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IT好き放題:起業と特許と研究と

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Academic year: 2021

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(1)40. であるが,当時の計算機の処理能力と自然言語処理 年を超える研究生活を振り返って,改めてそ. の理論では実用化は無理という意見が圧倒的であっ. の目的を想うと,この一文のタイトルがやはり最も相応. た.京都大学で形態素解析の試みが行われ,それが. しい気がする.研究を始めた動機は 「起業」にあったわ. 九州大学で明示的に 「かな漢字変換」 というテーマにな. けではないが,何か新しい物を作りたいという欲求は. り,研究が行われていたが,このような最先端すぎて. 小学校時代からあり,当時はラジオ少年だった.大学. ほかに研究者が希薄な状態では,学会が論文に取り. 院で研究を始めた当初は人工知能を目指して,その一. 上げる意義が薄く,九大の栗原俊彦教授が「採録され. テーマであった文字認識に憧れたが,机を並べていた. ない」と嘆くような状況であった.ここに大学の研究の. 先輩に大学としてはもう時代遅れのテーマだと助言を. 本質が浮き彫りになっていると私は思っている.大学. 受け,自然言語処理に鞍替えした. 「企業が始めた研. の研究は,このような先進導坑的役割であるのがより. 究を大学の限られた予算と人員でやっても勝てない」 と. 良いのではないだろうか.. 刻みつけられている. 『素人のように考え,玄人として 実行する』 の著者, CMU 教授の金出武雄氏の言である.. 基 応 専 般. [シ ニ ア コ ラ ム]. I T.  当時,自然言語処理の研究をやっていた代表的な研 究室は,京都大学と九州大学にあった.大学の研究と いうものは,それが直接特許に結びつくかどうかには 疑問符が付く.分野にもよるであろうが,情報科学のよ. 好き放題. Messag e. 言われた.これは 40 年以上たった今でも私の脳裏に. n Favorite I T so. [No.21]. 起業と特許と研究と. うな分野では,大学以外にも大企業の大研究所が控え.  私は,当時の形態素解析だけを用いたかな漢字変. ている.ここは明示的に製品化の研究を行うことを目的. 換技術の上に局所意味分析と名付けた当時の計算機. としている.大学がこのような目的に特化した研究所と. 処理能力の許すレベルの意味処理と,当時としては. 同レベルで競争的な研究をすることは大学の存在意義. 珍しかった学習を導入してかな漢字変換を実用化した.. に馴染まないと私は思っている.私の始めた自然言語. もし, 「下手物」と呼ぶ人もいた人工知能の研究が京大. 処理は大学においては意味理解のレベルの研究を行っ. で行われておらず,かつ,九大のかな漢字変換の先行. ていた.あれから 40 年,いまだに真の意味理解は製. 研究がなければ,日本語ワードプロセッサ JW-10 の. 品レベルでは実現できていないと言ってよいだろう.特. 発明は,私自身が形態素解析から起こさなければなら. 許の有効期間は 20 年であるから,大学の研究を特許. ず,さらに数年,いや十年くらいは遅れていたにちが. 化することはこの場合は,無意味に近い.しかし,そ. いない.研究には純粋な技術的問題だけではなく,気. の研究を糧にして企業の研究所は意味処理のほんの導. 運というものがあり,論文に取り上げられず,ほかのど. 入部̶「厚い夏」 などの変換を排除する技術̶を製品. の研究機関でもやっていないテーマを始めることはパ. 化していった.これが大学の存在意義ではなかろうか.. イオニア精神がなければ成し遂げられないからである..  私は企業入りしてからは,言語処理の階層で言えば, 「ほかのどの研究機関でもやっていない」ことはオリジ. 2 段階も下の形態素解析を研究テーマとした.かな漢. ナリティの源泉であるのだが,また,同時に,横並び. 字変換である.当時,計算機への日本語入力は大き. 意識の強い日本では,このことを理由にテーマが潰さ. な問題となっていた.かな漢字変換はその 1 つの手段. れるのは珍しいことではない.  今,大学の研究者は特許を取ることを要求され,さ らには起業を行うことまで推奨されている.しかし,. 天野真家 Shin-ya AMANO (湘南工科大学) [正会員] [email protected] 1973 年京都大学大学院工学研究科電気工学専攻修士課程修了.東芝 総合研究所を経て湘南工科大学教授.世界初の日本語ワープロ,小型計 算機機械翻訳システムの発明・開発.かな漢字変換で発明協会全国発明 賞,日本語ワープロで特許庁長官賞,機械翻訳で科学技術庁長官賞.本 会理事,代表会員などを歴任.本会フェロー.京都大学博士(情報学).. 特許の有効期間が 20 年に過ぎないことをおもえば, 特許は大学の研究のような先進性とは相いれないので はなかろうか.逆に言えば,今,特許として有効になる 目先の研究しか評価されないというおかしな現象が起 きているともいえるだろう. (2012 年 7 月 17 日受付). 情報処理 Vol.53 No.10 Oct. 2012. 1051.

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