で2倍に希釈し,アルカリで中和し たものを使用する。  2,4 メタクリル酸アミドの定量法  硫酸銅を重合防止剤としてメタクリル酸アミドを硫酸 で加水分解した後,硫酸ナトリウムを添加して2回蒸留 を行なえぽ,メタクリル酸として多量の共存物質から分 離しうることを見出した。留出液にホルマリソを添加し た後,アルカリ滴定することにより,メタクリル酸アミ ドとメタクリル酸との合量を定量することができる。メ タクリル酸は2.3で述べた方法により定量しうるので, この差よりメタクリル酸アミドを定量することができ る。この定量法はエステル化工程の反応生成物には適用 できない。定量操作法はつぎのようである。  メタクリル酸アミドとメタクリル酸との合量が200 mgを越えないように試料溶液を一・定量300 ml丸底フ ラスコ中に分取する。これに硫酸銅粉末1gを溶解する。 5 mo 1/1硫酸50 mlと水を加えて全体の液量を100 ml とする。突沸防止のために小さなガラス玉を数個入れ, 還流冷却管をつけて60分間加熱する。無水硫酸ナトリ ウム35g,水100 mlおよび突沸防止に粒状スズを1∼ 2粒加えて蒸留を行なう。留分120 mlを採取し,無水 硫酸ナトリウム35g,5 mol/1硫酸5ml,水75mZお よびスズを加えて再蒸留を行なう。留分120 mlを採取 し,必要に応じてホルマリソ溶液10mZを加え,フェノ ールフタレイソを指示薬として0.1N水酸化ナトリウム 標準溶液で滴定する。  2.5 メタクリル酸メチルの定量法  試料溶液に水,メタノールおよび酒石酸ナトリウムを 加えて蒸留を行なえぽ,メタクリル酸メチルを定量的に 多量の共存物質から分離しうることを見出した。この留 出物中には少量のメタクリル酸が含まれているので,メ タクリル酸メチルとメタクリル酸との合量を臭素法によ り求め,別にアルカリ滴定によりメタクリル酸のみの量 を求めれぽ,この差よりメタクリル酸メチルの定量が可 能である。操作法はつぎのようである。  原試料約30gに相当する試料溶液を一定量分取する。 水とメタノールを加えて液量を200 mlにする。メタノ ールは約50 ml含まれているように添加する。酒石酸ナ トリウム25g,ヒドロキノン0.3gおよび少量の亜鉛を 加えて蒸留を行なう。冷却水は10°C以下のものを使用 する。蒸留は速やかに行ない,留分50mJを採取し,水 でユOOmlに希釈する。これをさらに5倍に希釈したの ち,この20mlをヨウ素ビン中に分取する。これに0.1 N臭素酸カリウムー臭化カリウム標準溶液50mlと酢酸

10mZとを加える。塩酸(1+1)20mlを加えて45分

間放置する。ヨウ化カリウムの10%溶液を10mZ加え, チオ硫酸ナトリウム標準溶液で滴定して,メタクリル酸 メチルとメタクリル酸との合量を求める。別に留分を希 釈して調製した溶液20mlを分取し,水を加えて100皿Z に希釈したのち,フェノールフタレイソを指示薬として 0.05N水酸化ナトリウム標準溶液で滴定を行ない,メ タクリル酸の量を求める。 3. 実際試料への応用  メタクリル酸メチル合成過程における反応生成物を本 定量法により分析した結果は表一1に示すようであった。 試料1∼3はメタクリル酸アミド製造工程の反応生成物 であり,試料4はエステル化工程の反応生成物である。

一6一

(3)

メタクリル酸メチル合成過程における反応生成物の定量法 試料1は比較的初期の反応生成物であり,試料2,3は さらに加熱時間を長くした場合のものであるが,合成条 件はいずれも異なる。試料4は試料3をエステル化した ものであり,メタクリル酸アミドの約50%がエステル 化される程度に加熱したものである。メタクリル酸アミ ドとメタクリル酸との合量は臭素法により求める方法が あるので,この方法でも分析を行なった。この結果も表 一1に示す。       表一1反応生成物の分析結果 試料1 試料2 試料3 試料4 メ タ ク リル酸(%) 0.8  7.7  3.5 メタクリル酸アミド(%) 11.3 73.4 85.5 2. 5 本試料の場合には適用できないと考えられる。試料3の メタクリル酸アミドとメタクリル酸との合量分析値と試 料4のメタクリル酸メチル,メタクリル酸およびアミド 態窒素の分析値の和とを比較するとほぼ一致している。 これらの点から考えて,本法による分析値は実際の値と 大差ない結果を示しているものと推定される。 爆鱒圭;ξ皇(%)・2・・ 81.1    89.0 アンモニア態窒素(%) 6.8 21.2 11. 3 61. 0 ア ミ ド態窒素(%)89.2 79.0 88.6 39.2 縫難ξ量モニア(%)96・・ メタクリル酸メチル(%) 臭素法による合量(%)12.1 100.2  99.9  100.2 92.6  94.0 47.5  分析値はすべてアセトンシアソヒドリンに対するモル百分率  で表した。  臭素法により求めたメタクリル酸アミドとメタクリル 酸との合量と本法により求めた結果とを比較すると,試 料1の場合にはよく一致しているが,2,3の場合には 臭素法の方が高値を示している。アミド合成過程におけ る後期の反応生成物中にはメタクリル酸アミドとメタク リル酸以外に臭素を消費する物質の存在が予想される し,またアンモニア態窒素とメタクリル酸の定量値から 考えて,試料2,3の場合臭素法による定量値は実際よ りかなり高値を示しているものと推定される。臭素法は         4,結     言  アセトンシアソヒドリソ法によりメタクリル酸メチル を合成する際の反応生成物の分析法を検討した。この合 成過程における反応生成物中には多くの物質が含まれて いるので,これらの物質の影響の除去方法を検討し,ア ンモニア態窒素,酸アミド態窒素,メタクリル酸,メタ クリル酸アミドおよびメタクリル酸メチルの定量法を確 立した。   ご指導いただいた名古屋大学武内次夫教授に厚く感謝の意  を表する。 文 献 1)武内次夫,古沢源久,高山雄二:メタクリル酸メチル合  成過程における酸アミド態窒素の定量法,工化60,1448  (1957) 2) 武内次夫,古沢源久,高山雄二:メタクリル酸メチル合  成過程におけるメタクリル酸の定量法, 工化61,561  (1958) 3) 古沢源久,武内次夫:メタクリル酸アミド製造工程の初  期反応生成物中のメタクリル酸の定量法,工化63,2061  (1960) 4) 古沢源久,武内次夫,井上市郎:メタクリル酸メチル合  成過程におけるメタクリル酸アミドとメタクリル酸との分  別定量法,工化63,1949(1960) 5) 古沢源久,武内次夫:メタクリル酸メチル合成過程にお  けるメタクリル酸メチルの定量法,工化65,539(1962)

一 7一

参照

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