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実物体のモデル化のための相互反射を考慮した表面反射特性の推定

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Academic year: 2021

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(1)論. 画像の認識・理解論文特集. 文. 実物体のモデル化のための相互反射を考慮した表面反射特性の推定 町田 貴史†. 竹村 治雄†. 横矢 直和††. Inverse Reflectometry for Real Objects with Diffuse and Specular Interreflections Takashi MACHIDA† , Haruo TAKEMURA† , and Naokazu YOKOYA††. あらまし 実環境に仮想物体を合成表示する複合現実感の研究において,より写実性の高い表現を行うために 現実物体を仮想化する仮想化現実の研究が盛んに行われている.特に,物体の表面反射特性を推定することは実 環境と仮想化された物体との間の陰影矛盾を解決するために重要である.この問題に対して我々は,物体の距離 画像と表面のテクスチャ画像から物体の反射特性を密に推定する研究を行ってきた.また複雑な形状を有する物 体に関しては,物体表面上での二次反射による相互反射の影響を考慮した手法を提案してきた.しかし,鏡面反 射成分による相互反射の影響が除去できないという問題があった.そこで本論文では,物体表面における鏡面反 射成分を含む相互反射の影響を考慮して反射特性を推定する手法を提案する.具体的には,まず反射成分を物体 面上の多くの点で観測するために物体の形状をもとに光の照射方向に関する照明条件を決定する.そして決定さ れた複数の照明条件と計測データから物体表面における光子(フォトン)の分布に基づいたフォトンマッピング 法を用いることで,表面の反射特性を物体面上の各点で推定する.実験では,推定された反射特性を従来法と比 較することで,様々な仮想環境内の照明条件に対して忠実に物体を表現できることを示す. キーワード. インバースレンダリング,フォトンマッピング法,相互反射,複合現実感,仮想化現実. 1. ま え が き. もつため,観測が容易である.一方,鏡面反射成分は 入射光,法線,視点に依存したある限定された範囲で. 近年,実環境と仮想環境を融合する複合現実感の研. しか観測することができず,反射係数の推定のために. 究として,現実物体と同様の写実性をもつ仮想物体を. は,様々な光源位置での観測を必要とする.また,た. 生成するための手法が研究されている [1], [11], [16]∼. とえ観測が行える場合でもその値が微小である場合. [18].特に物体の表面反射特性を推定することは実環. が多く,反射係数を安定に推定することは困難であっ. 境と仮想化された物体との間の陰影矛盾を解決するた. た [7], [8], [12].我々は,以上のような表面反射の特性. めに重要である.これらの研究では,現実物体を仮想. を踏まえ,様々な形状や表面反射特性を有する物体に. 環境で再現する際に,物体の見え方に対する光学的な. 対して効率良く鏡面反射成分を観測できるように物体. 特性を忠実に再現する必要性が報告されている.この. 計測の際の光源位置の最適な選択を行うことにより,. 問題を解決する手法として,我々は物体の形状と表面. 少ない表面テクスチャ画像から両反射特性にかかわ. テクスチャ画像から物体の反射特性を密に推定する研. る係数を物体面上の大部分で密に推定することを行っ. 究を行ってきた [11], [17].. た [10].しかし,物体表面の反射特性の推定時に物体. 物体の表面反射特性は拡散反射成分と鏡面反射成分. 面上での一次反射のみを仮定すると,複雑な形状を有. に分けることができる.拡散反射成分は物体の色を表. する物体の場合,二次反射の影響が大きくなり,正し. し,入射光に対して全方向に均一に反射する特性を. い反射係数推定は難しいという問題が残っていた [10]. そこで,相互反射を考慮した表面反射特性の推定を行. †. 大阪大学サイバーメディアセンター,豊中市 Cybermedia Center,Osaka University,1–32 Machinakeyamacho,Toyonaka-shi, 560–0043 Japan †† 奈良先端科学技術大学院大学情報科学研究科,生駒市 Graduate School of Information Science,Nara Institute of Science and Technology,8916–5 Takayama-cho, Ikoma-shi, 630–0192 Japan. 1450. 電子情報通信学会論文誌. う上で,CG の分野で相互反射をモデル化したレンダ リング手法であるラジオシティ法に基づいた反射特性 の推定を行った [11].しかしながら,ラジオシティ法 は拡散反射成分による相互反射の影響のみを扱う手法 であり,鏡面反射成分による相互反射の影響が誤差と. c (社)電子情報通信学会 2005 D–II Vol. J88–D–II No. 8 pp. 1450–1459 .

(2) 論文/実物体のモデル化のための相互反射を考慮した表面反射特性の推定. して現れるという問題があった. 相互反射を考慮した他の従来法では,その多くはラ ジオシティ法に基づいて物体の表面反射特性の推定を. 2. 幾何形状とカラー画像からの反射係数 の推定. 行っている [2]∼[4], [9], [15].Fournier ら [4] はシーン. 2. 1 概. の幾何形状,光源位置は手動で与え,部屋の壁や扉な. 提案手法の処理の流れを図 1 に示す.処理は三次元. どの反射係数をラジオシティ法に基づいて推定を行っ た.しかし,幾何形状が粗く作成されていることと,. 画像計測(図 1 中 A,C),光源位置の選択(図 1 中 B),表面反射特性の初期推定(図 1 中 D),フォトン. 物体の反射係数が一様であり,拡散反射成分のみしか. マップを利用した表面反射特性の推定(図 1 中 E)に. 仮定しないことから,厳密な反射係数の推定は困難で. 分けられる.各処理の概要は次のとおりである.. あった.また Yu ら [15] は,あらかじめモデル化され. 要. ( 1 ) 三次元画像計測. た部屋の幾何形状と表面の色情報を取得し,モンテカ. A. では全周計測レンジファインダで対象物体の形状. ルロ光線追跡法 [6] に基づいて鏡面反射成分を含む相. を計測し,距離画像を得る.また,C. では選択された. 互反射を考慮した反射特性の推定を行った.しかし,. 光源設置候補位置に光源を設置し,複数回計測するこ. 鏡面反射特性が一様なものを対象としており,不均一. とで,それぞれの照明条件下での表面テクスチャ画像. な表面反射特性をもつ物体に適用することは困難で. を得る.. ある.また計算量が膨大になるという問題もあった.. ( 2 ) 複数の照明条件のための光源位置選択. Boivin ら [2] は厳密な形状をもとにラジオシティの計. 物体の形状とカメラ位置を既知として,計測装置の. 算を導入し,反射特性についても多くの状態を仮定す. 周囲に複数の光源設置候補位置を設定し,物体の形状. ることにより,現実世界に存在するすべての反射特性. をもとに各反射成分をより多く観測できる光源位置を. を推定しようと試みた.しかし,分割するパッチの数. 選択する.. には限界があり,表面反射特性がパッチ単位で一様で あることから,複雑な模様の入った物体の表面反射特 性の推定は不可能であった.. ( 3 ) 表面反射特性の初期値推定 フォトンマッピング法を利用した表面反射特性の推 定を行うためには妥当な初期パラメータが必要となる.. 以上を踏まえ,本論文では,まず文献 [10] と同様に. そのため,文献 [11] の手法を用いることで,あらかじ. 距離画像と表面テクスチャ画像の同時計測が可能な全. め取得した物体の法線,選択された光源位置,計測に. 周計測レンジファインダを使用し,物体計測時の最適. より得られた複数の表面テクスチャ画像から各反射係. な光源位置を決定することにより各反射成分を密に. 数の初期値を推定する.. 観測する.次に,物体表面の相互反射については各反. ( 4 ) フォトンマップを用いた表面反射特性の推定. 射成分の相互反射による影響を考慮したフォトンマッ ピング法に基づいて物体表面反射特性の推定を行う. フォトンマッピング法は光源から放射される光子(フォ トン)の物体面上での分布に基づいて物体をレンダリ ングする手法である.この方法を反射特性の推定に用 いることにより,不均一な表面反射特性をもつ物体に 対して,物体面上のほぼ全点で各反射成分の相互反射 の影響を考慮した厳密な物体表面反射特性の推定が可 能となる. 以下,2. において各反射成分を密に観測するための 光源位置選択とフォトンマッピング法に基づいた反射 特性の推定法について述べる.3. では実験結果につい て述べ,最後に考察と今後の課題について述べる. 図 1 物体の表面反射係数推定における処理手順 Fig. 1 Flow diagram of estimating surface reflectance properties.. 1451.

(3) 電子情報通信学会論文誌 2005/8 Vol. J88–D–II No. 8. 先に推定された反射係数の初期値を用いて,フォト ンマッピング法を利用した表面反射特性の反復推定を 行う.. 2. 2 三次元画像計測と複数の照明条件のための光 源位置選択 物体の幾何形状と表面のテクスチャ画像を取得す る 装 置 と し て 全 周 計 測 レ ン ジ ファイ ン ダ(Cyber-. ware3030RGB)を使用する.全周計測レンジファイ ンダの外観を図 2 (a) に示す.全周計測レンジファイン. 図 2 三次元画像計測装置 Fig. 2 3D-Digitizer.. ダは装置が計測物体の周りを 360 度回転することによ り,全周の距離画像とテクスチャ画像を同時に得るこ とができる.二つの画像は画素単位で 1 対 1 に対応し ているため,計測の際に計測物体の位置を固定すれば, 複数回の計測を行ってもテクスチャ画像間においての 位置ずれが発生しない.装置内のカメラは図 2 (b) に 示すように,X1 の位置に設置されており,X2,X3 の位置にある鏡を通して物体の表面テクスチャを得て いる.そこで本論文では,仮想的にカメラは X4 の. 図 3 光源設置候補位置 Possible positions of light source.. Fig. 3. 位置にあると考え,計測時のカメラの方位はこの仮想 カメラと回転の中心を結ぶ方向とする.なお,本装置 で得られる距離画像とテクスチャ画像は,円筒座標系 で表現されており,レンジファインダの回転軸,回転. Y ix = 2 D. . . Psx θ2 Pdx cos θdx + exp − rx2 cos θvx 2σx.  . (1). 角に対して,それぞれ物体表面の回転軸からの距離と. RGB 値を値としてもつ画像である.なお,距離画像 におけるノイズ除去のために,文献 [14] に基づく選択. 値,θdx ,θvx ,θrx はそれぞれ入射光と法線,視線と. 的局所曲面当てはめを適用している.. 法線,光源と視線の二等分方向と法線のなす角度を表. ここで,ix は物体面上の点 x に対応する画素の輝度. 次に,計測した物体の形状をもとに,図 3 のように. す.Y ,D はそれぞれ光の強度と光源から物体面まで. 装置の周囲に格子状に配置した,位置が既知の 60 個. の距離を表す.Pdx ,Psx ,σx はそれぞれ,拡散反射. の光源設置候補位置の中から各反射成分が密に観測で. 係数,鏡面反射係数,表面粗さ係数を表してる.また,. きるような光源位置を複数選択する [10].光源は装置. 光の減衰を表す Y /D2 については物体面上のある点. に固定されるため,物体計測時は装置と同様に回転す. までの減衰量を 1 として,その他の点における減衰量. る.なお,後述の実験では,光源設置候補位置は縦方. は相対的なものとする.. 向に 5 個,横方向に 12 個を上下左右 5 cm 間隔で用意. 2. 3 表面反射特性の初期値推定. する.このとき,装置の仮想カメラと各光源設置候補. 前節で決定された m 個の光源設置候補位置に対し. 位置の位置関係は一定に保たれる.また,レンジファ. て,得られた m 枚の全周テクスチャ画像内の同じ位. インダは暗室に設置されており,物体と光源以外の暗. 置の画素について反射特性を推定する.以下では,決. 室壁面等からの環境光の影響は微小であり,無視でき. 定された光源位置 p(1 ≤ p ≤ m) で計測されたテク. ると仮定する.. スチャ画像を Ip = (ip1 , · · · , ipγ )(ipx は物体面上の. 光源選択は以下の Torrance-Sparrow モデル [13] に. 点 x に対応する画素の輝度値,γ は総画素数)とする. 基づき,光源位置,カメラ位置,物体の法線を考慮し. と,画素 ipx は,観測される反射成分によって三つに. て反射成分が密に観測できるよう選択する(詳細につ. 分類される.拡散反射成分のみを含む画素は Tdif f と. いては文献 [10] 参照).. して分類され,ipx,dif f と表す.強い鏡面反射成分を 含む画素は Tboth に分類され,ipx,both と表す.最後 にどちらにも当てはまらない画素は Tnone に分類さ. 1452.

(4) 論文/実物体のモデル化のための相互反射を考慮した表面反射特性の推定. れ,ipx,none と表す.. しては,環境中にどの程度フォトンが散布されている. 初期表面反射係数の推定は,分類された各画素を用. のかを推定する.このときカメラ位置からモンテカル. いて文献 [11] に基づき行う.拡散反射係数については. ロ光線追跡法を用いて光線が当たった物体面上の点で. ラジオシティ法を用いて拡散反射成分による相互反射. のフォトンの数を計算する.このようにフォトンマッ. の影響を除去した値を推定する.鏡面反射係数と表. プは環境中へのフォトンの分布として与えられている.. 面粗さ係数については相互反射の影響があるものの,. 式 (2),(3) は理論的なモデルであり,計算の際にこ. その影響を保持したまま Torrance-Sparrow モデルを. のまま用いることは不可能であるため,物体面上の点. 用いて推定する.ここで推定された拡散反射係数,鏡. x における輝度値 ix は,実際には以下のように表さ. 面反射係数,表面粗さ係数を以下ではそれぞれ. 0 Pdx ,. れる.. . . 0 Psx ,σx0 とする. 2. 4 フォトンマップを用いた表面反射特性の推定 図 1 中の E ではフォトンマッピング法を用いた反. ここで,Ix は放射照度を表し,K(θvx , θrx , σx ) はレ. 射係数の推定を行っている.ここではまず,フォトン. ンダリング方程式における鏡面反射の項を表してい. マッピング法を説明し,次にフォトンマッピング法を. る.Ix については,その強度は物体面上の点 x に到. 用いて初期値から反復法によって推定値の精度を上げ. 達したフォトンの数によって確定される.本手法では. る方法について述べる.. ix = Ix. Pdx + Psx K(θvx , θrx , σx ) , π. (4). 計算量が膨大にならないよう,1 個のフォトンは物体. 2. 4. 1 フォトンマッピング法 フォトンマッピング法 [5] は,次に示す Kajiya のレ. 式 (4) 中の K(θvx , θrx , σx ) は,対象とする物体が異. ンダリング方程式 [6] に基づいて物体のレンダリング. 方性反射となるか,等方性反射となるかによって推定. を行う手法である.. すべき係数の数が変化する.本研究では物体が等方性. − → → L(x, → ω ) = Le (x, − ω ) + Lr (x, − ω ),. (2). → → → → → → f (x, − ω , − ω )Lo (x, − ω  )(− ω·− n )d− ω ,. 容易であると考える.. (3). Ω. x : Surface point, − → n : Unit vector of surface normal at x , − → ω : Direction from outgoing radiance, − → ω  : Direction of incoming radiance, → d− ω : Differential solid angle, Ω : Hemisphere of directions. e. 反射の場合のみを扱うが,異方性反射の場合であって も,若干の式変形で対応できるため将来的には拡張は. → Lr (x, − ω) =. . 面上で最大 3 回まで反射するように設定する.なお,. r. o. ここで,L ,L ,L ,f はそれぞれ,発光照度,反射. なお,フォトンマッピング法を用いるためには物体 表面の反射特性が既知である必要がある.そのため, 0 提案手法では前節で述べた方法により,初期値 Pdx , 0 Psx ,σx0 を求めている. 2. 4. 2 表面反射係数の反復推定. 本手法では表面反射係数の推定に反復計算を用いる. この場合,複数の変数を一度に推定することも可能で あるが,収束が遅く計算量が膨大になるという問題が ある [2].そこで,推定の処理を各成分ごとの二つの 処理に分ける.図 4 はフォトンマッピング法による表. 照度,入射照度,BRDF を表している.なお,物体は. 面反射係数の推定における処理の流れを示しており,. 自己発光はしないものと仮定し,放射照度 L は Lr に. のフォトンを光源の位置から環境へ散布する.このと. n n n 回目の繰返しで推定される各反射係数は Pdx ,Psx , n σx と表す.これらの処理を繰り返し適用することで, 表面反射係数がある値に収束する.次の式は図 4 中の (a),(b) 二つの処理において用いられ,テクスチャ画. き散布されたフォトンは到達した物体面上の点での反. 像内の各画素ごとに最小化することで各反射係数の推. 射特性に従って,物体面上で反射するか吸収されるか. 定を行う.. 等しいとする.フォトンマッピング法は上記の式を用 いた 2 パスレンダリング方式となっており,まず多数. が決定される.なお,フォトンがどのような経路を進 むかはモンテカルロ光線追跡法 [6] によって追跡され る.モンテカルロ光線追跡法は反射したフォトンに対 してのみ再帰的な追跡が行われる.2 パス目の処理と. E(Pdx , Psx , σx ) =. q. 2 (ijx − i. jx ) .. (5). j=1. ここで,ijx はある光源位置 j で計測されたときに物 1453.

(5) 電子情報通信学会論文誌 2005/8 Vol. J88–D–II No. 8. 体面上の点 x に対応するテクスチャ画像内の画素値を. [鏡面反射係数と表面粗さ係数の推定]. 表し,i. jx は,式 (4) を用いて光源位置 j における物. 先に求めた拡散反射係数は,微小であるが鏡面反射. 体面上の点 x で算出された放射照度を表している.q. 成分を含んでいる可能性がある.これは物体面上の点. はサンプル数を表しており,物体面上の点 x に対応す る複数のテクスチャ画像内の画素のうち,Tnone 以外. x に到達するフォトンは,点 x 以外の他の点で鏡面反 射成分としての性質を有したものが点 x に到達したと. と判断された画素の数である.. 考えられるためである.そのため,実際に観測される. [拡散反射係数の推定]. 画素値と計算により推定された画素値には差がある.. 拡散反射係数 Pdx は Tdif f だと判断された画素を 0 0 用いて推定される.ここで,Pdx ,Psx ,σx0. は初期値. として最初の i. jx を決定するために使用される.また,. そこで,ここでは求めた拡散反射係数を用いて新たに 鏡面反射係数と表面粗さ係数を推定する.推定された 係数は再び拡散反射係数を推定するために用いられる.. この場合,鏡面反射成分は観測されていないと判断さ. n 鏡面反射係数 Psx ,表面粗さ係数 σxn は Tboth と判. れているため,式 (4) における鏡面反射の項は無視さ. 断された画素を用いて推定される.ここで,先に推定. れる(K(θvx , θrx , σx ) = 0).. n された Pdx は新しい拡散反射係数として使用される, 0 また Psx ,σx0 は,この処理での初期値として最初の. i. jx を決定するために使用される.. ここで,上記の二つの処理は各反射係数が推定する ために反復処理がなされるが,実画像とレンダリング 画像との差が必ずしも収束するとは限らない.そこ で,経験的に反復回数の上限を 50 回とし,その中で 式 (5) の値が最小となるときの反射係数を最終的な結 果とする.. 3. 実. 験. 提案手法の有効性を確認するために,図 5 (a)∼(c) の計測物体について反射係数の推定実験を行った.物 体 A は相互反射が強く確認できる形状を有しており, 実験ではその表面に異なる材質の紙を貼り付けること で反射特性を変化させる.物体 B,C は複雑な形状を 有し,鏡面反射特性をもつ物体である.また,フォト 図 4 フォトンマッピング法による反射係数推定処理の 流れ Fig. 4 Flow diagram of estimating surface reflectance properties based on photon mapping.. ンの散布量が少ない場合,低周波のノイズが誤差とし て現れるため経験的にフォトンの数はすべての物体に. 図 5 実験に用いた三つの物体と各反射成分の観測割合と推定に要した時間 Fig. 5 Three objects used in experiments, measurability of two reflection components and computational time.. 1454.

(6) 論文/実物体のモデル化のための相互反射を考慮した表面反射特性の推定. 図 6 予備実験 1 の拡散反射係数における 提案手法と従来法との比較 Fig. 6 A comparison with previous works in a preliminary experiment 1.. 図 7 予備実験 2 の拡散反射係数における 提案手法と従来法との比較 Fig. 7 A comparison with previous works in a preliminary experiment 2.. ここで,物体 A では領域 α と β は直角に接続され おいて 200 万個とした.なお,各画素につき鏡面反射. ており,領域 α と β の間で相互反射の影響を受けや. 成分の観測回数が 1 回以下である場合は係数の推定が. すくしている.図 6,図 7 (a)∼(c) が予備実験 1,2 に. 不可能であるため,全周テクスチャ画像を横に探索し,. おける比較結果である.各グラフはそれぞれ推定され. 間の点における係数を線形補間した.. た拡散反射係数の赤(R),緑(G),青(B)の各成分. 3. 1 予 備 実 験 まず,物体 A を上部の面(領域 α)と物体下部の面 (領域 β )に分け,それぞれの領域に一様な拡散反射. を示している.グラフの横軸はテクスチャ画像の縦の. 特性のみをもつ紙を貼り付けた場合(予備実験 1)と. きの推定された拡散反射係数の平均値を表し,256 階. 鏡面反射特性をもつ紙を貼り付けた場合(予備実験 2). 調で表現している.. 画素位置を表す.また,グラフの縦軸はテクスチャ画 像のある縦方向の位置に対して,横にスキャンしたと. について予備実験を行う.実験では拡散反射係数の推. 図 6 では,従来法 I において領域 α と領域 β の境. 定値を提案手法,文献 [10], [11] の手法で比較する.そ. 界付近で推定値が高くなっており,相互反射を全く考. れぞれの従来手法は次の二つの特性をもっている.. 慮していないために反射係数の忠実な推定が行えてい. 従来法 I:相互反射を考慮しない推定法 [10].. ないことが分かる.また,従来法 II と提案手法では. 従来法 II:拡散反射による相互反射の影響のみを考. 正しく反射係数の推定が行えていることが確認でき,. 慮した推定法 [11].. 両者に差は見られない.図 7 では,従来法 II におい 1455.

(7) 電子情報通信学会論文誌 2005/8 Vol. J88–D–II No. 8 表 1 実験に用いた三つの物体と各反射成分の観測割合と推定に要した時間 Table 1 Three objects used in experiments, measurability of two reflection components and computational time. Object Light. Diffuse. Specular. B. 10(3). 100.0%. 89.2%. C. 9(3). 100.0%. 94.7%. Method Conventional method I Conventional method II Proposed method Conventional method I Conventional method II Proposed method. Computational Time [h:m] 0:23 3:11 4:43 0:18 2:34 4:21. 図 8 物体 B,C における円筒座標系での実写画像と合成画像の差 Fig. 8 Differences between real and synthetic cylindrical images for Object B and C.. ても領域 α と領域 β の境界付近で推定値がやや高く. 3.06 GHz,メモリ:2 GByte)を用いた場合の反射係. なっている.これは従来法 II では拡散反射による相互. 数の推定に要した時間を表している.光源選択数にお. 反射の影響は除去できてはいるが,鏡面反射による相. いては括弧内の数は拡散反射成分を物体の全域で観測. 互反射の影響が残っているためである.提案手法では. 可能と判断するのに使用された光源の数を表している.. 領域 α と領域 β の境界付近において従来法に比べ推. 図 8 は物体 B,C において従来法 II と提案手法に. 定値に変化がなく,両反射成分による相互反射の影響. よる推定値をもとにレンダリングした結果と実画像と. を考慮することによって反射係数の正しい推定が行え. の差を全周画像で表したものである.それぞれの図に. ていることが分かる.. おいて,(a) はレンジファインダで計測された全周実. 3. 2 一般的な物体における反射特性の推定. 画像,(b),(c) は従来法 II と提案手法による推定値. 次に,図 5 (b),(c) の物体 B,C に関して従来法 II. をもとに,(a) を計測したときの実際の光源位置に仮. と提案手法での推定値の差について考察を行う.なお,. 想光源を設定し,仮想光源を回転させたときのレンダ. 表 1 は各物体における光源選択数,各反射成分の観測. リング結果から作成した全周画像と (a) との差を表し. 割合,各手法において通常の PC(CPU:Pentium4. ている.レンダリング手法はいずれの場合もフォトン. 1456.

(8) 論文/実物体のモデル化のための相互反射を考慮した表面反射特性の推定. Fig. 9. 図 9 物体 B と C の誤差と反復回数 Relation between the differences and the count of iteration for Object B and C.. Fig. 10. 図 10 任意照明条件下での物体 B,C のレンダリング画像 Rendering results of Object B and C under arbitrary illumination conditions.. マッピング法を使用している. 物体 B,C は表面が非一様な拡散反射特性とほぼ一. 表 2 実画像と合成画像の差の平均と分散 Table 2 Average and variance of differences between real and synthetic images.. 様な鏡面反射特性をもっている.図 8 の両物体ともに, 従来法 II では首,足などの相互反射が生じる部分で実 写画像との差が大きくなっている.従来法 II は鏡面反 射による相互反射の影響を除去していないため,拡散. Average Conventional method II Proposed method Variance Conventional method II Proposed method. Object B Object C 8.7 13.3 0.51 0.92 493.3 375.2 3.2 9.8. 反射係数の推定値が大きくなり正しくレンダリングで きなかったと考えられる.一方,提案手法ではそのよ うな影響は除去できており,ほぼ実写画像と同様の結. と合成画像の差とパラメータ推定における反復回数と. 果となっている.しかしながら,まだ部分的には誤差. の関係を表している.誤差が最小となる場合の反復回. がある.これは,複雑な形状を有している場合,多重. 数は物体 B,C についてそれぞれ 34 回と 35 回であっ. 反射の回数が増加するためである.提案手法では相互. た.このグラフからも分かるように処理の反復回数に. 反射の回数は計算量の増加を防ぐために 3 回という制. より誤差は減少していくが,途中で振動が起こってい. 約を設けている.そのため,相互反射の回数が多くな. ることが分かる.これは各反射成分ごとに独立して推. るような形状の場合は実画像との差が大きくなると考. 定していることによるものと考えられる.表 2 は従来. えられる.また,仮想光源のモデル化における誤差も. 法 II と提案手法における実画像と合成画像の差の平. あると考えられる.図 9 は物体 B,C における実画像. 均と分散を RGB の合計として表している.これから も明らかなように提案手法は従来法 II に比べ誤差が 1457.

(9) 電子情報通信学会論文誌 2005/8 Vol. J88–D–II No. 8. 減少していることが分かる.以上によって提案手法は. reality,” Eourographics Rendering Workshop 1997, pp.45–56, June 1997.. 各反射成分による相互反射の影響をうまく除去できて [4]. いることが確認できる.. A. Fournier, A.S. Gunawan, and C. Romanzin, “Interactive common illumination for computer aug-. 最後に,仮想化物体の任意光源下でのレンダリング. mented reality,” Proc. Graphics Interface 1993,. 結果を示す.図 10 (a),(b) はそれぞれ物体 B,C に おいて推定された各反射係数をもとに,仮想光源を用 いてレンダリングを行った例である.それぞれの図は. pp.254–262, May 1993. [5] [6]. 仮想光源を物体の正面に配置し,物体の重心を中心と して点光源を回転させたものである.また,これらの. J.T. Kajiya, “The rendering equation,” Proc. SIGGRAPH ’86, pp.143–150, Aug. 1986.. [7]. S. Lin and S.W. Lee, “Estimation of diffuse and specular appearance,” Proc. 7th Int. Conf. on Computer. レンダリング結果はフォトンマッピング法を用いてレ ンダリングされている.各物体とも計測時の光源の影. H.W. Jensen, Realistic Image Synthesis Using Photon Mapping, 1st ed., A K Peters, Ltd, 2001.. Vision, vol.2, pp.855–860, 1999. [8]. 響が除去され仮想光源による照明の影響をほぼ忠実に. S. Lin and S.W. Lee, “A representation of specular appearance,” Proc. 7th Int. Conf. on Computer Vision, vol.2, pp.849–854, 1999.. 表現している. [9]. 4. む す び. C. Loscos, G. Drettakis, and L. Robert, “Interactive virtual relighting of real scenes,” IEEE Trans. Vis. Comput. Graphics, vol.6, no.4, pp.289–305, Dec.. 本論文では,物体の反射成分が密に観測可能となる ように物体計測時の最適な光源位置を複数決定し,複. 2000. [10]. estimation of surface reflectance properties for merg-. 数のテクスチャ情報と距離画像から,フォトンマッピ. ing virtualized objects into real images,” Proc. ACCV. ング法に基づき物体面上での各反射成分による相互反 射を考慮した反射特性の推定手法を提案した.本手法. 2002, pp.688–693, Jan. 2002. [11]. tions,” Proc. 9th Int. Conf. on Computer Vision,. 面反射特性をもつ物体を仮想化した場合に仮想環境内. pp.170–177, Oct. 2003. [12]. Y. Sato, M.D. Wheeler, and K. Ikeuchi, “Object shape and reflectance modeling from observation,”. 今後は,距離画像などのノイズ除去によるロバス トな処理を施す.また,フォトンマッピング法をグラ. T. Machida, N. Yokoya, and H. Takemura, “Surface reflectance modeling of real objects with interreflec-. により,複雑な形状を有する物体や部分的に異なる表 で陰影矛盾のない忠実な物体表現が可能となる.. T. Machida, H. Takemura, and N. Yokoya, “Dense. Proc. SIGGRAPH ’97, pp.379–387, 1997. [13]. K.E. Torrance and E.M. Sparrow, “Theory for off-. フィックハードウェア上に構築することでより高速な. specular reflection from roughened surfaces,” J. Op-. 推定が可能であり,実時間での反射特性の推定,仮想. tical Society of America, vol.57, no.9, pp.1105–1114, 1967.. 化された物体の実環境への実時間合成表示を行う予定 である.また,現状では推定の反復処理中に誤差の振. [14]. tation based on differential geometry: A hybrid ap-. 動が見られるが,この点に関しては各反射係数の高速. proach,” IEEE Trans. Pattern Anal. Mach. Intell.,. な同時推定などのアルゴリズムの改良を行う予定であ る.更には,今回の実験では物体を鉛直方向の軸周り. vol.11, no.6, pp.643–649, June 1989. [15]. models of real scenes from photographs,” Proc. SIG-. 今後,より自由度の高い物体計測を行うことによって. GRAPH ’99, pp.215–227, Aug. 1999. [16]. [1]. 献. [2]. S. Boivin and A. Gagalowicz, “Image-based rendering of diffuse, specular and glossy surfaces from a single image,” Proc. SIGGRAPH ’01, pp.107–116, Aug. 2001.. [3]. SIGGRAPH ’98, pp.207–217, Aug. 1998. [17]. G. Drettakis, L. Robert, and S. Bougnoux, “Interactive common illumination for computer augmented. 1458. 町田貴史,竹村治雄,横矢直和,“複数の照明条件の組合 せによる物体の表面反射特性の密な推定, ” 信学論(D-II), vol.J84-D-II, no.8, pp.1873–1881, Aug. 2001.. R.T. Azuma, “A survey of augmented reality,” Presence, vol.6, no.4, pp.355–385, 1997.. Y. Yu and J. Malik, “Recovering photometric properties of architectural scenes from photographs,” Proc.. する手法を開発する予定である. 文. Y. Yu, P.E. Debevec, J. Malik, and T. Hawkins, “Inverse global illumination: Recovering reflectance. でしか測定しないため,物体に欠損部が見られるが, 物体全体の形状を得るとともに反射特性を厳密に推定. N. Yokoya and M.D. Levine, “Range image segmen-. [18]. 佐藤洋一,向川康博,“インバースレンダリング, ” 情処学 研報,CVIM-145,pp.65–76, Sept. 2004. (平成 16 年 10 月 8 日受付,17 年 2 月 7 日再受付).

(10) 論文/実物体のモデル化のための相互反射を考慮した表面反射特性の推定. 町田. 貴史 (正員). 平 10 阪大・基礎工・情報工卒.平 12 奈 良先端科学技術大学院大学博士前期課程了. 平 14 同大中退.現在,大阪大学サイバー メディアセンター助手.博士(工学).コ ンピュータビジョンの研究に従事.ACM, IEEE 各会員.. 竹村. 治雄 (正員). 昭 57 阪大・基礎工・情報工卒.昭 62 同 大大学院博士後期課程単位取得退学.同 年(株)ATR 入社.三次元ユーザインタ フェース,CSCW,仮想現実の研究に従事. 平 6 奈良先端科学技術大学院大学・情報科 学研究科助教授.工博.平 13 阪大・サイ バーメディアセンター教授.情報処理学会,IEEE,ACM,日 本 VR 学会各会員.. 横矢. 直和 (正員). 1974 阪大・基礎工・情報卒.1979 同大 大学院博士後期課程了.同年電子技術総. 合技術研究所入所.以来,画像処理ソフト ウェア,画像データベース,コンピュータ ビジョンの研究に従事.1986∼1987 マッ ギル大・知能機械研究センター客員教授. 1992 奈良先端科学技術大学院大学・情報科学センター教授.現 在,同大情報科学研究科教授.1990 情報処理学会論文賞受賞. 工博.情報処理学会,人工知能学会,日本認知科学会,映像情 報メディア学会,IEEE 各会員.. 1459.

(11)

Fig. 4 Flow diagram of estimating surface reflectance properties based on photon mapping.
図 6 予備実験 1 の拡散反射係数における 提案手法と従来法との比較
表 1 実験に用いた三つの物体と各反射成分の観測割合と推定に要した時間 Table 1 T hree objects used in experiments, measurability of two reflection
Fig. 9 Relation between the differences and the count of iteration for Object B and C.

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