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当事者との交流は養子・養親・実父母に対するイメージを変えるのか : 自由記述欄の量的分析による検討

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Academic year: 2021

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1.はじめに  近年、結婚しても子どもを持たないカップル、子 どもがいても事実婚を選択するカップル、一人親家 庭、ステップファミリーなど、家族の形態が多様化 している。それにも関わらず、私たちは小さい頃か ら「大人になったら結婚する」こと、「結婚したら 子どもを産み、育てること」を当然視している。言 い換えれば、一般的に、結婚と出産と子育ては、 3 点セットとなっている。子どもは、結婚したカッ プルから産まれるのが当たり前、親子に血縁関係が あるのは、当たり前と誰もが素朴に信じている。す なわち、私たちが素朴に持つ家族物語の背景には、 「産んだら育てるべし」という規範がある(樂木、 2003)1)  この規範は、日本の養子制度にも暗いイメージを もたらしている。竹内・樂木(2006)2)は、日本の 養子がなぜ暗いイメージを伴って見られるかに至っ たかを歴史的に考察し、個人の概念が成立されてい ない日本においては、子どもは血縁で結ばれた核家 族の枠外にある「どこの馬の骨ともわからない存 在」と見なされがちであることを指摘した。  「産んだら育てるべし」という規範は、換言すれ ば、産むことと育てることを単純に直結する規範 (以下、直結規範)である。  しかし、著者らは、ある養子斡旋団体の事例研 究を通じて、産むことと育てることを(ある程 度)分離することを是認する規範(以下、分離規 範)、すなわち、「子が生まれることは、社会が子ど もを授かった」と見なす規範の可能性を見出した ( 竹 内・ 樂 木・ 杉 万、2010: 樂 木、2006 / 2010: Rakugi,2008)3)4)5)  福祉や教育現場で、多様化した家族の一形態であ る養子縁組家庭を支援できる人材を育成するために は、学校教育の中で、学生たちが素朴に抱いている 直結規範を自覚し、学生たちとともに分離規範を考 える教育カリキュラムの開発が必要となるだろう。 本研究は、その予備的な試みである。 2.研究目的  本研究の目的は、養子、養親、および養子の実        * 岡山県立大学保健福祉学部 〒719-1197 岡山県総社市窪木111 ** 福岡工業大学短期大学部 〒811-0214 福岡市東区和白東3丁目30-1 *** 京都教育大学教育学部 〒612-8522 京都市伏見区深草藤森町1  **** 熊本大学教育学部 〒860-8555 熊本市中央区黒髪2丁目39番1号

当事者との交流は養子・養親・実父母に対するイメージを変

えるのか:自由記述欄の量的分析による検討

樂木章子 * 藤井厚紀 ** 東村知子 *** 八ッ塚一郎 ****

要旨 養子、養親、および養子の実父母に対して学生が有するイメージに焦点をあて、学生が養親当事者と交 流することによって、そのイメージがどのように変化したかを、当事者との交流前と交流後のアンケート調査 を比較することを通して明らかにした。分析の結果、①養子の実父母についての批判的なイメージが同情的な イメージに変化すること、②養子についての「かわいそうで心配な」イメージが減少し、これに代わって「そ の他(自由記述)」の回答が顕著に増加することが見出された。また自由記述の回答の増加を、養子に関する イメージの多様化として捉え、単語の出現頻度、新出単語、単語同士の連関に着目して再分析した結果、「普 通」という単語の出現、および、「普通→子ども」「普通→家庭」という連関が新たに生じていることが見出さ れた。このことから、当事者との交流は、学生に養子縁組家庭を身近なイメージをもたらす効果があることが 明らかになった。 キーワード:養子、養親、当事者との交流、自由記述

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150 父・実母に対して学生が有するイメージに焦点をあ て、当事者に接することでそのイメージがどのよう に変化するのかを明らかにしようとするものであ る。具体的には、大学の授業で養親(当事者)によ る特別授業を実施し、受講を通した学生のイメージ の変化を、事前アンケートと事後アンケートを比較 検討する。その際、イメージの量的な変化だけでは なく、自由記述の内容についても、計量的に分析す る。  学生と養親(当事者)との交流の効果に関する先 行研究では、産みの母、養子、養親それぞれについ て、イメージの変化をもたらしていることが明らか にされている(東村・樂木・八ッ塚、2016)6)。具 体的には、「無責任」としていた産みの母に対して は、「子どもへの愛情を持ち、手放すことに苦悩し ている」というイメージへの変化が見られ、「かわ いそうな」養子としていた養子に対しては「ごく普 通の子ども」という変化が見られた。養親に対して も「子どもを助けるためではなく、自分の幸せのた めに養子を育てている」というイメージが生じたこ とが見出されている。  ただ、先行研究では、イメージの質的な変化は把 握できたものの、事前アンケートと事後レポートの 形式が連動していなかったために、変化の割合を数 値化できていない。事後レポートにおける自由記述 の内容も、質的な分析のため、すべてのデータを網 羅できているとは言い難い。  本研究では、先行研究の課題を踏まえ、事前アン ケートと事後アンケートの形式を同一のものとし、 変化率を計量化できるように改訂した。また、先行 研究での自由記述の質的な内容分析を、計量的に分 析するための手法を導入した。 3.方法  福祉および教育を専攻する四年制大学生 50 名と 保育系短大生 80 名を対象に、3 人の養子を育てる 養親 A さんによる特別授業を実施した。授業は専 攻の異なる四つのクラスでそれぞれ行った。A さん には、授業内容を研究に使用することについて事前 に説明し、了承を得た。学生にも、以下に述べる事 前アンケートと事後アンケートを研究に使用するこ と、また記述内容は成績評価に関係しないことを説 明し、了承を得た。事前アンケートと事後アンケー トの項目は、先行研究(東村・樂木・八ッ塚 ,2016) 改訂版を用いた。  授業の前に、実父、実母、養子、養親の四者に対 して学生が持つイメージを調べるため、アンケート 調査(以下、「事前アンケート」)を行った。  実父と実母については、「産んだ子どもを育てら れない実父(実母)についてどのようなイメージを もつか」について、「批判的なイメージ」「同情的な イメージ」「その他のイメージ」という 3 つの選択肢 を与え、それらの合計が 100 になるように記入する ことを求めた。同様に、養子については、「かわい そうで心配なイメージ」「問題を起こしそうで心配な イメージ」「その他のイメージ」の 3 つ、養親につい ては、「偉い・すごい人のイメージ」「変わった人の イメージ」「その他のイメージ」の 3 つを選択肢とし た。「その他のイメージ」を選択した場合には、具 体的な内容の自由記述を求めた。  事前アンケートに次いで、当事者による特別授業 を実施した。授業では、まず、A さん自身が登場す る NHK のドキュメンタリー番組7)録画 DVD を視 聴した。DVD の主な内容は、①養子縁組家庭であ る A 家の日常生活場面、②産みの母親に会いたく ても会うことのできない A さんの子どもの心理描 写、③もう一組の養親希望の夫婦(B 夫妻)が養子 を迎えるまでのプロセス、④ B 夫妻と子の産みの母 との対面場面、の四つであった。DVD 視聴後に、 授業担当教員(筆者の一人)と受講生からの質問や コメントに答えるかたちで、A さんが自らの経験や 思いについて話をした。  授業後、事前アンケートと同じ内容でアンケー トを実施し(以下、「事後アンケート」)、事前アン ケートと事後アンケートの結果を比較した。その 際、イメージの変化の数値だけではなく、自由記述 内容の変化を計量的に分析した。得られた自由記述 は、形態素解析を用いて最も頻度の高い名詞を抽出 し、事前・事後で比較を行った。形態素解析には R (ver. 3.3.2)および MeCab(ver. 0.996)を用いた。 4.結果 (1)授業前と授業後のイメージの変化に関する分 析結果  図 1 は、四年制大学生の「産みの母」「産みの父」 「子ども(養子)」「育て親」のイメージの変化の割 合を表したものである。授業前と授業後のイメー ジの変化が特に顕著だったのは、①産みの母と父

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図1.4 年生大学(教育・福祉系)における授業前と授業後のイメージの変化 図2.短期大学(保育系)における授業前と授業後のイメージの変化 1 批判 2 同情 3 その 他 1 批判 2 同情 3 その 他 1 かわ いそう 2 問題 3 その 他 1 偉い 2 変 わった 人 3 その 他 1-2 自身/産みの母 2-2 自身/産みの父親 3-2 自身/子ども 4-2 自身/育ての親 減少 33 9 5 30 7 5 32 24 5 24 10 11 変化なし 7 9 33 7 11 34 2 14 15 10 27 17 増加 7 29 9 10 29 8 13 9 27 13 10 19 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100% 増加 変化なし 減少 1 批判 2 同情 3 その 1 批判 2 同情 3 その 1 かわいそう 2 問題 3 その 他 1 偉い 2 変 わった 人 3 その 他 1-2 自身/産みの母 2-2 自身/産みの父親 3-2 自身/子ども 4-2 自身/育ての親 減少 44 19 7 40 11 8 39 25 6 18 19 11 変化なし 5 4 32 7 12 38 8 16 21 21 37 29 増加 9 35 19 11 35 12 11 17 31 19 2 18 0% 10% 20% 30% 40% 50% 60% 70% 80% 90% 100% 増加 変化なし 減少 図1 4 年生大学(教育・福祉系)における授業前と授業後のイメージの変化 図 2 短期大学(保育系)における授業前と授業後のイメージの変化

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152 の「批判的なイメージ」の減少、および、「同情的 なイメージ」の増加、②養子の「かわいそうなイ メージ」の減少、および、「その他のイメージ」の 増加、③育て親に対する「偉い人のイメージ」の減 少であった。  図 2 は、短大生を対象とした調査結果である。産 みの母に対する「その他のイメージ」の増加が見ら れたことを除き、四年制大学生とほぼ同じ傾向が あった。 (2)「その他(自由記述)」の内容分析  「その他のイメージ」の増加は、具体的な内容を 学生本人が記入することから、当事者についてのイ メージが拡大したことを反映する。この点に着目 し、四年制大学と短大に共通して顕著な増加が見ら れた養子の「その他のイメージ」に着目し、以下、 二種類の内容分析を行った。 ①ワードクラウド分析  ワードクラウド分析は、自由記述の中に現れた単 語の出現頻度を、文字の大きさによって可視化する ことができる。図 3 は事前アンケートで「その他の イメージ」に現れた単語の出現頻度、図 4 は事後ア ンケートで「その他のイメージ」に現れた単語の出 現頻度が反映されている。  図 3 と図 4 を比較すると、「問題」や「愛情」な どの単語が減少したとともに、「普通」「家庭」とい う新しい単語が出現したことがわかる。また、事前 (2)「その他(自由記述)」の内容分析 「その他のイメージ」の増加は、具体的 な内容を学生本人が記入することから、当 事者についてのイメージが拡大したこと を反映する。この点に着目し、四年制大学 と短大に共通して顕著な増加が見られた 養子の「その他のイメージ」に着目し、以 下、二種類の内容分析を行った。 ①ワードクラウド分析 ワードクラウド分析は、自由記述の中に 現れた単語の出現頻度を、文字の大きさに よって可視化することができる。図 3 は 事前アンケートで「その他のイメージ」に 現れた単語の出現頻度、図 4 は事後アン ケートで「その他のイメージ」に現れた単 語の出現頻度が反映されている。 図3.「その他」に出現した単語(事前アンケート) 図4.「その他」に出現した単語(事後アンケート) (2)「その他(自由記述)」の内容分析 「その他のイメージ」の増加は、具体的 な内容を学生本人が記入することから、当 事者についてのイメージが拡大したこと を反映する。この点に着目し、四年制大学 と短大に共通して顕著な増加が見られた 養子の「その他のイメージ」に着目し、以 下、二種類の内容分析を行った。 ①ワードクラウド分析 ワードクラウド分析は、自由記述の中に 現れた単語の出現頻度を、文字の大きさに よって可視化することができる。図 3 は 事前アンケートで「その他のイメージ」に 現れた単語の出現頻度、図 4 は事後アン ケートで「その他のイメージ」に現れた単 語の出現頻度が反映されている。 図3.「その他」に出現した単語(事前アンケート) 図4.「その他」に出現した単語(事後アンケート) 図 3 「その他」に出現した単語(事前アンケート) 図 4 「その他」に出現した単語(事後アンケート)

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153 アンケートで出現していた「養子」「施設」「我慢」「影 響」「苦難」という単語が消失していた。  「普通」という新出単語は、「子ども(養子)もご く普通の子どもであり、育て親もごく普通の親で ある」という記述の反映であった。また、「子ども (養子)」の、「幸せ」という単語の増加、「問題、か わいそう」という単語の減少、および「養子・施 設・我慢・影響・苦難」という単語の消失は、「子 ども(養子)は問題を起こす」「養子はかわいそうで ある」というステレオタイプが減少したことを示し ている。 ② N グラム分析  N クラウド分析は、複数単語の相関図を明らかに する分析手法である。本研究では、「その他」の欄 に記述された単語のうち、2 単語以上の組み合わせ が 2 回以上の頻度で現れたものを分析対象とした。  図 5 は、事前アンケートにおける単語同士の連関 を示し、図 6 は、事後アンケートにおける単語の組 み合わせのパターンを可視化したものである。図中 の矢印は、単語同士の前後関係を表している。  図 5 と図 6 を比較すると、出現単語数そのものが 増加し、かつ、連関が複雑になっていることがわか る。  ワードクラウド分析に照らし合わせると、新しく 出現した「普通」という単語は、「普通→子ども」 「普通→家庭」という形で結びついていることが示 された。これは「(養子も)普通の子どもである」 図3 と図 4 を比較すると、「問題」や「愛 情」などの単語が減少したとともに、「普 通」「家庭」という新しい単語が出現した ことがわかる。また、事前アンケートで出 現していた「養子」「施設」「我慢」「影響」 「苦難」という単語が消失していた。 「普通」という新出単語は、「子ども(養 子)もごく普通の子どもであり、育て親も ごく普通の親である」という記述の反映で あった。また、「子ども(養子)」の、「幸 せ」という単語の増加、「問題、かわいそ う」という単語の減少、および「養子・施 設・我慢・影響・苦難」という単語の消失 は、「子ども(養子)は問題を起こす」「養 子はかわいそうである」というステレオタ イプが減少したことを示している。 ②N グラム分析 N クラウド分析は、複数単語の相関図を 明らかにする分析手法である。本研究では、 「その他」の欄に記述された単語のうち、 2 単語以上の組み合わせが 2 回以上の頻 度で現れたものを分析対象とした。 図 5 は、事前アンケートにおける単語 同士の連関を示し、図6 は、事後アンケー トにおける単語の組み合わせのパターン を可視化したものである。図中の矢印は、 単語同士の前後関係を表している。 図5.「その他」に出現した単語の連関(事前アンケート) 子ども 親 他 幸せ かわいそう の 人 イメージ 自身 産みの親 子 図 5 「その他」に出現した単語の連関(事前アンケート) 図 6 「その他」に出現した単語の連関(事後アンケート) 図6.「その他」に出現した単語の連関(事後アンケート) 図5 と図 6 を比較すると、出現単語数 そのものが増加し、かつ、連関が複雑にな っていることがわかる。 ワードクラウド分析に照らし合わせる と、新しく出現した「普通」という単語は、 「普通→子ども」「普通→家庭」という形 で結びついていることが示された。これは 「(養子も)普通の子どもである」「(養子 縁組家庭も)普通の家庭である」という記 述が複数あったことを意味する。 5.考察 以上の分析により、授業実践を通して、 「普通」という単語の新たな出現が明らか になった。学生は当事者との対話を通して、 「子ども(養子)と育て親は、『血のつな がりがなくても』普通の親子である、養子 のか、学生が学んだ「普通」は、何を意味 しているのかを検討する必要がある。 授業を受けた学生の視点に即して考え てみよう。学生の多くは、それまで養子縁 組家庭とほとんど接点を持っていなかっ た。自分がこれまで接したことのない人々 に対するイメージを尋ねられれば、「かわ いそう」や「偉い人」といったステレオタ イプの回答をせざるを得ないのはごく自 然であろう。しかし学生たちは授業で養親 の話を聞き、養子縁組家庭の日常生活の一 端をビデオで見ることで、自らの家族や生 活と地続きの姿をそこに見出し、養親や養 子も自分とそれほど変わることのない 人々であるということを確認したのであ ろう。それが「普通」の「子ども」、「普通」 の「家庭」という言葉で表された中身なの の ビデオ 産みの親 イメージ 子ども 自身 家庭 親 自分 幸せ 普通 こと ⼤切

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154 「(養子縁組家庭も)普通の家庭である」という記述 が複数あったことを意味する。 5.考察  以上の分析により、授業実践を通して、「普通」 という単語の新たな出現が明らかになった。学生は 当事者との対話を通して、「子ども(養子)と育て 親は、『血のつながりがなくても』普通の親子であ る、養子縁組家庭は普通の家庭と変わりはない」と いうことを学んだということである。しかし、ここ での「普通」とは何を指しているのか、学生が学ん だ「普通」は、何を意味しているのかを検討する必 要がある。  授業を受けた学生の視点に即して考えてみよう。 学生の多くは、それまで養子縁組家庭とほとんど接 点を持っていなかった。自分がこれまで接したこと のない人々に対するイメージを尋ねられれば、「か わいそう」や「偉い人」といったステレオタイプの 回答をせざるを得ないのはごく自然であろう。しか し学生たちは授業で養親の話を聞き、養子縁組家庭 の日常生活の一端をビデオで見ることで、自らの家 族や生活と地続きの姿をそこに見出し、養親や養子 も自分とそれほど変わることのない人々であるとい うことを確認したのであろう。それが「普通」の 「子ども」、「普通」の「家庭」という言葉で表され た中身なのではないかと考えられる。  東村(2016)では、学生のイメージの変化を、① 今まで持っていた「普通」の圏域が拡大したパター ンと、②「普通」についての新たな枠組みが出現 したパターンに区別し、①を「典型的な学び」、② を「イメージを超えた学び」として、大多数の学生 は①にとどまっていたのではないかと批判的に論じ た。また、①は「自分とは無縁の世界」という認識 は変わらず、当事者性の意識にはつながらないので はないかと述べた。当事者に直接会って話を聞くこ とは、そういう存在を「知る」ことにはつながる が、自らに関係のあることとして受け止めることに は必ずしもつながらない。そのような意味で、授業 での啓発には限界がある。また、そうした情報はメ ディアでも発信されている。現に学生に見せたビデ オは、テレビのドキュメンタリー番組の一部であっ た。しかしながら、そうした情報はもともと関心の ある人々にしか届かない。授業において啓発を行う 意義は、関心のなかった人が関心を持つきっかけに なるという点にある。もちろん、大学の数クラスの 授業では限界も大きい。義務教育段階、あるいは就 学前教育の段階から、家族のあり方の多様性を伝え ていくことが求められる。自分とは違う家族の形が あるという情報に日常的に触れることで、人々がそ うした存在を特別視しなくなり、そうした社会だか ら自由に家族の形を選ぶ人が増える、その中で「普 通であるかないか」ということ自体が問題ではなく なる、という好循環を生み出していくことが必要で ある。教育は、そのきっかけの一つになりうるので はないだろうか。 付記 本研究は JSPS 科研費 26380690 の助成を受けたも のである。 文献 1 )樂木章子(2003).血縁なき親子関係をつくる ネットワーク:NPO 法人「環の会」の事例.実 験社会心理学研究、44(1):15-26. 2 )竹内みちる、樂木章子(2006).養子の暗いイ メージはいかにして形成されたか:その歴史的考 察、集団力学、23:81-89. 3 )竹内みちる、樂木章子、杉万俊夫(2010).産 むことと育てることを分離する社会規範の可能 性:NPO法人「環の会」の事例から.集団力学、 27:62-75. 4 )樂木章子(2006)家族:血縁なき「血縁」関 係.(杉万俊夫編著.コミュニティのグループ・ ダイナミックス、239-270.京大出版) 5 )AKIKO RAKUGI(2008).Transcendental nature of norms: Infants in residential nurseries and child adoption. In: T. Sugiman, K. Gergen, W. Wagner, Y. Yamada (eds), Meaning in Action 149-179. 6 )東村知子、樂木章子、八ッ塚一郎(2016).当 事者による授業は養子・養親・産みの親に対する イメージを変えるか —大学生を対象とする啓発 活動からの考察.集団力学、33:3-23. 7 )NHK ドキュメンタリー「私の “ 家族 ”」(2010 年 5 月 7 日放送)

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Can the Lecture by an Adoptive Parent for Students Change

their Stereotype of the Adoptive Family?

AKIKO RAKUGI*,ATSUNORI FUJII**,TOMOKO HIGASHIMURA***,

ICHIRO YATSUSUKA****

*Faculty of Health and Welfare Science, Okayama Prefectural University **Fukuoka Institute of Technology, Junior College

***Faculty of Education, Kyoto University of Education ****Faculty of Education, Kumamoto University

Abstract This paper focused on stereotypes of adoptive family in Japan, i.e. adoptive parents, adopted

children, and their birth parents. An adoptive mother was invited to talk about her experience to University & College student in 5 classes. The effect of the talk was examined by comparing the pre- and post-class questionnaires. The results revealed that (1) negative images of birth parents changes to sympathetic ones, (2) free description about adopted children in questionnaire significantly increases contrary to decreased pity stereotypes. Focusing of the words in free description, the word “ordinary ‘” was newly appeared and the word “ordinary” and “children/family” were linked together. It was found that the tales by an adoptive mother made the students feel closer to adopted families.

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