事業税におけるもう1つの外形標準課税論 -- 国際的側面からの接近 --
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(2) 第42巻 第 1号. 第 1 表は, 日本からアメリカに進出している. 格操作の可能性とそれがなされる根拠を検討 し, さらに移転価格操作の有無によって事業税. 企業の売上高経常利益率を通産省による平成2. 負担の公平性にどのような影響を与えるかを示. 年 3 月末調査の平成元年度分および平成5 年 3 月末調査の平成4 年度分について,. してみる。. まとめたものである。. 内国法人間で所得移転がある場合には, 我が. 1 つの表に. それぞれの調査年度分について, 進出企業全. 国においては寄附金控除制度で対応している し, 一方の所得がそれによって減少しても他方. 体の売上高経常利益率を示すとともに, 平成2. の所得がそれだけ増加するのであるから, グ. 年 3 月末の調査分については1978年-1980年の. 間と1981年-1983年の間に進出時期をもつ企業. ル ー プとして法人税, 住民税, 事業税負担の完 全な回避をできない。しかし, 国際取引の場合,. の売上高経常利益率をそれぞれ別途に記してあ. ある租税管轄権から別の租税管轄権への所得移. る。 これは, 進出後 5年-10年程度の企業は進. 転は, わが国の事業税負担に大きな影響を与え. 出先での収益性が低い傾向にあるためである。. る。そこで, 以下では内外の法人間の所得移転. 通産省の調査によっても1981-1983年の間に進. のみを考慮の対象にし, 内国法人間の移転価格. 出した企業の売上高経常利益率は 1番高く, そ. 操作については考慮外に置く。. れ以降に進出した企業は年次が後になるほど低. 第 1表. ^. 平成2 年 3 月末調査分(A). 平成5 年 3 月末調査分{B). (Cl. 1980年以前 1981年-1983年 全進出企業 アメリカ企業 ロ 体 計 進出企 業 進出企 業 ム 計 全. 1978年-1980年 1981年-1983年 全進出企業. 農林漁業 鉱 業 建設業 製造業 食糧品 維 繊. 木材,紙バルプ 化 学 鉄 鋼 非鉄金属 一般機械 電気機械 輸送機械 精密機械. 石油•石炭. その他 業 商 サ ー ビス業 その他. ^ ロ. 計. 進出企 業. 進出企 業. -1.8" -21.2 0.0 0.6 7.3 -5.5 21.4 -1.8 4.0 ... 0.1" -90.0 -12.4 2.2 -3.3. -8.9 -5.0 -3.3 3.6 1.0 8.0 0.5 18.1 -21.2. -14.4 9.9 -1.8 1.9 -0.3 3.5 7.4 5.8 -0.2 -0.6 1.9 0.1. 0.0. 0.3. ロ. 0.3" 1.5 -0.9 0.1 0.3 -17.5 10.4 -1.1 2.6 -1.1 2.1 0.1 -0.8 1.0 0.7 0.9 0.6 3.4 -4.4. 1.6" -2.8 -5.3 2.0 3.9 24.0 -1.7 1.3 -3.3 2.4 0.4 2.1 2.2 3.3 0.0 7.3 1.2 2.3 3.5. 0.0" 0.0 -4.8 1.9 -6.9 0.0 0.0 -1.7 14.9 -1.2 -2.0 2.5 5.5 0.0 0.0 19.7 15.2 0.0 -1.6. 1.2" 6.3 -3.5 -0.5 1.1 8.1 -1.4 -1.3 -0.9 -3.7 1.9 -0.1 1.9 -7.8 0.0 0.4 1.9 1.6 0.3. 0.1. 7.4. 0.5. 0.4. %. 2.1 4.0 4.3 0.9 4.0 -2.5 -2.0 3.6 -4.3 0.9 卸小売売 1.0 1.3. 出所 A: 通産省産業政策局国際企業課(編)「第 4 回海外事業活動基本調査, 海外投資統計総覧」p. 214 B: 通産省産業政策局国際企業課(編)「第 5 回海外事業活動基本調査, 海外投資統計総覧」p. 247 C : U.S. Department of Commerce, Statistical Abstracts of the United States, 1994, p. 561. - 20 (20)一. 1.6 0.3. 0.5.
(3) 事業税におけるもう1つの外形標準課税論(今西) くなることが示されている(21。 特に日本の企業. 利用させ, 報酬としてロ イヤリティを受け取れ. が海外に進出する場合, M&Aによらず, 主. ば, その限界費用はゼロ である。そこで親会社. に新規に会社を設立する形をとるため. このよ. が外国に新たな子会社を設立し, そこから株式. うな傾向が生じるものとも考えられる。それゆ. 等自己資本の正常報酬を配当でもって受け取る. ぇ. ここでは, 売上高経常利益率の高い1980年. 代りにこのロ イヤリティという形で報酬を受け. 以前と1981年-1983年に進出した企業が考慮の. 取ってもよいのである。さらに, このロイヤリ. 対象となる。. ティでは自己資本の正常報酬として不十分であ. まず. 平成5年 3 月末調査の結果をみてみよ パ ル プ,. れば, 親子会社間で取引される財の移転価格を. 化学, 電気. 操作 (またはロ イヤリティ自体移転価格操作し. 機械の各産業および製造業全体をみても1980年. てもよい)することによって, 子会社からその. 以前の進出企業と1981年-1983年の進出企業は. 自己資本の正常報酬相当分を受け取ってもよい. ともに, C欄に示してある各産業のアメリカ内. のである。. う。 鉱業食糧品, 木材,. 国法人全体の売上高経常利益率より, 一部例外. このような場合, 外国子会社において表面上. を除いて低い。 同 一 経済において競争しなが. 売上高経常利益率がアメリカの法人全体よりも. ら, 日本から進出した企業の売上高経常利益率. 低かったり, その絶対値がマイナスまたはゼロ. が多くの産業で相対的に低い値を示している。. に近い値を示していても, 親会社にとっては必. また, 197 8年-1980年進出企業について, 平. 要な収益が得られるのであるから, 十分外国子. 成2年 3 月末調査・平成5年 3 月末調査の双方. 会社の存立意義がある。もちろん, 年によって. において売上高経常利益率がマイナスまたはゼ. は売上高が増加することによってこのような外. ロ に近い値を示しているのが, 農林漁業, 鉱業,. 国子会社の売上高経常利益率は十分高い値を示. 建設, 化学, 電気機械, 輸送機械の各産業であ. すこともあるが, それは上のごとき方法で正常. る。1981年-1983年の進出企業についても, 農. 報酬が確保された上での売上高経常利益率であ. 林漁業, 鉱業, 建設, 化学, 一般機械の各産業. ると考えられる。. はマイナスまたはゼロ に近い売上高経常利益率. それでは日本企業が外国子会社から資本報酬. を示している。進出して1 0年から15年余経過し. を受け取るのに, なせで移転価格操作をするの. た企業の売上高経常利益率がこのようにマイナ. であろうか。 その根拠を考えてみよう。. スまたはゼロ に近い値を示しながら, なぜ事業 を継続しているのであろうか。. 一般に, 多国籍企業グル ー プ内企業のうち税 率の高い国に所在する法人から税率の低い国に. 上のような 2つの事実は, アメリカに進出し. 所在する法人に所得を移転させ, グル ー プとし. た日本の企業では表面上売上高経常利益率が低. ての税引後所得を最大化しようとする傾向があ. いけれども, なお実際には少なくとも自己資本. る(3)。 しかし, 日本の企業は親会社の収益をで. の正常報酬率を確保していることを示唆するも. きるだけ大きくしようとする傾向がある。親会. のと考えられる。つまり, 日本の親会社はロ イ. 社の成果を株主等に示す時, 経常利益率で判断. ヤリティの受取りや移転価格操作という形で必. される傾向があるためである。. 要な資本報酬を確保しているためである。. この場合, 租税のない場合には外国子会社か. 親会社が開発した技術を自ら利用し, またす. ら収益を受け取る時, 上のような限界費用ゼロ. でに外国子会社にその使用権を与えている中. のロ イヤリティで受け取る他に, ①配当で受け 取るのと ②財の移転価格操作を通して受け取. で, 新たに外国子会社を設立してその子会社に (2) 通省産業省産業政策局国際企業課(編)「第. 4 回海外事業活動基本調査, 海外投資統計総 覧」平成3 年, P. 29をみよ。. (3) Ikawa. B. E, Governmental Influences on. Multinational Transfer Pricing, 1993. pp. 4 - 7.. - 21 (21)-.
(4) 第42巻 第1号 るのも同等である。しかし, 租税の側面を考慮. の親会社への所得移転によって, 自己資本の正. すれば配当で受け取るよりも移転価格操作に. 常報酬を受け取る誘因が十分存在するのであ. よって収益を得る方が有利であるいくつかの理. る。. 由が存する。. ところが, 所与の規模で事業活動を行ってい る内国法人が外国子会社よりロイヤリティとし. 1つは, 源泉地国で課税された租税が, 親会 までの時間的遅れが生じるため, それに伴う運. て, あるいは受取配当か移転価格操作のどの形 で利益を得るかによって, 支払側で同一金額で. 用利子の節約を求めて, 源泉地国の課税逃れの. あっても受け取り側において事業税の課税標準. た め に 移 転 価 格 操 作 さ れ る と い う説明で あ. の大きさが異なってくる。. 社で受取配当に課税され, 外国租税控除される. る. 。. 外国子会社よりロイヤリティで利益を受け取. (4). もう 1つは, 国際的二重課税の調整法にある. れば源泉地国の源泉所得税引後の金額が内国法. と思われる。つまり, 源泉地国の源泉地課税の. 人の収益として課税標準の 1部に算入される。. 実質的負担率と受取法人の居住地国の国際的ニ. 受け取り配当であれば, 源泉地国の法人税と源. 重課税調整法の双方に関係するものである。. 泉所得税引後の金額が内国法人の収益となる。. 上記のアメリカに進出する日本企業の場合で. 取引される財, サ ー ビスの移転価格操作による. あれば, 親会社の収益をできる限り大きくする. 所得移転であれば源泉地国の法人税や源泉所得. 目的で, 進出先での事業拡張のために社内留保. 税は課されないで, 移転所得金額が収益の中に. する分を超えた金額を親会社に還流させる方法. 算入される。. として, 移転価格操作の根拠がなおも存するの である。法人税や源泉所得税が源泉地国で課税. このように, 内国法人が外国子会社からいか なる形で収益を得るかによって事業税の課税標. されている時, 配当を受け取る親会社にとっ. 準が異なり, 国内の事業規模とは別に現実の受. て, それは収入に相当する金額に対する課税で. 益の尺度に差が生じてくるのは事業税の課税根. あるから, 受取側の純所得に対する負担率で考. 拠からみて不合理である。もちろん, 移転価格. えれば, このような源泉地課税による実質負担. 操作の場合, 事業税の課税標準を最も大きくす. 率は名目のそれよりも大幅に高くなることがあ. るのであるから, 事業税自体が移転価格操作へ. る。その結果. 源泉地国の税率が受取側の税率. の誘因を減じるという逆作用をも生ぜしめるこ. よりも名目上低い場合でも, 外国税額控除が完. とになる。. 全になされ得ない。特に, 日本の法人所得に対. 次に海外から日本に進出する企業の行動とそ. する実効税率は50 %近い値を示すとしても, 事. れが事業税負担にどのような影響を与えるかを. 業税からは外国税額控除されないため外国税額. 検討してみることにする。. 控除限度はその分だけ低い金額となる。その結. 第 2表は, 海外から日本に進出した企業の売. 果, 法人税と配当に対する源泉所得税からなる. 上高経常利益率を平成2年, 平成3 年, 平成4. 源泉地課税分が親会社の外国税額控除限度を超. 年分について記してある。 (. )内の数値は同一. 過する。このような場合には. 外国子会社から. 産業に属する内国法人全体の売上高経常利益率. 親会社への所得還流は外国子会社からの支払配. である。しかも, 平成5年 3 月末現在の調査に. 当よりも, 移転価格操作による所得移転の方が. よって, 日本への進出企業の母国はその 75%が. 税引後収益率を引き上げるのである。ここに移. アメリカ, イギリス, フランスである。そのう. 転価格操作の誘因が生じる。すなわち, 上のよ. ち外国居住者が50 %超のマジョリティを把って. うに配当によらず, アメリカの子会社から日本. いる企業数の割合を表の右端の欄に記されてい. (4) 井堀利宏,「移転価格税制の経済分析」『総合. 税制研究」1995. 2,pp. 151-15 2。. る。これらの進出企業は外国の親会社の意思に よって配当政策や移転価格操作の決定がなされ. - 22 (22)一.
(5) 事業税におけるもう 1つの外形標準課税論(今西) 表 2 外国から日本に進出している企業の売上高経常利益率 平成2 年 全産 業 製造業 石油を除く製造業 食糧品 維 繊 バルプ紙. 化学, 医薬品 油 石 窯業・土石 非鉄金属 金属製品 一般機械 電気製品 輸送機械 精密機械 業 商 注 1. 注 2.. 3.9 4.4 5.6 1.7 1.5 5.8 4.3 2.2 7.6 4.8 3.9 4.9 8.5 3.3 1.9 3.0. (2.7) (4.3) (4.4) (3.1) (1.5) (2.3) (6.8) (1.8) (4.1) (4.0) (4.4) (5.6) (4.7) (3.8) (5.5) (1.2). 平成3 年 3.8 4.6 5.4 1.7 11.1 8.1 5.3 3.0 6.0 3.8 5.4 3.8 6.6 0.3 6.9 2.7. (2.3) (3.4) (3.5) (3.1) (1.4) (1.6) (5.4) (2.1) (3.1) (2.8) (4.5) (4.8) (3.0) (2.9) (4.0) (1.3). 平成4 年 3.0 3.3 3.4 3.8 1.7 9.0 8.3 2.9 3.7 3.4 7.1 6.4 1.0 0.7 5.0 2.6. (1.8) (2.6) (2.6) (3.1) (1.4) (2.2) (5.1) (2.2) (3.0) (1.8) (2.8) (2.7) (1.3) (2.0) (2.2) (1.0). 外資50%超 の企業比率 72.1% 63.7% 64.5% 60.9% 71.5% 100% 55% 23.1% 64.3% 64.3% 70% 60.3% 71.1% 51.2% 86.7% 61.5%. ( )内は日本の全企業の売上高利益率 資料. 通産省産業政策局国際企業課(編)「第27 回外資系企業の動向」, p . 22 およびp. 43.. る企業である。各産業で60% 超から100%がこ. の調整をしている。源泉地国が株主の居住地国. のような企業で占められている。. よりも実効税率が高いのであるから, イギリス. 多くの産業において, 各年度とも日本の企業. やアメリカの親会社にとって, 所得還流はでき. 全体よりも外国から進出している企業の方が高. るだけ移転価格操作によって行う誘因が働くと. い売上高経常利益率を示している。このことか. も考えられる。このことはアメリカ法人の場. ら, 外国から進出する企業は移転価格操作する. 合, 親会社が50%以下の持株の場合に妥当す. ことなく, 日本の子会社から外国親会社に自己. る。アメリカではこのような外国子会社からの. 資本報酬を支払っているとは必ずしもいえな. 受取配当は, 子会社ごとに外国税額控除限度が. い。 1部なんらかの形で移転価格操作すること. 設定され, 彼此流用が困難であるためである。. によって所得移転を行った上でなおも第 2表に. しかし, マジョリティを握らない限り, アメリ. 示された売上高経常利益率を得ている可能性が. カの親会社が配当政策に決定的な影響力をもた. ある。その 1つの根拠は, 上で示した源泉地課. ない。ところがアメリカの株主がマジョリティ. 税時と受取側での外国税額控除時の時間的遅れ. を握る被支配外国子会社の場合, 日本とアメリ. である。さらに, 以下の理由も考えられる。 日本の法人所得に対する実効税率はイギリス. カの税率差ほどには移転価格操作の誘因は大き くないものと考えられる。. やアメリカよりも高いのであるから, 日本に進. アメリカの税制では, アメリカの内国法人が. 出するイギリスやアメリカの法人は所得をでき. その被支配外国子会社から受取る配当はその所. るだけ多く親会社に還流させようとする。とこ. 得を親会社自ら稼得したかのごとく取り扱われ. ろがこの場合, イギリスやアメリカは双方にお. る。それゆえ, アメリカの法人はタックス. いて外国税額控除制度によって国際的二重課税. イプンやアメリカの法人税率よりも源泉地課税. - 23 (23)一. ・. ヘ.
(6) 第42巻 第 1 号 ・. ヘイプン国に被支配外国 子会社を設立し, そこで所得を稼得すれば, こ. 移転をさせる方が有利である。. の子会社所得を, 配当によって還流させればよ. 被支配外国子会社では強い移転価格操作の誘因. い。この場合, 日本の被支配外国子会社から受. は少なくとも国際的二重課税調整制度の外国税. 取った配当分に対する源泉地課税分は, 上のよ. 額控除限度の存在によって生じないが, 日本に. うな国外源泉の所得によって生じる外国税額控. 進出する ドイツや フランスの企業では, 特に後. 除限度余裕枠で彼此流用すれば完全に外国税額. 者においては親会社に自己資本に対する資本報. 控除され得る。アメリカでは日本の外国税額控. 酬を還流させるのに強い移転価格操作の誘因が. 除制度のごと<' 非課税国を源泉とする所得は. 生じる。. 率の低い非タックス. その%のみを国外所得に算入して国外所得/全. このように, 日本へ進出するアメリカ法人の. そこで, 外国法人の日本の子会社がどのよう. 世界所得の比率を求めるといった制約条件はな. な形で自己資本報酬を親会社に還流させるかに. いため, 彼此流用は被支配外国子会社所得に関. よって, わが国における事業税の課税標準に変. する限り容易である。このような場合, 敢えて. 更が生じる。. 日本から移転価格操作によって所得移転をさせ. 外国の親会社へ支払配当でもって資本報酬を. る必要はない。この場合では, 持株比率が50%. 還流させるならば, その全額が事業税の課税標. 以下の外国子会社よりも50% 超の被支配外国子. 会社形態で日本へ進出する誘因が強く生じてく るのである。. 準に含まれる。親会社が限界費用ゼロ のロ イヤ リティという形で資本報酬を受け取ればその分 だけ事業税の課税標準は縮少される。親会社が. ドイツや フランスでは外国子会社. 取引する財貨, サ ー ビスの移転価格操作によっ. からの受取配当は親会社において免税とするこ. て資本報酬を受け取れば, その分だけ事業税の. とによって国際的二重課税を回避されている。. 課税標準は小さくなる。つまり, 外国法人の子. 進出先での自国法人の子会社の競争力を保持す. 会社が国内で所与の規模で事業を行う場合に,. ところが,. るためと考えられる。アメリカから進出する企. 親会社が自己資本報酬をどのような形で受け取. 業と異なって, このような外国子会社からの受. るかによって事業税の課税標準の大きさが異. 取配当を免税とする国に居住する親会社の場合. なってくるのは不合理である。. ではその行動は異なってくる。 フランスの法人税率33%% に比べて我が国の. 実効税率は49.98% であるから, 受取配当免税. (2). 法人の資金調連と事業税. 日本の海外進出企業が外国子会社から得る収. 制度の下では日本の子会社から フランスの親会. 益のうち, 受取配当よりもロ イヤリティや受取. 社へ配当を支払うよりも限界税率ゼロ のロ イヤ. 利子のウェィトが大きくなる傾向にある。. リティを支払う形で, 形を変えた資本報酬を支. 内国法人が外国子会社から資本報酬を受け取. 払ったり, 移転価格操作によって所得移転を行. る場合, 受取利子に対して源泉地国で源泉所得. う方が有利である。特に, 移転価格操作によっ. 税のみが課されるが, 受取配当であれば法人税. て資本報酬を還流させる場合には日本では完全. と源泉所得税が源泉地国で課税される。当然,. に源泉地国課税を逃れることができる。. 貸付けによって外国子会社に資金供給する方が. ドイツでは配当軽課措置をとる中で, 社内留. 源泉地国の税収が小さくなる。それゆえ, 進出. 保分に対する税率は日本の実効税率よりも高. 先の税務当局は(特に日本から進出する企業は. ぃ。それでも, 日本での法人税, 住民税, 事業. 自己資本比率が低いため)親会社あるいはその. 税の負担に加え, 配当に対する源泉所得税を考. 関連会社からの資金供給において自己資金比率. える場合日本の子会社から受取配当によって資. が低い事実を節税行為と理解するため, 過少資. 本報酬を得るよりも移転価格操作によって所得. 本税制の適用に積極的である。. - 24 (24)一.
(7) 事業税における もう1つの外形標準課税論(今西) 日 本国内では一括限度方式により外国税額控. ア メリカでは, 源泉地国で 5 %以上の税率で. 除制度を採用しているが, 国外所得間では外国. 源泉所得税が課される受取利子はそれのみを別. 税額控除枠の彼此流用が困難になりつつある現. 途のバス ケ ッ ト で外国税額控除限度を設定す. 状では外国への進出に際しては貸付けによる資. る。 日 本は ア メリカの居住者に支払われる利子. 金供給に偏る誘因がますます強まってくると考. に対して租税条約によって 10% の源泉所得税を. えられる。. 課す。 そこで, このバス ケ ットの外国税額控除. ところが法人税の課税所得と異なって, 事業. 限度の中で 日 本の源泉所得税が完全に外国税額. 税のそれは源泉地課税分を損金扱いとされるた めに, 国内の事業活動の規模が所与の下で, 貸. 控除できる保証はない。 もし, 源泉所得税が完. 付けによる資金供給か出資によるかによって,. 子会社からの受取配当に対する実効税率は確実. 全に外国税額控除され得るならば, 被支配外国. 資本報酬の受け取り時の課税ベ ー スの大きさが. に ア メリカの法人税率よりも高いため, 他の軽. 異なってくる。 このように. 国際的な節税を目. 課税国の源泉所得で彼此流用されなければなら. 的とした行動によって, 外国子会社への資金供. ないことから, むしろ資金供給は貸付けによる. 給方法が影響を受け. 事業税の課税ベ ースない. 方が有利である。 しかし, 貸付けの原資自体を. し公共サ. ー. ビスからの事業の受益の尺度に変更. が加えられるのは不合理である。 一. 親会社が借り入れなければならないため, 受取 利子の大きな部分が経費となる場合には 5 %以. 方, 日 本に進出する外国企業の子会社に対. 上の源泉税率で課税されるバスケ ッ ト で外国税. する資金供給の方法は親会社の居住地国におけ. 額控除し切れない可能性が大きい。 このような. る外国源泉所得の国際的二重課税調整方法と 日. 場合であれば受取利子よりも受取配当の方が ア. 本における源泉地国としての課税率の双方に依. メリカ親会社にとって有利となり, 貸付けより. 存する。. も出資という形で資金供給する誘因が生 じ る。. ドイツや フランスでは外国子会社からの受取 一. 配当は免税とする 方. 外国源泉利子に対して. それでは, 日 本に進出する外国企業が子会社. は外国税額控除制度によって国際的二重課税の. に資金供給する場合に, 出資と貸付けにどの程 度依存しているのか, その実態について図示し. 調整をする。. てみる。. フランスであれば. 日 本よりも法人所得に対. 第 1 図で, 製造業全体を①とし, 以下, 食 糧. する実効税率が大幅に高いため, 日 本の子会社. 品, 繊維の各産業に順次②, ③と番号を付して. からの資本報酬は受取配当よりも受取利子の方. おく。 それぞれの産業の自己資本比率と売上高. が有利である。 フランスの親会社は 日 本の子会. 経常利益率の組み合わせおよび企業の自己資金. 社への資金供給は貸付けでもって行う誘因が生 じ てくる。 ドイツでは, 日 本よりも法人所得のうちの社 内留保分に対する税率は高いけれども, 実効税 率はほぼ同. に対する外国出資者が貸付ける金額の割合を (. 一. 水準にあるため. 支払配当への源. 泉所得税を考慮すれば, 受取配当よりも受取利. )の中に記してある。 図で分かることは, 自己資本比率が一定以下. あるいは一定以上の大きさになれば, (. )の数. 値が大きくなるという関係は見当たらない。 む しろ, 売上高経常利益率が 4 % を超える領域に. 子の方が有利である。この場合も, 親会社は 日. 外国出資者からの借り入れに大きく依存する産. 本の子会社への資金供給は新株引き受けよりも. 業が集中している。例えば, 精密機械, 化学,. 貸付けによる方法を選ぶ誘因が生 じ る。. 医薬品 電気機械がそうである。この売上高経. ア メリカの親会社が 日 本の子会社特に被支配. 常利益率は第 2 表の, 平成2 年,. 3 年, 4 年の. 外国子会社に資金供給を行う場合には次のごと. 売上高経常利益率を平均した値である。売上高. くなる。. 経常利益率が 3 年間で安定して高い水準にある. - 25 ( 25 )一.
(8) 第42巻 第 1 号. 自己資本% 比率50. の金利水準は他国に比べて大幅に低く, この点 からみれば現地である日本の金融市場で外国法 人の子会社が借り入れる方が有利である。 そこ. 2%. U⑳ ●. 1%. 3%. が ・. ゜. 1096. 、 , ‘. ヽ 9. "®● ヽ ' `. 2096. 籾 •( % 9 9 9 9 9 9 9 9 9 9 9 9 9 9 9 9 9 9 9 9 9 9 9 9 9 9 9 9 9 9 9 9 9L4 ei 翌●'. ee● ● 53 ge. 30%. でもう 1 つの ケ ー スとして, 外国子会社には資. 、 ’ 10 魯 ( " u ° •" g ( ). 40%. 金を出資として供給すべきであるが, 国際的な 節税を考慮して, 親会社が配当よりも利子で資 本報酬を受け取る方が有利なケ ー スである。 第 1 図に示した結果から売上高経常利益率が 安定的に高い水準にあったり, 近年利益率が上 昇傾向にある産業では, 親会社が上記のごとき 節税を計るべく貸付けによって資金供給してい. 5%. 6 % 売上高経常 利 益 率. 第1図 (注)( )の数値は, 自 己資本 額に対する 外国出資 者の貸付額の比率 O印は産業の番号 ①製造業 全体 ②食糧品 ③繊維 ④化学医薬 ⑤石油 製品 ⑥非鉄金属 ⑦一般機械 ⑧電気機械 ⑨輸送機械 ⑩精密機械 ⑪商業 全体 資料 通産省産業政策局国際企業課(編) 「第 27 回 外 資 系企業の 動 向」 平 成6 年 6 月, P. 17 および P. 42 よ り 算出. るものといえる。 外国法人が日本の子会社に資金供給するに際 して, 貸付けに依存するか出資に依存するかに よって事業税の課税標準の大きさが異なってく る。外国法人の日本における子会社の事業規模 が所与の下で, 国際的な節税のために資金供給 の方法を変更する結果, 事業税の課税標準つま り受益の尺度が小さく変更されるのは不合理で ある。 しかも国庫であれば, 支払利子には源泉 所得税が課されるが, 事業税では都道府県は支 払利子からなんらかの税収を得られないのであ. 産業では, 外国出資者からの貸付け比率が高. る。. い。 ' 売上高経常利益率が低位にありながら自己 資本に対する外国出資者の貸付け比率が15%と. (3). 比較的高いのが商業である。商業は設備資金よ. 近年, アメリカが移転価格税制や過少資本税. りも運転資金に大きく依存するため, 自己資金. 制に積極的に取り組んでいる。 移転価格税制に. のウ エ イトが小さいことによるものと考えられ. 対して, 日本の企業はその適用を回避するた. る。逆に, 売上高経常利益率の平均値が 4 %を. め, 事前確認によって対処しようとし, アメリ. 超えているが, 平成2年,. 3 年,. 移転価格税制 , 過少資本税制と対応調整. 4年と1. 5%,. カの子会社所得を従前よりも大きくするよう移. 11. 1 %, 1 . 7 %と変化し, 特定の年にのみ利益率. 転価格の設定をする傾向が当然生じてくるであ. が高く, 全体として低い水準にある年が多い産. ろう。. 業が繊維で, 平均値は高いが利益率が下降傾向. また, アメリカ財務省が近年慣行化している. にある産業が非鉄金属である。 これらの産業で. 利益比準法 ( CPM) は, アメリカに進出して年. は外国出資者の貸付け比率が低い。. 数経過の短いゆえに, 上述のごとく低い収益率. 親会社が貸付けによって外国子会社に資金供 給するケ. ー. スとして,. の現地法人であっても, その収益率を高く決定. 1 つは親会社の居住地国. する性質をもっため, 過大な税負担を強いる傾. の利子率水準が日本よりも低いため, 親会社自 ら低 コ ストの資金を借りて調達するか, 機会費. 向がある。これらの要因は反対にわが国内国法. 用が小さいため自己資金を外国子会社に供給す. 結果になる。. る場合である。しかし, 平成 2年頃から我が国. 人の所得を過少にし, 事業税負担を小さくする しかも, 税務当局が, 我が国法人のアメリカ. - 26 (26 ) 一.
(9) 事業税におけるもう1つ の 外形標準課税論(今西) 子会社が独立企業間価格より も 高いあるいは低. の存在であるが, 親会社が外国子会社を統轄し. い価格で関連企業と取り引を行なったとして,. たり, 国内の労働市場で獲得した労働力を外国. 何年 も 前の申告所得を も って過少申告と判断す. 支店に派遣するなどその所得を稼得するのに貢. る時 (長い年月の裁判の結果)法人所得の対応. 献している。当然外国子会社の活動といえど も. 調整がなされなければならない。 この場合, 事. 親会社の活動を通して都道府県の公共サ ー ビス. 業税は遠い過去の分まで も 企業に払い戻されな. の利益を受けているはずであるのに, 上の場合. ければならないのであるから, 都道府県の財政. であれば事業税の課税標準ないし受益の尺度に. 運営に大きな障害となり得る。また, 海外に進. 反映してこないのが現行制度である。. 出する企業が日本の親会社から外国子会社へ資. さらに外国支店の場合は一層不合理である,. 金供給するのに, 節税を目的とした過大な貸付. 本店の活動の中で外国支店の意思決定の多くが. けによる資金供給を行い, それが進出先の税務. なされ, 国内の労働市場で雇用した労働力が外. 当局によって過少資本税制の適用をされるなら. 国支店で活動する。 また本店の開発した技術等. ば, 事業税の課税標準の算定に対応調整をしな. が支店で利用される。 これらの本店の活動を通. ければならない。. して都道府県の公共サ ー ビスから受益して も ,. このように, 現行事業税は国庫間の税収獲得 競争の渦の中に巻き込まれるのである。 各国が 移転価格税制や過少資本税制に積極的になれば. 事業税の課税標準に外国支店の活動による公共 サ ー ビスの受益が全く反映されない。 昭和63年 12 月の税制改革において, 法人税と. なるほど都道府県財政は, 事業の所与の活動規. 住民税の外国税額控除限度の算出に際して国外. 模の下で受益の尺度である所得金額を調整する. 所得/全世界所得の最高値を90 %とした (但. ことをよ ぎなくされ, 事業税の払い戻しによっ. し, 国外の従業員割合が90 %を超える時は例. てその運営に混乱を も たらされるのである。. 外)。これは, 内外所得区分の便宜性から, 内国 法人が国内で事業を行い, 国や地方政府の公共. (4) 事業税 に お け る 外国子会社所得と外国支. 店所得. サ ー ビスから受益して も , 我が国の政府に対す る税負担がゼロ になることを防止するためであ. 現行事業税の下では源泉地国の課税分を損金. る。そこで内国法人の所得のうち100 %が国外. 扱いする形で, 受取配当を課税所得に算入され. 所得であって も , 国内での事業活動をする限. る。. 一. 方, 外国支店等恒久的施設の所得は. そ. り, 少なくと も 所得の10 %相当分に対し, 我が. れが現地で留保されるか本店に送金されるかに. 国に法人税等を納めるべきであるという趣旨で. 関係なく外国での事業活動の成果であるから内. 改革された。 むしろ, このような 論拠は現行事. 国法人の事業税の課税標準に算入されない。 内国法人が海外へ進出する時, 外国子会社形. 業税において, 外国支店等の所得の扱いに対し て適用されるぺきである。例えば, 外国支店の. 態で事業をすれば受取配当の金額に応 じ て事業. 所得のうち少なくと も 10 %は我が国事業税の課. 税の課税標準は大きくなるが, 外国支店の場合. 税所得に算入すべきである。. はその所得の金額を送金して も 課税標準は大き. このような, 国外所得稼得に伴う問題に加え. くならない形で, 国内の事業活動の規模とは独. て, 内国法人の事業活動の規模が所与の下で,. 立に, 公共サ ー ビスの受益の尺度に差が生 じ て. 外国子会社か外国支店かどちらの形態で海外進. くる。. 出するのか, また外国子会社の配当政策によっ. さらに, 仮に外国子会社からの受取配当がゼ. て, わが国の事業税の課税標準ないし都道府県. ロ であれば, 外国子会社の活動に対する親会社. の公共サ ー ビスからの受益の尺度が異なってく. の貢献が当該年度で評価されないこと自体不合. るのは不合理である。. 理である。 法律上は外国子会社は親会社と別個 - 27 (27 )一.
(10) 第42巻 第 1 号 (5). 内国法人のタ ッ ク ス. ・. ヘイ プ ン を利用 し. ない。. た租税回避と事業税 ここでは, タックス. ・. 留保される限り, 内国法人の課税標準に含まれ. ヘイプン対策税制と事. 業税負担の公平性を考えてみよう。. このように. タックス. ・. ヘ イ プン対策税制の. 適用除外基準に合致するか否かで, 純粋に外国. 内国法人が例えば香港で特定外国子会社を設. での事業活動の成果が全額事業税の課税標準に. 立し, 現地で小売販売活動をさせているとす. 含まれたり, あるいは国内の投資活動の成果が. る。ところが, 内国法人は日本で生産した財を. 内国法人の事業税の課税標準に含まれなかった. 第 3 国の外国子会社に販売するに際して, 直接. りする形で. 事業の受益の尺度が国内の事業活. この外国子会社に販売するのでなく, 香港の子. 動の規模とは独立に過大または過小になる。. 会社にインポイスを送り, ここから第 3 国の子. 我が国のタックス. ・. ヘイプン対策税制が地域. 会社に販売するが如く処理する。このようにし. 指定方式を採っていることから. このような問. て, 第 3 国の子会社が稼得すべき利潤の一 部を. 題が顕著に現われる。ア メ リカのごとく ショッ. 香港子会社の利潤とし, ここに内部留保するも. ピングアプロ. のと想定する。. 大 ・ 過小問題は解消される。しかし, 税制の運. この香港の特定外国子会社の売上高のうち, 現地で小売を行う財 · サ ー ビスの売上高が過半. 用面での簡素化から完全な シ ョ ッ ピ ングア プ. を占めているがゆえに, タックス. ・. ヘイプン対. ー. チ を採用すればこのような過. ロ ー チ を採れないとすれば, 事業税の上記の不 合理は一 部でもなお残ることになる。. 策税制の適用除外基準に合致すれば第 3 国へ販. 2.. 売した財, サ ー ビスから生じた利潤は親会社の. 事業税の外形標準課税論. 所得に合算されずにすむ。つまり, 日本の親会 社の事業税の課税標準の中にこの利潤部分は含. 以上から, 都道府県の公共サ ー ビスの受益の. まれないゆえ, 親会社の事業活動による受益の. 尺度を事業の所得に求 める時. 企業の国際租税. 尺度に影響はない。ところが, この香港子会社. 戦略によって. その大きさが国内での事業活動. が香港以外の外国へ販売する卸売会社と判定さ. の規模とは別の要因に影響される。また, 各国. れれば, この子会社を通して第 3 国へ販売され. 間の税収獲得競争に伴う対応調整がなされるこ. ー. ビスから生じた利潤は親会社の課税. とによって都道府県の財政運営が困難に直面す. 所得に合算されるのみでなく, 香港での小売販. ることが分かった。それゆえ, このような問題. 売によ っ て生じた所得をも親会社所得に合算さ. を回避するためには法人所得そのものを課税標. れる。第 3 国の子会社に帰すべき利潤のみでな. 準とせず, 外形標準課税が必要となる。. た財, サ. く, 香港における事業活動によって生じた所得. 長年, 事業税の課税標準として所得型付加価. をも内国法人の事業税の課税標準に全額算入さ れ, 公共サ ー ビスの受益の尺度が過大に測定さ. 値を用いることが主張されてきた。そこで. こ. れることになる。. の国際的側面はどのようになるのかを次に検討. 逆に, 内国法人が外国に投資するに際して, タックス. ・. ヘイプンの特定外国子会社を設立し. のような事業税の課税標準を用いれば. 事業税 してみよう。 「財政金融統計月報.. 法人企業統計年報」 の. て, 運用先等は内国法人が実質的に決定しなが. 1990年から1994年版における企業統計から, 資. らそこから投資するよう処理した上で運用利益. 本金 1億 円以上の企業について, その付加価値. をここに蓄積することができる。けれども, こ. の合計 お よび法人税と住民税の合計を抜き出. の特定外国子会社が現地で生産活動をもするた. し, 税収中立的な条件下での現行事業税の課税. め, 適用除外基準に合致すれば, 実質的に内国. 標準 (所得額) と付加価値額の比率を求 めてみ. 法人の所得であるはずの投資収益はそれが社内. る。こ の 場 合, 法 人 所 得 に 対 す る 実 効 税 率. - 28 C 28 )-.
(11) 事業税におけるもう1つの外形標準 課税論 (今西) 49. 9 8 %から事業税の実効税率1 0. 71 %を控除し. すれば, 生産方法の歪曲効 果が生じるし, 受益. た 残余が法人税と住民税の実効税率39 .27 %で. の尺度として必ずしもこれのみでは適切でな. あるから, この税率を基礎に法人事業税の課税. ぃ。 資産価値や取引高も事業の受益の尺度とな. ベ ー ス をとらえてみる。ただし, この資料では,. り得る。 長期設備資金や短期運転資金はそれぞ. 例えば法人税と事業税の課税ベ ー ス に算入され. れ, 企業の資産および取引高を反映すると考え. る国外源泉所得の取り扱いの差は考慮されな. られるため, これらを総合的に反映する総資本. い。 また, 種々な租税特別措置による課税標準. 額が事業税のもう 1 つの課税標準となり得る。. への影響は示し得ない。 ただし法人税の租税特 別措置の法人税収に占める割合は近年 3 %程度 であり, そのうち, 中小企業向けのものが%で あるから, その影響は小さい。. このような法人の所得そのものを全く含めな. い形で課税標準を求めれば, 国内問題としての 赤字法人課税問題の解決策にもなる。また第 1. このようにして算出した法人税の課税標準と. 節で示した国際課税問題に巻き込まれることか ら回避される。. 所得型付加価値額の比率は, 1990年度, 1991年. 今日, 事業税を外形標準課税に改めることを. 度, 1992年度, 1993年度, 1994年度の 5年間で. せず, 消費税収を都道府県に配分する形で, 都. それぞれ, 1 : 3. 34, 1 : 3. 55, 1 : 4. 30, 1 : 4. 9 8,. 道府県の安定的財源の確保を行う選択肢が採ら. 1 : 5 . 65であるから 5 年間平均して 1 : 4 . 36 であ. れた。 このような改革方向は事業税の課税根拠. る。 つまり現行の所得を課税標準とするのに対. からくる税負担の不公平を温存するのみでな. して所得型付加価値額を課税標準とすれば約%. く, 租税の帰着に次のごとき点で差違が生じて. の税率ですむことになる。 5年間の平均値を求. くる。. めたのは, 景気変動によって, 所得型付加価値. 上に示した支払賃金額や総資本額は短期的に. 額よりも法人所得の方が大きく変動するためで. ほぼ一定あるいは生産量の変化によって一部増. ある。. 加することから, 事業税の負担増がゼ ロ または. このように, 課税標準を改めれば, 第 1 節で. 一. 部のみが生じる。後の場合であれば企業の限. 示した事業税の弊害は約 4 分の 1 に小さくする. 界生産費用曲線の部分的上昇を生ぜしめる。そ. ことにもなる。 しかし, 課税標準に法人所得が. れに対して消費税の場合, 供給曲線を税率分だ. 含まれる限り所得型付加価値額に改めても, な. け上方 シ フトさせる。かくして, 所与の需要曲. お事業税は国際租税問題とは無縁であり得な. 線の下では, 我々が示した外形標準課税の方が. し 'o. 価格上昇が小さく, 事業が負担する部分が大き. 事業税の課税標準から法人所得を完全に排除. くなると考えられる。消費税に比ぺて顧客より. することによって, 初めて事業税が所得の国際. も事業の負担する部分が大きくなるはずであ. 課税問題から分離し,. 都道府県の公共サ ー. ピス. る。. からの受益の程度を国内での事業活動の大きに. むすびに代えて. 応じて測定できるようになる。 事業税の受益の尺度として, 資本金, 従業員 数 売上高を用いることができるが, 我々は支. このような事業税における外形標準課税と最. 払い賃金額と総資本額の二つを基準に求めるこ. 近の法人税引き下げ 論との関係を最後に 論じて. とを提案する。. おこう。. 従業員数では労働の質を反映できない。 より. 最近わが国の法人所得に対する実効税率が諸. 高い賃金率はより良質の労働を意味する。 それ. 外国よりも高いことから, 事業意欲を減じる効. は, より良質な教育, 公衆衛生等のサ ー ビ ス を. 果が無視され得ないと同時に, 産業の空洞化の. 反映する。 一方, 支払賃金額のみを課税標準に. 原因になるとして, 法人税率の引き下げが検討. - 29 ( 29 ) 一.
(12) 第42巻 第 1 号. されている。. 総資本額に変更し, 事業の成功に対するペ ナ ル. 法人税率の引き下げによる実効税率の引き下. ティといった現行事業税の性格を取り除くこと. げと事業税の所得部分に対する税率引き下げと. によって, むしろ, 法人所得に対する実効税率. では, 国際的側面を考える時, その効 果は異. を引き下げながら事業所得に対する実効税率を. なってくる。 事業税率をそのまま維持して, 法. 引き下げることができる。 それゆえ, 事業税の. 人税率の引き下げのみに行う場合, 次の 2つの. 外形標準課税の導入と併せて, 法人税率の引き. 効 果が生じる。. 上げを伴うならば, 法人税収および住民税収の. 1 つは, 法人税の外国税額控除限度が引き下. 増加をもたらすのみでなく, 外国税額控除限度. げられるため , 所与の国外源泉所得の外国税額. の引き上げをもたらし, 彼此流用の誘因や移転. 控除対象額が, 法人税の外国税額控除限度から. 価格操作の誘因, 外国法人への資金供給におけ. 控除されず, その超過分は法人住民税の外国税. る貸付け依存への誘因を緩和させるメリットを. 額控除限度から控除しなければならなくなる。. 期待できる。. ここに, 法人税収の減少は地方交付税の原資を. 我々が上に示した改革によって, 法人所得に. 減少させるに加えて, 法人住民税の税収減をも. 対する実効税率が外国のそれよりも相対的に高. 生ぜしめるのである。. いという現状を緩和するとともに, 法人税, 住. 第 2の効 果は, 外国税額控除限度が全体的に 低下することによって, 外国税額控除限度超過. も一層中立的となるのである。. 民税制が内国法人の対外投資に対して現状より. 分が大きくなり, 彼此流用の誘因が強くなる か, 移転価格操作や過少資本によって, 国際的 節税を計る誘因が強くなる。 それに対して, 事業税の税率引き下げは事業 税収の減少を通して法人所得に対する実効税率 の低下をもたらすが, 上のような住民税収の減 少等や外国税額控除限度の引き下げに伴う弊害 を生ぜしめ ない。 我々が上のような外形標準を事業税の課税標 準に用いれば, 所得額を用いる場合よりもより 正確に公共サ ー ビスからの受益の程度を測定で き, かつ国際課税との関係を切り離すことがで きる。 いま, 事業税によって, 事業に都道府県から 流出, 流入させない状態を, 事業税の立地に対 する中立性が保持される状態とする。 つまり,. 参. 考. 文. 献. Dworin, L., "Transfer Pricing Issues" National Tax Journal, Sept, 1990, pp. 285 -291. Ikawa, B. E. Governmental Influences on Multi— national Transfer Pricing, 1993. U. M. I. OECD., Transfer Pricing and Multinational En t四rises, Report of the OECD committee on Fiscal Affairs, 1979, OECD , International Tax A roidance and Erasion, Four Related studies, 1987. OECD. , Tax Aspcts of Transfer Pricing within Multinational Ente巾rises, 1993. OECD. 井堀利宏 「移転価格税制の経済分析」 「総合税制研究. No. 3, 企業の国際化 と 税制」 1995 . 2. pp. 141 - 163。 今西芳治 「企業活動の国際化 と 法人税」 1994. 中央 経済社 黒 田 東彦 (編) 国 際 課 税 I • 外 国税額控除制度」 1988. 税務経理協会. r. 都道府県の公共サ ー ビスからの受益に応じた税 負担が実現している状態と考えておく。 もし, 企業を積極的に誘致したい都道府県であれば, 公共サ ー ビスの質に対して, 上の状況が実現す るよりも低い税率に決定すればよい。 このよう に, 一定幅で税率決定の権限を都道府県に与え ておく。 上のように事業税の課税標準を支払賃金額と. 資. 料. U. S. Department of Commerce, Statistical A b stract of the United States, 1994. 大蔵省 「財政金融統計月 報 ・ 租税特集」 1994 . 4 大 蔵省印刷局 「財政金融統計月 報 ・ 法人企業統計年報特集」 1990 . 9 1991 . 9. 1992 . 9. 1993 . 9 1994 . 9各号, 大 蔵省印刷局. - 30 ( 30 )一.
(13) 事業税 に お け る も う 1 つ の外形標準課税論 (今西) 通産省産業政策局国際企業課 (編) 「第21回我が国企 業 の海外事業活動」 1 992. 大蔵省印刷局 「第 4 回海外事業活動基本調査, 海外投資統計 総覧」 大蔵省印刷局, 1991. 『第 5 回, 海外事業活動基本調査. 海外投資統. 計総覧」 大蔵省印刷局, 1994. 「第27回. 外資系企業の動向」 1994. 大蔵省印 刷局 自 治省 (編) 地方財政白書, 平成 7年版」 大蔵省印刷 局. - 31 ( 31 )一. r.
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