〈論文〉電機洗濯機市場における非家電メーカーのマーケティング活動--日本電装(株)を事例とした歴史研究
21
0
0
全文
(2) 第51巻. 1.は. 本 稿 の 目的 は,1950年. 第1号. じ. め. に. か ら1958年 ま で の 日本 電 装 株 式 会 社(現 在 の株 式 会 社 デ ン ソ ー,. 以 下 電 装 と略 記)の 電 気 洗 濯 機 市 場 に お け る マ ー ケ テ ィ ン グ活 動 の 分 析 を 通 じて,1960年 代 以 降 電 気 洗 濯 機 市 場 に お い て 大 手 家 電 メー カ ー ω 間 の 寡 占競 争 が 展 開 さ れ る こ と に な っ た要 因 を検 討 す る上 で の 示 唆 を 提 供 す る こ とで あ る。 こ の こ とは,日 本 に お け る電 気 洗 濯 機 普 及 の 形 態 を 決 定 づ け た要 因 を解 明 す る上 で の 基 礎 と な る。 す で に,大 内[2001]に. お. い て,企 業 の マ ー ケ テ ィ ン グ活 動 と,製 品 の普 及 や そ の大 衆 市 場 の 成 立 との 連 関 に関 して 分 析 を 行 う た め に は,'こ れ ま で の研 究 で 一 般 的 で あ っ た 「家 電 業 界 」 と い う業 界 の 定 義 が 十 分 で は な い こ と が 指 摘 され て い る。 あ わ せ て,特. に電 気 洗 濯 機 の普 及 ② に 関 して,こ れ. ま で の先 行 研 究 で あ ま り注 目 さ れ て こ な か った 高 度 成 長 期 以 前 の 時 期 を 対 象 とす る研 究 の 意 義 も,既 に 指 摘 した と こ ろ で あ る。 本 稿 で は これ らの 問 題 意 識 を 継 承 し,「電 気 洗 濯 機 業 界 」 と い う業 界 の 定 義 を した うえ で,高 度 成 長 期 以 前 の 時 期 を 研 究 対 象 と した。 電 気 洗 濯 機 の 普 及 初 期 に お い て は,電 装 を は じめ 神 鋼 電 機,オ. リ ジ ン電 機,ブ. ラザ ー な. ど⑧,電 気 洗 濯 機 の製 造 に参 入 す る他 業 種 の メ ー カ ー が 多 く現 れ た 。 中 で も電 装 は,1953 年 ま で市 場 に お い て大 き な シ ェア を 占 め,ま た 電 気 洗 濯 機 の ト ップ メ ー カ ー と して 消 費 者 に 認 知 され て い た。 しか し,三 洋 電 機(以 下 三 洋 と略 記)が 電 気 洗 濯 機 の 販 売 を 開 始 して 以 降,三 洋 ・松 下 電 器 産 業(以 下 松 下 と 略 記)・ 東 京 芝 浦 電 気(現 在 の 東 芝,以 下 も東 芝 と略 記)・ 日立 製 作 所(以 下 日立 と略 記)な. ど(4)総合 家 電 メ ー カ ー(5)間の競 争 が激 化 す る 中. で,電 装 は市 場 に お け る地 位 を奪 わ れ,最 終 的 に1958年 電 気 洗 濯 機 事 業 か ら撤 退 す る。 電 装 の 洗 濯 機 事 業 に お け る マ ー ケ テ ィ ン グ活 動 や そ の 他 諸 活 動 を 分 析 す る こ とは,洗 濯 機 市 場 に お け る非 家 電 メ ー カ ー に共 通 す る問 題 点 を 明 らか に し,電 気 洗 濯 機 市 場 に お け る企 業 (1)本 稿 で は,管 球 ・電 池 か ら ラ ジオ ・テ レ ビ ・電 気 洗 濯 機 ・電 気 冷 蔵 庫 ま で,い わ ゆ る 家 庭 用 電 気 器 具 の フル ライ ン政 策 を 高 度 成 長 期 以 降 採 用 して い た 企 業 を,慣 習 的 な 呼 称 に 従 い 便 宜 的 に 「家 電 メ ー カ ー」 と 呼 び,そ の 他 の 企 業 を 「非 家 電 メ ー カ ー」 と呼 ぶ こ とに す る。 (2)経 済 企 画 庁 「消 費 者 動 向 予 測 調 査 」に よ る と,1957年 都 市 部 に お け る電 気 洗 濯 機 普 及 率 は20.2% で あ った 。 ま た あ る電 力 会 社 の 調 査 に よ る と,管 内 の 電 気 洗 濯 機 普 及 率 は1955年 に6.2%で あ った と さ れ る。 佐 久 間[1956]20ペ ー ジ。 普 及 率10%を 超 え る と製 品 の普 及 が 加 速 化 す る と一 般 に言 わ れ る こ と よ り,1950年 代 半 ば に電 気 洗 濯 機 市 場 が 大 衆 市 場 と して 成 立 した と考 え られ る。 (3)神 鋼 電 機 は振 動 機 そ の他 重 電 機 器 ・産 業 機 器 の メー カ ー,オ リ ジ ン電 機 は整 流 器 メ ー カー,ブ ラザ ー は ミシ ンメ ー カ ー で あ った 。 『電 波 新 聞 』 紙 面,『 東 京 朝 日新 聞 』 掲 載 広 告 な どよ り。 ④. 三 洋 の マ ー ケ テ ィ ン グ活 動 に つ い て は 大 内[2001],松 下 の マ ー ケ テ ィ ング活 動 につ い て は大 内 [2002b]を 参 考 の こ と。 東 芝 ・日立 の マ ー ケ テ ィ ング 活 動 に つ い て は別 稿 にて 分 析 す る。 (5)厳 密 に言 え ば,三 洋 は戦 後 に 設 立 さ れ た 後 発 メ ー カ ー で あ り,こ の 時 期 は ち ょ う ど製 品 ラ イ ン を 拡 大 して い く時期 で あ った た め,「総 合 家 電 」 とい う名 称 が 適 切 か ど うか に 関 して は検 討 の 余 地 が 残 る。 1-170(170)一.
(3) 電 気 洗 濯 機 市 場 に お け る非 家 電 メー カ ー の マ ー ケ テ ィ ン グ活 動(大. 内). 問 競 争 か ら非 家 電 メ ー カ ー が排 除 さ れ る過 程 の 実 態 を 明 らか に す る上 で,非 常 に示 唆 に 富 む。 な お,表1に. 示 され る通 り,電 気 洗 濯 機 は洗 浄 の原 理 に よ っ て4つ の タ イ プ に大 別 さ れ. るが,日 本 に お け る電 気 洗 濯 機 の 普 及 を 考 え る際 に も,ま た 電 装 の マ ー ケ テ ィ ング活 動 の 実 態 を理 解 す る うえ で も,こ の分 類 は極 め て重 要 で あ る。 日本 で は,三 洋 の 参 入 以 前 は, ア メ リカ のGE社. 製 の もの を模 した 撹 拝 式 電 気 洗 濯 機 が主 に製 造 さ れ て い た が,三 洋 は,. イ ギ リス の フ ー バ ー 社 製 の も の を 模 して 噴 流 式 電 気 洗 濯 機 を 販 売 した 。1954年 以 降,松 下 ・東 芝 を は じめ 多 くの メ ー カ ー も噴 流 式 の販 売 に乗 り出 し,結 果,日 本 で は 噴 流 式 の 電 気 洗 濯 機 が普 及 した(6)。電 装 は 当初 回 転 式 電 気 洗 濯 機 を 開 発 し販 売 して い た が,1955年. 以. 降 は噴 流 式 の電 気 洗 濯 機 も製 造 す る よ うに な った 。 以 下 で は,第2節 節,第6節. に お い て,電 気 洗 濯 機 開 発 の 経 緯 に つ い て 述 べ た の ち,第3節,第5. に お い て 電 装 が 展 開 した マ ー ケ テ ィ ン グ諸 活 動 を概 括 した 上 で そ れ ぞ れ の諸 特. 徴 と限 界 につ い て 検 討 す る。 また,製 品 政 策 と の 関 連 で,第4節 に対 す る投 資 の 積 極 性 を 検 討 し,さ らに第7節. に お い て は,電 装 の 生 産. で は 電 装 の 事 業 戦 略 の 観 点 か ら電 気 洗 濯 機. (注)左. か ら順 に 噴 流 式,擁 搾 式,回 転 式 。 な お,当 時 は掩 拝 式 の外 観 は 角 型 で は な く円 筒 形 の もの が 多 か った。 (出 所)三 上 ・藤 原 ・小 林[1983],121ペ ー ジ。 図1噴. 流 式,撹. 絆式,回. 転式洗濯機 の構造. (6)1957年 に は,国 内 で 使 用 さ れ る電 気 洗 濯 機 の う ち95%が 噴 流 式 の も の に な って い た と伝 え られ て い る。 『電 波 新 聞 』1958年1月1日 付 。 な お,日 本 で 噴 流 式 が普 及 した こ との 理 由 と して は, 一 般 的 に は ① 革 新 的 な 低 価 格 ② 角 型 ・小 型 で 納 ま りが よ く ,日 本 の 狭 い住 宅 事 情 に適 して い た こ と ③ 洗 浄 力 が 強 く洗 濯 時 間 が 短 い こ とが,せ っか ちな 日本 人 の 気 質 に合 って い た こ と が挙 げ られ て い る。 しか し,1955年 ご ろの 消 費 者 は,洗 濯 機 そ の もの に 対 す る知 識 が 不 十 分 で あ った と想 像 され,撹 搾 式 に 対 す る 噴 流 式 の 機 能 上 の 優 位 点 を 考 慮 した購 買 意 思 決 定 を 当 時 の 消 費 者 の 多 くが行 った と は考 え に くい。 ま た,価 格 に 関 して も,表2に 示 され る と お り,噴 流 式 と同 価 格 帯 の撹 拝 式 が1952年 以 降 販 売 さ れ て お り,価 格 差 が普 及 形 態 を決 定 づ け た とす る主 張 も説 得 力 に 欠 け よ う。 以 上 の理 由 か ら,上 記 の 一 般 的 な評 価 に は疑 問 の 余 地 が大 き い。 一171(171)一.
(4) 第51巻 表1電. 洗浄 の原理. 洗浄力. 第1号. 気洗 濯機の型 とその特徴. ①撹 拝式. ② 回転 式. ③ 噴流式. ④振動 式. 洗 濯 槽 の 中 央 に取 り付 け られ た3枚 な い し4枚 の 羽 を 持つ 撹搾 翼 の往復 運 動 に よ っ て,洗 濯 物 を 揺 り動 か し て 汚 れ を落 とす 。. 横 向 きに設置 され た 円筒 状 の ドラ ム に 洗 濯 物 を 入 れ, ドラ ム の 回 転 に よ り洗 濯 物 を 洗 剤 液 に 落 下 させ,た た き洗 いの要領 で洗 浄 す る。. 洗濯槽 の側面 又 は 底 に 回 転 翼(パ ル セ ー タ)を 取 り付 け,そ れ を 高 速 で 回 転 させ る こ と で 水 流 を 起 こ し,繊 維 に洗 浄液 を通過 させ る。. 電 磁 石 や モ ー トル で 発 生 させ た 微 細 な振 動 を洗 浄液 に. よ く設 計 さ れ た も の は よ い 。(回 転. 優 れて いる。. 非 常 に優 れ て い る。. 劣 っ て い る。. 与 え,こ れ に よ っ て 繊 維 の 汚 れ を分 散 させ る 。. 翼 の 設 計 に よ り異 な る。). 洗濯時 間. 15分 程 度 。. 洗濯 物の傷 み具 合. 傷 み に くい。. 傷 み に くい 。. 傷 み やす い 。. 非 常 に傷 み に く い。. 洗 濯 物 の よ じれ. 少 な い。. 少 な い。. よ じ れ る こ と あ. 全 くよ じれ な い。. 15∼20分. 。. 5∼7分. 程度。. 20∼25分. 。. り。. 故 障 の しや す さ. しや す い。. しや す い。. し に くい。. し に くい。. 故 障の発見. 見 つ け に くい。. 見 つ け に くい。. 見 つ けや す い 。. 見 つ け に くい 。. 音. 高 い。. や や 高 い。. 低 い。. 非 常 に 高 い。. 形 ・大 き さ. 丸 型,お. そ の 他 の特 徴 な ど. (出 所)大. さ ま りが. 角 型,や. や 大 き い 。 角 型 ・お さ ま り が. 小 丸 型,納. ま りが. 悪 い。. よ い。. ア メ リカ で 主 流 。 ヨ ー ロ ツ パ で 主 あ る程 度 の 水 量 を 流 。 水 量 が 少 な く 必 要 とす る た め 小 て す む 。 型 化 が 困難 。. 日本 で 主 流 。 底 に 製 造 コ ス トが も っ パ ル セ ー タ の あ る と もか か らな い た も の は,渦 巻 式 と め,低 価 格 の も の が 多 い。 呼 ばれ る。. 内[2001]22ペ. よい。. ー ジ。. 事 業 に対 す る分 析 を加 え る。 生 産 に対 す る投 資 や事 業 戦 略 は,マ ー ケ テ ィ ング戦 略 の 範 疇 を 越 え る もの で あ る が,企 業 間競 争 に お い て は重 要 な フ ァ クタ ー と して作 用 す る もの で あ り,ま た マ ー ケ テ ィ ン グ活 動 を 規 定 す る も の で もあ る た め,こ れ らの 分 析 は不 可 欠 で あ る。 最 後 に,第8節. に お い て本 論 を 総 括 す る と と もに本 稿 の 理 論 的 示 唆 を 述 べ る。. 2.電. 電 装 は,会 社 設 立 以 前 の1946年. (7)電. 装 は,も. 気洗 濯機 の開発. ご ろ σ),電 気 ス トー ブ や 電 気 七 輪,電. と は ト ヨ タ 自 動 車 工 業 の 電 装 部 門 で あ っ た 。1949年. 気 ア イ ロ ンな ど の 家. に 分 離 ・独 立 し,日. 本 電装株 式. 会 社 と な っ た 。 『ト ヨ タ 自 動 車30年 史 』277-278ペ ー ジ,『 デ ン ソ ー50年 史 』36-40ペ ー ジ,44-45 ペ ー ジ 。 な お,1996年 に 現 在 の 社 名 で あ る 株 式 会 社 デ ン ソ ー に 変 更 に な っ た 。 同 上 書,149ペ ー ジ。 -172(172)一.
(5) 電気洗濯機 市場 にお ける非家電 メー カーのマーケ テ ィング活動(大 内) 庭 用 電 気 器 具 の製 造 を行 っ た こ とが あ っ た。 これ は,当 時 は ま だ 自動 車 部 品 に対 す る需 要 が 少 な く,電 装 品 事 業 だ けで は 事 業 の 継 続 が 困 難 で あ る と考 え られ た た め で あ る⑧。 会 社 創 立 後,1950年. に 電 気 洗 濯 機 の 製 造 ・販 売 を 開 始 した 。 この 背 景 に は,第 一 に,エ. ンジ ン. 修 理 用 の ボ ー リン グ マ シ ンの た め,小 型 単 相 モ ー ター を生 産 した 実 績 が あ り,こ の 技 術 を 電 気 洗 濯 機 の モ ー タ ー に転 用 しよ う と した こ と,第 二 に,電 気 自動 車 製 造(9)のた め 開 発 さ れ た 板 金 技 術 と塗 装 設 備 の 有 効 利 用 を 図 った こ と,な どが あ った 。 す な わ ち,電 気 洗 濯 機 開 発 の直 接 の動 機 は,そ の 市 場 の将 来 性 に 着 目 した か ら と い う よ り もむ しろ,電 気 洗 濯 機 事 業 が既 存 の技 術 や 設 備 の 転 用 可 能 な もの で あ った た め と言 え よ う。 ま た,当 初 は,名 称 を 「トヨ タ洗 濯 機 」 と し トヨ タ ・ブ ラ ン ドで の 販 売 を 計 画 した が, トヨ タ社 本 体 か らの反 対 に あ い,「デ ン ソー 電 気 洗 濯 機 」と して 発 売 され る こ とに な った ω。 こ の こ と は,分 離 独 立 後 間 も な い電 装 が,基 本 的 に は トヨ タ本 体 に頼 る こ と な く 自 らの マ ー ケ テ ィ ン グ努 力 を 求 め られ る状 況 で あ っ た こ と を端 的 に示 す もの で あ る。 当 時 の 電 気 洗 濯 機 は,ア. メ リカ の 洗 濯 機 を模 した撹 搾 式 の もの が ほ とん ど で あ り,東 芝. や 松 下 ・日立 ・三 菱 等 有 力 企 業 の 電 気 洗 濯 機 は す べ て撹 拝 式 で あ った ω が,電 装 は 回転 式 の 電 気 洗 濯 機 を 開 発 した。 撹 拝 式 を 選 択 しな か っ た経 緯 に 関 して 資 料 か ら窺 い知 る こ と は で き な か った もの の,後 述 す る と お り,電 装 は マ ー ケ テ ィ ン グ活 動 を 展 開 す る に あ た って, こ の 製 品 の 機 構 上 の 差 異 性 を 重 視 した 。 ま た,馬 力 は1/4馬. 力,一. 回 の 洗 濯 量 は2.6kg. で あ り,こ れ らの性 能 に お い て は,他 社 製 の大 型 電 気 洗 濯 機 に 匹 敵 す るか,そ れ を上 回 っ て い た⑫。 発 売 当 初,価. 格 は15,000円 で あ っ た が,資 材 を は じ め 諸 物 価 の 高 騰 に よ り22,000円,. 29,500円 と値 上 げ さ れ た 。 さ ら に,1952年. に は電 気 洗 濯 機 の う ちで100Wを. 超 え る もの に. つ い て 物 品 税 が 二 割 課 税 され る こ と とな り,小 売 販 売 価 格 は32,500円 に 引 き上 げ られ た⑬。 (8)社 史 資 料 に は 以 下 の よ うな 記 述 が見 られ る。 「電 装 品 だ けで は食 べ て い け な い 」『デ ン ソー50年 史 』35ペ ー ジ,「 もて る 技 術 と設 備 で生 産 で き る もの は 何 で も生 産 し,従 業 員 の生 活 を 支 え て い こ う と い う意 図」 『日本 電 装25年 史 』27ペ ー ジ。 (9)同 時 期 に,日 本 電 装 は電 気 自動 車 の製 品 化 に取 り組 み,1950年7月 に発 売 を 開 始 した。 しか し, 鉛 の 値 上 が りに よ る電 池 価 格 の 高 騰,ガ ソ リ ンに 対 す る統 制 の 解 除 な ど に よ り,生 産 は50台 で 中 止 され た。 同上 書,28ペ ー ジ。 ⑩ トヨタ 自動 車 工 業 の創 立 者 で あ る豊 田喜 一 郎 は,次 の よ う に言 っ て,電 気 洗 濯 機 の 名 称 に トヨ タ を冠 す る こ と に反 対 した とい う。 「私 が 責 任 を もつ て 指 図 出 来 な い以 上,製 品 に対 す る社 会 的 責 任 が持 て な い。 紡 織 機 と 自動 車 は 父 と子 が責 任 を 持 つ て や つ た の で そ の ま ま の 名 を 用 い た が, そ の他 の製 品 に トヨタ の 名 を 附 け て は困 る。 第 一 豊 田 の名 に隠 れ て商 売 を しよ う と い う心 が けが 良 くな い。 豊 田 ミ シ ンだ け は私 が直 接 面 倒 見 た か ら許 した 」 尾 崎[1955コ132ペ ー ジ。 ⑪ た だ し,例 外 と して 日立 が 回 転 式 の 電 気 洗 濯 機 の 試 作 機 を 製 作 した こ と は あ る。 『株 式 会 社 日 立 製 作 所 製 品 年 譜(昭 和24年3月 ∼ 昭 和35年9月)』43ペ ー ジ,『 日立 製 作 所 史2』340ペ ー ジ。 ⑫. 例 え ば,東 芝 製 の大 型 撹 搾 式FW型 は1/4馬 力,洗 濯 容 量2kg,ま た松 下 製 の大 型 撹 搾 式101 型 は1/4馬 力,洗 濯 容 量2.1kgで あ った 。 『電 波 新 聞 』1954年5月19日 付,『 電 装 時 報 』1952年 12月 号 。 -173(173)一.
(6) 第51巻 な お,1952年. 当 時,す. 行 っ て い た が,そ 台,100Wの 通 り,こ. で に 東 芝 や 松 下,日. 第1号 立 な どの大手 メー カ ーが 電気 洗 濯 機 の販 売 を. れ ら の 販 売 価 格 は,100Wを. 小 型 の も の が25,000円. 超 え る 大 型 の も の が40,000円. か ら30,000円. で あ っ た ω。 ま た,第7節. か ら50,000円. にお いて詳述 の. の時期電 装 は電気洗 濯機事 業 にお いて一定 の成果 を あげた。. 3.製. 品開発 と価格 の設 定. 電 装 は1954年 に,そ れ ま で の製 品 を 改 良 し,「 ス ー パ ー型 デ ン ソー 洗 濯 機 」 と い う名 称 で販 売 を 開 始 した。 小 売 販 売 価 格 は34,500円 に設 定 され た 。 ま た,こ れ と は別 に6回 払 い 36,000円,10回. 払 い38,000円 とい う月 賦 価 格 も設 定 され た 。 しか し,こ の 前 年 の1953年 に. 三 洋 が 噴 流 式 の洗 濯 機 を28,500円 で発 売 して 以 降,表2に. 示 さ れ る とお り,1954年. に松 下,. 東 芝 ら競 合 他 社 か ら20,000円 台 の 噴 流 式 洗 濯 機 が 発 売 され た。 「ス ー パ ー 型 」は 価 格 の 面 で こ れ らの競 合 機 種 に対 抗 で き な くな っ た と言 え る。 そ の た め1955年,三. 洋 ・松 下 ・東 芝 ら先 行 他 社 に追 随 す る形 で,噴 流 式 の 電 気 洗 濯 機 の. 販 売 を 開始 した。 価 格 は,タ イ ム ス イ ッチ ・絞 り機 付 き で26,000円,絞. り機 な しの もの を. 23,500円 と した。 しか し,松 下 や 東 芝 が 自社 の 主 力 製 品 を 噴 流 式 に移 行 さ せ た の に 対 し, 電 装 は,噴 流 式 は小 家 族 用 の普 及 品,回 転 式 は大 家 族 用 の 高 級 品 とい う よ うに 製 品 の ポ ジ シ ョニ ン グ を変 更 し,回 転 式 と噴 流 式 の 二 本 立 て の 販 売 戦 略 を と っ た ⑮。 社 内 で 回 転 式 の 洗 濯 機 ドラ ム の 改 良 懸 賞 を 実 施 しア イ デ ィ ア を募 っ て い た ⑯ こ とか ら も,電 装 が,回 転 式 の 生 産 の 縮 小 を 意 図 して い た わ け で は な く,あ. くまで 自社 の主 力 商 品 の一 つ に 位 置 づ け て. い た こ とが 分 か る。 翌1956年,激. 化 す る価 格 競 争 へ 対 応 す る た め,回 転 式 「ス ー パ ー型 」 を31,500円 に 値 下. げ す る と と も に,噴 流 式 の 新 型 製 品FNB型 濯 物 を受 け る た め の 深 蓋,水. を22,800円 で 発 売 した⑰。 こ の新 型 製 品 は,洗. の飛 び散 りを 防 ぐ中蓋,給 水 用 と排 水 用 の 二 本 の ホ ー ス に よ. りす す ぎ 洗 い を 容 易 にす るオ ー バ ー フ ロ ー方 式,槽 内 の水 が 上 水 道 に逆 流 す る こ と を 防 ぐ ⑬ ⑭. 『電 装 時 報 』1952年12月 号 。 な お,1953年6月 に,100W以 下 の 電 気 洗 濯 機 に つ い て は物 品税 が 非 課 税 とな っ た。 『日本 電 機 工 業 史 第2巻 』333-334ペ ー ジ。. ⑮. 当 時 の新 聞 広 告 に は,噴 流 式 に対 して は 「一 回 の 洗 濯 時 間 は一 分 か ら五 分 で す み ます が,回 転 式 に 比 べ る と一 回 の洗 濯 量 が 少 な い の で小 家 族 に お す す め 」,回 転 式 に対 して は 「多 人 数 の ご家 庭 に … … 一 回 に多 量 の洗 濯 が 出来 」 「ア メ リカ で は,高 級 洗 濯 機 は 回転 式 」 「日本 で は,職 業 用 に は 古 くか ら,回 転 式 が 使 わ れ 」 と い った 推 奨 文 句 が 用 い られ て い る。 『東 京 朝 日新 聞 』1955年8月 24日 付 。 た だ し,回 転 式 は ア メ リカで は な くむ しろ ヨー ロ ッパ で 主 流 の型 で あ る。 q6)『 電 装 時 報 』1955年8月 号 。 ⑰ 『電 波 新 聞 』1956年7月25日 付 。 以 下,FNB型 に 関 す る記 述 に つ い て も同記 事 を参 考 と した。 -174(174)一. [.
(7) 電 気 洗 濯 機 市 場 に お け る非 家 電 メ ー カ ー の マ ー ケ テ ィ ング 活 動(大 表2各. 松 ∼1952年. 下. 三. 洋. 53,000. 28,500. 社 の新 型 製 品 と そ の小 売 販 売 価 格. 東. 芝. 立. 41,000. 28,000. 28,000. 46,900 27,500 36,500. 28,500. 1954年. 23,800 25,500 28,900 26,800 27,900. 29,800 26,500 28,000. 29,800 28,800 25,800 21,800. 33,000 28,800 22,800 23,800 26,000 30,000. 29,500 23,500. 23,900 25,000 27,800 25,900. 24,500 23,500 28,000 23,900 24,900. 23,800 26,500. 1956年. 日. 53,000 27,000. 1953年. 1955年. 内). 三. 菱. 39,500. 電. 装. 34,500. そ の他 ". フ ー ハ ー. 39,500. 25,900. 富 士24,800 フーバー 34,900 (値 下). 27,900 29,500. 23,300. 26,000. 29,800 25,800. 22,800. 22,900. 23,900. 八 欧19,950. 31,500 (値下). (注)同 一 年 内 は発 売 順,た だ し月 販 専 用 機 種 は 除 く。 ま た 太 字 は 噴 流 式 。(値 下)と 新 型 製 品 で は な く既 存 製 品 の値 下 げ を示 す 。 (出 所)『 電 波 新 聞』,各 社 社 史 資 料 よ り作 成 。. あ る もの は,. 逆 流 防止 装 置 な ど の新 しい機 能 を 備 え て い た。 な お これ らの機 能 は,他 社 製 品 に はす で に 導 入 され て い た もの で あ り,新 機 能 の付 加 は競 争 へ の 対 応 を 強 く意 識 した 結 果 で あ ろ う。 ま た,1957年. に は 回 転 式 洗 濯 機 「ス ー パ ー型 」 に更 な る改 良 を加 え た新 機 種 を 「デ ラ ッ. ク ス型 」 と い う名 称 で発 売 した ⑱。 価 格 は34,500円 に 設 定 され た。 こ の機 種 は,す で に 噴 流 式 で 導 入 さ れ て い た オ ー バ ー フ ロー 方 式 や 深 蓋,絞. り機,タ. イ ム ス イ ッチ な どの 機 能 が 採. 用 さ れ た ほ か,ド ラ ム が 自動 反 転 す る とい う特 徴 を 有 して い た ⑲。 電 装 の 製 品政 策 は,回 転 式 の電 気 洗 濯 機 の 開発 とい う点 に お い て,非 常 に独 特 な もの で あ った。 加 え て,三 洋 の参 入 以 降,噴 流 式 が 急 速 に市 場 を拡 大 す る 中 で,電 装 は 製 品 の ポ ジ シ ョニ ン グの 変 更 を 行 い,回 転 式 と噴 流 式 とを 並 立 させ た 製 品政 策 を展 開 した 点 も,他 社 の製 品 政 策 と は一 一線 を画 す る。 しか し,表2を. 見 れ ば 明 らか な よ う に,新 型 製 品 の 開 発. の ペ ー ス は相 対 的 に遅 く,特 に松 下 や三 洋 と比 較 した 場 合 そ の 違 い は顕 著 で あ っ た。 競 合. ⑱. 『電 波 新 聞』1957年5月15日 付 。 以 下,「 デ ラ ッ ク ス型 」 の 記 述 は,同 記 事 と,『 電 波 新 聞』1957 年5月22日 付 を参 考 と した。 ⑲ 回転 式 洗 濯 機 は,洗 濯 物 が 固 ま りや す い とい う機 構 上 の 欠 点 を持 って い た。 ドラ ム の 反 転 は, こ の欠 点 を 解 決 す る もの で あ る と考 え られ る。 -175(175)一.
(8) 第51巻. 第1号. 他 社 が,新 型 製 品 の 相 次 ぐ市 場 導 入 に よ り,新 機 能 の 付 加 と低 価 格 化 の両 面 に お い て 熾 烈 な 競 争 を 展 開 して い た 中 で,電 装 の製 品 政 策 は競 争 優 位 の確 立 に貢 献 す る もの で は な か っ た と評 価 す るべ き で あ る。. 4.生. 産 能 力 ・生 産 実 績. 本 節 で は,電 装 の 生 産 に対 す る投 資 の 積 極 性 を 検 討 す る。 表3に. よ れ ば,1956年. か ら1957年 に か け,市 場 の拡 大 に応 じて,十 分 と は いえ な い ま で. も あ る程 度 の 生 産 能 力 の 拡 充 を 図 った こ とが 把 握 で き る。 しか し,工 場 の 新 設 や 拡 張 等 と い った 生 産 投 資 を 示 す 具 体 的 資 料 は 見 当 た らな か っ た 。 洗 濯 機 の生 産 に お い て 目を 見 張 る よ うな 設 備 投 資 が あ ま り行 わ れ な か っ た こ と が 推 察 され よ う。 これ は,三 洋 や 松 下 ・東 芝 ら競 合 他 社 が,工 場 の新 設 や設 備 増 強 な ど積 極 的 な生 産 設 備 へ の 投 資 を 行 った こ と とは 対 照 的 で あ る⑳。. 表3月. 産 の電気洗濯機 の生産能 力 と生産 実績. 1955年. 1956年. 1956年. 1957年. 1958年. 12月 末. 6月 末. 12月 末. 6月 末. 12月 末. 6月 末. 生産 能力 数 量(台) 金額(千 円). 1,000 25,000. 1,000 25,000. 1,500 28,000. 2,400 44,000. 1,000 18,000. 400 9,000. 生 産実績 数 量(台) 金 額(千 円). 471 9,945. 723 14,849. 1,304 24,192. 1,923 36,083. 452 8,985. 614 9,601. 39.7. 59.4. 86.4. 82.0. 49.9. 106.7. 稼働 率(%). 1957年. (注)稼 働 率 は生 産 能 力 に対 す る生 産 実 績 金 額 の 比 率 で あ り,こ の 比 率 が100%を て は残 業 等 に よ り達 成 した もの で あ る。 (出 所)『 有 価 証 券 報 告 書 』 よ り作 成 。. さ らに,表4に. 超 え る もの に つ い. よ り,電 装 の電 気 洗 濯 機 の 生 産 実 績 を他 社 とそ れ と比 較 して み よ う。. これ に よ る と,三 洋 ・松 下 ・東 芝 ・日立 ・三 菱 ら競 合 他 社 の 生 産 台 数 や 国 内 の 総 生 産 台 数 の 伸 び と は対 照 的 に,電 装 の生 産 台 数 は 明 らか に 伸 び悩 ん で い る こ と が 把 握 で き る。 市 ⑳. 例 え ば,三 洋 は 洗 濯 機 生 産 の 拠 点 で あ っ た滋 賀 工 場 の 増 設 を 繰 り返 した 。 『三 洋 電 機30年 の 歩 み 』38ペ ー ジ,『 電 波 新 聞』1955年7月20日 付 。 松 下 は1954年 に 福 工 場1957年 に 三 国工 場 を 新 設 し,洗 濯 機 生 産 の拠 点 と した。 『創 業 三 十 五 年 史 追 補 』17ペ ー ジ,『 松 下 電 機 五 十 年 の 略 史 』 266ペ ー ジ。 ま た,東 芝 は1954年 に柳 町工 場 の改 修 を 行 い,コ ンベ ア に よ る量 産 体 制 を整 備 した ほ か,1957年 に は 名 古 屋 工 場 に お い て 洗 濯 機 月 産10,000台 の 設 備 を完 成 した。r東 芝 ラ イ フ』第45号, 同 第74号 。 -176(176)一. L.
(9) 電 気 洗 濯 機 市 場 に お け る非 家 電 メ ー カ ー の マ ー ケ テ ィ ング 活 動(大 表4電 1953年. 台数. 気 洗 濯 機 生 産 集 中 度(単. 1954年. 比率. 内) 位:千. 1955年. 台数. 比率. 1956年. 台数. 比率. 台数. 松 下46.444.4. 三 洋86.932.7. 三 洋133.328.8. 松 下222.829.5. 東 芝27.626.3. 松 下73.827.8. 松 下111.824.2. 三 洋187.624.9. 電 装9.48.9. 東 芝62.223.4. 東 芝81.117.6. 東 芝103,913.8. 三 菱8.68.2. 三 菱15.75.9. 三 菱28.86.3. 日 立65.98.7. 三 洋4.94.6. 日 立8.53.2. 日 立19.04.1. 三 菱47.26.3. 日 立3.13.0. 電 装7.32.8. 八 欧18.64.0. 富 士36.54.2. 富 士0.30.3. 富 士6.42.4. 富 士15.63.4. 八 欧24.43.2. 八 欧4.21.6. 電 装8.01.7. 電 装12.21.6. 他4.44.3. 他7.80.3. 他45.19.8. 他53.97.2. 計104.7100. 計265.6100. 計461.3100. 計754.5100. 八 欧. 一. (出 所)公. 一. 正 取 引 委 員 会[1956ユ,[1959]よ. り作 成 。 な お,1956年. 『有 価 証 券 報 告 書 』よ り算 出 した も の で あ る 。 ま た1957年 が,電. 装 の 生 産 台 数,比. 率 は,順. に14.3千 台,1.6%で. 台,%). 比率. 「電 装 」 と 「そ の 他 」 の 数 値 は に つ い て,他. 社 の数 値 は不 明 で あ る. あ る。. 場 の急 成 長 に応 じて 各 社 が 投 資 を 活 発 化 さ せ生 産 能 力 の拡 充 を 図 って い た 中 で,電 装 は十 分 な事 業 規 模 の拡 大 を行 って は い な か っ た と いえ る。. 5.広. 告 ・宣 伝 活 動. 先 に述 べ た よ う に 「トヨ タ」 ブ ラ ン ドを利 用 で き な か った 電 装 は,知 名 度 の 低 い 「デ ン ソ ー」 ブ ラ ン ドを 消 費 者 に浸 透 させ るた め,種 々 の 広 告 ・宣 伝 活 動 を展 開 した 。 以 下,マ ス媒 体 に お け る広 告,そ の 他 のPR活. 動 に分 けて 概 括 し,そ の後 に電 装 の 広 告 ・宣 伝 活 動. の特 徴 と限 界 を ま と め る。. 5-1マ. ス媒 体 に お け る 広 告. 電 装 は,ラ. ジオ ・テ レ ビ番 組 へ の提 供,新. 聞,雑 誌 へ の 広 告 掲 載 を通 じて 消 費 者 に対 す. る訴 求 を 行 い,自 社 製 品 に対 す る需 要 の創 造 を 図 っ た。 放 送 番 組 へ の 提 供 と して は,1954 年に 「 世 界 の音 楽 物 語 」 とい う番 組 へ の一 社 提 供 を 行 い,名 古 屋 ・札 幌 ・福 岡 の 各 都 市 で 番 組 を放 送 した ほか,新 潟 ・長 野 ・大 阪 ・静 岡 ・広 島 の各 都 市 で 週 に数 回 ス ポ ッ トCMを 流 した ⑦1>。 ま た1955年 か ら は 「デ ン ソ ー歌 の劇 場 」 と い う番 組 へ 一 社 提 供 を 行 い,東 京 ・ 名 古 屋 ・大 阪 で 放 送 した⑳。 ま た,電 気 洗 濯 機 の テ レ ビCMも. ⑳ ②r主. 『電 装 時 報 』1953年12月 婦 の 友 』1955年11月. 製 作 され 放 送 さ れ た 。 た だ. 号 。 号,同12月. 号,同1956年7月 -177(177)一. 号 広 告 記 事 よ り。.
(10) 第51巻. 第1号. し,電 装 の一 般 消 費 者 向 けの 製 品 は電 気 洗 濯 機 の み で あ っ た た め,各 種 家 電 製 品 のCMを 放 送 す る他 社 と比 べ,消 費 者 が 「デ ン ソー 」 の 名 前 を 耳 に す る機 会 は少 な か っ た こ と が 想 像 さ れ る。. 次 に新 聞 ・雑 誌 な ど活 字 媒 体 に お け る広 告 活 動 に つ い て 延 べ る。 『東 京 朝 日新 聞 』 に お い て,日 本 電 装 の 新 聞 広 告 が 始 め て 登 場 す る の は1952年7月28日 で は夏 を連 想 させ る イ ラ ス トと と も に 「青 い 空!純. 付 紙 面 で あ る。 こ の広 告. 白 の お洗 濯 物!」 「奥 様 の 素 晴 ら し い. 助 手 」と い う広 告 コ ピー が 使 用 さ れ た 。 当 時 は,「生 活 の 合 理 化 に は」㈱ 「御 婦 人 を お 洗 濯 の 勢 苦 か ら完 全 に解 放 す る」⑳ と い った 堅 く啓 蒙 的 で 理 性 に 働 きか け る よ うな 訴 求 法 が 一 般 的 で あ り,ま. た 製 品 の イ ラ ス ト(ま. た は 写 真)と. 広 告 コ ピ ー,文. 章 の み とい っ た形 の広 告. が多 か った こ とを 鑑 み れ ば,視 覚 的 な イ メ ー ジ に訴 求 す る こ の広 告 は先 進 的 で あ っ た と評 価 で き よ う㈱。. 電 装 は,回 転 式 の 発 売 当初 か ら撹 拝 式 と の差 異 性 を 重 視 して い た ㈱ が,1954年. の 「ス ー. パ ー 型 」 の発 売 時 に は,回 転 式 が 「 布 地 を 絶 対 に 傷 め な い」 こ と を 消 費 者 に ア ピー ル し⑳, ㈱ ⑭ ㈱. 東 芝 の広 告 コ ピー 。 『ア サ ヒ グ ラ フ』1952年6月18日 号。 松 下 の広 告 に お け る推 奨 文 句 の一 部 。r東 京 朝 日新 聞 』1952年9月3日 。 な お,1953年 に 噴 流 式 洗 濯 機 の販 売 を 開始 し た三 洋 は,先 行 他 社 に対 す る差 別 化 を 実 現 す るた め に,小 暮 美 千 代 を イ メ ー ジ ・キ ャ ラ ク タ ー 「サ ン ヨー 夫 人 」 に採 用 し,サ ン ヨー夫 人 が 「皆 さ ま に お す す め しま す 」 と直 接 語 りか け る形 で 商 品 を推 奨 す る とい う情 緒 的訴 求 を 取 り入 れ た広 告 を 展 開 し,市 場 の 拡 大 に大 き く貢 献 した 。 大 内[2001]9-14ペ ー ジを 参 照 され た い。 三 洋 の広 告 の登 場 以 降 製 品 以 外 の イ ラ ス トや 写 真 を使 用 した広 告 が 一 般 化 す る。. ㈱. 当 時 の社 内報 に は以 下 の よ う な記 述 が 見 られ る。 「何 故 この 様 に評 判 が 良 い の か と云 う こ と は, 他 社 が 円型 の カ クハ ン式 の 「モ ミ洗 い 」 で あ るの に対 して,角 型 の スマ ー トな タ イ プ と,ド ラ ム に依 る横 転 式 の 「叩 き洗 」 で 布 地 を 少 し も傷 め な い理 想 的 洗 濯 機 で あ る と云 う認 識 を顧 客 か ら受. ⑳. け て い る こ とで あ ろ う」 『電 装 時 報 』1953年8月 号 。 「何 故 布 地 が い た ま な い?一 独 特 の 「叩 き洗 い」 を す るか らで す 」(『東 京 朝 日新 聞 』1954年2 月21日 付 広 告),「 化 繊 で も レー ス で も傷 めず き れ い に 特 殊 な機 構 と独 特 な ドラ ム の横 転 に よ っ て(中 略)布 地 を 絶 対 に傷 め ず 」(同1954年6月27日 付 広 告)な ど。 一178(178)一. -=. [.
(11) 電 気 洗 濯 機 市 場 に お け る非 家 電 メ ー カ ー の マ ー ケ テ ィ ング活 動(大. 内). 急 速 に 販 売 台 数 を伸 ば して い た各 社 の 噴 流 式 に 対 抗 ㈱ しよ う と した 。 ま た,1955年. 頃か ら. は広 告 に子 供 の 写 真 や イ ラ ス トを 付 す と主 に 「デ ン ソー は マ マ よ り上 手 に お洗 濯 」 と い う 広 告 コ ピー を 用 い て,子 供 が 母 親 に対 して デ ン ソ ー洗 濯 機 を 推 薦 す る とい う形 の 広 告 を 展 開 した 。 加 え て,噴 流 式 の 発 売 に合 わ せ て,広 告 を通 じて そ れ ぞ れ の製 品 の ポ ジ シ ョニ ン グ を 消 費 者 に伝 達 した⑳。 表5,表6に. よ り広 告 掲 載 件 数 を他 社 と比 較 して み る と,「 東 京 朝 日新 聞 』,『主 婦 の 友 」. に お け る電 装 の広 告 量 は,と. も に松 下,三 洋 の 圧 倒 的 な広 告 量 に遠 く及 ば な い 。 ま た,東. 芝 の 広 告 は 家 電 製 品 全 般 の 広 告 が 多 い た め,「東 芝 」の 名 を 目 にす る機 会 は実 際 は これ よ り 多 か った。 電 装 の 広 告 量 は他 社 と互 角 の 競 争 を 展 開 す る に は少 な か った と評 価 で き よ う。. ㈱. 噴 流 式 は洗 浄 力 が 強 く洗 濯 時 間 が短 い 反 面,布 地 を 傷 め や す い欠 点 が あ った 。 表1参 照 。 布 地 を 傷 め な い こ とを 強 調 す る広 告 は,噴 流 式 の他 社 製 品 に対 す る機 能 的優 位 性 を 訴 求 す る こ とが 目 的 で あ った と思 わ れ る。 ㈲ 図3右 の雑 誌 広 告 を参 照 。 他 に 「婦 人 公 論 』1955年10月 号,『 東 京 朝 日新 聞 』1955年8月24日 付。 一179(179)一.
(12) 第51巻 表5『 1952年. 下. 三. 洋. 東. 芝. 日. 立. 三. 東 京 朝 日新 聞 』 広 告 件 数. 1953年. 7-12月. 松. 第1号. 3. 1954年. 1-6月. 7-12月. 1. 1. (単 位:件). 2. 1955年. 1-6月. 7-12月. 1-6月. 7-12月. 4. 7. 9. 9. 16. 19. 18. 17. 1. 2. 2. 4. 2. 2. 4. 5. 5. 菱. 1. 2. 1. 1. 2. 3. 富. 士. 1. 5. 5. 3. 3. 八. 欧. 電. 装. 1 1. 1. 3. 1. 2. 2. (注)企 業 広 告 や,家 電 製 品全 般 の 広 告 は, こ の件 数 に含 ま な い 。 (出 所)r東 京 朝 日新 聞 』 よ り作 成 。. 表6『. 主婦の友』 広告件数. 1953年. 松. 下. 三. 洋. 東. 芝. 日. 立. 三. 菱. 富. 士. 八. 欧. 電. 装. 1954年. 2. 1. (単 位:件) 1955年. 1956年. 4. 3. 2. 6. 10. 7. 1. 3. 1. 2. 3. 3. 6. 4. 2. 4. 3. 1. 1. (注)企 業 広 告 や,家 電 製 品 全 般 の広 告 は, この 件 数 に 含 まな い。 (出 所)『 主 婦 の 友 』 よ り作 成 。. 5-2各. 種PR活. 動. マ ス 媒 体 を 通 じた 広 告 活 動 以 外 に も,電 装 は様 々 な機 会 を 利 用 して 消 費 者 に 対 す る製 品 のPR活. 動 を展 開 した。 ま ず,宣 伝 カ ー を利 用 した もの が 挙 げ られ る。 これ は1953年 に 開. 始 さ れ た㊤ ① 。1955年 に は 東 京 ・大 阪 ・名 古 屋 の 各 営 業 所 に 配 車 し各 地 を 巡 回 さ せ,特. に地. 方 部 の市 場 の 開 拓 を 図 った 。 この 宣 伝 カ ー は 増 幅器 や テ ー プ レ コ ー ダ を装 備 して お り,ま た 車 の 後 部 で は洗 濯 機 の 実 演 が で き る よ う に な って い た ㊨1)。 宣 伝 ガ ー に よ るPR活 え て,電 器 店 な ど に お い て実 演 販 売 を行 っ た⑳ ほ か,国 際 見 本 市(1954年)⑬. ㊨①. 『デ ン ソ ー50年. 史 資 料 編 』2000年,154ペ. ⑱1) 『電 波 新 聞 』1955年10月5日. 付。. 働. 『電 波 新 聞 』1955年9月21日. 付。. ㈹. 大 阪 に お い て 実 施 。rデ ン ソ ー50年. 史. ー ジ,『 電 装 時 報 』1953年9月. 資 料 編 』74ペ. 一180(180)一. ー ジ。. 号。. 動 に加. や,電 力 会 社.
(13) 電気洗 濯機市場 にお ける非家 電 メー カーのマー ケテ ィング活動(大 内) 主 催 の 洗 濯 機 実 演 展 示 会(1954年)圃,生 の科 学 展 」(1956年)絢. 活 科 学 化 協 会 主 催,通 産 省 ・厚 生 省 後 援 の 「洗 濯. な どへ 製 品 を 出 品 し,消 費 者 に対 す る啓 蒙 活 動 に参 加 した。 ま た 珍. しい もの と して,海 水 浴 場 に お い て商 品 の 実 演 を 兼 ね た 洗 濯 サ ー ビス の提 供 を 実 施 した こ と も あ る㈱。 そ の他,新 型 製 品 の発 売 に合 わ せ てPR映. 画 を 製 作 す る⑳,東 京 事 務 所 内 と名. 古 屋 駅 前 に シ ョウ ル ー ム を 開 設 し㈱ 商 晶 を 展 示 す る な どの 活 動 に よ り,実 演 を通 じて 洗 濯 や 製 品 に 関 す る知 識 を 消 費 者 に啓 蒙 し,市 場 の 開 拓 に 注 力 した 。 加 え て,1952年. と53年 に は,「 デ ン ソ ー洗 濯 機 ラ ッキ ー セ ー ル」 と銘 打 っ た 懸 賞 付 き 売. 出 しを 実 施 し㈲,広 告 や ヘ リ コ プ タ ー を 使 った ビ ラ の撒 布 ㈹ な どに よ って 売 り上 げ の拡 大 を 図 った 。'. 5-3日. 本 電 装 の広 告 ・宣 伝 活 動 の 評 価. こ こで,表7か. ら広 告 ・宣 伝 活 動 の 規 模 を他 社 と比 較 す る。. 表71955年. 広 告費(百 万 円) 対総売上高(%). にお け る 各 社 の 広 告 宣 伝 費 と対 総 売 上 高 比. 電装. 松下. 三洋. 東芝. 日立. 三菱. 八欧. 富士. 47. 1,088. 341. 703. 505. 393. 60. 197. 2.5. 4.5. 4.1. 1.8. 0.1. 1.1. 3.7. 1.9. (注)富 士 の 数 値 は 「広 告 ・通 信 費 」,そ の他 は 「広 告 宣 伝 費 」 と して記 載 され た もの 。 (出所)各 社 『有 価 証 券 報 告 書 』 よ り作 成 。. こ れ に よ れ ば,電 装 の 広 告 宣 伝 費 は他 社 と は 比 較 に な らな い ほ ど少 な い こ とが 分 か る。 も ち ろ ん,洗 濯 機 事 業 以 外 の 市 販 ω 事 業 を 持 た な い電 装 の広 告 宣 伝 費 は,そ の多 くが 洗 濯 機 事 業 に投 下 され た もの と解 釈 で き る一 方,他 社 の広 告 宣 伝 費 は 洗 濯機 事 業 単 独 の も の で は な く社 全 体 の もの で あ るた め,広 告 宣 伝 費 の 規 模 格 差 が洗 濯 機 市 場 に お け る競 争 に そ の. ㈱. 東 京 電 力 が 主 催 で 開 催 さ れ た も の。 東 芝,日 立,三 が 出 品 。 『電 波 新 聞』1954年5月5日 付。. ⑯. 菱,松 下,日. 本 電 装,富. 士 電 機 ほ か 計8社. 東 京 三 越7階 にて 開 催 。 洗 浄 の原 理 や 有 効 な洗 濯 法 な どの啓 蒙 を行 った。 『電 波 新 聞 』1956年7 月25日 付 。 ㈲ これ は,逗 子 海 岸 の 海 の 家 と江 ノ 島海 岸 の ビー チ ハ ウ ス の入 場 者 先 着150名 に 対 して サ ー ビス 券 を配 布 し,券 を 提 示 した 海 水 浴 客 の ワ イ シ ャツ 等 を 洗 濯 しア イ ロ ンが けを して返 却 す る と い う も ので あ った。FNB型 の 発 売 キ ャ ンペ ー ンの一 環 と して実 施 され た。 『電 波 新 聞 』1956年7月25 日付,同8月8日 付。 ㈱ 注 ㈲ 同様,FNB型 の 発 売 キ ャ ンペ ー ンの一 環 。 『電 波 新 聞』1956年8月22日 付。 ㈱ 愛 知 工 業(現 ア イ シ ン精 機)と 共 営 。 『電 装 時 報 』1957年 寧月 号 。 ㈲ 『デ ンソ ー50年 史 資 料 編 』154ペ ー ジ。 ㈲ 『東 京 朝 日新 聞 』1953年2月25日 付,同12月20日 付,『 電 装 時 報 』1953年1月 号 。 qi)「 市 販 」 とは,こ こで は最 終 消 費 者 に 向 け の販 売 の こ と を指 す 一181(181)一.
(14) 第51巻. 第1号. ま ま反 映 さ れ た わ けで は な い。 しか し,電 装 の広 告 ・宣 伝 活 動 は,規 模 の 点 で他 社 に大 き く劣 って い た こ と は容 易 に想 像 され る。 こ こで,仮. に電 装 の広 告 宣 伝 費 が 全 て 洗 濯 機 の プ. ロ モ ー シ ョ ンに 投 下 さ れ た とす る と,洗 濯 機 事 業 の 売 上 の実 に1/4以. 上 が 広 告 ・宣 伝 活. 動 に費 や さ れ た こ と に な る。 電 装 と して は,こ れ以 上 の 広 告 宣 伝 費 の 支 出 は 困難 で あ っ た と考 え られ よ う。 5-1に お い て既 述 した よ う に,電 装 は,製 品 の 差 異 性 を生 か して,特 に広 告 に お い て は 競 合 他 社 とは 一 線 を 画 す る ユ ニ ー クな メ ッセ ー ジ を 消 費 者 に伝 達 した。 そ れ ま で の 堅 い 表 現 で は な くイ ラ ス トを利 用 す る こ と に よ り,電 気 洗 濯 機 が一 般 の 消 費 者 に と っ て身 近 な もの で あ る とい うイ メ ー ジ を定 着 させ る こ と に貢 献 した。 ま た,三 洋 の 参 入 以 降 噴 流 式 の販 売 が拡 大 す る市 場 状 況 に お い て,日 本 電 装 は製 品 の ポ ジ シ ョニ ン グ とそ れ ぞ れ の 製 品 の 長 所 を,使 用 者 で あ る女 性 に 対 して 分 か りや す い表 現 で 訴 求 した 。 加 え て,5-2で. 述べたよう. に,電 装 は,各 種 実 演 な どを 通 じて,消 費 者 に 対 して 製 品知 識 の 啓 蒙 を 図 った 。 しか し, 広 告 ・宣 伝 活 動 の 規 模 は他 社 と比 較 して総 じて 小 さ く,松 下 ・三 洋 ・東 芝 な ど の競 合 他 社 と互 角 に競 争 す る に は あ ま りに不 十 分 な もの で あ っ た と い え る。. 6.チ. ャネ ル 政 策. 電 装 の チ ャネ ル政 策 の 実 態 を 明 らか にす る た め,本 節 で は特 に販 路 の構 築 と乱 売 問 題 へ の 対 応 に焦 点 を 当 て て 論 じ られ る。. 6-1チ. ャネ ル の設 計 一 販 路 の 構 築. ま ず,1952年. 当時 の 販 路 を 概 観 す る働。. 電 装 は刈 谷 市 に あ る本 社 の ほ か,大 阪 と東 京 に あ っ た 出 張 所 を 営 業 活 動 の 拠 点 と した 。. 国一 一. 特約 店. 図4電. ⑫1952年. 團. 電器商. 装 の販路. 当 時 の 販 路 に 関 す る 記 述 は,以 下 の 資 料 を 参 考 と し た 。r有 価 証 券 報 告 書 』,r日 本 電 装25. 年 史 』29ペ. ー ジ,『 デ ン ソ ー50年. 史 』245ペ. ー ジ,『 電 装 時 報 』1952年12月. 号。. -182(182)一. [.
(15) 電気 洗濯機市場 にお ける非 家電 メーカーの マーケテ ィ ング活動(大 内) 電 装 は,そ れ ま で 家 電 製 品 の み な らず 一 般 の 市 販 製 品 の 販 売 経 験 を ほ とん ど持 た な か っ た た め,自. ら販 路 を 構 築 す る と い う よ り もむ しろ,商 社 な どの 力 を借 りて製 品 の 販 売 を 行 っ. た 。 ま ず,東 洋 興 業 と 日豊 商 事 の 二 社 を 総 代 理 店 と し⑬,岡 谷 鋼 機,日 新 通 商 働,札 幌 トヨ タ 自動 車 の 三 社 を特 約 代 理 店 に 指 定 した。 そ れ ぞ れ の傘 下 に は264の 特 約 店 が あ り,こ れ らを 通 じて,場 合 に よ って は さ ら に一 般 の 電 器 商 を介 して,最 終 消 費 者 へ 製 品 が 販 売 さ れ て い た 。 主 な 販 売 地 域 は 自社 の 営 業 拠 点 の あ る東 京,大. 阪,名 古 屋 で あ り,九 州 と四 国 は. 未 開 拓 で あ っ た。 全 国 的 な 販 売 網 の 構 築 の た め に は 自社 の営 業 拠 点 が 不 可 欠 だ っ た た め,1953年 国 に営 業 所 ・出 張 所 を 開 設 し,営 業 活 動 の強 化 を 図 っ た㈲。 まず,1953年. 以 降,全. に東 京 ・大 阪 の.. 各 出 張 所 が 営 業 所 に昇 格 し,ま た 福 岡 と仙 台 に 出 張 所 が 開 設 され た。 翌54年 に は福 岡 出 張 所 が 営 業 所 に昇 格 し,加 え て 広 島 ・札 幌 に 営 業 所 が,高 松 に 出 張 所 が 開 設 さ れ た 。 さ ら に,名 古 屋 に は 「名 古 屋 洗 濯機 営 業 所 」 を 開 設 し,専 ら電 気 洗 濯 機 の 営 業 活 動 に 当 た らせ た。1955年 に は 富 山 営 業 所 が 開 設 され,1956年. に は仙 台 ・高 松 両 出 張 所 が 営 業 所 に昇 格 し. た。 これ ら全 国 各 地 の 営 業 所 ・出 張 所 に は社 員 が 駐 在 し,実 演 販 売 等 消 費 者 に 対 す る宣 伝 活 動 に 当 た る と と も に,現 地 の 商 社 や 販 売 店 な ど に対 して 直 接 営 業 活 動 を行 っ た㈲。 ま た, 販 売 店 に対 して景 品 付 売 出 しを 実 施 す る㊨,販 売 店 主 を 工 場 に招 待 す る⑱ な どの イ ンセ ン テ ィ ブの 提 供 は行 わ れ て い た もの の,当 時 一 般 的 で あ っ た 景 勝 地 や 観 劇 等 へ の 招 待 を 示 す 資 料 は 見 当 た らな か っ た 。 表8に. も示 され る と お り,電 装 の チ ャネ ル 対 策 費 は極 端 に少 な. く,販 売 店 に対 して 積 極 的 に イ ン セ ン テ ィ ブを 提 供 す る こ と で 自社 製 品 の取 り扱 い を誘 引 す る と い っ た手 法 は あ ま り用 い られ な か った と推 察 さ れ る。 ま た,上 記 の販 路 の ほか に,電 力 会 社 や 全 国 購 買 農 業 協 同組 合 連 合 会(以 下,全 購 連 と 略 記)に. ㈹ 鱒. ㈲. よ る斡 旋 販 売 も実 施 さ れ た㈹。. な お,1953年 に は保 土 谷 電 気 が 総 代 理 店 に加 え られ た。 日新 通 商 は トヨタ 自動 車 工 業 の 関 連 会 社 で あ っ た。 戦 前,ト ヨタ 自動 車 工 業 が 自動 車 販 売 に伴 う月 賦 金 融 を 目的 と して1926年 に トヨ タ金 融 が 設 立 さ れ た 。 そ の後,社 名 を豊 田産 業 と変 更 し, 迂 路 を 経 て1948年 に企 業 再 建 整 備 法 に基 づ き豊 田産 業 の 商 事 部 門 を 継 承 す る 形 で 設 立 され た の が 日新 通 商 で あ る。1956年,社 名 が 豊 田通 商 に変 更 さ れ,今 日 に至 っ て い る。 『トヨ タ 自 動 車30年 史 』714ペ ー ジ,rデ ン ソ ー50年 史 』245ペ ー ジ。 以 下 の 記 述 は次 の 資 料 を参 考 と した。 『デ ン ソー50年 史 資 料 編 』154-156ペ ー ジ,『 電 装 時報 』 1957年2月 号 。. ⑯ ㈲. 名古 屋 洗 濯 機 営 業 所 以 外 は,電 気 洗 濯 機 に加 え 自動 車 関 連 製 品 の営 業 ・サ ー ビス も行 っ た。 『電 波 新 聞 』1955年5月25日 付 ほか。 『電 装 時 報 』1953年10月 号,同11月 号 ほ か。. ⑲. 東 北 電 力 新 潟 支 店 に お い て,電 装 や 松 下,東 芝,日 立,三 菱,富 士 電 機,八 欧,オ リジ ンの各 メー カ ー の電 気 洗 濯 機 の 月 賦 斡 旋 販 売 が 実 施 さ れ た 。 『電 波 新 聞』1955年5月18日 付 。 ま た,全 購 連 に よ る斡 旋 販 売 に つ い て は,全 購 連 大 阪 支 所 が 近 畿 ・中 国 ・四国 お よ び福 井 ・三 重 の管 内各 府 県 連 の希 望 を ま と あ る形 で 実 施 さ れ た 。 『電 波 新 聞』1957年9月11日 付。 -183(183)一.
(16) 第51巻 表81955年. 第1号. に お け る各 社 の チ ャネ ル対 策 費 と 対 総 売 上 高 比. 電装. 松下. 三洋. 東芝. 三菱. 八欧. 富士. 5. 1,126. 762. 45. 327. 13. 86. 0.1. 0.9. 0.8. 0.8. チ ャネ ル 対 策 費(百 万 円). 対総 売上高(%). 0.3. 4.6. 9.2. (注)松 下 は 「製 品 拡 売 費 」 と 「販 売 手 数 料 」 の 和,三 洋 は 「拡 売 費 」 と 「販 売 手 数 料 」 の和,電 装 ・東 芝 ・三 菱 ・八 欧 は 「販 売 手 数 料 」,富 士 は 「仲 介 手 数 料 」。 「製 品拡 売 費 」 及 び 「拡 売 費 」 と は,景 品 付 売 出 ・招 待 売 出 ・コ ン クー ル 費 用 等 で あ る。 な お,松 下 と三 洋 の 数 値 に は主 に消 費 者 に 対 す る プ ロ モ ー シ ョ ンで あ る景 品 付 売 出 の 費 用 が 含 まれ て い る点,ま た,松 下 と三 洋 以 外 の 各 社 の 損 益 計 算 書 で は 「拡 売 費 」 に相 当す る 支 出が 広 告 宣 伝 費 と して 計 上 され て い る点 に 注 意 。 表7と 同様,あ くま で 大 ま か な 傾 向 を示 す も の と理 解 され た い。 (出 所)各 社 『有 価 証 券 報 告 書 』 よ り作 成 。. 6-2チ. ャネ ル の 管 理 一 乱 売 問 題 へ の 対 応. 当 時 の 家 電 製 品 の 流 通 経 路 に お い て は,卸 売 業 者 の 帳 合 が重 複 す る こ とが 多 く問 屋 間 の 競 争 が 頻 繁 に起 こ った 。 ま た,電 器 商 の 間 の 競 争 も熾 烈 で あ り,加 え て,電 器 商 は会 社 の 厚 生 部 や 共 済 組 合 に よ る月 賦 販 売,電 力 会 社 や 全 購 連 に よ る斡 旋 販 売,百. 貨店 に よる値 引. き販 売,金 融 業 者 らに よ る横 流 れ 品 の 販 売 な ど の脅 威 に さ らさ れ た。 電 器 商 は全 国 ラ ジオ テ レ ビ電 機 組 合 連 合 会(以 下,全. ラ連 と略 記)の 組 織 的 活 動 を通 じて メ ー カ ー各 社 に圧 力. を か け,横 流 れ 品 の 防止 や 乱 売 の原 因 とな る業 者 へ の 出荷 停 止 な どを要 求 し,乱 売 問 題 の 解 決 を 迫 っ た。1956年 に発 生 した百 貨 店 に よ る値 引 き販 売 問 題 が 直 接 の 契 機 と な って,同 年8月,家. 電 メ ー カ ー各 社 は,「 家 庭 電 器 市 場 安 定 協 議 会 」(以 下,市 安 協 と略 記)を 結 成. す る と と も に,八 項 目 に わ た る協 定 を取 り結 び,乱 売 の 防 止 と市 場 の 安 定 を 図 った ㈹。 こ れ は,全 ラ連 の 組 織 的 活 動 が,メ ー カ ー に 対 して 非 常 に大 きな 影 響 力 を 持 って い た こ とを 示す。. 電 装 の電 気 洗 濯 機 も他 社 製 品 と同 様 乱 売 の 対 象 と され た⑪。 しか し,電 装 は市 安 協 の構 成 員 で は な か った 軌 加 え て,全. ラ連 と各 メ ー カ ー との 交 渉 を 示 す 資 料 の 中 で 電 装 の 参 加. を示 す 資 料 も全 く見 当 た らな か っ た。 これ ら の こ と は,電 装 が,乱 売 の 防 止 な ど販 路 の 末. ⑳r全 ラ連 三 十 五 年 史 』176-180ペ ー ジ,r電 波 新 聞 』 各 号 。 な お,翌57年 に は,公 正 取 引 委 員 会 は,小 売 価 格 の 維 持 を 目的 と した,① 八 項 目の 協 定 に よ る市 安 協 会 員 の 活 動 の制 限 ,② メ ー カ ー に 出 荷 停 止 を 強 い る全 ラ連 の活 動,を と も に違 法 とす る排 除勧 告 を 出 した 。 以 上,当 時 の 家 電 流 通 の 実 態 に 関 して は,大 内[2002a]を 参考 されたい。 ⑳ 例 え ば 『週 刊 朝 日』 に お い て,国 電 秋 葉 原 駅 周 辺 の 電 気 問屋 街 が 小 売 を 兼 業 す る様 子 が詳 細 に 記 され て い る。 そ の記 事 に よ る と,正 価34,500円 の電 装 製 洗 濯 機 は29,000円 で 小 売 販 売 さ れ て い た。 『週 刊 朝 日』1954年6月6日 号,79ペ ー ジ。 他 に は,1954年,都 内 の 百 貨 店 が ,塗 装 が は げ た り外 部 が へ こん だ り した 電 装 製 洗 濯 機 を22,000円 で特 別 販 売 した と こ ろ,「 乱 売 で あ る」 と して 小 売 業 者,卸 業 者 が 日本 電 装 お よ び東 洋 興 業 に抗 議 す る とい う事 件 が 発 生 した 。r電 波 新 聞 』1954 年9月1日 付。 働 市 安'協の構 成 員 は以 下 の通 りで あ る。 富 士 電 機,富 士 製 作 所,早 川,日 立,松 下,三 菱 ,七 欧, 日本 コ ロ ム ビア,日 本 ビク タ ー,大 阪 音 響,三 洋,白 砂 電 機,東 芝 ,八 欧。r電 波 新 聞 』1956年 8月29日 付 。 一184(184)一.
(17) 電 気 洗 濯 機 市 場 に お け る非 家 電 メー カ ー の マ ー ケ テ ィ ン グ活 動(大. 内). 端 の 管 理 に 関 して は,総 代 理 店 ・特 約 代 理 店 に委 ね る部 分 が 大 き か った と推 察 す る根 拠 と な る。 当 時,電 気 洗 濯 機 は月 賦 で購 入 され る こ とが 多 く㈹,電 器 商 が 自 ら リス ク を 負 って 月 賦 販 売 をす る こ と も多 か った 。 しか し,長 期 の 月 賦 販 売 に よ り資 金 繰 りが 困難 に な っ た電 器 商 に よ るダ ン ピ ン グ が頻 発 し,こ れ が 乱 売 の 一 因 とな った 。 そ の 意 味 で,メ. ーカー に よる. 月 賦 販 売 政 策 は,値 崩 れ の 発 生 要 因 を 取 り除 くこ とで 乱 売 を 未 然 に 防 ぐと い う機 能 を 持 ち,チ. ャネ ル 管 理 政 策 と して理 解 す る こ とが で き る。 当 時,松 下 や東 芝 は月 賦 販 売 会 社 を. 設 立 す る,月 賦 販 売 専 用 の機 種 を導 入 す るな ど,月 賦 販 売 に 積 極 的 に取 り組 ん だ ㈱。 一 方, 電 装 は他 社 の月 賦 販 売 に対 す る危 機 感 は あ っ た もの の,松 下 や 東 芝 に み られ る よ う な月 賦 販 売 政 策 の 積 極 的 な 展 開 は見 られ な か った 。. 7.洗. 濯 機 事業 の位置 づ けの変化 と洗濯 機事 業 か らの撤退. こ こ で,事 業 戦 略 の 観 点 か ら電 装 に お け る電 気 洗 濯 機 事 業 の 位 置 づ け を検 討 す る。 将 来 的 に は電 装 部 門 を 独 立 した事 業 に して い くと い う トヨタ 自動 車 工 業 創 業 者 豊 田喜 一 郎 の 考 え に基 づ き㈲ 創 業 した 電 装 で あ っ た が,第2節. に お い て 既 に述 べ た通 り,当 初 は 電 装 品 事. 業 の み で 企 業 を存 続 させ る こ と は 困 難 で あ っ た た め,技 術 や 設 備 を転 用 で き る事 業 へ の 多 角 化 と して 電 気 洗 濯 機 の 製 造 ・販 売 を 開始 した。1953年 ま で は 電 気 洗 濯 機 事 業 は 予 想 以 上 の 成 功 を収 め た。1952年7月. に は生 産 実 績 は 月 産1千. の 国 内総 生 産 台 数 が1万5千. 台 程 度 だ った 勧 こ とか ら,こ の生 産 規 模 は き わ め て 大 き い も. の で あ っ た と評 価 で き る。 一 時 は 全 国 第1位 メー カ ー と して 消 費 者 に認 知 さ れ た殊. 台 に達 した6⑤ 。1952年 の 電 気 洗 濯 機. の 売 り上 げ を 誇 り㈱,電 気 洗 濯 機 の トッ プ. 電 装 品 そ の 他 自動 車 関 連 製 品 は 産 業 財 で あ り,消. ㈹1958年 の 電 気 洗 濯 機 の 月 賦 購 入 比 率 は東 京 で26.3%,大 阪 で25.0%で あ った 。 日本 電 機 工 業 会 ・ 日本 機 械 工 業 連 合 会[1959]23ペ ー ジ。 働 松 下 は1951年 以 降,各 地 に製 品 別 の 月 販 会 社 を設 立 す る と と もに,代 行 店 集 金 制 度 を確 立 し, 一 般 の製 品 の 販 売 経 路 と月 販 製 品 の 販 売 経 路 を 厳 格 に分 け る こ とで,業 者 に よ る 自 己月 賦 を 防 止 した。 『松 下 電 器 ・営 業(戦 後 編)』79-81ペ ー ジ。 松 下 の 月 賦 販 売 制 度 に つ いて は,日 高[1997] が 詳 しい。 また,東 芝 は1954年 に 「東 芝 月 販 販 連 盟 」 を 組 織 し,優 良 販 売 店 を 月 販 連 盟 店 に指 定 し東 芝 商 事 が 連 盟 店 に対 して 一 定 の 分 割 決 済 を行 った 。r電 波 新 聞 』1954年4月28日 付。 ま た 1956年 に 東 京 家 庭 電 器 株 式 会 社 とい う名 称 の 月 販 会 社 を 設 立 した の を は じめ 各地 に月 販 会 社 を 設 立 し,月 賦 の 支 払 代 金 の 集 金 に 当 た らせ た。 『東 京 芝 浦 電 氣 株 式 會 社 八 十 五 年 史 』379-380ペ ー ジ, 『電 波 新 聞 』1957年3月20日 付。 ㈲ 『デ ンソ ー50年 史 』44ペ ー ジ。 ㈹ 同上 書,52ペ ー ジ。 勧 通 産 省 「生 産 動 態統 計 調 査 」。 ㈱ 『デ ン ソー50年 史 』44ペ ー ジ。 ⑲ 「現 在 市 場 に あ る の は,東 芝,松 下,日 立,三 菱,デ ン ソ ー な ど六 社 が 一 流 品」 『電 波 新 聞 』 1953年3月7日 付。 一185(185)一.
(18) 第51巻. 第1号. 費 者 に と っ て な じみ が 薄 か っ た た め,電 装 は 電 気 洗 濯 機 メ ー カ ー で あ る と誤 解 され る ほ ど で あ っ た ㈹。1953年 下 期 に お い て は,電 気 洗 濯 機 の 販 売 実 績 が 総 売 上 の15.5%を. 占 め る⑯1). ほ ど に な り,電 気 洗 濯 機 事 業 は 電 装 に と って 本 業 で は な い もの の い わ ば 「花 形 」で あ った 。 しか し,1954年 以 降,市 場 規 模 が 急 速 に拡 大 す る と 同 時 に メ ー カ ー 間 の 販 売 競 争 が 激 化 す る 中 で,電 装 の 電 気 洗 濯 機 事 業 は 伸 び悩 み,市 場 に お け る地 位 は急 激 に低 下 して い っ た。 三 洋,松 下,東 芝 ら各 社 は,連 続 的 に新 型 製 品 を市 場 に導 入 し,生 産 に対 す る投 資 を 積 極 的 に行 って 生 産 規 模 を 拡 大 し,大 量 の広 告 宣 伝 費 を 投 下 した。 中 で も特 に 松 下 と東 芝 は, 戦 前 か ら の 販 路 を生 か して 販 売 網 を 急 速 に 拡 大 し,ま た 月 賦 販 売 に も積 極 的 に取 り組 ん だ 。 一 方,電. 装 に と って の 本 業 は あ くま で電 装 品事 業 で あ り,電 気 洗 濯 機 事 業 に多 額 の 資. 本 を 投 下 す る こ と は,社 の 事 業 戦 略 の 観 点 か らは リス ク の高 い こ と で あ った ㈹。 こ の こ と が,消 極 的 な設 備 投 資,広 告 宣 伝 活 動 の 規 模 の小 さ さ,不 十 分 な チ ャ ネ ル 管 理 な どの,前 節 ま で に確 認 した マ ー ケ テ ィ ン グ活 動 の 諸 特 徴 の 要 因 で あ る。 と りわ け チ ャネ ル 政 策 に 関 して 言 え ば,他 社 が 家 電 製 品 全 般 を共 通 の チ ャネ ル で 販 売 して い た こ とを 考 え る と,事 業 規 模 の格 差 は,単 な る洗 濯 機 事 業 の規 模 格 差 で は な く,他 社 の 家 電 事 業 全 体 と電 装 の 洗 濯 機 事 業 と の格 差 とな って チ ャネ ル 政 策 に反 映 さ れ た と考 え るべ き で あ る。 1955年 以 降 景 気 が 好 転 す る と と も に 国 内 の 自動 車 需 要 が 急 激 に 上 昇 し,電 装 品 と ラ ジ エ ー タ ー に対 す る注 文 が 増 加 した ㈹ 結 果,図5に. 示 さ れ る通 り,電 気 洗 濯 機 事 業 の全 社 売. 上 に 占 め る割 合 は低 下 して い った 。 さ らに,1955年. に ロバ ー ト ・ボ ッ シ ュ社 との 技 術 提 携. 契 約 に ス パ ー ク プ ラ グ と燃 料 噴 射 装 置 が 追 加 さ れ た ㈹ こ と に よ り,製 品 の 幅 が 広 が り本 来 の 自動 車 部 品 の 製 造 に専 念 す る必 要 性 が生 じた㈲。 これ らの こ とが 要 因 と な り,1957年9 月 に 電 装 は 電 気 洗 濯 機 の販 売 権 を 愛 知 工 業(現. ア イ シ ン精 機)に 譲 渡 し㈹,翌1958年7月. ㈹. 「螢 業 部 に 毎 日の よ うに 來 る 洗 濯 機 に就 い て の手 紙 の宛 名 の 中 に 『デ ン ソ ー 洗 濯 機 製 造 株 式 會 社 御 中 』 が 非 常 に多 い 一 事 を み て も,大 衆 は洗 濯 機 の 日本 電 装 と考 え て い る に 違 い な い 」r電 装 時 報 』1952年12月 号 。 ㈹ 『有 価 証 券 報 告 書 』 よ り。 ⑰ 「当 社 と して は,前 述 の 大 手 三 社(三 洋,松 下,東 芝 の三 社 を 指 す,筆 者 注)の 如 き大 ス ケ ー ル の事 業 へ 持 っ て行 くとす る と,電 装 品事 業 よ り も洗 濯 機 並 に家 庭 用 電 気 機 械 の 方 が 大 きな ウ エ イ トを 占 め る事 とな り,(中 略)会 社 の 性 格 を が ら り と変 更 す る こ と とな る が,斯 様 な 事 は な す べ き で な い と考 え るの で こ の方 面 で は争 わ ず 現 状 維 持 に止 め,本 業 の発 展 に 向 って 重 点 指 向 を す る事 に 最 高 方 針 を 決 あ て 居 る」 『電 装 時 報 』1955年11月 号 。 一 方 で,1956年 に発 表 され た 「新 五 力年 計 画 」 に は,「 電 気 文 化 生 活 に よ る家 庭 用 電 気 器 具 の前 途 を考 え,単 に洗 濯 機 の み な らず 積 極 的 に 家 庭 用 電 気 器 具 界 へ の進 出 を計 る」 と あ り,電 装 の事 業 戦 略 の立 案 に揺 ら ぎが あ った こ と が 推 察 され る。 ㈹ 『日本 電 装 十 五 年 史 』104ペ ー ジ。 『デ ン ソー50年 史 資 料 編 』156ペ ー ジ。 な お,ボ ッ シ ュ社 と の技 術 提 携 自体 は1953年 に行 わ れ た 。 『デ ンソ ー50年 史 』186-189ペ ー ジ。 ㈲ ㈹. 『日本 電 装 十 五 年 史 』104ペ ー ジ。 愛 知 工 業 は ミ シ ン,毛 糸 編 機,毛 糸 編 機 な ど家 庭 用 製 品 の 販 売 を行 な っ て お り,市 販 の 販 売 経/ -186(186)一'.
(19) 電 気 洗 濯 機 市 場 に お け る非 家 電 メー カ ー の マ ー ケ テ ィ ン グ活 動(大. 一. 10. 一. 5. [=コ ︻. 譲 蕪難. 、 纈熈罷 難 羅慧 聾. 灘灘. 電気洗 濯機販売 実 績(百 万 円). 一 ◆一 全 社 売 上 高 に 占 める割 合(%). 降5. 鵠. 1. 1. 1. 難. 1. 螺. 欝縫. 識轟 羅襲. 灘灘. 一. 襲..癒蒸馨. 0. 蕪叢. [. 50. 箋罵 羅難. }. 100. 一. 一. 150. 15. 縣 欝鑛. 一. 200. 、 ∩芒難 蕪嚢. 250. 内). 0. 53年54年55年56年57年 (注)1952年 以 前 の デ ー タ に 関 して は,電 気 洗 濯 機 単 独 の 販 売 実 績 が不 明 で あ る た め に グ ラ フ か ら削 除 した。 (出所)r有. 価 証 券 報 告 書 』 よ り作 成 。. 図5電. 装 の電 気洗濯機販売実 績の推移. に は 電 気 洗 濯 機 の 製 造 ・販 売 権 一 切 を 愛 知 工 業 に譲 渡 し,電 気 洗 濯 機 事 業 か ら撤 退 した ㈱。. 8.お. わ. り. に. 以 上,電 装 の 電 気 洗 濯 機 市 場 に お け る マ ー ケ テ ィ ング 活 動 と電 気 洗 濯 機 事 業 そ の もの に 関 す る分 析 を 行 った 。 こ こ で,本 論 を 簡 単 に総 括 す る と と もに,そ の理 論 的 示 唆 を 述 べ て ま と め とす る。 電 装 ゐ マ ー ケ テ ィ ン グ活 動 は,他 社 の そ れ と は 異 な るユ ニ ー ク な側 面 を 多 く持 ち,市 場 に お け る競 争 優 位 の 確 立 に貢 献 す る可 能 性 を 秘 め た もの で あ った と評 価 で き る。 当 初 よ り 他 社 とは異 な る 回 転 式 の 電 気 洗 濯 機 を 開 発 し,ま た 噴 流 式 の販 売 を 開 始 した 後 も,製 品 の ポ ジ シ ョニ ング を 明 確 にす る こ とで 回 転 式 と噴 流 式 を平 行 して 販 売 す る な ど,電 装 の 製 品 政 策 は他 社 と一 線 を画 す る独 特 な もの で あ っ た。 さ らに 広 告 に お い て も,電 装 は他 社 と の 差 別 化 を 強 く意 識 した。 啓 蒙 的 ・説 明 的 な 広 告 が 多 か っ た 中 で,電 装 の広 告 は,イ ラ ス ト や分 か りや す い 広 告 コ ピー を 用 い た 感 性 に 訴 え る もの で あ った 。 ま た,噴 流 式 と回 転 式 の 機 能 上 の 差 異 を 強 く意 識 し,そ れ を 他 社 製 品 に対 す る差 別 化,あ. るい は 自社 製 品 ラ イ ンに. お け る各 製 品 の ポ ジ シ ョニ ン グ に 関 連 づ けて 消 費 者 に伝 達 した 。 加 え て,種 々 の 機 会 を 通 じて 製 品 の実 演 を 実 施 す る こ と で,洗 濯 方 法 や製 品 に 関 す る 知 識 の 普 及 を 図 った 。 一 方 で ,電 装 の マ ー ケ テ ィ ン グ 活 動 は,あ. らゆ る点 で 規 模 が 小 さ か っ た と い う限 界 が. あ った こ と が 指 摘 で き る。 他 社 が生 産 に 積 極 的 に投 資 す る こ と で事 業 規 模 の 拡 大 を 図 っ た. \ 路 を既 に確 立 して い た 。 ま た,ミ. シ ンは 「トヨ タ ミ シ ン」 ブ ラ ン ドで 販 売 して い た。 販 売 権 の譲. 渡 以 降 電 気 洗 濯 機 は 「トヨタ洗 濯 機 」 と改 称 され,ミ シ ンの販 売 経 路 を通 じで 販 売 さ れ る よ う に な った 。 『電 波 新 聞』1957年9月11日 付,『 電 装 時 報 』1957年10月 号 。 ㈹ 『日本 電 装 十 五 年 史 』104ペ ー ジ。 -187(187)一.
(20) 第51巻. 第1号. の とは 対 照 的 に,電 装 は,生 産 に対 す る投 資 に 消 極 的 で あ り,市 場 の 急 速 な拡 大 に対 応 す る こ とが で き な か った 。 電 装 に と って 洗 濯 機 事 業 は あ くま で 「副 業 」 で あ り,全 社 的 な 戦 略 計 画 の 観 点 か らは,洗 濯 機 事 業 へ の 過 度 の 投 資 は 危 険 性 の 高 い もの で あ った。 この こ と が マ ー ケ テ ィ ン グ 活 動 を大 き く規 定 した 。 まず 製 品 政 策 に お い て松 下 や三 洋 の よ うな 連 続 的 な新 型 製 品 の 導 入 を 行 わ ず,そ. の こ と が競 争 力 の 低 下 を もた ら した 。 さ らに,広 告 宣 伝. 費 は 他 社 と比 べ て 極 端 に 少 な く,ま た広 告 の 露 出 頻 度 も他 社 に 及 ば な か った 。 加 え て, チ ャネ ル 対 策 に割 か れ る費 用 も少 な く,月 賦 販 売 や 乱 売 へ の 対 応 も消 極 的 で あ った。 事 業 規 模 の 小 さ さ は,当 時 の非 家 電 メ ー カ ー に 共 通 す る特 徴 で あ っ た と考 え られ る。 と す れ ば,本 稿 で 論 じた 電 装 の事 例 は,電 気 洗 濯 機 業 界 に お い て 大 手 メ ー カ ー に よ る寡 占化 が 進 む メ カ ニ ズ ム を 明 らか に す る うえ で 示 唆 に富 む 。 市 場 が 急 速 に拡 大 す る製 品 の普 及 期 に お い て は,事 業 規 模 の拡 大 は,単 に 需 要 に見 合 う だ け の供 給 を実 現 す る,あ る い は 生 産 に お け る規 模 の 経 済 性 を発 揮 す る とい う意 味 だ け で な く,十 分 な規 模 の マ ー ケ テ ィ ン グ活 動 を実 現 す る と い う意 味 に お い て も,競 争 上 不 可 欠 な要 件 で あ った 。 十 分 な事 業 規 模 の拡 大 を果 た せ な か った 非 家 電 メ ー カ ー は,こ. う して 企 業 間 競 争 か ら排 除 され て い っ た の で あ. る。. 参. 大 内秀 二 郎[2001]「. 考. 文. 献. 電 気 洗 濯 機 の普 及 初 期 に お け る三 洋 電 機 の マ ー ケ テ ィ ング 活 動 」 京 都 大 学 マ ー. ケ テ ィ ン グ研 究 会 編 『マ ス ・マ ー ケ テ ィ ング の発 展 ・革 新 』 同文 舘,3-29ペ 大 内 秀 二 郎[2002a]「1950年 ペ ー ジ。 大 内 秀 二 郎[2002b]「. 電 気 洗 濯 機 の 普 及 初 期 に お け るマ ー ケ テ ィ ング競 争 の 展 開一 松 下 電 器 産 業 ㈱ 中. 心 に一 」 『経 済 論 叢 』 第169巻 第3号,268-283ペ 尾 崎 正 久[1955]『. ー ジ。. 豊 田喜 一 郎 氏 』 自研 社 。. 公 正 取 引 委 員 会[1956コ 公 正 取 引 委 員 会[1959]『 佐 久 間 孝[1956]「. ー ジ。. 代 中葉 に お け る家 電 流 通 シス テ ム」r経 済 論 叢 』 第169巻 第1号,36-50. 『電 機 工 業 に お け る競 争 と集 中化 の 動 向』。 電 機 工 業 に お け る経 済 力 集 中 の 実 態 』。. 家 庭 電 氣 器 具 の 普 及 と電 力 需 要 」 『電 機 』 第101号,18-24ペ. 日本 電 機 工 業 会 ・日本 機 械 工 業 連 合 会[1959]r耐. ー ジ。. 久 消 費 財 の パ ネ ル 調 査 報 告 書 家 庭 用 電 気 器 具 の市. 場 調 査 一 昭 和33年 度 大 規 模 調 査 』。 日高 謙 一[1997]「. 松 下 電 器 の 月 賦 販 売 制 度 の形 成 と展 開」 『経 済 論 叢 』 第159巻 第4号,71-91ペ. 三 上 美 樹 ・藤 原 邦 達 ・小 林 勇[1983]『. ー ジ。. 図 説 洗 剤 の す べ て』 合 同 出版 。. 『日本 電 装 十 五 年 史 』1964年 。 『日本 電 装25年 史 』1974年 。 『デ ン ソー50年 史 』2000年 。 『デ ン ソー50年 史. 資 料 編 』2000年 。. 『電 装 時報 』(電 装 の社 内 報)各 号 。 『ア イ シ ン精 機20年 史 』1985年 。. 一188(188)一. L.
(21) 電 気 洗 濯 機 市 場 に お け る非 家 電 メー カ ー の マ ー ケ テ ィ ン グ活 動(大 『トヨ タ 自動 車 三 十 年 史 』1967年 。 『三 洋 電 機 三 十 年 の 歩 み 』1980年 。 『創 業 三 十 五 年 史. 追 補 』(松 下 の 社 史)1955年. 。. 『松 下 電 器 五 十 年 の 略 史 』1968年 。 『松 下 電 器 ・営 業 史(戦. 後 編)』1980年 。. r東 京 芝 浦 電 氣 株 式 會 社 八 十 五 年 史 』1963年 。 『東 芝 ラ イ フ』(東 芝 の 社 内報)第45号,1954年,第74号,1958年 『日立 製 作 所 史2』1960年. 。. 『株 式 会 社 日立 製 作 所 製 品 年 譜(昭 和24年3月. ∼ 昭 和35年9月)』1961年. 各 社 『有 価 証 券 報 告 書 』。 『全 ラ連 三 十 五 年 史 』1981年 。 経 済 企 画 庁 「消 費 者 動 向予 測 調 査 」。 通 商 産 業 省 「生 産 動 態 統 計 調 査 」。 r電 波 新 聞 』。 『東 京 朝 日新 聞 』。 『主 婦 の友 』。 『ア サ ヒ グ ラ フ』。 『週 刊 朝 日』1954年6月6日. 。. 号。. 一189(189)一. 。. 内).
(22)
関連したドキュメント
経済学研究科は、経済学の高等教育機関として研究者を
最近の電装工事における作業環境は、電気機器及び電線布設量の増加により複雑化して
・各企業が実施している活動事例の紹介と共有 発起人 東京電力㈱ 福島復興本社代表 石崎 芳行 事務局
なお、関連して、電源電池の待機時間については、開発品に使用した電源 電池(4.4.3 に記載)で
) ︑高等研
なお,今回の申請対象は D/G に接続する電気盤に対する HEAF 対策であるが,本資料では前回 の HEAF 対策(外部電源の給電時における非常用所内電源系統の電気盤に対する
当該発電用原子炉施設において常時使用さ れる発電機及び非常用電源設備から発電用
(ⅰ)コードレス電話機:これは、ダイヤルセレクターを備えた電池式無線